(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041370
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び研磨加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20240319BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240319BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240319BHJP
C08G 18/61 20060101ALI20240319BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240319BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/24 A
H01L21/304 622F
C08G18/10
C08G18/61
C08G18/32 025
C08G18/65 023
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146141
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 健太
【テーマコード(参考)】
3C158
4J034
5F057
【Fターム(参考)】
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5F057EA33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】研磨パッドと被研磨物との摩擦抵抗を低減でき、被研磨物に良好な平坦性を付与することができる、研磨パッド等を提供する。
【解決手段】研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を含み、ポリウレタン樹脂が、式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)に由来する単位(a)と、ポリアミン(B)に由来する単位(b)と、(A)とは異なる、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(C)に由来する単位(c)と、を有し、(a)の含有量が、ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~20.0質量%である。
(式(I)中、Rは、各々独立して、炭素数1~10の有機基又は水素原子を表し、nは5~25の整数を表す。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する樹脂シートを備える研磨パッドであって、
前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂を含み、
前記ポリウレタン樹脂が、
下記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)に由来する単位(a)と、
ポリアミン(B)に由来する単位(b)と、
前記ポリシロキサンジオール(A)とは異なるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であって末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(C)に由来する単位(c)と、
を有し、
前記単位(a)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~20.0質量%である、研磨パッド。
【化1】
(式(I)中、Rは、各々独立して、炭素数1~10の有機基又は水素原子を表し、nは5~25の整数を表す。)
【請求項2】
前記ポリオール化合物が、任意成分として、ポリシロキサン化合物を含み、
前記ポリシロキサン化合物の含有量が、前記プレポリマー(C)を100質量%として、1.0質量%未満である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ポリシロキサンジオール(A)が、前記式(I)における前記Rの全てがメチル基であるポリシロキサンジオール(A1)を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記ポリアミン(B)が、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記樹脂シートのA硬度が50度以上であり、かつ、前記樹脂シートのD硬度が60度以下である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記樹脂シートの密度が、0.3~0.6g/cm3である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記樹脂シートの動摩擦力が、5.0~5.8kgf/100cm2である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記樹脂シートの静摩擦力が、4.0~5.0kgf/100cm2である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項9】
下記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)と、ポリアミン(B)と、前記ポリシロキサンジオール(A)とは異なるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であって末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(C)と、を含む組成物であって、当該組成物中の前記ポリシロキサンジオール(A)の含有量が、当該組成物を100質量%として、0.3~20.0質量%である組成物を、硬化反応に供し、ポリウレタン樹脂を含む樹脂シートを得る工程を含む、研磨パッドの製造方法。
【化2】
(式(I)中、Rは、各々独立して、炭素数1~10の有機基又は水素原子を表し、nは5~25の整数を表す。)
【請求項10】
研磨スラリーの存在下、請求項1~8のいずれか1項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を含む、研磨加工物の製造方法。
【請求項11】
前記研磨加工物が、シリコンウェハである、請求項10に記載の研磨加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び研磨加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レンズ、平行平面板、及び反射ミラーのような光学材料、半導体ウェハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板、金属、並びにセラミック等の材料に対して、研磨パッドを用いた研磨加工が行われる。かかる研磨加工の方法として、化学機械研磨(CMP)が広く用いられている。一般に、CMPでは、研磨パッドと半導体ウェハの被研磨面とを摺動させながら、研磨パッドの表面に必要に応じて砥粒成分と酸化剤、キレート剤、酸性又はアルカリ性等の化学成分を含む研磨液を流下させつつ、研磨を行う。
【0003】
CMP用の研磨パッドとしては、研磨レート及び平坦性の確保やスクラッチの抑制等の観点から、種々の研磨パッドが提案されている。例えば、特許文献1には、ポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドであって、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、イソシアネート成分、高分子量ポリオール、及びポリシロキサン基含有ジオールを含有するイソシアネート末端プレポリマーと、鎖延長剤とを含むポリウレタン原料組成物の反応硬化体である研磨パッドが提案されている。また、特許文献2には、ポリシロキサン化合物を含むポリオールとポリイソシアネートとの反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、及び、硬化剤を含有するウレタン樹脂組成物の発泡硬化物である研磨パッドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5875300号
【特許文献2】特許第6424986号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、同文献に記載の研磨パッドは、疎水性が高く、研磨層のスラリー排出性が向上するとともに、研磨層の吸水性及び膨潤性が低下するため、長時間研磨操作を行った場合であっても研磨速度の低下を抑制することができると評価されている。また、特許文献2によれば、同文献に記載の研磨パッドは、優れた研磨レートを有し、そのような研磨パッドを用いて研磨した被研磨材はスクラッチの発生が少なく、被研磨材表面の平滑性に優れた研磨物が得られると評価されている。
一方で、CMP用の研磨パッドには、上述した性能の他、摩擦抵抗が低いことも要求される。摩擦抵抗が高すぎると、研磨パッドによる研磨負荷が高くなるため、被研磨物が研磨中に自転せず、その結果被研磨物の平坦性が悪化することとなる。加えて、発生した摩擦熱により研磨パッドの物性が研磨中に変化して研磨特性が損なわれる懸念がある。
特許文献1及び特許文献2に記載の技術においては、上述した摩擦抵抗の観点から、未だ改善の余地があるといえる。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、研磨パッドと被研磨物との摩擦抵抗を低減でき、被研磨物に良好な平坦性を付与することができる、研磨パッド等を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、所定の成分を含む研磨パッドによって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]
研磨面を有する樹脂シートを備える研磨パッドであって、
前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂を含み、
前記ポリウレタン樹脂が、
下記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)に由来する単位(a)と、
ポリアミン(B)に由来する単位(b)と、
前記ポリシロキサンジオール(A)とは異なるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であって末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(C)に由来する単位(c)と、
を有し、
前記単位(a)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~20.0質量%である、研磨パッド。
【化1】
(式(I)中、Rは、各々独立して、炭素数1~10の有機基又は水素原子を表し、nは5~25の整数を表す。)
[2]
前記ポリオール化合物が、任意成分として、ポリシロキサン化合物を含み、
前記ポリシロキサン化合物の含有量が、前記プレポリマー(C)を100質量%として、1.0質量%未満である、[1]に記載の研磨パッド。
[3]
前記ポリシロキサンジオール(A)が、前記式(I)における前記Rの全てがメチル基であるポリシロキサンジオール(A1)を含む、[1]又は[2]に記載の研磨パッド。
[4]
前記ポリアミン(B)が、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の研磨パッド。
[5]
前記樹脂シートのA硬度が50度以上であり、かつ、前記樹脂シートのD硬度が60度以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の研磨パッド。
[6]
前記樹脂シートの密度が、0.3~0.6g/cm
3である、[1]~[5]のいずれかに記載の研磨パッド。
[7]
前記樹脂シートの動摩擦力が、5.0~5.8kgf/100cm
2である、[1]~[6]のいずれかに記載の研磨パッド。
[8]
前記樹脂シートの静摩擦力が、4.0~5.0kgf/100cm
2である、[1]~[7]のいずれかに記載の研磨パッド。
[9]
下記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)と、ポリアミン(B)と、前記ポリシロキサンジオール(A)とは異なるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であって末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(C)と、を含む組成物であって、当該組成物中の前記ポリシロキサンジオール(A)の含有量が、当該組成物を100質量%として、0.3~20.0質量%である組成物を、硬化反応に供し、ポリウレタン樹脂を含む樹脂シートを得る工程を含む、研磨パッドの製造方法。
【化2】
(式(I)中、Rは、各々独立して、炭素数1~10の有機基又は水素原子を表し、nは5~25の整数を表す。)
[10]
研磨スラリーの存在下、[1]~[8]のいずれかに記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を含む、研磨加工物の製造方法。
[11]
前記研磨加工物が、シリコンウェハである、[10]に記載の研磨加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、研磨パッドと被研磨物との摩擦抵抗を低減でき、被研磨物に良好な平坦性を付与することができる研磨パッド等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1の研磨パッドを用いて研磨したシリコンウェハの平坦度の測定結果に係るグラフである。
【
図2】
図2は、比較例1の研磨パッドを用いて研磨したシリコンウェハの平坦度の測定結果に係るグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
(研磨パッド)
本実施形態の研磨パッドは、研磨面を有する樹脂シートを備える研磨パッドであって、前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂を含み、前記ポリウレタン樹脂が、下記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)に由来する単位(a)と、ポリアミン(B)に由来する単位(b)と、前記ポリシロキサンジオール(A)とは異なるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であって末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(C)に由来する単位(c)と、を有し、前記単位(a)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~20.0質量%である。
本実施形態の研磨パッドは、上記のように構成されているため、研磨パッドと被研磨物との摩擦抵抗を低減でき、被研磨物に良好な平坦性を付与することができる。
【0013】
本実施形態の研磨パッドは、研磨面を有する所定の樹脂シートを少なくとも備えるものである。すなわち、本実施形態の研磨パッドは、本実施形態における樹脂シートのみからなっていてもよく、当該樹脂シート以外の構成を有するものであってもよい。本実施形態において、樹脂シート以外の構成としては、例えば、種々公知の、研磨層、クッション層及び接着層等が挙げられる。
【0014】
本実施形態において、「研磨面を有する樹脂シート」とは、本実施形態の研磨パッドの少なくとも1つの表面が本実施形態における樹脂シートの表面に対応しており、当該樹脂シートの表面が、本実施形態における研磨の際、被研磨物に押し当てられる研磨面となることを意味する。
【0015】
本実施形態の研磨パッドは、必要に応じて、研磨面に溝加工、エンボス加工、及び/又は、穴加工(パンチング加工)が施されていてもよく、光透過部を備えてもよい。溝加工及びエンボス加工の形状に特に限定はなく、例えば、格子型、同心円型、及び放射型等の形状が挙げられる。
【0016】
(樹脂シート)
(ポリウレタン樹脂)
本実施形態における樹脂シートは、ポリウレタン樹脂を含む。すなわち、本実施形態における樹脂シートは、ポリウレタン樹脂をシート状に成形加工すること等により得ることができる。本実施形態におけるポリウレタン樹脂は、上記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)に由来する単位(a)と、ポリアミン(B)に由来する単位(b)と、前記ポリシロキサンジオール(A)とは異なるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であって末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(C)に由来する単位(c)を有する。
【0017】
(単位(a))
本実施形態における単位(a)は、ポリシロキサンジオール(A)に由来する。
本実施形態において、ポリシロキサンジオール(A)は、後述するプレポリマー(C)の硬化剤として機能し得る。
ポリシロキサンジオール(A)は、下記式(I)で表されるものであり、分子鎖の両末端にヒドロキシ基を有しているため、片末端にのみヒドロキシ基を有しているポリシロキサンジオールと比較して、研磨パッドの強度が向上し、研磨パッドの性能が研磨中に経時変化することを抑制することができる。さらに、側鎖Rが炭素数1~10の有機基又は水素原子であることにより、従来の研磨パッドの物性や反応性に影響を及ぼすことなく摩擦抵抗を低減することができ、つまり、物性や反応性を制御しやすい。
とりわけ、ポリシロキサンジオール(A)が後述するプレポリマー(C)とは別体としてポリウレタン樹脂を構成することになるため、均質な研磨パッドが得られる。その理由については、特に限定する趣旨ではないが、本発明者らは次のように推測している。すなわち、ポリシロキサンジオール(A)に由来する単位を有するプレポリマーは、粘度が上昇する傾向にあり、ポリウレタン樹脂の調製過程において均一な撹拌ができず、研磨パッドの組成にムラが生ずる原因となり得る。本実施形態においては、ポリシロキサンジオール(A)が後述するプレポリマー(C)とは別体としてポリウレタン樹脂を構成するため、均質な研磨パッドが得られると推測される。均質な研磨パッドが得られることで、研磨面の面内において摩擦抵抗が均質となる傾向にあり、これにより、被研磨物の研磨中の自転を安定化させ、被研磨物に良好な平坦性を付与することができる。
【化3】
【0018】
上記式(I)中、Rは、各々独立して、炭素数1~10の有機基又は水素原子を表す。
炭素数1~10の有機基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
炭素数1~10のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、1,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられる。
本実施形態において、研磨パッドの物性や反応性への影響を抑え、または、物性や反応性を制御しやすくする観点から、Rは炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。すなわち、本実施形態においては、研磨パッドの物性や反応性への影響を抑え、または、物性や反応を制御しやすくする観点から、ポリシロキサンジオール(A)が、式(I)におけるRの全てがメチル基であるポリシロキサンジオール(A1)を含むことがとりわけ好ましい。
Rは、各々同じ基であってもよく、異なる基であってもよい。
上記式(I)中、nは、摩擦抵抗を低減する観点から、5以上の整数であり、研磨パッドの諸物性を調整しやすくする観点から、25以下の整数である。上記と同様の観点から、nは、10~20の整数であることが好ましい。
【0019】
ポリシロキサンジオール(A)自体は、種々公知の方法に基づいて合成することもできるし、市販品として入手することもできる。
【0020】
単位(a)の含有量は、ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~20.0質量%である。上記含有量は、摩擦抵抗を低減する観点から、0.3質量%以上であり、研磨パッドの諸物性を調整しやすくする観点から、20.0質量%以下である。上記含有量が0.3質量%未満であると、摩擦抵抗を低減できなくなり、20.0質量%超であると、物性や反応性が大きく変動して制御が困難になったり、摩擦抵抗が下がりすぎて研磨レートが低下したり、研磨パッドを研磨装置に固定するための接着成分との相性が低下する場合がある。上述した観点から、上記含有量は、好ましくは0.3~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~5質量%である。さらに、上記と同様の観点から、ポリシロキサンジオール(A1)に由来する単位の含有量は、ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~20.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~10質量%であり、さらに好ましくは0.3~5質量%である。
単位(a)の含有量は、ポリウレタン樹脂の調製時(後述する組成物の調製時)の仕込み比より求めることもできるし、公知の元素分析・構造解析手段などにより分析して求めることもできる。
【0021】
(単位(b))
本実施形態における単位(b)は、ポリアミン(B)に由来する。
本実施形態において、ポリアミン(B)は、後述するプレポリマー(C)の硬化剤として機能し得る。
ポリアミン(B)は、分子内に2つ以上のアミノ基を有する化合物を意味し、例えば、ジアミン化合物を使用することができる。
ポリアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の脂肪族環を有するジアミン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス-o-クロロアニリン)(以下、MOCAともいう。)等の芳香族環を有するジアミン;2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン等が挙げられる。これらの中で、芳香族環を有するジアミンが好ましく、MOCAがより好ましい。
ポリアミン化合物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
(単位(c))
本実施形態における単位(c)は、プレポリマー(C)に由来する。
プレポリマー(C)は、ポリシロキサンジオール(A)とは異なるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であって、末端にイソシアネート基を有する。プレポリマー(C)の分子内には、ポリウレタン結合とイソシアネート基とが含まれる。
【0023】
ポリイソシアネート化合物は、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジフェニルメタンジイソシアート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニルジイソシアネート、3,3'-ジメチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、4,4'-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソフォロンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート(水添MDI)、p-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、及びエチリジンジイソチオシアネート等が挙げられる。これらの中で、ジイソシアネート化合物が好ましく、2,4-TDI、及び2,6-TDI、MDIがより好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
ポリオール化合物は、分子内に2つ以上のアルコール性水酸基(OH)を有する化合物を意味し、上記式(I)で表される化合物に該当しない点においてポリシロキサンジオール(A)とは相違する。ポリオール化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;ポリプロピレングリコール(PPG)、及びポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物;ポリカーボネートポリオール化合物、並びにポリカプロラクトンポリオール化合物等が挙げられる。また、エチレンオキサイドを付加した3官能性プロピレングリコールを用いることもできる。
ポリオール化合物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本実施形態において、ポリオール化合物が、任意成分として、ポリシロキサン化合物を含み、ポリシロキサン化合物の含有量が、前記プレポリマー(C)を100質量%として、1.0質量%未満であることが好ましい。上記含有量が1.0質量%未満である場合、均質な研磨パッドが得られる傾向にある。その理由については、特に限定する趣旨ではないが、本発明者らは次のように推測している。すなわち、ポリシロキサン化合物に由来する単位を有するプレポリマー(C)は、粘度が上昇する傾向にあり、結果としてポリウレタン樹脂の調製過程において均一な撹拌ができず、研磨パッドの組成にムラが生ずる原因となり得るため、上記含有量が1.0質量%未満である場合、摩擦抵抗を十分に低減するだけでなく、上述したように均質な研磨パッドが得られる傾向にある。上記と同様の観点から、上記含有量は、0.5質量%未満であることが好ましく、実質的に含まない(0質量%である)ことがより好ましい。
【0026】
(その他の成分)
本実施形態における樹脂シートは、ポリウレタン樹脂以外に、添加剤に由来する成分を含有していてもよい。そのような添加剤としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態の研磨パッドの製造方法において後述する、消泡剤、触媒、発泡剤、整泡剤、砥粒、染料、顔料、中実微粒子、難燃剤、親水化剤、疎水化剤、耐光剤、酸化防止剤、及び帯電防止剤等が挙げられる。
添加剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(樹脂シートの物性)
(硬度)
本実施形態において、研磨加工物の平坦性をより高める観点から、樹脂シートのA硬度は50度以上であることが好ましい。
また、研磨加工物のスクラッチをより抑制させる観点から、本実施形態における樹脂シートのD硬度は60度以下であることが好ましく、平坦性とスクラッチ抑制の両立の観点から、本実施形態における樹脂シートは、A硬度が50度以上であり、かつ、D硬度が60度以下であることがより好ましい。
本実施形態における樹脂シートは、とりわけ、研磨加工物がシリコンウェハである場合は、平坦性とスクラッチ抑制が両立しやすい観点から、D硬度が30度以上60度以下であることが特に好ましい。
上記A硬度及びD硬度は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
上記A硬度及びD硬度は、例えば、ポリウレタン樹脂の構成成分及び発泡剤の添加量を調整すること等により各々上記した範囲に調整することができる。
【0028】
(密度)
本実施形態において、研磨加工物の平坦性をより高める観点から、樹脂シートの密度は0.3~0.8g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.3~0.6g/cm3である。
上記密度は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
上記密度は、例えば、後述する本実施形態の研磨パッドの製造方法を採用すること等により上記した範囲に調整することができる。例えば、本実施形態における樹脂シートの製造工程において、発泡剤の量を少なくする場合、樹脂シートの密度は高くなる傾向にある。
【0029】
(動摩擦力)
本実施形態において、研磨加工物の平坦性をより高める観点から、樹脂シートの動摩擦力は5.0~5.8kgf/100cm2であることが好ましく、より好ましくは5.2~5.7kgf/100cm2である。
上記動摩擦力は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
上記動摩擦力は、例えば、ポリシロキサンジオール(A)の配合量を増減すること等により各々上記した範囲に調整することができる。
【0030】
(静摩擦力)
本実施形態において、研磨加工物の平坦性をより高める観点から、樹脂シートの静摩擦力は4.0~5.0kgf/100cm2であることが好ましく、より好ましくは4.5~5.0kgf/100cm2である。
上記静摩擦力は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
上記静摩擦力は、例えば、ポリシロキサンジオール(A)の配合量を増減すること等により各々上記した範囲に調整することができる。
【0031】
(研磨パッドの製造方法)
本実施形態の研磨パッドの製造方法としては、前述した構成を有する研磨パッドが得られる方法であれば特に限定されないが、次の方法により研磨パッドを製造することが好ましい。すなわち、本実施形態の研磨パッドの製造方法は、上記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)と、ポリアミン(B)と、前記ポリシロキサンジオール(A)とは異なるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であって末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(C)と、を含む組成物であって、当該組成物中の前記ポリシロキサンジオール(A)の含有量が、当該組成物を100質量%として、0.3~20.0質量%である組成物を、硬化反応に供し、ポリウレタン樹脂を含む樹脂シートを得る工程を含むことが好ましい。
【0032】
(組成物の調製)
本実施形態の研磨パッドの製造方法では、ポリシロキサンジオール(A)と、ポリアミン(B)と、プレポリマー(C)と、を含む組成物を用いる。すなわち、本実施形態の研磨パッドの製造方法は、ポリシロキサンジオール(A)と、ポリアミン(B)と、プレポリマー(C)と、を含む組成物を調製する工程を含むことができる。ここで使用できるポリシロキサンジオール(A)、ポリアミン(B)及びプレポリマー(C)は、前述したとおりである。
【0033】
組成物の調製においては、例えば、30℃~90℃に加温したプレポリマー(C)と、ポリシロキサンジオール(A)及びポリアミン(B)とを温度調整可能なジャケット付き混合機に投入し、30℃~130℃で攪拌すればよい。この際、必要に応じて攪拌機付きジャケット付きのタンクにポリシロキサンジオール(A)、ポリアミン(B)及びプレポリマー(C)を入れて熟成させてもよい。攪拌時間は混合機の歯数や回転数、クリアランス等によって適宜調整することができるが、例えば0.1秒~60秒である。
【0034】
本実施形態における組成物に含まれるポリシロキサンジオール(A)及びポリアミン(B)は、プレポリマー(C)の硬化剤として機能する。一方、本実施形態における組成物は、ポリシロキサンジオール(A)及びポリアミン(B)以外に、硬化剤として機能する成分(以下、「他の硬化剤」ともいう。)を含んでいてもよい。他の硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸基含有化合物等が挙げられる。水酸基含有化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールメタン、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール等が挙げられる。
他の硬化剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
ポリシロキサンジオール(A)、ポリアミン(B)及び他の硬化剤の活性水素当量(例えば、NH2当量、及びOH当量)は、特に限定されず、例えば50以上5000以下であってもよく、100以上4000以下であってもよく、130以上3000以下であってもよい。また、水酸基含有化合物に該当する硬化剤のOH当量は、100以上5000以下であってもよく、200以上4000以下であってもよく、300以上3000以下であってもよい。アミノ基含有化合物に該当する硬化剤のNH2当量は、50以上2000以下であってもよく、75以上1000以下であってもよく、100以上300以下であってもよい。
【0036】
本実施形態における組成物中、ポリシロキサンジオール(A)、ポリアミン(B)及び他の硬化剤の使用量の合計は、プレポリマー(C)が有する官能基の数を1としたときの、ポリシロキサンジオール(A)、ポリアミン(B)及び他の硬化剤に存在する活性水素基(アミノ基及び水酸基)の当量比であるR値により規定することが好ましい。本実施形態においては、R値が0.7以上1.2以下になるように調整されることが好ましく、より好ましくは0.7以上1.0以下である。
【0037】
プレポリマー(C)のNCO当量は、好ましくは150以上700以下であり、より好ましくは200以上600以下であり、更に好ましくは200以上500以下である。「NCO当量」とは、“(ポリイソシアネート化合物の質量部+ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)-(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]”で求められる、NCO基1個当たりのウレタンプレポリマーの分子量を示す数値である。
【0038】
プレポリマー(C)の使用量は特に限定されず、前述したR値によって決定してもよいが、組成物全量に対して、好ましくは30質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは40質量部以上80質量部以下である。
【0039】
本実施形態における組成物は、ポリシロキサンジオール(A)、ポリアミン(B)及びプレポリマー(C)以外の成分を添加剤として含んでいてもよい。添加剤としては、ポリプロピレングリコールのような溶媒(希釈剤);シリコーン系消泡剤のような消泡剤;触媒;水や中空微粒子のような発泡剤;シリコーン系整泡剤のような整泡剤;並びに、酸化セリウムのようなフィラー(砥粒);染料;顔料;中実微粒子;難燃剤;親水化剤;疎水化剤;耐光剤;酸化防止剤;帯電防止剤等が挙げられる。
【0040】
本実施形態における組成物中のポリシロキサンジオール(A)の含有量としては、当該組成物を100質量%として、0.3~20.0質量%である。上記含有量は、摩擦抵抗を低減する観点から、0.3質量%以上であり、研磨パッドの諸物性を調整しやすくする観点から、20.0質量%以下である。上記含有量が0.3質量%未満であると、摩擦抵抗を低減できなくなり、20.0質量%超であると、物性や反応性が大きく変動して制御が困難になったり、摩擦抵抗が下がりすぎて研磨レートが低下したり、研磨パッドを研磨装置に固定するための接着成分との相性が低下する場合がある。上述した観点から、上記含有量は、好ましくは0.3~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~5質量%である。さらに、上記と同様の観点から、本実施形態における組成物中のポリシロキサンジオール(A1)の含有量は、ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~20.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~10質量%であり、さらに好ましくは0.3~5質量%である。
【0041】
本実施形態における組成物において、ポリシロキサンジオール(A)は、プレポリマー(C)とは別体として添加される。そのため、均質な研磨パッドが得られる。その理由については、特に限定する趣旨ではないが、本発明者らは次のように推測している。すなわち、ポリシロキサンジオール(A)に由来する単位を有するプレポリマーは、粘度が上昇する傾向にあり、ポリウレタン樹脂の調製過程において均一な撹拌ができず、研磨パッドの組成にムラが生ずる原因となり得る。本実施形態においては、ポリシロキサンジオール(A)がプレポリマー(C)とは別体として組成物に添加されるため、均質な研磨パッドが得られると推測される。
【0042】
(樹脂シートの作製)
本実施形態においては、上記のようにして得られた組成物を硬化反応に供し、ポリウレタン樹脂を含む樹脂シートを得る。具体的には、例えば、30℃~150℃に予熱した型枠内に本実施形態における組成物を流し込み、30℃~150℃程度で10分~5時間程度加熱すればよい。これにより、少なくともポリシロキサンジオール(A)、ポリアミン(B)及びプレポリマー(C)が反応してポリウレタン樹脂を形成することにより、上記組成物が硬化する。また、更に、オーブンにより、50℃~180℃程度で10分~10時間程度加熱することで、2次硬化してもよい。上記のように組成物を硬化させる際の反応温度は、用いるポリシロキサンジオール(A)、ポリアミン(B)及びプレポリマー(C)並びに任意の添加剤の種類や配合比等によって適宜調整することができ、反応温度を調整することにより、硬化反応の反応速度を制御し、得られる研磨パッドの諸物性を制御することができる傾向にある。
【0043】
上記のようにして得られた樹脂シートから、適当な厚さの樹脂シートに切り出して使用することもでき、得られた樹脂シートは、30℃~150℃で1時間~24時間程度エイジングしてもよい。
【0044】
上記のようにして得られた樹脂シートは、例えば、その後、片面に両面テープなどの、研磨装置への固定手段が貼り付けられ、所定形状、好ましくは円板状にカットされて、本実施形態の研磨パッドとして使用することもできる。研磨装置への固定手段としては、特に限定されず、従来公知の両面テープや接着テープ、接着剤、粘着剤、面ファスナーなどの中から任意に選択して用いることができる。
【0045】
また、本実施形態の研磨パッドは、樹脂シートのみからなる単層構造であってもよく、樹脂シートの片面に他の層(クッション層、又は基板層)を貼り合わせた複層からなっていてもよい。複層構造を有する場合には、両面テープや接着剤等を用いて、複数の層同士を必要により加圧しながら接着、固定すればよい。用いられる両面テープ、及び接着剤としては、特に限定されず、従来公知の両面テープ及び接着剤の中から任意に選択して用いることができる。
【0046】
更に、本実施形態の研磨パッドは、必要に応じて、表面に溝加工、エンボス加工、及び/又は、穴加工(パンチング加工)を施してもよい。溝加工及びエンボス加工の形状に特に限定はなく、例えば、格子型、同心円型、放射型などの形状が挙げられる。
【0047】
また、研磨パッドは、樹脂シートの表面及び/又は裏面にドレス(研削処理)を施してもよい。ドレス処理としては、特に限定されず、ダイヤモンドドレッサーによる研削等の公知の方法によりドレスすることができる。
【0048】
(研磨加工物の製造方法)
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、研磨スラリーの存在下、本実施形態の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し、研磨加工物を得る研磨工程を含む。研磨工程は、一次研磨(粗研磨)であってもよく、仕上げ研磨であってもよく、それら両方の研磨を兼ねるものであってもよい。
【0049】
本実施形態の研磨加工物の製造方法においては、研磨スラリーの供給と共に、保持定盤で被研磨物を研磨パッド側に押圧しながら、保持定盤と研磨用定盤とを相対的に回転させることで、被研磨物の加工面が研磨パッドで化学機械研磨により研磨加工される。保持定盤と研磨用定盤は、互いに異なる回転速度で同方向に回転してもよく、異方向に回転してもよい。また、被研磨物は、研磨加工中に、枠部の内側で移動(自転)しながら研磨加工されてもよい。
【0050】
研磨スラリーは、被研磨物や研磨条件等に応じて、水、過酸化水素に代表される酸化剤、酸成分、アルカリ成分等の化学成分、添加剤、並びに砥粒(研磨粒子;例えば、SiC、SiO2、Al2O3、及びCeO2)等を含んでいてもよい。
【0051】
また、被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、レンズ、平行平面板、及び反射ミラーのような光学材料、半導体ウェハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板、金属、並びにセラミック等の材料が挙げられるが、被研磨物の自転性能(研磨パッドとの低摩擦抵抗)及び、研磨パッドの諸物性の精度が要求される観点から、好ましくは半導体ウェハであり、より好ましくはシリコンウェハであれば、より顕著に平坦性が向上する傾向にある。
【実施例0052】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態をより具体的に説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
まず、ポリシロキサンジオール(上記式(I)においてRの全てがメチル基であり、n=13.65;活性水素当量588)0.82質量部、分散剤としてのポリプロピレングリコール(活性水素当量1009)1.22質量部、発泡剤としての水0.08質量部、触媒(東ソー株式会社製、製品名「トヨキャットET」)0.05質量部、及びシリコーン系整泡剤0.41質量部を混合し、減圧脱泡して、第1の混合液を得た。
次いで、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI;主成分)とポリオール化合物(PTMG;重量平均分子量650)とに由来する単位を含む、NCO当量400のイソシアネート末端ウレタンプレポリマー78.18質量部を減圧脱泡した後、第1の混合液に加え、第2の混合液を得た。
さらに、MOCA19.24質量部を減圧脱泡した後、第2の混合液に加え、実施例1に係る組成物を得た。
組成物調製時の仕込み比より、組成物のR値は0.825と算出した。また、組成物中のポリシロキサンジオール(A)の含有量は、当該組成物を100質量%として、0.82質量%と特定した。
【0054】
実施例1に係る組成物を80℃に加熱した型枠(850mm×850mmの正方形の形状)に注型し、40分間、80℃にて一次硬化させて第1の樹脂発泡体を得た。樹脂発泡体を型枠から抜き出し、オーブンにて130℃で8時間、二次硬化させて第2の樹脂発泡体を得た。第2の樹脂発泡体を厚さ方向にわたって1.3mm厚にスライスして、実施例1に係る樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを実施例1に係る研磨パッドとして後述する評価に供した。
組成物調製時の仕込み比より、樹脂シートを構成するポリウレタン樹脂において、単位(a)の含有量は前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.82質量%と特定した。
【0055】
[比較例1]
実施例1において、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーの使用量を78.68質量部に、MOCAの使用量を19.59質量部に、ポリシロキサンジオールの使用量を0質量部(不使用)に、分散剤の使用量を1.2質量部に、シリコーン系整泡剤の使用量を0.40質量部に、それぞれ変更したことを除き、実施例1と同様にして比較例1に係る組成物を得た。組成物のR値は0.825であった。
【0056】
比較例1に係る組成物を、実施例1と同様に加工して、比較例1に係る樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを比較例1に係る研磨パッドとして後述する評価に供した。
【0057】
[摩擦力]
後述する実施例及び比較例にて得られた研磨パッドの摩擦力を、万能引張試験機(オリエンテック社製「Tensilon RTC-1210A」)を用い、25℃、湿度60%の条件下で測定した。
後述する実施例及び比較例にて得られた研磨パッドをサイズ120mm×190mmに切り出し、サンプルとした。まず、研磨時のスラリー湿潤状態を再現するために、サンプルを次の前処理に供した。すなわち、サンプルを水に15分間浸漬させた後、サンプルを試験機の測定台に両面テープで固定した。固定したサンプルの表面に霧吹きで水を5回吹きかけ、サンプルの表面をゴムベラで2回掻き、水分を均一化させた。
次いで、前処理したサンプルの上に100mm×100mmのガラス板を重ねた。ガラス板に荷重10kgを負荷しながら、ガラス板を引張速度100mm/minで剪断方向へ80mm引っ張る間の引張力から動摩擦力を測定した。動摩擦力を測定する際の動き始めの値を静摩擦力とした。各例につき5回測定を実施し、平均値を採用した。
【0058】
[密度]
樹脂シートから切り出したサンプルの体積と重量から密度を算出した。
【0059】
[硬度]
A硬度は、A型硬度計(日本工業規格、JIS K 7311)により測定した。D硬度は、D型硬度計(JIS K 7311)により測定した。
【0060】
[平坦度評価]
研磨パッドを用いて、シリコンウェハの両面を研磨した。具体的には、シリコンウェハの表面形状を監視しながら研磨し、シリコンウェハの厚みの平均値がキャリア(被研磨物保持材)の厚みと同程度付近になり、表面形状が最も良好となった時点で研磨を終了した。研磨の際の条件は次のとおりとした。
(研磨条件)
被研磨物:シリコンウェハ(直径300mmφ、厚み779μm)
研磨機:スピードファム株式会社製「DSM20B-5P-5D」
研磨液:フジミインコーポレーテッド社製のアルカリ溶液(コロイダルシリカ含有;pH10.5)
下定盤回転数 :35.0rpm
上定盤回転数 :-13.4rpm
インターナル回転数:7.0rpm
サンギア回転数 :25.0rp
研磨荷重 :5287N
【0061】
上記のようにして研磨されたシリコンウェハを対象とし、平坦度測定装置(KOBELCO社製「LSW3020FE」)を用いて、シリコンウェハの表面形状(厚み)を計測し、グラフを得た。得られたグラフから、端部形状(端部ダレ)を評価した。
【0062】
[評価結果]
実施例1及び比較例1に係る研磨パッドを評価した結果を下記の表1に併せて示す。
【0063】
【0064】
実施例1の研磨パッドを用いて研磨したシリコンウェハの平坦度を測定した結果を
図1に示す。
図1のグラフにおいて、横軸はシリコンウェハの被研磨面の中心からの距離(mm)を表し、縦軸は対応する位置におけるシリコンウェハの厚さ(μm)表す(後述の
図2においても同じ。)。
図1において、グラフの両端が急落しておらず(端部ダレが発生しておらず)、シリコンウェハは良好な平坦性を有すると評価された。なお、グラフの両端の急落は、他の部分の厚みと比較して、シリコンウェハの端部の厚みが極端に減少している(端部ダレが発生している)ことを示す。
【0065】
また、実施例1の研磨パッドに両面テープを貼り合わせたところ、問題なく貼り合わせることができた。ポリシロキサンジオールの使用量が所望とされる値(単位(a)の含有量として、ポリウレタン樹脂100質量%に対して0.3~20.0質量%)であったため、ポリシロキサンジオールを含有しているにも関わらず、貼り合わせが良好であったと考えられる。
【0066】
比較例1の研磨パッドを用いて研磨したシリコンウェハの平坦度を測定した結果を
図2に示す。
図2において、グラフの両端が急落していることから、端部ダレが発生しており、シリコンウェハの平坦性が悪化したと評価された。比較例1の研磨パッドに両面テープを貼り合わせたところ、貼り合わせは良好であったが、上記した端部ダレの観点から、研磨パッドの性能としては実用上不十分と評価された。
本発明の研磨パッドは、レンズ、平行平面板、及び反射ミラーのような光学材料、半導体ウェハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板、金属、並びにセラミック等の材料の研磨(とりわけ化学機械研磨(CMP))に用いられる研磨パッドとして、産業上の利用可能性を有する。