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  • 特開-目地構造およびその施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004132
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】目地構造およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
E04B1/94 H
E04B1/94 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103626
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 平祐
(72)【発明者】
【氏名】森田 武
(72)【発明者】
【氏名】奥山 孝之
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智紀
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA08
2E001FA01
2E001GA07
2E001HA22
2E001HA32
2E001HD11
(57)【要約】
【課題】施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる目地構造およびその施工方法を提供する。
【解決手段】構造部材12の外側に設けられた耐火被覆材14の目地部16に形成される目地構造100であって、前記目地部16の前記構造部材12の外側を覆うように設けられ、遮熱性を有するペースト状の不定形耐火材料からなる第一目地材18と、この第一目地材18の外側に設けられ、変形追従性を有するペースト状の不定形材料からなる第二目地材20とを備えるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造部材の外側に設けられた耐火被覆材の目地部に形成される目地構造であって、
前記目地部の前記構造部材の外側を覆うように設けられ、遮熱性を有するペースト状の不定形耐火材料からなる第一目地材と、この第一目地材の外側に設けられ、変形追従性を有するペースト状の不定形材料からなる第二目地材とを備えることを特徴とする目地構造。
【請求項2】
前記目地部が、前記耐火被覆材の材厚方向に対して斜めに通る斜形の目地部であることを特徴とする請求項1に記載の目地構造。
【請求項3】
第一目地材が、炭酸カルシウム系シーリング材であることを特徴とする請求項1または2に記載の目地構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載の目地構造を施工する方法であって、
前記目地部の前記構造部材の外側の領域に第一目地材を充填した後、この第一目地材の外側の領域に第二目地材を充填することを特徴とする目地構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性能を有する目地構造およびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防耐火構造において、構造部材の外側表面に耐火被覆材を施工する場合、耐火被覆材に目地を設けることで施工性の向上を図っている。一方、目地部においても耐火性能を担保する必要があるため、目地部には遮熱性を有する目地材を充填する構造が求められる。このような構造として、例えばロックウール等の定形目地材を目地部に配置したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-122336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、目地が斜めに通るような斜形の目地部においては、定形目地材を斜めに整形する必要が生じるなど、施工性が低下するおそれがあった。このため、施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる目地構造が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる目地構造およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る目地構造は、構造部材の外側に設けられた耐火被覆材の目地部に形成される目地構造であって、前記目地部の前記構造部材の外側を覆うように設けられ、遮熱性を有するペースト状の不定形耐火材料からなる第一目地材と、この第一目地材の外側に設けられ、変形追従性を有するペースト状の不定形材料からなる第二目地材とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る他の目地構造は、上述した発明において、前記目地部が、前記耐火被覆材の材厚方向に対して斜めに通る斜形の目地部であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の目地構造は、上述した発明において、第一目地材が、炭酸カルシウム系シーリング材であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る目地構造の施工方法は、上述した目地構造を施工する方法であって、前記目地部の前記構造部材の外側の領域に第一目地材を充填した後、この第一目地材の外側の領域に第二目地材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る目地構造によれば、構造部材の外側に設けられた耐火被覆材の目地部に形成される目地構造であって、前記目地部の前記構造部材の外側を覆うように設けられ、遮熱性を有するペースト状の不定形耐火材料からなる第一目地材と、この第一目地材の外側に設けられ、変形追従性を有するペースト状の不定形材料からなる第二目地材とを備えるので、施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る他の目地構造によれば、前記目地部が、前記耐火被覆材の材厚方向に対して斜めに通る斜形の目地部であるので、斜形の目地部においても施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他の目地構造によれば、第一目地材が、炭酸カルシウム系シーリング材であるので、焼失するおそれがない上、遮熱性にも優れることから、耐火性能をさらに向上することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る目地構造の施工方法によれば、上述した目地構造を施工する方法であって、前記目地部の前記構造部材の外側の領域に第一目地材を充填した後、この第一目地材の外側の領域に第二目地材を充填するので、施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る目地構造およびその施工方法の実施の形態1を示す断面図である。
図2図2は、本発明に係る目地構造およびその施工方法の実施の形態2を示す図であり、(1)は平面図、(2)は断面図である。
図3図3は、本発明に係る目地構造およびその施工方法の実施の形態3を示す図であり、(1)は平面図、(2)は断面図である。
図4図4は、耐火実験に供した試験体を示す断面図であり、(1)は実施例、(2)は比較例である。
図5図5は、耐火実験結果(温度推移)を示す図である。
図6図6は、目地構造の一例を示す図であり、(1)は平面図、(2)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る目地構造およびその施工方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1に係る目地構造100は、構造部材12の外側に設けられた耐火被覆材14の目地部16に形成される目地構造であって、目地部16の構造部材12の外側を覆うように設けられた第一目地材18と、この第一目地材18の外側に設けられた第二目地材20とを備える。
【0017】
構造部材12は、例えば、木質部材からなる梁で構成することができる。耐火被覆材14は、例えば、強化石膏ボードなどの耐火被覆材、または強化石膏ボード、耐火シートおよび木質化粧材の積層構造などの耐火被覆材で構成することができる。
【0018】
目地部16は、耐火被覆材14の厚さ方向D(材厚方向)に対して斜めに通る斜形の目地部である。目地部16の寸法は、例えば、目地幅Wが126mm以下、第一目地材18の厚さd1が30mm以上、目地部16の斜形角度θは25°とすることができる。なお、本発明の目地部は斜形に限るものではなく、例えば、耐火被覆材14の厚さ方向Dに通る形の目地部でもよい。
【0019】
第一目地材18は、遮熱性を有するペースト状の不定形耐火材料からなり、目地部16において構造部材12の外側表面12Aと耐火被覆材14の側端面14Aにより区画形成される凹状の領域に充填配置される。この第一目地材18は、例えば、炭酸カルシウム系シーリング材で構成することができる。炭酸カルシウム系シーリング材は、従来の定形目地材のように目地部16の形状に合わせて成型する必要がないため、施工性に優れる。また、主材である炭酸カルシウムは無機質系であるため焼失するおそれがない上、600℃程度から炭酸カルシウムが分解することにより吸熱反応が生じるため、遮熱性にも優れる。これらの効用により、従来技術では施工が困難であった斜形目地においても施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる。
【0020】
第二目地材20は、変形追従性を有するペースト状の不定形材料からなり、目地部16において第一目地材18の外側表面18Aと耐火被覆材14の側端面14Aにより区画形成される凹状の領域に充填配置される。この第二目地材20は、例えば、変形追従性に優れるシリコーン系シーリング材で構成することができる。
【0021】
上記の目地構造100を施工する場合には、例えば、構造部材12の外側表面12Aに耐火被覆材14を張り付けて目地部16を形成し、この目地部16における構造部材12の外側の領域に第一目地材18を充填して均す。その後、この第一目地材18の外側の領域に第二目地材20を充填して均す。こうすることで目地構造100を施工することができる。
【0022】
なお、目地深さが深くなると第二目地材18、20の施工が困難になるため、複数枚の耐火被覆材14を積層する場合は、耐火被覆材14を1枚張るごとに目地部16に第一目地材18および第二目地材20を充填施工するのが望ましい。
【0023】
本実施の形態1によれば、施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる。特に、従来技術では施工が困難であった斜形目地においても、施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる。
【0024】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図6に示すように、構造部材12(例えば、木質部材からなる梁)に対して鋼製ロッド22のような鋼材を斜め方向に接合する場合、耐火被覆材14に形成した斜形の目地部16から鋼製ロッド22を斜め方向に構造部材12内部に挿入して接合した構造が考えられる。なお、この例では、構造部材12の外側に耐火被覆材14を2枚積層配置した場合を示している。また、耐火被覆材14の正面から見た目地部16の形状が略矩形状である場合を示している。目地部16には、耐火性能を確保するための目地材が鋼製ロッド22の周囲を隙間なく覆うように充填配置される。構造部材12に張り付けられた1層目の耐火被覆材14の目地部16の目地材にはロックウール24が使用され、1層目の外側に張り付けられた2層目の耐火被覆材14の目地部16の目地材にはシリコーン系シーリング材26が使用される。こうすることで、目地部16からの火熱が構造部材12に伝わりにくくすることができる。
【0025】
しかし、図6のような構造では、斜形の目地部16に鋼製ロッド22が配置されるため、ロックウール24の加工が手間になるおそれがある。また、ロックウール24を隙間なく充填することは困難であり施工性が低下してしまう。そこで、このような問題を解決するために、以下の本実施の形態2に係る目地構造を適用する。
【0026】
図2に示すように、本実施の形態2に係る目地構造200は、図6の構造において、ロックウール24の代わりに、炭酸カルシウム系シーリング材28を用いたものである。炭酸カルシウム系シーリング材28が本発明の第一目地材に相当し、シリコーン系シーリング材26が本発明の第二目地材に相当する。また、鋼製ロッド22が目地部16に貫入する部分には耐火塗料30を塗布している。耐火塗料30と耐火被覆材14の隙間幅W1は、例えば7mmとすることができる。
【0027】
本実施の形態2によれば、ロックウール24の加工がなくなり、施工性が向上する。また、炭酸カルシウム系シーリング材28の吸熱効果により、図6のような構造と同等の遮熱性能を発揮することができる。さらに、鋼製ロッド22に塗布した耐火塗料30が発泡することで、鋼製ロッド22と目地材の間に隙間が生じることを防止することができる。したがって、施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる。
【0028】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図3に示すように、本実施の形態3に係る目地構造300は、上記の実施の形態2において、シリコーン系シーリング材26の代わりに炭酸カルシウム系シーリング材28を用いるとともに、振動吸収を目的とした緩衝材としてロックウール24を併用したものである。したがって、炭酸カルシウム系シーリング材28が本発明の第一目地材および第二目地材に相当する。目地部16への充填材として使用される炭酸カルシウム系シーリング材28は振動に弱く、同材だけでは同材表面がひび割れ、遮熱性能が低下するおそれがあることから、炭酸カルシウム系シーリング材28を充填材とし、振動吸収を目的とした緩衝材としてロックウール24を併用する。ロックウール24は、2層目の耐火被覆材14の側端面14Aと炭酸カルシウム系シーリング材28の間の周囲に充填する。
【0029】
本実施の形態3によれば、施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる。特に、シリコーン系シーリング材26の代わりに炭酸カルシウム系シーリング材28を使用することで遮熱性能が向上するとともに、施工コストを削減することができる。また、振動による炭酸カルシウム系シーリング材28のひび割れと、遮熱性能の低下を防止することができる。
【0030】
(本発明の効果の検証)
次に、本発明の効果を確認するために行った耐火実験について説明する。
耐火実験に使用した試験体の仕様、および非加熱側目地部近傍温度測定位置Pを図4に示す。図4(1)は実施例の試験体、図4(2)は従来技術であるロックウール充填仕様の試験体(比較例)である。
【0031】
耐火実験は、試験体を耐火試験炉内に設置して、ISO834-1に定められている加熱温度-時間曲線にしたがって1時間の加熱を行う加熱試験とした。加熱終了後、各試験体は炉内で放冷した。
【0032】
図5の温度測定結果に示すように、非加熱側目地部近傍の最高温度は、実施例が125℃、比較例が188℃となった。また、実施例において、加熱側から非加熱側へ貫通する隙間は生じなかった。以上より、実施例の目地構造が所要の耐火性能を有することが確認できた。
【0033】
以上説明したように、本発明に係る目地構造によれば、構造部材の外側に設けられた耐火被覆材の目地部に形成される目地構造であって、前記目地部の前記構造部材の外側を覆うように設けられ、遮熱性を有するペースト状の不定形耐火材料からなる第一目地材と、この第一目地材の外側に設けられ、変形追従性を有するペースト状の不定形材料からなる第二目地材とを備えるので、施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる。
【0034】
また、本発明に係る他の目地構造によれば、前記目地部が、前記耐火被覆材の材厚方向に対して斜めに通る斜形の目地部であるので、斜形の目地部においても施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる。
【0035】
また、本発明に係る他の目地構造によれば、第一目地材が、炭酸カルシウム系シーリング材であるので、焼失するおそれがない上、遮熱性にも優れることから、耐火性能をさらに向上することができる。
【0036】
また、本発明に係る目地構造の施工方法によれば、上述した目地構造を施工する方法であって、前記目地部の前記構造部材の外側の領域に第一目地材を充填した後、この第一目地材の外側の領域に第二目地材を充填するので、施工性の向上と耐火性能の担保を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係る目地構造およびその施工方法は、耐火被覆材に設ける目地に有用であり、特に、施工性の向上と耐火性能の担保を実現するのに適している。
【符号の説明】
【0038】
12 構造部材
12A 外側表面
14 耐火被覆材
14A 側端面
16 目地部
18 第一目地材
20 第二目地材
22 鋼製ロッド
24 ロックウール
26 シリコーン系シーリング材
28 炭酸カルシウム系シーリング材
30 耐火塗料
D 厚さ方向
100~300 目地構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6