IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

<>
  • 特開-データ転送システム及び方法 図1
  • 特開-データ転送システム及び方法 図2
  • 特開-データ転送システム及び方法 図3
  • 特開-データ転送システム及び方法 図4
  • 特開-データ転送システム及び方法 図5
  • 特開-データ転送システム及び方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041425
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】データ転送システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 13/38 20060101AFI20240319BHJP
   G05B 19/05 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G06F13/38 340D
G06F13/38 340C
G05B19/05 L
G05B19/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146244
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 光洋
【テーマコード(参考)】
5H220
【Fターム(参考)】
5H220AA01
5H220BB09
5H220CC09
5H220CX01
5H220CX05
5H220HH01
5H220JJ12
5H220JJ22
5H220JJ26
5H220KK03
5H220KK06
5H220LL01
(57)【要約】
【課題】遠隔制御における通信の遅延を低減する。
【解決手段】第1及び第2のメモリ領域間のネットワーク経由のデータ転送を所定の転送周期で行う第1及び第2の転送部が備えられる。被制御装置の制御装置が、所定の制御周期毎の制御において、第2のメモリ領域から因子データセットを読み出し、当該因子データセットに基づく制御データセットを第2のメモリ領域に書き込む。所定の転送周期毎の因子転送において、第1及び第2の転送部により、第1のメモリ領域から第2のメモリ領域へ因子データセットが転送され、所定の転送周期毎の制御転送において、第2のメモリ領域から第1のメモリ領域への制御データセットが転送される。ネットワークは、転送周期によって遅延時間が異なり、所定の転送周期は、所定の制御周期よりも短い周期であって、許容される遅延時間に属するいずれかの転送周期である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の転送周期毎の因子転送と所定の転送周期毎の制御転送とを行う第1の転送部及び第2の転送部を備え、
第1のメモリ領域及び前記第1の転送部は、一又は複数台の被制御装置の少なくとも一台、又は、前記一又は複数台の被制御装置に接続された第1のデータ転送装置に備えられ、
第2のメモリ領域及び前記第2の転送部は、前記一又は複数台の被制御装置の制御装置、又は、前記制御装置に接続された第2のデータ転送装置に備えられ、
前記第1のメモリ領域は、第1の送信領域と第1の受信領域とを含み、
前記第2のメモリ領域は、第2の送信領域と第2の受信領域とを含み、
前記第1の送信領域に、因子データセットが書き込まれ、
因子データセットは、制御データセットに影響を与え得る因子毎の因子データを含み、因子毎に、因子データは、当該因子について得られた値を含み、
制御データセットは、被制御装置毎に制御データを含み、被制御装置毎に、制御データは、一つ以上の制御パラメータ項目の各々について制御パラメータ値を含み、
前記因子転送の前記所定の転送周期の開始と前記制御転送の前記所定の転送周期の開始は非同期であり、
前記因子転送では、前記第1の転送部が、前記第1の送信領域から因子データセットを読み出し、当該読み出された因子データセットをネットワーク経由で前記第2の転送部に転送し、前記第2の転送部が、当該因子データセットを前記第2の受信領域に書き込み、
前記制御転送では、前記第2の転送部が、前記第2の送信領域から制御データセットを読み出し、当該読み出された制御データセットを前記ネットワーク経由で前記第1の転送部に転送し、前記第1の転送部が、当該制御データセットを前記第1の受信領域に書き込み、
前記制御装置における制御部が、所定の制御周期で制御を行うようになっており、所定の制御周期毎の制御は、前記第2の受信領域から因子データセットを読み出すこと、当該読み出された因子データセットに基づき被制御装置毎に制御データを決定すること、及び、被制御装置毎の決定された制御データを含む制御データセットを前記第2の送信領域に書き込むこと、を含み、
前記ネットワークには、転送周期によって遅延時間が異なるというネットワーク特性があり、
前記因子転送の前記所定の転送周期も前記制御転送の前記所定の転送周期も、前記所定の制御周期よりも短い周期であって、許容される遅延時間に属するいずれかの転送周期である、
データ転送システム。
【請求項2】
前記第1の送信領域に対する因子データセットの書込みと、前記因子転送のための前記第1の送信領域からの因子データセットの読出しは、非同期であり、
前記第1の送信領域に対する因子データセットの書込み開始時と書込み終了時に当該因子データセットに対応のシーケンスIDが関連付けられ、
前記因子転送の前記所定の転送周期毎に、前記第1の転送部が、因子データセットの書込み開始時のシーケンスIDと書込み終了時のシーケンスIDが同じか否かの判定であるデータ同時性判定を行い、
前記データ同時性判定の結果が偽の場合、前記第1の転送部が、直前回の前記所定の転送周期で読み出された因子データセット、又は、所定サイズのダミーデータを、前記第2の転送部に転送する、
請求項1に記載のデータ転送システム。
【請求項3】
前記データ同時性判定の結果が真の場合、前記第1の転送部が、直前回の前記所定の転送周期と今回の前記所定の転送周期で、因子データセットに関連付けられているシーケンスIDが異なるか否かの判定であるID更新判定を行い、
前記ID更新判定の結果が真の場合、前記第1の転送部が、当該因子データセットを前記第2の転送部に転送し、
前記ID更新判定の結果が偽の場合、前記第1の転送部が、前記所定サイズのダミーデータを、前記第2の転送部に送信する、
請求項2に記載のデータ転送システム。
【請求項4】
前記第2の送信領域に対する制御データセットの書込みと、前記制御転送のための前記第2の送信領域からの制御データセットの読出しは、非同期であり、
前記第2の送信領域に対する制御データセットの書込み開始時と書込み終了時に当該制御データセットに対応のシーケンスIDが関連付けられ、
前記制御転送の前記所定の転送周期毎に、前記第2の転送部が、制御データセットの書込み開始時のシーケンスIDと書込み終了時のシーケンスIDが同じか否かの判定であるデータ同時性判定を行い、
前記データ同時性判定の結果が偽の場合、前記第2の転送部が、直前回の前記所定の転送周期で読み出された制御データセット、又は、所定サイズのダミーデータを、前記第1の転送部に転送する、
請求項1に記載のデータ転送システム。
【請求項5】
前記データ同時性判定の結果が真の場合、前記第2の転送部が、直前回の前記所定の転送周期と今回の前記所定の転送周期で、制御データセットに関連付けられているシーケンスIDが異なるか否かの判定であるID更新判定を行い、
前記ID更新判定の結果が真の場合、前記第2の転送部が、当該制御データセットを前記第1の転送部に転送し、
前記ID更新判定の結果が偽の場合、前記第2の転送部が、前記所定サイズのダミーデータを、前記第1の転送部に送信する、
請求項4に記載のデータ転送システム。
【請求項6】
前記ネットワークの転送周期と遅延時間との関係としてのネットワーク特性を特定するために、定期的に、又は、特定のネットワーク状態が検出された場合に、異なる複数の転送周期の各々について片方向又は両方向のデータ転送を試験的に行う第1のテスト部及び第2のテスト部を備え、
前記第1のテスト部は、前記第1の転送部が備えられている装置に備えられ、
前記第2のテスト部は、前記第2の転送部が備えられている装置に備えられ、
前記第1のテスト部及び前記第2のテスト部は、前記特定されたネットワーク特性に基づき、転送周期を決定し、当該決定された転送周期を、前記所定の転送周期とする、
請求項1に記載のデータ転送システム。
【請求項7】
前記ネットワークは、無線ネットワークを含む、
請求項1に記載のデータ転送システム。
【請求項8】
前記制御装置は、流体の制御装置である、
請求項1に記載のデータ転送システム。
【請求項9】
前記所定の転送周期は、前記許容される遅延時間に属する複数の転送周期のうち最も長い転送周期である、
請求項1に記載のデータ転送システム。
【請求項10】
前記制御部を更に備え、前記一又は複数台の被制御装置の制御を行う請求項1に記載のデータ転送システム。
【請求項11】
所定の転送周期毎の因子転送と所定の転送周期毎の制御転送とを第1の転送部及び第2の転送部により行い、
第1のメモリ領域及び前記第1の転送部は、一又は複数台の被制御装置の少なくとも一台、又は、前記一又は複数台の被制御装置に接続された第1のデータ転送装置に備えられ、
第2のメモリ領域及び前記第2の転送部は、前記一又は複数台の被制御装置の制御装置、又は、前記制御装置に接続された第2のデータ転送装置に備えられ、
前記第1のメモリ領域は、第1の送信領域と第1の受信領域とを含み、
前記第2のメモリ領域は、第2の送信領域と第2の受信領域とを含み、
前記第1の送信領域に、因子データセットが書き込まれ、
因子データセットは、制御データセットに影響を与え得る因子毎の因子データを含み、因子毎に、因子データは、当該因子について得られた値を含み、
制御データセットは、被制御装置毎に制御データを含み、被制御装置毎に、制御データは、一つ以上の制御パラメータ項目の各々について制御パラメータ値を含み、
前記因子転送の前記所定の転送周期の開始と前記制御転送の前記所定の転送周期の開始は非同期であり、
前記因子転送では、前記第1の転送部が、前記第1の送信領域から因子データセットを読み出し、当該読み出された因子データセットをネットワーク経由で前記第2の転送部に転送し、前記第2の転送部が、当該因子データセットを前記第2の受信領域に書き込み、
前記制御転送では、前記第2の転送部が、前記第2の送信領域から制御データセットを読み出し、当該読み出された制御データセットを前記ネットワーク経由で前記第1の転送部に転送し、前記第1の転送部が、当該制御データセットを前記第1の受信領域に書き込み、
前記制御装置が、所定の制御周期で制御を行うようになっており、所定の制御周期毎の制御は、前記第2の受信領域から因子データセットを読み出すこと、当該読み出された因子データセットに基づき被制御装置毎に制御データを決定すること、及び、被制御装置毎の決定された制御データを含む制御データセットを前記第2の送信領域に書き込むこと、を含み、
前記ネットワークには、転送周期によって遅延時間が異なるというネットワーク特性があり、
前記因子転送の前記所定の転送周期も前記制御転送の前記所定の転送周期も、前記所定の制御周期よりも短い転送周期であって、許容される遅延時間に属するいずれかの転送周期である、
データ転送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、データ転送に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、圧縮された空気を配管網を通じて吐出することで、埃等を除去したり、ロボットアーム等の動力源にしたりすることが、生産現場において行われる。このような生産現場では、空気を圧縮する複数台(又は一台)の空気圧縮機、及び、圧縮された空気をそれらの空気圧縮機から受けて配管網へと送るレシーバタンクが備えられる。
【0003】
空気圧縮機は、一般に、電力消費が大きい機器である。このため、生産現場には、更に、台数制御盤が備えられる。台数制御盤は、レシーバタンクの圧力を基に、駆動する空気圧縮機の台数や出力を制御する。
【0004】
生産現場に台数制御盤を設置することに代えて、遠隔の制御装置(典型的にはサーバ)から空気圧縮機を制御することが考えらえる。遠隔制御に関する技術として、例えば、特許文献1に開示の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-173375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空気圧縮機は、被制御装置の一例である。被制御装置の制御では、一般に、制御装置が、周期的に、因子データセットを受信し、当該因子データセットに基づき制御データセットを決定し、決定した制御データセットを送信する。因子データセットは、制御データセットに影響を与え得る因子毎の因子データを含み、因子毎に、因子データは、当該因子について得られた値を含む。制御データセットは、被制御装置毎に制御データを含み、被制御装置毎に、制御データは、一つ以上の制御パラメータ項目の各々について制御パラメータ値を含む。
【0007】
因子データセットや制御データセットの通信に遅延があると、制御の品質が低下する。このため、遠隔制御における通信の遅延を低減することが、遠隔制御の品質向上に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
所定の転送周期毎の因子転送と所定の転送周期毎の制御転送とを行う第1の転送部及び第2の転送部が備えられる。第1のメモリ領域及び第1の転送部は、一又は複数台の被制御装置の少なくとも一台、又は、当該一又は複数台の被制御装置に接続された第1のデータ転送装置に備えられる。第2のメモリ領域及び第2の転送部は、一又は複数台の被制御装置の制御装置、又は、当該制御装置に接続された第2のデータ転送装置に備えられる。第1のメモリ領域は、第1の送信領域と第1の受信領域とを含む。第2のメモリ領域は、第2の送信領域と第2の受信領域とを含む。第1の送信領域に、因子データセットが書き込まれる。
【0009】
因子転送の所定の転送周期の開始と制御転送の所定の転送周期の開始は非同期である。所定の転送周期毎の因子転送では、第1の転送部が、第1の送信領域から因子データセットを読み出し、当該読み出された因子データセットをネットワーク経由で第2の転送部に転送し、第2の転送部が、当該因子データセットを第2の受信領域に書き込む。所定の転送周期毎の制御転送では、第2の転送部が、第2の送信領域から制御データセットを読み出し、当該読み出された制御データセットをネットワーク経由で第1の転送部に転送し、第1の転送部が、当該制御データセットを第1の受信領域に書き込む。
【0010】
制御装置における制御部が、所定の制御周期で制御を行うようになっており、所定の制御周期毎の制御は、第2の受信領域から因子データセットを読み出すこと、当該読み出された因子データセットに基づき被制御装置毎に制御データを決定すること、及び、被制御装置毎の決定された制御データを含む制御データセットを第2の送信領域に書き込むこと、を含む。
【0011】
ネットワークには、転送周期によって遅延時間が異なるというネットワーク特性がある。因子転送の所定の転送周期も制御転送の所定の転送周期も、所定の制御周期よりも短い周期であって、許容される遅延時間に属するいずれかの転送周期である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遠隔制御における通信の遅延を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るデータ転送システムを含むシステム全体の構成例を示す。
図2】データ転送を含む処理を模式的に示す。
図3】転送周期と遅延時間との関係としてのネットワーク特性の一例を示す。
図4】制御部が行う処理の流れの一例を示す。
図5】転送部が行う送信処理の流れの一例を示す。
図6】第2の実施形態に係るデータ転送システムを含むシステム全体の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該一つ以上のインターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイスであってもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイスであってもよい。
【0015】
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0016】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の永続記憶デバイスである。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)であり、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)である。
【0017】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
【0018】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0019】
また、以下の説明では、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサによって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶装置及び/又はインターフェース装置等を用いながら行うため、処理の主語が、プロセッサ(或いは、そのプロセッサを有するコントローラのようなデバイス)とされてもよい。プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な(例えば非一時的な)記録媒体であってもよい。また、以下の説明において、二つ以上のプログラムが一つのプログラムとして実現されてもよいし、一つのプログラムが二つ以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0020】
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/又はインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0021】
また、以下の説明では、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号のうちの共通部分を使用し、同種の要素を区別して説明する場合には、参照符号を使用することがある。
【0022】
以下、本発明の幾つかの実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
【0023】
図1は、第1の実施形態に係るデータ転送システムを含むシステム全体の構成例を示す。
【0024】
複数台の空気圧縮機130(130A、130B、…)が広域無線ネットワーク100を介して制御装置110により制御される。空気圧縮機130は、産業機器の一例である。産業機器は、被制御装置の一例である。広域無線ネットワーク100は、ネットワークの一例であり、4G、LTE又は5Gの無線ネットワークでよい。また、空気圧縮機130から圧縮空気を受け図示しない配管網に出すレシーバタンク140が備えられる。
【0025】
制御装置110は、インターフェース装置111、記憶装置112及びそれらに接続されたプロセッサ113を備える。インターフェース装置111Aは、第2のデータ転送装置120Bと通信するデバイスを含む。記憶装置112には、制御周期T1を表す制御周期データ154が格納される。記憶装置112には、一つ以上のコンピュータプログラムが格納される。当該一つ以上のコンピュータプログラムは、制御部151の実現のための制御プログラムを含む。プロセッサ113が当該一つ以上のコンピュータプログラムを実行することで、制御部151が実現される。
【0026】
広域無線ネットワーク100経由のデータ転送を所定の転送周期T2で行う第1の転送部161A及び第2の転送部161Bが備えられる。第1のメモリ領域163A及び第1の転送部161Aは、複数台の空気圧縮機130及びレシーバタンク140に接続された第1のデータ転送装置120Aに備えられる。第2のメモリ領域163B及び第2の転送部161Bは、制御装置110に接続された第2のデータ転送装置120Bに備えられる。
【0027】
すなわち、本実施形態では、制御装置110と空気圧縮機130間のデータを転送する第1及び第2のデータ転送装置120A及び120Bが備えられる。
【0028】
第1のデータ転送装置120Aは、中継装置でよく、インターフェース装置121A、記憶装置122A及びそれらに接続されたプロセッサ123Aを備える。インターフェース装置121Aは、複数台の空気圧縮機130と通信するデバイス、レシーバタンク140(例えば、レシーバタンク140に設けられた圧力センサ)と通信するデバイス、及び、広域無線ネットワーク100を介して第2のデータ転送装置120Bと通信するデバイスを含む。記憶装置122Aは、第1のメモリ領域163Aを有するメモリを含む。また、記憶装置122Aには、転送周期T2を表す転送周期データ164Aが格納される。また、記憶装置122Aには、複数のコンピュータプログラムが格納される。当該複数のコンピュータプログラムは、第1の転送部161Aの実現のための第1の転送プログラムと、第1のIF(インターフェース)部162Aの実現のための第1のIFプログラムとを含む。プロセッサ123Aが当該複数のコンピュータプログラムを実行することで、第1の転送部161A及び第1のIF部162Aが実現される。
【0029】
第2のデータ転送装置120Bは、中継装置でよく、インターフェース装置121B、記憶装置122B及びそれらに接続されたプロセッサ123Bを備える。インターフェース装置121Bは、広域無線ネットワーク100を介して第1のデータ転送装置120Aと通信するデバイス、及び、制御装置110と通知するデバイスを含む。記憶装置122Bは、第2のメモリ領域163Bを有するメモリを含む。また、記憶装置122Bには、転送周期T2を表す転送周期データ164B格納される。また、記憶装置122Bには、複数のコンピュータプログラムが格納される。当該複数のコンピュータプログラムは、第2の転送部161Bの実現のための第2の転送プログラムと、第2のIF部162Bの実現のための第2のIFプログラムとを含む。プロセッサ123Bが当該複数のコンピュータプログラムを実行することで、第2の転送部161B及び第2のIF部162Bが実現される。
【0030】
図2は、データ転送を含む処理の流れを模式的に示す。
【0031】
第1及び第2のメモリ領域163A及び163Bは、それぞれ、広域共有メモリ領域又は転写メモリと呼ばれてもよい。第1のメモリ領域163Aは、第1の送信領域63Aaと第1の受信領域63Abとを含む。第2のメモリ領域163Bは、第2の受信領域63Bbと第2の送信領域63Baとを含む。
【0032】
第1のIF部162Aが、第1の送信IF部62Aaと第1の受信IF部62Abとを含む。第1の送信IF部62Aaが、因子データセットを受け付け第1の送信領域63Aaに書き込む。第1の受信IF部62Abが、制御データセットを第1の受信領域63Abに書き込み制御データを空気圧縮機130に出力する。
【0033】
第2のIF部162Bが、第2の受信IF部62Bbと第2の送信IF部62Baとを含む。第2の受信IF部62Bbが、第2の受信領域63Bbから因子データセットを読み出し、当該因子データセットを制御部151に出力する。第2の送信IF部62Baが、制御データセットを受け付け第2の送信領域63Baに書き込む。
【0034】
第1の転送部161Aが、第1の送信部61Aaと第1の受信部61Abとを含む。第2の転送部161Bが、第2の受信部61Bbと、第2の送信部61Baとを含む。第1の送信部61Aaと第2の受信部61Bbとの間で、転送周期T2毎の因子転送(上り方向の転送と呼ばれてもよい)が行われる、つまり、第1の送信部61Aaが、転送周期T2毎に因子転送を開始する。第2の送信部61Baと第1の受信部61Abとの間で、転送周期T2毎の制御転送(下り方向の転送と呼ばれてもよい)が行われる、つまり、第2の送信部61baが、転送周期T2毎に制御転送を開始する。因子転送の転送周期T2の開始と制御転送の転送周期T2の開始は非同期である。
【0035】
第1の送信IF部62Aaが、因子データソースから因子データセットを受け、当該因子データセットを第1の送信領域63Aaに書き込む。この処理は、周期T3で行われてよい。周期T3は、転送周期T2より長くてよく、且つ、制御周期T1と同じ又は異なる周期でよい。また、この処理は、周期T3で行われることに代えて非周期的に行われてもよい。
【0036】
「因子データセット」は、制御データセットに影響を与え得る因子毎の因子データを含む。因子毎に、因子データは、当該因子について得られた値を含む。因子の例としては、レシーバタンク140の圧力が採用される。因子の他の例として、空気圧縮機130のON又はOFF、空気圧縮機130のモータ回転数や消費電力が採用されてもよい。「因子データソース」とは、因子データのソースであり、例えば、レシーバタンク140(例えばレシーバタンク140の圧力センサ)を含む。因子データソースは、空気圧縮機130(例えば、空気圧縮機130に備えられたセンサ)を含んでもよい。
【0037】
因子転送の転送周期T2も制御転送の転送周期T2も、制御周期T1より短い。なお、因子転送の転送周期T2の長さと制御転送の転送周期T2の長さは、典型的には同じであるが、異なっていてもよい。
【0038】
因子転送では、次の処理が行われる。すなわち、第1の送信部61Aaが、第1の送信領域63Aaから因子データセットを読み出し、当該読み出された因子データセットを第2の受信部61Bbに転送する。第2の受信部61Bbが、当該因子データセットを第2の受信領域63Bbに書き込む。なお、1回の因子転送では、1回の制御周期での制御データセットの決定に必要な全てのデータ(因子データセットの全て)が転送対象とされてよい。また、転送周期T2毎に全ての因子データが送られてもよいし、直前回の転送周期T2で送信された因子データのうち変化があった因子データが転送対象とされてもよい。
【0039】
制御転送では、次の処理が行われる。すなわち、第2の送信部61Baが、第2の送信領域63Baから制御データセットを読み出し、当該読み出された制御データセットを第1の受信部61Abに転送する。第1の受信部61Abが、当該制御データセットを第1の受信領域63Abに書き込む。
【0040】
一つの周期での因子転送及び制御転送のいずれについても、転送されるデータのサイズ(例えば最大サイズ)は決められていてよい。
【0041】
制御装置110における制御部151が、制御周期T1(所定の制御周期の一例)で制御を行うようになっている。制御周期T1毎の制御は、第2の受信領域63Bbから因子データセットを読み出すこと、当該読み出された因子データセットに基づき空気圧縮機130毎に制御データを決定すること、及び、空気圧縮機130毎の決定された制御データを含む制御データセットを第2の送信領域63Baに書き込むこと、を含む。制御部151の第2の送信領域63Baに対するデータのI/O(Input/Output)は、第2の送信IF部62Ba経由で行われる。「制御データセット」は、空気圧縮機130毎に制御データを含み、空気圧縮機130毎に、制御データは、一つ以上の制御パラメータ項目の各々について制御パラメータ値を含む。制御パラメータ値は、例えば、空気圧縮機130のON又はOFF、及び、空気圧縮機130のモータ回転数でよい。なお、空気圧縮機130としては、モータの回転数は一定でありON又はOFFのみが制御される一定速機(インバータなし)と、モータの回転数が可変である可変速機(インバータあり)があってよい。
【0042】
制御データセットが第2の送信領域63Baから第2の送信部61Ba及び第1の受信部61Abにより第1の受信領域63Abに転送される。空気圧縮機130毎に、制御指令が、第1の受信IF部62Abから当該空気圧縮機130に送信される。制御指令には、第1の受信領域63Abに格納されている制御データセットにおける制御データが関連付けられる。空気圧縮機130が、当該制御指令に従う処理(例えば圧縮空気の生成)を行う。空気圧縮機130毎に、制御指令は、遠隔の制御装置110において生成されてもよいし(すなわち、制御部151により生成されてもよいし)、第1のデータ転送装置120Aにおいて生成されてもよい(例えば、第1の受信IF部62Ab又は別の機能(例えば別の制御部)により生成されてもよい)。周期T4で、各空気圧縮機130に、当該空気圧縮機130への制御指令が送信される。周期T4は、転送周期T2より長くてよく、且つ、制御周期T1と同じ又は異なる周期でよい。
【0043】
第1のメモリ領域163A及び第1の転送部161Aは、第1のデータ転送装置120Aに代えて少なくとも一台の空気圧縮機130に備えられてもよい。例えば、第1のデータ転送装置120Aに空気圧縮機130が接続されている場合、当該空気圧縮機130については、第1のメモリ領域163A及び第1の転送部161Aが第1のデータ転送装置120Aに備えられてよい。第1のデータ転送装置120Aに空気圧縮機130が接続されていない場合、当該空気圧縮機130については、第1のメモリ領域163A及び第1の転送部161Aが当該空気圧縮機130に備えられてよい。
【0044】
第2のメモリ領域163B及び第2の転送部161Bは、制御装置110に備えられてもよい。例えば、第2のデータ転送装置120Bに制御装置110が接続されていない場合、第2のメモリ領域163B及び第2の転送部161Bは、制御装置110に備えられてよい。
【0045】
図3は、転送周期と遅延時間との関係としてのネットワーク特性の一例を示す。
【0046】
広域無線ネットワーク100のようなネットワークのネットワーク特性の一つとして、転送周期と遅延時間との関係がある。図3に例示のグラフは、その関係の一例を表す。横軸は、転送周期に対応し、縦軸は、片方向転送(上り方向又は下り方向の転送)での遅延時間の平均値と標準偏差に対応する。
【0047】
図3に例示のネットワーク特性によれば、転送周期によって遅延時間が異なる。最適な転送周期は、下記の少なくとも(x)(好ましくは(x)及び(y)の両方)を満たす周期である。
(x)遅延時間の平均値が第1の閾値以下である。第1の閾値は、例えば、予め決められた値でもよいし、ネットワーク特性に表されている転送周期毎の平均値に基づき決められた値(相対的な値)でもよい。平均値は、統計値の一例でよい。
(y)遅延時間の標準偏差が第2の閾値以下である。第2の閾値は、例えば、予め決められた値でもよいし、ネットワーク特性に表されている転送周期毎の標準偏差に基づき決められた値(相対的な値)でもよい。
【0048】
転送周期T2は、制御周期T1よりも短い周期であって、許容される遅延時間(例えば、図3に破線枠で囲った範囲)に属するいずれかの転送周期である。別の言い方をすれば、転送周期T2は、制御周期T1よりも短い転送周期に対応した遅延時間のうち許容される遅延時間に属するいずれかの転送周期である。これにより、遠隔制御における通信の遅延を低減することができる。
【0049】
なお、転送周期T2のデータ転送において第1の転送部161A及び第2の転送部161Bが送受信するデータのサイズが決まっていてよい。このため、一定期間におけるデータ転送の回数は、転送周期T2が長いほど少なく、故に、当該一定期間において転送されるデータの総量は、転送周期T2が長いほど少ない。そこで、転送周期T2は、許容される遅延時間に属する複数の転送周期のうち最も長い転送周期とされてよい。
【0050】
また、ネットワークは、有線ネットワークでもよいが、本実施形態では、無線ネットワークを含む。無線ネットワークによれば、ネットワーク特性の観測場所や、データ転送のQoSポリシー(例えば、通信頻度の高いユーザ端末からのパケットを迅速に転送し通信頻度の低いユーザ端末からのパケットを或る程度まとめて転送する)等によって、ネットワーク特性(転送周期と遅延時間の関係)の違いが有線ネットワークよりも大きいと考えられる。遠隔制御が無線ネットワーク経由であっても、通信の遅延を低減することができる。
【0051】
また、被制御装置として様々な種類の装置が採用され得る。異なる種類の装置が、複数台の被制御装置に混在してもよい。本実施形態では、一又は複数台の被制御装置のうちの少なくとも一つは、空気圧縮機130(又はその他の産業機器)である。空気圧縮機130のような産業機器は、他種の被制御装置(例えば、ビルの空調装置)に比べて、制御周期も遅延時間も短く抑える必要がある。具体的には、産業機器の制御周期が長いと、振動が生じる可能性が高い。そのため、制御周期T1をある程度短い周期とする必要がある。このため、産業機器の無線ネットワーク経由の遠隔制御では、無線ネットワークの遅延が課題となる。本実施形態では、このような課題が解決されている。
【0052】
また、本実施形態に係るデータ転送システムは、第1及び第2の転送部161A及び161Bの他に、制御部151を更に備え、複数台の空気圧縮機130の遠隔制御を行う遠隔制御システムと呼ばれてもよい。
【0053】
図4は、制御部151が行う処理の流れの一例を示す。
【0054】
制御部151は、制御周期データ154が表す制御周期T1の開始か否かを判定する(S401)。
【0055】
S401の判定結果が真の場合(S401:Yes)、制御部151は、第2の受信領域63Bbから因子データセットを読み出し、読み出した因子データセットを記憶装置112に格納する(S402)。ここで読み出される因子データセットは、例えば、今回の制御周期T1での制御データセットの決定に必要な因子データセットであり、例えば、第2のメモリ領域163Bから未だ読み出されていない因子データセットでよい。
【0056】
制御部151は、S402で読み出された因子データセットを基に制御データセットを決定する(S403)。例えば、S403では、空気圧縮機130毎に、稼働するか否か(ON/OFF)と稼働する場合のモータ回転数等とを含んだ複数の制御パラメータ項目の各々について制御パラメータ値が決定される。決定された制御パラメータ値を含んだ制御データが空気圧縮機130毎に生成される。
【0057】
制御部151は、シーケンスIDを決定する(S404)。シーケンスIDは、今回の制御周期T1の通し番号でよく、制御周期T1の終了又は開始の都度に更新されてよい。
【0058】
制御部151は、S404で決定したシーケンスIDを、S403で決定された制御データセットに関連付け、シーケンスIDが関連付けられた制御データセットを第2の送信領域63Baに書き込む(S405)。例えば、制御データセットは、第2の送信領域63Baにシーケンシャルに書き込まれてよく、シーケンスIDは、制御データセットの書込み開始時と書込み終了時に書き込まれてよい。
【0059】
シーケンスIDは、因子データセットの第1の送信領域63Aaへの書き込みの際にも付与されてよい。詳細は後述する。
【0060】
図5は、転送部161が行う送信処理の流れの一例を示す。ここで「転送部161」は、第1及び第2の転送部161A及び161Bの総称である。別の言い方をすれば、第1及び第2の転送部161A及び161Bのいずれの送信部も、図5が示す処理を行う。また、図5を参照した説明において、「メモリ領域163」は、第1及び第2のメモリ領域163A及び163Bの総称である。
【0061】
転送部161は、転送周期データ164が表す転送周期T2の開始か否かを判定する(S501)。
【0062】
S501の判定結果が真の場合(S501:Yes)、転送部161は、データ同時性が保たれているか否かを判定する(S502)。ここで、「データ同時性が保たれている」とは、今回の読出し対象のデータセット(因子データセット又は制御データセット)の先頭と末尾に同一のシーケンスIDが関連付けられていること(書込み開始時のシーケンスIDと書込み終了時のシーケンスIDが同じであること)である。S502の判定が、データ同時性判定の一例である。
【0063】
S502の判定結果が真の場合(S502:Yes)、転送部161は、今回の読出し対象のデータセットに関連付けられているシーケンスIDが更新後のシーケンスIDであるか(直前回の読出し対象のデータセットに関連付けられていたシーケンスIDと異なるシーケンスIDであるか)否かを判定する(S503)。S503の判定が、ID更新判定の一例である。
【0064】
S503の判定結果が真の場合(S503:Yes)、転送部161は、読出し対象のデータセットをメモリ領域163から読み出し、当該読み出されたデータセットを転送する(S503)。
【0065】
S503の判定結果が偽の場合(S503:No)、転送部161は、小サイズデータ(所定サイズのダミーデータの一例)を転送する(S505)。小サイズデータは、一回の転送において転送されるデータの最大サイズより小さいサイズのデータでよい。図3が例示するネットワーク特性によれば、転送周期T2がより長くなると遅延時間が長くなり得るが、転送周期T2毎に最大サイズのデータを転送すると、トータルのデータ通信量が増えてしまう。本実施形態では、読出し対象のデータが無い場合には、小サイズデータが転送されるため、遅延時間が長期化することと、トータルのデータ通信量の肥大化との両方を避けることができる。なお、「読出し対象のデータが無い」ケースが生じ得る例として、転送周期T2が制御周期T1に比べて十分に短いケースが考えられる。
【0066】
S502の判定結果が偽の場合(S502:No)、転送部161は、直前回の読出し対象のデータセット、又は、小サイズデータを転送する(S506)。
【0067】
以上が、第1の実施形態の説明である。
【0068】
なお、転送部161(第2の受信部61Bb又は第1の受信部61Ab)は、受信したデータが小サイズデータの場合、当該受信したデータを破棄してよい(メモリ領域163に書き込まないでよい)。
【0069】
また、S502及びS503の少なくとも一つの判定は、因子転送と制御転送の両方について行われてもよいし、因子転送と制御転送の一方についてのみ行われてもよい。
【0070】
また、広域無線ネットワーク経由の通信が不可となった場合(又は、通信品質が所定品質以下に劣化した場合)、下記のいずれかの方法により、制御(例えば、稼働する空気圧縮機130の台数の制御)が維持されてもよい。
・第1のデータ転送装置120Aが、別の制御部を有し、当該別の制御部により、空気圧縮機130A、130B、…を制御する。当該別の制御部は、制御周期T1毎に制御を行ってよく、当該制御は、因子データセットの読出し、及び、制御データセットの決定を含んでよい。
・空気圧縮機130Aがマスタの装置でありそれ以外の空気圧縮機130がスレーブの装置であり、いわゆるマスタースレーブの通信に基づき制御が行われてよい。
・各空気圧縮機130に、目標値等の自律制御用のデータが設定されており、各空気圧縮機130が、当該空気圧縮機130に設定されている自律制御用のデータを基に、自律制御してよい。
【0071】
また、周期T3で第1の送信領域63Aaに書き込まれた因子データセットは、1回の因子転送で全て転送されてよい。また、周期T1、T2及びT4の各々について(すなわち、周期的な読出しについて)、今回の周期で読み出されるデータに加えて、直前回の周期で読み出されたデータが、読出し元のメモリ領域に存在してよい。下記の(p)及び(q)の少なくとも一つが採用されてよい。
(p)因子データセットは、周期T3で取得され第1の送信領域63Aaに書き込まれてよい。周期T3と周期T2は非同期であり、そのため、周期T3で因子データセットの全てが第1の送信領域63Aaに書き終わる前に、周期T2での因子転送のために第1の送信領域63Aaからデータの読み出しが開始される可能性がある。
(q)周期T2で転送された因子データセットは第2の受信領域63Bbに書き込まれる。周期T2と周期T1は非同期であり、そのため、周期T2で因子データセットの全てが第2の受信領域63Bbに書き終わる前に、周期T1で制御のために第2の受信領域63Bbから因子データセットの読み出しが開始される可能性がある。
【0072】
この(p)及び(q)のいずれについても、一比較例によれば、データ同時性が保証されない可能性がある。例えば、今回の周期T3で因子データセットが第1の送信領域63Aaに書き込まれている途中に、今回の周期T2での因子転送のために第1の送信領域63Aaからデータの読出しが開始されることがある。
【0073】
そこで、本実施形態では、データ同時性の保証のために、メモリ領域163に書き込まれるデータセットに、当該データセットに対応の(当該データセットの順番に対応の)シーケンスIDが付与される。シーケンスIDは、データセットの少なくとも先頭と末尾に付与される。同一のデータセットに付与される複数のシーケンスID(ここでは先頭と末尾のシーケンスID)は、同じIDである。つまり、1つの周期で同じシーケンスIDが付与される。例えば、データセットが書き込まれる領域を含んだ領域の先頭と末尾にシーケンスIDが記録されていて、データセットの書込み開始時に先頭のシーケンスIDが更新され、データセットの書込み終了時に末尾のシーケンスIDが更新されてよい。例えば、下記の少なくとも一つが行われてよい。
・周期T3での第1の送信領域63Aaへの因子データセットの書き込みの際に、第1の送信IF部62Aaが、今回の周期に対応のシーケンスIDを第1の送信領域63Aaに書き込み、その後に、因子データセットを第1の送信領域63Aaに書き込む。当該因子データセットの書込み後に、第1の送信IF部62Aaが、末尾のシーケンスIDを第1の送信領域63Aaに書き込む。
・周期T1での第2の送信領域63Baへの制御データセットの書き込みの際に、第2の送信IF部62Baが、今回の周期に対応のシーケンスIDを第2の送信領域63Baに書き込み、その後に、制御データセットを第2の送信領域63Baに書き込む。当該制御データセットの書込み後に、第2の送信IF部62Baが、末尾のシーケンスIDを第2の送信領域63Baに書き込む。
【0074】
周期T2の他に、周期T1及びT4の各々についても、データ同時性が保たれているか否かが判定されてよい。具体的には、下記のうちの少なくとも一つが行われてよい。
・周期T1の開始時に、制御部151が、今回の読出し対象の因子データセットの先頭と末尾に同一のシーケンスIDが関連付けれているか否かを判定する(データ同時性判定)。データ同時性判定の結果が真の場合、制御部151は、読出し対象の因子データセットを第2の受信領域63Bbから読み出し、当該因子データセットを基に後の処理を実行する。データ同時性判定の結果が偽の場合、制御部151は、直前回の周期T1において読み出した因子データセットを基に後の処理を実行する。
・周期T4の開始時に、第1の受信IF部62Abが、今回の読出し対象の制御データセットの先頭と末尾に同一のシーケンスIDが関連付けれているか否かを判定する(データ同時性判定)。データ同時性判定の結果が真の場合、第1の受信IF部62Abは、読出し対象の制御データセットを第1の受信領域63Abから読み出し、当該制御データセットを基に後の処理を実行する。データ同時性判定の結果が偽の場合、第1の受信IF部62Abは、直前回の周期T4において読み出した制御データセットを基に後の処理を実行する。
[第2の実施形態]
【0075】
第2の実施形態を説明する。その際、第1の実施形態との相違点を主に説明し、第1の実施形態との共通点については説明を省略又は簡略する。
【0076】
図6は、第2の実施形態に係るデータ転送システムを含むシステム全体の構成例を示す。
【0077】
第1のテスト部661Aが、第1のデータ転送装置120A(第1の転送部161Aが備えられている装置の一例)に備えられる。具体的には、第1のデータ転送装置120Aのプロセッサ123Aが、第1のテストプログラムを実行することで、第1のテスト部661Aが実現される。
【0078】
また、第2のテスト部661Bが、第2のデータ転送装置120B(第2の転送部161Bが備えられている装置の一例)に備えられる。具体的には、例えば、第2のデータ転送装置120Bのプロセッサ123Bが、第2のテストプログラムを実行することで、第2のテスト部661Bが実現される。
【0079】
第1及び第2のテスト部661A及び661Bは、異なる複数の転送周期の各々について上述した片方向又は両方向のデータ転送を試験的に行う。これにより、ネットワークの転送周期と遅延時間との関係としてのネットワーク特性が特定される。第1のテスト部661Aは、特定されたネットワーク特性を表すテスト結果データ663Aを記憶装置122Aに格納する。同様に、第2のテスト部661Bは、特定されたネットワーク特性を表すテスト結果データ663Bを記憶装置122Bに格納する。このような試験的なデータ転送は、定期的に行われる。或いは、第1及び第2のテスト部661A及び661Bは、定期的に広域無線ネットワーク100を監視し、その監視の結果から特定のネットワーク状態が検出された場合に、上述の試験的なデータ転送を行う。第1及び第2のテスト部661A及び661Bは、特定されたネットワーク特性(テスト結果データ663A及び663Bが表すネットワーク特性)に基づき、転送周期を決定する。決定された転送周期は、上述したように、制御周期T1より短く、且つ、許容される遅延時間に属するいずれかの転送周期である。第1及び第2のテスト部661A及び661Bは、当該決定された転送周期を、転送周期T2とする(転送周期データ164A及び164Bが表す転送周期T2を、決定された転送周期に更新する)。
【0080】
ネットワーク(特に無線ネットワーク)では、転送周期と遅延時間の関係は、固定の関係ではなく、同時に通信する端末の数又はその他の要素により変動する。本実施形態では、定期的に、又は、特定のネットワーク状態が検出された場合に、ネットワーク特性が特定され、転送周期T2が更新される。これにより、通信の遅延の低減を維持することができる。
【0081】
以上、幾つかの実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。例えば、本発明は、気体や液体といった流体の制御(例えば流体の圧力制御)に好適であり、被制御装置は、流体の圧力や温度等の少なくとも一つの属性を、制御指令(制御パラメータ値)に基づき調整する装置でよい。
【符号の説明】
【0082】
161A…第1のデータ転送部 161B…第2のデータ転送部
図1
図2
図3
図4
図5
図6