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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041311
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20240319BHJP
   A45D 34/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B65D83/00 J
A45D34/00 510Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146040
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西澤 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】大藪 淳
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PA10
3E014PB04
3E014PC03
3E014PC04
3E014PD30
3E014PE14
3E014PE17
3E014PF10
(57)【要約】
【課題】塗布材料を均等に塗布することができる、携帯性のよい小型の塗布容器を提供する。
【解決手段】塗布容器は、蓋部と、前記蓋部の裏面に接着され、塗布材料が収容される容器部と、前記蓋部の表面に接着され、連続多孔質素材を含むシート部と、を備える。前記蓋部は、前記蓋部が折り曲げられた使用状態において前記表面側に向けて開口する開口形成部を有し、前記シート部は前記開口形成部を覆う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋部と、
前記蓋部の裏面に接着され、塗布材料が収容される容器部と、
前記蓋部の表面に接着され、連続多孔質素材を含むシート部と、を備え、
前記蓋部は、前記蓋部が折り曲げられた使用状態において前記表面側に向けて開口する開口形成部を有し、
前記シート部は前記開口形成部を覆う、
塗布容器。
【請求項2】
前記蓋部の表面に配置される接着層をさらに備え、
前記シート部は、前記接着層を介して前記蓋部の前記表面に接着される、
請求項1に記載の塗布容器。
【請求項3】
前記シート部は、前記開口形成部が設けられる位置において、前記蓋部の前記表面との間に隙間を設けて接着される、
請求項1に記載の塗布容器。
【請求項4】
前記連続多孔質素材は、熱可塑性樹脂と水溶性気泡成形材とを混合した予混合物を加熱成形した後、前記水溶性気泡成形材を除去することで前記熱可塑性樹脂を含む骨格形状の間に形成された連続気泡構造を有する、
請求項1に記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体が内部に収容され、塗布用のパットが一体となった塗布容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】再表2016/208166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の塗布容器は、液体が収容された液体容器と、液体容器を内蔵した筒状の本体と、本体の先端に設けられた取付板と、取付板に固着された塗布パットと、を備える塗布容器の構造を開示している。この塗布容器は、本体内部の液体容器が開裂されると、流出した液体が塗布パットに浸潤する。
【0005】
一方で、特許文献1の塗布容器は、本体が筒状であるとともに、塗布パットが本体に対して斜めに取り付けられている、このため、塗布容器を携帯または収納するために、一定の空間を確保する必要がある。
【0006】
本開示の課題は、塗布材料を均等に塗布することができる、携帯性のよい小型の塗布容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る塗布容器は、蓋部と、前記蓋部の裏面に接着され、塗布材料が収容される容器部と、前記蓋部の表面に接着され、連続多孔質素材を含むシート部と、を備える。前記蓋部は、前記蓋部が折り曲げられた使用状態において前記表面側に向けて開口する開口形成部を有し、前記シート部は前記開口形成部を覆う。
【0008】
この塗布容器によれば、使用状態において、容器部に収容された塗布材料を、開口形成部を介して蓋部の表面側に漏出すると速やかにシート部に浸潤させることができる。これにより、塗布容器は、均等かつ速やかに塗布材料を塗布することができる。
【0009】
さらに、この塗布容器によれば、蓋部を挟んで、容器部とシート部が接着される。これにより、塗布容器を小型化し、携帯性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、塗布材料を均等に塗布することができる、携帯性のよい小型の塗布容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態における塗布容器の使用方法を示す概略図。
図2】本開示の実施形態における塗布容器を示す斜視図。
図3】本開示の実施形態における塗布容器のA-A断面を示す断面図。
図4】本開示の実施形態における塗布容器を示す上面図。
図5】本開示の実施形態における連続多孔質素材の製造方法を示す模式図。
図6】本開示の実施形態における塗布容器の使用状態を示す概略図。
図7】本開示の実施例における塗布容器を示す斜視図。
図8】本開示の実施例における塗布容器のB-B断面を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照しながら説明する。本実施形態では、日焼け止めや化粧水あるいは消毒液などの液体を塗布可能な塗布容器1を例に説明する。
【0013】
図1および図2に示すように、塗布容器1は、後述するシート部8が下側となるようにユーザーUに片手で保持されて主にユーザーUの肌に塗布材料を塗布するために使用される。塗布材料としては、液体のものであれば制限されない。塗布材料は、ゲル状の液体であってもよい。塗布材料は、日焼け止め、乳液、化粧水、ファンデーション、サンオイル、香水、制汗液、防臭材、顔料、ボディーペイントなどの化粧材料、皮膚用薬品、発毛薬品、育毛薬品、脱毛薬品、消毒液などの医薬品又は医薬部外品、虫よけ液、洗浄液、撥水液、塗料などを例示できる。
【0014】
塗布容器1は、ユーザーUの親指、人差し指および中指で保持可能な大きさで形成される。本実施形態の塗布容器1は、数センチ四方の概ね直方体形状である。これに限らず、塗布容器1は、塗布する液体の容量に応じて種々様々な大きさに変更可能である。
【0015】
図2図3および図4に示すように、塗布容器1は、蓋部2と、容器部4と、接着層6と、シート部8と、を備える。
【0016】
図2および図3に示すように、蓋部2は、硬質樹脂の薄板である。蓋部2は、塗布容器1のユーザーUが片手で変形可能な厚さに形成される。本実施形態の蓋部2は、厚さが0.5mmから1.0mm程度の厚さで形成される。なお、本実施形態の蓋部2は、PET(Polyethyleneterephthalate;ポリエチレンテレフタレート)で形成される。これに限らず、蓋部2は、塗布容器1で塗布する液体や用途に応じて種々様々な材料を適用可能である。
【0017】
図3および図4に示すように、蓋部2は、表面21と、表面21と反対側の裏面22と、ハーフカットを含む折り曲げ線23と、開口形成部24と、を有する。
【0018】
表面21は、後述する接着層6が配置されるとともに、シート部8が接着される。
【0019】
裏面22は、後述する容器部4が接着される。
【0020】
折り曲げ線23は、蓋部2の中央部付近で短手方向(幅方向)に沿って、その全体にわたって延びる。折り曲げ線23は、表面21から裏面22に向けてハーフカットが施される。これにより、ユーザーUが蓋部2の短辺を把持した状態で、蓋部2に長手方向(長さ方向)に沿って所定以上の力を加えると、蓋部2は、折り曲げ線23を挟んでV字形に変形する。このとき、蓋部2は、折り曲げ線23のハーフカットを起点として、裏面22側に折れ曲がる。すなわち、蓋部2は、折り曲げ線23が山折りの稜線となるように、屈曲し変形する。
【0021】
開口形成部24は、折り曲げ線23上に少なくとも1つ設けられる。本実施形態の開口形成部24は、蓋部2の短手方向の中央付近に配置される。これに限らず、開口形成部24は、折り曲げ線23上に複数設けられてもよい。
【0022】
開口形成部24は、蓋部2の長手方向に沿った断面形状が中空の三角形となるように形成され、その頂点241は折り曲げ線23上に配置される。すなわち、本実施形態の開口形成部24は、頂点241が蓋部2の中央付近に配置される。
【0023】
開口形成部24は、蓋部2が折り曲げられた使用状態において、蓋部2の裏面22側から表面21側に向けて開口する。具体的には、使用状態において蓋部2がV字形に変形すると、開口形成部24は、折り曲げ線23を挟んで分割される。これにより、開口形成部24は、蓋部2の表面21側に向けて菱形に開口する。なお、開口形成部24は、塗布容器1の蓋部2の一部が弱い脆弱構造を有し、簡単に破れるようにしてあってもよい。
【0024】
なお、本実施形態の開口形成部24は、使用状態において吐出する塗布材料の流量に応じて、大きさ、形状および数を種々様々に変更可能である。
【0025】
容器部4は、塗布材料が収容される。容器部4は、概ね5ccから20cc程度の塗布材料を収容可能な大きさに形成される。なお、容器部4の容量は、3ccから30cc程度に形成されてもよい。容器部4の大きさは、収容する塗布材料の種類により、種々様々に変更可能である。
【0026】
容器部4は、可撓性を有する軟質樹脂材料の薄膜によって形成される。本実施形態の容器部4は、透明なポリエチレンによって形成される。これに限らず、容器部4の材料は種々様々な色または材料を選択可能である。
【0027】
容器部4は、蓋部2の裏面22側に向けて開口する袋状に形成される。容器部4は、開口縁が蓋部2の裏面22に隙間なく接着される。すなわち、塗布材料は、蓋部2の裏面22と容器部4で囲われた空間に収容される。
【0028】
容器部4は、2つの収容部41と、収容部41を連結する連結部42と、を有する。2つの収容部41は、上面視において、折り曲げ線23を挟むように並んで配置される。連結部42は、上面視において、折り曲げ線23と概ね重なる位置に配置される。連結部42は、収容部41よりも底浅となるように形成される。これにより、収容部41は、非使用状態において、ゆるやかに仕切られた2つの収容部41に塗布材料を収容することができる。
【0029】
なお、これに限らず、容器部4は内部が分割され、互いに独立した複数の収容部41を有していてもよい。この場合、複数の収容部41は、同型でもよいし非同型でもよく、また、同容量でもよいし異なる容量でもよい。さらに、それぞれの収容部41には、異なる塗布材料が収容されていてもよいし、同一の塗布材料が収容されてもよい。
【0030】
上述のように容器部4が分割される場合、開口形成部24は、一の収容部41に対して少なくとも1つ配置される。この場合、開口形成部24は、使用状態において、ハーフカットが施された折り曲げ線23を挟んで分割され、シート部8に向けて開口する。これに伴い、数種の塗布材料がそれぞれの収容部41からそれぞれの開口形成部24を介してシート部8に吐出される。なお、塗布材料は、シート部8に吐出され浸潤する過程で、シート部8の内部で均等に混合されてもよい。
【0031】
図3および図4に示すように、接着層6は、蓋部2の表面21に配置され、蓋部2と後述するシート部8とを接着する。接着層6は、表面21において、開口形成部24を除く箇所に配置される。これにより、接着層6は、使用状態において開口形成部24が表面21側に開口することを妨げない。さらに、接着層6は、表面21において、折り曲げ線23を挟んで、二箇所に設けられてもよい。
【0032】
なお、接着層6は、シート部8を蓋部2の表面21に接着できればよい。従って、接着層6は、予めシート状に形成された接着シートや、表面21に塗布するゲル状の接着材などを選択可能である。なお、接着層6は、両面テープでもよい。
【0033】
シート部8は、所定の厚みhを有して形成されるシート部材である。シート部8の厚みhとしては、1~20mm、3~15mm、5~10mmを例示できる。シート部8の厚みhは、後述するシート部8の材料や容器部4に収容される塗布材料の物性に応じて種々様々に変更可能である。
【0034】
シート部8は、蓋部2の表面21を覆う大きさに形成される。シート部8は、少なくとも開口形成部24を覆う大きさに形成されればよい。本実施形態のシート部8は、蓋部2の表面21の概ね全面を覆う大きさに形成される。さらに、シート部8は、後述する隙間sを設けるために、長手方向の長さが蓋部2よりもわずかに大きく形成されるのが好ましい。
【0035】
シート部8は、接着層6を介して蓋部2の表面21に接着される。シート部8は、表面21の開口形成部24が設けられる位置において、表面21との間に隙間sを設けて接着されるのが好ましい。本実施形態のシート部8は、折り曲げ線23上に隙間sを設けて接着される。すなわち、シート部8は、折り曲げ線23上で、表面21から隙間s分だけ浮かせた状態で表面21に接着される。シート部8は、使用状態において、蓋部2が折り曲げ線23を稜線としてV字形に折り曲げられると、蓋部2の変形に追従して弾性変形する。このため、シート部8は、使用状態において、開口形成部24に密着することができる。この結果、シート部8は、使用状態において、開口形成部24から吐出した塗布材料が塗布容器1の外部に漏出することを防止できる。
【0036】
シート部8は、合成樹脂で形成されるのが好ましい。本実施形態のシート部8は、ポリオレフィン系樹脂で形成される。これに限らずシート部8は、塗布材料の物性や塗布する対象物に応じて、後述する熱可塑性樹脂αや、PES(Poly Ether Sulfone;ポリエーテルサルフォン)、PP(polypropylene;ポリプロピレン)等、種々様々な樹脂材料を選択可能である。
【0037】
シート部8は、連続多孔質素材81を含む。連続多孔質素材81は、三次元連続網状骨格の気孔構造である、連続気泡構造82を有する。連続気泡構造82は、隣接する気孔同士が連通する。これにより、連続多孔質素材81は、その連続気泡構造82の空間内部に液体や気体を貯蔵し保持することができる。
【0038】
図5は、連続多孔質素材81の製造過程を模式的に示すために、連続多孔質素材81の一部を拡大した模式図である。図5(a)は、連続多孔質素材81の製造途中における内部構造を、図5(b)は、連続多孔質素材81の内部構造を模式的に示す。図5(b)に示すように、連続気泡構造82の一態様は、熱可塑性樹脂αを含む三次元連続網状骨格の間に形成される。熱可塑性樹脂αは、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよびポリプロピレンの群の中から、単独又は複数選択される。本実施形態の連続気泡構造82は、熱可塑性樹脂αにポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが選択され、このポリオレフィン系熱可塑性エラストマーによって形成された三次元連続網状骨格の間に形成される。
【0039】
具体的な連続気泡構造82の生成過程の一態様は以下の通りである。まず、熱可塑性樹脂αと水溶性気泡成形材料βとを加熱状態下で混練した予混合物質Aを所要形状に成形する。このとき、図5(a)に示すように、予混合物質Aは、水溶性気泡成形材料βの周囲を熱可塑性樹脂αが包囲した構造となる。これにより、水溶性気泡成形材料βの周囲に熱可塑性樹脂αが三次元連続網状骨格を形成することができる。
【0040】
その後、成形済みの予混合物質Aを水に浸漬して洗浄する。これにより、水溶性気泡成形材料βは、成形済みの予混合物質Aから、熱可塑性樹脂αを残して抽出・除去される。この結果、図5(b)に示すように、水溶性気泡成形材料βが除去された空間が、連続気泡構造82として、熱可塑性樹脂αで形成された三次元連続網状骨格の間に形成される。
【0041】
水溶性気泡成形材料βとしては、NaCl、KCl、CaCl、NHCl、NaNO、NaNOなどの水溶性無機化合物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ショ糖、可溶性でんぷん、ソルビトール、グリシン、有機酸又はその塩などの水溶性低分子有機化合物、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジオレエート、ポリエチレングリコールジアセテート等のポリエチレングリコール誘導体などの水溶性高分子化合物を例示でき、これらを単独又は複数選択すればよい。
【0042】
なお、連続気泡構造82の熱可塑性樹脂αの間に形成される気泡の大きさであるセル径は、塗布材料の物性や容量に応じて種々様々に変更可能である。本実施形態の連続気泡構造82は、そのセル径が20μmから100μmとなるように形成される。連続気泡構造82のセル径は、5~300μm、10~200μm、30~100μmを例示できる。
【0043】
連続気泡構造82のセル径は、シート部8の厚みhとともに、塗布材料の種類や物性、および、塗布容器1の用途に応じて選択される。すなわち、塗布容器1は、シート部8の厚みhと連続気泡構造82のセル径を変更することで、塗布材料の種類やその用途に応じて塗布材料の保持量を変更することができる。これにより、塗布容器1は、使用状態において、すみやかに多量の塗布材料を塗布する、あるいは、塗布材料を薄く伸ばしながら塗布するなどの様々な塗布状態を提供することができる。
【0044】
例えば、塗布材料として液状の日焼け止めを採用する場合は、塗布材料(日焼け止め)を薄く均等に伸ばしながら塗り広げたいといった要望がある。このとき、塗布容器1は、使用状態において、シート部8が塗布材料を十分に保持した状態でユーザーUの肌に接することができる。これにより、塗布容器1は、シート部8を介して、ユーザーUに適度な濡れ感を提供することができる。
【0045】
シート部8としては、合成繊維などの繊維を積層して形成した三次元連続網状骨格を有する連続多孔質素材を採用してもよい。具体的には、シート部8は、オレフィン系樹脂を含む繊維を積層することでシート状に形成してもよい。なお、繊維を積層したシート部8は、塗布材料に応じて、繊維の密度や繊維径を種々様々に変更してもよい。
【0046】
繊維としては、綿、絹、セルロースファイバーなどの天然由来繊維でも良いし、合成繊維でも良い。合成繊維としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などが例示できるが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどのオレフィン系繊維が好ましく、複数の材料を用いた芯鞘構造のものでもよい。
【0047】
また、シート部8は、織布でもよいし、不織布でもよい。
【0048】
シート部8は、単独の材料で構成されていてもよいが、同一の/または異なる材料で形成された複数の連続多孔質素材のシートを積層して形成してもよい。特に、異なる材料で形成された複数の連続多孔質素材のシートを積層したものが好ましい。
【0049】
シート部8の密度としては、0.03~0.5g/cm、0.01~0.4g/cm、0.15~0.35g/cmを例示できる。シート部8の気孔率としては、50~95%、60~85%、70~80%を例示できる。シート部8の引張強度(JIS K6400に準じる)としては、100~3000kPa、200~2000kPa、300~1000kPaを例示できる。シート部8の伸び(JIS K6400に準じる)としては、100~700%、150~600%、200~500%を例示できる。シート部8のアスカーC硬度(JIS K7312に準じる)としては、5~60、10~50、20~40を例示できる。
【0050】
次に、図1および図6を用いて、塗布容器1の使用方法について説明する。
【0051】
図1に示すように、ユーザーUは、塗布容器1を片手で持ち、シート部8が下側となるように保持する。そのまま、ユーザーUは、蓋部2の短辺を親指と人差し指および中指で挟んで、蓋部2を押圧する。図6(a)に示すように、塗布容器1は、蓋部2の両端から中央部に向けて力Pで押圧される。
【0052】
次に、図6(b)に示すように、蓋部2は、折り曲げ線23のハーフカットを起点として裏面22側に折れ曲がる。すなわち、蓋部2は、折り曲げ線23が山折りの稜線となるようにV字形に屈曲し変形する。また、容器部4は、蓋部2の変形に伴って、連結部42を挟んで折れ曲がる。これにより、収容部41に収容された塗布材料は、連結部42に向かって移動する。
【0053】
さらに蓋部2の変形が進むと、開口形成部24は、折り曲げ線23を挟んで分割され、蓋部2の表面21側に向けて開口する。これにより、点描を付して示した塗布材料は、容器部4の内部から開口形成部24を介してシート部8に吐出される。
【0054】
さらに、図6(c)に示すように、塗布材料は、シート部8の中央付近からその
周辺へとすみやかに浸潤する。塗布材料は、シート部8を形成する連続多孔質素材81の連続気泡構造82の内部に侵入し、連続気泡構造82を包囲する三次元連続網状骨格の間に保持される。塗布材料は、隣接する連続気泡構造82に次々と侵入し、シート部8の全体に満遍なく広がる。
【0055】
最後に、図6(d)に示すように、塗布材料は、シート部8の全体に、均一に浸潤し保持された状態となる。これにより、塗布容器1は、使用状態において、シート部8の全体に塗布材料を均一に保持した状態とすることができる。ユーザーUは、塗布材料が保持されたシート部8を、所望の箇所に塗り付ける。
【実施例0056】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0057】
発明者らは、容量の等しい3つの塗布容器101を作成した。図7および図8に示すように、塗布容器101の容器部104は、互いに独立した同型の2つの収容部141を有するセパレートタイプ容器である。なお、塗布容器101の容量は、容器部104に収容される塗布材料の全量である。各収容部141には一つ以上の開口形成部124が設けられる。
【0058】
実施例1から実施例3の塗布容器101の蓋部102は、長さ65mm、幅35mmの大きさで形成される。また、シート部108は、長さ50mm、幅30mmの大きさで形成される。シート部108の厚さ、連続多孔質素材181が有する連続気泡構造(図示せず)のセル径、その他の一般物性値は、それぞれ以下の表の通りとした。
【0059】
さらに発明者らは、表1に示すように、これら3つの塗布容器101のシート部108を、異なる連続多孔質素材181で形成した。さらに、発明者らは、これら3つの塗布容器101に塗布材料としてイソプロピルアルコールを充填し、それらの塗布感を比較する官能評価試験を行った。
【0060】
実施例1から実施例3の塗布容器101の構成は、以下の通りである。
【0061】
(1)実施例1
容器部;セパレートタイプ容器(容量10cc)
接着層;日東電工製両面テープ
連続多孔質素材;MAPS(登録商標) ST20-200AQL(イノアックコーポレーション社製)
塗布薬剤;イソプロピルアルコール
(2)実施例2
容器部;セパレートタイプ容器(容量10cc)
接着層;日東電工製両面テープ
連続多孔質素材;MAPS(登録商標) K-001(イノアックコーポレーション社製)
塗布薬剤;イソプロピルアルコール
(3)実施例3
容器部;セパレートタイプ容器(容量10cc)
接着層;日東電工製両面テープ
連続多孔質素材;MAPS(登録商標) K-001(イノアックコーポレーション社製)+バフター(登録商標,イノアックコーポレーション社製)
塗布薬剤;イソプロピルアルコール
【0062】
実施例1および実施例2のシート部108に含まれる連続多孔質素材181は、MAPS(登録商標)である。MAPS(登録商標)は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの三次元連続網状骨格の間に、連続気泡構造が形成された連続多孔質素材である。実施例1および実施例2のシート部108に含まれるMAPSの一般物性は、表1に示す通りである。
【0063】
一方、実施例3のシート部108に含まれる連続多孔質素材181は、MAPS(登録商標)およびバフター(登録商標)を積層したものである。実施例3のシート部108は、シート部108の厚み方向に沿って、バフター(登録商標)とMAPS(登録商標)を積層させた2層構造である。実施例3のシート部108は、蓋部102の表面側にMAPS(登録商標)が積層され、そのMAPS(登録商標)の上にバフター(登録商標)が積層されるものである。
【0064】
実施例3におけるMAPS(登録商標)は、実施例1および2と同様に、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの三次元連続網状骨格の間に、連続気泡構造が形成された連続多孔質素材である。一方、バフター(登録商標)は、繊維状に形成したオレフィン系樹脂の集合体であり、これらの繊維の間に連続気泡構造が形成される。
【0065】
実施例の3つの塗布容器1について実際に使用し、使用状態における塗布感を官能評価した。その結果、表1のとおりとなった。
【0066】
【表1】
【0067】
塗布感は、シート部108が適度に濡れ塗布薬剤が均一に塗布されているものを◎(良好)と評価した。その結果、実施例1および実施例2は、シート部108に保持できる塗布材料の量が実施例3に比べて少なく、〇(普通)と評価された。一方、実施例3は、適度な濡れ感があり◎と評価された。
【0068】
以上説明した通り、本開示によれば、塗布材料を均等に塗布することができる、携帯性のよい小型の塗布容器を提供できる。
【0069】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
上記実施形態では、人体の皮膚に塗布する日焼け止めや化粧水あるいは消毒液などの液体を塗布可能な塗布容器1を例に説明したが、本開示はこれに限定されない。
【0071】
すなわち、塗布容器1は、塗布材料として人体の皮膚に限らず、人体以外に塗布する液体を収容することができる。例えば、塗布容器1は、塗布材料として接着剤を収容した携帯用接着剤塗布器具であってもよい。この場合、接着剤は、2種類の液を使用時に混合して硬化させる混合タイプの接着剤であってもよいし、単一の接着剤を使用時に空気と反応させて硬化させるものであってもよい。
【0072】
さらに、塗布容器1は、塗布材料として消毒液を収容した携帯用使い捨て消毒器具であってもよい。この場合、塗布容器1は、便座の座面に消毒液を塗布するために用いてもよい。また、塗布容器1は、塗布材料として塗料を収容した携帯用使い捨て塗料であってもよい。この場合、塗布容器1は、車の塗装が剥がれた箇所を補修するために用いてもよい。
【0073】
このほか、塗布容器1は、塗布材料として虫よけ剤を収容した、携帯用虫よけ剤塗布器具であってもよい。他には、塗布容器1は、塗布材料としてサンオイルを収容した携帯用サンオイル塗布器具、香水を収容した携帯用香水塗布器具、防臭材または消臭液を収容した携帯用防臭(消臭)材塗布器具、撥水コート剤を収容した携帯用撥水コート塗布器具、ボディソープを収容した携帯用洗浄液塗布器具および塗料を収容した携帯用簡易塗装器具としても使用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1(101) :塗布容器
2(102) :蓋部
21(121) :表面
22 :裏面
24(124) :開口形成部
4(104) :容器部
6 :接着層
8(108) :シート部
81(181) :連続多孔質素材
82(182) :連続気泡構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8