(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041418
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/26 20060101AFI20240319BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240319BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240319BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240319BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20240319BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20240319BHJP
【FI】
B60W10/26 900
B60W10/26 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60L50/16
B60L50/61
B60L58/13
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146236
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 健
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB19
3D202BB53
3D202DD00
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BC13
5H125BD17
5H125EE65
(57)【要約】
【課題】コストをかけることなく、下り走行時における充電効率の低下を抑制できる車両制御装置を提供すること。
【解決手段】車両制御装置は、大気圧センサと、エンジンと、バッテリと、電気モータと、を備え、エンジンと電気モータの両方を用いて走行可能な車両で用いられる車両制御装置であって、大気圧センサにより検知された大気圧を取得する取得部と、大気圧に基づいて制御を行う制御部と、を有する。制御部は、大気圧が第1閾値以上である場合、バッテリの充電状態を第1設定値に設定し、大気圧が第1閾値から徐々に低下するにしたがって、エンジンの出力比に対するモータの出力比を増加させ、徐々に低下した大気圧が第2閾値となった場合、バッテリの充電状態を第1設定値よりも小さい第2設定値に維持させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧を検知する大気圧センサと、燃料供給により動作するエンジンと、回生エネルギーによる充電が可能なバッテリと、前記バッテリからの電力供給により動作する電気モータと、を備え、前記エンジンと前記電気モータの両方を用いて走行可能な車両で用いられる車両制御装置であって、
前記大気圧センサにより検知された大気圧を取得する取得部と、
前記大気圧に基づいて制御を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記大気圧が第1閾値以上である場合、前記バッテリの充電状態を第1設定値に設定し、
前記大気圧が前記第1閾値から徐々に低下するにしたがって、前記エンジンの出力比に対する前記電気モータの出力比を増加させ、
徐々に低下した前記大気圧が第2閾値となった場合、前記バッテリの充電状態を前記第1設定値よりも小さい第2設定値に維持させる、
車両制御装置。
【請求項2】
前記第1閾値は、前記車両が平地に存在していると判断可能な大気圧であり、
前記第2閾値は、前記車両が高地に存在していると判断可能な大気圧である、
請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)といった、エンジンと電気モータの両方を用いて走行可能な車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した車両では、平地と高地のどちらを走行するかに関わらず、バッテリの充電状態(SOC:State Of Charge)の目標値は一定に設定されている。そのため、車両が、高地から下り坂を走行する場合において、走行開始時におけるバッテリの充電状態が高いと、走行中にバッテリの容量が飽和状態となり、回生エネルギーによる充電効率が低下してしまう。
【0005】
その一方で、例えば、GPS(Global Positioning System)と地図情報を用いることにより、車両が平地にいるか高地にいるかを判定し、それに基づいて上記目標値を制御することが考えられるが、コストがかかってしまう。
【0006】
本開示の一態様の目的は、コストをかけることなく、車両が下り坂を走行する場合における充電効率の低下を抑制できる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る車両制御装置は、大気圧を検知する大気圧センサと、燃料供給により動作するエンジンと、回生エネルギーによる充電が可能なバッテリと、前記バッテリからの電力供給により動作する電気モータと、を備え、前記エンジンと前記電気モータの両方を用いて走行可能な車両で用いられる車両制御装置であって、前記大気圧センサにより検知された大気圧を取得する取得部と、前記大気圧に基づいて制御を行う制御部と、を有し、前記制御部は、前記大気圧が第1閾値以上である場合、前記バッテリの充電状態を第1設定値に設定し、前記大気圧が前記第1閾値から徐々に低下するにしたがって、前記エンジンの出力比に対する前記電気モータの出力比を増加させ、徐々に低下した前記大気圧が第2閾値となった場合、前記バッテリの充電状態を前記第1設定値よりも小さい第2設定値に維持させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、コストをかけることなく、車両が下り坂を走行する場合における充電効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る車両制御装置の構成例を模式的に示す図
【
図2】本開示の実施の形態に係る車両が上り坂を走行する場合における標高、大気圧、およびSOCぞれぞれの変化を示すグラフ
【
図3】本開示の実施の形態に係る車両が下り坂を走行する場合における標高、大気圧、およびSOCぞれぞれの変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1を用いて、本実施の形態の車両制御装置100の構成について説明する。
図1は、本実施の形態の車両制御装置100の構成例を模式的に示す図である。
【0012】
図1に示す車両制御装置100は、図示しない車両(例えば、自動車)に搭載される。この車両は、大気圧を検知する大気圧センサと、燃料供給により動作するエンジンと、回生エネルギーによる充電が可能なバッテリと、バッテリからの電力供給により動作する電気モータと、を備え(いずれも図示略)、エンジンと電気モータの両方を用いて走行可能な車両である。
【0013】
なお、図示は省略するが、車両制御装置100は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置、コンピュータプログラムを格納したハードディスク、フラッシュメモリなどの補助記憶装置、それらを接続するバス等を有する。以下に説明する車両制御装置100の機能は、CPUが補助記憶装置から読み出したコンピュータプログラムを主記憶装置のRAMに展開して実行することにより実現される。車両制御装置100は、例えば、車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)で実現されてもよい。
【0014】
図1に示すように、車両制御装置100は、取得部110と、制御部120と、を有する。
【0015】
取得部110は、大気圧センサにより検知された大気圧の値(以下、単に大気圧という)を取得する。なお、大気圧センサは、例えば、車両のエンジンの制御用に搭載されたものである。
【0016】
制御部120は、取得部110により取得された大気圧に基づいて所定の制御を行う。以下、この制御の具体例について、
図2、
図3を用いて説明する。ここでは、車両が、平地、上り坂、高地、下り坂の順に走行する場合を例に挙げる。
【0017】
図2の上図は、車両が平地から上り坂を経て高地へ到着するまでの標高(点線)および大気圧(一点鎖線)を示し、
図2の下図は、その場合におけるSOC(実線)を示している。すなわち、
図2の上図と下図とは対応している。
【0018】
図3の上図は、車両が高地から下り坂を経て低地へ到着するまでの標高(点線)および大気圧(一点鎖線)を示し、
図3の下図は、その場合におけるSOC(実線)を示している。すなわち、
図3の上図と下図とは対応している。なお、
図3の下図において、二点鎖線は、従来の制御(平地、高地にかかわらず、SOCの目標値が一定である場合の制御)におけるSOCを示している。
【0019】
図2に示すように、車両が平地にいる間、SOCは一定に維持される。
【0020】
この場合、制御部120は、大気圧が予め定められた第1閾値以上であるか否かを判定する。第1閾値は、車両が平地に存在していると判断可能な大気圧である。
【0021】
大気圧が第1閾値以上である場合、制御部120は、SOCを予め定められた第1設定値に設定し、その第1設定値が維持されるようにバッテリを制御する。第1設定値は、例えば、所定レベルの登坂が可能となる比較的高めのSOCである。
【0022】
図2に示すように、車両が上り坂を走行する間、SOCは徐々に低下する。
【0023】
この場合、制御部120は、大気圧が第1閾値から徐々に低下するにしたがって、エンジンの出力比に対する電気モータの出力比を増加させる。よって、電気モータの消費電力量が徐々に多くなり、SOCが徐々に低下する。
【0024】
図2に示すように、車両が高地に到達すると、SOCは一定に維持される。
【0025】
この場合、制御部120は、徐々に低下する大気圧が予め定められた第2閾値に到達したか否かを判定する。第2閾値は、第1の閾値よりも小さく、車両が高地に存在していると判断可能な大気圧である。
【0026】
大気圧が第2閾値に到達した場合、制御部120は、SOCを予め定められた第2設定値に設定し、その第2設定値が維持されるようにバッテリを制御する。第2設定値は、第1設定値よりも低い値である。第2設定値は、例えば、所定レベルの降坂の際に回生エネルギーによる充電が可能となる比較的低めのSOCである。
【0027】
図3に示すように、車両が下り坂を走行する間、回生エネルギーの充電により、SOCは徐々に増加する。この場合、回生制限(バッテリが満充電状態になった場合、電気モータが出力可能な最大トルクを、バッテリが満充電状態ではない場合に比べて小さくする処理)は行われない。その理由は、高地にいるときのSOCが比較的低めの第2設定値に維持されるためである。これに対して、従来の制御では、
図3の下図の二点鎖線に示すように、高地にいるときのSOCが高めであるので、回生制限が行われることとなり、充電効率が低下する。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態の車両制御装置100は、大気圧を検知する大気圧センサと、燃料供給により動作するエンジンと、回生エネルギーによる充電が可能なバッテリと、バッテリからの電力供給により動作する電気モータと、を備え、エンジンと電気モータの両方を用いて走行可能な車両で用いられる車両制御装置であって、大気圧センサにより検知された大気圧を取得する取得部110と、大気圧に基づいて制御を行う制御部120と、を有し、制御部120は、大気圧が第1閾値以上である場合、バッテリの充電状態(SOC)を第1設定値に設定し、大気圧が第1閾値から徐々に低下するにしたがって、エンジンの出力比に対する電気モータの出力比を増加させ、徐々に低下した大気圧が第2閾値となった場合、バッテリの充電状態を第1設定値よりも小さい第2設定値に維持させることを特徴とする。
【0029】
この特徴により、車両が高地にいる間、SOCが低く維持されるため、下り坂の走行時における充電に備えることが可能となる。また、例えばGPSや地図情報を用いる必要が無く、大気圧センサだけで実現できるため、コストがかからない。すなわち、本実施の形態によれば、コストをかけることなく、車両が下り坂を走行する場合における充電効率の低下を抑制できる。
【0030】
また、車両が平地にいる間、SOCが高く維持されるため、大気圧の低下に伴うエンジン出力の低下に備え、モータ出力を増加させることが可能となる。よって、上り坂の走行時におけるドライバビリティの低下を軽減することができる。
【0031】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である
【産業上の利用可能性】
【0032】
本開示の車両制御装置は、エンジンと電気モータの両方を用いて駆動する車両の制御に有用である。
【符号の説明】
【0033】
100 車両制御装置
110 取得部
120 制御部
【手続補正書】
【提出日】2023-09-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧を検知する大気圧センサと、燃料供給により動作するエンジンと、回生エネルギーによる充電が可能なバッテリと、前記バッテリからの電力供給により動作する電気モータと、を備え、前記エンジンと前記電気モータの両方を用いて走行可能な車両で用いられる車両制御装置であって、
前記大気圧センサにより検知された大気圧を取得する取得部と、
前記大気圧に基づいて制御を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記大気圧が第1閾値以上である場合、前記バッテリの充電状態を第1設定値に設定し、
前記大気圧が前記第1閾値から徐々に低下するにしたがって、前記バッテリの充電状態を徐々に低下させるように前記エンジンの出力比に対する前記電気モータの出力比を増加させ、
徐々に低下した前記大気圧が第2閾値となった場合、前記バッテリの充電状態を前記第1設定値よりも小さい第2設定値に維持させる、
車両制御装置。
【請求項2】
前記第1閾値は、前記車両が平地に存在していると判断可能な大気圧であり、
前記第2閾値は、前記車両が高地に存在していると判断可能な大気圧である、
請求項1に記載の車両制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示の一態様に係る車両制御装置は、大気圧を検知する大気圧センサと、燃料供給により動作するエンジンと、回生エネルギーによる充電が可能なバッテリと、前記バッテリからの電力供給により動作する電気モータと、を備え、前記エンジンと前記電気モータの両方を用いて走行可能な車両で用いられる車両制御装置であって、前記大気圧センサにより検知された大気圧を取得する取得部と、前記大気圧に基づいて制御を行う制御部と、を有し、前記制御部は、前記大気圧が第1閾値以上である場合、前記バッテリの充電状態を第1設定値に設定し、前記大気圧が前記第1閾値から徐々に低下するにしたがって、前記バッテリの充電状態を徐々に低下させるように前記エンジンの出力比に対する前記電気モータの出力比を増加させ、徐々に低下した前記大気圧が第2閾値となった場合、前記バッテリの充電状態を前記第1設定値よりも小さい第2設定値に維持させる。