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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041410
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20240319BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240319BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240319BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/65
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146222
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 忠司
(72)【発明者】
【氏名】下山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 准平
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA212
4J038CJ111
4J038DB191
4J038DG191
4J038FA071
4J038FA251
4J038FA281
4J038HA286
4J038KA03
4J038KA08
4J038NA11
4J038PA17
4J038PB04
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】塗布した後の活性エネルギー線照射による硬化性が優れ、かつ、得られる塗膜の耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐振動性が優れる活性エネルギー線硬化型組成物を提供する。
【解決手段】ウレタンアクリレート化合物を10~40質量%、多官能モノマーを15~55質量%、ワックスを0.2~10質量%、および、光重合開始剤を5~20質量%含み、25℃における粘度が5~45Pa・sであり、オーバーコートニス用である、活性エネルギー線硬化型組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンアクリレート化合物を10~40質量%、
多官能モノマーを15~55質量%、
ワックスを0.2~10質量%、および、
光重合開始剤を5~20質量%含み、
25℃における粘度が5~45Pa・sであり、
オーバーコートニス用である、活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
さらに樹脂を1~30質量%含む、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
前記多官能モノマーは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含む、請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
さらに、マット剤を含む、請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物に関する。より詳細には、本発明は、塗布した後の活性エネルギー線照射による硬化性が優れ、かつ、得られる塗膜の耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐振動性が優れる活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型オーバーコートニスは、実質的にほぼ無溶剤で、熱乾燥の工程無しに、ごく短時間の活性エネルギー線照射により硬化が完了するという利便性から、玩具、紙器、食品包装、化粧品向けパッケージ印刷の分野で広く使用されている。活性エネルギー線硬化型オーバーコートニスは、耐摩擦性、耐摩耗性、耐ブロッキング性を向上させ印刷面を保護すると同時に、光沢またはマット感を付与し、高級化、美粧化のために印刷物に塗布される。
【0003】
内包物を含むパッケージ表面には、商品輸送時のパッケージ同士の擦れや衝突の衝撃により傷が生じ、パッケージの形状や材質、内包物の重量や硬さによっては、商品価値を損なう程の傷を生じる場合がある。しかしながら、耐摩擦性や耐摩耗性を向上させるために架橋密度を高くすると、可撓性が低下し脆くなる。そのため、折り目が付けられるパッケージ用途においては、塗布面に割れが生じやすくなるという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、耐折り曲げ性等の優れた硬化塗膜を形成するための紫外線硬化型コート剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6658184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のコート剤組成物を用いて得られる塗膜は、近年の厳しい輸送条件において、商品パッケージ同士の擦れや衝突の衝撃によって傷が生じやすく、耐摩擦性に改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、塗布した後の活性エネルギー線照射による硬化性が優れ、かつ、得られる塗膜の耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐振動性が優れる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、以下の構成を主に備える。
【0009】
(1)ウレタンアクリレート化合物を10~40質量%、多官能モノマーを15~55質量%、ワックスを0.2~10質量%、および、光重合開始剤を5~20質量%含み、25℃における粘度が5~45Pa・sであり、オーバーコートニス用である、活性エネルギー線硬化型組成物。
【0010】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型組成物は、塗布した後の活性エネルギー線照射による硬化性が優れ、かつ、得られる塗膜の耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐振動性が優れる。
【0011】
(2)さらに樹脂を1~30質量%含む、(1)記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【0012】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型組成物は、優れた耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐振動性が得られる。
【0013】
(3)前記多官能モノマーは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含む、(1)または(2)記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【0014】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型組成物は、優れた硬化性、耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐振動性が得られる。
【0015】
(4)さらに、マット剤を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【0016】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型組成物は、得られる塗膜にマット感を付与し得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、塗布した後の活性エネルギー線照射による硬化性が優れ、かつ、得られる塗膜の耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐振動性が優れる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<活性エネルギー線硬化型組成物>
本発明の一実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、ウレタンアクリレート化合物を10~40質量%、多官能モノマーを15~55質量%、ワックスを0.2~10質量%、および、光重合開始剤を5~20質量%含む。25℃における粘度は、5~45Pa・sである。活性エネルギー線硬化型組成物は、オーバーコートニス用である。以下、それぞれについて説明する。
【0019】
(ウレタンアクリレート化合物)
ウレタンアクリレート化合物は、塗膜に良好な耐スクラッチ性、耐摩擦性および耐振動性を付与する目的で、活性エネルギー線硬化型組成物に配合される。ウレタンアクリレート化合物(ウレタンアクリレート樹脂)は特に限定されない。一例を挙げると、ウレタンアクリレート樹脂は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを付加反応して得られたウレタン樹脂の末端を、アクリル基またはメタクリル基で修飾した樹脂である。これらの中でも、ウレタンアクリレート樹脂は、脂肪族ウレタンアクリレート樹脂を含むことが好ましい。
【0020】
ウレタンアクリレート樹脂の質量平均分子量は、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、2500以下であることがさらに好ましい。また、ウレタンアクリレート樹脂の質量平均分子量は、500以上であることが好ましく、750以上であることがより好ましい。ウレタンアクリレート樹脂の質量平均分子量が上記範囲内であることにより、反応後の硬化物の分子量の抑制に繋がり塗膜の柔軟性が高まるため、内部応力抑制による基材に対する密着性が高まる。ウレタンアクリレートの官能基数(アクリロイル基)は2~6であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
【0021】
ウレタンアクリレート樹脂の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、10質量%以上であればよく、15質量%以上であることが好ましい。また、ウレタンアクリレート樹脂の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、40質量%以下であればよく、25質量%以下であることが好ましい。ウレタンアクリレート樹脂の含有量が10質量%未満である場合、活性エネルギー線硬化型組成物は、塗膜に充分な耐振動性が付与されない。一方、ウレタンアクリレート樹脂の含有量が40質量%を超える場合、活性エネルギー線硬化型組成物は、塗膜に充分な耐スクラッチ性および耐摩擦性が付与されない。
【0022】
(多官能モノマー)
多官能モノマーは、充分な硬化性を付与する目的で、活性エネルギー線硬化型組成物に配合される。多官能モノマーは特に限定されない。一例を挙げると、多官能モノマーは、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのプロピレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(またはテトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(またはテトラ)(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(またはテトラ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等である。
【0023】
多官能モノマーの含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、15質量%以上であればよく、20質量%以上であることが好ましい。また、多官能モノマーの含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、55質量%以下であればよく、45質量%以下であることが好ましい。多官能モノマーの含有量が15質量%未満である場合、活性エネルギー線硬化型組成物は、硬化性が劣る。一方、多官能モノマーの含有量が50質量%を超える場合、活性エネルギー線硬化型組成物は、充分な粘度が得られず、印刷適性が劣る。
【0024】
(ワックス)
ワックスは、耐スクラッチ性を向上させるために、活性エネルギー線硬化型組成物に配合される。ワックスは特に限定されない。一例を挙げると、ワックスは、蜜蝋、ラノリンワックス、鯨蝋、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の動植物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の鉱物、石油系ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ヒマシ油、硬化ヒマシ油誘導体等の水素化ワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス(PTFE)等である。
【0025】
ワックスの平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。ワックスの平均粒子径が上記範囲内であることにより、活性エネルギー線硬化型組成物は、耐摩擦性および耐スクラッチ性が優れる。
【0026】
ワックスの含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、0.2質量%以上であればよく、1質量%以上であることが好ましい。また、ワックスの含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、10質量%以下であればよく、6質量%以下であることが好ましい。ワックスの含有量が0.2質量%未満である場合、活性エネルギー線硬化型組成物は、充分な耐スクラッチ性、耐摩擦性および耐振動性が付与されない。一方、ワックスの含有量が10質量%を超える場合、活性エネルギー線硬化型組成物は、印刷装置を汚す等して作業性が低下する傾向がある。
【0027】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けてラジカル等の活性種を発生させ、活性エネルギー線硬化型組成物の光重合を開始させる。光重合開始剤は特に限定されない。一例を挙げると、光ラジカル重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、トリアジン系化合物、芳香族ケトン系化合物、芳香族オニウム塩系化合物、有機過酸化物、チオキサントン系化合物、チオフェニル系化合物、アントラセン系化合物、ヘキサアリールビスイミダゾール系化合物、ケトオキシムエステル系化合物、ボレート系化合物、アジニウム系化合物、メタロセン系化合物、活性エステル系化合物、ハロゲン化炭化水素系化合物およびアルキルアミン系化合物、ヨードニウム塩系化合物およびスルフォニウム塩系化合物等である。
【0028】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物は、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドやビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等である。
【0029】
トリアジン系化合物は、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジンおよび2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等である。
【0030】
光重合開始剤は、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等であってもよい。このような光重合開始剤は、たとえば、BASF社製のイルガキュア907、369、184、379、819等、Lamberti社製のTPO、DETX等、みどり化学(株)製のTAZ-204等である。
【0031】
光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、5質量%以上であればよく、6質量%以上であることが好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、20質量%以下であればよく、18質量%以下であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が5質量%未満である場合、活性エネルギー線硬化型組成物は、充分な硬化性が得られない。一方、光重合開始剤の含有量が20質量%を超える場合、活性エネルギー線硬化型組成物は、耐スクラッチ性、耐摩擦性および耐振動性が低下する。
【0032】
(任意成分)
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、上記成分のほか、マット剤、表面調整剤、着色剤、重合禁止剤、溶剤、アンチブロッキング剤、光安定化剤、消泡剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、増粘剤(チキソトロピー剤)、抗菌・防黴剤等を含んでもよい。
【0033】
マット剤は、得られる塗膜にマット感を付与するために配合され得る。
【0034】
マット剤は特に限定されない。一例を挙げると、マット剤は、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等である。
【0035】
マット剤が含まれる場合、マット剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、マット剤の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。マット剤の含有量が上記範囲内であることにより、活性エネルギー線硬化型組成物は、得られる塗膜にマット感を付与し得る。
【0036】
表面調整剤は、得られる硬化物のレベリング性、スリッピング性を向上させるために、好適に配合される。
【0037】
表面調整剤は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤は、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤等である。
【0038】
表面調整剤が含まれる場合、表面調整剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、0.01~3.00質量%であることが好ましい。表面調整剤の含有量が上記範囲内であることにより、活性エネルギー線硬化型組成物は、レベリング性、スリッピング性が優れる。
【0039】
着色剤は、得られる塗膜を着色するために配合され得る。なお、着色剤を含有させないか、または、含有量を低減させることにより、無色クリアーや有色クリアーな組成物が調製されてもよい。
【0040】
着色剤は、耐光性の点から、有機顔料または無機顔料等の顔料であることが好ましい。無機顔料は、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料等である。有機顔料は、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等である。
【0041】
着色剤が含有される場合、着色剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中、1~60質量%であることが好ましい。
【0042】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、顔料を含む場合、顔料分散剤および顔料分散用樹脂を好適に含む。
【0043】
顔料分散剤は、公知のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等である。一例を挙げると、界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤(たとえば、ポリエーテル変性シリコンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等)、フッ素系界面活性剤、オキシアルキレンエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、リン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等である。
【0044】
顔料分散用樹脂は、高分子分散剤(たとえば、カルボジイミド系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリエステルアミン系、ポリウレタン系、脂肪酸アミン系、ポリアクリレート系、ポリカプロラクトン系、ポリシロキサン系、多鎖型高分子非イオン系、高分子イオン系の分散剤等)等である。
【0045】
顔料分散剤や顔料分散用樹脂が含有される場合、顔料分散剤や顔料分散用樹脂の含有量は、使用する全顔料の量に対して、1~200質量%であることが好ましい。
【0046】
活性エネルギー線硬化型組成物全体の説明に戻り、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、活性エネルギー線硬化型組成物は、各成分を全て添加して攪拌装置で攪拌混合して調製することができる。
【0047】
また、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、顔料、顔料分散剤および各種の活性エネルギー線硬化型化合物を混合することによってあらかじめコンクベースを得た後、所望の組成となるよう活性エネルギー線硬化型化合物、重合開始剤、必要に応じて界面活性剤等の添加剤をコンクベースに添加して調製されてもよい。
【0048】
また、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、各成分を混合した後にビーズミルや3本ロールミル等で練肉して顔料(すなわち着色成分および体質顔料)を分散させた後、必要に応じて添加剤(重合開始剤、重合禁止剤、ワックス等のその他の添加剤等)を加え、さらに他の成分の添加により粘度調整することもできる。
【0049】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物の粘度(25℃)は、5Pa・s以上であればよく、7Pa・s以上であることが好ましい。また、活性エネルギー線硬化型組成物の粘度(25℃)は、45Pa・s以下であればよく、40Pa・s以下であることが好ましい。粘度は、ラレー粘度計L-A型粘度計(日本レオロジー機器(株)製)を用いて測定することができる。なお、活性エネルギー線硬化型組成物は、塗工時に、塗工適性、レベリング性等を付与するために有機溶媒を添加して使用することもできる。
【0050】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、紙基材、各種樹脂シート等の樹脂成形体表面、金属表面、セラミックス表面、木質材表面を含む周知の材料の表面に保護層を形成させるために使用し得る。特に、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、耐スクラッチ性と耐振動性が要求される場合に適している。そのため、活性エネルギー線硬化型組成物は、オーバーコートニス用として特に好適である。また、活性エネルギー線硬化型組成物の塗布手段は特に限定されない。一例を挙げると、活性エネルギー線硬化型組成物は、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、活版印刷、ローラによる塗装、噴霧塗装等、公知の印刷や塗装の手段により、塗布され得る。
【0051】
その後、活性エネルギー線硬化型組成物は、紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化され、塗膜が形成される。得られる塗膜は、耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐振動性が優れる。
【実施例0052】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。表中の各成分および合計に関する欄の数値の単位は「質量%」である。
【0053】
(樹脂ワニスの調製方法)
(樹脂ワニス1の調製)
ダイソーイソダップ(ジアリルイソフタレート樹脂、(株)大阪ソーダ製)30.4質量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート68.9質量部、重合禁止剤IRGANOX1010(ペンタエリトリトール=テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、(株)BASFジャパン製)0.2質量部の比率で仕込み、100℃で熱溶解させて仕掛ワニスを調製した。この仕掛ワニスに対して、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル(株)製、ALCH)0.5質量部を添加し、110℃で1時間撹拌して樹脂ワニス1を調製した。
(樹脂ワニス2~4の調製)
ダイソーイソダップをダイソーダップA(ジアリルフタレート樹脂、(株)大阪ソーダ製)に変更した以外は樹脂ワニス1の調整と同様にして、樹脂ワニス2を調整した。
ダイソーイソダップをダイソーダップS(ジアリルフタレート樹脂、(株)大阪ソーダ製)に変更した以外は樹脂ワニス1の調整と同様にして、樹脂ワニス3を調整した。
ダイソーイソダップをダイソーダップK(ジアリルフタレート樹脂、(株)大阪ソーダ製)に変更した以外は樹脂ワニス1の調整と同様にして、樹脂ワニス4を調整した。
【0054】
<樹脂>
ダイソーイソダップ(ジアリルイソフタレート樹脂、(株)大阪ソーダ製)
ダイソーダップA(ジアリルフタレート樹脂、(株)大阪ソーダ製)
ダイソーイソダップS(ジアリルフタレート樹脂、(株)大阪ソーダ製)
ダイソーイソダップK(ジアリルフタレート樹脂、(株)大阪ソーダ製)
EBECRYL 8402(ウレタンアクリレート樹脂、ダイセル・オルネクス(株)製)
CN104(エポキシアクリレート樹脂、サートマー社製)
CN704(ポリエステルアクリレート樹脂、サートマー社製)
<多官能モノマー>
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
TMP3EOTA(トリメチロールプロパンのエチレンオキシド(3モル)付加物のトリアクリレート)
<光重合開始剤>
OmniradTPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、IGM Resins B.V.社製)
<重合禁止剤>
IRGANOX1010(ペンタエリトリトール=テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、BASFジャパン(株)製)
<ワックス>
CERIDUST 9202F(平均粒子径2.0-6.0μm、クラリアントジャパン(株)製)
<マット剤>
SYLYSIA 550(シリカゲル、平均粒子径3.9μm、富士シリシア化学(株)製)
<その他>
ALCH(エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、川研ファインケミカル(株)製)
表面調整剤:BYK-333(ビックケミー社製)
体質顔料:白艶華CC(炭酸カルシウム、白石工業(株)製)
【0055】
<実施例1~12、比較例1~11>
(活性エネルギー線硬化型組成物の調製)
表1に示される処方にしたがって、各材料を攪拌混合し、それぞれの活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
【0056】
【表1】
【0057】
得られた活性エネルギー線硬化型組成物について、以下の評価を行った。
【0058】
(粘度)
ラレー粘度計L-A型粘度計(日本レオロジー機器(株)製)を用い、得られた組成物の25℃における粘度を測定した。
【0059】
<塗工物の作製>
実施例および比較例の活性エネルギー線硬化型組成物を、RI-2型展色機2分割ロール((株)明製作所製)により、組成物の塗布量が0.1mL/204cm2となるようにUFコート紙(王子マテリア(株)製社)に展色したものを試験片とし、その後、160W/cmのメタルハライドランプ(焦点距離13cm、集光型、1灯、ヘレウス社製)を使用して試験片に紫外線を照射した。
【0060】
(硬化性)
得られた塗工物の塗面の中央に指先で軽く触れたときに、指先に塗膜が付着する度合いを評価した。
(評価基準)
○:塗膜が全く付着しなかった。
△:塗膜が付着しなかったが、タックが認められた。
×:塗膜が付着し、タックが認められた。
【0061】
(耐スクラッチ性)
得られた塗工物を爪の先で擦り、塗膜が削れるまでの回数について、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:塗膜は10回擦っても削れなかった。
△:塗膜は5~10回擦ると削れた。
×:塗膜は、4回以下擦ると削れた。
【0062】
(耐摩擦性)
得られた塗工物を学振型摩擦試験機RT-300((株)大栄科学精器製作所製)にセットし、800gの荷重をかけた上で塗工面同士(対面塗工)を10回学振させた。取り出した塗工物について、試験後の印刷塗膜の残存率を目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:塗膜の取られは無かった。
△:塗膜は、わずかに取られたが、80%以上は残存した。
×:塗膜は、取られ、残存率が80%未満であった。
【0063】
(耐振動性)
得られた塗工物を切り取り、6.0cm×10.8cmの試験片Aと、6.8cm×13.5cmの試験片Bとを作製した。試験片Aを、塗工面が上になるように振動試験機G-8130((株)振研製)にセットした。次いで、試験片Bの非塗工面に2.4kgの重りを取り付け、塗工面同士が接触するように試験片Aの上にセットした。加速度0.3~1.0G、振動周波数3~20Hz、温度10度で振動試験を20分間行なった後、塗膜の状態を目視で観察した。
(評価基準)
○:塗膜の剥がれが無かったか、軽微であった。
△:塗膜の剥がれが観察された。
×:塗膜の著しい剥がれが観察された。
【0064】
(光沢)
村上式デジタル光沢計((株)村上色彩研究所製)を用い、得られた塗工物の展色面の60°反射光沢値を求めた。
【0065】
表1に示されるように、本発明の実施例1~12の活性エネルギー線硬化型組成物は、塗布した後の活性エネルギー線照射による硬化性が優れ、かつ、得られた塗膜の耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐振動性が優れた。特に、実施例10~12の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて得られた塗膜は、光沢を抑えたマット感を示した。