(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041326
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】作業機械における車体座標系を設定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
E02F9/20 N
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146072
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】篠田 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 光
(72)【発明者】
【氏名】片岡 隆之
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA04
2D003BB07
2D003BB09
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
(57)【要約】
【課題】作業機械において、第1車体を旋回させることなく、精度よく車体座標系を設定する。
【解決手段】システムは、姿勢センサと、位置計測装置と、コントローラとを備える。姿勢センサは、第1車体の姿勢を検出する。位置計測装置は、作業機に含まれる第1ターゲット部の位置を計測する。コントローラは、姿勢センサによって検出された第1車体を第2車体に対して静止させた状態での第1車体の姿勢を取得する。コントローラは、第1車体の姿勢と第1ターゲット部の位置とに基づいて、車体座標系を設定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車体と、前記第1車体と旋回可能に接続された第2車体と、前記第1車体に対して動作可能に取り付けられた作業機と、を備える作業機械において、前記第1車体を基準とする車体座標系を設定するためのシステムであって、
前記第1車体の姿勢を検出する姿勢センサと、
前記作業機に含まれる第1ターゲット部の位置を計測する位置計測装置と、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1車体を前記第2車体に対して静止させた状態での前記第1車体の姿勢を、前記姿勢センサから取得し、
前記第1車体の姿勢と前記第1ターゲット部の位置とに基づいて、前記車体座標系を設定する、
システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記第1車体を前記第2車体に対して静止させた状態で前記作業機を前記第1車体に対して動作させることで、前記第1ターゲット部の複数の位置を取得し、
前記第1車体の姿勢と前記第1ターゲット部の複数の位置とに基づいて、前記車体座標系を設定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記作業機は、前記第1車体の上下方向及び前後方向に延びる作業機平面内で動作可能に、前記第1車体に取り付けられており、
前記コントローラは、
前記第1車体を前記第2車体に対して静止させた状態で、前記作業機を動作させることで、前記作業機平面内における前記第1ターゲット部の複数の位置を取得し、
前記第1ターゲット部の複数の位置に基づいて、前記作業機平面の法線ベクトルを算出し、
前記作業機平面の法線ベクトルに基づいて、前記第1車体の左右方向を示す前記車体座標系のy軸の方向を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1車体の姿勢は、前記第1車体のピッチ角を含み、
前記コントローラは、前記第1車体のピッチ角に基づいて、前記第1車体の前後方向を示す前記車体座標系のx軸の方向を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記作業機は、前記第1車体の上下方向及び前後方向に延びる作業機平面内で動作可能に、前記第1車体に取り付けられており、
前記第1車体の姿勢は、前記第1車体のピッチ角を含み、
前記コントローラは、
前記第1車体を前記第2車体に対して静止させた状態で、前記作業機を動作させることで、前記作業機平面内における前記第1ターゲット部の複数の位置を取得し、
前記第1ターゲット部の複数の位置に基づいて、前記作業機平面の法線ベクトルを算出し、
前記作業機平面の法線ベクトルに基づいて、前記第1車体の左右方向を示す前記車体座標系のy軸の方向を決定し、
前記第1車体のピッチ角に基づいて、前記第1車体の前後方向を示す前記車体座標系のx軸の方向を決定し、
前記y軸の方向と前記x軸の方向とに基づいて、前記第1車体の上下方向を示す前記車体座標系のz軸の方向を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記作業機械は、位置センサをさらに備え、
前記位置センサは、前記作業機械の外部を基準とする外部座標系における前記位置センサの位置を検出し、
前記コントローラは、
前記車体座標系における前記位置センサと前記作業機の刃先との位置関係を規定する機械パラメータを記憶しており、
前記外部座標系における前記位置センサの位置と、前記機械パラメータとに基づいて、前記外部座標系における前記刃先の位置を算出する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、
所定の施工作業を行うための前記刃先の目標軌跡を取得し、
前記外部座標系における前記刃先の位置に基づいて、前記刃先が前記目標軌跡に従って移動するように、前記作業機を制御する、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記位置計測装置は、前記外部座標系における前記作業機に含まれる第2ターゲット部の位置を計測し、
前記コントローラは、
前記作業機の寸法を規定する機械パラメータを記憶しており、
前記計測された第2ターゲット部の位置に基づいて、前記機械パラメータの較正を行う、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記外部座標系における前記第2ターゲット部の位置を前記位置計測装置に送信し、
前記位置計測装置は、前記コントローラから受信した前記第2ターゲット部の位置に基づいて、前記第2ターゲット部の複数の位置の計測を自動的に切り替える、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記位置計測装置は、前記外部座標系における前記作業機の刃先の位置と、前記外部座標系における前記位置センサの位置とを計測し、
前記コントローラは、
前記計測された刃先の位置と、前記計測された位置センサの位置とに基づいて、前記位置センサに対する前記刃先の位置を示す外部計測値を生成し、
前記較正された機械パラメータに基づいて、前記位置センサに対する前記刃先の位置を算出することで、前記位置センサに対する前記刃先の位置を示す演算値を生成し、
前記外部計測値と、前記演算値とを比較することで、前記機械パラメータの較正の精度を評価する、
請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
第1車体と、前記第1車体と旋回可能に接続された第2車体と、前記第1車体に対して動作可能に取り付けられた作業機と、を備える作業機械において、前記第1車体を基準とする車体座標系を設定するための方法であって、
前記第1車体の姿勢を検出する姿勢センサにより、前記第1車体を前記第2車体に対して静止させた状態での前記第1車体の姿勢を取得することと、
前記作業機に含まれる第1ターゲット部の位置を計測することと、
前記第1車体の姿勢と前記第1ターゲット部の位置とに基づいて、前記車体座標系を設定すること、
を備える方法。
【請求項12】
前記第1車体を前記第2車体に対して静止させた状態で前記作業機を前記第1車体に対して動作させることで、前記第1ターゲット部の複数の位置を取得することと、
前記第1車体の姿勢と前記第1ターゲット部の複数の位置とに基づいて、前記車体座標系を設定すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記作業機は、前記第1車体の上下方向及び前後方向に延びる作業機平面内で動作可能に、前記第1車体に取り付けられており、
前記第1車体を前記第2車体に対して静止させた状態で、前記作業機を動作させることで、前記作業機平面内における前記第1ターゲット部の複数の位置を取得することと、
前記第1ターゲット部の複数の位置に基づいて、前記作業機平面の法線ベクトルを算出することと、
前記作業機平面の法線ベクトルに基づいて、前記第1車体の左右方向を示す前記車体座標系のy軸の方向を決定すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1車体の姿勢は、前記第1車体のピッチ角を含み、
前記第1車体のピッチ角に基づいて、前記第1車体の前後方向を示す前記車体座標系のx軸の方向を決定すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記作業機は、前記第1車体の上下方向及び前後方向に延びる作業機平面内で動作可能に、前記第1車体に取り付けられており、
前記第1車体の姿勢は、前記第1車体のピッチ角を含み、
前記第1車体を前記第2車体に対して静止させた状態で、前記作業機を動作させることで、前記作業機平面内における前記第1ターゲット部の複数の位置を取得することと、
前記第1ターゲット部の複数の位置に基づいて、前記作業機平面の法線ベクトルを算出することと、
前記作業機平面の法線ベクトルに基づいて、前記第1車体の左右方向を示す前記車体座標系のy軸の方向を決定することと、
前記第1車体のピッチ角に基づいて、前記第1車体の前後方向を示す前記車体座標系のx軸の方向を決定することと、
前記y軸の方向と前記x軸の方向とに基づいて、前記第1車体の上下方向を示す前記車体座標系のz軸の方向を決定すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記作業機械は、位置センサをさらに備え、
前記位置センサは、前記作業機械の外部を基準とする外部座標系における前記位置センサの位置を検出し、
前記車体座標系における前記位置センサと前記作業機の刃先との位置関係を規定する機械パラメータと、前記外部座標系における前記位置センサの位置とに基づいて、前記外部座標系における前記刃先の位置を算出すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項17】
所定の施工作業を行うための前記刃先の目標軌跡を取得することと、
前記外部座標系における前記刃先の位置に基づいて、前記刃先が前記目標軌跡に従って移動するように、前記作業機を制御すること、
をさらに備える請求項16に記載の方法。
【請求項18】
位置計測装置によって計測された、前記外部座標系における前記作業機に含まれる第2ターゲット部の位置を取得することと、
前記作業機の寸法を規定する機械パラメータを、前記計測された第2ターゲット部の位置に基づいて較正すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記外部座標系における前記第2ターゲット部の位置を前記位置計測装置に送信することと、
前記位置計測装置が、受信した前記第2ターゲット部の位置に基づいて、前記第2ターゲット部の複数の位置の計測を切り替えること、
をさらに備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記位置計測装置によって計測された、前記外部座標系における前記作業機の刃先の位置と、前記外部座標系における前記位置センサの位置とを取得することと、
前記計測された刃先の位置と、前記計測された位置センサの位置とに基づいて、前記位置センサに対する前記刃先の位置を示す外部計測値を生成することと、
前記較正された機械パラメータに基づいて、前記位置センサに対する前記刃先の位置を算出することで、前記位置センサに対する前記刃先の位置を示す演算値を生成することと、
前記外部計測値と、前記演算値とを比較することで、前記機械パラメータの較正の精度を評価すること、
をさらに備える請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械における車体座標系を設定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、第1車体と、第1車体と旋回可能に接続された第2車体と、第1車体に対して動作可能に取り付けられた作業機とを備えるものがある。第1車体が第2車体に対して旋回したり、作業機が動作したりすることで、作業機械は、掘削などの施工作業を行う。従来、作業機の位置を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1では、作業機械は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)などの位置センサを備えている。位置センサは、作業機械において位置センサが取り付けられたグローバル座標系における位置を検出する。グローバル座標系における位置は、GNSSによって計測される座標系であり、地球に固定された原点を基準とした座標系である。
【0003】
また、作業機械のコントローラは、位置センサの位置から、車体座標系における作業機の位置を算出する。車体座標系は、作業機械を基準とする座標系である。例えば、コントローラは、位置センサに対する作業機の位置を、作業機械の車体の各構成部品の寸法、及び、作業機の角度などの機械パラメータに基づいて算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように作業機の位置を精度よく算出するためには、作業機械における車体座標系を精度よく設定することが求められる。作業機械における車体座標系の設定方法として例えば以下のものがある。
【0006】
まず、第1車体に第1ターゲットプリズムが取り付けられる。そして、第1車体を旋回させることで、第1ターゲットプリズムの複数の位置が、外部の位置計測装置によって計測される。これらの第1ターゲットプリズムの複数の位置は、コントローラに入力され、コントローラは、第1ターゲットプリズムの複数の位置に基づいて、第1車体の旋回平面を算出する。
【0007】
次に、作業機に第2ターゲットプリズムが取り付けられる。そして、作業機を第1車体に対して上下に動作させることで、第2ターゲットプリズムの複数の位置が、外部の位置計測装置によって計測される。これらの第2ターゲットプリズムの複数の位置は、コントローラに入力され、コントローラは、第2ターゲットプリズムの複数の位置に基づいて、作業機が動作する作業機平面を算出する。そして、コントローラは、旋回平面と作業機平面とに基づいて、第1車体に仮想的に設定される原点を基準とした車体座標系を算出する。
【0008】
しかしながら、上述した作業機械における車体座標系の設定方法では、第1車体の旋回時の計測誤差により、車体座標系に誤差が生じる。第1車体を旋回させるためには、大きな作業エリアが必要となる。また、第1車体を旋回させるために、作業の工数が増大してしまう。本発明の目的は、作業機械において、第1車体を旋回させることなく、精度よく車体座標系を設定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るシステムは、作業機械において車体座標系を設定するためのシステムである。作業機械は、第1車体と、第1車体と旋回可能に接続された第2車体と、第1車体に対して動作可能に取り付けられた作業機と、を備える。車体座標系は、第1車体を基準とする座標系である。当該システムは、姿勢センサと、位置計測装置と、コントローラとを備える。姿勢センサは、第1車体の姿勢を検出する。位置計測装置は、作業機に含まれる第1ターゲット部の位置を計測する。コントローラは、第1車体を第2車体に対して静止させた状態での第1車体の姿勢を、姿勢センサから取得する。コントローラは、第1車体の姿勢と第1ターゲット部の位置とに基づいて、車体座標系を設定する。
【0010】
本発明の他の態様に係る方法は、作業機械において車体座標系を設定するための方法である。作業機械は、第1車体と、第1車体と旋回可能に接続された第2車体と、第1車体に対して動作可能に取り付けられた作業機と、を備える。車体座標系は、第1車体を基準とする座標系である。当該方法は、第1車体の姿勢を検出する姿勢センサにより、第1車体を第2車体に対して静止させた状態での第1車体の姿勢を取得することと、作業機に含まれる第1ターゲット部の位置を計測することと、第1車体の姿勢と第1ターゲット部の位置とに基づいて、車体座標系を設定すること、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1車体の旋回平面を求める代わりに、姿勢センサが検出した第1車体の姿勢に基づいて、車体座標系が設定される。そのため、作業機械において、第1車体を旋回させることなく、精度よく車体座標系を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】作業機械およびその制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】作業機械と外部座標系及び車体座標系を示す模式的な側面図である。
【
図4】作業機械と外部座標系及び車体座標系を示す模式的な背面図である。
【
図5】作業機械と外部座標系及び車体座標系を示す模式的な上面図である。
【
図6】機械パラメータを較正するための処理を示すフローチャートである。
【
図11】較正の精度を評価する方法を示す図である。
【
図12】検出した刃先位置を利用した作業機械の自動制御の一例を示す図である。
【
図13】検出した刃先位置を利用した作業機械のアシスタント画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係る作業機械1の制御システムについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、作業機械1の側面図である。本実施形態において、作業機械1は油圧ショベルなどの掘削機(excavator)である。
【0014】
図1に示すように、作業機械1は、本体2と作業機3とを含む。作業機3は、本体2の前部に取り付けられている。本体2は、第1車体4と第2車体5とを含む。第1車体4は、第2車体5に対して旋回可能に接続されている。第1車体4には、キャブ6が配置されている。第2車体5は、履帯7を含む。なお、
図1では、左右の履帯7のうち一方のみが図示されている。履帯7が駆動されることで、作業機械1は走行する。
【0015】
作業機3は、第1車体4に対して、上下に動作可能に取り付けられる。作業機3は、ブーム11と、アーム12と、バケット13とを含む。ブーム11は、第1車体4に対して、ブームピン28回りに回転可能に取り付けられている。アーム12は、ブーム11に対して、アームピン29回りに回転可能に取り付けられている。バケット13は、アーム12に対して、バケットピン30回りに回転可能に取り付けられている。
【0016】
作業機3は、ブームシリンダ14と、アームシリンダ15と、バケットシリンダ16とを含む。ブームシリンダ14と、アームシリンダ15と、バケットシリンダ16とは、例えば油圧シリンダである。ブームシリンダ14と、アームシリンダ15と、バケットシリンダ16とは、後述する油圧ポンプ22からの作動油によって、駆動される。ブームシリンダ14は、ブーム11を動作させる。アームシリンダ15は、アーム12を動作させる。バケットシリンダ16は、バケット13を動作させる。
【0017】
図2は、作業機械1およびその制御システムの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、作業機械1は、駆動源21と、油圧ポンプ22と、動力伝達装置23と、コントローラ24とを含む。駆動源21は、コントローラ24からの指令信号により制御される。駆動源21は、例えば内燃エンジンである。或いは、駆動源は、電動モータ、或いは水素エンジンなどの駆動源を含んでもよい。油圧ポンプ22は、駆動源21によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ22から吐出された作動油は、ブームシリンダ14と、アームシリンダ15と、バケットシリンダ16とに供給される。
【0018】
作業機械1は、旋回モータ25を含む。旋回モータ25は、例えば油圧モータである。旋回モータ25は、油圧ポンプ22からの作動油によって駆動される。或いは、旋回モータ25は、電動モータであってもよい。旋回モータ25は、第1車体4を旋回させる。なお、
図2では、1つの油圧ポンプが図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0019】
油圧ポンプ22は可変容量ポンプである。油圧ポンプ22にはポンプ制御装置26が接続されている。ポンプ制御装置26は、油圧ポンプ22の傾転角を制御する。ポンプ制御装置26は、例えば電磁弁を含み、コントローラ24からの指令信号により制御される。コントローラ24は、ポンプ制御装置26を制御することで、油圧ポンプ22の容量を制御する。
【0020】
作業機械1は、制御弁27を含む。油圧ポンプ22とシリンダ14-16と旋回モータ25とは、制御弁27を介して油圧回路によって接続されている。制御弁27は、コントローラ24からの指令信号によって制御される。制御弁27は、油圧ポンプ22からシリンダ14-16及び旋回モータ25に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ24は、制御弁27を制御することで、作業機3の動作を制御する。コントローラ24は、制御弁27を制御することで、第1車体4の旋回を制御する。なお、シリンダ14-16は、油圧シリンダに限らず、電動モータによって駆動されるメカニカルシリンダであってもよい。
【0021】
動力伝達装置23は、駆動源21の駆動力を第2車体5に伝達する。履帯7は、動力伝達装置23からの駆動力によって駆動されて、作業機械1を走行させる。動力伝達装置23は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。或いは、動力伝達装置23は、HST(Hydro Static Transmission)、或いはHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などの他の形式のトランスミッションであってもよい。
【0022】
コントローラ24は、CPUなどのプロセッサ31を含む。プロセッサ31は、作業機械1の制御のための処理を行う。コントローラ24は、記憶装置32を含む。記憶装置32は、RAM或いはROMなどのメモリ、及び、HDD(Hard Disk Drive)或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含む。記憶装置32は、作業機械1の制御のためのデータ及びプログラムを記憶している。
【0023】
制御システムは、操作装置33を含む。操作装置33は、オペレータによって操作可能である。操作装置33は、例えば、レバー、ペダル、或いはスイッチを含む。操作装置33は、オペレータによる操作に応じた操作信号をコントローラ24に出力する。コントローラ24は、オペレータによる操作装置33の操作に応じて、作業機3を動作させるように、制御弁27を制御する。コントローラ24は、オペレータによる操作装置33の操作に応じて、第1車体4を旋回させるように、制御弁27を制御する。コントローラ24は、オペレータによる操作装置33の操作に応じて、作業機械1を走行させるように、駆動源21及び動力伝達装置23を制御する。
【0024】
制御システムは、入力装置34とディスプレイ35とを含む。入力装置34は、オペレータによって操作可能である。入力装置34は、例えばタッチスクリーンである。ただし、入力装置34は、ハードウェアキーを含んでもよい。オペレータは、入力装置34を操作することで、作業機械1に関する各種の設定を入力する。入力装置34は、オペレータの操作に応じた入力信号を出力する。ディスプレイ35は、例えばLCD、OELD、或いは他の種類のディスプレイである。ディスプレイ35は、コントローラ24からの表示信号に応じた画面を表示する。
【0025】
制御システムは、位置センサ36と、姿勢センサ37と、作業機センサ38とを含む。位置センサ36は、本体2の位置を検出する。本体2の位置は、外部座標系で示される。外部座標系は、作業機械1の外部を基準とする座標系である。外部座標系は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)によるグローバル座標系である。或いは、外部座標系は、作業機械1が使われる作業現場内での現場座標系であってもよい。
【0026】
図3は、作業機械1と外部座標系X1-Y1-Z1及び車体座標系X2-Y2-Z2を示す模式的な側面図である。
図4は、作業機械1と外部座標系X1-Y1-Z1及び車体座標系X2-Y2-Z2を示す模式的な背面図である。
図5は、作業機械1と外部座標系X1-Y1-Z1及び車体座標系X2-Y2-Z2を示す模式的な上面図である。
【0027】
図3に示すように、位置センサ36は、アンテナ41と受信機42とを含む。アンテナ41は、本体2に取り付けられている。受信機42は、外部座標系X1-Y1-Z1におけるアンテナ41の位置(以下、「アンテナ位置」と呼ぶ)P1を検出する。受信機42は、外部座標系X1-Y1-Z1におけるアンテナ位置P1を示すアンテナ位置データを出力する。なお、アンテナ位置は、複数であってもよい。
【0028】
姿勢センサ37は、第1車体4に取り付けられている。姿勢センサ37は、第1車体4の姿勢を検出する。第1車体4の姿勢は、第1車体4のヨー角θ
y1と、ピッチ角θ
p1と、ロール角θ
r1とを含む。
図3に示すように、第1車体4のピッチ角θ
p1は、第1車体4の前後方向の傾斜角度である。
図4に示すように、第1車体4のロール角θ
r1は、第1車体4の左右方向の傾斜角度である。
図5に示すように、第1車体4のヨー角θ
y1は、第1車体4の前後方向の方位である。姿勢センサ37は、例えばIMU(Inertial Measurement Unit)である。姿勢センサ37は、第1車体4の姿勢を示す第1姿勢データを出力する。
【0029】
作業機センサ38は、作業機3の姿勢を検出する。作業機3は、
図4及び
図5に示す作業機平面50内で動作可能に、第1車体4に取り付けられている。作業機平面50は、作業機3が動作する際に通過する平面である。例えば、作業機平面50は、作業機3の左右方向における中心を通り、第1車体4の上下方向及び前後方向に延びる仮想的な平面である。なお、作業機平面50は、作業機3の左右方向における中心に限らず、中心から左右にオフセットした位置を通ってもよい。ブーム11と、アーム12と、バケット13とのそれぞれがこの作業機平面50内で回転することで、作業機3の姿勢が変化する。
【0030】
図3に示すように、作業機3の姿勢は、ブーム角θ1と、アーム角θ2と、バケット角θ3とを含む。作業機センサ38は、ブーム角θ1と、アーム角θ2と、バケット角θ3とを示す第2姿勢データを出力する。ブーム角θ1は、本体2の車体座標系の上下方向に対するブーム11の角度である。アーム角θ2は、ブーム11に対するアーム12の角度である。バケット角θ3は、アーム12に対するバケット13の角度である。
【0031】
詳細には、作業機センサ38は、
図3に示すブーム角センサ38Aと、アーム角センサ38Bと、バケット角センサ38Cとを含む。ブーム角センサ38Aは、ブーム角θ1を検出する。アーム角センサ38Bは、アーム角θ2を検出する。バケット角センサ38Cは、バケット角θ3を検出する。
【0032】
詳細には、ブーム角センサ38Aは、ブームシリンダ14のストローク長を検出する。アーム角センサ38Bは、アームシリンダ15のストローク長を検出する。バケット角センサ38Cは、バケットシリンダ16のストローク長を検出する。各シリンダ14-16のストローク長から、ブーム11とアーム12とバケット13との各回転角度θ1~θ3が算出される。或いは、ブーム角センサ38Aと、アーム角センサ38Bと、バケット角センサ38Cとは、それぞれブーム11とアーム12とバケット13との回転角度θ1~θ3を直接的に検出するセンサであってもよい。或いは、ブーム角センサ38Aと、アーム角センサ38Bと、バケット角センサ38Cとは、IMUであってもよい。
【0033】
コントローラ24は、操作装置33から操作信号を受信する。コントローラ24は、入力装置34から入力信号を受信する。コントローラ24は、ディスプレイ35に表示信号を出力する。コントローラ24は、位置センサ36からアンテナ位置データを受信する。コントローラ24は、姿勢センサ37から第1姿勢データを受信する。コントローラ24は、作業機センサ38から第2姿勢データを受信する。
【0034】
コントローラ24は、受信したデータと機械パラメータとに基づいて、作業機3の位置を算出する。詳細には、コントローラ24は、受信したデータと機械パラメータとに基づいて、バケット13の刃先の位置(以下、「刃先位置」と呼ぶ)P2を算出する。コントローラ24は、上述した外部座標系X1-Y1-Z1における刃先位置P2を算出する。
【0035】
機械パラメータは、記憶装置32に記憶されている。機械パラメータは、車体座標系X2-Y2-Z2におけるアンテナ41と作業機3の刃先位置P2との位置関係を規定する。
図3から
図5に示すように、車体座標系X2-Y2-Z2は、第1車体4に設けられた仮想の原点を基準とする座標系である。車体座標系X2-Y2-Z2のX2軸は、第1車体4の前後方向を示す。車体座標系X2-Y2-Z2のY2軸は、第1車体4の左右方向を示す。車体座標系X2-Y2-Z2のZ2軸は、第1車体4の上下方向を示す。
【0036】
機械パラメータは、アンテナパラメータと作業機パラメータとを含む。アンテナパラメータは、車体座標系X2-Y2-Z2におけるブームピン28などの基準位置に対するアンテナ位置P1の相対位置を示す。基準位置は、ブームピン28に限らず、他の位置であってもよい。
図3及び
図4に示すように、アンテナパラメータは、アンテナ位置P1とブームピン28との間の車体座標系X2-Y2-Z2のX2軸方向における距離Lxと、Y2軸方向における距離Lyと、Z2軸方向における距離Lzとを含む。
【0037】
図3に示すように、作業機パラメータは、ブーム11の長さL1と、アーム12の長さL2と、バケット13の長さL3を含む。詳細には、ブーム11の長さL1は、ブームピン28とアームピン29との間の距離である。アーム12の長さL2は、アームピン29とバケットピン30との間の距離である。バケット13の長さは、バケットピン30とバケット13の刃先との間の距離である。
【0038】
コントローラ24は、外部座標系X1-Y1-Z1におけるアンテナ位置P1と、機械パラメータと、第1姿勢データと、第2姿勢データとに基づいて、外部座標系X1-Y1-Z1における刃先位置P2を算出する。例えば、コントローラ24は、機械パラメータと第2姿勢データとに基づいて、車体座標系X2-Y2-Z2におけるアンテナ位置P1と刃先位置P2との位置関係を算出する。コントローラ24は、第1姿勢データから、外部座標系X1-Y1-Z1と車体座標系X2-Y2-Z2との位置関係を算出する。そして、コントローラ24は、車体座標系X2-Y2-Z2におけるアンテナ位置P1と刃先位置P2との位置関係と、外部座標系X1-Y1-Z1と車体座標系X2-Y2-Z2との位置関係とから、車体座標系X2-Y2-Z2における刃先位置P2を、外部座標系X1-Y1-Z1における刃先位置P2に換算する。
【0039】
以上のように、コントローラ24は、位置センサ36が検出した外部座標系X1-Y1-Z1におけるアンテナ位置P1から、外部座標系X1-Y1-Z1における刃先位置P2を算出する。
【0040】
次に、刃先位置P2を算出するために用いられる機械パラメータを較正する処理について説明する。
図6は、機械パラメータを較正するための処理を示すフローチャートである。較正の対象となるパラメータは、上述した機械パラメータの全て、或いは一部であってもよい。
【0041】
まず、ステップS101~S104において、コントローラ24は、作業機械1における車体座標系X2-Y2-Z2を設定する。
図6に示すように、ステップS101において、コントローラ24は、第1ターゲット部の位置を取得する。第1ターゲット部は、車体座標系X2-Y2-Z2を設定するために計測される部分であり、作業機3に含まれる。
図7に示すように、第1ターゲット部は、例えば、バケットピン30である。ただし、第1ターゲット部は、アームピン29であってもよい。或いは、第1ターゲット部は、ブーム11、アーム12、或いはバケット13に含まれる特定の部分であってもよい。コントローラ24は、第1ターゲット部として、バケットピン30の互いに異なる少なくとも3つの位置を取得する。
【0042】
第1ターゲット部の位置は、外部の位置計測装置45によって計測される。位置計測装置45は、計測対象の外部座標系X1-Y1-Z1における位置を計測する。位置計測装置45は、例えばレーザートラッカーである。或いは、位置計測装置45は、トータルステーション、ステレオカメラなどの他の位置計測装置であってもよい。作業機械1のオペレータは、第1車体4を第2車体5に対して旋回させずに静止させた状態で、作業機3を第1車体4に対して、作業機平面50内で動作させる。このとき、位置計測装置45によって、第1ターゲット部の互いに異なる複数の位置が計測される。
【0043】
計測された第1ターゲット部の複数の位置は、コントローラ24に入力される。位置計測装置45は、コントローラ24と通信可能であり、コントローラ24に、第1ターゲット部の複数の位置を示すデータを送信する。或いは、第1ターゲット部の複数の位置を示すデータは、入力装置34を介して、手入力によって、コントローラ24に入力されてもよい。
【0044】
ステップS102では、コントローラ24は、第1姿勢データを取得する。第1姿勢データは、上述したように、姿勢センサ37が検出した第1車体4のピッチ角θp1を含む。
【0045】
ステップS103では、コントローラ24は、作業機平面50を算出する。作業機平面50は、第1ターゲット部の複数の位置を含む。なお、第1ターゲット部の複数の位置が4点以上の場合は、作業機平面50は、複数の位置から算出される最小二乗平面であってもよい。作業機平面50は以下の式(1)で示される。以下の式(1)において、a
1,b
1,c
1は作業機平面50の法線ベクトルを示す。コントローラ24は、第1ターゲット部の複数の位置に基づいて、作業機平面50の法線ベクトルを算出する。
【0046】
ステップS104では、コントローラ24は、車体座標系X2-Y2-Z2を設定する。コントローラ24は、作業機平面50の法線ベクトルに基づいて、車体座標系X2-Y2-Z2のY2軸の方向を決定する。コントローラ24は、姿勢センサ37が検出した第1車体4のピッチ角θp1に基づいて、車体座標系X2-Y2-Z2のX2軸の方向を決定する。そして、コントローラ24は、Y2軸の方向とX2軸の方向とに基づいて、車体座標系X2-Y2-Z2のZ2軸の方向を決定する。詳細には、コントローラ24は、以下のように、車体座標系X2-Y2-Z2の外部座標系X1-Y1-Z1に対する回転行列Rを算出することで、車体座標系X2-Y2-Z2を設定する。
【0047】
車体座標系X2-Y2-Z2の回転行列Rは、車体座標系X2-Y2-Z2の回転姿勢を表すオイラー角として、ヨー角θ
Y2、ピッチ角θ
p2、ロール角θ
r2を用いて、以下の式(2)で示される。
【0048】
車体座標系X2-Y2-Z2のY2軸方向ベクトルは、上述した作業機平面50の法線ベクトルと一致する。従って、式(2)のY2軸方向ベクトルと作業機平面50の法線ベクトルとから、以下の式(3)が成り立つ。
【0049】
車体座標系X2-Y2-Z2のピッチ角θ
p2は、姿勢センサ37によって検出されるピッチ角θ
p1と一致する。従って、姿勢センサ37によって検出されるピッチ角θ
p1を式(3)のピッチ角θ
p2に代入して式(3)を展開することで、以下の式(4)、(5)、(6)に示すように、車体座標系X2-Y2-Z2の回転姿勢を示すオイラー角として、ピッチ角θ
p2、ロール角θ
r2、ヨー角θ
y2がそれぞれ求まる。
そして、式(4)、(5)、(6)のヨー角θ
y2、ピッチ角θ
p2、ロール角θ
r2を上記の式(2)に代入することで、車体座標系X2-Y2-Z2の回転行列Rが求まる。
【0050】
次に、
図6に示すように、ステップS105,S106において、コントローラ24は、設定された車体座標系X2-Y2-Z2を用いて、機械パラメータの較正を行う。ステップS105では、コントローラ24は、第2ターゲット部の位置を取得する。第2ターゲット部は、機械パラメータの較正を行うために計測される部分である。
【0051】
図8に示すように、第2ターゲット部は、ブームピン28とアンテナ位置P1とを含む。コントローラ24は、ブームピン28とアンテナ位置P1とを取得する。
図9に示すように、第2ターゲット部は、バケットピン30を含む。オペレータは、作業機3を動作させることで、互いに異なる複数のバケットピン30の位置を取得する。
図10に示すように、第2ターゲット部は、刃先位置P2を含む。オペレータは、作業機3を動作させることで、互いに異なる複数の刃先位置P2を取得する。ただし、第2ターゲット部は、上述した部分以外の部分であってもよい。例えば、第2ターゲット部は、アームピン29を含んでもよい。なお、コントローラ24は、作業機3の1つの姿勢での複数の第2ターゲット部の位置を取得してもよい。
【0052】
第2ターゲット部の位置は、外部の位置計測装置45によって計測される。位置計測装置45は、カメラ46を備えており、カメラ46が捉えた計測対象の位置をロックオンして計測する。コントローラ24は、車体座標系X2-Y2-Z2における第2ターゲット部の位置を算出し、設定された車体座標系X2-Y2-Z2を用いて、車体座標系X2-Y2-Z2における第2ターゲット部の位置を外部座標系X1-Y1-Z1における第2ターゲット部の位置に変換して、位置計測装置45に送信する。位置計測装置45は、コントローラ24から受信した第2ターゲット部の位置にカメラ46を向けることで、第2ターゲット部の位置をロックオンして計測する。位置計測装置45は、計測した第2ターゲット部の位置(以下、「外部計測値」と呼ぶ)をコントローラ24に送信する。
【0053】
上述したコントローラ24から位置計測装置45に送信される第2ターゲット部の位置は、較正前の機械パラメータを用いて算出されるため、精度の高くない概算位置である。しかし、位置計測装置45は、第2ターゲット部の概算位置に基づいて、第2ターゲットが移動しても、カメラ46により自動的に第2ターゲット部をロックオンすることができる。それにより、位置計測装置45は、ロックオンする第2ターゲット部を自動で切り替えることができる。例えば、位置計測装置45は、ロックオンする第2ターゲット部を、アームピン29からバケットピン30に自動で切り替えることができる。
【0054】
ステップS106では、コントローラ24は、機械パラメータの較正を実行する。コントローラ24は、第1姿勢データと、第2姿勢データと、機械パラメータとに基づいて、外部座標系X1-Y1-Z1における第2ターゲット部の位置(以下、「演算値」と呼ぶ)を算出する。コントローラ24は、第2ターゲット部の位置の外部計測値と演算値との誤差に基づいて、機械パラメータの較正を行う。或いは、コントローラ24は、第2ターゲット部の位置の外部計測値に基づいて、機械パラメータの較正を行ってもよい。機械パラメータの具体的な較正方法については、公知の較正方法が用いられてもよい。例えば、アームピン29とバケットピン30の位置が計測され、計測されたアームピン29とバケットピン30の位置から算出された距離によって、アーム12の長さL2が較正されてもよい。或いは、作業機3の複数の姿勢でのアームピン29の位置の計測値と演算値との誤差評価関数が最小となるように、アーム12の長さが較正されてもよい。
【0055】
そして、ステップS107において、コントローラ24は、較正の精度を評価する。
図11に示すように、位置計測装置45は、刃先位置P2とアンテナ位置P1とを計測し、コントローラ24に送信する。コントローラ24は、位置計測装置45から受信した刃先位置P2とアンテナ位置P1とに基づいて、アンテナ位置P1から刃先位置P2に向かうベクトル(以下、「外部計測値」と呼ぶ)を算出する。
【0056】
一方、コントローラ24は、車体座標系X2-Y2-Z2を用いて、アンテナ位置P1から刃先位置P2に向かうベクトルを算出する。コントローラ24は、位置センサ36が検出した位置データを用いずに、第1姿勢データと第2姿勢データと機械パラメータとによって、アンテナ位置P1から刃先位置P2に向かうベクトル(以下、「演算値」と呼ぶ)を算出する。コントローラ24は、アンテナ位置P1から刃先位置P2に向かうベクトルの外部計測値と演算値とを比較することで、誤差を算出する。
【0057】
コントローラ24は、アンテナ位置P1から刃先位置P2に向かうベクトルの外部計測値と演算値との誤差に基づいて、較正の精度を評価する。例えば、コントローラ24は、誤差が閾値以下であるときに、較正が成功したことを示すメッセージ、或いは画像を、ディスプレイに表示してもよい。コントローラ24は、誤差が閾値より大きいときに、較正のやり直しを促すメッセージ、或いは画像を、ディスプレイに表示してもよい。
【0058】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1の制御システムでは、第1車体4の旋回平面を求める代わりに、姿勢センサ37が検出した第1車体4の姿勢に基づいて、車体座標系X2-Y2-Z2が設定される。そのため、作業機械1において、第1車体4を旋回させることなく、精度よく車体座標系X2-Y2-Z2を設定することができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
作業機械1は、油圧ショベルに限らず、クレーン、ホイールローダ、或いはモータグレーダなど第1車体と、第1車体に旋回可能に接続された第2車体とを含む他の種類の作業機械であってもよい。作業機械1の構成は上述したものに限らず、他のアタッチメントに変更されてもよい。
【0061】
コントローラ24は、複数のプロセッサを備えてもよい。複数のプロセッサによって上記の処理が分散して実行されてもよい。コントローラ24は1台に限らず、複数のコントローラによって、上記の処理が分散して実行されてもよい。コントローラ24は、作業機械1の外部に配置されてもよい。機械パラメータは、上記の実施形態のものに限らず、変更、省略、或いは追加されてもよい。
【0062】
作業機械1は、遠隔から操作可能であってもよい。その場合、操作装置33は、作業機械1の外部に配置されてもよい。作業機械1は、自動的に制御されてもよい。その場合、操作装置33は省略されてもよい。
【0063】
コントローラ24は、算出された刃先位置P2を用いて、作業機械1の自動制御を行ってもよい。例えば、
図12に示すように、コントローラ24は、施工対象の現況地形51を示す現況地形データを取得する。コントローラ24は、掘削などの施工作業を行うためのバケット13の刃先の目標軌跡52を取得する。コントローラ24は、算出された刃先位置P2が目標軌跡52に沿って移動するように、作業機3を自動的に制御する。
【0064】
或いは、コントローラ24は、算出された刃先位置P2を用いて、アシスタント画面をディスプレイに表示してもよい。例えば、
図13に示すように、アシスタント画面53は、現況地形54を示す画像と目標地形55を示す画像とを含む。コントローラ24は、算出した刃先位置P2に基づいて、現況地形54と目標地形55とに対応する位置に、作業機械1と刃先位置P2とを示す画像を表示する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、作業機械において、第1車体を旋回させることなく、精度よく車体座標系を設定することができる。
【符号の説明】
【0066】
3・・・作業機
4・・・第1車体
5・・・第2車体
28・・・ブームピン(第2ターゲット部)
30・・・バケットピン(第1ターゲット部、第2ターゲット部)
36・・・位置センサ
37・・・姿勢センサ
45・・・位置計測装置
52・・・目標軌跡
P1・・・アンテナ位置(第2ターゲット部)
P2・・・刃先位置(第2ターゲット部)
X1-Y1-Z1・・・外部座標系
X2-Y2-Z2・・・車体座標系