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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041422
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】光送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2507 20130101AFI20240319BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20240319BHJP
【FI】
H04B10/2507
H04B10/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146240
(22)【出願日】2022-09-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G通信インフラを高効率に構成するメトロアクセス光技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 和樹
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AA51
5K102KA16
5K102KA42
5K102MA01
5K102MB01
5K102MC07
5K102MD03
5K102PA01
5K102PB01
5K102PH21
5K102PH31
5K102PH41
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】簡易な方法で反射光の影響を抑える技術を提供する。
【解決手段】光伝送路を介して光受信装置に接続される光送信装置は、前記光受信装置に送信する送信信号に基づき変調光を生成する光変調手段と、前記変調光の偏波を第1偏波又は前記第1偏波とは直交する第2偏波にする偏波調整手段と、前記変調光の偏波が切替期間ごとに前記第1偏波と前記第2偏波との間で切り替わる様に前記偏波調整手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記光伝送路において反射することなく前記光受信装置に到達する直接光と、前記光伝送路において偶数回だけ反射して前記光受信装置に到達する1つ以上の反射光の内の第1反射光との遅延差に基づき、前記切替期間を設定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路を介して光受信装置に接続される光送信装置であって、
前記光受信装置に送信する送信信号に基づき変調光を生成する光変調手段と、
前記変調光の偏波を第1偏波又は前記第1偏波とは直交する第2偏波にする偏波調整手段と、
前記変調光の偏波が切替期間ごとに前記第1偏波と前記第2偏波との間で切り替わる様に前記偏波調整手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記光伝送路において反射することなく前記光受信装置に到達する直接光と、前記光伝送路において偶数回だけ反射して前記光受信装置に到達する1つ以上の反射光の内の第1反射光との遅延差に基づき、前記切替期間を設定する、光送信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記遅延差を奇数分の1とした期間を前記切替期間に設定する、請求項1に記載の光送信装置。
【請求項3】
前記第1反射光は、前記1つ以上の反射光の内の最もパワーの大きい反射光である、請求項2に記載の光送信装置。
【請求項4】
前記制御手段は、複数の前記第1反射光それぞれの前記遅延差を奇数分の1とした期間に基づき前記切替期間を設定する、請求項1に記載の光送信装置。
【請求項5】
前記制御手段は、複数の前記第1反射光それぞれの前記遅延差を奇数分の1とした期間と前記切替期間との差の合計が最も小さくなる様に前記切替期間を設定する、請求項4に記載の光送信装置。
【請求項6】
前記光伝送路は、複数の接続点を有し、
前記1つ以上の反射光は、前記複数の接続点の内の2つの接続点での反射により生じる、請求項1に記載の光送信装置。
【請求項7】
前記複数の接続点の位置及び前記複数の接続点における反射量を示す反射点情報を格納する手段を備えており、
前記制御手段は、前記1つ以上の反射光の内の前記第1反射光と、前記第1反射光と前記直接光との前記遅延差と、を前記反射点情報に基づき判定する、請求項6に記載の光送信装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記光受信装置から受信する前記変調光を復調した結果の品質に基づき前記切替期間を変更する、請求項1から7のいずれか1項に記載の光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光通信システムの光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送路には光ファイバ同士を接続するための複数の接続点が存在する。光ファイバ同士は、光コネクタや、融着により接続される。この接続点において、光送信装置から光受信装置に送信される変調光の一部は、光送信装置に向けて反射される。光送信装置に向けて反射された変調光の一部は、さらに、別の接続点において光受信装置に向けて反射され得る。光送信装置は、送信した変調光とは逆向きに伝搬される光を阻止するアイソレータ等を有するため、反射した変調光が光送信装置に到達しても問題はない。一方、光受信装置は、光伝送路において反射することなく光受信装置に到達した変調光(以下、直接光と表記する)と、光伝送路において偶数回だけ反射して光受信装置に到達した変調光(以下、反射光と表記する)と、の両方を受光する。直接光と反射光の伝搬遅延は異なるため、反射光は直接光の干渉光となり、直接光の復調に影響を与える。
【0003】
特許文献1及び非特許文献1は、干渉光の影響を抑えるためにディザリングを行う構成を開示している。具体的には、非特許文献1は、ディザリング専用の位相変調器を使用する構成を開示している。また、特許文献1は、情報を搬送する信号とディザリング用の信号の両方の信号で光源を駆動して変調光を生成する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-232764号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Byung Gon Kim,et.al.,"Reflection-Tolerant RoF-Based Mobile Fronthaul Network for 5G Wireless Systems",JOURNAL OF TECHNOLOGY,VOL.37,NO.24,2019年12月15日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ディザリングを使用することなく、より簡易な方法で反射光の影響を抑えることが求められる。
【0007】
本開示は、簡易な方法で反射光の影響を抑える技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によると、光伝送路を介して光受信装置に接続される光送信装置は、前記光受信装置に送信する送信信号に基づき変調光を生成する光変調手段と、前記変調光の偏波を第1偏波又は前記第1偏波とは直交する第2偏波にする偏波調整手段と、前記変調光の偏波が切替期間ごとに前記第1偏波と前記第2偏波との間で切り替わる様に前記偏波調整手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記光伝送路において反射することなく前記光受信装置に到達する直接光と、前記光伝送路において偶数回だけ反射して前記光受信装置に到達する1つ以上の反射光の内の第1反射光との遅延差に基づき、前記切替期間を設定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、簡易な方法で反射光の影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による、光通信システムの構成図。
図2】一実施形態による、光送信装置の構成図。
図3】一実施形態による、反射点情報及び反射光情報を示す図。
図4】一実施形態による、反射光及び直接光の経路を示す図。
図5】一実施形態による、偏波の切り替え周期の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による光通信システムの構成図である。光送信装置1と光受信装置2とは、光伝送路3を介して接続される。光伝送路3は、複数の接続点(反射点)を有する。
【0013】
図2は、本実施形態による光送信装置1の構成図である。光変調部11は、送信情報に対応する送信信号に基づき光を変調し、変調光を偏波調整部14に出力する。記憶部12は、光伝送路3の接続点(反射点)に関する反射点情報を格納している。図3(A)は、反射点情報の例である。図3(A)によると、反射点情報は、光伝送路3に3つの反射点#1~#3が存在することを示している。さらに、反射点情報は、各反射点の位置と、反射点における反射量を示している。なお、反射点の位置は、例えば、光伝送路3の光送信装置1側の端部からの距離で示される。また、反射量は、反射点に入射した光のパワーに対する反射光のパワーの比で示される。
【0014】
図3(A)に示す反射点情報に基づき図3(B)に示す反射光情報を生成することができる。図3(B)によると、反射光情報は、反射点情報が示す反射点により、3つの反射光O#1~O#3が光受信装置に到達することを示している。反射光情報は、反射光O#1が反射点X#1及びX#2での反射により生じたものであり、反射光O#2が反射点X#2及びX#3での反射により生じたものであり、反射光O#3が反射点X#1及びX#3での反射により生じたものであることを示している。図4は、直接光と反射光O#1~O#3が光受信装置2に到達するまでの経路を示している。
【0015】
なお、反射点X#2、X#1、X#3、X#2の順で反射した反射光の様に、4以上の偶数個の反射点で反射した反射光も考えられるが、その様な反射光の光受信装置2の位置でのパワーは大変小さいため、本実施形態では複数の反射点の内の2つの反射点で反射した反射光のみを考慮する。
【0016】
反射光情報は、さらに、光受信装置に到達する直接光と反射光との遅延差と、反射光のパワー(直接光のパワーに対する反射光のパワーの比)と、を示している。なお、直接光と反射光との遅延差は、反射位置間の距離と、光伝送路3における単位距離当たりの伝搬遅延とに基づき計算することができる。また、直接光のパワーに対する反射光のパワーの比は、反射情報が示す反射量と、各反射点間の距離と、光伝送路3における単位距離当たりの減衰量と、に基づき計算することができる。なお、図3(B)に示す反射光情報は、図3(A)に示す反射点情報に基づき得られるが、反射点情報に代えて、或いは、反射点情報に加えて、反射光情報を記憶部12に格納しておく構成とすることもできる。
【0017】
図2に戻り、偏波制御部13は、記憶部12に反射点情報のみが格納されている場合、反射点情報に基づき反射光情報を生成する機能を有する。なお、記憶部12に反射光情報が格納されている場合、偏波制御部13は、記憶部12に格納されている反射光情報をそのまま使用する。偏波制御部13は、反射光情報に基づき、光受信装置2の受信点においてパワーの最も大きい反射光を判定する。以下の説明では、反射光O#1のパワーP#1が最も大きいものとする。この場合、偏波制御部13は、直接光と反射光O#1との遅延差T#1に基づき、光伝送路3に出力される変調光の偏波が第1偏波又は第1偏波とは直交する第2偏波となる様に、偏波調整部14に対する制御信号を生成して偏波調整部14に出力する。偏波調整部14は、制御信号に従い入力される変調光の偏波を調整する。
【0018】
図5(A)は、偏波調整部14が出力する変調光の偏波の説明図である。偏波制御部13は、変調光の偏波が切替期間ΔTpごとに第1偏波と第2偏波との間で切り替わる様に偏波調整部14を制御する。図5(A)によると、切替期間Tpは、直接光と反射光O#1との遅延差と同じ期間T#1である。図5(A)に示す様に、反射光O#1は直接光よりT#1だけ遅れて光受信装置2に到達するため、光受信装置2が第1偏波の反射光O#1を受信している間、光受信装置2は第2偏波の直接光を受信し、光受信装置2が第2偏波の反射光O#1を受信している間、光受信装置2は第1偏波の直接光を受信する。つまり、光受信装置2が受信する直接光と反射光O#1の偏波は直交する。したがって、反射光O#1の影響を抑えて直接光を復調することが可能になる。
【0019】
なお、切替期間ΔTpを直接光と反射光O#1との遅延差T#1とすることに本実施形態は限定されない。例えば、図5(B)に示す様に、切替期間ΔTpを(T#1)/3とすることができる。より一般的には、直接光と反射光O#1との遅延差T#1を奇数分の1にした期間を切替期間ΔTpとすることができる。
【0020】
以上、直接光と反射光との遅延差に基づき設定した期間毎に変調光の偏波を第1偏波と第2偏波との間で切り替えることで光受信装置2における変調光(直接光)の復調に反射光が与える影響を抑えることができる。
【0021】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態では、光受信装置2が受信する反射光の内の最もパワーの大きい反射光の遅延に基づき切替期間ΔTpを決定していた。本実施形態では、反射光の内、光受信装置2の受信位置でのパワーが閾値より大きい1つ以上の反射光の遅延に基づき切替期間ΔTpを決定する。以下では、図3(B)に示す3つの反射光O#1~O#3のパワーP#1~P#3が閾値より大きいものとする。
【0022】
まず、反射光O#1と直接光の偏波を直交させる条件は、第一実施形態で説明した様にΔT1=T#1/(2n-1)の周期で偏波を切り替えることである。なお、nは自然数である。同様に、反射光O#2と直接光の偏波を直交させる条件は、ΔT2=T#2/(2m-1)の周期で偏波を切り替えることである。なお、mは自然数である。さらに、反射光O#3と直接光の偏波を直交させる条件は、ΔT3=T#3/(2k-1)の周期で偏波を切り替えることである。なお、kは自然数である。
【0023】
したがって、例えば、n=n1、m=m1及びk=k1のときにΔT1=ΔT2=ΔT3=ΔTpとなる場合、変調光の偏波を切替期間ΔTp毎に切り替えれば光受信装置2において、反射光O#1~O#3の偏波を直接光の偏波に対して直交させることができる。しかしながら、一般的に、ΔT1=ΔT2=ΔT3となるn、m及びkが存在しない場合もある。
【0024】
本実施形態において、偏波制御部13は、切替期間ΔTpを近似的に求める。具体的には、誤差|ΔTp-ΔT1|と、誤差|ΔTp-ΔT2|と、誤差|ΔTp-ΔT3|の和が最小となる様に切替期間ΔTpを求める。
【0025】
以上の構成により、切替期間ΔTpの内の誤差に対応して決定される期間は、反射光と直接光の偏波は同じとなるが、誤差を最小としているため、反射光の影響を抑えることができる。
【0026】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第一実施形態及び第二実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態において、偏波制御部13は、光受信装置2から通信品質のフィードバックを受信して、通信品質に基づき切替期間ΔTpを調整する。
【0027】
光受信装置2が通信品質を判定する方法は任意である。例えば、光変調部11に入力される送信信号が誤り訂正符号や誤り検出符号で符号化されている場合、光受信装置2は、復調して得た信号の誤り訂正符号や誤り検出符号を検査することで通信品質を判定することができる。また、光変調部11が送信信号に対して周期的に所定の検査信号を挿入し、光受信装置2がこの検査信号を検査することで通信品質を判定することができる。偏波制御部13は、例えば、光受信装置2から受信する通信品質が高くなる様に、切替期間ΔTpを変更する。
【0028】
以上、光受信装置2からのフィードバックに基づき切替期間ΔTpを制御することで、反射光の影響を抑えることができる。
【0029】
以上の構成により、簡易な方法で反射光の影響を抑えることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0030】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
11:光変調部、13:偏波制御部、14:偏波調整部
図1
図2
図3
図4
図5