(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041396
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】眼鏡型画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240319BHJP
G02C 11/00 20060101ALI20240319BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20240319BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240319BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02C11/00
G02C7/00
G02B5/18
G02B5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146195
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(71)【出願人】
【識別番号】000102739
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【弁理士】
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】中西 美木子
(72)【発明者】
【氏名】石丸 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 敦
(72)【発明者】
【氏名】八木 生剛
(72)【発明者】
【氏名】菅井 栄一
【テーマコード(参考)】
2H006
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H006BA02
2H006CA00
2H199CA03
2H199CA12
2H199CA29
2H199CA47
2H199CA54
2H199CA68
2H199CA77
2H199CA85
2H199CA86
2H199CA93
2H249AA06
2H249AA12
2H249AA50
2H249AA55
2H249AA60
2H249CA01
2H249CA05
2H249CA09
2H249CA11
2H249CA15
2H249CA22
(57)【要約】
【課題】Eyeboxの拡張および視野角の拡大を図りつつ、反射ホログラムと透過ホログラムの位置合わせのズレに起因した画像の解像度低下、および、光の斜め投射に起因した不都合を防止する。
【解決手段】ユーザに着用される眼鏡型画像表示装置1は、ガラス基板21と、ガラス基板21に入射する画像光を、ガラス基板21の内部を伝搬する光となるように曲げる方向変換機能部20Aと、ガラス基板21における画像光の入射面とは逆の面に形成され、ガラス基板21の内部を伝搬する光の一部をユーザの目の方向に収束させる複数の反射ホログラム20B、20C、20Dと、を備え、ガラス基板21を、上記伝搬する光の進行方向に沿って、厚さが徐々に薄くなる形状とすることで、各反射ホログラムに入射する光の入射角度を互いに異ならせて、上記入射する光同士を分離する構成とされている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに着用される眼鏡型画像表示装置であって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板に入射する画像光を、前記ガラス基板内を伝搬する光となるように曲げる方向変換機能部と、
前記ガラス基板における前記画像光の入射面とは逆の面に形成され、前記ガラス基板内を伝搬する光の一部を前記ユーザの目の方向に収束させる複数の反射ホログラムと、
を備え、
前記ガラス基板を、前記伝搬する光の進行方向に沿って、厚さが徐々に薄くなる形状とすることで、各反射ホログラムに入射する光の入射角度を互いに異ならせて、前記入射する光同士を分離する構成とされた、
眼鏡型画像表示装置。
【請求項2】
前記ガラス基板における前記厚さを形成する両面の成す角度θについて、
2θが前記複数の反射ホログラムの角度選択範囲内の角度よりも大きく設定されている、
請求項1に記載の眼鏡型画像表示装置。
【請求項3】
前記ガラス基板における前記複数の反射ホログラムが形成された面に沿って、前記画像光を反射する光反射部を介して、別のガラス基板が配置され、
前記別のガラス基板は、前記伝搬する画像光の進行方向に沿って徐々に厚くなる構成とされた、
請求項1に記載の眼鏡型画像表示装置。
【請求項4】
前記光反射部は、前記反射ホログラムと前記別のガラス基板の間に隙間を設けることで形成される空気の層、又は、前記画像光の波長の光のみを反射するバンドパスフィルタにより構成される、
請求項3に記載の眼鏡型画像表示装置。
【請求項5】
前記眼鏡型画像表示装置は、
前記ユーザによる前記眼鏡型画像表示装置の着用時における上下方向に沿って、前記ガラス基板に入射する画像光を複数の分割光に分割する光分割部、をさらに備え、
前記方向変換機能部は、前記光分割部により分割された前記複数の分割光それぞれの進行する角度が異なるように進行方向を変える機能を有し、前記上下方向に前記分割光が多重化される構成とされた、
請求項1に記載の眼鏡型画像表示装置。
【請求項6】
前記方向変換機能部は、ホログラム、反射型の回折光学素子、および、前記画像光の入射方向に対し斜めに切断された前記ガラス基板の一部、のうち1つ以上によって構成される、
請求項1に記載の眼鏡型画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スマートグラスとも呼称される眼鏡型画像表示装置に関する。なお、本明細書における「画像」には、静止画像および動画像が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡のレンズ面に画像を表示する眼鏡型画像表示装置が知られている。この眼鏡型画像表示装置に係る技術分野では、ユーザが眼鏡型画像表示装置を装着した場合に眼を動かして画像が見える範囲は「Eyebox(アイボックス)」と呼ばれ、ユーザが安定的に画像を視認する上で、Eyeboxを拡張することは欠かせない。例えば下記の特許文献1には、眼鏡型画像表示装置においてEyeboxの拡張と視野角拡大を行うために、ディスプレイ画像の光(以下「画像光」という)を透過ホログラムで複製し、複製された光を反射ホログラムで目の方向に反射させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開公報2020/0174255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された眼鏡型画像表示装置では、対になって形成される反射ホログラムと透過ホログラムの位置合わせが必要となり、位置合わせのズレに起因した画像の解像度低下が懸念される。
【0005】
また、特許文献1に記載された手法でEyeboxを拡張するには、例えば
図14に示す透過ホログラムから出射する光の角度を、レンズ面に垂直な方向から大きく傾ける(即ち、
図14の角度αをより小さくする)必要がある。さらに、レンズ面に対して映像光を斜め投射する必要があることから、眼鏡のガラス基板90へ入射させる画像光92の振り角βが狭くなって高解像度の画像を表示させることが困難かつ表示される画像が台形に歪む、といった不都合が生じるおそれがあった。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するために成されたものであり、Eyeboxの拡張および視野角の拡大を図りつつ、反射ホログラムと透過ホログラムの位置合わせのズレに起因した画像の解像度低下、および、レンズ面への光の斜め投射に起因した不都合を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る眼鏡型画像表示装置は、ユーザに着用される眼鏡型画像表示装置であって、ガラス基板と、前記ガラス基板に入射する画像光を、前記ガラス基板内を伝搬する光となるように曲げる方向変換機能部と、前記ガラス基板における前記画像光の入射面とは逆の面に形成され、前記ガラス基板内を伝搬する光の一部を前記ユーザの目の方向に収束させる複数の反射ホログラムと、を備え、前記ガラス基板を、前記伝搬する光の進行方向に沿って、厚さが徐々に薄くなる形状とすることで、各反射ホログラムに入射する光の入射角度を互いに異ならせて、前記入射する光同士を分離する構成とされている。
【0008】
上記の眼鏡型画像表示装置では、方向変換機能部によって、ガラス基板に入射する画像光が、ガラス基板内を伝搬する光となるように曲げられる。ここで、上記のガラス基板は、伝搬する光の進行方向に沿って、厚さが徐々に薄くなる形状とされているため、各反射ホログラムに入射する光の入射角度は互いに異なることとなり、上記入射する光同士は分離される。即ち、互いに干渉し合わない複数の光に分離できる。このようなガラス基板内を伝搬する光の一部は、複数の反射ホログラムのそれぞれによって、ユーザの目の方向に収束することとなり、Eyeboxの拡張および視野角の拡大を図ることができる。
【0009】
上記の眼鏡型画像表示装置は、従来のような対になって形成される反射ホログラムと透過ホログラムを備えておらず、反射ホログラムと透過ホログラムの位置合わせは不要であるため、位置合わせのズレに起因した画像の解像度低下を防止することができる。また、従来のようなEyebox拡張のためのレンズ面への画像光の斜め投射を行う必要性を無くすことができるため、画像光の振り角が狭くなって高解像度の画像表示が困難となる、表示される画像が台形に歪む、といった斜め投射に起因した不都合を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、Eyeboxの拡張および視野角の拡大を図りつつ、反射ホログラムと透過ホログラムの位置合わせのズレに起因した画像の解像度低下、および、光の斜め投射に起因した不都合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】眼鏡型画像表示装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図3】レンズの構成および方向変換機能を説明するための図である。
【
図4】伝搬光となるように曲げる機能および伝搬光の一部をユーザの目の方向に収束させる機能を説明するための図である。
【
図5】さらに別のホログラムで伝搬光の一部をユーザの目の方向に収束させる機能を説明するための図である。
【
図6】(a)は露光時の参照光と物体光を示す図であり、(b)は再生時における第1パターンの再生光(参照光と同じ入射角の再生光)と物体光を示す図であり、(c)は再生時に第2パターンの再生光(参照光と異なる入射角の再生光)に対し物体光が再生されないことを示す図である。
【
図7】入射角度の異なる参照光X、Yでホログラムを重ねて形成する例を示す図である。
【
図8】(a)はレンズで画像光を平行光にし、方向変換機能部で伝搬光となるように曲げる構成例を示す図であり、(b)は方向変換機能部で画像光を平行光にするとともに伝搬光となるように曲げる構成例を示す図であり、(c)は透過DOE又はホログラムで画像光を平行光にし、方向変換機能部で伝搬光となるように曲げる構成例を示す図である。
【
図9】レンズの厚さをほぼ一定にするための具体的構成例を示す図である。
【
図10】(a)は上下方向に沿った多重化を図るための具体的構成例を横から投影した図であり、(b)は(a)の構成を着用ユーザの眼側から投影した図であり、(c)は分割された画像光それぞれをレンズにほぼ垂直に入射させるためのミラーを設けた構成例を示す図である。
【
図11】(a)は上下方向に多重化した方向変換機能部で仰角方向に沿って互いの反射角度を変える具体的構成例を、着用ユーザの眼側から投影した図であり、(b)は(a)の構成において仰角方向に沿って互いの反射角度を変えた状態を示す図である。
【
図12】(a)は上下方向に多重化した方向変換機能部で方位角方向に互いの反射角度を変える構成例を示す図であり、(b)は上下方向に多重化した方向変換機能部で方位角方向に互いの反射角度を変える別の構成例を示す図である。
【
図13】制御部のハードウェア構成例を示す図である。
【
図14】従来技術における課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本開示に係る眼鏡型画像表示装置1の構成例を模式的に示す図である。眼鏡型画像表示装置1は、眼鏡のレンズ面に画像(静止画像および動画像)を表示することにより、眼鏡を装着したユーザ(以下、単に「ユーザ」と記載)に画像を視認させる表示装置である。眼鏡型画像表示装置1は、眼鏡のテンプル52に組み付けられた後述する画像出力部10からレンズ面にほぼ垂直に画像光を入射させ、ガラス基板内を伝搬した画像光をユーザの瞳孔に入射させることにより、ユーザに画像を視認させる。なお、画像出力部10においてディスプレイ表示に用いられる照明光としては、レーザ光を用いてもよい。
【0014】
眼鏡型画像表示装置1は、眼鏡の基本構成を具備しており、
図1に示すように、両眼に対応する一対のレンズ50、両眼のレンズ50を保持するフレーム間を架け渡すブリッジ51、および、両眼のレンズ50を保持するフレームに連続すると共にユーザの側頭部に固定される一対のテンプル52等の構成を備えている。レンズ50は、入射した(投影された)画像光を、後述する構成によってユーザの瞳孔に向けて反射し、反射した画像光は、瞳孔から見て虚像として像を形成する。これにより、ユーザに画像を視認させることができる。なお、眼鏡型画像表示装置1は、テンプル52におけるユーザの耳に対応した位置に、画像に応じた音声を出力するスピーカー(不図示)を備えてもよい。
【0015】
眼鏡型画像表示装置1は、画像出力部10を備えており、画像出力部10は、コンテンツ蓄積部10Aと光出力部10Bと制御部10Cとを有する。なお、眼鏡型画像表示装置1は、画像出力部10を、片方の眼のみに対応して有してもよいし、両眼それぞれに対応して有してもよい。後者の場合、両眼それぞれに対応する構成は同様の機能を有するため、以下の説明においては片方の眼に対応した構成を説明する。また、画像出力部10は、レンズ50から近い位置に、例えばレンズ50との間隔が1cm以下となるように設置されてもよい。
【0016】
コンテンツ蓄積部10Aは、ユーザに視認させるコンテンツを蓄積する構成であり、ユーザに視認させるコンテンツとは、本実施形態ではレンズ50に投影される画像である。
【0017】
光出力部10Bは、画像情報を含む光である画像光を出力する構成であり、有線または無線接続によりコンテンツ蓄積部10Aから画像情報を取得し、取得した画像情報に関する画像光を出射する。光出力部10Bは、例えば、光源およびディスプレイを含んだMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャンディスプレイにより構成され、光源から出射された照射光をディスプレイにおいて反射させて、画像情報を含む画像光として出力する構成とされている。
【0018】
制御部10Cは、各種の制御を行う回路である。制御部10Cのハードウェア構成例については後述する。制御部10Cは、例えば、光出力部10Bによって、コンテンツ蓄積部10Aからの画像の取得および画像光の出射が行われるように、光出力部10Bに所定の制御信号を出力する。
【0019】
なお、
図1には、画像出力部10全体がテンプル52に組み付けられた構成を示したが、
図2の画像出力部10の各構成部のうち、光出力部10Bは
図1のようにテンプル52に組み付けられる必要があるが、コンテンツ蓄積部10Aおよび制御部10Cは、テンプル52に組み付けられてもよいし、テンプル52から離れた位置に配置されてもよい。
【0020】
[眼鏡型画像表示装置1の特徴的な構成について]
図3に示すように、眼鏡型画像表示装置1では、レンズ50は、ガラス基板21と、ガラス基板21の表面(着用ユーザからみて外側の面(
図3における上側の面))に設けられたホログラム20とを有する。ガラス基板21は、伝搬する光の進行方向(
図3における右方向)に沿って、厚さ(
図3における上下方向の寸法)が徐々に薄くなる形状とされている。ホログラム20には、画像光がレンズ50内を伝搬する光となるように画像光の進行方向を曲げる方向変換機能部20Aと、上記伝搬する光の一部をユーザの目の方向に収束させる複数の反射ホログラム20B、20C、20Dとが形成されている。
【0021】
ここでは、方向変換機能部20Aが、ホログラムにより構成される例を示すが、反射型の回折光学素子により構成してもよいし、画像光の入射方向に対し斜めに切断されたガラス基板21の一部によって、方向変換機能部20Aと同様の機能を実現してもよい。このような簡易な構成により方向変換機能部20Aを実現できる。
【0022】
なお、
図3には、紙面サイズの制約のもと、3つの反射ホログラム20B、20C、20Dを示したが、反射ホログラムの数は特定の数に限定されるものではない。また、
図3では、説明の便宜上、ホログラム20に形成された方向変換機能部20Aおよび複数の反射ホログラム20B、20C、20Dを、ホログラム20上に形成されたシートとして模式的に示したが、実際には、このようなシートは存在せず、方向変換機能部20Aおよび複数の反射ホログラム20B、20C、20Dは、露光によりホログラム20に記録されたホログラフィーによる干渉縞であることは言うまでもない。この点は、後述する
図4、
図5についても同様である。
【0023】
図3に示すように、画像出力部10からの画像光は、方向変換機能部20Aにより反射して進行方向を曲げられ、ガラス基板21と空気との境界面21Aで、境界面21Aの法線に対し反射角Ψ
Aで反射し、光R
Aとなる。光R
Aの一部は、反射ホログラム20Bによって、ユーザの眼の方向へ反射されて光O
Aとなり、それ以外の光R
Aの反射光は境界面21Aで、境界面21Aの法線に対し反射角Ψ
Bで反射し、光R
Bとなる。光R
Bの一部は、反射ホログラム20Cによって、ユーザの眼の方向へ反射されて光O
Bとなる。
【0024】
このとき、ガラス基板21は、伝搬する光の進行方向(
図3における右方向)に沿って厚さが徐々に薄くなる形状とされているため、上記の反射角Ψ
Bは、反射角Ψ
Aよりも小さくなる。具体的には、
図3に示すガラス基板21の境界面21Aと境界面21Bとが成す角度をθとすると、以下の式(1)の関係が成立する。
Ψ
B=Ψ
A-2θ …(1)
このように、反射ホログラム20B、20Cのそれぞれに入射する光の入射角度が互いに異なることとなり、これにより、入射する光同士が分離される構成とされている。
【0025】
上記の角度θについては、2θ(即ち、Ψ
A-Ψ
B)が、形成された複数の反射ホログラム20B、20C、20D等の角度選択範囲内の角度(即ち、反射ホログラム20B、20C、20D等についてブラッグの回折条件を満たす角度)よりも大きくなるように設定されている。これにより、
図3において上記伝搬する光が、レンズ50の内部で多重反射するうちに、予期せずに、ブラッグの回折条件を満たす角度で反射ホログラム20B、20C、20D等に入射してレンズ50の外部へ出射してしまう事態を回避することができる。
【0026】
なお、
図3では、画像光における中心軸付近の光線について説明したが、画像光における両端部付近の光線については、
図4に示すように、画像出力部10からの画像光は、方向変換機能部20Aにより反射して進行方向を曲げられ、ガラス基板21と空気との境界面等により反射し、反射ホログラム20Bへ入射する。反射ホログラム20Bへ入射した光の一部は、反射ホログラム20Bによって、ユーザの眼の方向へ反射される。その後、
図5に示すように、反射ホログラム20Cへ入射した光の一部は、反射ホログラム20Cによって、ユーザの眼の方向へ反射される(
図5における破線)。なお、複数の光を並べる間隔Wは、明るい環境では2mm前後、暗い環境では5mm前後が望ましく、着用ユーザの瞳孔内に2つ以上の光線が入るように設計され、Eyeboxの拡張および視野角の拡大が図られている。
【0027】
また、上記の間隔Wを適正なサイズに維持するため、実装上、
図5に示すように複数の反射ホログラム20B、20C等は、ホログラム20における重なった位置に形成される。ホログラム20について、
図6(a)に示す参照光と物体光を用いて露光した場合、再生時には
図6(b)に示すように、参照光と同じ位相の再生光をホログラム20に、露光時と同じ角度から入射させると、露光時と同じ角度で反射する物体光が再生される。一方、再生時に
図6(c)に示すように、参照光と同じ位相の再生光をホログラム20に、露光時と異なる角度から入射させても、物体光は再生されない。このような光の性質を利用して、ホログラム20において、
図7に実線で示す参照光Xと物体光Xを用いて露光するとともに、ホログラム20における重なった場所に、
図7に破線で示す参照光Yと物体光Yを用いて露光することができ、上記の光XとY同士が分離される構成とされる。
【0028】
さて、画像出力部10からの画像光を、レンズ50内を伝搬する平行光とするための構成としては、様々なバリエーションが考えられる。例えば、
図8(a)には、レンズ50と画像出力部10との間に設けられたレンズ11によって、画像出力部10からの画像光を平行光にし、方向変換機能部20Aで伝搬光となるように曲げる構成例を示す。
図8(b)には、
図8(a)で示したレンズ11を設けることなく、方向変換機能部20Aによって、画像光を平行光にし且つ伝搬光となるように曲げる構成例を示す。さらに
図8(c)には、ガラス基板21における画像出力部10側の面に形成した透過型のDOE(回折光学素子:Diffractive Optical Element)22(又はホログラム)によって、画像出力部10からの画像光を平行光にし、方向変換機能部20Aで伝搬光となるように曲げる構成例を示す。
【0029】
以上説明した
図3等に示す特徴的な構成によって、Eyeboxの拡張および視野角の拡大を図りつつ、従来の反射ホログラムと透過ホログラムの位置合わせを不要とし、当該位置合わせのズレに起因した画像の解像度低下を防止することができる。また、従来のようなEyebox拡張のためのレンズ面への画像光の斜め投射を行う必要性を無くすことができるため、画像光の振り角が狭くなって高解像度の画像表示が困難となる、表示される画像が台形に歪む、といった斜め投射に起因した不都合を防止することができる。
【0030】
(レンズの厚さをほぼ一定にするための具体的構成例)
上述した基本構成のように、
図3に示すガラス基板21を、伝搬する光の進行方向に沿って厚さが徐々に薄くなる形状にすると、レンズ50の厚さが不均一になるため、ユーザにより着用されるスマートグラス(眼鏡)として見栄えがあまり良好ではない。そこで、実装上は、
図9に示すように、レンズ50をほぼ均一な厚さとするために、ガラス基板21におけるホログラム20が形成された面に沿って、画像光を反射する光反射部23を介して、別のガラス基板24を配置し、当該ガラス基板24を、伝搬する画像光の進行方向(
図9における右方向)に沿って厚さが徐々に厚くなる構成とすることで、レンズ50をほぼ均一な厚さとしてもよい。これにより、スマートグラス(眼鏡)として見栄えを良好にすることができる。
【0031】
上記の光反射部23は、ホログラム20と別のガラス基板24の間に少し隙間を空けることで形成される空気の層によって構成してもよいし、画像光の波長の光のみを反射するバンドパスフィルタによって構成してもよい。このような簡易な構成で光反射部23を実現することができる。
【0032】
(上下方向に沿った多重化を図るための具体的構成例)
Eyeboxを拡張し且つ視野角を拡大するためには、スマートグラスの着用ユーザからみて左右方向のみでなく、上下方向に沿った多重化を図ることが望ましい。このような上下方向に沿った多重化のための具体的構成について、
図10~
図12を用いて説明する。
【0033】
図10(a)には、上下方向に沿った多重化を図るための具体的構成例を横から投影した図を示し、
図10(b)は
図10(a)の構成を着用ユーザの眼側から投影した図を示す。これら
図10(a)、(b)に示すように、ガラス基板21における画像出力部10側(
図10(a)における左側)の面には、画像出力部10からの画像光を下方向へ曲げるハーフミラー25と、ハーフミラー25により下方向へ反射された画像光の一部を
図10(b)における右方向へ曲げるハーフミラー26~28とが設けられており、これらハーフミラー25~28によって、ガラス基板21に入射する画像光を上下方向に沿って複数の分割光に分割する光分割部が構成される。なお、ハーフミラー26~28の反射率は、ハーフミラー26、27、28の順に徐々に高くなるように設定され、これにより、ハーフミラー26~28それぞれにより右方向へ曲げられる分割光の光量がほぼ均一になるように設定されている。また、
図10(c)に示すように、ハーフミラー26の右方向にはミラー26Aが設けられ、ハーフミラー26により右方向へ曲げられた分割光は、ミラー26Aによってガラス基板21へほぼ垂直に(
図10(c)における紙面奥行き方向に)入射するように曲げられる。同様に、ハーフミラー27、28の右方向には、それぞれミラー27A、28Aが設けられ、ハーフミラー27、28により右方向へ曲げられた分割光はそれぞれ、ミラー27A、28Aによってガラス基板21へほぼ垂直に(
図10(c)における紙面奥行き方向に)入射するように曲げられる。このようにガラス基板21へほぼ垂直に入射する分割光はそれぞれ、前述した
図3に示すように、方向変換機能部20Aによって、レンズ50内を伝搬する光となるように進行方向が曲げられ、複数の反射ホログラム20B、20C等によって、上記伝搬する光の一部がユーザの目の方向に収束する。これにより、上下方向に沿った多重化を図ることができ、Eyeboxをさらに拡張して、視野角をさらに拡大することができる。なお、上述したハーフミラー25~28は、ガラス基板21に埋め込まれていてもよい。
【0034】
上記の方向変換機能部20Aの一例として、
図10(c)のミラー26A~28Aそれぞれによる反射光を受光する位置に、
図11(a)に示すように、上下方向に多重化した方向変換機能部20A1~20A3が設けられ、
図11(b)に示すように方向変換機能部20A1~20A3によって、仰角方向(即ち、ガラス基板21の面に垂直な方向)に沿って互いの反射角度が変えられ、これにより、上下方向に多重化された光同士の干渉を未然に防ぐことができる。
【0035】
なお、
図11(a)、(b)のように、方向変換機能部20A1~20A3によって仰角方向に沿って、互いの反射角度を変えるのは一例であり、
図12(a)のように、方向変換機能部20A1~20A3によって、ガラス基板21の面に平行な方向(方位角方向)に、互いに離間していく方向へ反射角度を変えてもよいし、
図12(b)のように、方向変換機能部20A1~20A3によって、ガラス基板21の面に平行な方向(方位角方向)に、互いに交差する方向へ反射角度を変えてもよい。
【0036】
ここで、
図12(a)、(b)に示すように、複数の分割光を方位角方向にずらして伝搬させる場合、反射ホログラムでユーザの眼の方向に反射された光により形成される画像が傾くおそれがある。しかし、その場合は、当該傾きが修正されるように、反射ホログラムを露光して形成すればよい。
【0037】
また、
図11(a)、(b)のように複数の分割光を仰角方向にずらして伝搬させる場合、および、
図12(a)、(b)のように複数の分割光を方位角方向にずらして伝搬させる場合には、分割光同士の伝搬距離が変わりうる。ここで、画像の焦点が分割光の伝搬距離によって変化する場合には、その修正(収差補正)を行うように、反射ホログラムを露光して形成すればよい。
【0038】
以上、本開示の一実施形態に係る眼鏡型画像表示装置について説明したが、上記の構成に限定されず、適宜に変更することができる。ユーザ向けに表示させる画像は、動画像(映像)であっても静止画像であってもよい。また、眼鏡型画像表示装置に設けられる光学部品の数、配置等は、少なくとも上記実施形態で説明した構成を満たしていればよく、上記実施形態で説明した光学部品とは異なる光学部品が光路内に設けられていてもよい。
【0039】
なお、本開示の要旨は以下の[1]~[6]に存する。
[1] ユーザに着用される眼鏡型画像表示装置であって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板に入射する画像光を、前記ガラス基板内を伝搬する光となるように曲げる方向変換機能部と、
前記ガラス基板における前記画像光の入射面とは逆の面に形成され、前記ガラス基板内を伝搬する光の一部を前記ユーザの目の方向に収束させる複数の反射ホログラムと、
を備え、
前記ガラス基板を、前記伝搬する光の進行方向に沿って、厚さが徐々に薄くなる形状とすることで、各反射ホログラムに入射する光の入射角度を互いに異ならせて、前記入射する光同士を分離する構成とされた、眼鏡型画像表示装置。
[2] 前記ガラス基板における前記厚さを形成する両面の成す角度θについて、
2θが前記複数の反射ホログラムの角度選択範囲内の角度よりも大きく設定されている、[1]に記載の眼鏡型画像表示装置。
[3] 前記ガラス基板における前記複数の反射ホログラムが形成された面に沿って、前記画像光を反射する光反射部を介して、別のガラス基板が配置され、
前記別のガラス基板は、前記伝搬する画像光の進行方向に沿って徐々に厚くなる構成とされた、[1]又は[2]に記載の眼鏡型画像表示装置。
[4] 前記光反射部は、前記反射ホログラムと前記別のガラス基板の間に隙間を設けることで形成される空気の層、又は、前記画像光の波長の光のみを反射するバンドパスフィルタにより構成される、[3]に記載の眼鏡型画像表示装置。
[5] 前記眼鏡型画像表示装置は、
前記ユーザによる前記眼鏡型画像表示装置の着用時における上下方向に沿って、前記ガラス基板に入射する画像光を複数の分割光に分割する光分割部、をさらに備え、
前記方向変換機能部は、前記光分割部により分割された前記複数の分割光それぞれの進行する角度が異なるように進行方向を変える機能を有し、前記上下方向に前記分割光が多重化される構成とされた、[1]~[4]の何れか一項に記載の眼鏡型画像表示装置。
[6] 前記方向変換機能部は、ホログラム、反射型の回折光学素子、および、前記画像光の入射方向に対し斜めに切断された前記ガラス基板の一部、のうち1つ以上によって構成される、[1]~[5]の何れか一項に記載の眼鏡型画像表示装置。
【0040】
(用語の説明、ハードウェア構成(
図13)の説明など)
なお、上記実施形態の説明に用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的又は論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的又は間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置又は上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0041】
例えば、眼鏡型画像表示装置1における制御部10Cは、コンピュータとして機能してもよい。
図13は、制御部10Cのハードウェア構成の一例を示す図である。上述の制御部10Cは、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、及びバス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。制御部10Cにおける各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することで実現される。
【0042】
本開示において説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明した方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0043】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0044】
本開示において説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0045】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0046】
なお、本開示において説明した用語及び本開示の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。例えば、通信チャネル及びシンボルの少なくとも一方は信号(シグナリング)であってもよい。また、信号はメッセージであってもよい。また、コンポーネントキャリア(CC:Component Carrier)は、キャリア周波数、セル、周波数キャリアなどと呼ばれてもよい。
【0047】
本開示で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。また、「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
【0048】
本開示において使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0049】
本開示において使用する「第1の」、「第2の」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定しない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本開示において使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみが採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
【0050】
本開示において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」及びそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0051】
本開示において、例えば、英語でのa, an及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
【0052】
本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…眼鏡型画像表示装置、10…画像出力部、10A…コンテンツ蓄積部、10B…光出力部、10C…制御部、11…レンズ、20…ホログラム、20A…方向変換機能部、20B、20C、20D…反射ホログラム、21…ガラス基板、21A、21B…境界面、22…透過型のDOE、23…光反射部、24…ガラス基板、25、26、27、28…ハーフミラー、26A、27A、28A…ミラー、50…レンズ、51…ブリッジ、52…テンプル、1001…プロセッサ、1002…メモリ、1003…ストレージ、1004…通信装置、1005…入力装置、1006…出力装置、1007…バス。