(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004131
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】崩落検知システム及び崩落検知方法
(51)【国際特許分類】
G01D 21/00 20060101AFI20240109BHJP
G08C 23/04 20060101ALI20240109BHJP
G01C 7/02 20060101ALI20240109BHJP
G01C 15/06 20060101ALI20240109BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240109BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01D21/00 D
G08C23/04
G01C7/02
G01C15/06 Z
G01C15/00 103D
E02D17/20 106
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103625
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】加沢 徹
(72)【発明者】
【氏名】相澤 桂
【テーマコード(参考)】
2D044
2F073
2F076
【Fターム(参考)】
2D044EA07
2F073AA01
2F073AB01
2F073AB05
2F073BB01
2F073BC04
2F073CC03
2F073CC08
2F073CC12
2F073CD11
2F073DD08
2F073FH04
2F073FH07
2F073FH11
2F073GG01
2F073GG04
2F076BA01
2F076BB09
2F076BD01
2F076BD05
2F076BE12
2F076BE15
2F076BE18
2F076BE19
(57)【要約】
【課題】崩落の検知を容易に行えるようにする。
【解決手段】複数方向にレーザ光を照射して周囲を走査すると共に他の崩落センサから送信されたレーザ光を反射可能に構成され、周囲にある1又は複数の他の崩落センサで反射されたレーザ光を受信して周囲にある各崩落センサの方向及び各崩落センサまでの距離を特定する複数の崩落センサと、崩落検知の対象となる場所に距離を離して配置された複数の崩落センサから、各崩落センサが特定した他の崩落センサの方向及び距離に係る情報を取得して、複数の崩落センサの位置関係を特定し、位置関係の変化に基づいて崩落を検知する監視装置とによって構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数方向にレーザ光を照射して周囲を走査すると共に他の崩落センサから送信されたレーザ光を反射可能に構成され、周囲にある1又は複数の他の崩落センサで反射されたレーザ光を受信して周囲にある各崩落センサの方向及び各崩落センサまでの距離を特定する複数の崩落センサと、
崩落検知の対象となる場所に距離を離して配置された複数の前記崩落センサから、各崩落センサが特定した他の崩落センサの方向及び距離に係る情報を取得して、複数の前記崩落センサの位置関係を特定し、前記位置関係の変化に基づいて崩落を検知する監視装置と
を備えることを特徴とする崩落検知システム。
【請求項2】
前記崩落センサは、周囲360度の上下方向所定角度の範囲内で前記レーザ光を走査することにより周囲にある他の崩落センサを探索することを特徴とする請求項1に記載の崩落検知システム。
【請求項3】
前記崩落センサが、各崩落センサを識別するための識別情報と、前記レーザ光を送受信して特定した他の崩落センサの方向及び距離とを含むデータを生成し、該データを、周囲にある他の崩落センサと送受信することによって、各崩落センサで得られたデータが1又は複数の崩落センサを介して前記監視装置へ届けられることを特徴とする請求項1に記載の崩落検知システム。
【請求項4】
前記崩落センサは、生成した前記データと、他の崩落センサから受信したデータとを、さらに他の崩落センサへ送信することを特徴とする請求項3に記載の崩落検知システム。
【請求項5】
前記崩落センサは、前記レーザ光を利用した光無線通信によって前記データを送受信することを特徴とする請求項3又は4に記載の崩落検知システム。
【請求項6】
前記崩落センサは、
前記レーザ光を透過させる透過状態と前記レーザ光を反射させる反射状態とを切換可能な反射板を複数有し、
所定方向から入射する前記レーザ光を異なる方向へ反射するように角度を変えて配設された複数の前記反射板で、各反射板の前記透過状態と前記反射状態との切り換えを制御することにより、複数の異なる方向で前記レーザ光を送受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の崩落検知システム。
【請求項7】
前記崩落センサは、
液晶分子の並びを変化させることによって前記レーザ光の反射方向を変更可能な反射板を有し、
前記反射板における液晶分子の並びを制御することにより、複数の異なる方向で前記レーザ光を送受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の崩落検知システム。
【請求項8】
前記崩落センサは、
前記反射板を利用して所定面内で前記レーザ光を複数の異なる方向へ反射する第1反射部と、
前記第1反射部で反射された各レーザ光を、別の前記反射板を利用して、前記所定面内でさらに複数の異なる方向へ反射する第2反射部と
を含む
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の崩落検知システム。
【請求項9】
崩落検知の対象となる場所に距離を離して配置された複数の崩落センサのそれぞれが、複数方向にレーザ光を照射して周囲を走査して、周囲にある1又は複数の他の崩落センサで反射されたレーザ光に基づいて、周囲にある各崩落センサの方向及び各崩落センサまでの距離を特定する工程と、
監視装置が、複数の前記崩落センサから、各崩落センサが特定した他の崩落センサの方向及び距離に係る情報を取得して、複数の前記崩落センサの位置関係を特定する工程と、
前記監視装置が、前記位置関係の変化に基づいて崩落を検知する工程と
を含むことを特徴とする崩落検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、崩落検知システム及び崩落検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山の斜面等における崩落を検知するための崩落検知システムが利用されている。例えば、特許文献1には、山の斜面に設置した光反射体を利用して崩落を検知するシステムが開示されている。観測現場に設けたレーザレベル計と光反射体との間でレーザ光を送受信することにより、観測現場から光反射体までの距離を測定する。崩落時には光反射体の位置がずれることから、観測現場から光反射体までの距離が変化する。この距離の変化に基づいて、斜面の崩落を検知することができる。
【0003】
特許文献2には、コーナーリフレクタを備えるミラーリフレクタを山の斜面に複数設置して、崩落の発生場所を特定するシステムが開示されている。測定ステーションから第1のミラーリフレクタにレーザ光を送信すると、レーザ光は第2のミラーリフレクタへ向けて反射される。第1、第2、第3と複数のミラーリフレクタで順に反射されたレーザ光は、最終的に測定ステーションで受信される。各ミラーリフレクタには、レーザ光を入射方向へ反射するコーナーリフレクタが設けられており、各ミラーリフレクタから戻ってきたレーザ光も測定ステーションで受信される。例えば、崩落が発生して第3のミラーリフレクタを利用できなくなると、第1、第2と順に複数のミラーリフレクタで反射されるレーザ光が測定ステーションへ到達しなくなることから、崩落の発生を検知することができる。また、第1及び第2のコーナーリフレクタからはレーザ光が戻ってくる一方で、第3のコーナーリフレクタからはレーザ光が戻ってこないことから、崩落の発生地点が第3のミラーリフレクタの設置場所であることが特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-133299号公報
【特許文献2】特開2005-10065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、例えば数百m先の光反射体までの距離を正確に測定するために高出力のレーザ光を高精度に制御する必要があり、システムの導入及び維持にコストがかかる。特許文献2の技術を利用すれば、観測地点が数百m先にある場合でも、この観測地点までの間に複数のリフレクタを設置してレーザ光を順に反射すればよい。このため、特許文献1に比べるとレーザ光の送受信装置に対する要求性能は低くなるが、例えば10m程度の間隔をあけて設置した数十個のリフレクタでレーザ光を送受信できるように光軸合わせをすることは容易ではない。
【0006】
本開示は、上記課題を含む従来技術を鑑みてなされたもので、その目的の1つは、導入及び利用が容易な崩落検知システム及び崩落検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る崩落検知システムは、複数方向にレーザ光を照射して周囲を走査すると共に他の崩落センサから送信されたレーザ光を反射可能に構成され、周囲にある1又は複数の他の崩落センサで反射されたレーザ光を受信して周囲にある各崩落センサの方向及び各崩落センサまでの距離を特定する複数の崩落センサと、崩落検知の対象となる場所に距離を離して配置された複数の前記崩落センサから、各崩落センサが特定した他の崩落センサの方向及び距離に係る情報を取得して、複数の前記崩落センサの位置関係を特定し、前記位置関係の変化に基づいて崩落を検知する監視装置とを備える。
【0008】
上記構成において、前記崩落センサは、周囲360度の上下方向所定角度の範囲内で前記レーザ光を走査することにより周囲にある他の崩落センサを探索してもよい。
【0009】
上記構成において、前記崩落センサが、各崩落センサを識別するための識別情報と、前記レーザ光を送受信して特定した他の崩落センサの方向及び距離とを含むデータを生成し、該データを、周囲にある他の崩落センサと送受信することによって、各崩落センサで得られたデータが1又は複数の崩落センサを介して前記監視装置へ届けられてもよい。
【0010】
上記構成において、前記崩落センサは、生成した前記データと、他の崩落センサから受信したデータとを、さらに他の崩落センサへ送信してもよい。
【0011】
上記構成において、前記崩落センサは、前記レーザ光を利用した光無線通信によって前記データを送受信してもよい。
【0012】
上記構成において、前記崩落センサは、前記レーザ光を透過させる透過状態と前記レーザ光を反射させる反射状態とを切換可能な反射板を複数有し、所定方向から入射する前記レーザ光を異なる方向へ反射するように角度を変えて配設された複数の前記反射板で、各反射板の前記透過状態と前記反射状態との切り換えを制御することにより、複数の異なる方向で前記レーザ光を送受信してもよい。
【0013】
上記構成において、前記崩落センサは、液晶分子の並びを変化させることによって前記レーザ光の反射方向を変更可能な反射板を有し、前記反射板における液晶分子の並びを制御することにより、複数の異なる方向で前記レーザ光を送受信してもよい。
【0014】
上記構成において、前記崩落センサは、前記反射板を利用して所定面内で前記レーザ光を複数の異なる方向へ反射する第1反射部と、前記第1反射部で反射された各レーザ光を、別の前記反射板を利用して、前記所定面内でさらに複数の異なる方向へ反射する第2反射部とを含んでいてもよい。
【0015】
本開示に係る崩落検知方法は、崩落検知の対象となる場所に距離を離して配置された複数の崩落センサのそれぞれが、複数方向にレーザ光を照射して周囲を走査して、周囲にある1又は複数の他の崩落センサで反射されたレーザ光に基づいて、周囲にある各崩落センサの方向及び各崩落センサまでの距離を特定する工程と、監視装置が、複数の前記崩落センサから、各崩落センサが特定した他の崩落センサの方向及び距離に係る情報を取得して、複数の前記崩落センサの位置関係を特定する工程と、前記監視装置が、前記位置関係の変化に基づいて崩落を検知する工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る崩落検知システム及び崩落検知方法によれば、システムの導入及び利用を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る崩落検知システムの概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、崩落検知システムで行われる報知処理の例を示す図である。
【
図3】
図3は、崩落検知システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、崩落センサの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、光通信部がレーザ光の送受信方向を変更する方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、複数の光通信部がレーザ光の送信部及び受信部を共用する例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、液晶型の反射部材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る崩落検知システム及び崩落検知方法の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る崩落検知システム1の概要を説明するための図である。崩落検知システム1は、複数の崩落センサ100(100a~100e)と、監視装置200とを含む。崩落センサ100は、本体部101(101a~101e)及び支柱部102(102a~102e)から成る杭形状を有し、崩落の検知対象となる山の斜面に固定して利用される。例えば、複数の崩落センサ100が数m~数十m程度の間隔で設置される。崩落検知システム1で使用される崩落センサ100の数は特に限定されない。
【0019】
崩落センサ100は、本体部101から電磁波を送受信する。崩落センサ100は、
図1に斜線で示すように、支柱部102の軸方向に垂直な方向と、該方向を含む所定の角度範囲内で角度を変更した複数の方向で、電磁波を送受信することができる。また、崩落センサ100は、
図1に破線矢印で示すように、周囲360度、すなわち支柱部102の軸回り360度方向で、電磁波の送受信方向を変更することができる。崩落センサ100が送受信する電磁波の種類は特に限定されないが、以下、崩落センサ100が、レーザ光を送受信するものとして説明を続ける。例えば、崩落センサ100は、人体に無害な波長1400nm以上の赤外線のレーザ光を送受信する。
【0020】
崩落センサ100aは、本体部101から、周囲360度で上下方向(支柱部102の軸方向)に所定角度範囲内を走査するようにレーザ光を送信して、他の崩落センサ100を探索する(S1)。本体部101には、反射部材610が設けられており(
図4(a)参照)、崩落センサ100は、他の崩落センサ100から送信されてきたレーザ光を反射する。周囲を走査するようにレーザ光を複数方向に送信した崩落センサ100aは、他の崩落センサ100b、100cで反射されて戻ってきたレーザ光を受信する。
【0021】
崩落センサ100aは、他の崩落センサ100b、100cとレーザ光を送受信することによって、他の崩落センサ100b、100cの位置を特定する(S2)。具体的には、崩落センサ100aは、他の崩落センサ100b、100cでレーザ光が反射されて戻ってきた方向、すなわち他の崩落センサ100b、100cとの間でレーザ光を送受信した方向に基づいて、他の崩落センサ100b、100cそれぞれが存在する方向を特定する。また、崩落センサ100aは、レーザ光の送受信に要した時間に基づいて、崩落センサ100aから各崩落センサ100b、100cまでの距離を特定する。
【0022】
崩落センサ100が特定する他の崩落センサ100の方向には、レーザ光の送信元である崩落センサ100から見た、水平面内における他の崩落センサ100の方向と、鉛直面内における他の崩落センサ100の方向とが含まれる。例えば、崩落センサ100aは、崩落センサ100aから見て北を0度とする北東方向45度、仰角30度の方向に崩落センサ100bがあり、崩落センサ100aから崩落センサ100bまでの直線距離が11mであるというように、他の崩落センサ100bの位置を特定する。ただし、崩落センサ100が特定する他の崩落センサ100の方向を水平面内における方向のみとする態様であってもよい。
【0023】
各崩落センサ100は、他の崩落センサ100と無線通信を行って、情報を送受信することができる。崩落センサ100間の通信方法は特に限定されず、電波を利用して通信を行う態様であってもよいし、レーザ光を利用した光通信を行う態様であってもよい。各崩落センサ100の内部には、各崩落センサ100を一意に識別可能な識別情報が記憶されている。崩落センサ100aは、レーザ光を反射した他の崩落センサ100b、100cと通信を行って、方向及び位置を特定した各崩落センサ100b、100cの識別情報を取得する。
【0024】
他の崩落センサ100b~100eも同様に周囲360度で上下に所定の角度範囲内をレーザ光で走査することによって、周囲にある崩落センサ100それぞれの方向及び距離を特定すると共に、電波又はレーザ光を利用した無線通信によって各崩落センサ100の識別情報を取得する。
【0025】
各崩落センサ100は、こうして得られた他の崩落センサ100の位置情報及び識別情報を他の崩落センサ100へ送信する(S3)。例えば、崩落センサ100aは、崩落センサ100aの識別情報と、崩落センサ100aがレーザ光の送信元であることを示す情報と、崩落センサ100aからレーザ光を送信して得られた他の崩落センサ100b、100cそれぞれの識別情報、方向及び距離とを関連付けたデータAを生成する。他の崩落センサ100b~100eも同様にデータB~Eを生成する。
【0026】
例えば、各崩落センサ100は、他の崩落センサ100から受信したデータをさらに別の崩落センサ100へ送信する。崩落センサ100bがデータBを崩落センサ100aに送信して、崩落センサ100aがデータBを崩落センサ100dに送信するというように、複数の崩落センサ100によってデータをバケツリレー式に送信することができる。
【0027】
また、例えば、各崩落センサ100は、他の崩落センサ100から受信したデータに、自身が生成したデータを付加して、さらに別の崩落センサ100へ送信する。
図1に実線矢印で示すように、崩落センサ100b及び崩落センサ100cがそれぞれデータB及びデータCを崩落センサ100aに送信すると、崩落センサ100aは、受信したデータB及びCにデータAを付加して、崩落センサ100dに送信する。崩落センサ100dは、データA、B、C及びDを含むデータをさらに次の崩落センサ100へ送信する。
【0028】
このように、通信可能な崩落センサ100の間でデータを送受信することにより、監視装置200と直接データを送信できない崩落センサ100から、他の崩落センサ100を介して、監視装置200へデータを送信することができる。
【0029】
崩落センサ100間のデータの送受信によって、全ての崩落センサ100のデータが監視装置200に集約される(S4)。集約されるデータには、各崩落センサ100で特定された、周囲にある他の崩落センサ100の識別情報と、他の崩落センサ100の方向及び距離を示す情報とが含まれている。監視装置200は、集約したデータを解析して、各崩落センサ100の位置関係を特定する。
【0030】
各崩落センサ100は、レーザ光を送受信して他の崩落センサ100の方向及び距離を特定する処理と、識別情報、方向及び距離を含むデータを他の崩落センサ100に送信する処理とを繰り返し実行する。例えば、所定時間毎に、各処理が繰り返し実行されて、全ての崩落センサ100で得られたデータが監視装置200に集約される。
【0031】
なお、周囲の崩落センサ100を特定した後は、崩落センサ100が、周囲360度を走査するようにレーザ光を送信するのではなく、特定した方向、すなわち他の崩落センサ100が存在する方向を含む所定範囲内のみを走査するように、レーザ光を送信する態様であってもよい。
【0032】
監視装置200は、崩落センサ100のデータを受信する度に、各崩落センサ100の位置関係を特定する。監視装置200は、各崩落センサ100の位置関係の変化に基づいて、崩落の発生を検知する(S5)。崩落センサ100は山の斜面に固定されているため、斜面にずれが生ずると、崩落センサ100の位置がずれて、他の崩落センサ100との位置関係が変化する。監視装置200は、この位置関係の変化に基づいて崩落を検知する。
【0033】
監視装置200が検知する位置関係の変化には、崩落センサ100から見た他の崩落センサ100の方向の変化と、崩落センサ100の間の距離の変化とが含まれる。また、検知できなくなった崩落センサ100の存在も含まれる。例えば、崩落センサ100bの方向及び距離を特定していた崩落センサ100aから、崩落センサ100bの方向及び距離を示すデータが得られなくなった場合、監視装置200は、崩落センサ100aと崩落センサ100bとの位置関係が変化したと判定する。
【0034】
監視装置200は、崩落発生前の崩落センサ100の位置関係の変化と、崩落発生後の崩落センサ100の位置関係の変化との両方を検知することができる。すなわち、監視装置200は、崩落発生の予兆を示す崩落センサ100の位置関係の変化と、崩落が発生したことによる崩落センサ100の位置関係の変化との両方を検知することができる。
【0035】
崩落を検知した監視装置200は、崩落検知システム1の利用者に検知結果を報知する所定の報知処理を実行する。報知処理の内容は特に限定されないが、例えば、監視装置200が表示装置を備え、崩落を検知したことを示す情報を表示装置に表示して報知してもよい。監視装置200がスピーカを備え、崩落を検知したことを示す音をスピーカで再生して報知してもよい。監視装置200が、検知結果を外部装置に通知して、外部装置が表示や音によって崩落を検知したことを報知する態様であってもよい。
【0036】
図2は、監視装置200が実行する報知処理の例を示す図である。
図2は、スマートフォン等の通信端末300を利用する報知処理の例を示している。
図2に示す黒丸は、山の斜面に設置された複数の崩落センサ100を示している。監視装置200は、1又は複数の崩落センサ100と通信を行うことにより全ての崩落センサ100のデータを集約して、各崩落センサ100の位置関係を特定し、位置関係の変化を監視する。位置関係の変化を検知した監視装置200は、通信端末300と無線通信を行って、通信端末300の表示部400に、検知結果に関する情報を表示させる。
【0037】
例えば、監視装置200は、各崩落センサ100の位置関係から、
図2に破線で示すように山の斜面をメッシュモデル化し、メッシュモデルの要素別、すなわち山の斜面の領域別に、崩落センサ100の位置関係の変化量の大小をレベル分けして表示部400に表示させる。崩落センサ100の位置関係の変化量と各レベルとの対応を示す設定を予め記憶部230に準備することにより、監視装置200は、この設定に基づく崩落情報を、通信端末300の表示部400に表示する。
【0038】
例えば、
図2に示すように、領域422で領域421よりも大きな位置ずれが検知された場合に、表示部400に表示された山のグラフィック表示410上で、領域422と領域421とが区別可能に表示される。例えば、領域422と領域421とが色を変えて表示される。
【0039】
また、表示部400には、警戒が必要となる地域を示す情報430が表示される。崩落センサ100の位置関係の変化量と警戒要否の判定基準の対応を示す設定と、崩落センサ100と山の周辺地域との対応を示す設定とを予め記憶部230(
図3参照)に準備することにより、監視装置200は、これらの設定に基づく警戒情報を、通信端末300の表示部400に表示する。崩落検知システム1の利用者は、スマートフォン等の画面に
図2に示す情報を受信することにより、崩落の予兆又は崩落の発生が検知されたことを認識すると共に、避難等の警戒が必要か否かを認識して適切な対応をとることができる。スマートフォン等の通信端末300が自端末の位置情報を取得する機能を有する場合は、通信端末300で取得された位置情報に基づいて、避難等の警戒が必要な地域に存在する通信端末300へ選択的に警戒情報が報知される態様であってもよい。例えば、監視装置200が、警戒が必要な地域に存在する通信端末300を選択して、選択した各端末300へ
図2に示す情報と共に避難等の警戒が必要である旨を通知すればよい。
【0040】
[崩落検知システムの構成]
崩落検知システム1の構成例を説明する。
図3は、崩落検知システム1の構成例を示すブロック図である。崩落検知システム1が、崩落センサ100及び監視装置200に加えて、通信端末300を含んでいてもよい。例えば、表示部、操作部、記憶部及び通信部を備えるスマートフォン等の端末が、通信端末300として利用される態様であってもよい。
図3に示す例では、崩落センサ100と監視装置200とが光無線通信を行うが、通信方法は特に限定されず、電波を利用して無線通信を行う態様であってもよい。監視装置200と通信端末300との通信方法も特に限定されず、電波又はレーザ光による無線通信を行う態様であってもよいし、有線で通信する態様であってもよい。
【0041】
図3に示す崩落センサ100は、光通信部110、制御部120及び記憶部130を含む。記憶部130は、崩落センサ100の識別情報、レーザ光を送受信して特定した他の崩落センサ100の方向及び距離、他の崩落センサ100の識別情報、他の崩落センサ100から受信したデータ等の保存に利用される。また、記憶部130は、制御部120の動作に必要な各種データの保存に利用される。制御部120が記憶部130に保存された各種データを利用しながら崩落センサ100の各部を制御することにより、本実施形態に記載する崩落センサ100の機能及び動作が実現される。
【0042】
光通信部110は、レーザ光を送信する送信部111と、他の崩落センサ100からレーザ光を受信する受信部112と、レーザ光の送受信方向を変更する変更部113とを含むが、詳細については後述する。
【0043】
制御部120は、光通信制御部121及びデータ出力部122を含む。光通信制御部121は、光通信部110の動作を制御する。具体的には、光通信制御部121は、光通信部110の変更部113を制御して、光通信部110によるレーザ光の送受信方向を変更する。また、光通信制御部121は、送信部111からのレーザ光の送信と、受信部112によるレーザ光の受信とを制御する。これにより、崩落センサ100は、光通信部110が送受信するレーザ光の送受信方向を変更しながら、他の崩落センサ100の方向と他の崩落センサ100までの距離とを特定すると共に、他の崩落センサ100と通信を行ってデータを送受信することができる。
【0044】
データ出力部122は、光通信部110で得られた他の崩落センサ100の識別情報、方向及び距離と、他の崩落センサ100から受信したデータとを、他の崩落センサ100に送信する。データの送信は、光通信部110を利用して行われる。例えば、レーザ光の送受信方向を崩落センサ100bがある方向に変更した崩落センサ100aと、レーザ光の送受信方向を崩落センサ100aがある方向に変更した崩落センサ100bとが、レーザ光を送受信することによって、光通信によるデータの送受信が行われる。
【0045】
監視装置200は、通信部210、制御部220及び記憶部230を含む。監視装置200がさらに操作部及び表示部を含んでいてもよい。通信部210は、崩落センサ100との通信と、通信端末300との通信とを実行する。記憶部230は、崩落センサ100から受信したデータの保存に利用される。記憶部230は、制御部220の動作に必要な各種データの保存にも利用される。制御部220が、記憶部230に保存された各種データを利用しながら各部を制御することにより、本実施形態に記載する崩落検知システム1の機能及び動作が実現される。
【0046】
制御部220は、データ解析部221、崩落検知部222及び報知部223を含む。データ解析部221は、各崩落センサ100から受信したデータを解析して、崩落センサ100の位置関係を特定する。
【0047】
崩落検知部222は、データ解析部221で得られた解析結果に基づいて、崩落を検知する。崩落を検知するための判定条件は、予め記憶部230に準備されている。崩落検知部222は、データ解析部221によって特定された崩落センサ100の位置関係が、所定の閾値を超えて変化した場合に、崩落が発生したと判定する。例えば、崩落センサ100間の距離が閾値を超えて変化した場合、崩落センサ100の間の方向が閾値を超えて変化した場合、方向及び距離を特定できなくなった崩落センサ100が存在する場合等に、崩落が発生したと判定される。
【0048】
報知部223は、崩落検知部222が崩落を検知した場合に、通信部210を介して通信端末300でこれを報知する。通信端末300は、例えば
図2に示した画面を表示して崩落発生を利用者に報知する。通信端末300が、警報音を発出する態様であってもよい。
【0049】
[崩落センサの構成例]
図4は、崩落センサ100の構成例を示す図である。
図4(a)は、崩落センサ100の本体部101の側面図を示し、
図4(b)は本体部101の上面図を示している。崩落センサ100は、軸形状を有する支柱部102の上端に、円筒形の本体部101を取り付けた杭型形状を有する。例えば、支柱部102と本体部101とが着脱可能に構成され、支柱部102を山の斜面に打ち込んで固定した後、支柱部102の上端に本体部101を固定して利用される。
【0050】
防水性を有する本体部101の内部に、複数の光通信部110(110a~110f)と、制御基板600とが収められている。制御基板600は、制御部120、記憶部130及びバッテリを含み、崩落センサ100は、バッテリから供給される電源によって動作することができる。
【0051】
反射部材610は、他の崩落センサ100から送信されてきたレーザ光を受けて、送信されてきた方向へレーザ光を反射する。反射部材610は、
図4(b)に示すように、円筒形状を有する本体部101の側面上端近傍で円筒軸回りに側面全域に渡って設けられ、周辺に設置された他の崩落センサ100からレーザ光を受けて反射できるようになっている。反射部材610の種類は特に限定されないが、例えば、再帰反射構造を有するマイクロプリズムを配列して構成したシート部材を反射部材610として利用すればよい。また、例えば、再帰反射機能を有するコーナーリフレクタを本体部101の外周側面に沿って複数設けて、反射部材610として利用してもよい。なお、反射部材10が、崩落センサ100の周囲360度に渡って設けられる態様に限定されず、周囲360度のうち一部の角度範囲内で、他の崩落センサ100から送信されてきたレーザ光を反射するように設けられる態様であってもよい。例えば山の斜面に設定された帯状の領域に複数の崩落センサ100を設置して利用する場合、この帯状の領域内をカバーする範囲でレーザ光を反射するように反射部材610を設ければよい。レーザ光を反射する方向を限定できる場合には、凹面鏡等の部材を反射部材610として利用する態様であってもよい。
【0052】
光通信部110は、レーザ光を送受信することによって、他の崩落センサ100の方向と、他の崩落センサ100までの距離とを特定する。また、光通信部110は、レーザ光を送受信する光通信によって、他の崩落センサ100とデータを送受信する。
図4(b)に示すように、本体部101の内部に複数の通信部110a~110fを設けることにより、崩落センサ100は、支柱部102を中心に本体部101の周囲360度でレーザ光の送受信方向を変更することができる。また、崩落センサ100aは、周囲360度で、レーザ光を送受信する角度を支柱部102の軸方向に変更することができる。
【0053】
図5は、光通信部110がレーザ光の送受信方向を変更する方法を説明するための図である。
図5(a)~
図5(c)には、各構成部の関係を示すための座標軸を示している。
図5に示すZ軸が支柱部102の軸方向を示している。山の斜面に打ち込まれた支柱部102の角度によって軸方向(Z軸)が鉛直方向と一致しない場合もあるが、説明を簡単にするため、以下、Z軸が鉛直方向、X軸及びY軸が水平方向であるものとして説明を続ける。
【0054】
図5(b)に示すように、送信部111からZ軸方向に出射されたレーザ光801は、ハーフミラー700を透過して上方へ進む。他の崩落センサ100から受信したレーザ光804は、ハーフミラー700で反射されて受信部112で受信される。ハーフミラー700に代えて、光サーキュレータを利用して、レーザ光801の送信とレーザ光804の受信とが行われる態様であってもよい。
【0055】
レーザ光801の送信方向を変更する変更部113は、垂直反射板710(710a~710e)と、水平反射板720(720a~720e)とを含む。垂直反射板710は、レーザ光801を透過させる透過状態と、レーザ光801を反射する反射状態との間で切換可能に構成されている。例えば、垂直反射板710への電圧の印加の有無によって、透過状態と反射状態の切り換えが電気的に制御される。
【0056】
垂直反射板710aを反射状態にすることで、レーザ光801は垂直反射板710aによって反射される。垂直反射板710aを透過状態にして垂直反射板710bを反射状態にすることで、レーザ光801は垂直反射板710bによって反射される。垂直反射板710a、710bを透過状態にして垂直反射板710cを反射状態にすることで、レーザ光801は垂直反射板710cによって反射される。垂直反射板710a~710cを透過状態にして垂直反射板710dを反射状態にすることで、レーザ光801は垂直反射板710dによって反射される。垂直反射板710a~710dを透過状態にして垂直反射板710eを反射状態にすることで、レーザ光801は垂直反射板710eによって反射される。
【0057】
図5(b)に示すように、5つの垂直反射板710a~710eが、同一方向から入射するレーザ光801をそれぞれ異なる角度へ反射するように、角度を変えて鉛直方向(Z軸方向)に一列に並べて配置されている。これにより、崩落センサ100は、一番下の垂直反射板710aによる反射方向と、一番上の垂直反射板710eによる反射方向とが成す角度Av内で、鉛直面内における反射方向を変更することができる。
【0058】
各垂直反射板710a~710eを透過状態又は反射状態に制御することで、
図5(b)に示すように、各垂直反射板710a~710eの反射角度で反射されたレーザ光802(802a~802e)が、水平反射板720に送信される。垂直反射板710から送信されたレーザ光802は、
図5(c)に示すように入射して、水平反射板720によって反射される。
【0059】
水平反射板720aを反射状態にすることで、レーザ光802は水平反射板720aによって反射される。水平反射板720aを透過状態にして水平反射板720bを反射状態にすることで、レーザ光802は水平反射板720bによって反射される。水平反射板720a、720bを透過状態にして水平反射板720cを反射状態にすることで、レーザ光802は水平反射板720cによって反射される。水平反射板720a~720cを透過状態にして水平反射板720dを反射状態にすることで、レーザ光802は水平反射板720dによって反射される。水平反射板720a~720dを透過状態にして水平反射板720eを反射状態にすることで、レーザ光802は水平反射板720eによって反射される。
【0060】
図5(c)に示すように、5つの水平反射板720a~720eが、同一方向から入射するレーザ光802をそれぞれ異なる角度へ反射するように、角度を変えて水平方向(Y軸方向)に一列に並べて配置されている。これにより、崩落センサ100は、両外側の水平反射板720a、720eによる反射方向が成す角度Ah内で、水平面内における反射方向を変更することができる。
【0061】
5つの垂直反射板710a~710eで反射されたレーザ光802a~802eが、それぞれ水平反射板720a~720eによって5つの異なる方向へ反射される。
図5(c)に示すように各水平反射板720a~720eの反射角度で反射されたレーザ光803(803a~803e)が、他の崩落センサ100へ向けて送信されることになる。
【0062】
各垂直反射板710a~710eの透過又は反射状態と、各水平反射板720a~720eの透過又は反射状態とを維持した状態で、他の崩落センサ100の反射部材610によって反射されたレーザ光804が、送信時と逆の経路をたどってハーフミラー700へ戻り、ハーフミラー700で反射されて受信部112で受信される。
【0063】
図5(a)は、レーザ光の送受信方向の変更方法が分かり易いように模式的に示したものであるため、水平反射板720aによる送受信方向と、水平反射板720eによる送信方向とが鉛直方向(Z軸方向)にずれて見えるが、実際には、鉛直方向の略同じ位置から、水平方向の角度を変えた複数方向にレーザ光が送受信される。なお、崩落センサ100の支柱部102の軸方向が鉛直方向からずれている場合、
図5で鉛直とした方向は崩落センサ100の支柱部102の軸方向となり、水平とした方向は支柱部102の軸方向と垂直な方向となる。
【0064】
図5は、水平反射板720の数を限定するものではない。また、
図5では、水平面内で反射方向を変更する一組の水平反射板720a~720eが使用される例を示したが、複数組を使用する態様であってもよい。
【0065】
例えば、水平反射板720を2段構成で利用する場合、1段目に配置された一組の水平反射板720それぞれが、水平面内において複数の異なる方向へレーザ光を反射する。1段目の水平反射板720による反射方向それぞれに対応させて、2段目の水平反射板720を一組ずつ配置する。そして、2段目に配置された水平反射板720それぞれが、水平面内において、1段目の反射方向とは異なる複数の方向へレーザ光を反射する。
【0066】
具体的には、例えば水平面内における所定方向を0度として、レーザ光を0度、10度、20度、30度、40度、50度の6つの異なる方向に反射するように1段目の水平反射板720を配設する。さらに、1段目で反射された各レーザ光を、それぞれ0~9度、10~19度、20~29度、30~39度、40~49度、50~59度に角度を変更して反射するように2段目の水平反射板720を配設する。この結果、光通信部110は、1段目及び2段目の水平反射板720によって、0~59度まで1度間隔で反射角度を変更しながらレーザ光を送受信することができる。この光通信部110を、
図4(b)に示すように、支柱部102の軸回りに60度間隔で6つ配置することにより、崩落センサ100は、水平面内において1度間隔で360度方向にレーザ光を送受信することができる。なお、段数及び各段で使用する水平反射板720の数は特に限定されない。
【0067】
垂直反射板710についても、その数は限定されず、上述した複数段から成る水平反射板720と同様に、複数の垂直反射板710を1組として、複数組を多段構成で利用する態様であってもよい。
【0068】
図5では、1つの光通信部110に、送信部111及び受信部112が含まれる例を示したが、複数の光通信部110が1つの送信部111を利用する態様であってもよい。例えば、
図6(a)に示すように、1つの送信部111が送信するレーザ光801を、光スプリッタ115によって複数のレーザ光811(811a、811b)に分けてミラー116で反射し、複数の光通信部110それぞれのハーフミラー700に送信する態様であってもよい。
【0069】
受信側についても同様に、複数の光通信部110が1つの受信部112を利用する態様であってもよい。例えば、
図6(b)に示すように、複数の光通信部110それぞれのハーフミラー700で反射された複数のレーザ光814(814a、814b)を、光結合器118を利用して1つの受信部112へ送信する態様であってもよい。複数の光通信部110でレーザ光が同時に送受信される場合は、
図6(b)に示すように、各光通信部110に対応する光シャッタ117(117a、117b)を設けて、1つの光通信部110のみでレーザ光を受信するように、光通信制御部121が、光シャッタ117を制御すればよい。
【0070】
図5では、レーザ光の透過と反射を切換可能な複数の部材を利用して反射方向を変更する例を示したが、1つの部材を利用する態様であってもよい。例えば、
図7(a)に示すように、複数の透明電極911が配設された透明板状部材901と、複数の透明電極912が配設された透明板状部材902との間に、印加される電圧によって配列が変化する多数の液晶分子910を封入した液晶反射部材900を利用する。
図7(a)に示すように、この液晶反射部材900の一端からレーザ光801を入射すると、レーザ光801は他端へと透過する。
【0071】
図7(b)に示すように、透明板状部材901の透明電極911aと、透明板状部材902の透明電極912aとの間に電圧を印加すると、
図7(b)に破線で囲んで示すように、これらの透明電極911a、912aを結ぶ領域で液晶分子910の配列状態が変化して、レーザ光が反射されるようになる。
図7(c)に示すように、電圧を印加する透明電極を、透明電極911b、912bに変更すれば、レーザ光801の反射方向を、
図10(b)に示す反射方向とは異なる方向に変更することができる。
【0072】
図5に示す垂直反射板710を、
図7に示す液晶反射部材900に置き換えれば、電圧を印加する液晶反射部材900の透明電極911、912を変更することにより、鉛直面内におけるレーザ光の反射方向を複数の異なる方向に制御することが可能となる。水平反射板720についても、同様に液晶反射部材900と置き換えて、水平面内におけるレーザ光の反射方向を複数の異なる方向に制御することができる。垂直反射板710と水平反射板720のいずれか一方を液晶反射部材900に置き換えてもよいし、両方を液晶反射部材900に置き換えてもよい。液晶反射部材900の制御は、電圧を印加する透明電極911、912とレーザ光の反射角度との関係に基づいて予め準備した設定を、崩落センサ100の記憶部130に保存して、光通信制御部121が、この設定に基づいて液晶反射部材900の電気制御を実行すればよい。
【0073】
本実施形態で説明したレーザ光の送受信方法は例示であって、上述したようにレーザ光の送受信方向を制御することができれば、他の方法でレーザ光を送受信する態様であってもよい。例えば、崩落センサ100におけるレーザ光の経路に、広角レンズ、魚眼レンズ、ミラー等の光学部材を配置して、レーザ光の送受信方向を変更する態様であってもよい。例えば、崩落センサ100の頂部に魚眼レンズを設け、崩落センサ100から魚眼レンズを介して測距波を送受信するようにすれば、崩落センサ100のサイズはそのままにレーザ光の照射範囲を拡大することができる。この場合、
図5に示す例では、魚眼レンズを介して所望の範囲で測距波を送受信できるように、変更部113の数、配置位置、配置方向、変更部113の構成等を変更すればよい。
【0074】
本実施形態では、透過と反射を電気制御によって切換可能な部材を利用してレーザ光の反射方向を変更する例を示したが、レーザ光の反射方向が機械的に変更される態様であってもよい。例えば、レーザ光を送受信する構成部を、
図5に示すX軸回りに回転駆動するアクチュエータを設ける。このアクチュエータを、別のアクチュエータでZ軸回りに回転駆動すれば、レーザ光の送受信方向を水平方向360度変更すると共に、各方向で鉛直方向にレーザ光の送受信方向を変更することができる。この他、1又は複数のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型のミラーを利用してレーザ光の送受信方向を変更する態様であってもよい。
【0075】
本実施形態では、崩落センサ100の周囲360度をレーザ光で走査することにより、他の崩落センサ100を探索する例を示したが、崩落センサ100が走査する範囲が360度に満たない角度範囲であってもよい。例えば、山の斜面において、崩落センサ100から見て下方にある他の崩落センサ100のみを探索すればよい場合は、レーザ光の走査範囲を、探索範囲を含む360度未満の範囲に絞った崩落センサ100が利用される態様であってもよい。
【0076】
上述したように、本実施形態に係る崩落検知システム及び崩落検知方法によれば、崩落センサが、周囲を走査するようにレーザ光を照射して、レーザ光を反射する他の崩落センサを探索し、この崩落センサの方向及び距離を特定することができる。このため、多数の崩落センサを利用する場合でも、各崩落センサの間で光軸合わせの作業を行う必要がない。また、崩落センサが、他の崩落センサの方向及び距離と、識別情報とを含むデータを他の崩落センサへ送信することにより、各崩落センサのデータが、1又は複数の崩落センサを介して監視装置へ集約される。このため、監視装置は、直接通信できないような離れた場所にある崩落センサのデータを含め、全ての崩落センサからデータを取得することができる。監視装置は、データに含まれる情報から各崩落センサの位置関係を特定し、各崩落センサから定期的に送信されてくるデータを利用して位置関係の変化を監視することにより崩落を検知することができる。遠く離れた崩落センサとレーザ光を送受信する必要はなく、崩落センサ間の光軸合わせを行う必要もないため、崩落検知システムを容易に導入、利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本開示に係る崩落検知システム及び崩落検知方法は、崩落検知システムの導入及び利用を容易なものとするために有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 崩落検知システム
100(100a~100e) 崩落センサ
101(101a~101e) 本体部
102(102a~102e) 支柱部
110(110a~110f) 光通信部
111 送信部
112 受信部
113 変更部
115 光スプリッタ
116 ミラー
117 光シャッタ
118 光結合器
120、220 制御部
130、230 記憶部
200 監視装置
210 通信部
300 通信端末
400 表示部
610 反射部材
700 ハーフミラー
710(710a~710e) 垂直反射板
720(720a~720e) 水平反射板
900 液晶反射部材
901、902 透明板状部材
911(911a、911b)、912(912a、912b) 透明電極