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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041319
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】紙葉処理装置、及び紙葉処理方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/12 20190101AFI20240319BHJP
   G07D 11/26 20190101ALI20240319BHJP
   G07G 1/12 20060101ALI20240319BHJP
   G07G 1/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G07D11/12
G07D11/26
G07G1/12 331A
G07G1/00 331A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146062
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】赤松 徹
(72)【発明者】
【氏名】柳田 大輔
【テーマコード(参考)】
3E141
3E142
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA06
3E141CA06
3E141DA05
3E141FC03
3E141FC15
3E141FC16
3E141FL01
3E142GA24
3E142KA01
3E142KA03
(57)【要約】
【課題】収納部を紙葉処理装置に着脱可能に設ける構成において、紙葉処理装置から取外した収納部を他の紙葉処理装置に取付けてしまう不都合を抑制することを目的とする。
【解決手段】紙葉を受入可能な紙葉処理装置であって、受入れた紙葉を収納可能であるとともに、収納した紙葉を排出可能な収納部と、収納部を着脱可能に備える本体部と、を具備し、本体部は、当該本体部に対応する収納部を識別可能な識別情報、および、当該収納部に収納されている紙葉の枚数を特定できる収納情報を記憶する記憶部を具備する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉を受入れ可能な紙葉処理装置であって、
受入れた紙葉を収納可能であるとともに、収納した紙葉を排出可能な収納部と、
前記収納部を着脱可能に備える本体部と、を具備し、
前記本体部は、当該本体部に対応する前記収納部を識別可能な識別情報、および、当該収納部に収納されている紙葉の枚数を特定できる収納情報を記憶する記憶部を具備する
紙葉処理装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記収納部に収納する紙葉の上限枚数を記憶し、
前記収納部における紙葉が前記上限枚数に達している期間において、受入れられた紙葉を収納する回収部と、
前記上限枚数を変更可能な変更部と、を具備する
請求項1に記載の紙葉処理装置。
【請求項3】
前記本体部は、前記回収部を着脱可能に備え、
前記記憶部は、前記回収部に収納した紙葉の枚数を特定できる回収情報を記憶し、
予め定められた操作で管理モードへ移行する移行部と、
前記管理モードにおいて、前記収納情報および前記回収情報のうち前記回収情報を初期化可能な初期化部と、を具備する
請求項2に記載の紙葉処理装置。
【請求項4】
紙葉を受入れ可能であり、受入れた紙葉を収納可能であるとともに、収納した紙葉を排出能な収納部と、前記収納部を着脱可能に備える本体部と、を具備する紙葉処理装置による紙葉処理方法であって、
前記収納部に収納されている紙幣の枚数を特定できる収納情報を記憶するステップと、
予め定められた契機で、前記本体部に装着された前記収納部の適否を判定するステップと、を含む紙葉処理方法。
【請求項5】
釣銭として用いる紙幣を収納および排出可能な収納部と、釣銭として用いない紙幣を収納する回収部とを着脱可能に具備する紙葉処理装置を用いた紙葉処理方法であって、
前記収納部の装着時に当該収納部の適否を判定するステップと、
前記収納部の紙幣が上限枚数に達していない期間において、釣銭として用いる紙幣が新たに受入れられると、当該紙幣を前記収納部に装填するステップと、
前記収納部の紙幣が上限枚数に達している稼働モードの期間において、釣銭として用いる紙幣が新たに受入れられると、当該紙幣を回収部へ収納するステップと、
前記回収部の取外し時に、当該回収部に収納した紙幣の枚数を示す回収情報を初期化するステップと、
前記収納部が取外されたか否かを監視するステップと
を含む紙葉処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙葉処理装置、及び紙葉処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙葉を収納するとともに、収納した紙葉を排出可能な紙葉処理装置が知られている。例えば、特許文献1には、店舗に設置されたPOS(Point Of Sales)制御装置と連携する釣銭機(紙葉処理装置の一例)が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-210104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
店舗において、紙幣の盗難を防止するため、閉店時に従業員が釣銭機から紙幣を取出して金庫に保管する場合がある。以上の場合、釣銭機から取出した紙幣そのものを集金袋など移し替える作業(取り出し作業、現金管理作業)が必要になる。しかし、例えば店舗に多くの釣銭機が設けられる場合、当該作業に要する時間が過大になる不都合が生じ得る。そこで、当該不都合を抑制するため、紙幣を纏めて収納する収納部を釣銭機に着脱可能に設ける構成が採用され得る。以上の構成によれば、紙幣を収納した状態で収納部を釣銭機から取外して金庫に保管することにより、釣銭機から取出した紙幣を集金袋に移し替える作業が省略できる。
【0005】
しかし、収納部を釣銭機に着脱可能に設ける構成では、店舗に釣銭機が複数個設けられる場合、釣銭機から取外した収納部を他の釣銭機に取付けてしまうという新たな課題が生じる。以上の事情を考慮して、本発明は、紙葉処理装置から取外した収納部を他の紙葉処理装置に取付けてしまう不都合を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の紙葉処理装置は、紙葉を受入れ可能な紙葉処理装置であって、受入れた紙葉を収納可能であるとともに、収納した紙葉を排出可能な収納部と、収納部を着脱可能に備える本体部と、を具備し、本体部は、当該本体部に対応する収納部を識別可能な識別情報、および、当該収納部に収納されている紙葉の枚数を特定できる収納情報を記憶する記憶部を具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、収納部を紙葉処理装置に着脱可能に設ける構成において、集金袋など移し替える作業の不都合や紙葉処理装置から取外した収納部を他の紙葉処理装置に取付けてしまう不都合、を抑制することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】紙幣処理装置の外観斜視図である。
図2】紙幣処理装置の各構成の詳細を説明するための図である。
図3】紙幣の処理方法の具体例を説明するための図である。
図4】紙幣処理装置のハードウェア構成図である。
図5】記憶部が記憶する各情報の具体例を説明するための図である。
図6】紙幣処理装置の機能ブロック図である。
図7】紙幣の処理方法の他の具体例を説明するための図である。
図8】表示部が表示する各画像の具体例の模擬図である。
図9】表示部が表示する各画像の他の具体例の模擬図である。
図10】紙幣処理装置における各処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、紙葉処理装置の一例である釣銭機1の外観斜視図である。釣銭機1は、店舗に設置されたPOS制御装置2と通信可能に構成される。具体的には、客が購入する商品がPOS制御装置2に登録される。全ての商品が登録されると、当該商品の値段の合計金額(以下「購入金額」)がPOS制御装置2から釣銭機1へ出力される。購入金額が入力されると、釣銭機1は、客の紙幣および硬貨を受付ける。釣銭機1は、客から受付けた合計金額(以下「受付金額」)が購入金額に達すると、その旨をPOS制御装置2へ送信する。
【0010】
図1に示す通り、釣銭機1は、紙幣処理ユニット100と硬貨処理ユニット200と含んで構成される。硬貨処理ユニット200には、図1に示す通り、硬貨投入口201および硬貨排出口202が設けられる。硬貨投入口201には、例えば、客の硬貨が投入される。また、硬貨排出口202は、硬貨を釣銭として排出可能である。
【0011】
紙幣処理ユニット100には、図1に示す通り、紙幣入出口101が設けられる。紙幣入出口101は、客の紙幣を取込可能であるとともに、釣銭としての紙幣を排出可能である。また、紙幣処理ユニット100は、筐体102を含んで構成される。筐体102の内部には後述の収納ユニット104が収納される(図2(a)参照)。
【0012】
紙幣処理ユニット100の紙幣入出口101から取込まれた紙幣は、筐体102内部の搬送路108(図2(b)参照)を介して収納ユニット104に収納される。また、紙幣処理ユニット100は、収納ユニット104に収納した紙幣を釣銭として紙幣入出口101から排出可能である。詳細には後述するが、以上の収納ユニット104は、紙幣処理ユニット100(本体ユニット103)に対して取外し可能に構成される(図2(c)参照)。
【0013】
図1に示す通り、釣銭機1には、タッチパネルPとモード切替スイッチSとが設けられる。タッチパネルPには、例えば、釣銭機1に収納された紙幣の枚数が金種毎に表示される。モード切替スイッチSは、釣銭機1のモードを切替える場合に操作される。詳細には後述するが、釣銭機1は、稼働モード、管理モードおよびメンテナンスモードへ移行する。稼働モードは、客からの紙幣および硬貨を受付け、釣銭を払出可能なモードである。管理モードは、釣銭機1に収納した紙幣を管理可能にするモードである。メンテナンスモードは、釣銭機1から収納ユニット104を取外し可能なモードである。
【0014】
以上のモード切替スイッチSは、鍵を挿入可能な鍵穴を有したシリンダ錠で構成される。例えば、モード切替スイッチSに挿入した鍵を第1の位置に回転すると、釣銭機1が稼働モードへ移行する。同様に、第2の位置に鍵を回転すると釣銭機1が管理モードへ移行し、第3の位置に回転すると釣銭機1がメンテナンスモードへ移行する。以上の構成では、モード切替スイッチSの鍵を適切に管理することで、釣銭機1のモードが不正に変更される不都合が抑制される。ただし、釣銭機1のモードを切替えるための構成は以上の例に限定されない。例えば、予め設定されたパスワードが入力されると、釣銭機1のモードが変更できる構成としてもよい。
【0015】
図2(a)は、釣銭機1のうち紙幣処理ユニット100(筐体102)の内部を説明するための図である。図2(a)は、図1における紙幣処理ユニット100のA-A切断面である。図2(a)に示す通り、筐体102には、本体ユニット103、及び本体ユニットに着脱自在に装着される収納ユニット104(x、y)、並びに回収カセット107が装備される。上述した通り、収納ユニット104は、釣銭として排出される紙幣を収納する。また、収納ユニット104は、収納ユニット104xおよび収納ユニット104yを含む。詳細には後述するが、収納ユニット104xと収納ユニット104yとでは、収納する紙幣の金種(A、B、C、D)が相違する。
【0016】
回収カセット107は、紙幣入出口101から取込んだ紙幣のうち、釣銭として用いられない金種(E、F)の紙幣を収納する。すなわち、回収カセット107には、収納ユニット104に収納されない金種の紙幣が収納される。釣銭として用いられない金種の紙幣としては、例えば、高額紙幣が想定される。
【0017】
詳細には後述するが、本実施形態では、収納ユニット104に収納する紙幣の枚数には、当該紙幣の金種毎に上限枚数が設定される。仮に、本来は収納ユニット104に収納される金種の紙幣が受付られた場合であって、当該収納ユニット104における当該金種の紙幣が上限枚数に達している場合を想定する。以上の場合、当該紙幣は収納ユニット104ではなく回収カセット1077に収納される(オーバーフローする)。
【0018】
図1に示す通り、収納ユニット104および回収カセット107は、本体ユニット103に設けられる。詳細には図2(c)を用いて説明するが、収納ユニット104は、本体ユニット103内に着脱可能に配置される。収納ユニット104は、本体ユニット103から取外した状態で、持運び可能に構成される。また、回収カセット107は、本体ユニット103内に着脱可能に配置される。回収カセット107は、本体ユニット103から取外した状態で、持運び可能に構成される。
【0019】
筐体102の上部開口には着脱自在な蓋部102aが設けられる。また、本体ユニット103には施錠部L1が設けられる。筐体102の蓋部102aを開放し、施錠部L1に鍵を挿入して開錠することで、本体ユニット103から収納ユニット104を取外し可能になる。また、回収カセット107には施錠部L2が設けられる。筐体102の蓋部102aを開放し、施錠部L2に鍵を挿入して開錠することで、本体ユニット103から回収カセット107を取外し可能になる。本体ユニット103には紙幣入出口101が設けられる。紙幣入出口101から取込まれた紙幣は、収納ユニット104または回収カセット107に収納される。
【0020】
図2(b)は、紙幣処理ユニット100の内部における紙幣の搬送路を説明するための図である。なお、図2(b)では、筐体102を省略して示す。図2(b)に示す通り、本実施形態の収納ユニット104は、各ドラム106を具備する。紙幣入出口101に取込まれた紙幣は、当該紙幣の金種に応じたドラム106(収納ユニット104)へ搬送され、当該ドラム106に巻き取られる(収納される)。ただし、収納ユニット104は以上の具体例に限定されず適宜に変更してもよい。
【0021】
本実施形態の紙幣処理ユニット100は、金種A、金種B、金種C、金種D、金種Eおよび金種Fを含む各金種の紙幣を受入可能である。図2(b)に示す通り、収納ユニット104のうち収納ユニット104xは、ドラム106aおよびドラム106bを具備する。また、収納ユニット104yは、ドラム106cおよびドラム106dを具備する。紙幣処理ユニット100に受入れられた各紙幣のうち釣銭として用いられる金種(A~D)の紙幣は、当該紙幣の金種に応じたドラム(a~d)に収納される。
【0022】
具体的には、釣銭として用いられる紙幣のうち金種Aの紙幣はドラム106aに収納され、金種Bの紙幣はドラム106bに収納される。すなわち、金種Aの紙幣および金種Bの紙幣は、収納ユニット104xに収納される。同様に、金種Cの紙幣はドラム106cに収納され、金種Dの紙幣はドラム106dに収納される。すなわち、金種Cの紙幣および金種Dの紙幣は、収納ユニット104yに収納される。
【0023】
一方、紙幣処理ユニット100に受入れられた各紙幣のうち、釣銭として用いられない金種Eの紙幣および金種Fの紙幣は、回収カセット107に収納される。ただし、本実施形態では、上限枚数がドラム106(金種)毎に設定される。ドラム106が収納している紙幣が上限枚数に達している場合、本来は当該ドラム106に収納される金種の紙幣であっても、回収カセット107に収納される。
【0024】
図2(b)に示す通り、本体ユニット103には紙幣が搬送される搬送路108が設けられる。本体ユニット103は、紙幣入出口101から取込まれた紙幣の金種を識別するための識別ユニットを具備し、識別した金種に応じて当該紙幣が搬送される経路を変更する。なお、紙幣の金種を識別するための技術、および、紙幣が搬送される経路を変更するための技術は、例えば、特許第6505298号公報に記載の技術が採用され得る。
【0025】
具体的には、紙幣入出口101から取込まれた紙幣の金種が金種Aであると識別されると、紙幣入出口101から収納ユニット104xのドラム106aへ紙幣が搬送される経路が形成される。ただし、ドラム106aの紙幣が上限枚数に達している場合、紙幣入出口101から金種Aの紙幣が取込まれると、紙幣入出口101から回収カセット107へ紙幣が搬送される経路が形成される。金種Bの紙幣、金種Cの紙幣または金種Dの紙幣が取込まれた場合も同様である。
【0026】
また、紙幣入出口101から金種Eの紙幣が取込まれると、紙幣入出口101から回収カセット107へ紙幣が搬送される経路に変更される。紙幣入出口101から金種Fが取込まれた場合も同様である。紙幣入出口101から金種Aの紙幣を排出する場合、ドラム106aから紙幣入出口101へ紙幣が搬送される経路が形成される。金種Bの紙幣、金種Cの紙幣または金種Dの紙幣が排出される場合も同様である。なお、本実施形態では、回収カセット107に一旦収納された紙幣は、紙幣入出口101から排出できない構成としたが、排出可能な構成としてもよい。
【0027】
図2(c)は、本体ユニット103から取外された収納ユニット104(x、y)および回収カセット107を説明するための図である。図2(c)に示す通り、収納ユニット104(x、y)のうち収納ユニット104xにはコネクタ105xが設けられ、収納ユニット104yにはコネクタ105yが設けられる。また、本体ユニット103にはコネクタ111xおよび111yが設けられる。収納ユニット104xが本体ユニット103に取付けられると、コネクタ105xとコネクタ111xとが接続される。また、収納ユニット104yが本体ユニット103に取付けられると、コネクタ105yとコネクタ111yとが接続される。
【0028】
詳細には後述するが、収納ユニット104(x、y)には、個別メモリ110(x、y)が設けられる。以上の個別メモリ110には、当該個別メモリ110が設けられる収納ユニット104を識別するための識別情報IDが記憶される。また、本体ユニット103は制御ユニット109を具備する。収納ユニット104のコネクタ105と本体ユニット103のコネクタ111とが接続されると、当該収納ユニット104の個別メモリ110が記憶する識別情報IDが本体ユニット103の制御ユニット109で読取可能になる。制御ユニット109は、識別情報IDに基づいて、適切な収納ユニット104が取付けられたか否かを判定する。
【0029】
釣銭機1は、本体ユニット103のコネクタ111が収納ユニット104のコネクタ105に接続されているか否かを監視し、収納ユニット104が本体ユニット103に取付けられているか否かを判断する。本実施形態では、回収カセット107が取付けられた時刻および取外された時刻が履歴情報として釣銭機1(メインメモリ115)に記憶される。また、回収カセット107が取付けられているか否かはセンサにより検知され、回収カセット107が取付けられた時刻および取外された時刻が履歴情報として釣銭機1に記憶される。
【0030】
図3(a)および図3(b)は、紙幣の処理方法の具体例である。上述した通り、釣銭機1は、稼働モード、管理モードおよびオペレーションモードへ移行する。図3(a)は、稼働モードにおける紙幣の処理方法の具体例である。例えば、店舗の営業期間において、釣銭機1を稼働モードへ移行させる。稼働モードでは、上述した通り、客からの紙幣を受付けるとともに、釣銭としての紙幣を排出する。
【0031】
具体的には、釣銭として使用する紙幣(金種A~D)が受付けられると、当該紙幣は収納ユニット104(ドラム106)へ収納される(図3(a)のSa1)。また、収納ユニット104(ドラム106)の紙幣が釣銭として排出される(図3(a)のSa2)。釣銭として使用しない紙幣(金種E、F)が受付けられると、当該紙幣は回収カセット107へ収納される(図3(a)のSa3)。釣銭として使用する金種が受付けられた場合であっても、当該金種が収納ユニット104に上限枚数収納されている場合、当該紙幣は回収カセット107へ収納される(図3(a)のSa4)。上述した通り回収カセット107に収納された紙幣は排出(還流)されない。
【0032】
図3(b)は、メンテナンスモードにおける紙幣の処理方法の具体例を説明するための図である。メンテナンスモードでは、上述した通り、回収カセット107を取外し可能である。具体的には、釣銭機1の制御ユニット109は、回収カセット107が取外されたか否かを監視する。釣銭機1は、メンテナンスモード以外において回収カセット107が取外されるとエラー状態へ移行する。以上のエラー状態へ移行した時刻は履歴情報としてメインメモリ115に記憶される。なお、収納ユニット104についても同様に、メンテナンスモード以外において取外されるとエラー状態へ移行し、エラー状態へ移行した時刻が履歴情報としてメインメモリ115に記憶される。
【0033】
一方、メンテナンスモードにおいて回収カセット107が取外されても釣銭機1はエラー状態へ移行しない。回収カセット107を本体ユニット103から取外した状態で、当該回収カセット107の紙幣が回収可能になる。例えば、店舗の従業員は、閉店後において釣銭機1をメンテナンスモードへ移行させる。以上の場合、閉店後において、回収カセット107の紙幣を取出し、金庫Sへ保管することができる(図3(b)のSb1)。以上の金庫Sは、例えば、店舗のバックヤードに設けられる。
【0034】
なお、回収カセット107の紙幣は、店舗の営業期間であっても盗難される可能性がある。したがって、店舗の営業期間の途中で、回収カセット107の紙幣を取出して金庫Sに保管するのが好適な場合がある。以上の場合、店舗の従業員は、営業期間の途中で釣銭機1をメンテナンスモードへ移行させ、回収カセット107の紙幣を回収する(途中回収する)。詳細には後述するが、釣銭機1は回収カセット107の紙幣の枚数を金種毎に回収情報Nとして記憶する(図5参照)。回収カセット107の紙幣を回収する前に、釣銭機1を管理モードへ移行させ、回収情報Nを初期化する必要がある。
【0035】
上述した通り、収納ユニット104は、紙幣を収納した状態で持運び可能である。以上の本実施形態では、収納ユニット104から紙幣を取出すことなく(残置して)、本体ユニット103から取外した収納ユニット104をそのまま金庫Sに収納できる。したがって、例えば、閉店時に紙幣を収納ユニット104から全て取出す必要がある構成と比較して、店舗における従業員の作業量が削減できるという利点がある。また、例えば、閉店時において釣銭機1に紙幣が残置される構成と比較して、釣銭として使用される紙幣が盗難されるリスクが抑制されるという利点がある。
【0036】
ただし、閉店時に収納ユニット104を釣銭機1から取外して金庫Sに保管する構成では、開店時に金庫Sから収納ユニット104を取出して釣銭機1に取付ける必要がある。また、店舗(例えば、大型の店舗)には複数個の釣銭機1が設けられる場合がある。以上の場合、複数個の釣銭機1から取外された複数個の収納ユニット104が金庫Sに保管される。
【0037】
店舗に複数個の釣銭機1を設けた場合、収納ユニット104に収納された紙幣の枚数は、釣銭機1毎に相違するのが通常である。また、収納ユニット104に収納した紙幣の枚数は、釣銭機1の本体ユニット103側において収納情報nとして記憶される(図5参照)。以上の構成では、仮に、本来取付けるべき釣銭機1とは別の釣銭機1に収納ユニット104が取付けられた場合、当該釣銭機1が記憶する収納情報nと、収納ユニット104が実際に収納する紙幣の枚数とが一致しない不都合が生じ得る。本実施形態では、識別情報IDを収納ユニット104に記憶することで、以上の不都合が抑制される。以上の構成については、詳細に後述する。
【0038】
図4は、釣銭機1のハードウェア構成図である。図4に示す通り、釣銭機1は、上述した収納ユニット104(x、y)および回収カセット107を含む。また、釣銭機1は、コネクタ111(x、y)および制御ユニット109を具備する。以上のコネクタ111および制御ユニット109は、釣銭機1の本体ユニット103側に設けられる。
【0039】
制御ユニット109は、CPU(Central Processing Unit)112、ROM(Read Only Memory)113、RAM(Random Access Memory)114およびメインメモリ115を含んで構成される。ROM113は、各種の情報を不揮発的に記憶する。例えば、ROM113は、プログラムを含む各種の情報を記憶する。CPU112は、ROM113が記憶するプログラムを実行する。RAM114は、各種の情報を一時的に記憶可能である。例えば、RAM114は、CPU112がプログラムを実行した場合に生成された各種の情報を記憶する。
【0040】
例えば、CPU112がプログラムを実行することで、紙幣入出口101から紙幣を取込む動作が実現する。紙幣入出口101から取込まれた紙幣は、各種のセンサにより検知され、検知信号が制御ユニット109へ入力される。制御ユニット109は、当該検知信号に基づいて、紙幣の真贋および金種を判定する。制御ユニット109は、紙幣の判定結果に応じたモータおよびソレノイドを駆動するための駆動信号を生成する。以上の構成によれば、釣銭機1の収納ユニット104(ドラム106a~d)または回収カセット107の何れかに紙幣が搬送され収納される。なお、適切な判定結果が得られない場合、リジェクト動作が実行され、紙幣が紙幣入出口101から排出される。
【0041】
メインメモリ115としては、例えばフラッシュメモリが好適に採用される。なお、メインメモリ304として、フラッシュメモリを例示したが、他の記憶手段をメインメモリ304として採用してもよい。例えば、EEPROMをメインメモリ304として採用してもよい。以上のメインメモリ115には、各種の情報が記憶される。例えば、メインメモリ115は、収納ユニット104に収納される各金種の枚数を示す収納情報n(a~d)を記憶する(後述の図5参照)。また、メインメモリ115は、収納ユニット104を識別するための識別情報IDを記憶する。以上の識別情報IDは、収納ユニット104毎に付与される。
【0042】
例えば、別々の釣銭機1から取外された各収納ユニット104xどうしでは、識別情報ID(IDx)が相違する。同様に、別々の釣銭機1から取外された各収納ユニット104yどうしでは、識別情報ID(IDy)が相違する。また、共通の釣銭機1であっても、収納ユニット104xと収納ユニット104yとでは識別情報IDが相違する。識別情報IDは、釣銭機1に取付けられた収納ユニット104が適切であるか否かを判定する際に用いられる。
【0043】
図4に示す通り、収納ユニット104(x、y)は、ドラム106(a、b、c、d)、コネクタ105(x、y)および個別メモリ110(x、y)を含む。具体的には、収納ユニット104のうち収納ユニット104xには、上述した通り、金種Aが収納されるドラム106aおよび金種Bが収納されるドラム106bが設けられる。収納ユニット104のうち収納ユニット104yには、上述した通り、金種Cが収納されるドラム106cおよび金種Dが収納されるドラム106dが設けられる。
【0044】
コネクタ105は、収納ユニット104のうち収納ユニット104xに設けられるコネクタ105xおよび収納ユニット104yに設けられるコネクタ105yを含む。上述した通り、収納ユニット104xが釣銭機1(本体ユニット103)に取付けられると、収納ユニット104xのコネクタ105xが本体ユニット103のコネクタ111xに接続する。同様に、収納ユニット104yが釣銭機1に取付けられると、収納ユニット104yのコネクタ105yが本体ユニット103のコネクタ111yに接続する。
【0045】
個別メモリ110は、収納ユニット104のうち収納ユニット104xに設けられる個別メモリ110xおよび収納ユニット104yに設けられる個別メモリ110yを含む。個別メモリ110(x、y)の各々には、当該個別メモリ110が設けられる収納ユニット104を識別するための識別情報IDを含む情報が不揮発的に記憶される。以上の個別メモリ110の情報は、当該個別メモリ110が設けられる収納ユニット104のコネクタ105が本体ユニット103のコネクタ111に接続された状態で、制御ユニット109により読出し可能である。
【0046】
図5は、メインメモリ115及び個別メモリ110(x、y)に記憶される各情報の具体例を説明するための図である。図5に示す通り、メインメモリ115(本体ユニット103側)には、第1ユニット情報Dx、第2ユニット情報Dyおよび回収情報Nを含む各種の情報が記憶される。メインメモリ115の各情報は、制御ユニット109により更新される。
【0047】
第1ユニット情報Dxは、収納ユニット104(x、y)のうち収納ユニット104xに関する各種の情報である。具体的には、第1ユニット情報Dxは、収納ユニット104xの識別情報IDx、ドラム106aに収納される紙幣(金種A)の枚数を示す収納情報na、ドラム106bに収納される紙幣(金種B)の枚数を示す収納情報nb、ドラム106aに収納する紙幣の上限枚数La、ドラム106bに収納する紙幣の上限枚数Lbを含む。図5の具体例では、ドラム106aに金種Aの紙幣が19枚収納され、ドラム106bに金種Bの紙幣が30枚収納された場合を想定する。
【0048】
第2ユニット情報Dyは、収納ユニット104(x、y)のうち収納ユニット104yに関する各種の情報である。具体的には、第2ユニット情報Dyは、収納ユニット104yの識別情報IDy、ドラム106cに収納される紙幣(金種C)の枚数を示す収納情報nc、ドラム106dに収納される紙幣(金種D)の枚数を示す収納情報nd、ドラム106cに収納する紙幣の上限枚数Lc、ドラム106dに収納する紙幣の上限枚数Ldを含む。図5の具体例では、ドラム106cに金種Cの紙幣が1枚収納され、ドラム106dに金種Dの紙幣が17枚収納された場合を想定する。
【0049】
釣銭機1のドラム106(a~d)に紙幣が収納されると、当該ドラム106に対応する収納情報nが加算される。例えば、1枚の紙幣(金種A)がドラム106aに収納されると、各収納情報nのうち収納情報naが数値「1」加算される。また、釣銭機1のドラム106から釣銭として紙幣が排出されると、当該ドラム106に対応する収納情報nが減算される。例えば、1枚の紙幣(金種A)がドラム106aから排出されると、各収納情報nのうち収納情報naが数値「1」減算される。
【0050】
各ドラム106(a~d)に収納する紙幣の上限枚数L(a~d)は、管理モードにおいて変更できる。すなわち、本実施形態では、釣銭機1に釣銭として翌日に残置する紙幣の上限枚数を金種毎に変更できる。例えば、店舗の規模に応じて、釣銭として必要な紙幣の枚数は相違し得る。また、盗難のリスクを低減するため、必要以上の釣銭を釣銭機1に残置しない方がよいという事情がある。各ドラム106の上限枚数Lを適宜に調整することで、必要な釣銭を残置しつつ、盗難のリスクを低減できるという利点がある。
【0051】
メインメモリ115が記憶する各情報のうち回収情報N(a~f)は、回収カセット107に収納される紙幣の枚数を示す。具体的には、回収情報Nは、回収カセット107に収納した金種Aの紙幣の枚数を示す回収情報Na、金種Bの紙幣の枚数を示す回収情報Nb、金種Cの紙幣の枚数を示す回収情報Nc、金種Dの紙幣の枚数を示す回収情報Nd、金種Eの紙幣の枚数を示す回収情報Ne、および、金種Fの紙幣の枚数を示す回収情報Nfを含む。
【0052】
例えば、釣銭として用いない金種Eの紙幣が受入れられると、当該紙幣が回収カセット107に収納され、回収情報Nのうち回収情報Neに数値「1」が加算される。また、釣銭として用いる金種(A~D)の紙幣が受入れられた場合であって、当該金種の収納情報n(a~d)が上限枚数L(a~d)に達している場合、当該紙幣は回収カセット107に収納される。以上の場合、釣銭として用いられる金種(A~D)の紙幣の枚数を示す回収情報N(a~d)が加算される。なお、上述した通り、回収カセット107の紙幣は釣銭として排出されない。したがって、原則、回収情報Nは減算されない。ただし、後述する通り、回収カセット107の紙幣が回収される場合、回収情報N(a~f)が数値「0」に初期化される。
【0053】
図5に示す通り、収納ユニット104xの個別メモリ110xは、当該収納ユニット104xを識別するための識別情報IDxを記憶する。上述した通り、制御ユニット109は、本体ユニット103のコネクタ111xに収納ユニット104(コネクタ105)が接続されると、当該収納ユニット104の個別メモリ110に記憶される識別情報IDが適切であるか判定する。
【0054】
具体的には、コネクタ111xに収納ユニット104が接続されると、当該収納ユニット104の個別メモリ110に記憶される識別情報IDが、制御ユニット109のメインメモリ115に記憶される識別情報IDxと一致するか否かが自動的に判定される。仮に、本来の釣銭機1以外から取外した収納ユニット104xがコネクタ111xに取付けられた場合、上述の判定結果は不一致になる。また、収納ユニット104yがコネクタ111x(コネクタ111yではなく)に接続された場合、上述の判定結果は不一致になる。
【0055】
同様に、収納ユニット104yの個別メモリ110yは、当該収納ユニット104yを識別するための識別情報IDyを記憶する。上述した通り、制御ユニット109は、本体ユニット103のコネクタ111yに収納ユニット104(コネクタ105)が接続されると、当該収納ユニット104の個別メモリ110に記憶される識別情報IDが適切であるか判定する。
【0056】
具体的には、コネクタ111yに収納ユニット104が接続されると、当該収納ユニット104の個別メモリ110に記憶される識別情報IDが、制御ユニット109のメインメモリ115に記憶される識別情報IDyと一致するか否かが自動的に判定される。仮に、本来の釣銭機以外から取外した収納ユニット104yがコネクタ111yに取付けられた場合、上述の判定結果は不一致になる。また、収納ユニット104xがコネクタ111y(コネクタ111xではなく)に接続された場合、上述の判定結果は不一致になる。
【0057】
図6は、紙幣処理装置10の機能ブロック図である。例えば、上述のCPU112がプログラムを実行することで、釣銭機1が紙幣処理装置10として機能する。図6に示す通り、紙幣処理装置10は、本体部11、収納部12x、収納部12yおよび回収部13を具備する。
【0058】
収納部12(x、y)は、紙幣処理装置10が受入れた紙幣を収納可能であるとともに、収納した紙幣を排出可能である。本実施形態の収納部12は、収納部12xおよび収納部12yを含む。例えば、上述の収納ユニット104xが収納部12xとして機能し、収納ユニット104yが収納部12yとして機能する。図6に示す通り、各収納部12は、当該収納部12を識別するための識別情報IDを記憶する。
【0059】
収納部12のうち収納部12xは、紙幣処理装置10に受入れられた紙幣のうち金種Aの紙幣および金種Bの紙幣を収納する。また、収納部12yは、紙幣処理装置10に受入れられた紙幣のうち金種Cの紙幣および金種Dの紙幣を収納する。なお、本実施形態の紙幣処理装置10は2個の収納部12を具備するが、収納部12の個数は適宜に変更できる。例えば、1個の収納部12を設けてもよいし、3個以上の収納部12を設けてもよい。
【0060】
回収部13は、収納部12における紙幣が上限枚数Lに達している期間において、受入られた紙幣を収納する。例えば、上述の回収カセット107が回収部13として機能する。また、釣銭として用いられない金種Eの紙幣または金種Fの紙幣が紙幣処理装置10に受入れられた場合、当該金種の紙幣は回収部13に収納される。
【0061】
本体部11は、収納部12(x、y)および回収部13を着脱可能に備える。例えば、上述の本体ユニット103が本体部11として機能する。本体部11は、図6に示す通り、記憶部14および制御部15を含んで構成される。例えば、上述のメインメモリ115が記憶部14として機能する。また、上述のCPU112が制御部15として機能する。
【0062】
本体部11の記憶部14は、当該本体部11に対応する収納部12を識別可能な識別情報ID、および、当該収納部12に収納されている紙幣の枚数を特定できる収納情報n(a~d)を記憶する。また、記憶部14は、回収部13に収納された紙幣の枚数を金種(A~D)毎に示す回収情報N、および、収納部12に収納する各金種(A~D)の紙幣の各上限枚数L(a~d)を記憶する。本実施形態では、店舗が閉店してから開店するまでの期間において、紙幣処理装置10への電源が遮断される場合であっても、記憶部14の各情報は保持される。
【0063】
本体部11の制御部15は、変更部16、初期化部17および移行部18を含む。変更部16は、記憶部14が記憶する上限枚数Lを変更可能である。具体的には、変更部16は、上限枚数Lを金種毎に変更可能である。本実施形態では、上限枚数Lとして範囲「0~100」の何れかの数値が設定される。上限枚数Lとして設定可能な数値範囲は、例えば収納部12(ドラム)の収納容量に応じて適宜に変更できる。
【0064】
移行部18は、予め定められた管理モードへ移行する。具体的には、移行部18は、上述のモード切替スイッチSが適宜に操作されると、管理モード、稼働モードおよびメンテナンスモードの何れかに移行する。初期化部17は、管理モードにおいて、回収部13に収納した紙幣の枚数を示す回収情報N(a~f)を初期化可能である。
【0065】
仮に、収納情報nおよび回収情報Nの双方が一律に初期化される構成(以下「対比例」)を想定する。また、収納部12および回収部13の各紙幣のうち、閉店時において収納部12の紙幣を残置し、回収部13の紙幣を回収する場合を想定する。以上の場合、上述の対比例では、収納部12に紙幣が残置されているにも関わらず、収納情報nが初期化される。したがって、上述の対比例では、収納部12が実際に収納する紙幣の枚数と収納情報nが示す紙幣の枚数とが一致しなくなる不都合が生じる。本実施形態の初期化部17によれば、回収情報Nを初期化しつつ収納情報nを維持できるため、以上の不都合が抑制される。
【0066】
図6に示す通り、紙幣処理装置10は表示部19を具備する。例えば、上述のタッチパネルPが表示部19として機能する。表示部19は、各種の情報を表示する。例えば、表示部19は、収納情報nの現在値を表示する(後述の図8のGо参照)。また、表示部19は、回収情報Nの現在値を表示する(後述の図8のGc参照)。以上の表示部19は、タッチ操作を受付可能に構成される。表示部19が表示する各画像については図8を用いて後述する。
【0067】
図7は、収納部12xにおける紙幣を残置する具体例を説明するための図である。上述した通り、収納部12xには金種Aの紙幣および金種Bの紙幣が収納される。図7の具体例では、金種Aの紙幣および金種Bの紙幣が収納部12xに残置される場合を説明する。また、閉店時において、紙幣処理装置10から収納部12xが取外され金庫Sに収納された場合を想定する。なお、図7では、収納部12yを省略して示す。収納部12yの紙幣については、収納部12xの紙幣と同様に処理することができる。
【0068】
具体的には、図7では、閉店時において、複数個の紙幣処理装置10から収納部12xが取外され、複数個の収納部12xが金庫Sに保管された場合を想定する。以下、説明のため、複数個の紙幣処理装置10のうちの1個を「紙幣処理装置10v」と記載し、他の1個を「紙幣処理装置10w」と記載する。また、紙幣処理装置10vの収納部12xを「収納部12xv」と記載し、紙幣処理装置10wの収納部12xを「収納部12xw」と記載する。同様に、紙幣処理装置10vの記憶部14を「記憶部14v」と記載し、紙幣処理装置10wの記憶部14を「記憶部14w」と記載する。また、図7には、各紙幣処理装置10vの記憶部14v(本体部側)に記憶される各情報の一部(na、nb、IDx)が示される。同様に、各紙幣処理装置10wの記憶部14wに記憶される各情報の一部(na、nb、IDx)が示される。
【0069】
図7には、収納部12x(v、w)に収納された金種Aの紙幣の枚数および金種Bの紙幣の枚数が示される。図7の具体例では、収納部12xvにn1枚の金種Aの紙幣が収納され、n2枚の金種Bの紙幣が収納される場合を想定する。すなわち、閉店時において紙幣処理装置10vにn1枚の金種Aの紙幣およびn2枚の金種Bの紙幣が収納されていた場合を想定する。以上の場合、紙幣処理装置10vの記憶部14vに記憶される収納情報na(金種Aの紙幣の枚数)は「n1」である(na=n1)。同様に、紙幣処理装置10vの記憶部14vに記憶される収納情報nb(金種Bの紙幣の枚数)は「n2」である(nb=n2)。
【0070】
また、図7の具体例では、収納部12xwにm1枚(ただし、m1≠n1)の金種Aの紙幣が収納される場合を想定する。すなわち、閉店時において紙幣処理装置10wにm1枚の金種Aの紙幣が収納されていた場合を想定する。以上の場合、紙幣処理装置10wの記憶部14wに記憶される収納情報na(金種Aの紙幣の枚数)は「m1」である(na=m1)。また、閉店時において紙幣処理装置10wにm2枚の金種Bの紙幣が収納されていた場合を想定する。以上の場合、紙幣処理装置10wの記憶部14wに記憶される収納情報nb(金種Bの紙幣の枚数)は「m2」である(nb=m2)。
【0071】
店舗の従業員は、開店時において、金庫Sから各収納部12を取出し、各紙幣処理装置10に取付ける。ただし、収納部12に収納した紙幣は閉店時から残置される。また、記憶部14(本体部11側)には閉店時において収納部12に収納されている紙幣の枚数を示す収納情報nが記憶される。したがって、収納部12が実際に収納する紙幣の枚数と記憶部14の収納情報nが示す紙幣の枚数とを一致させるために、閉店時に紙幣処理装置10から取外した収納部12は、開店時において同じ紙幣処理装置10に取付ける必要がある。例えば、図7の具体例では、閉店時に紙幣処理装置10vから取外された収納部12xvは、紙幣処理装置10wではなく、紙幣処理装置10vに取付けられる必要がある。
【0072】
ところで、例えば設置される紙幣処理装置10が多い店舗ほど、閉店時において金庫Sに収納される収納部12も多くなる。金庫Sに収納される収納部12が多い場合、閉店時に取外した紙幣処理装置10を、開店時において別の紙幣処理装置10に取付けてしまうという不都合が生じ易いという事情がある。以上の事情を考量して、本実施形態では、以上の不都合を抑制するための構成を採用した。
【0073】
具体的には、本実施形態の収納部12は当該収納部12固有の識別情報IDを記憶する。また、紙幣処理装置10の記憶部14(本体部11側)には、当該紙幣処理装置10に取付けるべき収納部12の識別情報IDが記憶される。例えば、図7の具体例では、紙幣処理装置10vから取外した収納部12xvには識別情報IDxvが記憶される。また、紙幣処理装置10vの記憶部14vには識別情報IDxvが記憶される。同様に、紙幣処理装置10wから取外した収納部12xwには識別情報IDxwが記憶される(IDxv≠IDxw)。また、紙幣処理装置10wの記憶部14wには識別情報IDxwが記憶される。
【0074】
本実施形態の紙幣処理装置10は、収納部12が取付けられると、当該収納部12から識別情報IDを自動で読み出す。また、紙幣処理装置10は、記憶部14に記憶される識別情報IDと収納部12の識別情報IDとが一致するか否かを判定する。仮に、収納部12の識別情報IDと記憶部14(本体部11側)の識別情報IDとが一致する場合(例えば、図7のSc1)、紙幣処理装置10は、取付エラー状態へ移行しない。
【0075】
一方、収納部12の識別情報IDと記憶部14(本体部11側)の識別情報IDとが一致しない場合(例えば、図7のSc2)、紙幣処理装置10は、取付エラー状態へ移行する。取付エラー状態では、例えば、不適切な収納部12が取付けられている旨が報知される。具体的には、不適切な収納部12が取付けられている旨のメッセージが表示部19に表示される。以上の構成によれば、閉店時に紙幣処理装置10から取外した収納部12を、開店時に別の紙幣処理装置10に取付けるという不都合が抑制される。
【0076】
図8は、表示部19に表示される各画像(Gо、Gm、Gc、Gh)を説明するための図である。上述した通り、紙幣処理装置10は、稼働モード、管理モードおよびメンテナンスモードへ移行する。図8には、稼働モードにおいて表示される稼働モード画像Gо、管理モードにおいて表示される管理モード画像Gm、回収情報画像Gcおよび補充中画像Ghの模擬図が示される。
【0077】
図8に示す通り、稼働モード画像Gоは、紙幣処理装置10の収納部12に収納される紙幣の枚数を金種毎に表示する。すなわち、稼働モード画像Gоは、釣銭として排出できる残りの紙幣の枚数を金種毎に表示する。図8の具体例では、金種Aの紙幣が19枚、金種Bの紙幣が30枚、金種Cの紙幣が1枚、金種Dの紙幣が17枚収納部12に収納される場合を想定する。
【0078】
本実施形態では、稼働モード画像Gоにおいて、収納部12に収納した紙幣の残り枚数に応じた報知が実行される。例えば、収納部12における紙幣の残り枚数が少ない場合、その旨が報知される。上述した通り、紙幣処理装置10は、収納部12における各金種(A~D)の紙幣の残り枚数を示す収納情報n(a~d)を記憶する。紙幣処理装置10は、収納情報nが範囲「0~5」の期間において、当該収納情報nに対応する金種の紙幣の残り枚数を特殊な態様(オレンジ色)で表示する。
【0079】
図8の具体例では、金種Cの紙幣の残り枚数が5枚以下(1枚)の場合を想定する。すなわち、収納情報ncが数値「5」以下の場合を想定する。以上の場合、稼働モード画像Gоにおいて、金種Cの紙幣の残り枚数がオレンジ色で表示される。詳細には後述するが、収納部12における紙幣の残り枚数が少ない場合、補充作業により紙幣が収納部12に補充される。本実施形態では、収納部12における紙幣の残り枚数が少ない旨が報知されるため、釣銭として排出できる紙幣が不足する事態を未然に防止し易くなる。
【0080】
また、収納部12に収納可能な紙幣の最大枚数は金種毎に(ドラム106毎に)予め定められ、収納部12に収納した紙幣の枚数が最大枚数に近くなると、稼働モード画像Gоにおいてニアフル報知が実行される。具体的には、収納部12に収納された紙幣の枚数を示す収納情報nが最大枚数に近くなると(例えば、「最大枚数-n≦5」になると)、当該収納情報nに対応する金種の紙幣の枚数が稼働モード画像Gоにおいて特殊な態様で表示される。ただし、任意の上限枚数Lが設定されている場合、以上のニアフル報知は実行されない。
【0081】
図8に示す通り、稼働モードにおいてモード切替スイッチSが操作されると、稼働モード画像Gоに替えて管理モード画像Gmが表示される。管理モード画像Gmは、稼働モード画像Gоと同様に、収納部12に収納された紙幣の枚数を表示する。また、管理モード画像Gmは、補充ボタンB1、回収ボタンB2、支払ボタンB3およびカセット表示ボタンB4を表示する。例えば、支払ボタンB3は、客に紙幣を支払う場合に操作される。具体的には、支払ボタンB3がタッチ操作されると、収納部12から排出する紙幣の枚数を金種毎に設定可能になる。また、設定された枚数の紙幣が紙幣処理装置10(紙幣入出口101)から排出され、排出された紙幣の枚数に応じて収納情報nが減算される。
【0082】
管理モード画面Gmのカセット表示ボタンB4がタッチ操作されると、回収情報画像Gcが表示される。回収情報画像Gcは、回収部13に収納された紙幣の枚数を金種毎に表示する。具体的には、紙幣処理装置10は、記憶部14が記憶する回収情報N(a~f)に基づいて、回収部13に収納した各金種(A~F)の紙幣の枚数を表示させる。また、回収情報画像Gcには、回収部13に収納される合計金額が表示される。回収部13に収納される合計金額は、回収情報Nに基づいて算出される。
【0083】
図8の具体例では、回収部13に金種Aの紙幣が3枚、金種Eの紙幣が23枚、金種Fの紙幣が30枚収納され、その他の金種(B~D)の紙幣は収納されない場合を想定する。なお、上述した通り釣銭として用いる金種(A~D)の紙幣は、収納部12に原則収納される。ただし、釣銭として用いる金種(A~D)の紙幣が収納部12に上限枚数L収納された状態で、当該金種の紙幣が新たに受付けられた場合、当該紙幣は回収部13に収納される(オーバーフローする)。図8の具体例では、3枚の金種Aの紙幣がオーバーフローした場合を想定する。
【0084】
以上の回収情報画像Gcは、適宜な時期において表示される。例えば、開店時または閉店時において、回収情報画像Gcを表示させ、回収部13に収納された紙幣の枚数を確認する。開店時または閉店時において、仮に、回収部13に紙幣が残存する場合、店舗の従業員は、回収部13から紙幣を回収して金庫に収納する。また、店舗の営業期間の途中で、回収情報画像Gcを表示させ、回収部13に収納された紙幣の枚数を確認する。店舗の営業期間において、仮に、回収部13に多額の紙幣が収納された場合、店舗の従業員は、回収部13の紙幣を回収して金庫に収納する(途中回収する)。
【0085】
詳細には後述するが、回収部13の紙幣を回収する場合、回収情報Nを初期化する必要がある。具体的には、図8に示す通り、管理モード画像Gmの回収ボタンB2がタッチ操作されると選択画像Gsが表示される。以上の選択画像Gsを介して回収画像Gaが表示される(後述の図9参照)。回収画像Gaが適宜にタッチ操作されると回収情報Nが初期化される。回収情報画像Gcの終了ボタンB5がタッチ操作されると、回収情報画像Gcに替えて管理モード画像Gmが表示される。
【0086】
図8に示す通り、管理モード画像Gmの補充ボタンB1がタッチ操作されると、補充画像Ghが表示される。補充画像Ghが表示される期間において、釣銭として用いる紙幣を収納部12に補充できる。例えば、開店時において、収納部12の紙幣が少ない場合、補充画面Ghを介して紙幣が補充される。また、上述した通り、稼働モード画像Gоにおいて、収納部12における各金種の紙幣のうち残り枚数が少ないものが報知される場合がある。以上の場合、店舗の営業期間において、収納部12に紙幣が補充される。
【0087】
補充画像Ghには、終了ボタンB5、開始ボタンB6および停止ボタンB7が表示される。開始ボタンB6がタッチ操作されると、紙幣入出口101から紙幣の取込が開始される。具体的には、紙幣入出口101は紙幣束の先端を挿入可能に形成される。紙幣束の先端が紙幣入出口101に挿入された状態で、開始ボタンB6がタッチ操作されると、当該紙幣束の紙幣が一枚ずつ紙幣処理装置10の内部に取込まれる。以上の取込動作が実行される期間において、停止ボタンB7がタッチ操作されると、取込動作が停止する。
【0088】
図8に示す通り、補充画像Ghには、金種毎に補充された紙幣の枚数が表示される。図8の具体例では、金種Cの紙幣が10枚補充された場合を想定する。また、補充画像Ghには、補充した合計金額が表示される。補充画像Ghの終了ボタンB5がタッチ操作されると、補充画像Ghに替えて管理モード画像Gmが表示される。なお、上述した通り、収納部12に収納する紙幣の枚数には金種毎に上限枚数Lが設定される。仮に、補充画像Gh(B6)のタッチ操作により紙幣が取込まれる場合であって、当該紙幣の金種の収納情報nが上限枚数Lに達している場合、当該紙幣は紙幣入出口101から排出される。
【0089】
図9は、紙幣処理装置10から紙幣が回収される際に表示される各画像を説明するための図である。図9には、選択画像Gsの模擬図、回収画像Gaの模擬図、および、金種指定画像Gdの模擬図が示される。
【0090】
図9の選択画像Gsは、図8を用いて説明した通り、管理モード画像Gmの回収ボタンB2がタッチ操作された場合に表示される。選択画像Gsは、紙幣処理装置10(収納部12、回収部13)から回収する紙幣を選択可能にするための画像である。具体的には、選択画像Gsは、終了ボタンB5、カセット回収ボタンB8、金種指定ボタンB9、枚数指定ボタンB10、および、全回収ボタンB11を表示する。例えば、カセット回収ボタンB8は、現時点で回収部13に収納される紙幣を回収する際にタッチ操作される。
【0091】
図9の回収画像Gaは、選択画像Gsのカセット回収ボタンB8がタッチ操作された場合に表示される。回収画像Gaは、終了ボタンB5および初期化ボタンB12を表示する。初期化ボタンB12をタッチ操作すると、回収情報Nが初期化される。具体的には、回収情報Nは、回収部13に収納された金種Aの紙幣の枚数を示す回収情報Na、金種Bの紙幣の枚数を示す回収情報Nb、金種Cの紙幣の枚数を示す回収情報Nc、金種Dの紙幣の枚数を示す回収情報Nd、金種Eの紙幣の枚数を示す回収情報Ne、金種Fの紙幣の枚数を示す回収情報Nfを含む。初期化ボタンB12がタッチ操作されると、回収情報N(a~f)が数値「0」に初期化される。
【0092】
回収情報Nを初期化した場合、稼働モードへ移行する前に、回収部13の紙幣を取出す必要がある。仮に、回収情報Nを初期化した後に回収部13の紙幣を取出さない場合、回収情報Nが示す紙幣の枚数と実際に回収部13に収納される紙幣の枚数とが一致しなくなる。例えば店舗の従業員は、回収情報Nを初期化した後に、メンテナンスモードへ移行させ、回収部13を取外して紙幣を取出す。
【0093】
図9に示す通り、金種指定ボタンB9がタッチ操作されると、金種指定画像Gdが表示される。選択画像Gsの金種指定ボタンB9は、現時点で回収部13に収納される紙幣に加え、収納部12の一部(または全部)の紙幣を回収する際にタッチ操作される。図9に示す通り、金種指定画像Gdは、金種Aに対応する金種ボタンB13、金種Bに対応する金種ボタンB14、金種Cに対応する金種ボタンB15、金種Dに対応する金種ボタンB16、および、開始ボタンB17を表示する。金種ボタンB(13~16)をタッチ操作すると、当該金種ボタンBに対応する金種が選択される。
【0094】
金種ボタンB(13~16)により金種を選択した後に、開始ボタンB17がタッチ操作されると、選択された金種の紙幣が収納部12から回収部13へ搬送される。また、紙幣処理装置10は、収納部12から回収部13へ搬送された紙幣の枚数を示す収納情報n(a~d)を数値「0」に初期化する。また、回収部13に収納された紙幣に応じて、回収情報Nを更新する。店舗の従業員は、金種指定ボタンB9(開始ボタン17)により収納部12の紙幣を回収部13へ搬送した後に、上述の回収画像Gaにより収納情報Nを初期化し、その後、回収部13の紙幣を回収する。なお、本実施形態では、複数個の金種ボタンBを選択した後に開始ボタンB17がタッチ操作されると、複数種類の金種の紙幣を回収部13へ一度に回収できる。
【0095】
枚数指定ボタンB10は、指定した枚数の紙幣を収納部12から回収する場合に操作される。具体的には、枚数指定ボタンB10が操作されると金種毎に枚数を指定できる枚数指定画像が表示される。枚数指定画像は、回収する紙幣の枚数を金種毎に入力可能な画面である。枚数指定画像により紙幣の枚数が指定されると、指定された枚数の紙幣が紙幣入出口101から排出される。また、排出した紙幣に応じて記憶部14の収納情報nが更新される。以上の枚数指定画像によれば、回収部13を取外すことなく収納部12の紙幣を回収できる。ただし、枚数指定画像により指定された枚数の紙幣が、回収部13へ搬送される構成としてもよい。
【0096】
全回収ボタンB11は、紙幣処理装置10から全ての紙幣を回収する場合に操作される。具体的には、全回収ボタンB11が操作されると、収納部12に収納される全ての紙幣が回収部13へ搬送される。店舗の従業員は、全ての紙幣を回収部13へ搬送させた後に、上述の回収画像Gaにより収納情報Nを初期化し、その後、回収部13の紙幣を回収する。
【0097】
図10(a)は、紙幣処理装置10の紙幣収納処理のフローチャートである。紙幣処理装置10は、紙幣を収納部12または回収部13に紙幣を収納する場合に紙幣収納処理を実行する。具体的には、紙幣入出口101に紙幣が挿入されると紙幣収納処理が実行される。なお、紙幣入出口101から収納部12または回収部13へ紙幣を搬送するための技術は、例えば特許第6505298号公報に記載の技術が採用され得る。
【0098】
紙幣処理装置10は、紙幣入出口101から紙幣が取込まれると、当該紙幣の金種を識別する(S100)。具体的には、上述の搬送路108(図2(b)参照)に設けたセンサからの検知信号に基づいて、紙幣の金種を識別する。その後、紙幣処理装置10は、取込まれた紙幣の金種が金種Aから金種Dの何れかであるか否かを判定する(S101)。すなわち、紙幣処理装置10は、取込まれた紙幣が釣銭として用いる紙幣であるか否かを判定する。
【0099】
釣銭として用いる紙幣ではない(金種Eまたは金種Fの紙幣である)と判断すると(S101:No)、紙幣処理装置10は、当該紙幣を回収部13へ搬送して収納する(S102)。また、紙幣処理装置10は、回収部13に収納した紙幣の金種に応じて回収情報Nを更新(加算)する(S103)。例えば、金種Eの紙幣が回収部13に収納される場合、回収情報Nのうち回収情報Neに数値「1」が加算される。本実施形態では、回収部13に紙幣を収納する動作が完了した後に、回収情報Nが更新される。したがって、仮に、回収部13までの搬送路108の途中で紙幣が詰まった場合、回収情報Nは更新されない。以上の場合、搬送路108から紙幣を取り除いた後に、再度、紙幣入出口101に当該紙幣が挿入される。
【0100】
一方、釣銭として用いる金種(A~D)の紙幣が取込まれた場合(S101;Yes)、紙幣処理装置10は、当該金種に対応する収納情報n(a~d)が上限枚数L(a~d)以上であるか否かを判定する(S104)。すなわち、新たに取込まれた金種の紙幣が、収納部12において既に上限枚数L収納されているか否かを判定する。例えば、金種Aの紙幣が取込まれた場合、紙幣処理装置10は、収納部12に収納される金種Aの紙幣の枚数を示す収納情報naが上限枚数Laに達しているか否かを判定する。
【0101】
紙幣処理装置10は、取込んだ紙幣の金種に対応する収納情報nが上限枚数Lに達していない場合(S104:No)、当該紙幣を収納部12に収納する(S105)。具体的には、金種Aの紙幣および金種Bの紙幣は収納部12xに収納され、金種Cの紙幣および金種Dの紙幣は収納部12yに収納される。紙幣を収納部12に収納すると、紙幣処理装置10は、当該紙幣の金種に対応する収納情報nを更新(数値「1」加算)し(S106)、紙幣収納処理を終了する。
【0102】
紙幣処理装置10は、取込んだ紙幣の金種に対応する収納情報nが上限枚数Lに達している場合(S104:Yes)、当該紙幣を回収部13に収納する。また、当該紙幣の金種に応じて、回収情報Nを更新する。回収情報Nを更新した後に、紙幣処理装置10は、紙幣収納処理を終了する。例えば、金種Aの紙幣が回収部13に収納された場合(金種Aの紙幣がオーバーフローした場合)、回収情報Naが数値「1」加算される。
【0103】
図10(b)は、紙幣処理装置10が実行する取付時処理のフローチャートである。取付時処理は、紙幣処理装置10(本体部11)に適切な収納部12が取付けられたか否かを判定するために実行される。図10(b)に示す通り、取付時処理を開始すると、紙幣処理装置10は、電源が投入された直後であるか否かを判定する(S110)。具体的には、紙幣処理装置10は、電源が供給される期間において所定周期で取付時処理を実行する。ステップS110では、電源が投入されてから最初の取付時処理であるか否かが判定される。
【0104】
電源が投入された直後であると判断した場合(S110:Yes)、紙幣処理装置10は、ステップS112以降の処理を実行して、適切な収納部12が取付けられたか否かを判定する。以上の構成によれば、仮に、電源が遮断された期間において、紙幣処理装置10に収納部12が取付けられた場合であっても、当該収納部12の適否が判定されるという利点がある。
【0105】
電源が投入された直後ではないと判断した場合(S110:No)、紙幣処理装置10は、本体部11に収納部12が新たに取付けられたか否かを判定する(S111)。具体的には、紙幣処理装置10の本体部11に収納部12が取付けられると、当該収納部12のコネクタ(110)が本体部11のコネクタ(111)に接続する。紙幣処理装置10は、各コネクタが接続されているか否か監視する。各コネクタが接続されない状態から接続された状態へ変化した場合、収納部12が新たに取付けられたと判断される。
【0106】
収納部12が新たに取付けられていないと判断した場合(S111:No)、紙幣処理装置10は、取付時処理を終了する。以上のステップS111において「No」と判定される場合としては、収納部12が本体部11から取外された状態である場合、または、収納部12が本体部11に取付けられた状態が継続している場合が想定される。
【0107】
一方、収納部12が新たに取付けられたと判断した場合(S111:Yes)、紙幣処理装置10は、当該収納部12から識別情報ID(x、y)を読み出す。また、紙幣処理装置10は、収納部12から読み出した識別情報IDと記憶部14が記憶する識別情報IDとを比較する(S113)。
【0108】
具体的には、金種Aの紙幣および金種Bの紙幣を収納する収納部12xが取付けられる紙幣処理装置10における位置(以下「取付位置x」)は予め定められる。同様に、金種Cの紙幣および金種Dの紙幣を収納する収納部12yが取付けられる紙幣処理装置10における位置(以下「取付位置y」)は予め定められる。収納部12が取付位置xに取付けられると、当該収納部12から読み出した識別情報IDが、記憶部14の識別情報IDxと比較される。また、収納部12が取付位置yに取付けられると、当該収納部12から読み出した識別情報IDが、記憶部14の識別情報IDyと比較される。
【0109】
収納部12から読み出した識別情報IDと記憶部14の識別情報IDとを比較した後に、紙幣処理装置10は、各識別情報IDが一致するか否かを判定する(S114)。各識別情報IDが一致すると判断した場合(S114:Yes)、紙幣処理装置10は、取付時処理を終了する。一方、各識別情報IDが一致しないと判断した場合(S114:No)、紙幣処理装置10は、取付エラー状態へ移行する(S115)。取付エラー状態では、たとえば、適切な収納部12が取付けられていない旨が報知される。
【0110】
<変形例>
以上の各形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は適宜に併合され得る。
【0111】
(1)上述の各形態では、上限枚数Lを金種毎に設定可能に構成したが、以上の構成は適宜に変更できる。例えば、上限枚数Lを金種毎に相違させることができる構成に替えて、金種毎に共通の上限枚数Lが設定される構成としてもよい。また、上限枚数Lとして設定可能な数値の範囲が金種毎に変化する構成としてもよい。例えば、釣銭として収納される各金種の紙幣のうち、高額な金種ほど上限枚数Lとして設定可能な数値が小さい構成としてもよい。
【0112】
(2)各形態のエラー状態における制御は適宜に設定できる。例えば、取付エラー状態が生じた際に、誤って取付けられた収納部12の識別情報IDが履歴情報として記憶部14に記憶される構成としてもよい。また、取付エラー状態において、誤って取付けられた収納部12の識別情報IDが表示部19に表示される構成としてもよい。
【0113】
また、取付エラー状態において、稼働モードへ移行可能な構成としてもよい。すなわち、取付エラー状態においても、客の紙幣を取込可能であるとともに、釣銭を排出可能な構成としてもよい。以上の変形例において、取付エラー状態における稼働モードでは、収納部12および回収部13における紙幣の枚数が不明である旨が報知される構成が好適である。ただし、取付エラー状態において、紙幣の取込および排出が不可能になる構成としてもよい。
【0114】
また、以上の各形態において、取付エラー状態が解除される契機は適宜に変更できる。例えば、紙幣処理装置10に適切な収納部12が取付けられた契機で取付エラー状態が解除される構成としてもよい。具体的には、上述の取付時処理(図10(b)参照)は、取付エラー状態においても実行される。新たに取付けられた収納部12の識別情報IDと紙幣処理装置10(記憶部14)が記憶する識別情報IDとが一致すると判定された場合、取付エラー状態が解除される構成としてもよい。
【0115】
また、取付エラー状態において適切な収納部12を紙幣処理装置10に取付けた状態で、予め定められたリセット処理が実行されると、当該エラー状態が解除される構成としてもよい。以上のリセット処理は、例えば、予め定められたリセットスイッチが操作された場合に実行できる。また、電源の供給が開始された契機でリセット処理が実行される構成としてもよい。以上の構成では、紙幣処理装置10が取付エラー状態へ移行した場合、電源を一旦OFFし、その後に電源をONにすることで、当該取付エラー状態が解除できる。
【0116】
(3)第1実施形態では、紙幣処理装置10に収納部12を取付けた状態で回収動作が実行されると、収納部12の紙幣が回収部13へ回収される。上述した通り、金種指定画像Gdの開始ボタンB17が操作された場合、および、全回収ボタンB11(図9参照)が操作された場合、収納部12の紙幣が回収部13へ回収される。第1実施形態では、収納部12に収納した紙幣は、原則、以上の回収動作以外では取出し不可能である。ただし、収納部12に施錠装置を設け、当該施錠装置が開錠されると、収納部12の内部から紙幣が取出し可能な構成としてもよい。
【0117】
(4)各形態において、本体部11から収納部12が取外された履歴(時刻、モード)、回収部13が取外された履歴、収納部12に紙幣が収納された履歴(金種、時刻、モード)、収納部12から紙幣が排出された履歴(金種、時刻、モード)、回収部13に紙幣が収納された履歴、回収部13から紙幣が排出された履歴、および、収納部12から回収部13へ紙幣が搬送された履歴(金種、時刻、モード)が記憶部14に記録され、表示部19に表示可能な構成が好適である。また、第1実施形態では、支払ボタンB3を操作した場合と開始ボタンB17を操作した場合とで、紙幣を排出可能である。以上の構成において、支払ボタンB3の操作により紙幣が排出されたのか開始ボタンB17の操作により紙幣が排出されたのかを区別可能に履歴が記憶される構成としてもよい。
【0118】
(5)各形態において、上限枚数Lを変更するための構成は適宜に変更してもよい。例えば、収納部12に紙幣が収納された状態で、上限枚数Lが変更可能な構成としてもよい。ただし、以上の変形例では、利用者が希望する変更後の上限枚数Lが、収納部12に収納している紙幣の枚数より少なくなり得る。以上の事情を考慮して、収納部12に紙幣が収納された状態では、上限枚数Lが変更できない構成としてもよい。例えば、上述の全回収ボタンB11(図9参照)により収納部12の全ての紙幣を回収部13に移した後に、上限枚数Lが変更できる構成が考えられる。
【0119】
収納部12に収納している紙幣の枚数より少ない上限枚数Lに変更可能な構成としてもよい。すなわち、収納情報nの現在値より小さな上限枚数Lを設定可能な構成としてもよい。以上の変形例では、収納情報nより上限枚数Lが小さい期間において、上限枚数Lより多い紙幣が収納部12に収納されている旨の報知(以下「オーバー報知」)が実行される構成が好適である。例えば、オーバー報知は、専用のランプにおいて実行されてもよいし、表示部19において実行されてもよい。
【0120】
また、オーバー報知が実行される期間において稼働モードへ移行可能としてもよい。以上の構成において、オーバー報知が実行される期間では、本来は収納部12に収納される紙幣が回収部13に収納される。すなわち、収納情報nは原則加算されない。当該変形例において、釣銭が排出されて収納情報nが上限枚数Lを下回った場合、オーバー報知が停止される構成が好適である。その後、更新後の上限枚数Lに収納情報nが再度達した場合、回収部13に紙幣がオーバーフローする。
【0121】
なお、オーバー報知が実行される期間において、稼働モードへ移行できない構成としてもよい。以上の構成では、オーバー報知が実行された場合、管理モードへ移行させ、収納部12の紙幣を紙幣入出口101から排出または収納部12に搬送する。管理モードにおいて収納部12の紙幣の枚数が調整され、収納情報nが更新後の上限枚数L以下に減少すると、オーバー報知が停止して稼働モードへ移行可能になる。
【0122】
(6)上述の第1実施形態では、メンテナンスモード以外で収納部12(収納ユニット104)が本体部11(本体ユニット103)から取外されるとエラー状態へ移行した。以上の構成に替えて、メンテナンスモード以外で収納部12が本体部11から取外されたとしても、単なるセット不良としてエラー状態へは移行しない構成としてもよい。同様に、メンテナンスモード以外で回収部13(回収カセット107)が本体部11から取外されるとエラー状態へ移行する構成に替えて、メンテナンスモード以外で回収部13が本体部11から取外されたとしても、単なるセット不良としてエラー状態へは移行しない構成としてもよい。
【0123】
(7)第1実施形態では、紙葉処理装置の一例として、釣銭機(紙幣処理装置)を例示した。しかし、本発明を釣銭機以外に採用してもよい。また、紙葉処理装置は、紙幣に限らず、有価証券、チケット、投票用紙、封筒、その他種々の紙葉を取り扱う装置であってもよい。
【0124】
本発明は、例えば以下の紙葉処理装置、紙葉処理方法およびプログラムである。
【0125】
本発明の第1態様の紙葉処理装置は、紙葉を受入れ可能な紙葉処理装置(10)であって、受入れた紙葉を収納可能であるとともに、収納した紙葉を排出可能な収納部(12x、12y)と、収納部を着脱可能に備える本体部(11)と、を具備し、本体部は、当該本体部に対応する収納部を識別可能な識別情報(IDx、IDy)、および、当該 収納部に収納されている紙葉の枚数を特定できる収納情報(na~nd)を記憶する記憶部(14)を具備する。
【0126】
以上の態様において、記憶部(14)は、収納部に収納する紙葉の上限枚数(La~Ld)を記憶し、収納部における紙葉が上限枚数に達している期間において、受入れられた紙葉を収納する回収部(13)と、上限枚数を変更可能な変更部(16)とを具備する態様としてもよい。また、以上の態様において、本体部は、回収部を着脱可能に備え、記憶部は、回収部に収納した紙葉の枚数を特定できる回収情報(Na~Nd)を記憶し、予め定められた操作で管理モードへ移行する移行部(18)と、管理モードにおいて、収納情報および回収情報のうち回収情報を初期化可能な初期化部(17)と、を具備する態様としてもよい。
【0127】
本発明の好適な態様は、紙葉を受入れ可能であり、受入れた紙葉を収納可能であるとともに、収納した紙葉を排出可能な収納部と、前記収納部を着脱可能に備える本体部と、を具備する紙葉処理装置による紙葉処理方法であって、収納部に収納されている金額を特定できる収納情報(S106)を記憶するステップと、予め定められた契機で、本体部に装着された収納部の適否を判定するステップ(S114)とを含む紙葉処理方法である。また、本発明の好適な態様は、以上の態様の各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。
【符号の説明】
【0128】
10…紙幣処理装置、11…本体部、12…収納部、13…回収部、14…記憶部、15…制御部、16…変更部、17…初期化部、18…移行部、19…表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10