(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004139
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電動式作業機械
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20240109BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240109BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240109BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B60K11/06
B60K11/04 B
B60K1/04 Z
E02F9/00 C
E02F9/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103638
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 訓
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D038AA09
3D038AB09
3D038AC12
3D038AC14
3D235AA19
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC15
(57)【要約】
【課題】機内の限られた狭い空間を有効利用しながら、電装品を冷却(空冷)することができる電動式作業機械を提供する。
【解決手段】電動式作業機械としての油圧ショベルは、電動モータと、電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、バッテリユニットから電力が供給される電装品と、ファンと、を備える。電装品は、上方から見て、ファンとバッテリユニットとの間に位置する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、
前記バッテリユニットから前記電力が供給される電装品と、
ファンと、を備え、
前記電装品は、上方から見て、前記ファンと前記バッテリユニットとの間に位置する、電動式作業機械。
【請求項2】
前記電動モータは、前記バッテリユニットに対して前記ファン側に位置し、
前記電装品は、前記電動モータよりも上方に位置する、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項3】
前記電装品は、第1電装品と、第2電装品と、を含み、
前記第1電装品および前記第2電装品は、上方から見て互いにずれて位置する、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項4】
前記ファンは、上方から見て、前記バッテリユニットに向かって延びる回転軸を有し、
前記第1電装品は、前記ファンの前記回転軸と交わって位置する第1壁部に保持され、
前記第2電装品は、前記ファンの前記回転軸に沿って位置する第2壁部に保持される、請求項3に記載の電動式作業機械。
【請求項5】
前記第1電装品は、第1放熱部を有し、
前記第1放熱部は、前記第1壁部に対して前記ファン側に位置する、請求項4に記載の電動式作業機械。
【請求項6】
前記第2電装品は、第2放熱部を有し、
前記第2放熱部は、前記第2壁部に対して前記ファンの前記回転軸側に位置する、請求項4に記載の電動式作業機械。
【請求項7】
前記バッテリユニットを通る冷媒を冷却する第1熱交換器をさらに備え、
前記第1熱交換器は、前記ファンと対向して配置され、
前記電装品は、上方から見て、前記バッテリユニットと前記第1熱交換器との間に位置する、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項8】
前記電動モータによって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される油圧アクチュエータと、
前記作動油を冷却する第2熱交換器と、
仕切板と、をさらに備え、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とは、前記ファンの前記回転軸と交差する一方向に互いにずれて位置し、
前記仕切板は、上方から見て、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器と前記バッテリユニットとの間に位置するとともに、前記一方向を横切って位置する、請求項7に記載の電動式作業機械。
【請求項9】
前記第1熱交換器および前記第2熱交換器は、前記ファンと対向して配置される、請求項8に記載の電動式作業機械。
【請求項10】
前記ファンは、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器に対して、前記バッテリユニットとは反対側に位置する、請求項9に記載の電動式作業機械。
【請求項11】
前記ファンは、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器に対して、前記バッテリユニット側に位置する、請求項9に記載の電動式作業機械。
【請求項12】
前記ファンは、上方から見て、前記バッテリユニット側を向いて位置する、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項13】
前記ファンは、上方から見て、前記バッテリユニットの方向に向かって空気を送風する、請求項1から12のいずれかに記載の電動式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータを備えた旋回作業機が種々提案されている。例えば特許文献1では、ラジエータから、バッテリユニット、電動モータ、電装品等に冷媒を供給する1つの水冷経路を設けて、電動モータ等を冷却する旋回作業機が開示されている。電装品には、インバータ、DC/DCコンバータ等が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリユニットを通る冷媒の冷却温度は、例えば40℃程度と比較的低い。一方、電動モータおよび電装品が発熱すると、その温度は上記の冷却温度以上となり得る。このため、特許文献1のように、バッテリユニット、電動モータ、および電装品を1つの水冷経路で冷却するシステムでは、冷媒の冷却温度が低いバッテリユニットを基準とし、バッテリユニットに合わせるようにして電装品等を冷却することが必要となるため、冷却システムが過剰に大きくなる。大型の冷却システムは、機器のレイアウトスペースが狭い小型の電動ショベルには適さない。したがって、小型の電動ショベルでは、例えばバッテリユニットを水冷とする一方、少なくとも電装品を空冷とする構成が望ましい。
【0005】
しかし、小型の電動ショベルでは、機内が狭く、電装品を空冷するシステムのレイアウトを工夫する必要がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、機内の限られた狭い空間を有効利用しながら、電装品を冷却(空冷)することができる電動式作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電動式作業機械は、電動モータと、前記電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、前記バッテリユニットから前記電力が供給される電装品と、ファンと、を備え、前記電装品は、上方から見て、前記ファンと前記バッテリユニットとの間に位置する。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、電動式作業機械において、ファンとバッテリユニットとの間の、限られた狭い空間を、電装品の配置空間として有効利用しながら、電装品を冷却(空冷)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る電動式作業機械の一例である油圧ショベルの概略の構成を示す側面図である。
【
図2】上記油圧ショベルの電気系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図3】上記油圧ショベルの機関室内の全体の構成を示す斜視図である。
【
図4】上記機関室内の全体の構成を示す平面図である。
【
図6】
図5から、ファンおよび筐体の図示を省略した状態でのA部の斜視図である。
【
図7】
図6から、ラジエータおよびオイルクーラの図示を省略した状態でのA部の斜視図である。
【
図8】上記油圧ショベルが備える風導部を上方から見たときの斜視図である。
【
図9】上記風導部を下方から見たときの斜視図である。
【
図10】上記風導部を水平断面で切ったときの斜視図である。
【
図11】電動モータを収容した状態での上記風導部を下方から見たときの斜視図である。
【
図12】上記風導部の第1流路部を、電装品を通る断面で切ったときの断面図である。
【
図13】
図4のA部を右側から見たときの側面図である。
【
図14】上記油圧ショベルの変形例の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0011】
〔1.電動式作業機械〕
図1は、本実施形態の電動式作業機械の一例である油圧ショベル(電動ショベル)1の概略の構成を示す側面図である。油圧ショベル1は、下部走行体2と、作業機3と、上部旋回体4と、を備える。
【0012】
ここで、方向を以下のように定義する。上部旋回体4の運転座席41aに着座したオペレータ(操縦者、運転手)が正面を向く方向を前方とし、その逆方向を後方とする。したがって、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態(旋回角度0°)では、上部旋回体4の前後方向は、下部走行体2が前後進する方向と一致する。また、運転座席41aに着座したオペレータから見て左側を「左」とし、右側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。図面では、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態で油圧ショベル1を示す。また、図面では、必要に応じて、前方を「F」、後方を「B」、右方を「R」、左方を「L」、上方を「U」、下方を「D」の記号で示す。
【0013】
下部走行体2は、左右一対のクローラ21と、左右一対の走行モータ22と、を備える。各走行モータ22は、油圧モータである。左右の走行モータ22が、左右のクローラ21をそれぞれ駆動することにより、油圧ショベル1を前後進させることができる。下部走行体2には、整地作業を行うためのブレード23と、ブレードシリンダ23aとが設けられる。ブレードシリンダ23aは、ブレード23を上下方向に回動させる油圧シリンダである。
【0014】
作業機3は、ブーム31、アーム32、およびバケット33を備える。ブーム31、アーム32、およびバケット33を独立して駆動することにより、土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0015】
ブーム31は、ブームシリンダ31aによって回動される。ブームシリンダ31aは、基端部が上部旋回体4の前部に支持され、伸縮自在に可動する。アーム32は、アームシリンダ32aによって回動される。アームシリンダ32aは、基端部がブーム31の先端部に支持され、伸縮自在に可動する。バケット33は、バケットシリンダ33aによって回動される。バケットシリンダ33aは、基端部がアーム32の先端部に支持され、伸縮自在に可動する。ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、およびバケットシリンダ33aは、油圧シリンダにより構成される。
【0016】
上部旋回体4は、下部走行体2の上方に位置し、下部走行体2に対して旋回ベアリング(不図示)を介して旋回可能に設けられる。上部旋回体4には、操縦部41、旋回フレーム42(機体フレーム)、旋回モータ43、機関室44等が配置される。上部旋回体4は、油圧モータである旋回モータ43の駆動により、旋回ベアリングを介して旋回する。
【0017】
上部旋回体4には、油圧ポンプ71(
図2参照)が配置される。油圧ポンプ71は、機関室44の内部の電動モータ61(
図2参照)によって駆動される。油圧ポンプ71は、油圧モータ(例えば左右の走行モータ22、旋回モータ43)、および油圧シリンダ(例えばブレードシリンダ23a、ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、バケットシリンダ33a)に作動油(圧油)を供給する。油圧ポンプ71から作動油が供給されて駆動される油圧モータおよび油圧シリンダを、まとめて油圧アクチュエータ73(
図2参照)と呼ぶ。
【0018】
操縦部41には、運転座席41aが配置される。運転座席41aの周囲には、各種のレバー41bが配置される。オペレータが運転座席41aに着座してレバー41bを操作することにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。これにより、下部走行体2の走行、ブレード23による整地作業、作業機3による掘削作業、上部旋回体4の旋回、等を行うことができる。
【0019】
上部旋回体4には、バッテリユニット53が配置される。すなわち、油圧ショベル1は、バッテリユニット53を備える。バッテリユニット53は、例えばリチウムイオンバッテリユニットで構成され、電動モータ61を駆動するための電力を蓄える。バッテリユニット53は、複数のバッテリをユニット化して構成されてもよいし、単一のバッテリセルで構成されてもよい。また、上部旋回体4には、不図示の給電口が設けられる。上記の給電口と、外部電源である商用電源51とは、給電ケーブル52を介して接続される。これにより、バッテリユニット53を充電することができる。
【0020】
上部旋回体4には、鉛バッテリ54がさらに設けられる。鉛バッテリ54は、低電圧(例えば12V)の直流電圧を出力する。鉛バッテリ54からの出力は、制御電圧として例えばシステムコントローラ67(
図2参照)、ファン91(
図5参照)の駆動部、などに供給される。
【0021】
油圧ショベル1は、油圧アクチュエータ73などの油圧機器と、電力で駆動されるアクチュエータとを併用した構成であってもよい。電力で駆動されるアクチュエータとしては、例えば、電動走行モータ、電動シリンダ、電動旋回モータがある。
【0022】
〔2.電気系および油圧系の構成〕
図2は、油圧ショベル1の電気系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。油圧ショベル1は、電動モータ61と、充電器62と、インバータ63と、PDU(Power Drive Unit)64と、ジャンクションボックス65と、DC-DCコンバータ66と、システムコントローラ67と、を備える。システムコントローラ67は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる電子制御ユニットで構成され、油圧ショベル1の各部の電気的な制御を行う。
【0023】
電動モータ61は、バッテリユニット53から、ジャンクションボックス65およびインバータ63を介して供給される電力により駆動される。電動モータ61は、永久磁石モータまたは誘導モータで構成される。電動モータ61は、旋回フレーム42上に配置される。
【0024】
充電器62(給電器とも呼ばれる)は、
図1で示した商用電源51から給電ケーブル52を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換する。インバータ63は、バッテリユニット53から供給される直流電圧を、交流電圧に変換して電動モータ61に供給する。これにより、電動モータ61が回転する。インバータ63から電動モータ61への交流電圧(電流)の供給は、システムコントローラ67から出力される回転指令に基づいて行われる。
【0025】
PDU64は、内部のバッテリリレーを制御してバッテリユニット53の入出力を制御するバッテリ制御ユニットである。ジャンクションボックス65は、充電器リレー、インバータリレー、ヒューズ等を含んで構成される。上記した充電器62から出力される電圧は、ジャンクションボックス65およびPDU64を介してバッテリユニット53に供給される。また、バッテリユニット53から出力される電圧は、PDU64およびジャンクションボックス65を介してインバータ63に供給される。
【0026】
DC-DCコンバータ66は、バッテリユニット53からジャンクションボックス65を介して供給される高電圧(例えば300V)の直流電圧を、低電圧(例えば12V)に降圧する。DC-DCコンバータ66から出力される電圧は、鉛バッテリ54からの出力と同様に、システムコントローラ67、ファン91の駆動部、などに供給される。
【0027】
DC-DCコンバータ66およびインバータ63はともに、バッテリユニット53から供給される電圧を所望の電圧に変換する電装品EQである。なお、これらの電装品EQを互いに区別する必要がある場合、DC-DCコンバータ66を第1電装品EQ1とも呼び、インバータ63を第2電装品EQ2とも呼ぶ。すなわち、油圧ショベル1は、バッテリユニット53から電力が供給される電装品EQを備える。電装品EQは、DC-DCコンバータ66で構成される第1電装品EQ1と、インバータ63で構成される第2電装品EQ2と、を含む。
【0028】
電動モータ61の回転軸(出力軸)には、複数の油圧ポンプ71が接続される。複数の油圧ポンプ71は、可変容量型ポンプおよび固定容量型ポンプを含む。
図2では、例として油圧ポンプ71を1つのみ図示している。各油圧ポンプ71は、作動油を収容(貯留)する作動油タンク74と接続されている。電動モータ61によって油圧ポンプ71が駆動されると、作動油タンク74内の作動油が、コントロールバルブ72を介して油圧アクチュエータ73に供給される。これにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。コントロールバルブ72は、油圧アクチュエータ73に供給される作動油の流れ方向および流量を制御する方向切替弁である。このように、油圧ショベル1は、電動モータ61によって駆動される油圧ポンプ71と、油圧ポンプ71から供給される作動油によって駆動される油圧アクチュエータ73と、を備える。
【0029】
〔3.機関室内の構成〕
図3は、油圧ショベル1の機関室44内の全体の構成を示す後方斜視図である。
図4は、機関室44内の全体の構成を示す平面図である。
図3に示すように、本実施形態では、旋回フレーム42上に、4つのバッテリユニット53が前後方向に並んで配置されている。各バッテリユニット53は、左右方向に沿って位置する。4つのバッテリユニット53は、旋回フレーム42上で後方中央よりも左寄りに配置されている。
【0030】
本実施形態では、後方の2つのバッテリユニット53が、前方の2つのバッテリユニット53に対して右側、すなわち、旋回フレーム42の中央側にずれて位置する。さらに、後方の2つのバッテリユニット53のうち、最後部に位置するバッテリユニット53は、その前方に位置するバッテリユニット53よりもさらに右側にずれて位置する。これにより、平面視で半円形に形成された旋回フレーム42の後端縁付近の、限られた狭いスペースに、複数のバッテリユニット53を効率よく配置している(
図4参照)。なお、バッテリユニット53の数および配置は、本実施形態の例には限定されない。
【0031】
複数のバッテリユニット53は一体的に旋回フレーム42上に支持される。より詳しくは、複数のバッテリユニット53は、上板81と下板82とで上下方向から挟まれている(
図3参照)。上板81と下板82とは、上下方向に延びる連結部材83により、複数の箇所で連結される。上板81と連結部材83との連結、および下板82と連結部材83との連結は、例えばボルト締結によって行われる。下板82は、旋回フレーム42上で支持部84により防振支持される。なお、支持部84の設置位置は、
図3および
図4で示した位置には限定されず、適宜変更可能である。
【0032】
上板81と運転座席41a(
図1参照)との間には、運転座席41aの土台となるシートマウント85が位置する。なお、
図3および
図4では、便宜的に、シートマウント85の一部のみを図示している。
【0033】
旋回フレーム42上で、バッテリユニット53の右側には、上記した電動モータ61(
図2参照)、油圧ポンプ71等が配置されている。以下、その詳細について説明する。
【0034】
図5は、
図4のA部の斜視図である。なお、
図4のA部とは、ここでは、機関室44内で最も前方に位置するバッテリユニット53の右側に位置する部分を指す。同図に示すように、油圧ショベル1は、ファン91を備える。ファン91は、筐体90に回転可能に支持されている。筐体90は枠形状であり、左側および右側が開口している。ファン91の回転軸CAは、左右方向に沿って位置する。すなわち、ファン91は、上方から見て、バッテリユニット53に向かって延びる回転軸CAを有する(
図4参照)。ファン91(筐体90)の下方には、上記の油圧ポンプ71が位置する。油圧ポンプ71は、油圧ホースHを介して作動油タンク74(
図2参照)と接続される。
【0035】
筐体90の左側、つまり、筐体90とバッテリユニット53との間には、風導部100が配置される。なお、風導部100の詳細については後述する。
図3および
図5に示すように、上述のインバータ63およびDC-DCコンバータ66などの電装品EQは、風導部100(特に後述の第1流路部110)に取り付けられる。
【0036】
図5において、ファン91(筐体90)および油圧ポンプ71の後方側には、上述の充電器62が配置される。充電器62は、取付ステー62a等を介して旋回フレーム42に支持される。
【0037】
図6は、
図5から、ファン91および筐体90の図示を省略した状態でのA部の斜視図を示す。油圧ショベル1は、ラジエータ92と、オイルクーラ93と、をさらに備える。ラジエータ92は、
図3等で示したバッテリユニット53と配管を介して接続される第1熱交換器であり、バッテリユニット53を通る冷媒を冷却する。ラジエータ92において熱交換により冷媒を冷却し、ラジエータ92から上記冷媒をバッテリユニット53に供給することにより、バッテリユニット53を冷却(水冷)することができる。上記の冷媒は、例えば冷却水である。
【0038】
オイルクーラ93は、油圧ポンプ71および油圧アクチュエータ73(
図2参照)等を介して循環する油路と接続される第2熱交換器である。オイルクーラ93は、油圧ポンプ71の駆動によって上記油路を流れる作動油を熱交換により冷却する。オイルクーラ93は、ラジエータ92に対して左側にずれて位置し、かつ、前方にずれて位置する。なお、オイルクーラ93は、左右方向においてラジエータ92と同じ位置にあってもよい。つまり、オイルクーラ93は、ラジエータ92と前後方向に並んで位置していてもよい。
【0039】
ラジエータ92およびオイルクーラ93は、
図5の筐体90の内部でステー等を介して支持される。ラジエータ92およびオイルクーラ93は、ファン91と風導部100との間に位置する。したがって、ファン91は、ラジエータ92およびオイルクーラ93に対して、風導部100とは反対側に位置する。
【0040】
図7は、
図6から、ラジエータ92およびオイルクーラ93の図示を省略した状態でのA部の斜視図を示す。油圧ショベル1は、風導部100を備える。風導部100は、第1流路部110と、第2流路部120と、を含む。ファン91の駆動によって発生する風は、第1流路部110および第2流路部120を通る。以下、風導部100の詳細について説明する。
【0041】
図8は、風導部100を上方から見たときの斜視図である。
図9は、風導部100を下方から見たときの斜視図である。
図10は、
図8で示した風導部100を水平断面で切ったときの斜視図である。なお、
図8以降の図面では、便宜的に、上述の電装品EQの図示を省略している。
【0042】
風導部100の第1流路部110は、第1流路本体部111と、第1流路一端部側開口部112と、第1流路他端部側開口部113と、を有する。第1流路本体部111の内部は空洞である。ファン91の駆動によって発生した風の一部は、第1流路本体部111の内部を通る。第1流路本体部111は、風が通る空洞を有する形状であればよく、その形状は特に限定されない。
【0043】
第1流路一端部側開口部112は、第1流路本体部111において、上記風が流れる流路方向の一端部に形成された開口である。本実施形態では、第1流路一端部側開口部112は、半円形で形成されているが、その形状は特に限定されない。第1流路一端部側開口部112は、第1流路本体部111に対して右側に位置するラジエータ92(
図6参照)に向かって開口している。すなわち、第1流路一端部側開口部112は、ラジエータ92と向かい合う位置にある。
【0044】
第1流路他端部側開口部113は、第1流路本体部111において、上記風が流れる流路方向の他端部に形成された開口である。本実施形態では、第1流路他端部側開口部113は、
図9に示すように、矩形の形状で形成されているが、その形状は特に限定されない。第1流路他端部側開口部113は、下方に向かって開口している。
【0045】
上記の第1流路本体部111は、第1壁部111Pと、第2壁部111Qと、を含む。第1壁部111Pは、ファン91の回転軸CAと交わって位置する。第1壁部111Pは、回転軸CA方向において、第1流路本体部111の第1流路一端部側開口部112とは反対側に位置し、回転軸CAに対して傾斜している(
図12参照)。上述したDC-DCコンバータ66、つまり、第1電装品EQ1は、第1壁部111Pに保持される(
図4、
図12参照)。
【0046】
第2壁部111Qは、第1壁部111Pに対して、油圧ショベル1の後方側に位置する。第2壁部111Qは、ファン91の回転軸CAに沿って位置する。上述したインバータ63、つまり、第2電装品EQ2は、第2壁部111Qに保持される(
図4参照)。なお、第1電装品EQ1が第2壁部111Qに保持され、第2電装品EQ2が第1壁部111Pに保持されてもよい。
【0047】
風導部100の第2流路部120は、第2流路本体部121と、第2流路一端部側開口部122と、第2流路他端部側開口部123と、を有する。第2流路本体部121の内部は空洞である。ファン91の駆動によって発生した風の一部は、第2流路本体部121の内部を通る。第2流路本体部121は、風が通る空洞を有する形状であればよく、その形状は特に限定されない。
【0048】
第2流路一端部側開口部122は、第2流路本体部121において、上記風が流れる流路方向の一端部に形成された開口である。本実施形態では、第2流路一端部側開口部122は、半円形で形成されているが、その形状は特に限定されない。第2流路一端部側開口部122は、第2流路本体部121に対して右側に位置するオイルクーラ93(
図6参照)に向かって開口している。すなわち、第2流路一端部側開口部122は、オイルクーラ93と向かい合う位置にある。
【0049】
本実施形態では、第2流路一端部側開口部122は、第1流路一端部側開口部112と連続してつながって1つの円を形成する形状である(
図8参照)。なお、第2流路一端部側開口部122と第1流路一端部側開口部112とは、それぞれ閉じた形状で形成されて、互いに離間していてもよい。
【0050】
第2流路他端部側開口部123は、第2流路本体部121において、上記風が流れる流路方向の他端部に形成された開口である。本実施形態では、第2流路他端部側開口部123は、
図9に示すように、ほぼ矩形の形状で形成されているが、その形状は特に限定されない。第2流路他端部側開口部123は、下方に向かって開口している。
【0051】
風導部100は、仕切板130をさらに含む。すなわち、油圧ショベル1は、仕切板130を備える。仕切板130は、第1流路部110の第1流路本体部111と、第2流路部120の第2流路本体部121とを仕切る隔壁である。つまり、第1流路本体部111および第2流路本体部121は、仕切板130を隔壁として共有している。仕切板130は、
図10に示すように、右側から左側に向かって延びた後、左斜め前方に向かって屈曲して延びている。このような仕切板130により、第1流路本体部111の内部を流れる風と、第2流路本体部121の内部を流れる風とが、風導部100の内部で互いに混ざることが回避される。
【0052】
上記した電動モータ61(
図7参照)の少なくとも一部は、第1流路部110の内部に配置される。
図11は、第1流路部110に電動モータ61を収容した状態での風導部100の下方からの斜視図である。本実施形態では、電動モータ61は、第1流路部110の第1流路他端部側開口部113に位置し、第1流路他端部側開口部113を横切っている。したがって、電動モータ61の一部が第1流路部110の内部に配置されている。なお、電動モータ61の全体が第1流路部110の内部に配置されてもよい。電動モータ61の出力軸61aは、第1流路本体部111に設けられた貫通孔111aを通過して、油圧ポンプ71(
図5等参照)の入力軸と連結される。
【0053】
次に、
図4~
図11を参照しながら、ファン91の駆動によって発生する風(冷却風)の流れと、本実施形態の構成による効果について説明する。
【0054】
回転軸CAを中心とするファン91の回転により、油圧ショベル1の外部から機関室44の内部に空気が吸い込まれる。なお、外部から空気が吸い込まれるファン91の駆動形式を、ここでは「吸い込み型」とも言う。機関室44の内部に吸い込まれた空気は、筐体90の内部を右側から左側に向かって流れる。
【0055】
より詳しくは、ファン91によって外部から吸い込まれた風の一部は、筐体90内でラジエータ92を横切って流れる。つまり、上記風の一部は、筐体90内でラジエータ92の隙間を通って流れたり、ラジエータ92を乗り越えるようにラジエータ92の表面に沿って流れる。これにより、ラジエータ92が冷却される。言い換えれば、ラジエータ92を流れる冷媒が熱交換により冷却される。
【0056】
また、ファン91によって吸い込まれた風の残りは、筐体90内でオイルクーラ93を横切って流れる。つまり、上記風の残りは、筐体90内でオイルクーラ93の隙間を通って流れたり、オイルクーラ93を乗り越えるようにオイルクーラ93の表面に沿って流れる。これにより、オイルクーラ93が冷却される。言い換えれば、オイルクーラ93を流れる作動油が熱交換により冷却される。
【0057】
ラジエータ92を冷却した後の風(ラジエータ92をなめた風)、およびオイルクーラ93を冷却した後の風(オイルクーラ93をなめた風)は、風導部100の第1流路部110および第2流路部120に向かって流れる。
【0058】
ここで、
図8に示したように、第1流路部110は、一端部に、ラジエータ92(
図6参照)に向かって開口する第1流路一端部側開口部112を有する。これにより、ラジエータ92を冷却した後の風は、第1流路一端部側開口部112を介して第1流路部110(第1流路本体部111)の内部に入る。第1流路部110の内部を流れた風は、その後、第1流路他端部側開口部113を介して下方に排出される。
図8の矢印W1は、第1流路部110において、ラジエータ92を冷却した後の風の流れる向き(経路)を示す。
【0059】
また、第2流路部120は、一端部に、オイルクーラ93に向かって開口する第2流路一端部側開口部122を有する。これにより、オイルクーラ93を冷却した後の風は、第2流路一端部側開口部122を介して第2流路部120(第2流路本体部121)の内部に入る。第2流路部120の内部を流れた風は、その後、第2流路他端部側開口部123を介して下方に排出される。
図8の矢印W2は、第2流路部120において、オイルクーラ93を冷却した後の風の流れる向き(経路)を示す。
【0060】
ところで、オイルクーラ93には、油圧アクチュエータ73(
図2参照)の駆動に用いられた高温(例えば90℃程度)の作動油が循環して戻ってくる。これに対して、ラジエータ92を流れる冷却水は、例えば40℃程度であり、オイルクーラ93を流れる作動油に比べて低温である。したがって、ラジエータ92を冷却した後の風は、オイルクーラ93を冷却した後の風に比べると、比較的低温である。このことは、第1流路部110を流れる風(ラジエータ92を冷却した後の風)は比較的低温であり、第2流路部120を流れる風(オイルクーラ93を冷却した後の風)は比較的高温であることを意味する。
【0061】
よって、
図3および
図4で示したように、インバータ63およびDC-DCコンバータ66などの電装品EQを、第1流路部110に取り付けたり、
図11で示したように、第1流路他端部側開口部113に電動モータ61を配置することにより、第1流路部110を流れる比較的低温の風を、電装品EQおよび電動モータ61などの発熱部品の冷却(空冷)に利用することができる。また、第2流路部120を流れる比較的高温の風を、第2流路他端部側開口部123を介してそのまま(発熱部品に当てずに)外部に排出することができる。
【0062】
本実施形態では、上述のように、DC-DCコンバータ66およびインバータ63は、風導部100(特に第1壁部111Pおよび第2壁部111Q)に保持される。風導部100は、
図4に示すように、回転軸CAの方向において、ファン91とバッテリユニット53との間に位置する。したがって、電装品EQは、上方から見て、ファン91とバッテリユニット53との間に位置する。
【0063】
この構成では、ファン91からの風を電装品EQに当てて、電装品EQを冷却(空冷)することができる。したがって、ファン91とバッテリユニット53との間の限られた狭い空間を、電装品EQの配置空間として有効利用しながら、電装品EQを冷却(空冷)することができる。
【0064】
特に、ファン91とバッテリユニット53との間の空間を、複数の電装品EQ(第1電装品EQ1、第2電装品EQ2)の配置空間として有効利用するとともに、ファン91の風を複数の電装品EQに当てて一度に(効率よく)冷却する観点では、複数の電装品EQは以下のように位置することが望ましい。すなわち、電装品EQとしての第1電装品EQ1および第2電装品EQ2は、上方から見て互いにずれて位置することが望ましい。例えば、
図4に示すように、第1電装品EQ1が、第2電装品EQ2に対して油圧ショベル1の前方にずれて位置することが望ましい。
【0065】
また、ファン91の回転によって発生し、第1壁部111Pに当たる冷却風および第2壁部111Qに沿って流れる冷却風を両方利用して、複数の電装品EQを効率よく冷却する観点では、本実施形態のように、第1電装品EQ1は第1壁部111Pに保持され、第2電装品は第2壁部111Qに保持されることが望ましい。
【0066】
図12は、風導部100の第1流路部110を、電装品EQを通る断面で切ったときの断面図である。なお、
図12では、電装品EQとして、DC-DCコンバータ66(第1電装品EQ1)を示している。上記の電動モータ61は、バッテリユニット53に対してファン91側に位置している。ファン91とバッテリユニット53との間の空間であって、電動モータ61の上方の狭い空間を、電装品EQの配置空間として有効利用する観点では、電装品EQは、電動モータ61よりも上方に位置することが望ましい。
【0067】
ここで、電装品EQとしてのDC-DCコンバータ66、つまり、第1電装品EQ1は、第1放熱部66Fを有する。第1放熱部66Fは、例えばフィンで構成される。第1放熱部66Fに低温の風(ファン91からの冷却風)を当てて、第1電装品EQ1の冷却効率を高める観点では、第1放熱部66Fは、第1壁部111Pに対してファン91側に位置することが望ましい。つまり、第1放熱部66Fが第1流路部110の内部に位置するように、第1電装品EQ1を第1流路部110に取り付ける(埋め込む)ことが望ましい。
【0068】
また、
図4に示したように、電装品EQとしてのインバータ63、つまり、第2電装品EQ2は、第2放熱部63Fを有する。第2放熱部63Fは、例えばフィンで構成される。第2放熱部63Fに低温の風(ファン91からの冷却風)をなめるよう当てて、第2電装品EQ2を確実に冷却する観点では、第2放熱部63Fは、第2壁部111Qに対してファン91の回転軸CA側に位置することが望ましい。つまり、第2放熱部63Fが第1流路部110の内部に位置するように、第2電装品EQ2を第1流路部110に取り付ける(埋め込む)ことが望ましい。
【0069】
また、本実施形態では、
図4~
図6で示したように、ラジエータ92は、ファン91と対向して配置される。ファン91の駆動により発生し、ラジエータ92の冷却に用いた風を、電装品EQの冷却に用いることができれば、電装品EQを冷却する専用のファンの設置を省略することができる。上記専用のファンの設置を省略した簡単な構成で(少ない部品点数で)電装品EQを冷却する観点では、電装品EQは、上方から見て、バッテリユニット53とラジエータ92との間に位置することが望ましい。
【0070】
図13は、
図4のA部を右側から、すなわち、ファン91の回転軸CAの方向から見たときの側面図である。1つのファン91の駆動により、ラジエータ92およびオイルクーラ93を同時に冷却する観点では、ラジエータ92およびオイルクーラ93は、ファン91の回転軸CAの方向から見て、ファン91と重なって位置する、つまり、ファン91と対向して配置されることが望ましい。
【0071】
なお、上述の電動モータ61は、出力軸61a(
図11参照)が延びる方向(左右方向)に油圧ポンプ71と連結された状態で、底板86に支持される。底板86は、防振部材87を介して旋回フレーム42(
図3等参照)上に支持される。これにより、電動モータ61および油圧ポンプ71が旋回フレーム42上に防振支持される。
【0072】
小型の油圧ショベル1に好適なコンパクトなレイアウトを容易に実現する観点では、ラジエータ92およびオイルクーラ93は、
図4および
図6で示したように、回転軸CAと交差する一方向(例えば前後方向)に互いにずれて位置することが望ましい。なお、ラジエータ92とオイルクーラ93とは、上下方向にずれて位置してもよい。
【0073】
また、本実施形態では、上述のように、ファン91の駆動によりラジエータ92を冷却した後の風は、仕切板130によって分離される一方の空間(第1流路部110の内部)に導かれる。一方、ファン91の駆動によりオイルクーラ93を冷却した後の風は、仕切板130によって分離される他方の空間(第2流路部120の内部)に導かれる。これにより、どちらか一方の空間に導かれた冷却風を、電装品EQの冷却に再利用することができる。このとき、ラジエータ92を冷却した後の風は、オイルクーラ93を冷却した後の風よりも低温であるため、ラジエータ92を冷却した後の風を電装品EQの冷却に再利用することが望ましい。
【0074】
このように、ラジエータ92を冷却した後の風と、オイルクーラ93を冷却した後の風とを、上記2つの空間に導くように確実に分離する観点では、
図4で示したように、仕切板130は、上方から見て、ラジエータ92およびオイルクーラ93と、バッテリユニット53との間に位置するとともに、上記一方向(例えば前後方向)を横切って位置することが望ましい。
【0075】
なお、仕切板130のファン91側の端部の前後方向の位置は、特に限定されない。ただし、本実施形態のように、ラジエータ92とオイルクーラ93とが回転軸CA方向に重なる配置では、上記端部は、ラジエータ92とオイルクーラ93との重複部分と対向して位置することが望ましい。一方、ラジエータ92とオイルクーラ93とが回転軸CA方向に重ならない配置(前後方向に並ぶ配置)では、上記端部は、ラジエータ92とオイルクーラ93との境界と対向して位置することが望ましい。
【0076】
また、第1流路部110に配置される電装品EQの冷却効率を高めるためには、ラジエータ92を冷却した後の比較的低温の風が、オイルクーラ93を冷却した後の比較的高温の風と、仕切板130の上流側で混ざらないようにして、第1流路部110に導かれる風(ラジエータ92を冷却した後の風)の温度を低温で維持することが望ましい。この観点では、
図4で示すように、ファン91は、ラジエータ92およびオイルクーラ93に対して送風方向の上流側に位置することが望ましい。つまり、ファン91は、ラジエータ92およびオイルクーラ93に対して、バッテリユニット53とは反対側に位置することが望ましい。このようなファン91の配置では、ラジエータ92およびオイルクーラ93に向けて送風し、それぞれを冷却した風が、仕切板130によって分離される2つの空間(第1流路部110および第2流路部120の内部)にほぼダイレクトに導かれることになる。つまり、両方の風が仕切板130の上流側で混ざることが低減された状態で、上記2つの空間にそれぞれ導かれる。
【0077】
図14は、吸い込み型の変形例の構成を示す斜視図である。なお、
図14では、便宜的に、風導部100の第1流路部110の図示を省略している。同図に示すように、ファン91は、ラジエータ92およびオイルクーラ93に対して風導部100側、つまり、バッテリユニット53(
図4等参照)側に位置してもよい。このようなファン91の配置であっても、ファン91によってラジエータ92を冷却した風と、オイルクーラ93を冷却した風とを仕切板130側に導き、仕切板130によって分離される一方の空間に導かれる風(例えばラジエータ92の冷却に用いた風)を電装品EQに当てて、電装品EQを冷却することができる点に変わりはない。
【0078】
ただし、この構成では、ファン91の駆動により、外部から空気を吸い込んでラジエータ92を冷却した風と、オイルクーラ93を冷却した風とが、ファン91を横切って、仕切板130に向かって流れる。ファン91は回転しているため、ラジエータ92を冷却した風とオイルクーラ93を冷却した風とは、ファン91を横切った後に(仕切板130の手前で)混ざるおそれがある。この点では、
図4等で示したように、ファン91は、ラジエータ92およびオイルクーラ93に対してバッテリユニット53とは反対側に位置することが望ましい。
【0079】
上方から見て、バッテリユニット53とファン91との間に位置する電装品EQに、ファン91の風を当てて、電装品EQを確実に冷却する観点では、
図4等で示したように、ファン91は、上方から見て、バッテリユニット53側を向いて位置することが望ましい。
【0080】
特に、吸い込み型の構成で上述した本実施形態の効果を得る観点では、ファン91は、上方から見て、バッテリユニット53の方向に向かって空気を送風することが望ましい。
【0081】
〔4.補足〕
以上では、電動式作業機械として、建設機械である油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、電動式作業機械は油圧ショベル1に限定されず、ホイルローダなどの他の建設機械であってもよい。また、電動式作業機械は、コンバイン、トラクタ等の農業機械であってもよい。
【0082】
〔5.付記〕
本実施形態で説明した油圧ショベル1は、以下の付記に示す電動式作業機械と表現することもできる。
【0083】
付記(1)の電動式作業機械は、
電動モータと、
前記電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、
前記バッテリユニットから前記電力が供給される電装品と、
ファンと、を備え、
前記電装品は、上方から見て、前記ファンと前記バッテリユニットとの間に位置する。
【0084】
付記(2)の電動式作業機械は、付記(1)に記載の電動式作業機械において、
前記電動モータは、前記バッテリユニットに対して前記ファン側に位置し、
前記電装品は、前記電動モータよりも上方に位置する。
【0085】
付記(3)の電動式作業機械は、付記(1)または(2)に記載の電動式作業機械において、
前記電装品は、第1電装品と、第2電装品と、を含み、
前記第1電装品および前記第2電装品は、上方から見て互いにずれて位置する。
【0086】
付記(4)の電動式作業機械は、付記(3)に記載の電動式作業機械において、
前記ファンは、上方から見て、前記バッテリユニットに向かって延びる回転軸を有し、
前記第1電装品は、前記ファンの前記回転軸と交わって位置する第1壁部に保持され、
前記第2電装品は、前記ファンの前記回転軸に沿って位置する第2壁部に保持される。
【0087】
付記(5)の電動式作業機械は、付記(4)に記載の電動式作業機械において、
前記第1電装品は、第1放熱部を有し、
前記第1放熱部は、前記第1壁部に対して前記ファン側に位置する。
【0088】
付記(6)の電動式作業機械は、付記(4)または(5)に記載の電動式作業機械において、
前記第2電装品は、第2放熱部を有し、
前記第2放熱部は、前記第2壁部に対して前記ファンの前記回転軸側に位置する。
【0089】
付記(7)の電動式作業機械は、付記(1)から(6)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記バッテリユニットを通る冷媒を冷却する第1熱交換器をさらに備え、
前記第1熱交換器は、前記ファンと対向して配置され、
前記電装品は、上方から見て、前記バッテリユニットと前記第1熱交換器との間に位置する。
【0090】
付記(8)の電動式作業機械は、付記(7)に記載の電動式作業機械において、
前記電動モータによって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される油圧アクチュエータと、
前記作動油を冷却する第2熱交換器と、
仕切板と、をさらに備え、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とは、前記ファンの前記回転軸と交差する一方向に互いにずれて位置し、
前記仕切板は、上方から見て、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器と前記バッテリユニットとの間に位置するとともに、前記一方向を横切って位置する。
【0091】
付記(9)の電動式作業機械は、付記(8)に記載の電動式作業機械において、
前記第1熱交換器および前記第2熱交換器は、前記ファンと対向して配置される。
【0092】
付記(10)の電動式作業機械は、付記(9)に記載の電動式作業機械において、
前記ファンは、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器に対して、前記バッテリユニットとは反対側に位置する。
【0093】
付記(11)の電動式作業機械は、付記(9)に記載の電動式作業機械において、
前記ファンは、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器に対して、前記バッテリユニット側に位置する。
【0094】
付記(12)の電動式作業機械は、付記(1)から(11)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記ファンは、上方から見て、前記バッテリユニット側を向いて位置する。
【0095】
付記(13)の電動式作業機械は、付記(1)から(12)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記ファンは、上方から見て、前記バッテリユニットの方向に向かって空気を送風する。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、例えば建設機械、農業機械などの作業機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 油圧ショベル(電動式作業機械)
53 バッテリユニット
61 電動モータ
63 インバータ(電装品、第2電装品)
63F 第2放熱部
66 DC-DCコンバータ(電装品、第1電装品)
66F 第1放熱部
71 油圧ポンプ
73 油圧アクチュエータ
91 ファン
92 ラジエータ(第1熱交換器)
93 オイルクーラ(第2熱交換器)
111P 第1壁部
111Q 第2壁部
130 仕切板
CA 回転軸
EQ 電装品
EQ1 第1電装品
EQ2 第2電装品