(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041401
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 55/18 20060101AFI20240319BHJP
B25J 17/00 20060101ALI20240319BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F16H55/18
B25J17/00 E
F16H1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146206
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香田 祐太
【テーマコード(参考)】
3C707
3J009
3J030
【Fターム(参考)】
3C707CX01
3C707CX03
3C707HS27
3C707HT31
3J009DA10
3J009EA05
3J009EA11
3J009EA21
3J009EA32
3J009EA42
3J009EB02
3J009ED13
3J009FA26
3J030AB01
3J030BA01
3J030BB06
3J030BD09
(57)【要約】
【課題】ギア間のバックラッシを簡単に調整にできるアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ(1,1´)は、テーパギアである第1ギア(21,110)の軸線に沿った方向における第1ギアと、テーパギアである第2ギア(22)との相対位置を変更する位置調整機構(40,140)を含んでいる。位置調整機構は、ギアケース(10)の外側に露出し、第1ギアと第2ギアとの相対位置を変更するための操作を受け付ける調整螺子(41A,41B,141)を含んでいる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
軸線を中心に回転可能な第1テーパギアと、
前記第1テーパギアと噛み合っている第2テーパギアと、
前記第1テーパギア及び前記第2テーパギアの少なくとも一方を収容している収容部と、
前記軸線に沿った方向における前記第1テーパギアと前記第2テーパギアとの相対位置を変更する位置調整機構と、を含み、
前記第1テーパギアと前記第2テーパギアの一方のギアは、前記モータからの動力を受けて回転することにより他方のギアを回転させ、
前記位置調整機構は、前記収容部の外側に露出し、前記第1テーパギアと前記第2テーパギアとの相対位置を変更するための操作を受け付ける受付部を含んでいる
アクチュエータ。
【請求項2】
前記受付部は、前記軸線に沿った方向で前記収容部に差し込まれている螺子である
請求項1に記載されるアクチュエータ。
【請求項3】
前記位置調整機構は、前記螺子と接し、前記螺子の緩みを抑制する部材を更に有している
請求項2に記載されるアクチュエータ。
【請求項4】
前記螺子の緩みを抑制する部材は、前記螺子の差し込み方向とは異なる方向に前記螺子を押圧している
請求項3に記載されるアクチュエータ。
【請求項5】
前記軸線に沿って配置される軸部と、
前記軸部に取り付けられて前記第1テーパギアと接している間接部材と、を更に有し、
前記位置調整機構は、前記間接部材を押すことによって、前記第1テーパギアの位置を変更する
請求項1に記載されるアクチュエータ。
【請求項6】
前記受付部は、前記軸線に沿った方向で前記収容部に差し込まれている螺子であり、
前記軸部は、前記第1テーパギアと一体的に形成されており、
前記軸部に取り付けられる前記間接部材は、内輪部と外輪部を含むベアリングであり、
前記第1テーパギアは、前記ベアリングの前記内輪部に接し、
前記位置調整機構は、前記受付部である前記螺子と前記ベアリングの前記外輪部とに接し、前記外輪部を押している押圧部材を含んでいる
請求項5に記載されるアクチュエータ。
【請求項7】
前記ベアリングとして、前記軸部の一方の端部に配置されている第1ベアリングと、前記軸部の他方の端部に配置されている第2ベアリングとを含み、
前記位置調整機構は、前記受付部として、前記収容部において前記軸部の前記一方の端部と接している部分に差し込まれている第1螺子と、前記収容部において前記軸部の前記他方の端部と接している部分に差し込まれている第2螺子とを含み、
前記位置調整機構は、前記押圧部材として、前記第1螺子と前記第1ベアリングとに接し、前記第1ベアリングを前記第2ベアリングの方向に押している第1押圧部材と、前記第2螺子と前記第2ベアリングとに接し、前記第2ベアリングを前記第1ベアリングの方向に押している第2押圧部材と、を含んでいる
請求項6に記載されるアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
二足歩行や四足歩行が可能なロボットの肩や胴体(腰)などの関節に、アクチュエータが利用されている。下記特許文献1には、胴体の関節に3つのアクチュエータを備え、ローリング方向、ヨーイング方向、ピッチング方向の3つの方向で胴体を動かす(ねじる)ことが記載されている。アクチュエータには、複数のギア(歯車)からなる減速機構が内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクチュエータの減速機構における動作音の低減と制御の制度向上のため、互いに噛み合う2つのギアのギア歯の隙間(バックラッシ)を適正にする必要がある。ギア間のバックラッシの調整は、簡単に行えることが望ましい。
【0005】
本開示の目的は、ギア間のバックラッシを簡単に調整にできるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るアクチュエータは、モータと、軸線を中心に回転可能な第1テーパギアと、前記第1テーパギアと噛み合っている第2テーパギアと、前記第1テーパギア及び前記第2テーパギアの少なくとも一方を収容している収容部と、前記軸線に沿った方向における前記第1テーパギアと前記第2テーパギアとの相対位置を変更する位置調整機構と、を含んでいる。前記第1テーパギアと前記第2テーパギアの一方のギアは、前記モータからの動力を受けて回転することにより他方のギアを回転させる。前記位置調整機構は、前記収容部の外側に露出し、前記第1テーパギアと前記第2テーパギアとの相対位置を変更するための操作を受け付ける受付部を含んでいる。これによれば、第1テーパギアと第2テーパギアとのバックラッシを簡単に調整できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本開示の実施形態の一例であるアクチュエータの斜視図である。
【
図3A】
図1BのIIIA-IIIA線における断面図である。
【
図3B】
図3Aにおける第1ギアを拡大した部分拡大図である。
【
図3C】
図1BのIIIC-IIIC線における断面図である。
【
図5】実施形態の他の一例であるアクチュエータの断面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1.アクチュエータの概要]
図1A~
図1Cは、本開示の実施形態の一例であるアクチュエータ1の外観を示す図である。
図1Aは、アクチュエータ1の斜視図である。
図1Bは、アクチュエータ1の平面図である。
図1Cは、アクチュエータ1の底面図である。
図2は、アクチュエータ1の構成要素を示す分解斜視図である。アクチュエータ1は、例えば、人や動物を模したロボットの肩や胴体などの関節として用いることができる。アクチュエータ1は、
図1A~
図1C及び
図2に示すように、電動モータ2と、ギアケース10を有している。モータ2は、アクチュエータ1の動力源である電動モータであり、例えば、DCモータやACモータ、ステッピングモータとしてよい。
【0009】
以下では、電動モータ2の回転軸に沿った方向をZ軸方向として説明する。また、各図においてZ軸のZ1に示す方向を上方と称し、Z軸のZ2に示す方向を下方と称する。ただし、これらの方向は、アクチュエータ1の部品、部材、及び部分などの要素の形状や相対的な位置関係を説明するため規定されるものであり、アクチュエータ1の姿勢を限定するものではない。
【0010】
図1A及び
図2に示すように、ギアケース10は、上下方向において互いに組み合わされている第1ケース部材10Aと、第2ケース部材10Bと、第3ケース部材10Cとを有している。各ケース部材10B,10A,10Cが、上からこの順で配置され、組み合わされることによって、ギアケース10が構成されている。
図2に示すように、アクチュエータ1は、第1ギア21と、第2ギア22と、第3ギア23とを有している。各ギア21,22,23は、ギアケース10の内側に収容されている。
【0011】
図2に示すように、第1ギア21、第2ギア22、及び、第3ギア23は、それらの回転方向に沿って並んでいる複数のギア歯を有している。これらのギア21,22,23は、モータ2から、第3ギア23、第1ギア21、第2ギア22の順に並んでいる。モータ2の回転軸には第4ギア24が取り付けられている。第3ギア23は、第4ギア24と第1ギアに噛み合っており、第1ギア21は、第3ギア23と第2ギア22に噛み合っている。第2ギア22の端部(
図2の例では上端)には、出力部25が形成されている。出力部25は第2ギア22に固定されており、第2ギア22が回転することで出力部25も回転する。各ギア21,22,23,24は、電動モータ2から受けた回転を減速して出力部25に伝える減速機構として機能する。
【0012】
図1Aに示すように、出力部25はギアケース10から露出している。ギアケース10の上側を構成している第2ケース部材10Bには、出力部25をZ軸方向に露出させる開口11が形成されている。出力部25には、アクチュエータ1が搭載される装置(例えば、ロボットなど)に含まれる部品(例えば、ロボットのフレームや別のアクチュエータなど)に連結される。なお、出力部25は、第2ギアの下端に形成されてもよいし、第2ギアの上端及び下端の双方に形成されてもよい。この場合、ギアケース10の下側を構成している第3ケース部材10Cにも、Z軸方向に出力部25を露出させる開口が形成されてよい。また、本実施形態では、第2ギア22と出力部25は、一体的に形成されることによって互いに固定されているが、第2ギア22と出力部25は、これらの部材が螺子などで締結されることによって互いに固定されてもよい。
【0013】
図3Aは、
図1BのIII-III線における断面図である。
図3Bは、
図3Aにおける第1ギア21を拡大した部分拡大図である。
図3Aに示すように、第3ギア23は、大径ギア部23aと小径ギア部23bとを有している。第3ギア23は、大径ギア部23aにおいて第4ギア24と噛み合い、小径ギア部23bにおいて第1ギア21と噛み合っている。モータ2が回転することにより、第4ギア24が回転し、第4ギアと噛み合っている大径ギア部23aが回転する。そして、大径ギア部23aと一体的に形成されている小径ギア部23bが回転する。また、第1ギア21は、第1ギア21の軸線Ax1に沿って形成されている軸部21aと、軸部21aの外周に形成されている大径ギア部21b及び小径ギア部21cを有している。第2ギア22は、第2ギア22の軸線Ax2に沿って形成されている軸部22aと、軸部22aの外周に形成されているギア部22bを有している。第1ギア21は、大径ギア部21bにおいて第3ギア23(より具体的には、小径ギア部23b)と噛み合い、小径ギア部21cにおいて第2ギア22(より具体的には、ギア部22b)と噛み合っている。第1ギア21の大径ギア部21bと小径ギア部21cとが軸線Ax1を中心として一体的に回転することにより、小径ギア部21cと噛み合っている第2ギア22のギア部22bは、軸線Ax2を中心に回転する。これにより、第3ギア23及び第1ギア21は、第2ギア22の端部に固定されている出力部25へ、モータ2からの回転を伝達している。
【0014】
図3Aに示すように、第1ギア21の軸部21aの両端部(軸部21aの下端部及び上端部)には、ベアリング31Aとベアリング31Bがそれぞれ取り付けられている。また、第2ギア22の両端部(軸部22aの下端部及び出力部25の外周縁)には、ベアリング32Aとベアリング32Bがそれぞれ取り付けられている。これにより、第1ギア21は軸線Ax1を中心に回転可能であり、第2ギア22は軸線Ax2を中心に回転可能である。ベアリング31A,31B,32A,32Bは、ギア21,22,23とともにギアケース10の内側に収容されている。
【0015】
なお、本実施形態では、第1ギア21の軸線Ax1と、第2ギア22の軸線Ax2は、いずれもZ軸方向に沿って伸びているが、軸線Ax1と軸線Ax2は、Z軸方向とは異なる方向に伸びていてもよい。また、軸線Ax1と軸線Ax2とは平行でなくてもよい。また、アクチュエータ1に含まれるギアの数やギアの配置は、
図2及び
図3Aに示した例に限らない。例えば、アクチュエータ1は第3ギア23を有さなくてもよく、モータ2の回転軸に取り付けられている第4ギア24が第1ギア21に直接噛み合ってもよい。また、アクチュエータ1は、減速機構として他のギアを含んでよく、例えば、内歯ギアやヘリカルギア、傘歯ギア、ウォームギアなどを含んでもよい。また、第1ギア21における大径ギア部21bと小径ギア部21cとの大小関係は、逆であってもよい。第3ギア23における大径ギア部23aと小径ギア部23bの大小関係も、逆であってもよい。
【0016】
[2.バックラッシの調整機構]
先述したように、第1ギア21は、小径ギア部21cにおいて第2ギア22のギア部22bと噛み合っている。
図3Aに示すように、第1ギア21の小径ギア部21cと、第2ギア22のギア部22bは、テーパギア(コニカルギア)である。小径ギア部21cを構成している軸線Ax1の周方向に沿って並んでいる複数のギア歯は、軸線Ax1に対して傾斜する方向に沿って伸びている。小径ギア部21cを構成している軸線Ax1の周方向に沿って並んでいる複数のギア歯は、軸線Ax1に対して傾斜する方向に沿って伸びている。これと同様に、ギア部22bを構成している軸線Ax2の周方向に沿って並んでいる複数のギア歯も、軸線Ax2に対して傾斜する方向に沿って伸びている。本実施形態では、第1ギア21が、本開示で提案する「第1テーパギア」に対応し、第2ギア22が、本開示で提案する「第2テーパギア」に対応している。
【0017】
また、本実施形態では、第1ギア21と第2ギア22を収容しているギアケース10が、本開示で提案する「収容部」に対応している。本実施形態では、ギアケース10は、第1ギア21と第2ギア22との双方を収容しているが、ギアケース10は、第1ギア21を収容して第2ギア22を収容しないものであってもよい。以下に説明するように、本実施形態では、ギアケース10の外側から軸線Ax1における第1ギア21の位置を動かすことにより、第1ギア21の小径ギア部21cと第2ギア22のギア部22bとのギア歯の隙間であるバックラッシを調整できるように図られている。
【0018】
アクチュエータ1は、軸線Ax1に沿った方向における第1ギア21と第2ギア22との相対位置を変更する位置調整機構40を有している。本実施形態では、位置調整機構40は、
図2及び
図3Aに示すように、第1調整螺子41Aと、第2調整螺子41Bを有している。以下の説明では、第1調整螺子41Aと第2調整螺子41Bとを、単に螺子41A,41Bと称することもある。螺子41A,41Bは、ギアケース10の外側に露出し、第1ギア21と第2ギア22との相対位置を変更するための操作を受け付ける。本実施形態では、螺子41A,41Bが、本開示で提案する「受付部」に対応している。
【0019】
図3Aに示すように、螺子41A,41Bは、軸線Ax1に沿った方向でギアケース10に差し込まれている。第1調整螺子41Aは、ギアケース10において第1ギア21の軸部21aの一方の端部(下端部)と接している部分に差し込まれている。第2調整螺子41Bは、ギアケース10において軸部21aの他方の端部(上端部)と接している部分に差し込まれている。第1調整螺子41Aは、ギアケース10において第2ケース部材10Bと第3ケース部材10Cとの間に配置される第1ケース部材10Aに取り付けられ、第2調整螺子41Bは、ギアケース10の上側を構成している第2ケース部材10Bに取り付けられている。
【0020】
図4は、第1ギア21及び第2ギア22の概略図であり、第1ギア21と第2ギア22(より具体的には、第1ギア21の小径ギア部21cと第2ギア22のギア部22b)のバックラッシの調整方法を示す図である。第1ギア21と第2ギア22のバックラッシである距離Δx(小径ギア部21cのギア歯に沿った方向に対して垂直な方向における距離)は、次の方法によって調整できる。
【0021】
(1)まず、軸線Ax1に沿ってギアケース10に差し込まれた第1調整螺子41Aを締めることにより、第1ギア21が第2ギア22に当たるまで(すなわち、バックラッシの距離Δxが0になるまで)、第1ギア21を矢印D1の方向に動かす。ここで、軸線Ax1に沿った方向における第1ギア21と第2ギア22との距離Δzも0になる。
【0022】
(2)次いで、第1調整螺子41Aを緩め、軸線Ax1に沿ってギアケース10に差し込まれた第2調整螺子41Bを締めることにより、バックラッシの距離Δxが目標値になるまで、第1ギア21を矢印D1とは逆の方向に動かす。ここで、矢印D1とは逆の方向に沿って第1ギア21を動かす距離Δzは、例えば、Δz=Δx/sinαの計算式によって算出できる。ここでのαは、第1ギア21における小径ギア部21cのギア歯に沿った方向と、軸線Ax1に沿った方向とのなす角度を示している。また、第1調整螺子41Aの回転角度(回転数)と、第1調整螺子41Aが軸線Ax1に沿って動く距離Δzとの関係は、第1調整螺子41Aの種類(より具体的には、第1調整螺子41Aの螺子山のピッチ)に応じて定まるため、例えば、上記の計算式によって算出した距離Δzに基づいて、第1調整螺子41Aを緩める時の第1調整螺子41Aの回転角度(回転数)を算出できる。このように算出した回転角度(回転数)で第1調整螺子41Aを緩め、第2調整螺子41Bを締めることにより、バックラッシの距離Δxを目標値に調整できる。
【0023】
図3Aに示すように、ギアケース10の第1ケース部材10Aと第2ケース部材10Bには、螺子41A,41Bがそれぞれ取り付けられる螺子孔が形成されている。また、ギアケース10の下側を構成している第3ケース部材10Cには、第1調整螺子41Aを露出する孔12が形成されている。このため、作業者は、ギアケース10の外側からの操作によって、螺子41A,41Bをギアケース10に取り付けることができる。作業者は、ギアケース10を分解したり、ギアケース10からモータ2や第3ギア23などの部品を取り外したりしなくても、ドライバーなどの工具を使って螺子41A,41Bを操作できる。また、第1調整螺子41Aが取り付けられる第1ケース部材10Aとは異なる第3ケース部材10Cの孔12によって第1調整螺子41Aを露出させることにより、第1調整螺子41Aは、ギアケース10から突出しない。これにより、第1調整ネジ41Aと他の部品との干渉を避けることができる。
【0024】
以上のように、本実施形態では、ギアケース10の外側から螺子41A,41Bを操作することによって、軸線Ax1における第1ギア21の位置を動かし、第1ギア21と第2ギアとのバックラッシを調整している。このように、出力部20を有する第2ギア22よりも上流に配置される第1ギア21を動かすことにより、出力部25と、出力部25が連結する部品との相対位置が変化しない。これにより、1つのロボットに備えられる複数のアクチュエータ1や、複数の同型のロボットで同じ位置(例えば、肩と腕の間)に備えられる複数のアクチュエータ1において、出力部25が連結する部品と、ギアケース10との間の距離を均一にすることができる。また、モータ2よりも下流に配置される第1ギア21を動かすことにより、アクチュエータ1におけるモータ2の位置は変化しない。これにより、第1ギア21と第2ギアとのバックラッシを調整する前と後とで、アクチュエータ1の重心位置が変化することを抑制できる。
【0025】
図3Cは、
図1BのIIIC-IIIC線における断面図である。
図2及び
図3Cに示すように、位置調整機構40は、第1調整螺子41Aと接し、第1調整螺子41Aの緩みを抑制する部材として、緩み止め螺子43を有している。緩み止め螺子43は、第1調整螺子41Aによりバックラッシの調整が行われた後に軸線Ax1に対して交差する方向Ax3でギアケース10(
図3Aに示す例では、第1ケース部材10A)に差し込まれ、第1調整螺子41Aと接触する。緩み止め螺子43は、第1調整螺子41Aの差し込み方向(軸線Ax1の方向)とは異なる方向に第1調整螺子41Aを押圧する。このように、緩み止め螺子43が第1調整螺子41Aと接触、押圧することにより、第1調整螺子41Aの緩みを抑制できる。そして、第1調整螺子41Aの緩みに起因する第1ギア21の位置ずれを抑制し、第1ギア21と第2ギア22とのバックラッシを適正に保つことができる。
【0026】
なお、
図3Cでは、第1調整螺子41Aと接する緩み止め螺子43のみが示されているが、ギアケース10には、第2調整螺子41Bと接する緩み止め螺子などの部材が取り付けられてもよい。
【0027】
緩み止め螺子43は、その先端が第1調整螺子41Aに接触することにより、ギアケース10に対して第1調整螺子41Aが緩むことを抑制している。緩み止め螺子43は、第1調整螺子41Aの材料(鉄などの金属材料)よりも柔らかい材料(第1調整螺子41Aよりも剛性の低い材料)(例えば、真鍮)により形成されてよい。このようにすることで、緩み止め螺子43の先端が第1調整螺子41Aの隣り合う螺子山の間に入り込むように変形し、より効果的に第1調整螺子41Aの緩みを抑制できる。
【0028】
ギアケース10(第1ケース部材10A)には、第1調整螺子41Aが差し込まれる螺子孔と、その螺子孔に繋がっている緩み止め螺子43が差し込まれる螺子孔が形成されている。また、
図1B及び
図3Cに示すように、緩み止め螺子43が差し込まれる方向Ax3は、モータ2と交差していない。作業者は、ギアケース10を分解したり、ギアケース10からモータ2などの部品を取り外したりしなくても、ドライバーなどの工具を使って緩み止め螺子43をギアケース10に取り付けることができる。
【0029】
本実施形態では、アクチュエータ1は、第1ギア21の軸部21aに取り付けられて第1ギア21と接している間接部材として、軸部21aの一方の端部(下端部)に配置されているベアリング31A(第1ベアリング)と、軸部21aの他方の端部(上端部)に配置されているベアリング31B(第2ベアリング)を有している。ここで、位置調整機構40は、間接部材であるベアリング31A,31Bを押すことによって、軸線Ax1における第1ギア21の位置を変更している。
【0030】
図2及び
図3Aに示すように、位置調整機構40は、第1押圧プレート42A(第1押圧部材)と、第2押圧プレート42B(第2押圧部材)を有している。第1押圧プレート42Aは、ベアリング31Aの下側に配置され、第1調整螺子41Aとベアリング31Aとの間に位置している。第1押圧プレート42Aは、第1調整螺子41Aとベアリング31Aとに接し、第1調整螺子41Aから押されて第1ギア21の軸部21aの上側に向けてベアリング31Aを押している。
図3Bで示すように、第1ギア21の軸部21aは、軸線Ax1に沿った方向でベアリング31Aと接している段差部211Aを有している。第1押圧プレート42は、ベアリング31Aを押すことによって、軸部21aの段差部211Aを上方向に押している。
【0031】
また、
図2及び
図3Aに示すように、第2押圧プレート42Bは、ベアリング31Bの上側に配置され、第2調整螺子41Bとベアリング31Bとの間に位置している。第2押圧プレート42Bは、第2調整螺子41Bとベアリング31Bとに接し、第2調整螺子41Bから押されて第1ギア21の軸部21aの下側に向けてベアリング31Bを押している。
図3Bで示すように、第1ギア21の軸部21aは、軸線Ax1に沿った方向でベアリング31Bと接している段差部211Bを有しており、第2押圧プレート42Bは、ベアリング31Bを押すことによって、軸部21aの段差部211Bを下方向に押している。
【0032】
第1押圧プレート42Aは、ベアリング31Aをベアリング32の方向に押している。第2押圧プレート42Bは、ベアリング32をベアリング31Aの方向に押している。このように、2つのベアリング31A,31Bで軸部21aを互いに反対方向から押し合うことで、ギアケース10の内側で軸部21aの位置が、Z軸方向及び水平方向(Z軸方向に対して垂直な方向)にずれることを抑制できる。
【0033】
図3Bに示すように、ベアリング31A,31Bは、内輪部311と外輪部312を含んでいる。内輪部311と外輪部312は、軸線Ax1の周方向に沿って互いに独立して回転可能である。ベアリング31Aの下端部では、第1押圧プレート42Aがベアリング31Aの外輪部312に接し、外輪部312を上端部に押している。第1押圧プレート42Aは円盤状であり、第1押圧プレート42Aの縁部は上方に突出している。第1押圧プレート42Aは、ベアリング31Aの内輪部311との接触を避けて外輪部312に接している。これにより、ベアリング31Aと内輪部311との摩擦を生じさせずに外輪部312を押すことができる。
【0034】
ベアリング31Aの上端部では、第1ギア21の軸部21aに形成されている段差部211Aがベアリング31Aの内輪部311に接している。第1押圧プレート42Aによってベアリング31Aの外輪部312が上方に押され、ベアリング31Aの内輪部311が段差部211Aによって押される。このように、ベアリング31Aの内輪部311と外輪部312が互いに反対の方向から押されることにより、内輪部311と外輪部312の回転運動の精度を向上できる。ベアリング31Aとして、例えば、アンギュラ玉軸受のベアリングを用いることができる。
【0035】
また、ベアリング31Bの上端部では、第2押圧プレート42Bがベアリング31Bの外輪部312に接し、外輪部312を下端部に押している。第2押圧プレート42Bは円盤状であり、第2押圧プレート42Bの縁部は下方に突出している。第2押圧プレート42Bは、ベアリング31Bの内輪部311との接触を避けて外輪部312に接している。これにより、ベアリング31Bと内輪部311との摩擦を生じさせずに外輪部312を押すことができる。ベアリング31Bの下端部では、ベアリング31Bの内輪部311が軸部21aの段差部211Bと接し、段差部211Bによって押される。ベアリング31Bも、ベアリング31Aと同様に、内輪部311と外輪部312とが互いに反対の方向に押されることにより、内輪部311と外輪部312の回転運動の精度を向上できる。ベアリング31Bも、ベアリング31Aと同様に、アンギュラ玉軸受のベアリングとすることができる。
【0036】
[3.まとめ]
以上のように、本実施形態では、アクチュエータ1は、互いに噛み合っている第1ギア21及び第2ギア22を収容しているギアケース10と、第1ギア21の軸線Ax1に沿った方向における第1ギア21と第2ギア22との相対位置を変更する位置調整機構40を有している。位置調整機構40は、ギアケース10の外側に露出し、第1ギア21と第2ギア22との相対位置を変更するための操作を受け付ける受付部として、第1調整螺子41Aと第2調整螺子41Bとを含んでいる。このようにすることで、ギアケース10の外側からの操作によって、第1ギア21と第2ギア22とのギア歯の隙間であるバックラッシを調整できる。すなわち、ギア間のバックラッシを簡単に調整にできるようになる。
【0037】
[4.変形例]
なお、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。
【0038】
(1)先述した実施形態の例では、位置調整機構40は、第1ギア21の軸線Ax1における第1ギア21の位置を変更することによって、第1ギア21と第2ギア22との相対位置を変更しているが、位置調整機構40は、出力部25が設けられている第2ギア22の位置を変更することによって、第1ギア21と第2ギア22との相対位置を変更してもよい。この場合、螺子41A,42B及び押圧プレート42A,42Bは、第2ギアの軸部22a及や出力部25に取り付けられているベアリング32A,32Bを、第2ギア22の軸線Ax2に沿って押すものであってもよい。また、この場合、ギアケース10は、第2ギア22を収容して第1ギア21を収容しないものであってもよい。ギアケース10は、第1ギア21と第2ギア22の少なくとも一方を収容するものであればよい。このようにしても、第1ギア21と第2ギア22との相対位置を簡単に変更することができ、第1ギア21と第2ギア22とのギア歯の隙間であるバックラッシを簡単に調整できる。
【0039】
(2)先述した実施形態の例では、アクチュエータ1は、
図3A及び
図3Bに示したように、第1ギア21の軸部21aの一端部に配置されるベアリング31Aと、軸部21aの他端部に配置されるベアリング31Bとを有し、位置調整機構40は、第1調整螺子41Aと、第2調整螺子41Bと、第1調整螺子41Aとベアリング31Aとに接し、ベアリング31Aを軸線Ax1の方向で押す第1押圧プレート42Aと、第2調整螺子41Bとベアリング31Bとに接し、ベアリング31Bを軸線Ax1の方向で押す第2押圧プレート42Bを有する例を説明した。この例において、アクチュエータ1は、第2調整螺子41B及びベアリング31Bを有さなくてもよい。この場合、アクチュエータ1は、例えば、ギアケース10(第2ケース部材10B)と軸部21aの段差部211B(
図3Bを参照)に接し、段差部211Bを下方に押すバネなどの弾性部材を有してもよい。このようにしても、ベアリング31Aと弾性部材とで軸部21aを互いに反対方向から押し合うため、ギアケース10の内側における軸部21aの位置ずれを抑制できる。
【0040】
(3)また、アクチュエータ1は、ベアリング31Aとベアリング31Bの双方を有さなくてもよい。以下では、第2ギア22と噛み合う第1ギアにベアリングが取り付けられない例を説明する。
【0041】
図5は、実施形態の他の一例であるアクチュエータ1´の断面を示す概略図である。
図5に示す例では、上下方向において互いに組み合わされている第1ケース部材10A及び第2ケース部材10Bによってギアケース10が構成されており、その内側に、第1ギア110と第2ギア22が収容されている。先述した実施形態の例と同様に、第2ギア22の端部に出力部25が形成されており、第2ギア22の一端と他端にベアリング32A,32Bが取り付けられている。第1ギア110は、大径ギア部110aと小径ギア部110bを有している。小径ギア部110bはテーパギア(コニカルギア)であり、テーパギアである第2ギア22と噛み合っている。
【0042】
図5に示す例では、先述した実施形態の例とは異なり、ギアケース10の内側に、棒状(円柱状)の軸部材120が固定されている。軸部材120は、第1ケース部材10Aと第2ケース部材10Bに形成された孔又は凹部に差し込まれることで、ギアケース10の内側に固定され、軸線Ax1に沿って配置される。第1ギア110には、軸部材120が貫通する孔110cが形成されている。
図5に示す例では、軸部材120が、本開示で提案する「軸部」に対応し、第1ギア110は、軸部材120に対して回転可能である。第1ギア110は、軸部材120が配置される軸線Ax1の周方向に回転可能である。
【0043】
図5に示すように、軸部材120にはワッシャー130が取り付けられている。ワッシャー130は、第1ギア110と接している。ワッシャー130は、例えば、中央部が突出している段付きワッシャーであり、中央部において第1ギア110と接している。ワッシャー130は、第1ギア110とギアケース10(第1ケース部材10A)との間に配置されている。ワッシャー130の上端部が第1ギア110と接し、ワッシャー130の下端部が第1ケース部材10Aと接している。
図5に示す例では、ワッシャー130が、本開示で提案する「間接部材」に対応している。
【0044】
アクチュエータ1´は、軸線Ax1に沿った方向における第1ギア110と第2ギア22との相対位置を変更する位置調整機構140を有している。
図5に示すように、位置調整機構140は、調整螺子141を有しており、調整螺子141でワッシャー130を押すことによって、第1ギア110の位置を変更している。調整螺子141は、ギアケース10の外側に露出し、第1ギア110の位置を変更するための操作を受け付ける。
図5に示す例では、調整螺子141が、本開示で提案する「受付部」に対応している。
【0045】
調整螺子141は、先述した実施形態の例における第1調整螺子41Aと同様に、軸線Ax1に沿った方向でギアケース10に差し込まれる。調整螺子141は、ギアケース10の下側を構成している第1ケース部材10Aに取り付けられる。第1ケース部材10Aには、調整螺子141が取り付けられる螺子孔が形成されている。第1ケース部材10Aに差し込まれた調整螺子141でワッシャー130を押し、ワッシャー130を介して第1ギア110を押すことによって、軸線Ax1における第1ギア110の位置を調整できる。このように第1ギア110の位置を調整することによって、第1ギア110と第2ギア22とのギア歯の隙間であるバックラッシを調整できる。
【0046】
また、位置調整機構140は、調整螺子141と接し、調整螺子141の緩みを抑制する緩み止め螺子142を有している。緩み止め螺子142は、調整螺子141によりバックラッシの調整が行われた後に軸線Ax1に対して交差する方向Ax3で第1ケース部材10Aに差し込まれ、ギアケース10に取り付けられる。第1ケース部材10Aには、調整螺子141が差し込まれる螺子孔に繋がっている緩み止め螺子43が差し込まれる螺子孔が形成されている。このようにすることで、調整螺子141の緩みに起因する第1ギア110の位置ずれを抑制し、第1ギア110と第2ギア22とのバックラッシを適正に保つことができる。
【符号の説明】
【0047】
1,1´ アクチュエータ、2 モータ、10 ギアケース、10A 第1ケース部材、10B 第2ケース部材、10C 第3ケース部材、11 開口、12 孔、21,110 第1ギア、21a 軸部、211A,211B 段差部、21b,110a 大径ギア部、21c,110b 小径ギア部、110c 孔、22 第2ギア、22a 軸部、22b ギア部、23 第3ギア、23a 大径ギア部、23b 小径ギア部、24 第4ギア、25 出力部、31A,31B,32A,32B ベアリング、311 内輪部、312 外輪部、40,140 位置調整機構、41A 第1調整螺子、41B 第2調整螺子、141 調整螺子、42A 第1押圧プレート、42B 第2押圧プレート、43,142 緩み止め螺子、120 軸部材、130 ワッシャー。