(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041414
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20240319BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240319BHJP
B60G 21/055 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B62D25/08 D
B60K11/04 L
B60G21/055
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146230
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大石 健一
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
3D301
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC06
3D038AC13
3D203AA02
3D203AA09
3D203BA05
3D203BB16
3D203BB17
3D203CB19
3D203CB30
3D203DA05
3D203DA72
3D203DA74
3D203DA83
3D203DA89
3D301DA66
3D301DA71
3D301DA72
3D301DB18
(57)【要約】
【課題】スタビライザとエアガイドパネルとを備えた構成で、車体の前後長を短縮し易くすること。
【解決手段】車体フレーム(11)と、車体フレーム(11)に支持され、左右のフロント側サスペンションアーム(32)につながるスタビライザ(71)を備える車体構造において、車体フレーム(11)は、フロント側サスペンションアーム(32)よりも上方に、アッパフレーム(18)と、アッパフレーム(18)に接続されるクロスメンバ(19)とを有し、クロスメンバ(19)には、車体前方からの外気の向きを変更するエアガイドパネル(51)が接続され、エアガイドパネル(51)は、スタビライザ(71)と上下方向で重なる位置に配置される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(11)と、前記車体フレーム(11)に支持され、左右のフロント側サスペンションアーム(32)につながるスタビライザ(71)を備える車体構造において、
前記車体フレーム(11)は、前記フロント側サスペンションアーム(32)よりも上方に、アッパフレーム(18)と、前記アッパフレーム(18)に接続されるクロスメンバ(19)とを有し、
前記クロスメンバ(19)には、車体前方からの外気の向きを変更するエアガイドパネル(51)が接続され、
前記エアガイドパネル(51)は、前記スタビライザ(71)と上下方向で重なる位置に配置される
車体構造。
【請求項2】
前記クロスメンバ(19)の下方にスタビライザ支持部(19S)を有し、
前記スタビライザ(71)は、前記スタビライザ支持部(19S)に支持される
請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記エアガイドパネル(51)は、熱交換器(42,43)を通過した外気の少なくとも一部を案内する部材であり、
前記熱交換器(42,43)の背側にファン(41F)を有し、
前記スタビライザ支持部(19S)は、車体前面視で、前記ファン(41F)と重ならない位置に配置される
請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記エアガイドパネル(51)は、後下方に傾斜する傾斜部(51B)を備え、
前記傾斜部(51B)は、前記スタビライザ(71)と上下方向で重なる
請求項3に記載の車体構造。
【請求項5】
前記エアガイドパネル(51)は、前記傾斜部(51B)に、後方に開口する開口部(51K)を備える
請求項4に記載の車体構造。
【請求項6】
前記開口部(51K)は、前記ファン(41F)の上下中心よりも上方に位置する
請求項5に記載の車体構造。
【請求項7】
前記開口部(51K)は、前記アッパフレーム(18)よりも下方に位置する
請求項6に記載の車体構造。
【請求項8】
前記開口部(51K)は、前記クロスメンバ(19)に接続される
請求項7に記載の車体構造。
【請求項9】
前記左右のフロント側サスペンションアーム(32)をそれぞれ支持する左右のサスペンションフレーム(17)を有し、
前記左右のサスペンションフレーム(17)は、車体側面視で逆U字形状であり、
前記クロスメンバ(19)は、前記サスペンションフレーム(17)のそれぞれに下側からつながって前記サスペンションフレーム(17)間を架橋する
請求項1から8のいずれか一項に記載の車体構造。
【請求項10】
前記エアガイドパネル(51)は、凹部(51H)を有し、
前記サスペンションフレーム(17)には、前記凹部(51H)に位置するエアガイドパネル支持部材(85)が接続されている
請求項9に記載の車体構造。
【請求項11】
前記クロスメンバ(19)には、左右のサスペンション(31)の一部を構成する左右のダンパー(36)の一端が取り付けられる
請求項9に記載の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体フレームと、車体フレームに支持され、左右のフロント側サスペンションアームにつながるスタビライザを備えるサイドバイサイド車両が知られている(例えば特許文献1)。サイドバイサイド車両(SSV)は、多用途四輪車(MUV)の一種である。また、MUVではない車両には、車体前方からの走行風の向きを変更するエアガイドパネルを備え、このエアガイドパネルによってラジエータを通過する風の向きを変更する車体構造が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10369861号明細書
【特許文献2】特開2022-81237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車体のフロント下部には、ステアリングギアボックス等が存在するので、スタビライザを低い位置に配置することが難しい。さらに、前輪を駆動する機構を有する場合や、地上高を多く確保する必要がある車両の場合、スタビライザを低い位置に配置することがより難しくなる。
仮に、特許文献1,2に記載の構造を組み合わせた場合、スタビライザとエアガイドパネルが前後に並んで配置されるので、車体の前後長が長くなってしまう。車体の前後長が長くなると、旋回性能の低下や前方視界の低下を招いてしまう。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、スタビライザとエアガイドパネルとを備えた構成で、車体の前後長を短縮し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車体フレームと、前記車体フレームに支持され、左右のフロント側サスペンションアームにつながるスタビライザを備える車体構造において、前記車体フレームは、前記フロント側サスペンションアームよりも上方に、アッパフレームと、前記アッパフレームに接続されるクロスメンバとを有し、前記クロスメンバには、車体前方からの走行風の向きを変更するエアガイドパネルが接続され、前記エアガイドパネルは、前記スタビライザと上下方向で重なる位置に配置される車体構造を提供する。
【発明の効果】
【0006】
スタビライザとエアガイドパネルとを備えた構成で、車体の前後長を短縮し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る車体構造を有する不整地走行車両を示す図である。
【
図3】
図2からラジエータユニット及びエアガイドパネルを除いた図である。
【
図4】アッパフレーム及びクロスメンバの一部を周辺構成と共に示した図である。
【
図5】ラジエータユニットを車体前方から周辺構成と共に示した図である。
【
図6】ラジエータユニットを含む車体前部の側断面を示した図である。
【
図7】ラジエータユニットを前方かつ左斜め上方から示した斜視図である。
【
図8】ラジエータユニットを後方かつ左斜め上方から示した斜視図である。
【
図9】ラジエータユニットを後方から示した図である。
【
図10】ラジエータユニットの取付構造を車体左側から示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右、及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ、車体に対する方向と同一である。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る車体構造を有する不整地走行車両を示す図である。不整地走行車両10(以下「車両10」と記載する)は、サイドバイサイド車両(SSV:Side by Side Vehicle)と称され、多用途四輪車両(MUV:Multi Utility Vehicle)に分類される車両である。但し、本発明の車両は、サイドバイサイド車両や、多用途四輪車両に限定されるものではない。
車両10は、骨格となる車体フレーム11と、車体フレーム11を覆うボディ12と、前部左右に設けられた左右一対の前輪13と、後部左右に設けられた左右一対の後輪と、前輪13及び後輪からなる車輪の駆動源となるパワーユニットとを備えている。パワーユニットは、内燃機関やモータ等の任意の駆動源を適用可能である。
【0010】
ボディ12は、乗員空間を構成するキャビン21と、キャビン21の前方に設けられるフロントボディ22とを備える。キャビン21は、車体フレーム11に連結されたロールバー23と、左右一対のドア24を有する。キャビン21内には、乗員が着座する乗員用シート25、乗員用シート25の前方に位置するダッシュボード26、乗員が操作するステアリングホイール27等の操作部材が配置される。ロールバー23は、キャビン21の前部左右から後上方に延びる左右一対のフロントピラー部23Aを有している。
【0011】
フロントボディ22は、車体前部を上方から覆い、外観を構成する外観構成部材、及び、車体前部等を保護する保護部材等として機能する。フロントボディ22の下方には、車体フレーム11の一部を構成するフロントフレーム部11Fと、左右の前輪13を懸架するサスペンション31と、ラジエータユニット41と、ラジエータユニット41の上部に配置されるエアガイドパネル51と、ラジエータユニット41よりも前方に位置するフロントバンパー61等が配置されている。フロントフレーム部11Fの下部には、ステアリングギアボックス、及び、前輪13を駆動する動力伝達機構が配置されている。
【0012】
図2は、車体前部を示す斜視図である。
図3は、
図2からラジエータユニット41及びエアガイドパネル51を除いた図である。説明の便宜上、
図2及び
図3ではフロントボディ22、及びフロントバンパー61等を省略している。
図2及び
図3に示すように、前輪13は、独立懸架式(ダブルウィッシュボーン式)のサスペンション31を介してフロントフレーム部11Fに懸架される。サスペンション31は、フロントフレーム部11F側に車幅方向内側が回動自在に支持されるアッパアーム32及びロアアーム33と、アッパアーム32及びロアアーム33の車幅方向外側に支持されて前輪13を軸支するナックル35と、アッパアーム32とフロントフレーム部11Fとの間に介挿されるダンパー36と、左右の前輪13の上下動差を抑えるスタビライザ71とを備える。
【0013】
フロントフレーム部11Fは、複数本の鋼管を溶接等により接合して形成される。
図3に示すように、フロントフレーム部11Fは、車体下部を前後に延びるロアフレーム15と、ロアフレーム15の上方で前後に延びる左右一対のメインフレーム16と、各メインフレーム16に支持される左右一対のサスペンションフレーム17と、メインフレーム16及びサスペンションフレーム17の上方で車幅方向に延びるアッパフレーム18と、アッパフレーム18に接続され、車幅方向に延びるクロスメンバ19とを備える。
【0014】
ロアフレーム15は、アーム用ブラケット15Aを介してロアアーム33の車幅方向内側端部を回動自在に支持する。サスペンションフレーム17は、車体側面視で逆U字形状に湾曲するフレーム形状に形成され、下部にアーム用ブラケット17Aを介してアッパアーム32の車幅方向内側端部を回動自在に支持する。ナックル35には、動力伝達機構の一部を構成する駆動軸37(
図2,
図3)が回転自在に支持され、駆動軸37の車幅方向外端部が前輪13のハブに連結される。これにより、パワーユニットの動力が、駆動軸37を含む動力伝達機構を介して前輪13に伝達される。この車両10は、四輪駆動で走行可能であるが、四輪駆動と二輪駆動とに切換可能な切換機構を有してもよい。
【0015】
アッパフレーム18は、左右一対のフロントピラー部23A間を架橋するフレームであり、高い剛性を有している。ここで、
図4は、アッパフレーム18及びクロスメンバ19の一部を周辺構成と共に示した図である。
図3及び
図4に示すように、アッパフレーム18には、左右に間隔を空けて鋼板製の左右一対のクロスメンバ支持用ブラケット18Aが設けられる。これらクロスメンバ支持用ブラケット18Aは、アッパフレーム18から前下方に延出しており、クロスメンバ19の左右両端部が下方から当接し、この当接状態を維持するように、クロスメンバ19の下方から締結部材81(
図4)を用いてクロスメンバ19が各クロスメンバ支持用ブラケット18Aに固定される。クロスメンバ19は、下方が開口する門型断面の金属材で形成され、高い剛性を有している。
【0016】
図4に示すように、クロスメンバ19の上面には、左右に間隔を空けて下方に凹むフレーム連結部19Hが設けられる。各フレーム連結部19Hには、左右一対のサスペンションフレーム17が嵌合した状態で、クロスメンバ19と各サスペンションフレーム17とが溶接等で接合される。これにより、クロスメンバ19は、アッパフレーム18を補強する補強フレーム、及び、左右一対のサスペンションフレーム17間を架橋する補強フレームとして機能し、フロントフレーム部11Fの剛性向上に寄与する。
【0017】
クロスメンバ19の車幅方向両端部には、締結部材82を介して、ダンパー36の上部が取り付けられる。さらに、クロスメンバ19における左右のサスペンションフレーム17間には、左右に間隔を空けて左右一対のスタビライザ支持部19Sが設けられる。
スタビライザ支持部19Sは、クロスメンバ19から下方に延出し、所定の締結構造によりスタビライザ71を支持する。なお、スタビライザ支持部19Sの形状等は適宜に変更してもよい。
【0018】
スタビライザ71は、左右一対のスタビライザ支持部19Sに支持されるトーションバー72と、トーションバー72の車幅方向外側端部とアッパアーム32との間を渡す左右一対の連結ロッド73(
図3)とを備える。トーションバー72と連結ロッド73、及び、連結ロッド73とアッパアーム32とは、それぞれボールジョイント等の継手を介して連結される。一方の前輪13に上下動が生じた場合、トーションバー72を介して他方の前輪13にも同様の上下動が生じるので、左右の前輪13の上下動差を抑制することができる。
【0019】
本構成では、高剛性のクロスメンバ19にスタビライザ支持部19Sを設けているので、スタビライザ支持部19Sを支持するための専用の高剛性部材が不要である。しかも、スタビライザ支持部19Sが、クロスメンバ19の下方にスタビライザ71を支持するので、相対的に重量を有するスタビライザ71を車体に対して低く配置でき、車体の重心高を低くし易くなる。さらに、クロスメンバ19の上方に、部品の配置スペース(本構成では、後述するエアガイドパネル51の配置スペース)を確保し易くなる。
【0020】
図5は、ラジエータユニット41を車体前方から周辺構成と共に示した図である。
図5に示すように、ラジエータユニット41の背面には、冷却用のファン41Fが設けられる。ファン41Fを駆動することにより、車体前方からラジエータユニット41に強制的に外気を流すことができる。本構成では、左右一対のスタビライザ支持部19Sが、車体正面視で、ファン41Fよりも左右に位置する。そのため、左右一対のスタビライザ支持部19Sが、車体正面視で、ファン41Fと重ならず、ファン41Fによる外気の流れがスタビライザ支持部19Sで遮られない。これにより、ファン送風量の低下を抑制できる。
【0021】
図6は、ラジエータユニット41を含む車体前部の側断面を示した図である。
図6中の矢印WU,WL等は、車両走行時にラジエータユニット41前方から流入する走行風からなる外気の流れを模式的に示している。なお、ファン41Fによる送風時も略同様の外気の流れとなる。
図7は、ラジエータユニット41を前方かつ左斜め上方から示した斜視図、
図8は、ラジエータユニット41を後方かつ左斜め上方から示した斜視図、
図9は、ラジエータユニット41を後方から示した図である。
図10は、ラジエータユニット41の取付構造を車体左側から示した図である。
【0022】
図6から
図9に示すように、ラジエータユニット41は、ラジエータ42と、コンデンサ43と、ファン41Fと、これらを支持するケーシング45とを備える。ラジエータ42は、パワーユニットの冷却水を外気で冷却するための熱交換器であり、コンデンサ43は、エアコンの高圧冷媒を外気で冷却するための熱交換器である。つまり、この車両10は、キャビン21内を冷却(空調)するためのエアコンを備え、エアコンによる空調、及び、パワーユニットの冷却を適切に行うために、ラジエータユニット41に十分に外気を流すことが望まれる。
【0023】
ラジエータユニット41は、矩形薄型形状のラジエータ42を前方に向けて配置し、このラジエータ42の前方に、矩形薄型形状のコンデンサ43を平行に配置し、このラジエータ42の後方に、プロペラファンからなるファン41Fを配置した構造である。
図7から
図9に示すように、ケーシング45は、枠形状を有するコンデンサシュラウド45Aと、コンデンサシュラウド45Aの後方に連なる枠形状のラジエータシュラウド45Bと、ラジエータシュラウド45Bの後方に連なり、ファン41Fを支持するファンケーシング45Cとを備えている。ケーシング45は、フロントフレーム部11Fに固定されることにより、コンデンサ43及びラジエータ42を車体前方に向けた姿勢で車両10に支持する。
【0024】
ケーシング45の形状及び構造は特に限定されるものではないが、本構成では、ケーシング45のうち、少なくともコンデンサシュラウド45Aとラジエータシュラウド45Bとが別体に形成される。
図7及び
図8に示すように、ラジエータシュラウド45Bの左右には、左右に張り出す張出部45B1が設けられ、コンデンサシュラウド45Aの左右には、各張出部45B1の前方に対応する位置にシュラウド固定用のステー部45A1が設けられる。これら張出部45B1及びステー部45A1が、締結構造等の適宜な接合構造で固定されることによって、コンデンサシュラウド45Aとラジエータシュラウド45Bとが連結される。
【0025】
図10に示すように、ラジエータシュラウド45Bの左右には、後方に突出するケーシング固定用のステー部45B2が設けられる。各ステー部45B2が、左右のサスペンションフレーム17に設けられたラジエータユニット用のブラケット17Bに、車幅方向外側から所定の締結部材により固定される。
左右のブラケット17Bには、更に、ラジエータユニット41の上部に位置するエアガイドパネル51に設けられたエアガイドパネル側ステー部51S(
図10)、及び、エアガイドパネル支持部材85(
図10)が、車幅方向外側から所定の締結部材によって固定される。エアガイドパネル側ステー部51Sは、エアガイドパネル51の左右の側板部51Cから下方にそれぞれ延出し、各側板部51Cの前後位置で略中央にある。本構成では、共通の締結部材によって、エアガイドパネル側ステー部51及び、エアガイドパネル支持部材85が、ブラケット17Bに締結され、つまり、共締めされる。そのため、エアガイドパネル51及びエアガイドパネル支持部材85の固定に必要な部品点数及び作業量を低減できると共に、固定に必要なスペースを省スペース化できる。
【0026】
次いで、エアガイドパネル51、及びエアガイドパネル支持部材85について説明する。
エアガイドパネル51は、ラジエータユニット41の上部に配置され、ラジエータユニット41を通過した外気の向きを変更する部材である。このエアガイドパネル51は、ラジエータユニット41の上部に締結構造等によって固定される上板部51Aと、上板部51Aの後縁から後下方に傾斜する傾斜板部51Bと、上板部51A及び傾斜板部51Bの両端部間を覆う左右の側板部51Cとを一体に備えている。側板部51Cは、ラジエータシュラウド45Bから左右に張り出す張出部45B1に対応する位置に、後方に凹む後方凹み部51Dを有している。後方凹み部51Dは、張出部45B1に対し、後方から嵌まることによって、ラジエータユニット41に対し、エアガイドパネル51の上下位置等を位置決めする。また、後方凹み部51Dを、張出部45B1を基準にして前方にスライドさせることによって、エアガイドパネル51をラジエータユニット41に容易に位置決めできる。
【0027】
図9に示すように、傾斜板部51Bは、ラジエータユニット41の幅方向全体に渡って、ラジエータユニット41の上部後方を覆うように設けられ、車体背面視でファン41Fと重ならない位置まで延在している。傾斜板部51Bは、車体背面視でファン41Fの上部と重なる領域に、ラジエータ42の略幅全体に渡って前後方向に開口する開口部51Kを一体に有している。開口部51Kは、ファン41Fの上下中心FCよりも上方に位置している。
【0028】
図2及び
図3に示すように、エアガイドパネル支持部材85は、下方に開放する逆U字形状の棒状部材で形成され、上述したように、サスペンションフレーム17に設けられたラジエータユニット用のブラケット17B(
図10)に固定されている。エアガイドパネル支持部材85の上部は、エアガイドパネル51の上部後方に位置している。
図8及び
図6に示すように、エアガイドパネル51の上部には、エアガイドパネル支持部材85の上部が嵌まる凹部51Hが設けられている。この凹部51Hに、エアガイドパネル支持部材85が位置することで、エアガイドパネル51が後方へ移動不能に支持される。
【0029】
図6に示すように、本構成では、ラジエータユニット41の上部後方に、エアガイドパネル51の傾斜板部51Bが位置するので、車体前方からラジエータユニット41に流入する外気のうち、エアガイドパネル51に向けて流れる上側の外気WUについては、コンデンサ43及びラジエータ42を通過した後、
図6に矢印W1で示すように、傾斜板部51Bに沿って後下方に向けて案内される。そのため、ラジエータユニット41で温度上昇した外気が、傾斜板部51Bの後方に流れる事態が抑制され、乗員側に高温の外気が流れないようにすることができる。
仮に、エアガイドパネル51が無い場合、
図6に二点鎖線の矢印WXで示すように、ダッシュボード26側に相当する乗員側に高温の外気が流れてしまい、キャビン21内の温度上昇を招きやすくなる。
【0030】
図8に示すように、エアガイドパネル51の傾斜板部51Bのうち、開口部51Kよりも上方の部分は、後下方に傾斜する傾斜形状に形成されている。一方、傾斜板部51Bのうち、開口部51Kを挟んで後下部の部分は、開口部51Kの下線に沿って車幅方向に延在すると共に、後方に向けて水平に延びる板状部材51Lに形成されている。この板状部材51Lは、開口部51Kの下縁を仕切る仕切部材、及び、エアガイドパネル51の後下部を構成する。
この板状部材51Lは、クロスメンバ19の上面に位置し、締結構造等の適宜な接合構造を用いて、クロスメンバ19に固定される。エアガイドパネル51を、高剛性のクロスメンバ19に固定するので、エアガイドパネル51の支持強度が向上する。
【0031】
本構成では、
図10に示すように、エアガイドパネル51は、クロスメンバ19の上方、かつ、上下方向でクロスメンバ19と重なる位置に位置する。また、スタビライザ71は、クロスメンバ19の下方、かつ、クロスメンバ19近傍に位置し、上下方向でエアガイドパネル51と重なる。
エアガイドパネル51がスタビライザ71とが上下方向で重なるので、これらの配置に要する前後スペースを小さくできる。したがって、エアガイドパネル51とスタビライザ71が前後に並んで配置される構成と比べ、車体の前後長を短縮できる。
【0032】
また、エアガイドパネル51に、後方に開口する開口部51Kを設けているので、
図6に矢印W1Aで示すように、傾斜板部51Bに沿って後下方に向けて案内される外気W1の一部を、開口部51Kから後方に逃がすことができる。
なお、開口部51Kは、エアガイドパネル51の後下部に設けられており、換言すると、傾斜板部51Bの最下流位置に設けられているので、ダッシュボード26側である乗員側に高温の外気が流れる事態を十分に抑制できる。そのため、キャビン21内の温度上昇を抑制できる。
【0033】
図6に示すように、エアガイドパネル51に向けて流れる下側の外気WLは、コンデンサ43及びラジエータ42を通過した後、傾斜板部51Bに案内される外気W1と合流する外気W2となる。本構成では、外気W1の一部を、開口部51Kから後方に逃がしているので、外気W1,W2が合流する箇所の流速低下を低減でき、例えば、コンデンサ43及びラジエータ42の中央領域を通過する外気の流速低下の低減に有効であった。これにより、コンデンサ43及びラジエータ42の中央領域等を通過する外気の流速を高めることができ、コンデンサ43及びラジエータ42からなる熱交換器の利用率を高め、エアコンによる空調、及びパワーユニットの冷却に有利となる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、車体フレーム11は、フロント側サスペンションアームの一つであるアッパアーム32よりも上方に、アッパフレーム18と、アッパフレーム18に接続され、車幅方向に延びるクロスメンバ19とを有している。そして、クロスメンバ19には、車体前方からの外気の向きを変更するエアガイドパネル51が接続され、エアガイドパネル51は、スタビライザ71と上下方向で重なる位置に配置されている。
この構成によれば、アッパフレーム18に接続されたクロスメンバ19を利用してエアガイドパネル51を支持し、かつ、スタビライザ71を備えた車体構造で、エアガイドパネル51及びスタビライザ71の配置に要する前後スペースを小さくでき、車体の前後長を短縮し易くなる。車体の前後長を短縮することで、旋回性能の向上や前方視界の向上等を図ることができる。
【0035】
また、クロスメンバ19の下方にスタビライザ支持部19Sを有し、スタビライザ71は、スタビライザ支持部19Sに支持される。この構成によれば、スタビライザ71がクロスメンバ19の下方に位置する分、車体の重心高を低くし易くなる。また、クロスメンバ19に対してエアガイドパネル51とスタビライザ71を上下に振り分けて配置でき、スタビライザ71とエアガイドパネル51との接触を抑制し易くなる。
【0036】
また、エアガイドパネル51は、コンデンサ43及びラジエータ42を通過した高温の外気の少なくとも一部を案内する部材であり、コンデンサ43及びラジエータ42の背側にファン41Fを有している。そして、スタビライザ支持部19Sは、車体前面視で、ファン41Fと重ならない位置に配置されている。この構成によれば、ファン41Fによる外気の流れをスタビライザ支持部19Sで遮らず、ファン送風量の低下を抑制できる。
【0037】
また、エアガイドパネル51は、後下方に傾斜する傾斜板部51Bを備え、傾斜板部51Bは、スタビライザ71と上下方向で重なる。この構成によれば、傾斜板部51Bにより、高温の外気が、エアガイドパネル51後方の乗員側に流れる事態を抑制でき、かつ、傾斜板部51Bとスタビライザ71の配置に要する前後スペースを抑制できる。また、スタビライザ71をエアガイドパネル51の下方に配置する分、車体の低重心化を図り易くなる。
なお、傾斜板部51Bは本開示の「傾斜部」に相当する。傾斜部は、傾斜板部51Bの形状、及び構造に限定されず、後下方に傾斜し、車体前方からの外気を案内する適宜な形状、及び構造を採用可能である。
【0038】
また、エアガイドパネル51は、傾斜板部51Bに、後方に開口する開口部51Kを備える。この構成によれば、傾斜板部51Bに案内される外気の少なくとも一部を開口部51Kから後方に逃がすことができ、傾斜板部51Bに案内される外気W1と、他の外気W2とが合流する箇所の流速低下を低減できる。これにより、コンデンサ43及びラジエータ42を通過する外気の流速を高め、コンデンサ43及びラジエータ42の利用率を高めることができる。
【0039】
また、開口部51Kは、ファン41Fの上下中心FCよりも上方に位置する。この構成によれば、傾斜板部51Bに案内される外気の少なくとも一部を、ファン41F後方の外気W2に合流する前に逃がすことができ、ファン送風量の低下を抑制できる。
また、開口部51Kは、アッパフレーム18よりも下方に位置する。この構成によれば、開口部51Kを通過した高温の外気がアッパフレーム18に当たって上昇する事態を抑制でき、高温の外気が乗員側に流れる事態を抑制できる。
【0040】
また、開口部51Kは、クロスメンバ19に接続される。この構成によれば、開口部51Kの箇所はエアガイドパネル51の剛性が相対的に低下し易い部分となるが、開口部51Kがクロスメンバ19に接続されるので、開口部51Kの変形を抑制できる。
また、開口部51Kの下縁を仕切る仕切部材として機能する板状部材51Lが、後方に延出するので、開口部51Kを通過した外気が、傾斜板部51Bに案内された外気に再合流する事態を抑制できる。これにより、コンデンサ43及びラジエータ42を通過する外気の流速をより高め易くなる。
【0041】
また、左右のアッパアーム32をそれぞれ支持する左右のサスペンションフレーム17を有し、左右のサスペンションフレーム17は、車体側面視で逆U字形状であり、クロスメンバ19は、各サスペンションフレーム17のそれぞれに下側からつながってサスペンションフレーム17間を架橋する。この構成によれば、サスペンションフレーム17に下側から作用する荷重(例えばダンパー36からの入力荷重)に対する十分なフレーム強度を得やすくなると共に、車体の重心高を低くし易くなる。また、アッパフレーム18と、クロスメンバ19と、サスペンションフレーム17とで鳥居形状(強固な門型形状と言うこともできる)を形成できるので、高いフレーム剛性を得やすくなる。
【0042】
また、エアガイドパネル51は、凹部51Hを有し、サスペンションフレーム17には、凹部51Hに位置するエアガイドパネル支持部材85が接続されている。この構成によれば、エアガイドパネル支持部材85によって、エアガイドパネル51の移動を規制でき、エアガイドパネル51の支持力を高めることができる。
さらに、クロスメンバ19には、左右のサスペンション31の一部を構成する左右のダンパー36の一端が取り付けられる。この構成によれば、左右のダンパー36から作用する荷重を、クロスメンバ19及びサスペンションフレーム17を含む車体フレーム11で受け止め、車体フレーム11の過度な変形を抑制し易くなる。
【0043】
上記実施形態は本発明の一態様を示すものであり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、車両10の各部の形状、及び構成は適宜に変更してもよい。具体例を挙げると、ラジエータユニット41は、ラジエータ42及びコンデンサ43からなる複数の熱交換器を備える場合を例示したが、熱交換器の数及び種類は適宜に変更してもよい。また、パワーユニットも様々な駆動源を利用可能であり、パワーユニットが水冷式でない場合、ラジエータを備えない構成となる。また、車両1-がエアコンを備えない場合、コンデンサを備えない構成となる。また、熱交換器として、パワーユニット等を潤滑するオイルを外気で冷却するオイルクーラを備えるようにしてもよい。なお、ラジエータユニット41は、熱交換器ユニット、及び冷却器と表記することも可能である。
【0044】
また、サスペンション31は、ダブルウィッシュボーン式以外でもよいし、車体フレーム11の各部の形状や構造も適宜に変更してもよい。また、本発明は、車体フレーム11に支持され、左右のサスペンションアームにつながるスタビライザ71と、車体前方からの外気の向きを変更するエアガイドパネル51とを備える車体構造に広く適用可能である。
【0045】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0046】
(構成1)車体フレームと、前記車体フレームに支持され、左右のフロント側サスペンションアームにつながるスタビライザを備える車体構造において、前記車体フレームは、前記フロント側サスペンションアームよりも上方に、アッパフレームと、前記アッパフレームに接続されるクロスメンバとを有し、前記クロスメンバには、車体前方からの外気の向きを変更するエアガイドパネルが接続され、前記エアガイドパネルは、前記スタビライザと上下方向で重なる位置に配置される車体構造。
この構成によれば、アッパフレームに接続されたクロスメンバを利用してエアガイドパネルを支持すると共にスタビライザを備えた構成で、エアガイドパネル及びスタビライザの配置に要する前後スペースを小さくでき、車体の前後長を短縮し易くなる。車体の前後長を短縮することで、旋回性能の向上や前方視界の向上を図ることができる。
【0047】
(構成2)前記クロスメンバの下方にスタビライザ支持部を有し、前記スタビライザは、前記スタビライザ支持部に支持される構成1に記載の車体構造。
この構成によれば、スタビライザがクロスメンバの下方に位置する分、車体の重心高を低くし易くなる。また、クロスメンバに対してエアガイドパネルとスタビライザを上下に振り分けて配置でき、スタビライザとエアガイドパネルとの接触を抑制し易くなる。
【0048】
(構成3)前記エアガイドパネルは、熱交換器を通過した外気の少なくとも一部を案内する部材であり、前記熱交換器の背側にファンを有し、前記スタビライザ支持部は、車体前面視で、前記ファンと重ならない位置に配置される構成2に記載の車体構造。
この構成によれば、ファンによる外気の流れをスタビライザ支持部で遮らず、ファン送風量の低下を抑制でき、熱交換器に十分な外気を流し易くなる。
【0049】
(構成4)前記エアガイドパネルは、後下方に傾斜する傾斜部を備え、前記傾斜部は、前記スタビライザと上下方向で重なる構成1から3のいずれか一項に記載の車体構造。
この構成によれば、傾斜部により、ラジエータ等の熱交換器を通過して高温となった外気が、エアガイドパネル後方の乗員側に流れる事態を抑制でき、かつ、傾斜部とスタビライザの配置に要する前後スペースを抑制できる。また、スタビライザをエアガイドパネルよりも下方に配置することで、車体の低重心化を図り易くなる。
【0050】
(構成5)前記エアガイドパネルは、前記傾斜部に、後方に開口する開口部を備える構成4に記載の車体構造。
この構成によれば、傾斜部に案内される外気の少なくとも一部を開口部から後方に逃がし、傾斜部に案内される外気と、他の外気とが合流する箇所の流速低下を低減できる。これにより、熱交換器を通過する外気の流速を高め、熱交換器の利用率を高めることができる。
【0051】
(構成6)前記開口部は、前記ファンの上下中心よりも上方に位置する構成5に記載の車体構造。
この構成によれば、傾斜部に案内される外気の少なくとも一部を、ファン後方の外気に合流する前に逃がすことができ、ファン送風量の低下を抑制できる。
【0052】
(構成7)前記開口部は、前記アッパフレームよりも下方に位置する構成5又は6に記載の車体構造。
この構成によれば、開口部を通過した高温の外気がアッパフレームにあたって上昇する事態を抑制でき、高温の外気が乗員側に流れる事態を抑制できる。
【0053】
(構成8)前記開口部は、前記クロスメンバに接続される構成1から7のいずれか一項に記載の車体構造。
この構成によれば、開口部の箇所はエアガイドパネルの剛性が相対的に低下し易い部分となるが、開口部がクロスメンバに接続されるので、開口部の変形を抑制できる。
【0054】
(構成9)前記左右のフロント側サスペンションアームをそれぞれ支持する左右のサスペンションフレームを有し、前記左右のサスペンションフレームは、車体側面視で逆U字形状であり、前記クロスメンバは、前記サスペンションフレームのそれぞれに下側からつながって前記サスペンションフレーム間を架橋する構成1から8のいずれか一項に記載の車体構造。
この構成によれば、サスペンションフレームに下側から作用する荷重に対する十分なフレーム強度を得やすくなると共に、車体の重心高を低くし易くなる。アッパフレームと、クロスメンバと、サスペンションフレームとで鳥居形状(強固な門型形状)を形成できるので、高いフレーム剛性を得やすくなる。
【0055】
(構成10)前記エアガイドパネルは、凹部を有し、前記サスペンションフレームには、前記凹部に位置するエアガイドパネル支持部材が接続されている構成9に記載の車体構造。
この構成によれば、エアガイドパネル支持部材によって、エアガイドパネルの移動を規制でき、エアガイドパネルの支持力を高めることができる。
【0056】
(構成11)前記クロスメンバには、左右のサスペンションの一部を構成する左右のダンパーの一端が取り付けられる構成1から10のいずれか一項に記載の車体構造。
この構成によれば、左右のダンパーから作用する荷重を、クロスメンバ及びサスペンションフレームを含む車体フレームで受け止め、車体フレームの過度な変形を抑制し易くなる。
【符号の説明】
【0057】
10 不整地走行車両
11 車体フレーム
11F フロントフレーム部
12 ボディ
13 前輪(車輪)
17 サスペンションフレーム
18 アッパフレーム
19 クロスメンバ
19S スタビライザ支持部
25 乗員用シート
26 ダッシュボード
27 ステアリングホイール
31 サスペンション
32 アッパアーム(フロント側サスペンションアーム)
33 ロアアーム
36 ダンパー
41 ラジエータユニット(熱交換器ユニット、冷却器)
41F ファン
42 ラジエータ(熱交換器)
43 コンデンサ(熱交換器)
45 ケーシング
51 エアガイドパネル
51A 上板部
51B 傾斜板部(傾斜部)
51C 側板部
51K 開口部
51H 凹部
71 スタビライザ
85 エアガイドパネル支持部材