(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041440
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240319BHJP
E02F 9/18 20060101ALI20240319BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
E02F9/00 D
E02F9/00 N
E02F9/18
E02F9/00 M
B60K13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146262
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】白石 竜也
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA02
2D015FA01
3D038BA09
3D038BA13
3D038BB09
3D038BC14
3D038BC15
3D038BC18
(57)【要約】
【課題】排ガス後処理装置のメンテナンス時の作業性を向上させた作業機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル1は、旋回フレーム121の上面に配置されたエンジン30と、第1側面33Aと水平方向においてその反対側に配置される第2側面33Bとを有し、エンジン30の排気ガスを浄化する排ガス後処理装置33と、前記上面に配置され、排ガス後処理装置33がエンジン30に隣接するように、排ガス後処理装置33の第1側面33Aおよび第2側面33Bのうちの第1側面33Aのみを支持する支持部50と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体に支持され、上面を有する旋回フレームと、
前記上面に配置されたエンジンと、
第1側面と水平方向において前記第1側面の反対側の第2側面とを有し、前記エンジンの排気ガスを浄化する排ガス後処理装置と、
前記上面に配置され、前記排ガス後処理装置が前記エンジンに隣接するように、前記排ガス後処理装置の前記第1側面および前記第2側面のうちの前記第1側面のみを支持する支持部と、
を備える作業機械。
【請求項2】
前記支持部は、前記第1側面に対向して配置される縦板を含み、
前記排ガス後処理装置は、固定部材によって前記縦板に固定される、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記支持部は、
前記縦板を含む支持体と、
前記エンジンよりも前記旋回フレームの左右方向外側において前記上面に配置され、前記支持体を支持する架台と、
を有し、
前記架台は、
前記支持体を支持する天板と、
前記天板から下方に延びるとともに前記旋回フレームの前記上面に固定される複数の脚部と、
を有する、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記支持体は、前記天板に重なるように配置され、前記天板に固定される下板を更に有し、
前記複数の脚部は、第1脚部と第2脚部とを含み、
前記架台は、前記天板の下方において前記第1脚部と前記第2脚部とを相互に接続する補強部材であって、平面視において前記下板と交差するように配置される補強部材を更に有する、請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
平面視において前記補強部材は前記縦板と平行に配設されている、請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記エンジンに隣接するように前記旋回フレームの前記上面に配置され、回転するファンを含む熱交換器を更に備え、
前記縦板には、水平方向に沿って前記縦板を貫通する縦板通気口が形成されている、請求項2乃至5の何れか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記排ガス後処理装置は、
前記排気ガス中の第1の成分を除去する第1処理部と、
上下方向において前記第1処理部に対して間隔をおいて配置され、前記排気ガス中の第2の成分を除去する第2処理部と、
を有し、
前記縦板通気口が前記縦板を貫通する方向に沿って見た場合、前記縦板通気口は前記第1処理部と前記第2処理部との間の空間に重なるように形成されている、請求項6に記載の作業機械。
【請求項8】
前記エンジンおよび前記排ガス後処理装置を覆う外装パネルを更に備え、
前記外装パネルには、前記縦板通気口が前記縦板を貫通する方向に沿って見た場合、前記縦板通気口に重なるように配置されるパネル通気口が形成されている、請求項6に記載の作業機械。
【請求項9】
前記旋回フレームに支持されるカウンタウエイトを更に備え、
前記カウンタウエイトには、前記縦板通気口が前記縦板を貫通する方向に沿って見た場合、前記縦板通気口に重なるように配置されるウエイト通気口が形成されている、請求項6に記載の作業機械。
【請求項10】
前記エンジンおよび前記排ガス後処理装置を覆う外装パネルを更に備え、
前記外装パネルは、開き状態と閉じ状態との間で状態変更が可能な開閉部を有し、前記開き状態は前記開閉部が前記支持部の前記縦板を外部に開放する状態であって、前記閉じ状態は前記開閉部が前記縦板を覆う状態である、請求項2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスを浄化する排ガス後処理装置を有する作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンの排気ガスを除去する排ガス後処理装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の排ガス後処理装置は、排ガス中の未燃焼ガスを酸化することにより除去するとともに、選択的触媒還元の反応により窒素酸化物を除去する。
【0004】
更に、特許文献1に記載された技術では、排ガス後処理装置の左右両側部分が一対の取付板にそれぞれ支持されており、前記一対の取付板が支持機構および保持機構を介してエンジンに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、排ガス後処理装置の左右両側が一対の取付板に覆われているため、当該排ガス後処理装置のメンテナンス時の作業性が悪いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、排ガス後処理装置のメンテナンス時の作業性を向上させた作業機械を提供することにある。
【0008】
本発明によって提供されるのは、作業機械である。当該作業機械は、下部走行体に支持され、上面を有する旋回フレームと、前記上面に配置されたエンジンと、第1側面と水平方向において前記第1側面の反対側の第2側面とを有し、前記エンジンの排気ガスを浄化する排ガス後処理装置と、前記上面に配置され、前記排ガス後処理装置が前記エンジンに隣接するように、前記排ガス後処理装置の前記第1側面および前記第2側面のうちの前記第1側面のみを支持する支持部と、を備える。
【0009】
本構成によれば、排ガス後処理装置を支持する支持部が、前記排ガス後処理装置の第1側面および第2側面のうちの第1側面のみを支持している。このため、前記排ガス後処理装置の両側面を支持する場合と比較して、作業機械の外側から排ガス後処理装置へのアクセスが容易になるとともに、排ガス後処理装置の取り外し作業における手間が低減する。この結果、排ガス後処理装置のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0010】
上記の構成において、前記支持部は、前記第1側面に対向して配置される縦板を含み、前記排ガス後処理装置は、固定部材によって前記縦板に固定されるものでもよい。
【0011】
本構成によれば、排ガス後処理装置が第1側面に対向する縦板に固定部材によって固定されるため、支持部が排ガス後処理装置を安定して支持することができる。
【0012】
上記の構成において、前記支持部は、前記縦板を含む支持体と、前記エンジンよりも前記旋回フレームの左右方向外側において前記上面に配置され、前記支持体を支持する架台と、を有し、前記架台は、前記支持体を支持する天板と、前記天板から下方に延びるとともに前記旋回フレームの前記上面に固定される複数の脚部と、を有するものでもよい。
【0013】
本構成によれば、支持部が、排ガス後処理装置を支持する支持体と、当該支持体を旋回フレーム上で支持する架台とを含むため、排ガス後処理装置を安定して支持することができる。更に、架台がエンジンよりも左右方向の外側に配置されているため、作業機械の外側から排ガス後処理装置に容易にアクセスすることができる。また、架台の天板が支持体を支持するとともに、複数の脚部が前記天板を更に支えているため、旋回フレーム上で排ガス後処理装置を安定して支持することができる。更に、複数の脚部の高さを利用して、排ガス後処理装置が旋回フレームの上面から所定の高さに保持されるため、排ガス後処理装置のメンテナンスを更に容易に行うことができる。
【0014】
上記の構成において、前記支持体は、前記天板に重なるように配置され、前記天板に固定される下板を更に有し、前記複数の脚部は、第1脚部と第2脚部とを含み、前記架台は、前記天板の下方において前記第1脚部と前記第2脚部とを相互に接続する補強部材であって、平面視において前記下板と交差するように配置される補強部材を更に有するものでもよい。
【0015】
本構成によれば、支持体が天板に重なるように配置される下板を有することで、排ガス後処理装置を支持する支持体を架台の天板によって安定して支持することができる。また、第1脚部および第2脚部を相互に接続する補強部材が、下板の下方に配置されているため、排ガス後処理装置の振動を支持体および架台によって抑えることができる。この結果、支持体および架台を含む支持部の耐久性も向上させることができる。
【0016】
上記の構成において、平面視において前記補強部材は前記縦板と平行に配設されているものでもよい。
【0017】
本構成によれば、補強部材が縦板の下方において当該縦板に沿って延びているため、第1脚部と第2脚部との間で、排ガス後処理装置を安定して支えるとともに、その振動を抑えることができる。
【0018】
上記の構成において、前記エンジンに隣接するように前記旋回フレームの前記上面に配置され、回転するファンを含む熱交換器を更に備え、前記縦板には、水平方向に沿って前記縦板を貫通する縦板通気口が形成されているものでもよい。
【0019】
本構成によれば、熱交換器のファンによって発生する気流が縦板通気口を通過することができるため、気流の流れが安定し、熱交換器の冷却性能を高めることができる。
【0020】
上記の構成において、前記排ガス後処理装置は、前記排気ガス中の第1の成分を除去する第1処理部と、上下方向において前記第1処理部に対して間隔をおいて配置され、前記排気ガス中の第2の成分を除去する第2処理部と、を有し、前記縦板通気口が前記縦板を貫通する方向に沿って見た場合、前記縦板通気口は前記第1処理部と前記第2処理部との間の空間に重なるように形成されているものでもよい。
【0021】
本構成によれば、熱交換器のファンによって発生する気流が、第1処理部と第2処理部との間の空間を通じて縦板通気口に至ることができるため、気流の流れがより安定し、熱交換器の冷却性能を更に高めることができる。
【0022】
上記の構成において、前記エンジンおよび前記排ガス後処理装置を覆う外装パネルを更に備え、前記外装パネルには、前記縦板通気口が前記縦板を貫通する方向に沿って見た場合、前記縦板通気口に重なるように配置されるパネル通気口が形成されているものでもよい。
【0023】
本構成によれば、熱交換器のファンによって発生する気流が、縦板通気口からパネル通気口を通じて外部に流れることができるため、前記気流の流れが遮られにくく、熱交換器の冷却性能をより高めることができる。ファンの配置によっては、上記とは逆向きの気流の流れも可能である。
【0024】
上記の構成において、前記旋回フレームに支持されるカウンタウエイトを更に備え、前記カウンタウエイトには、前記縦板通気口が前記縦板を貫通する方向に沿って見た場合、前記縦板通気口に重なるように配置されるウエイト通気口が形成されているものでもよい。
【0025】
本構成によれば、熱交換器のファンによって発生する気流が、縦板通気口からウエイト通気口を通じて外部に流れるため、前記気流の流れが遮られにくく、熱交換器の冷却性能をより高めることができる。ファンの配置によっては、上記とは逆向きの気流の流れも可能である。
【0026】
上記の構成において、前記エンジンおよび前記排ガス後処理装置を覆う外装パネルを更に備え、前記外装パネルは、開き状態と閉じ状態との間で状態変更が可能な開閉部を有し、前記開き状態は前記開閉部が前記支持部の前記縦板を外部に開放する状態であって、前記閉じ状態は前記開閉部が前記縦板を覆う状態であるものでもよい。
【0027】
本構成によれば、外装パネルの開閉部を開けることで、縦板と排ガス後処理装置とを固定する固定部材に対して外部から容易にアクセスすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、排ガス後処理装置のメンテナンス時の作業性を向上させた作業機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る作業機械の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る作業機械の模式的な平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る作業機械における熱交換器、エンジンおよび排ガス後処理装置の位置関係を説明するための模式的な背面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る作業機械の排ガス後処理装置が支持部によって支持された状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る作業機械の排ガス後処理装置が支持部によって支持された状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る作業機械の支持部の支持体の斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る作業機械の支持部の架台の斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る作業機械の支持部の平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る作業機械の斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る作業機械の一部を拡大した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る油圧ショベル1(作業機械)の側面図を示す。
図2は、油圧ショベル1の模式的な平面図である。
【0032】
油圧ショベル1は、地面G(走行面)上を走行可能な下部走行体10(下部本体)および下部走行体10に旋回可能に支持される上部旋回体12(上部本体)と、上部旋回体12に搭載される作業アタッチメント20とを備える。下部走行体10および上部旋回体12は、油圧ショベル1の機体に相当する。
【0033】
下部走行体10は、地面G上を走行可能である。下部走行体10は、クローラ式の走行部(
図2の一対のクローラ10A)を含む。
【0034】
上部旋回体12は、前記下部走行体10に支持される旋回フレーム121と、当該旋回フレーム121上に搭載されるキャブ13と、カウンタウエイト15とを有する。キャブ13は、作業者が搭乗することを許容するものであり、油圧ショベル1を操作するための各種の装置が配置されている。カウンタウエイト15は、旋回フレーム121の後側部分に配置され、油圧ショベル1のバランスをとる錘として機能する。
【0035】
作業アタッチメント20は、上部旋回体12に対して相対移動可能なように上部旋回体12に装着され、地面に対する所定の作業を行う。作業アタッチメント20は、旋回フレーム121の前端部に水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に連結されるブーム21と、当該ブーム21の先端部に水平な回転中心軸回りに回動可能に連結されるアーム22と、当該アーム22の先端部に水平な回転中心軸回りに回動可能に連結されるバケット23とを含む。本実施形態では、ブーム21、アーム22およびバケット23の回転中心軸は互いに平行に設定されている。ブーム21およびアーム22は、油圧ショベル1の起伏体を構成する。
図2には、キャブ13の右側においてアタッチメント支持部20S(ブーム21)の基端部を支持するアタッチメント支持部20Sが図示されている。また、作業アタッチメント20は、ブーム21を起伏(回動)させるように伸縮するブームシリンダ21Sと、アーム22を回動させるように伸縮するアームシリンダ22Sと、バケット23を回動させるように伸縮するバケットシリンダ23Sとを更に有する。これらのシリンダの各々は油圧式シリンダから構成される。
【0036】
キャブ13は、旋回フレーム121の前部であって当該旋回フレーム121の幅方向(左右方向)において作業アタッチメント20と隣接する部位(
図1、
図2に示される例では作業アタッチメント20の左側)に搭載され、油圧ショベル1の操縦を行うための運転室を構成する。すなわち、当該キャブ13内において、オペレータは、下部走行体10の走行、上部旋回体12の旋回、及び作業アタッチメント20の作動のための各操作を行う。
【0037】
図3は、本実施形態に係る油圧ショベル1におけるラジエータ31、エンジン30および排ガス後処理装置33の位置関係を説明するための模式的な背面図である。
【0038】
図2および
図3を参照して、上部旋回体3は、旋回フレーム121上にそれぞれ設けられた、エンジン30、冷却ファン32を含むラジエータ31(熱交換器)、排ガス後処理装置33および支持部50を備えている。なお、各図では、上部旋回体3に設けられたキャブ13の運転席に着座したオペレータから見た方向を示している。
【0039】
エンジン30は、出力軸を有し、この出力軸が左右方向に沿うように配置された状態で旋回フレーム121の上面に設けられている。
【0040】
冷却ファン32は、
図3に示すようにエンジン30の出力軸の左端部に接続され、当該出力軸の回転に伴い回転する。
【0041】
ラジエータ31は、エンジン30の左側に隣接して設けられ、冷却水や潤滑油の冷却を行う。ラジエータ31は、前記冷却ファン32により導入される外気によって冷却される。冷却ファン32によって発生する気流は、ラジエータ31を冷却した後、上部旋回体12の内部を
図2の矢印DS方向に流れた後、外部に排気される。なお、上部旋回体12のうち、ラジエータ31の左方には、不図示の吸気口が配置されている。
【0042】
排ガス後処理装置33は、エンジン30の排気ガスを浄化する。排ガス後処理装置33は、エンジン30の右側に隣接して配置されるように、支持部50によって支持されている。以下に、排ガス後処理装置33および支持部50の具体的な構造について、更に説明する。
【0043】
図4および
図5は、本実施形態に係る油圧ショベル1の排ガス後処理装置33が支持部50によって支持された状態を示す斜視図である。
【0044】
排ガス後処理装置33は、排気ガス中の第1の成分を除去する第1処理部331と、排気ガス中の第2の成分を除去する第2処理部332とを備えている。
【0045】
第1処理部331は、排ガス中の未燃焼ガス(第1の成分の一例:炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物等)を酸化することにより除去する。本実施形態の第1処理部331は、排ガス中の未燃焼ガスを酸化除去する機能を有する酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst:以下、DOCという)を有する。なお、第1処理部331は、DOCに代えて、又は、DOCに加えて排ガス中の粒子状物質(第1の成分の一例:Particulate Matter:以下、PMという)を補足するためのフィルタ(Diesel Particulate Filter)を有していてもよい。
【0046】
第2処理部332は、選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction:以下、SCRという)の反応により排ガス中の窒素酸化物(第2の成分の一例:以下、NOxという)を除去する。第2処理部332は、上下方向において第1処理部331に対して間隔をおいて配置される。一例として、第1処理部331および第2処理部332は、前後方向に長く延びる筒形状からなる。なお、
図4、
図5では、排ガス後処理装置33のうち、第1処理部331および第2処理部332を接続、保持する一部の部材の図示を省略している。
【0047】
エンジン30から排出された排気ガスは、不図示の導入管を通じて第1処理部331内に導入され、当該第1処理部331内で前から後ろに流れたのち第2処理部332内に導入される。その後、排気ガスは、第2処理部332内で前から後ろに流れ、上部旋回体12の上部に排出される。
【0048】
なお、
図3乃至
図5に示すように、排ガス後処理装置33のうち右側の側面が第1側面33A、排ガス後処理装置33のうち第1側面33Aの反対側の左側の側面が第2側面33Bと定義される。これらの側面の形状は特に限定されるものではなく、平面、曲面などを含む。なお、前記側面は、排ガス後処理装置33を水平方向から見た場合に視認可能な範囲を意味する。第1側面33Aは、排ガス後処理装置33を右側から見た場合に視認可能な範囲を意味し、第2側面33Bは、排ガス後処理装置33を左側から見た場合に視認可能な範囲を意味する。換言すれば、前記側面は、排ガス後処理装置33を水平方向に投影した領域を意味する。
【0049】
図6は、本実施形態に係る油圧ショベル1の支持部50の支持体51の斜視図である。
図7は、油圧ショベル1の支持部50の架台52の斜視図である。
図8は、油圧ショベル1の支持部50の平面図である。
【0050】
支持部50は、旋回フレーム121の上面に配置され、排ガス後処理装置33がエンジン30に隣接するように、排ガス後処理装置33を支持する。特に、支持部50は、排ガス後処理装置33の第1側面33Aおよび第2側面33Bのうちの第1側面33Aのみを支持する。また、支持部50は、排ガス後処理装置33の第2側面33Bがエンジン30に対向して配置されるように、排ガス後処理装置33を支持している。
【0051】
具体的に、支持部50は、支持体51と、架台52とを有する。
【0052】
支持体51は、支持部50のうち排ガス後処理装置33を直接的に支持する部分である。支持体51は、支持板511(縦板)と、後方側板512と、前方側板513と、底板514(下板)とを有する。
【0053】
支持板511は、排ガス後処理装置33の第1側面33Aに対向して配置される。支持板511は、上下方向および前後方向に延びるとともに、左右方向に所定の厚さを有する矩形状の板状部である。支持板511は、排ガス後処理装置33を支持する機能を有している。具体的に、排ガス後処理装置33は、不図示の複数のボルト(固定部材)によって支持板511に固定される。詳しくは、支持板511には、複数の後処理装置用孔部51Sが形成されている。本実施形態では、
図6に示すように、支持板511の上端部および下端部のそれぞれに、前後方向に沿って間隔をおいて4つの後処理装置用孔部51Sがそれぞれ開口されている。各後処理装置用孔部51Sは、左右方向に沿って支持板511を貫通している。各後処理装置用孔部51Sに不図示のボルトが挿通されたのち、その先端部が排ガス後処理装置33の第1側面33Aに形成された不図示のボルト穴に締結されることで、排ガス後処理装置33が支持板511に固定、支持される。なお、第1側面33Aは、支持体51の支持板511に直接支持されてもよいし、第1側面33Aを支持板511に固定するための不図示の固定部材(ブラケット)を介して支持されてもよい。
【0054】
更に、支持板511のうち、上下の後処理装置用孔部51Sの間の領域には、4つの通気口51H(縦板通気口)が形成されている。各通気口51Hは、水平方向に沿って支持板511を貫通し、左右方向から見て支持体51の中央部を頂点とする三角形状からなる。換言すれば、支持板511の中央部には、支持板511の一対の対角同士を斜めに結ぶ領域を残すように、矩形状の通風孔が形成されている。
【0055】
図4を参照して、左右方向(通気口51Hが支持板511を貫通する方向)に沿って見た場合、通気口51Hは第1処理部331と第2処理部332との間の空間に重なるように形成されている。すなわち、排ガス後処理装置33の周辺では、気流が第1処理部331と第2処理部332との間の空間から右方向に向かって通気口51Hを通って、支持板511の外側(右側)に流れることができる。上記とは逆向きに気流が流れることも可能である。
【0056】
後方側板512(
図6)は、支持板511の後側の側部に接続され、支持板511から左方に延びるように配置される。同様に、前方側板513は、支持板511の前側の側部に接続され、支持板511から左方に延びるように配置される。後方側板512および前方側板513の各々は、正面視で略L字形状を有している。
【0057】
底板514は、支持板511、後方側板512および前方側板513の各々の下端部を接続する。底板514は、水平に延びる板状部である。
図6に示すように、底板514の右端部は、後方側板512および前方側板513よりも前後方向外側に僅かに突出する形状を有している。この前後の突出部には、連結用孔部51Pが形成されている。一方、
図8に示すように、底板514は平面視で左側に開口するU字形状を有しており、その一対の先端部にも、連結用孔部51Pがそれぞれ形成されている。これらの合計4つの連結用孔部51Pには、支持体51と架台52とを連結するための不図示のボルトが挿通される。
【0058】
架台52は、エンジン30よりも旋回フレーム121の左右方向外側において、旋回フレーム121の上面に配置され、支持体51を支持する。
図7を参照して、架台52は、第1脚部521と、第2脚部522と、第3脚部523と、天板524と、補強部525と(補強部材)、を有する。天板524は、支持体51を支持する部材であって、
図8に示すように、平面視で底板514を包含する大きさを有している。換言すれば、前述の支持体51の底板514は、天板524に重なるように配置され、複数のボルトによって天板524に固定される。
【0059】
第1脚部521、第2脚部522および第3脚部523(複数の脚部)は、天板524から下方に延びるとともに、旋回フレーム121の上面に固定される。各脚部の下端部には、
図7に示すように、複数の固定用孔部52Qが開口されており、この固定用孔部52Qに不図示のボルトが挿通されることで、架台52が旋回フレーム121に固定される。
図8に示すように、第1脚部521および第2脚部522は、天板524の長辺の両端部にそれぞれ配置され、第3脚部523は、平面視でU字状の底板514の開口部に対向するように配置されている。
【0060】
補強部525は、天板524の下方において第1脚部521と第2脚部522とを相互に接続する。なお、補強部525は、第1脚部521および第2脚部522のうちの少なくとも一方の脚部と一体に構成されてもよい。補強部525は、
図8に示すように平面視において支持体51の底板514と交差するように配置される。本実施形態では、補強部525は、前後方向に延びるリブである。補強部525の上端部は、天板524の下面に接続されている。更に、補強部525は、
図8に示すように、平面視において支持体51の支持板511と平行に配設されている。なお、当該平行とは、完全な平行のみならず、略平行な状態を含むものである。一例として、補強部525および支持板511のうちの一方が他方に対して、最大5度、または、最大10度程度傾いたような状態も含むことができる。また、平面視において、補強部525は、外側(右側)の2つの連結用孔部51P(固定部ともいう)と内側(左側)の2つの連結用孔部51Pとに挟まれるように配置されている。このため、複数の連結用孔部51Pが補強部525の外側のみまたは内側のみに配置される場合と比較して、排ガス後処理装置33の振動を抑制することができる。
【0061】
図9は、油圧ショベル1の斜視図である。
図10は、油圧ショベル1の一部を拡大した側面図である。なお、
図10では、上部旋回体12の内部に配置された支持板511の通気口51Hが模式的に破線で四角状に描かれている。
【0062】
油圧ショベル1は、外装パネル16を更に備える。外装パネル16は、上部旋回体12の側面部および後面部を覆うように配置される。換言すれば、外装パネル16は、前述のエンジン30、ラジエータ31、排ガス後処理装置33などを覆う。本実施形態では、外装パネル16は、平面視で略U字形状を有する。また、
図9に示すように、前述のカウンタウエイト15は、外装パネル16とともに、上部旋回体12の外観を形成するように旋回フレーム121に支持されている。
【0063】
図9、
図10に示すように、外装パネル16は、複数の外装パネル通気口16H(パネル通気口)を有する。外装パネル通気口16Hは、外装パネル16を貫通する開口部であり、左右方向に沿って見た場合、支持板511の通気口51Hに重なるように配置される。本実施形態では、外装パネル通気口16Hは、通気口51Hの上側部分に左右方向に沿って連通している。
【0064】
また、カウンタウエイト15は、カウンタウエイト通気口15H(ウエイト通気口)を有する。カウンタウエイト通気口15Hは、左右方向に沿って見た場合、支持板511の通気口51Hに重なるように配置される。本実施形態では、カウンタウエイト通気口15Hは、通気口51Hの下側部分に左右方向に沿って連通している。
【0065】
また、外装パネル16は、開閉可能な開閉扉17(開閉部)を有する。具体的に、開閉扉17は、開き状態と閉じ状態との間で状態変更が可能である。前記開き状態は開閉扉17が支持部50の支持板511を外部に開放する状態であって、前記閉じ状態は開閉扉17が支持板511を右側から覆う状態である。
【0066】
以上に説明される油圧ショベル1では、
図3乃至
図5に示すように、排ガス後処理装置33を支持する支持部50が、排ガス後処理装置33の第1側面33Aおよび第2側面33Bのうちの第1側面33Aのみを支持している。このため、排ガス後処理装置33の両側面を支持する場合と比較して、油圧ショベル1の外側から排ガス後処理装置33へのアクセスが容易になるとともに、排ガス後処理装置33の取り外し作業における手間が低減する。この結果、排ガス後処理装置33のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0067】
特に、本実施形態では、排ガス後処理装置33が第1側面33Aに対向する支持板511に複数のボルトによって固定されるため、支持部50が排ガス後処理装置33を安定して支持することができる。
【0068】
また、支持部50が、排ガス後処理装置33を支持する支持体51と、当該支持体51を旋回フレーム121上で支持する架台52とを含むため、排ガス後処理装置33を安定して支持することができる。更に、架台52がエンジン30よりも旋回フレーム121の左右方向の外側に配置されているため、エンジン30が邪魔にならず、作業者は油圧ショベル1の外側から排ガス後処理装置33に容易にアクセスすることができる。
【0069】
また、架台52の天板524が支持体51を支持するとともに、複数の脚部521、522、523が天板524を更に支えているため、旋回フレーム121上で排ガス後処理装置33を安定して支持することができる。また、複数の脚部の高さを利用して、排ガス後処理装置33が旋回フレーム121の上面から所定の高さに保持されるため、排ガス後処理装置33のメンテナンスを更に容易に行うことができる。なお、本実施形態では、支持体51と架台52とを接続している複数のボルトを緩めることで、支持体51を架台52から取り外すことができる。この際、排ガス後処理装置33が支持板511に固定されたままで、支持体51と排ガス後処理装置33とを一体で、油圧ショベル1の上部旋回体12から取り外すことも可能である。
【0070】
更に、本実施形態では、支持体51が天板524に重なるように配置される底板514を有しているため、排ガス後処理装置33を支持する支持体51を架台52の天板524によって更に安定して支持することができる。また、第1脚部521および第2脚部522を相互に接続する補強部525が、底板514の下方に配置されているため、排ガス後処理装置33の振動を支持体51および架台52によって抑えることができる。この結果、支持体51および架台52を含む支持部50の耐久性も向上させることができる。また、第1脚部521および第2脚部522を相互に接続する補強部525の上端部が天板524にも繋がっているため、排ガス後処理装置33の振動を支持体51および架台52によって更に安定して抑えることができる。
【0071】
また、本実施形態では、
図8に示すように、平面視において補強部525は支持板511と平行に配設されている。このような構成によれば、補強部525が支持板511の下方において当該支持板511に沿って延びているため、第1脚部521と第2脚部522との間で、排ガス後処理装置33を安定して支えるとともに、その振動を更に抑えることができる。
【0072】
また、支持板511には、水平方向に沿って支持板511を貫通する通気口51Hが形成されている。このため、ラジエータ31の冷却ファン32によって発生する気流が通気口51Hを通過することができるため、気流の流れが安定し、ラジエータ31の冷却性能を高めることができる。
【0073】
更に、本実施形態では、左右方向に沿って見た場合、通気口51Hは第1処理部331と第2処理部332との間の空間に重なるように形成されている。このため、ラジエータ31の冷却ファン32によって発生する気流は、第1処理部331と第2処理部332との間の空間を通じて通気口51Hに至ることができるため、気流の流れがより安定し、ラジエータ31の冷却性能を更に高めることができる。冷却ファン32の配置によっては、上記とは逆の気流の流れも可能である。
【0074】
また、
図10に示すように、左右方向に沿って見た場合、外装パネル通気口16Hが、通気口51Hに重なるように配置される。このため、ラジエータ31の冷却ファン32によって発生する気流が、通気口51Hから外装パネル通気口16Hを通じて外部に流れるため、前記気流の流れが遮られにくく、ラジエータ31の冷却性能をより高めることができる。冷却ファン32の配置によっては、上記とは逆の気流の流れも可能である。
【0075】
同様に、左右方向に沿って見た場合、カウンタウエイト通気口15Hが、通気口51Hに重なるように配置される。このため、ラジエータ31の冷却ファン32によって発生する気流が、通気口51Hからカウンタウエイト通気口15Hを通じて外部に流れるため、前記気流の流れが遮られにくく、ラジエータ31の冷却性能をより高めることができる。冷却ファン32の配置によっては、上記とは逆の気流の流れも可能である。
【0076】
また、支持板511の配置について付言すると、本実施形態では、支持体51の支持板511が排ガス後処理装置33から見てエンジン30の反対側に配設されるため、ラジエータ31の冷却ファン32によって発生する気流がエンジン30および排ガス後処理装置33を通過したのち、通気口51Hから排出される。このため、各装置の冷却性能も高めることができる。更に、支持板511と排ガス後処理装置33とを固定する不図示のボルトへの外部からのアクセスがエンジン30によって妨げられることが抑止される。
【0077】
この際、オペレータは、外装パネル16の開閉扉17を開けることで、前記ボルトに対して外部から容易にアクセスすることも可能である。
【0078】
以上、本発明に係る作業機械として油圧ショベル1について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の更なる例として、以下のような変形実施形態をとることができる。
【0079】
本発明の第1変形実施形態として、排ガス後処理装置33の第1側面33Aは、排ガス後処理装置33の前側、左側および後側の何れかの側面でもよい。この場合、支持体51の支持板511は、当該側面に対向して配置され、前記側面に固定されればよい。
【0080】
支持部50は、支持体51および架台52から構成されるものに限定されない。本発明の第2変形実施形態として、支持部50は一体の構造物でもよい。
【0081】
排ガス後処理装置33はエンジン30の右側に配置されるものに限定されない。本発明の第3変形実施形態として、排ガス後処理装置33は、エンジン30の前側、左側および後側のいずれかに配置されるものでもよい。
【0082】
排ガス後処理装置33は、第1処理部331および第2処理部332から構成されるものに限定されない。本発明の第4変形実施形態として、排ガス後処理装置33は、一つの処理部を有するものでもよいし、3以上の処理部を有するものでもよい。また、本発明に係る熱交換器は、ラジエータに限定されるものではなく、エアコンコンデンサやオイルクーラーなど他の態様でもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 油圧ショベル(作業機械)
10 下部走行体
12 上部旋回体
121 旋回フレーム
13 キャブ
15 カウンタウエイト
15H カウンタウエイト通気口(ウエイト通気口)
16 外装パネル
16H 外装パネル通気口(パネル通気口)
17 開閉扉(開閉部)
20 作業アタッチメント
30 エンジン
31 ラジエータ(熱交換器)
32 冷却ファン(ファン)
33 排ガス後処理装置
331 第1処理部
332 第2処理部
33A 第1側面
33B 第2側面
50 支持部
51 支持体
511 支持板(縦板)
512 後方側板
513 前方側板
514 底板(下板)
51H 通気口(縦板通気口)
52 架台
521 第1脚部(脚部)
522 第2脚部(脚部)
523 第3脚部(脚部)
524 天板
525 補強部(補強部材)
G 地面