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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041379
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】描画装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240319BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20240319BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G02B7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146160
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】石田 一将
(72)【発明者】
【氏名】岸脇 大介
(72)【発明者】
【氏名】茂野 幸英
(72)【発明者】
【氏名】城田 浩行
【テーマコード(参考)】
2H043
2H197
【Fターム(参考)】
2H043AA06
2H043AD06
2H043AD11
2H043AD13
2H043AD21
2H197AA09
2H197AA29
2H197BA09
2H197BA16
2H197CA03
2H197CB18
2H197CC05
2H197CC16
2H197CD02
2H197CD12
2H197CD15
2H197CD17
2H197CD41
2H197DB11
2H197DB23
2H197DC06
2H197EA06
2H197EA15
2H197EA17
2H197EA18
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA08
2H197HA10
(57)【要約】
【課題】描画装置における焦点位置の補正が適切であるかが確認されやすい技術が提供される。
【解決手段】変調器は、パターンに基づいて第1の光を空間変調して描画光を出射する。第1の光学系は、描画光および第2の光が入射して、描画光および第2の光を出射する。第2の光学系は、第1の光学系から出射された描画光および第2の光が入射して、第1の光学系から出射された描画光を基板へ導き、第1の光学系から出射された第2の光を、基板を避けて出射する。検出部は、第2の光学系から出射された第2の光に基づいて第1の光学系の焦点位置を検出する。第1の光が有する第1の波長と第2の光が有する第2の波長とは異なる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンに基づいた描画光で感光性の基板を露光する装置であって、
第1の波長を有する第1の光を出射する第1の光源と、
前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2の光を出射する第2の光源と、
前記パターンに基づいて前記第1の光を空間変調して前記描画光を出射する変調器と、
前記描画光および前記第2の光が入射して、前記描画光および前記第2の光を出射する第1の光学系と、
前記第1の光学系から出射された前記描画光および前記第2の光が入射して、前記第1の光学系から出射された前記描画光を前記基板へ導き、前記第1の光学系から出射された前記第2の光を、前記基板を避けて出射する第2の光学系と、
前記第2の光学系から出射された前記第2の光に基づいて前記第1の光学系の焦点位置を検出する検出部と
を備える描画装置。
【請求項2】
前記第2の光は前記変調器を経由して前記第1の光学系に入射する、請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記変調器は、
前記パターンに基づいて前記第1の光を空間変調して前記描画光を出射する第1領域と、
前記パターンに依らずに前記第2の光を前記第1の光学系へ出射する第2領域と
を有する、請求項2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記変調器と前記第1の光学系との間に位置し、前記描画光を透過させ、前記第2の光を反射して前記第2の光源から前記第1の光学系へと導くフィルタ
を更に備える、請求項1に記載の描画装置。
【請求項5】
前記第1の波長は前記第2の波長よりも短く、
前記第2の光学系および前記フィルタのそれぞれに、前記第1の波長と前記第2の波長との間にカットオフ波長を有するローパスフィルタが採用される、請求項4に記載の描画装置。
【請求項6】
前記検出部は、
前記第2の光学系から出射された前記第2の光が入射する稜線と、前記稜線と対向しており前記第2の光を第3の光と第4の光とに分岐して出射する面とを含むプリズムと、
前記第3の光および前記第4の光が入射して、前記第3の光および前記第4の光が入射する位置を検出する検出器と
を有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項7】
前記検出部は、
前記第2の光学系から出射された前記第2の光を部分的に遮蔽しつつ前記第2の光を透過させる遮蔽物と、
前記遮蔽物を透過した前記第2の光が入射して、前記第2の光が入射する位置を検出する検出器と
を有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項8】
前記第1の光学系は、
第1の鏡筒と、
前記第1の鏡筒と共に両側テレセントリック光学系を構成する第2の鏡筒と、
前記両側テレセントリック光学系の光軸に沿って前記第2の鏡筒を前記第1の鏡筒に対して相対的に移動させる移動機構と
を有し、
前記光軸に沿った前記第1の鏡筒と前記第2の鏡筒との間の距離は、前記検出部によって検出された前記焦点位置が前記第2の鏡筒に近いほど、前記移動機構によって縮められる、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項9】
前記第1の光学系は、
第1の鏡筒と、
前記第1の鏡筒と共に両側テレセントリック光学系を構成する第2の鏡筒と、
前記両側テレセントリック光学系の光軸に沿って前記第2の鏡筒を前記第1の鏡筒に対して相対的に移動させる移動機構と
を有し、
前記光軸に沿った前記第1の鏡筒と前記第2の鏡筒との間の距離は、前記検出部によって検出された前記焦点位置が前記第2の鏡筒に近いほど、前記移動機構によって縮められる、請求項6に記載の描画装置。
【請求項10】
前記第1の光学系は、
第1の鏡筒と、
前記第1の鏡筒と共に両側テレセントリック光学系を構成する第2の鏡筒と、
前記両側テレセントリック光学系の光軸に沿って前記第2の鏡筒を前記第1の鏡筒に対して相対的に移動させる移動機構と
を有し、
前記光軸に沿った前記第1の鏡筒と前記第2の鏡筒との間の距離は、前記検出部によって検出された前記焦点位置が前記第2の鏡筒に近いほど、前記移動機構によって縮められる、請求項7に記載の描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、感光性の基板に対してパターンに基づいた露光を行う技術に関する。当該基板は、例えば感光材料が用いられた層(以下「感光層」とも称される)を有する。例えば半導体基板、プリント基板、液晶表示装置等に具備されるカラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置等に具備されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、太陽電池用パネルなどの各種基板は、感光層を有する。
【背景技術】
【0002】
感光性の基板が有する感光層を、所望のパターンで露光する露光装置が知られている。当該露光装置として、いわゆる描画装置が知られている。描画装置は露光を選択的に遮蔽するマスクを用いず、所望のパターンを記述したデータに応じて空間的に変調した光(以下「描画光」とも称される)を感光層へ照射する。かかる照射によって、描画装置は感光層に所望のパターンを直接に露光する。露光した感光層は現像処理により、所望のパターンまたはその反転したパターンが基板上に残置する。
【0003】
現像処理された感光層が精度良くパターニングされるためには、感光層が適切に露光されることが望まれる。適切な露光を行うためには描画光の焦点が適切に感光層に位置することが望まれる。
【0004】
各種基板の生産性を向上するには描画光のエネルギーが高い、例えば感光層が受ける光の強度が高いことが望まれる。エネルギーが高い描画光は、描画装置が備える光学系における熱レンズ効果が描画光の焦点に与える影響を、増大させる可能性がある。
【0005】
熱レンズ効果とは、光学系が有するレンズ温度が上昇することで、レンズの屈折率が変化したり、レンズの表面の形状が変化したりして、光学系によって結ばれる焦点の位置(以下「焦点位置」とも称される)が移動する現象である。
【0006】
例えば、所望のパターンでの描画が感光層の位置を異ならせて繰り返し行われる場合、当該描画で得られるパターンのコントラストは当該パターンが描画されるタイミングに依存する。これはパターニングの品質の均一性を阻害しやすい。顕著には、所望のパターンによる描画も行えなくなってしまう可能性がある。
【0007】
熱レンズ効果による焦点位置の移動を補正する技術が提案されている。このような移動を補正する技術の例として、光学系が有する鏡筒の温度、レンズ温度、鏡筒を冷却する水の温度から焦点位置の移動量を推測し、補正機構により焦点位置を補正する技術が提案されている(例えば下記の特許文献1~3)。
【0008】
このような移動を補正する技術においては、温度が測定される対象部の温度に対する、焦点位置の移動量が、事前に測定されて、補正テーブルが取得される。当該補正テーブルを用いて、測定対象の計測温度から当該移動量が見積もられる。見積もられた移動量を補正する補正機構が用いられて、熱レンズ効果による焦点位置が補正される。
【0009】
熱レンズ効果を、レンズの設計によって抑制する技術も提案されている。このように熱レンズ効果を抑制する技術の例として、レンズがもつ正負のパワーや、温度変化による屈折率の変化率、レンズの曲率を制御する技術が提案されている(例えば下記の特許文献4~6)。
【0010】
なお、視野位置と描画位置との間の温度依存性の位置ずれ量を求める技術が、特許文献7に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63-93492号公報
【特許文献2】特開2000-244847号公報
【特許文献3】特開2012-181362号公報
【特許文献4】特開2019-60972号公報
【特許文献5】特開2011-33891号公報
【特許文献6】特開2013-68689号公報
【特許文献7】特開2014-197136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
補正テーブルを用いて見積もられる移動量を補正する技術では、補正後の焦点位置が検出されておらず、焦点位置の補正が適切であるかが確認し難い。
【0013】
熱レンズ効果をレンズの設計によって抑制するためには、当該抑制に必要な条件式が設定されなければならない。設計されるレンズに適した硝材は制限され、設計が難しい。
【0014】
本開示はこのような点に鑑みてなされたもので、描画装置における焦点位置の補正が適切であるかが確認されやすい技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の第1の態様に係る描画装置は、パターンに基づいた描画光を用いて感光性の基板を露光する装置である。当該描画装置は、第1の光源と、第2の光源と、変調器と、第1の光学系と、第2の光学系と、検出部とを備える。
【0016】
前記第1の光源は、第1の波長を有する第1の光を出射する。前記第2の光源は、前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2の光を出射する。前記変調器は、前記パターンに基づいて前記第1の光を空間変調して前記描画光を出射する。前記第1の光学系は、前記描画光および前記第2の光が入射して、前記描画光および前記第2の光を出射する。前記第2の光学系は、前記第1の光学系から出射された前記描画光および前記第2の光が入射して、前記第1の光学系から出射された前記描画光を前記基板へ導き、前記第1の光学系から出射された前記第2の光を、前記基板を避けて出射する。前記検出部は、前記第2の光学系から出射された前記第2の光に基づいて前記第1の光学系の焦点位置を検出する。
【0017】
本開示の第2の態様に係る描画装置は、第1の態様に係る描画装置であって、前記第2の光は前記変調器を経由して前記第1の光学系に入射する。
【0018】
本開示の第3の態様に係る描画装置は、第2の態様に係る描画装置であって、前記変調器は第1領域および第2領域を有する。前記第1領域は、前記パターンに基づいて前記第1の光を空間変調して前記描画光を出射する。前記第2領域は、前記パターンに依らずに前記第2の光を前記第1の光学系へ出射する。
【0019】
本開示の第4の態様に係る描画装置は、第1の態様に係る描画装置であって、フィルタを更に備える。前記フィルタは、前記変調器と前記第1の光学系との間に位置し、前記描画光を透過させ、前記第2の光を反射して前記第2の光源から前記第1の光学系へと導く。
【0020】
本開示の第5の態様に係る描画装置は、第4の態様に係る描画装置であって、前記第2の光学系および前記フィルタのそれぞれに、前記第1の波長と前記第2の波長との間にカットオフ波長を有するローパスフィルタが採用される。前記第1の波長は前記第2の波長よりも短い。
【0021】
本開示の第6の態様に係る描画装置は、第1の態様から第5の態様のいずれかであって、前記検出部は、プリズムと、検出器とを有する。前記プリズムは、前記第2の光学系から出射された前記第2の光が入射する稜線と、前記稜線と対向しており前記第2の光を第3の光と第4の光とに分岐して出射する面とを含む。前記検出器は、前記第3の光および前記第4の光が入射して、前記第3の光および前記第4の光が入射する位置を検出する。
【0022】
本開示の第7の態様に係る描画装置は、第1の態様から第5の態様のいずれかであって、前記検出部は、遮蔽物と検出器とを有する。前記遮蔽物は、前記第2の光学系から出射された前記第2の光を部分的に遮蔽しつつ前記第2の光を透過させる。前記検出器は、前記遮蔽物を透過した前記第2の光が入射して、前記第2の光が入射する位置を検出する。
【0023】
本開示の第8の態様に係る描画装置は、第1の態様から第7の態様のいずれかであって、前記第1の光学系は、第1の鏡筒と、第2の鏡筒と、移動機構とを有する。前記第2の鏡筒は、前記第1の鏡筒と共に両側テレセントリック光学系を構成する。前記移動機構は、前記両側テレセントリック光学系の光軸に沿って前記第2の鏡筒を前記第1の鏡筒に対して相対的に移動させる。前記両側テレセントリック光学系の光軸に沿った前記第1の鏡筒と前記第2の鏡筒との間の距離は、前記検出部によって検出された前記焦点位置が前記第2の鏡筒に近いほど、前記移動機構によって縮められる。
【発明の効果】
【0024】
第1の態様に係る描画装置によれば、第1の光学系の焦点位置が適切に補正されているかが確認されやすい。
【0025】
第2の態様に係る描画装置によれば、第2の光を第2の光学系へ入射させる構成要素を個別に設ける必要がない。
【0026】
第3の態様に係る描画装置によれば、第2の光が所望の強度以上で第2の光学系へ入射する。
【0027】
第4の態様に係る描画装置によれば、第2の光が所望の強度以上で第2の光学系へ入射する。
【0028】
第5の態様に係る描画装置は、第4の態様に係る描画装置の実現に資する。
【0029】
第6の態様に係る描画装置によれば、第3の光および第4の光の位置から、第1の光学系の焦点位置が検出される。
【0030】
第7の態様に係る描画装置によれば、遮蔽物によっていわゆるケラレを受けた第2の光の位置から、第1の光学系の焦点位置が検出される。
【0031】
第8の態様に係る描画装置によれば、移動機構によって第1の光学系の焦点位置が補正される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本開示にかかる描画装置の概略斜視図である。
図2】描画装置の平面図である。
図3】光学ユニットの概略を示す斜視図である。
図4】光変調部の構成を例示する側面図である。
図5】空間光変調素子への入射光と空間光変調素子からの出射光とを例示する側面図である。
図6】描画ヘッドの概略を示す側面図である。
図7】制御部と、描画装置を構成するその他の構成要素との接続関係を概念的に示すバス配線図である。
図8】検出系における検出の態様を例示する模式図である。
図9】焦点位置を調整する処理を例示するフローチャートである。
図10】検出系の他の構成を例示する側面図である。
図11】検出系の他の構成を例示する側面図である。
図12】検出系の他の構成を例示する側面図である。
図13】他の検出系における検出の態様を例示する模式図である。
図14】焦点位置を調整する他の処理を例示するフローチャートである。
図15】光変調部とフィルタと投影光学系との位置関係を例示する側面図である。
図16】空間光変調素子の変形を例示する平面図である。
図17】他のオートフォーカスの技術を例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態が説明される。なお、図面においては、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0034】
<1.装置構成の例示>
図1は、本開示にかかる描画装置100の概略斜視図である。図2は、描画装置100の概略平面図である。
【0035】
描画装置100は、感光性の基板90を露光し、より具体的には基板90に所望のパターンを描画する装置である。例えば描画装置100がプリント基板を製造する工程の一部を担当するとき、感光層、金属箔、絶縁性の基板がこの順に積層された基板90に対し、感光層側から描画光を所望のパターンで照射し、感光層を選択的に露光する。露光された感光層は感光により、露光後の現像処理において所望のパターンもしくはその反転したパターンで選択的に除去される。当該現像処理で残置した感光層は、例えばフォトレジストであり、金属箔のエッチングにおいてマスクとして機能する。
【0036】
図1および図2において、図示および説明の都合上、Z軸方向を鉛直上向き方向に採用し、X軸方向およびY軸方向のいずれもがZ軸方向と直交する方向に採用される。X軸方向及びY軸方向は互いに直交し、X軸、Y軸,Z軸はこの順でいわゆる左手座標系を決定する。以下、X軸に沿った方向は単にX方向あるいは+X方向と称され、Y軸に沿った方向は単にY方向あるいは+Y方向と称され、Z軸に沿った方向は単にZ方向あるいは+Z方向と称される。+X方向と反対の方向は-X方向と称され、+Y方向と反対の方向は-Y方向と称され、+Z方向と反対の方向は-Z方向と称される。
【0037】
但しこれらは位置関係を把握するために便宜上設定され、以下に説明される各方向を限定するものではない。他の図についても同様である。
【0038】
描画装置100は、架台1、移動プレート群2、露光部3、および制御部5を備える。
【0039】
<1-1.架台1>
架台1は、略直方体状の外形を有しており、そのZ方向側の面(以下「上面」とも称される)1aの略水平な領域には、架橋構造11および移動プレート群2が固定される。架橋構造11は、移動プレート群2の上方において移動プレート群2を跨いで略水平に掛け渡される。例えば架台1は、移動プレート群2と架橋構造11とを一体的に支持する。図2においては、視認性を高めるため、架橋構造11が二点鎖線によって図示されている。
【0040】
<1-2.移動プレート群2>
移動プレート群2は、保持プレート21と、支持プレート22と、ベースプレート23と、基台24と、回動機構211と、副走査機構221と、主走査機構231とを備える。
【0041】
保持プレート21は略水平な上面21aを有し、上面21aは基板90を-Z方向側から(下方から)保持する。支持プレート22は略水平な上面22aを有し、上面22aは保持プレート21を下方から支持する。ベースプレート23は、略水平な上面23aを有し、上面23aは支持プレート22を下方から支持する。基台24は略水平な上面24aを有し、上面24aは、ベースプレート23を下方から支持する。回動機構211は、保持プレート21をZ軸回りに回動させる機能を有する。副走査機構221は、支持プレート22をX方向および-X方向に移動させる機能を有する。主走査機構231は、ベースプレート23をY方向および-Y方向に移動させる機能を有する。
【0042】
例えば保持プレート21は、基板90を上面21aに吸着して保持する。例えば上面21aにおいて複数の孔(図示省略)が分散して設けられる。これらの孔は、例えば真空ポンプに接続され、当該真空ポンプが動作することによって、基板90と上面21aとの間の気圧が低下する。当該気圧の低下により、基板90が上面21aに吸着され、保持される。
【0043】
回動機構211はリニアモータ211aと回動軸211bとを有する(図2参照)。リニアモータ211aは移動子と固定子とを含む。移動子は保持プレート21に対して-Y方向側の端部に取り付けられる。固定子は上面22aに設けられる。回動軸211bは、保持プレート21の中央部と支持プレート22との間でZ軸に平行に位置し、図2においては隠れ線を示す破線で描かれる。リニアモータ211aを動作させることによって、固定子に沿って移動子がX方向あるいは-X方向に移動する。当該移動により保持プレート21が回動軸211bを中心として、ある角度の範囲内で、Z軸回りに回動する。
【0044】
副走査機構221はリニアモータ221aと一対のガイド221bとを有する(図2参照)。リニアモータ221aは移動子221cと固定子221dとを含む。移動子221cは支持プレート22の下面に取り付けられる。固定子221dは上面23aに設けられる。一対のガイド221bは、支持プレート22とベースプレート23との間においてX軸に沿って延び、上面23aに固定される。リニアモータ221aを動作させることによって、固定子221dに沿って移動子221cがX方向あるいは-X方向に移動する。当該移動によって支持プレート22がガイド221bに沿ってベースプレート23上でX方向あるいは-X方向に移動する。
【0045】
主走査機構231はリニアモータ231aと一対のガイド231bとを有する(図2参照)。リニアモータ231aは移動子(不図示)と固定子231dとを含む。当該移動子はベースプレート23の下面に取り付けられる。固定子231dは上面24aに設けられる。一対のガイド231bは、ベースプレート23と基台24との間においてY軸に沿って延び、上面24aに固定される。リニアモータ231aを動作させることによって、リニアモータ231aの移動子が固定子231dに沿ってY方向あるいは-Y方向に移動する。当該移動によってベースプレート23がガイド231bに沿って基台24上でY方向あるいは-Y方向に移動する。
【0046】
したがって、保持プレート21に基板90を保持した状態で主走査機構231を動作させることによって、基板90をY方向あるいは-Y方向に沿って移動させることができる。
【0047】
上述された、回動機構211、副走査機構221、および主走査機構231のいずれの動作も、制御部5によって制御される。
【0048】
回動機構211、副走査機構221および主走査機構231の駆動について、上述のリニアモータ211a,221a,231aを利用することに限定はされない。例えば、回動機構211および副走査機構221において、サーボモータおよびボールネジ駆動が利用されてもよい。基板90を移動させる代わりに、露光部3を移動させる移動機構が設けられてもよい。基板90および露光部3の双方を移動させる移動機構が設けられてもよい。保持プレート21をZ軸に沿って昇降させる移動機構が設けられて、基板90が上下に昇降してもよい。
【0049】
<1-3.露光部3>
露光部3は、光学ユニット30を複数台、例えば5台備える。光学ユニット30の各々は、光源31、照明光学系32、および描画ヘッド33を有する。図1では、図示が省略されているが、各描画ヘッド33に対して、光源31および照明光学系32がそれぞれ設けられる。図2においては、視認性を高めるため、描画ヘッド33が二点鎖線によって図示されている。
【0050】
光源31は、制御部5から送られる所要の駆動信号に基づいて、所要の波長を有する光35を供給する。当該波長は例えば365~405nmである。例えば光源31にはレーザダイオードが採用される。図1において、光源31から光35が出射され、その経路は、光35が伝達される相手先へ向けた矢印で模式的に描かれている。
【0051】
光35は、照明光学系32を介して描画ヘッド33へ導かれる。光源31から出射された光35は、照明光学系32にて、例えば光軸に垂直な面において矩形状に成形される。
【0052】
各描画ヘッド33は、照明光学系32から出射された光35を、光変調して基板90の上面に照射する機能を有する。各描画ヘッド33は、例えばX軸に沿って架橋構造11の側面上部に等ピッチで配置されている。
【0053】
図3は、光学ユニット30の概略を示す斜視図である。描画ヘッド33は、光変調部4、投影光学系330、オートフォーカス機構6を有する。光変調部4、投影光学系330、オートフォーカス機構6は固定材112に固定される。固定材112は後述される固定材111と共に架橋構造11に固定される。あるいは固定材112は架橋構造11の一部、たとえば-Y方向側の側面であってもよい。
【0054】
照明光学系32は光源31側に配置されたロッドインテグレータ321と、描画ヘッド33側に配置された鏡筒322とを含む。ロッドインテグレータ321は、光源31から出射された光35の空間的な分布の均一性を高める。例えば鏡筒322は両側テレセントリック光学系を実現するレンズを有する。
【0055】
光源31と照明光学系32とを併せて、光35を出射する第1の光源34として見ることができる。第1の光源34は、光源31および照明光学系32の他に構成要素を含んでもよい。
【0056】
光学ユニット30は第2の光源7を有する。第2の光源7は例えば照明光学系32よりも下方(-Z方向側)に位置する。第2の光源7は、図3においてはその概略的な形状のみが示され、具体的な構成は後述される。
【0057】
光35は光変調部4へ出射され、制御部5の制御に基づいて光変調(より具体的には空間変調)を受けて描画光351(図4参照:後述)となる。描画光351は投影光学系330へ入射する。投影光学系330は、入射した描画光351を所要の倍率で拡大して、主走査方向へ移動する基板90上へ導く。
【0058】
投影光学系330は鏡筒331,332を有する。鏡筒331は鏡筒332よりも光変調部4寄りに配置される。鏡筒331,332は両側テレセントリック光学系を構成する。
【0059】
<1-4.光変調部4>
図4は光変調部4の構成を例示する側面図である。光変調部4はミラー41,42と空間光変調素子43を有する。
【0060】
光35はミラー41,42によって順次に反射され、空間光変調素子43に至る。第2の光源7から光36が出射される。光36は空間光変調素子43に至る。光36の波長は光35の波長よりも長く、例えば450nmである。図4ではミラー41,42を経由せずに光36が空間光変調素子43に至る場合が例示される。光36がミラー41,42で反射されて空間光変調素子43に至ってもよい。
【0061】
第2の光源7は例えば光36を出射するレーザダイオード710と、レンズ711,712とを有する。レンズ711,712はいわゆる4f光学系を構成する。光36はレンズ711,712をこの順に進み、第2の光源7から出射される。
【0062】
空間光変調素子43に光35が入射し、空間光変調素子43が光35を光変調して、描画光351が得られる。空間光変調素子43は描画光351を出射する。空間光変調素子43は、パターンに基づいて光35を空間変調して描画光351を出射する変調器として機能する。
【0063】
<1-4-1.第1の実施の形態>
第1の実施の形態において、光36は空間光変調素子43を経由して検出用光361として投影光学系330へ入射する。検出用光361は投影光学系330の焦点位置の検出に用いられるので、検出用光361とも称される。
【0064】
検出用光361は空間光変調素子43を経由する際に光変調される場合と、光変調されない場合とがある。ここではまず、光36が空間光変調素子43において光変調されて検出用光361が出射される場合が説明され、光変調されない検出用光361が出射される場合については後の<4-1.空間光変調素子43の変形>において説明される。
【0065】
なお光36が空間光変調素子43を経由することなく検出用光361として投影光学系330へ入射する場合が、後の<3.第2の実施の形態>において説明される。更に、第1の実施の形態、第2の実施の形態、および変形を纏めた説明が、後の<5.概括的説明>において行われる。
【0066】
描画光351および検出用光361は投影光学系330へ、より具体的には鏡筒331へ入射する。
【0067】
図5は、空間光変調素子43への入射光と空間光変調素子43からの出射光とを例示する側面図である。当該入射光には光35,36が該当し、当該出射光の一部には描画光351と検出用光361とが該当する。
【0068】
空間光変調素子43には例えばデジタルミラーデバイスが採用される。デジタルミラーデバイスは、例えば1920×1080のマトリクス状に配列された、1辺が約10μmの正方形のミラー43mを有する。ミラー43mの各々はメモリセルに書き込まれたデータに従って、当該正方形の対角を軸として、所要角度で傾く。制御部5からのリセット信号によって、ミラー43mの各々は、一斉に駆動される。デジタルミラーデバイスは、自身への入射光を、例えば二方向に反射する。
【0069】
空間光変調素子43にデジタルミラーデバイスが採用された場合、ミラー43mの各々は光35を、描画光351として採用される光と、露光に寄与しない光とを異なる方向に反射させる。
【0070】
ミラー43mは、その傾斜の基準となる面43aに沿って配列される。例えば面43aはZ方向に垂直であって、ミラー43mはX方向およびY方向において二次元的に配列される。
【0071】
[on]と付記されたミラー43m(以下「オン状態のミラー43m」とも称される)の法線ベクトルNnは、-Y方向に対して劣角θnで傾斜し、かつX方向に対して垂直である。[off]と付記されたミラー43m(以下「オフ状態のミラー43m」とも称される)の法線ベクトルNfは、Y方向に対して劣角θfで傾斜し、かつX方向に対して垂直である。例えば劣角θn,θfはいずれも78度であり、ミラー43mは面43aに対してY方向に関して12度または-12度で傾斜する面で光35,36を反射する。
【0072】
光35,36はいずれも-Z方向側から、空間光変調素子43に、より具体的にはミラー43mへ入射する。例えば光35はX方向に垂直で、かつY方向に対して(θn-θ5n)=180(度)-(θf+θ5f)の角度でミラー43mの-Z方向側の面に入射する。例えば光36はX方向に垂直で、かつ-Y方向に対して(θn+θ6n)=180(度)-(θf-θ6f)の角度でミラー43mの-Z方向側の面に入射する。劣角θnと角度θ5nとの和および劣角θfと角度θ6fとの和はいずれも90度である。例えばθn=θf,θ5n=θ6fの関係がある。
【0073】
オン状態のミラー43mへは光35が角度θ5nの入射角で入射し、当該面から角度θ5nの反射角で出射される。オン状態のミラー43mで反射された光35が描画光351として投影光学系330へ進む。
【0074】
オフ状態のミラー43mへは光35が角度θ5fの入射角で入射し、当該面から角度θ5fの反射角で光35が出射される。オフ状態のミラー43mで反射された光35は投影光学系330へは進まず、露光に寄与しない。
【0075】
オフ状態のミラー43mへは光36が角度θ6fの入射角で入射し、当該面から角度θ6fの反射角で出射される。オフ状態のミラー43mで反射された光36が検出用光361として投影光学系330へ進む。
【0076】
オン状態のミラー43mへは光36が角度θ6nの入射角で入射し、当該面から角度θ6nの反射角で光36が出射される。オン状態のミラー43mで反射された光36は投影光学系330へは進まず、焦点位置の検出に寄与しない。
【0077】
空間光変調素子43における光変調に採用されるパターンは、投影光学系330によって、基板90に投影される。当該パターンはリセットパルスによって連続的に書き換えられる。当該リセットパルスは、後述されるように、主走査機構231による保持プレート21の移動に伴って、主走査機構231のエンコーダー信号を元に作られる。当該パターンの連続的な書き換えと保持プレート21との移動により、基板90へ入射する描画光351は、当該パターンを反映した像を基板90に形成する。
【0078】
描画光351は、光変調部4から投影光学系330および後述される第2の光学系を経由して基板90に至る。
【0079】
光35が光変調部4によって光変調されて描画光351が得られ、描画光351が基板90に照射される。描画光351は基板90の露光に採用され、光35は描画光351の生成に利用される。
【0080】
<1-5.基板90と露光部3との相対的な移動>
描画処理は、制御部5の制御下で主走査機構231および副走査機構221が保持プレート21に載置された基板90を、複数台の描画ヘッド33に対して相対的に移動させつつ、複数の描画ヘッド33のそれぞれから基板90の露光面(露光部3側の面:ここでは基板90の上面の一部または全部)に描画光351を照射することによって行われる。
【0081】
主走査機構231によって基板90が移動したときの、基板90から見た描画ヘッド33の移動方向が主走査方向に採用される。副走査機構221によって、基板90が移動したときの、基板90から見た描画ヘッド33の移動方向が副走査方向に採用される。
【0082】
主走査機構231によって保持プレート21が-Y方向に移動する。これにより、描画ヘッド33は基板90に対して相対的にY方向に移動し、主走査が実現される。主走査が行われる間、描画ヘッド33は描画光351を、基板90の露光面に連続的に照射する。これにより、所望のパターンが基板90の露光面に投影される。各描画ヘッド33がY方向に沿って基板90を1回横断すると、描画光351に対応したパターンがY方向に延びた帯状に描画される。複数の描画ヘッド33が、基板90上を並行して横断することにより、1回の主走査によって複数の帯状のパターンが描画される。
【0083】
上述の主走査が終了したのち、副走査機構221によって、保持プレート21が+X方向に移動する。これにより描画ヘッド33は基板90に対して相対的に-X方向へ移動し、副走査が実現される。副走査における描画ヘッド33の基板90に対する相対的な移動量は、例えば1回の主走査によって得られた帯状パターンの幅以上である。
【0084】
上述の副走査が終了したのち、主走査機構231によって保持プレート21がY方向に移動する。これにより、描画ヘッド33は基板90に対して相対的に-Y方向に移動し、主走査が実現される。主走査が行われる間、各描画ヘッド33は描画光351を、基板90に連続的に照射する。
【0085】
このような、副走査を挟んで主走査方向が反対(上述の例では主走査方向には-Y方向とY方向の二種が採用される)となる複数の主走査が行われ、基板90の露光面において描画の対象となる領域の全域にパターンが描画されると、描画処理が終了する。
【0086】
<1-6.投影光学系330およびオートフォーカス機構6>
図6は、描画ヘッド33の概略を示す側面図である。図6に示されるように、描画ヘッド33の各々には、オートフォーカス機構6が設けられる。
【0087】
オートフォーカス機構6は、検出系60と移動機構63とを有する。図3では視認性を高めるため、検出系60はその大まかな位置が二点鎖線によって図示されている。図6においては視認性を高めるため、検出系60は拡大して描かれ、実際の位置よりもY方向にずれて描かれる。図6においては、検出系60と固定材112との位置関係は実際の位置関係を必ずしも反映していない。
【0088】
検出系60は例えばローパスフィルタ64と、検出部65Aとを有する。ローパスフィルタ64には、いずれも投影光学系330から出射された描画光351および検出用光361が入射する。ローパスフィルタ64は、描画光351を透過させ、検出用光361を反射する。ローパスフィルタ64が有するカットオフ波長は、光35の波長と光36の波長との間に設定され、例えば440nmである。
【0089】
ローパスフィルタ64は、当該描画光351を基板90へ導き、基板90を避けて検出用光361を出射する光学系として機能する。かかる観点から、投影光学系330を第1の光学系として捉え、ローパスフィルタ64を第2の光学系として捉えることができる。
【0090】
検出部65Aは、投影光学系330の焦点位置を検出する。移動機構63は検出部65Aによって検出された焦点位置に基づいて、描画光351の焦点を調整する。移動機構63は投影光学系330の焦点位置を補正する。
【0091】
検出部65Aは、プリズム651と検出器652とを有する。プリズム651は例えば、稜線651aと、稜線651aと対向する面651bとを含む。稜線651aには、ローパスフィルタ64から出射された検出用光361が入射する。面651bは、稜線651aに入射した検出用光361を、光361a,361bに分岐して出射する。ここでは光361aが光361bよりもZ方向側へ出射する場合が例示される。
【0092】
検出器652は例えば一次元検出器であり、一方向における光の位置を検出する機能を有する。検出器652には光361a,361bが入射する。ここでは光361a,361bが検出器652に入射する位置が、Z方向に沿って検出される場合が例示される。当該位置から投影光学系330の焦点位置を検出する手法は後述される。
【0093】
例えば検出系60は、後述される取付機構62によって描画ヘッド33に対して、具体的には鏡筒332へ、固定される。
【0094】
オートフォーカス機構6は移動機構63を有する。検出部65Aによって検出された焦点位置に応じて、鏡筒332を、または鏡筒331、332の両方を、移動機構63がZ方向または-Z方向に移動させる。当該移動により、描画光351の焦点が調整される。
【0095】
検出部65Aが検出した変動量は、制御部5または不図示の専用の演算回路に伝達され、所期のプログラムに従った演算処理が行われる。この演算処理によって、移動機構63による鏡筒332、または鏡筒331,332の昇降量が決定される。
【0096】
<1-7.制御部5>
図7は制御部5と、描画装置100を構成するその他の構成要素との接続関係を概念的に示すバス配線図である。
【0097】
制御部5は、表示部56、操作部57、回動機構211、副走査機構221、主走査機構231、光源31(より具体的には光源31を駆動するドライバ)、光変調部4(より具体的には空間光変調素子43)およびオートフォーカス機構6、第2の光源7(より具体的にはレーザダイオード710)との間で、例えばバス配線、ネットワーク回線またはシリアル通信回線より接続されており、これら各構成要素の動作を制御する。
【0098】
制御部5は、中央演算部(Central Processing Unit:図において「CPU」と表記)51、読み出し専用のメモリ(Read Only Memory:図において「ROM」と表記)52、揮発性のメモリ(例えばRandom Access Memory:図において「RAM」と表記)53、不揮発性のメモリ54を有する。メモリ53は主に中央演算部51の一時的なワーキングエリアとして使用される。メモリ54に代えてハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、あるいはソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)が採用されてもよい。
【0099】
メモリ52はプログラム55を格納する。中央演算部51は、メモリ52からプログラム55を読み取り、プログラム55を実行することにより、メモリ53またはメモリ54に記憶されている各種データについての演算を行う。制御部5は、中央演算部51、メモリ52、メモリ53およびメモリ54を備えることにより、一般的なコンピュータとしての構成を備えている。
【0100】
中央演算部51は回動機構211、副走査機構221、主走査機構231、オートフォーカス機構6の機構の動作を制御する。例えば中央演算部51はリニアモータ211a,221a,231a、移動機構63の動作を制御する。かかる制御機能は、中央演算部51がプログラム55に従って動作することにより実現される機能ブロックたる機構制御部511として描かれる。機構制御部511の一部または全部は、論理回路などによって実現されてもよい。
【0101】
メモリ54は、パターンデータ541と描画位置情報545とを格納する。パターンデータ541を反映したパターンが基板90上に描画される。パターンデータ541は、例えば、CADソフトなどによって作成されたベクトル形式のデータを、ラスター形式のデータに展開した画像データである。
【0102】
パターンデータ541は、例えば一つのパターンデータから、描画ヘッド33のそれぞれが描画を担当する部分についてのデータとして、描画ヘッド33毎に個別に生成される。
【0103】
制御部5は、パターンデータ541に基づき、光変調部4を制御することによって、描画光351を描画ヘッド33から出射させる。
【0104】
中央演算部51は主走査によって移動する描画光351の位置に同期してパターンデータ541を修正し、光変調部4、より具体的には空間光変調素子43における光変調を制御する。かかる制御機能は、中央演算部51がプログラム55に従って動作することにより実現される機能ブロックたる描画制御部513として描かれる。描画制御部513の一部または全部は、論理回路などによって実現されてもよい。
【0105】
描画位置情報545は主走査によって移動する描画光351の位置を反映する。あるいは描画位置情報545を反映して、描画光351の位置が主走査によって移動する。例えば描画制御部513は、主走査機構231のリニアモータ231aから送られてくるリニアスケール信号に基づいて、光変調のリセットパルスおよび描画位置情報545を生成する。描画位置情報545はメモリ54に格納される。
【0106】
このリセットパルスに基づいて動作する光変調部4によって、基板90の位置に応じて変調された描画光351が、各描画ヘッド33から出射される。
【0107】
表示部56には、例えば一般的なモニタや液晶ディスプレイが利用される。表示部56は、制御部5の制御によりオペレータに対して各種データを表示する。操作部57には、例えばボタンやキー、マウス、タッチパネルが利用される。操作部57はオペレータにより操作され、描画装置100に対する指示が入力される。
【0108】
<2.焦点位置の調整の例示>
<2-1.第1の例示>
図8は検出部65Aにおける検出の態様を例示する模式図である。具体的には図8において、面652a、領域362a,363a,364a,362b,363b,364bが例示される。検出器652は入射光の位置を検出する面652aを有する。面652aへ、プリズム651から光361a,361bが入射する。面652aへ入射する光361a,361b同士が近いほど、投影光学系330の焦点位置が鏡筒332に近い。
【0109】
面652aに対して、第1の状況における光361a,361bは、それぞれ領域362a,362bへ入射する。面652aに対して、第2の状況における光361a,361bは、それぞれ領域363a,363bへ入射する。面652aに対して、第3の状況における光361a,361bは、それぞれ領域364a,364bへ入射する。
【0110】
第1の状況では焦点位置が適切な範囲にある。第2の状況では焦点位置が適切な範囲よりも投影光学系330から遠い(これは鏡筒332から遠いとも言える)範囲にある。第3の状況では焦点位置が適切な範囲よりも投影光学系330に近い(これは鏡筒332に近いとも言える)範囲にある。
【0111】
距離D2は領域362a,362b同士の間隔を示す。距離D3は領域363a,363b同士の間隔を示す。距離D4は領域364a,364b同士の間隔を示す。距離D2は閾値Dt1から閾値Dt2(>Dt1)の範囲内にある。距離D3は閾値Dt2よりも大きい。距離D4は閾値Dt1よりも小さい。
【0112】
図9は焦点位置を調整する処理を例示するフローチャートである。便宜上、図面および以下の説明では当該処理が「焦点調整処理」とも称される。当該焦点調整処理はステップS11,S12,S13,S14を有する。
【0113】
焦点調整処理ではステップS11において距離Diが閾値Dt1よりも小さいか否かが判断される。ここで距離Diは、面652aに対して光361a,361bが入射する領域同士の間隔を指す。第1の状況での距離Diは距離D2で例示され、第2の状況での距離Diは距離D3で例示され、第3の状況での距離Diは距離D4で例示される。
【0114】
ステップS11の判断結果が肯定的な場合(領域364a,364b参照:D4<Dt1)には、焦点位置は第3の状況に対応して適切な範囲よりも投影光学系330に近い。この場合、ステップS12において鏡筒331,332が構成する両側テレセントリック光学系の光軸に沿って、鏡筒332を鏡筒331から相対的に離す処理が実行される。具体的には移動機構63が、例えば鏡筒332を-Z方向へ移動させる(下方へ降ろす)。鏡筒332を鏡筒331から離すことにより、焦点位置は投影光学系330から遠くに移動し、適切な範囲へ近づく。ステップS12は焦点位置を補正する工程ともいえる。ステップS12が実行された後、焦点調整処理は終了する。
【0115】
ステップS11の判断結果が否定的な場合には、ステップS13において距離Diが閾値Dt2よりも大きいか否かが判断される。
【0116】
ステップS13の判断結果が肯定的な場合(領域363a,363b参照:Dt2<D3)には、焦点位置は第2の状況に対応して適切な範囲よりも投影光学系330から遠い。この場合、ステップS14において上述の光軸に沿って鏡筒332を鏡筒331に相対的に近づける処理が実行される。具体的には移動機構63が、例えば鏡筒332をZ方向へ移動させる(上方へ昇らせる)。鏡筒332を鏡筒331に近づけることにより、焦点位置は投影光学系330の近くに移動し、適切な範囲へ近づく。ステップS14は焦点位置を補正する工程ともいえる。ステップS14が実行された後、焦点調整処理は終了する。
【0117】
ステップS13の判断結果が否定的な場合には、Dt1≦Di≦Dt2であり(領域362a,362b参照:Dt1≦D2≦Dt2)、焦点位置は第1の状況に対応して適切な範囲にある。この場合、鏡筒331,332同士の距離を変えずに焦点調整処理は終了する。
【0118】
描画光351が進む投影光学系330の焦点位置は、描画光351と並行して投影光学系330を進む検出用光361を用いて検出される。かかる検出により、描画光351の焦点位置の補正が適切であるかが確認されやすい。検出用光361は基板90には出射されず、焦点位置の検出および補正は描画光351による基板90の露光に影響を与えにくい。
【0119】
熱レンズ効果によるレンズの屈折率の変動は、当該レンズの中を進む光の波長に依存する。かかる観点から、検出用光361の波長は描画光351の波長と近く、ひいては光35,36同士での波長の相違は小さいことが望ましい。他方、検出用光361が基板90に出射されないようにローパスフィルタ64のカットオフ波長を設定する観点からは、光35,36同士での波長の相違は大きいことが望ましい。
【0120】
上述の焦点調整処理は、焦点位置の検出と補正とが、露光処理と並行して行われる。例えば焦点調整処理は描画装置100が制御される周期ごとに、繰り返し実行される。
【0121】
ステップS11,S12の対と、ステップS13,S14の対とは、実行される順序が入れ替わってもよい。
【0122】
ステップS12,S14において、鏡筒331,332同士の相対的な位置が変動する量は、適宜に設定される。例えばステップS12においては距離Diと閾値Dt1との差に基づいたPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)で得られる量で鏡筒331,332同士の相対的な位置が増大する。例えばステップS14においては距離Diと閾値Dt2との差に基づいたPID制御で得られる量で鏡筒331,332同士の相対的な位置が減少する。
【0123】
<2-2.第2の例示>
図10図11図12は、検出系60の他の構成を例示する側面図である。以下では、検出系60がローパスフィルタ64と、検出部65Bとを有する場合が例示される。当該例示にかかる検出系60においては、第1の例示にかかる検出部65A(図6参照)が検出部65Bと代替される。
【0124】
検出部65Bは、投影光学系330の焦点位置を検出する。移動機構63は検出部65Bによって検出された焦点位置に基づいて、描画光351の焦点を調整する。移動機構63は投影光学系330の焦点位置を補正する。
【0125】
検出部65Bは、ナイフエッジ653と、検出器654とを有する。ナイフエッジ653は、ローパスフィルタ64から出射された検出用光361の一部または全部である光361cを透過させる。例えばナイフエッジ653は、第1の状況(焦点距離が適切な範囲にある)において検出用光361が集光する位置Qj(図10参照)と、検出用光361の光軸Cの方向において同じ位置に配置される。ナイフエッジ653の先端は、光軸Cよりもわずかに-Z側に位置する。ナイフエッジ653によって検出用光361はいわゆるケラレを受ける。光361cの集光する位置が位置Qjからずれた場合、ナイフエッジ653は-Z方向側で検出用光361を部分的に遮蔽する(図11図12参照)。この観点からナイフエッジ653は検出用光361を部分的に遮蔽しつつ透過させる遮蔽物であると言える。但し検出用光361が位置Qjにおいて集光するとき、ナイフエッジ653は検出用光361を実質的には遮蔽しない。
【0126】
検出器654には光361cが入射する。検出器654は一対の光量センサ654a,654bを有する。光量センサ654a,654bは、入射した光量の大きさに応じた信号を出力する機能を有する。ここでは光量センサ654aは光量センサ654bよりもZ方向側に位置する場合が例示される。光量センサ654aの受光面と光量センサ654bの受光面とはZ方向に隣接して設けられ、これらの受光面同士の境界のZ方向の位置は、光軸CのZ方向の位置と所定距離で離れる。以下では簡単のため、両者のZ方向の位置同士は一致する場合(上述の所定距離が実質的に零の場合)が例示される。
【0127】
検出部65Bが検出した光量は、制御部5または不図示の専用の演算回路に伝達され、所期のプログラムに従った演算処理が行われる。この演算処理によって、移動機構63による鏡筒332、または鏡筒331,332の昇降量が決定される。
【0128】
図13は検出器654における検出の態様を例示する模式図である。図13において、検出器654が有する光量センサ654a,654bのそれぞれの受光面654am,654bmが示される。光361cは、受光面654am,654bmに入射する。受光面654amと受光面654bmとの境界654dが、上述の通り、光軸CのZ方向の位置と一致する場合について説明される。
【0129】
領域Mjは、図10における検出の態様に対応し、上述の第1の状況において光361cが受光面654am,654bmへ入射する領域を実線で示す。第1の状況では、ナイフエッジ653の先端の直上(Z方向側)の位置Qjで検出用光361が集光するので、光361cはナイフエッジ653に実質的には遮蔽されることなく、受光面654am,654bmへ入射する。この場合、受光面654amにおいて検出される光361cの光量Eaと受光面654bmにおいて検出される光361cの光量Ebとは略等しい。
【0130】
図11は上述の第2の状況(第1の状況よりも焦点位置が投影光学系330から遠い状況)における検出用光361の集光を例示する。第2の状況において検出用光361が集光する位置Qrは、ナイフエッジ653の先端の直上よりもY方向側にある。ナイフエッジ653は検出用光361の-Z方向側の一部を遮蔽する。
【0131】
図13の領域Mrは、図11における検出の態様に対応し、上述の第2の状況において光361cが受光面654am,654bmへ入射する領域を一点鎖線で示す。位置Qrは位置QjよりもY方向側にあるので、領域Mrの径は領域Mjの径よりも小さい。
【0132】
受光面654amへ入射する光361cの光量Eaは、ナイフエッジ653により検出用光361が遮蔽されることにより、第1の状況よりも少なくなる。一方、受光面654bmへ入射する光361cはナイフエッジ653における遮蔽を受けていない。よって受光面654bmへ入射する光361cの光量Ebは、第1の状況と略同じである。焦点位置が投影光学系330の-Z方向にずれるほど、検出用光361がナイフエッジ635により遮蔽される割合が増加し、光量Ebと比較して光量Eaは小さくなる。
【0133】
図12は上述の第3の状況(第1の状況よりも焦点位置が投影光学系330に近い状況)における検出用光361の集光を例示する。第3の状況において検出用光361が集光する位置Qsは、ナイフエッジ653の先端の直上よりも-Y方向側にある。ナイフエッジ653は検出用光361のZ方向側の一部を遮蔽する。
【0134】
図13の領域Msは、図12における検出の態様に対応し、上述の第3の状況において光361cが受光面654am,654bmへ入射する領域を二点鎖線で示す。位置Qsは位置Qjよりも-Y方向側にあるので、領域Msの径は領域Mjの径よりも大きい。
【0135】
光量Ebは、ナイフエッジ653により検出用光361が遮蔽されることにより、第1の状況よりも少なくなる。一方、受光面654amへ入射する光361cはナイフエッジ653における遮蔽を受けていない。よって光量Eaは第1の状況と略同じである。焦点位置が投影光学系330のZ方向にずれるほど、検出用光361がナイフエッジ635により遮蔽される割合が増加し、光量Eaと比較して光量Ebは小さくなる。
【0136】
以上のことから、光量Ea,Ebを検出、あるいは両者の比を検出することによって、焦点位置を検出することができる。
【0137】
図14は焦点位置を調整する処理を例示するフローチャートである。図9で例示されたフローチャートと同様に、便宜上、当該処理も「焦点調整処理」とも称される。当該焦点調整処理はステップS21,S22,S23,S24を有する。
【0138】
焦点調整処理ではステップS21において、光量Ea,Ebが検出され、これらの比Ea/Ebが所定の閾値T1よりも大きいかが判断される。閾値T1は、1より大きい所定の値であり、光量Ea,Ebの検出誤差や、許容可能な焦点位置のズレ量等を考慮してあらかじめ設定される。
【0139】
ステップS21の判断結果が肯定的な場合には、焦点位置は上述された第3の状況に対応して適切な範囲よりも投影光学系330に近い。この場合、ステップS22においてステップS12と同じく、鏡筒331,332が構成する両側テレセントリック光学系の光軸に沿って、鏡筒332を鏡筒331から相対的に離す処理が実行される。具体的には移動機構63が、例えば鏡筒332を-Z方向へ移動させる(下方へ降ろす)。鏡筒332を鏡筒331から離すことにより、焦点位置は投影光学系330から遠くに移動し、適切な範囲へ近づく。ステップS22は焦点位置を補正する工程ともいえる。ステップS22が実行された後、焦点調整処理は終了する。
【0140】
ステップS21の判断結果が否定的な場合には、ステップS23において比Ea/Ebが閾値T2よりも小さいか否かが判断される。閾値T2は0より大きく1より小さい所定の値であり、光量Ea,Ebの検出誤差や、許容可能な焦点位置のズレ量等を考慮してあらかじめ設定される。
【0141】
ステップS23の判断結果が肯定的な場合には、焦点位置は上述された第2の状況に対応して適切な範囲よりも投影光学系330から遠い。この場合、ステップS24においてステップS14と同じく、上述の光軸に沿って鏡筒332を鏡筒331に相対的に近づける処理が実行される。具体的には移動機構63が、例えば鏡筒332をZ方向へ移動させる(上方へ昇らせる)。鏡筒332を鏡筒331に近づけることにより、焦点位置は投影光学系330の近くに移動し、適切な範囲へ近づく。ステップS24は焦点位置を補正する工程ともいえる。ステップS24が実行された後、焦点調整処理は終了する。
【0142】
ステップS23の判断結果が否定的な場合には、焦点位置は上述された第1の状況に対応して適切な範囲にある。この場合、鏡筒331,332同士の距離を変えずに焦点調整処理は終了する。
【0143】
第2の例示における焦点調整処理においても、第1の例示における焦点調整処理と同様に、描画光351が進む投影光学系330の焦点位置は、描画光351と並行して投影光学系330を進む検出用光361を用いて検出される。かかる検出により、描画光351の焦点位置の補正が適切であるかが確認されやすい。検出用光361は基板90には出射されず、焦点位置の検出および補正は描画光351による基板90の露光に影響を与えにくい。
【0144】
第2の例示における焦点調整処理も、焦点位置の検出と補正とが、露光処理と並行して行われる。例えば焦点調整処理は描画装置100が制御される周期ごとに、繰り返し実行される。
【0145】
ステップS21,S22の対と、ステップS23,S24の対とは、実行される順序が入れ替わってもよい。
【0146】
ステップS22,S24において、鏡筒331,332同士の相対的な位置が変動する量は、適宜に設定される。例えば比Ea/Ebの値に応じて鏡筒331,332同士の相対的な位置の変動する量が調整される。例えば比Ea/Ebの値が1から離れるほど、鏡筒331,332同士の相対的な位置が変動する量が大きくなるよう調整される。
【0147】
<3.第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、空間光変調素子43を経由せずに検出用光361が投影光学系330に入射する場合が例示される。その他の構成、機能は第1の実施の形態と第2の実施の形態とにおいて共通する。例えば第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、検出系60は検出部65A,65Bのいずれかを有し、焦点位置に基づいて鏡筒331,332同士の間隔が調整される。
【0148】
図15は光変調部4の構成を例示する側面図である。光変調部4の構成には、例えば図4を用いて示された構成が採用される。第2の実施の形態においては、描画装置100がローパスフィルタ46を備える。ローパスフィルタ46は、空間光変調素子43と投影光学系330(より具体的には鏡筒331)との間に位置する。ローパスフィルタ46は、描画光351を透過させ、第2の光源7から出射された光36を反射して検出用光361を出射し、投影光学系330(より具体的には鏡筒331)へと導くフィルタとして機能する。
【0149】
例えばローパスフィルタ46のカットオフ波長も、ローパスフィルタ64のカットオフ波長と同様に、光35の波長と光36の波長との間に設定される。例えば光35の波長は365~405nmであり、光36の波長は450nmであり、当該カットオフ波長は440nmである。
【0150】
第1の実施の形態において空間光変調素子43から出射される検出用光361は、オフ状態のミラー43mによる光36の反射によって得られる。第2の実施の形態においてローパスフィルタ46から出射される検出用光361には、光36の多くを利用することができる。第2の実施の形態は第1の実施の形態と比較して、所望の強度以上の検出用光361が得られる点で優れる。第1の実施の形態は第2の実施の形態と比較して、光36を検出用光361として投影光学系330へ入射させる構成要素(ここではローパスフィルタ46)を個別に設ける必要がない点で優れる。
【0151】
<4.変形>
<4-1.空間光変調素子43の変形>
図16は、上記第1の実施の形態における変形を例示する平面図である。図16は、Z方向に沿って見た、空間光変調素子43の平面図である。
【0152】
当該変形において、空間光変調素子43はミラー43m(図5参照)がマトリクス状に配置される領域430を有する。領域430は空間光変調素子43において-Z方向側に現れる。例えばX方向に垂直かつ平面視上でY方向に沿って光35が、X方向に垂直かつ平面視上で-Y方向に沿って光36が、それぞれ領域430に入射する(図5参照)。
【0153】
領域430は、互いに異なる第1領域431と第2領域432とを有する。第1領域431は、露光に用いられるパターンに基づいて光35を空間変調して描画光351を出射する。第2領域432は、当該パターンに依らずに光36を検出用光361として投影光学系330へ出射する。第1領域431に入射する光36が、オフ状態のミラー43mによって反射されて、検出用光361として投影光学系330へ出射されてもよい。
【0154】
第2領域432に入射した光36は、検出用光361として反射されるので、当該変形は、第1の実施の形態と比較して、所望の強度以上の検出用光361が得られる点で優れる。また当該変形は第2の実施の形態と比較して、光36を検出用光361として投影光学系330へ入射させる構成要素(例えばローパスフィルタ46)を個別に設ける必要がない点で優れる。
【0155】
<4-2.他のオートフォーカス技術との併用>
図17はオートフォーカス機構6に、他のオートフォーカス技術を併用する場合を例示する側面図である。移動機構63は投影光学系330の焦点位置に基づく他に、基板90と投影光学系330との距離に基づいて、鏡筒332を移動させてもよい。
【0156】
図17においては図示の簡単のため、検出系60はその大まかな位置が二点鎖線で示される(図3も参照)。図17には描画光351の光軸L3も二点鎖線で示される。
【0157】
オートフォーカス機構6は検出器61と取付機構62とを有する。取付機構62は鏡筒332の外周面に設けられる。検出系60および検出器61は、取付機構62によって描画ヘッド33に対して、具体的には鏡筒332へ固定される。
【0158】
検出器61は、描画ヘッド33と基板90(詳細には、露光面)との間の距離L1の変動を検出する。移動機構63は検出器61によって検出された距離L1の変動にも基づいて鏡筒332を移動させ、描画光351の焦点を調整する。
【0159】
検出器61が検出した変動量は、検出系60が検出した焦点位置と共に、制御部5または不図示の専用の演算回路に伝達され、所期のプログラムに従った演算処理が行われる。この演算処理によって、移動機構63による鏡筒332、または鏡筒331,332の昇降量が決定される。
【0160】
検出器61は、レーザ光を基板90に照射する照射部611と、基板90を反射したレーザ光を受光する受光部613とを有する。
【0161】
照射部611は、基板90の露光面に対する法線方向(ここでは、Z方向)に対して鋭角θで傾斜した軸に沿って、レーザ光を基板90の上面に入射させる。当該レーザ光は位置91をスポット状に照射し、反射して受光部613に入射する。ここでは当該レーザ光はY軸に垂直な場合が例示される。
【0162】
受光部613は、例えばラインセンサ(不図示)を有する。位置91から反射したレーザ光の、当該ラインセンサ上における入射位置によって、基板90の露光面の変動が検出される。
【0163】
<5.概括的説明>
上述の開示は、描画装置100の構成という観点で以下のように説明され得る。
【0164】
描画装置100は、パターンに基づいた描画光351で感光性の基板90を露光する装置である。当該パターンは例えばメモリ54に格納されるパターンデータ541を反映する。
【0165】
描画装置100は第1の光源34を備える。第1の光源34は第1の波長を有する光35を出射する。上述の例示では第1の光源34は光源31と照明光学系32とを有する。第1の波長は、例えば365~405nmである。
【0166】
描画装置100は空間光変調素子43を備える。空間光変調素子43は、上述のパターンに基づいて光35を空間変調して描画光351を出射する変調器である。
【0167】
描画装置100は第2の光源7を備える。第2の光源7は第2の波長を有する光36を出射する。第2の波長は第1の波長とは異なり、例えば440nmである。
【0168】
描画装置100は投影光学系330を備える。投影光学系330は、描画光351および検出用光361が入射して、描画光351および検出用光361を出射する第1の光学系である。
【0169】
検出用光361は、光36が空間光変調素子43による空間光変調によって得られる場合(<1-4-1.第1の実施の形態>参照)や、光36がローパスフィルタ46により反射されて得られる場合(<3.第2の実施の形態>参照)や、空間光変調素子43において空間光変調されずに反射されて得られる場合(<4-1.空間光変調素子43の変形>参照)によって得られる場合がある。光36が空間光変調素子43による空間光変調によって得られる場合も、光36が空間光変調されずに反射されて得られる場合も、光36が空間光変調素子43を経由して検出用光361として投影光学系330に入射する観点で共通する。
【0170】
描画光351に利用される光35を第1の光として、これに対応して、検出用光361に利用される光36を第2の光ということができる。本開示における光変調は空間変調であり、空間変調および反射のいずれが用いられても検出用光361の波長は光36の波長が維持される。また第2の実施の形態のように、光36が空間変調されずに検出用光361として採用される場合もある。これらのことから、第2の光源7は第2の波長を有する第2の光を出射する、ということができる。
【0171】
描画装置100はローパスフィルタ64を備える。ローパスフィルタ64は、第1の光学系たる投影光学系330から出射された描画光351および第2の光たる検出用光361が入射して、描画光351および検出用光361を出射する、第2の光学系である。当該第2の光学系は、第1の光学系から出射された描画光351を基板90へ導き、第1の光学系から出射された検出用光361を、基板90を避けて出射する。
【0172】
描画装置100は検出部65Aまたは検出部65Bを備える。検出部65A,65Bのいずれもが、第2の光学系たるローパスフィルタ64から出射された検出用光361に基づいて第1の光学系たる投影光学系330の焦点位置を検出する。
【0173】
第2の実施の形態において例示されたように、描画装置100はローパスフィルタ46を備えてもよい。ローパスフィルタ46は、変調器たる空間光変調素子43と第1の光学系たる投影光学系330との間に位置する。ローパスフィルタ46は、描画光351を透過させ、光36を反射して第2の光源7から第1の光学系へと導くフィルタである。
【0174】
ローパスフィルタ46,64のいずれも、第1の波長と第2の波長との間にカットオフ波長を有する。本開示では当該カットオフ波長として440nmが例示される。
【0175】
検出部65Aはプリズム651と検出器652とを有する。プリズム651は検出用光361を第3の光および第4の光たる光361a,361bに分岐する。検出部65Aにおいて検出器652は、光361a,361bが入射する位置を検出する。両者の位置が狭いほど、第1の光学系たる投影光学系330の焦点位置は投影光学系330に近い。
【0176】
検出部65Bはナイフエッジ653と検出器652とを有する。ナイフエッジ653は、第2の光学系たるローパスフィルタ64から出射された第2の光たる検出用光361を部分的に遮蔽しつつ、光361cとして透過させる遮蔽物として機能する。検出部65Bにおいて検出器652は、光361cが入射する位置を検出する。
【0177】
第1の光学系は、投影光学系330の他、移動機構63を更に備えてもよい。移動機構63は、投影光学系330において両側テレセントリック光学系を構成する第1の鏡筒および第2の鏡筒たる鏡筒331,332を、両側テレセントリック光学系の光軸に沿って移動させる。
【0178】
例えば当該光軸に沿った鏡筒331,332同士の間の距離は、検出部65Aまたは検出部65Bによって検出された、投影光学系330の焦点位置が、鏡筒332に近いほど、移動機構63によって縮められる。
【0179】
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本開示がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0180】
7 第2の光源
34 第1の光源
35 光(第1の光)
36 光(第2の光)
43 空間光変調素子(変調器)
46 ローパスフィルタ(フィルタ)
63 移動機構
64 ローパスフィルタ(第2の光学系)
65A,65B 検出部
100 描画装置
330 投影光学系(第1の光学系)
331 鏡筒(第1の鏡筒)
332 鏡筒(第2の鏡筒)
351 描画光
361 検出用光(第2の光)
361a,361b 光(第3の光,第4の光)
361c 光(第2の光)
431 第1領域
432 第2領域
651 プリズム
652,654 検出器
653 ナイフエッジ(遮蔽物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17