(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041454
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240319BHJP
B65D 85/30 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/30 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146284
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】本間 史也
(72)【発明者】
【氏名】小川 統
(72)【発明者】
【氏名】三村 博
【テーマコード(参考)】
3E096
5F131
【Fターム(参考)】
3E096AA03
3E096BA16
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3E096GA03
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5F131GA94
5F131GA99
(57)【要約】
【課題】 アダプタからレチクル収容容器が浮き上がるのを抑制し、レチクル収容容器を上方向に傾けて容易に取り外し可能な基板収納容器を提供する。
【解決手段】 半導体ウェーハ収納用の容器本体と、容器本体に収納されるレチクル収容容器30用のアダプタ40と、アダプタ40の搭載面41に配設されるレチクル収容容器30用の複数の位置決めバー50とを備え、容器本体内の両側に、半導体ウェーハを水平に支持する一対の支持片を対設して上下方向に配列し、アダプタ40を一対の支持片に支持される円板に形成して搭載面後部にレチクル収容容器30に隙間を介し対向する傾斜角拡大溝43を形成し、複数の位置決めバー50を、レチクル収容容器30の周縁前部用の前部位置決めバー52と、周縁後部用の後部位置決めバー53と、周縁側部用の側部位置決めバー57とから構成し、後部位置決めバー53を断面逆L字形として傾斜角拡大溝43に隣接させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の半導体ウェーハを上下方向に並べて収納可能な容器本体と、この容器本体の開口した正面に着脱自在に嵌め合わされる蓋体と、容器本体に収納されるレチクル収容容器搭載用のアダプタと、このアダプタのレチクル収容容器用の搭載面に配設されてレチクル収容容器を位置決めする複数の位置決め部材とを含んでなる基板収納容器であって、
容器本体の内部両側に、半導体ウェーハを略水平に支持可能な一対の支持片を対向させて設け、この一対の支持片を上下方向に所定の間隔で複数配列し、
アダプタを容器本体内の一対の支持片に支持される形状に形成し、このアダプタの搭載面後部に、レチクル収容容器の底面に隙間を介して対向する傾斜角拡大溝を形成し、
複数の位置決め部材は、レチクル収容容器の周縁前部に接近して位置決めする前部位置決め部材と、レチクル収容容器の周縁後部に接近して位置決め係止する後部位置決め部材と、レチクル収容容器の周縁側部に接近して位置決めする側部位置決め部材とを含み、後部位置決め部材を断面略逆L字形に形成して傾斜角拡大溝に接近させたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
アダプタと複数の位置決め部材の少なくともいずれかを、樹脂と導電フィラー含有の成形材料により成形した請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
傾斜角拡大溝を、アダプタの搭載面後部に連接されて徐々に下降する傾斜面と、この傾斜面に連接されて後部位置決め部材に隣接する平坦面とから形成した請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
後部位置決め部材を、傾斜角拡大溝の平坦面に隣接してレチクル収容容器の周縁後部に横方向から対向する起立部と、この起立部に着脱自在に取り付けられてレチクル収容容器の周縁後部に上方から係止する係止被覆部とに分割した請求項3記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの他、レチクル用のレチクル収容容器を収納可能な基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造ラインのリソグラフィ工程においては、半導体ウェーハに電子回路を形成するため、複数枚のレチクルが使用されるが、半導体ウェーハとレチクルとでは、一度に搬送できる枚数が異なり、1枚の半導体ウェーハに電子回路を形成するために複数枚のレチクルを何回も搬送する必要があるので、半導体ウェーハの搬送効率の向上に支障を来すことがある。また、半導体ウェーハ用の基板収納容器とレチクル用の収容容器とは、大きさや搬送形態が相違し、別々の搬送ラインが要求されるので、複数の搬送ラインを設置しなければならず、設備やコスト、スペース占有等の点で問題が生じる。
【0003】
これらの問題を解消するため、従来においては、図示しないが、半導体ウェーハ用の基板収納容器の容器本体にレチクル用のレチクル収容容器を専用のアダプタを介して収納し、一種類の基板収納容器を用いて搬送する技術が提案されている(特許文献1、2、3、4参照)。
【0004】
アダプタは、半導体ウェーハと略同じ大きさの円板に形成され、レチクル収容容器を搭載する。このアダプタのレチクル収容容器を搭載する搭載面の周縁部付近には、レチクル収容容器を前後左右から位置決めする複数の位置決めバーが矩形を描くよう間隔をおいて配設され、各位置決めバーが直線的な略I字形、あるいは平面略半円形に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7‐58192号公報
【特許文献2】特開2011‐3723号公報
【特許文献3】特開2013‐239507号公報
【特許文献4】特開2013‐239643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アダプタにレチクル収容容器が単に搭載される場合、アダプタからレチクル収容容器が浮き上がって位置ずれしたり、脱落したりし、その結果、レチクル収容容器内のレチクルが損傷するおそれがある。このおそれを払拭する手段としては、例えば後部の位置決めバーを断面逆L字形に形成してレチクル収容容器の周縁後部に隙間なく位置決め係止させ、レチクル収容容器が浮き上がって位置ずれするのを防止する方法が考えられる。
【0007】
しかし、この方法の場合には、レチクル収容容器の浮き上がりを防ぐことができるものの、後部の位置決めバーの隙間のないきつい係止により、レチクル収容容器を上方向に大きく傾斜させることが困難なので、アダプタからレチクル収容容器を取り外す作業に支障を来すという大きな問題が新たに生じるおそれがある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、アダプタからレチクル収容容器が浮き上がるのを抑制し、レチクル収容容器を上方向に傾けてアダプタから容易に取り外すことのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、複数枚の半導体ウェーハを上下方向に並べて収納可能な容器本体と、この容器本体の開口した正面に着脱自在に嵌め合わされる蓋体と、容器本体に収納されるレチクル収容容器搭載用のアダプタと、このアダプタのレチクル収容容器用の搭載面に配設されてレチクル収容容器を位置決めする複数の位置決め部材とを含んでなるものであって、
容器本体の内部両側に、半導体ウェーハを略水平に支持可能な一対の支持片を対向させて設け、この一対の支持片を上下方向に所定の間隔で複数配列し、
アダプタを容器本体内の一対の支持片に支持される形状に形成し、このアダプタの搭載面後部に、レチクル収容容器の底面に隙間を介して対向する傾斜角拡大溝を形成し、
複数の位置決め部材は、レチクル収容容器の周縁前部に接近して位置決めする前部位置決め部材と、レチクル収容容器の周縁後部に接近して位置決め係止する後部位置決め部材と、レチクル収容容器の周縁側部に接近して位置決めする側部位置決め部材とを含み、後部位置決め部材を断面略逆L字形に形成して傾斜角拡大溝に接近させたことを特徴としている。
【0010】
なお、アダプタの搭載面、前部位置決め部材、及び側部位置決め部材の少なくともいずれかに、レチクル収容容器の周縁部に上方から係止(係り合って止まる)するクランプ部材を回転可能に取り付けることができる。
また、アダプタと複数の位置決め部材の少なくともいずれかを、樹脂と導電フィラー含有の成形材料により成形することができる。
【0011】
また、傾斜角拡大溝を、アダプタの搭載面後部に連接(連なって接続している)されて徐々に下降する傾斜面と、この傾斜面に連接されて後部位置決め部材に隣接する平坦面とから形成することが可能である。
さらに、後部位置決め部材を、傾斜角拡大溝の平坦面に隣接してレチクル収容容器の周縁後部に横方向から対向する起立部と、この起立部に着脱自在に取り付けられてレチクル収容容器の周縁後部に上方から係止する係止被覆部とに分割することが可能である。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における半導体ウェーハには、少なくともφ300mmやφ450mmのシリコンウェーハ等が含まれる。また、容器本体や蓋体の少なくとも一部は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。容器本体における支持片の表面の少なくとも前部には、半導体ウェーハやアダプタ用のストッパを形成することができる。また、レチクル収容容器は、5~7インチのレチクルを収容する平面多角形の箱型でも良いし、カセット型等でも良い。
【0013】
アダプタは、平面円形、楕円形、矩形、多角形、正方形等に適宜形成することができる。また、後部位置決め部材の「断面略逆L字形」には、断面逆L字形と、おおよそ断面逆L字形と認められる類似形(例えば、断面逆J字形や断面逆Γ字形等)のいずれもが含まれる。クランプ部材の「回転」という用語には、回動や揺動が含まれる。さらに、基板収納容器は、半導体工場用のFOUPが主ではあるが、出荷・輸送用のFOSBでも良い。
【0014】
本発明によれば、アダプタに搭載されるレチクル収容容器の周縁後部を後部位置決め部材に接近させて位置決めし、かつ係止させるので、アダプタからレチクル収容容器が浮き上がったり、がたつくのを防ぐことができる。また、傾斜角拡大溝にレチクル収容容器の底面が接触すれば、レチクル収容容器の周縁後部と後部位置決め部材との間に傾斜用の隙間を区画することができるので、レチクル収容容器を所定の角度で上方向に傾斜させ、アダプタからレチクル収容容器を比較的簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、後部位置決め部材を断面略逆L字形に形成して傾斜角拡大溝に接近させるので、アダプタからレチクル収容容器が浮き上がるのを抑制し、レチクル収容容器を上方向に傾けてアダプタから容易に取り外すことができるという効果がある。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、アダプタと複数の位置決め部材の少なくともいずれかを、樹脂と導電フィラー含有の成形材料により成形するので、導電性を付与してレチクルの静電気破壊を防ぐことができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、傾斜角拡大溝を、アダプタの搭載面後部に連接されて徐々に下降する傾斜面と、この傾斜面に連接されて後部位置決め部材に隣接する平坦面とから形成するので、傾斜角拡大溝の平坦面にレチクル収容容器の底面が接触すれば、レチクル収容容器の周縁後部と後部位置決め部材との間に傾斜用の隙間を形成することができる。また、傾斜面にレチクル収容容器の底面が案内されつつアダプタの前方に上昇しながら移動すれば、レチクル収容容器の上方向への傾斜角を拡大させることが可能となる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、後部位置決め部材を、傾斜角拡大溝の平坦面に隣接してレチクル収容容器の周縁後部に横方向から対向する起立部と、この起立部に着脱自在に取り付けられてレチクル収容容器の周縁後部に上方から係止する係止被覆部とに分割して組み立て可能としたので、複雑な形状の後部位置決め部材を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
【
図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体内に収納された複数のアダプタを模式的に示す断面説明図である。
【
図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体内に収納されたアダプタを模式的に示す斜視説明図である。
【
図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるアダプタに搭載されたレチクル収容容器を模式的に示す斜視説明図である。
【
図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるアダプタからレチクル収容容器を上方に傾けて取り外す作業状態を示す説明図である。
【
図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるレチクル収容容器、アダプタとその傾斜角拡大溝、及び後部位置決めバーの関係を示す要部説明図である。
【
図7】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態における容器本体とアダプタの関係を模式的に示す斜視説明図である。
【
図8】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態におけるアダプタに搭載されたレチクル収容容器の係止状態を模式的に示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図6に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを上下方向に整列収納可能な容器本体1と、この容器本体1の開口した正面に着脱自在に嵌合される蓋体10と、容器本体1に必要数が収納されるレチクル収容容器30搭載用のアダプタ40と、このアダプタ40のレチクル収容容器30用の搭載面41に配設されてレチクル収容容器30を位置決めする複数の位置決めバー50とを備えた半導体工場用のFOUPであり、アダプタ40の搭載面41に、レチクル収容容器30の底面に隙間を介して対向する傾斜角拡大溝43を形成し、複数の位置決めバー50の後部位置決めバー53を断面逆L字形に形成して傾斜角拡大溝43に近接させることにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0021】
複数枚の半導体ウェーハWは、
図1に示すように、例えばφ300mmの丸いシリコンウェーハからなり、容器本体1の内部に25枚が上下方向に並べて整列収納され、各半導体ウェーハWが水平に支持される。
【0022】
容器本体1と蓋体10とは、所定の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。この成形材料の樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。熱可塑性樹脂には、導電性を付与するため、適量のカーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性高分子、金属繊維、金属酸化物等が添加される。
【0023】
容器本体1は、
図1ないし
図3に示すように、正面が横長に開口した背の高いフロントオープンボックスに成形され、内部の両側、換言すれば、左右両側壁の内面に、半導体ウェーハWの周縁側部を下方から水平に支持する一対の支持片2が対設されており、この一対の支持片2が上下方向に所定の間隔で複数配列される。この容器本体1は、例えば25枚の半導体ウェーハWを上下方向に並べて整列収納可能な大きさに形成される。また、各支持片2は、例えば容器本体1の前後方向に伸びる平坦な棚板に形成され、表面の前後部のうち、少なくとも前部に収納された半導体ウェーハWが正面方向に位置ずれするのを防止するストッパ3が隆起して一体形成される。
【0024】
容器本体1の底板下面にはボトムプレート4が選択的に装着され、容器本体1の天井中央部には、自動搬送用の搬送具である平面矩形のロボティックフランジ5が着脱自在に装着されており、このロボティックフランジ5が半導体工場の天井搬送装置に把持して吊持された後、半導体の製造ラインを搬送される。また、容器本体1の内部背面には、非常時に半導体ウェーハWの周縁後部を挟持可能な複数のリアサポートが並設される。容器本体1の正面周縁部は幅方向外側に屈曲して膨出形成されており、この正面周縁部の内面における上部両側と下部両側とには、蓋体10用の施錠穴6がそれぞれ凹み形成される。
【0025】
容器本体1の両側壁の外面には、手動操作用の操作ハンドル7がそれぞれ着脱自在に装着され、各側壁の下部には、自動搬送具である搬送レール8が必要に応じ着脱自在に装着されて前後方向に水平に指向する。
【0026】
蓋体10は、
図1に示すように、容器本体1の正面に着脱自在に嵌合される断面略皿形の蓋本体11と、この蓋本体11の開口した表面を覆うカバープレート14とを備え、これら蓋本体11とカバープレート14との間に施錠機構16が内蔵される。蓋本体11は、横長の略矩形に形成され、裏面の中央部に、半導体ウェーハWの周縁前部を弾性片で弾発的に保持するフロントリテーナ12が着脱自在に装着される。また、蓋本体11の周壁には、容器本体1の正面内周に圧接変形する枠形のガスケットが嵌合され、蓋本体11の周壁における上部両側と下部両側とには、施錠機構16用の出没孔13がそれぞれ貫通して穿孔される。
【0027】
カバープレート14は、透明、半透明、あるいは不透明の板に形成され、両側部に、施錠機構16用の操作孔15がそれぞれ貫通して穿孔されており、各操作孔15を蓋体開閉装置の回転可能な操作キーが外部から貫通する。
【0028】
施錠機構16は、
図1に示すように、カバープレート14の操作孔15を貫通した蓋体開閉装置の操作キーに回転操作される左右一対の回転プレート17と、各回転プレート17の回転に応じて上下方向にスライドする複数のスライドバー19と、各スライドバー19の先端部に連結軸支され、蓋本体周壁の出没孔13を貫通して容器本体1の施錠穴6に嵌合係止する出没可能な複数の施錠爪20とを備えて構成される。
【0029】
施錠機構16は、容器本体1や蓋体10と同様の成形材料により成形される。複数の回転プレート17とスライドバー19とは、蓋本体11内に設けられる支持リブを介して軸支されたり、支持されたりし、各回転プレート17の周縁部寄りの一対の円弧溝孔18にスライドバー19の末端部がピンを介しそれぞれ遊嵌される。また、各施錠爪20は、例えば断面略L字形に屈曲形成され、自由端部に摩擦軽減用のローラが回転可能に軸支される。
【0030】
このような基板収納容器は、容器本体1内に複数枚の半導体ウェーハWが順次収納され、容器本体1の正面に蓋体10が蓋体開閉装置により圧入して嵌合されるとともに、各半導体ウェーハWの周縁前部をフロントリテーナ12が保持し、施錠機構16が蓋体開閉装置に施錠操作されて蓋体10を強固に固定する。蓋体10が強固に固定されると、容器本体1のロボティックフランジ5が半導体工場の天井搬送装置に吊持され、次の加工処理工程に搬送されて各半導体ウェーハWに加工と処理とが順次施され、半導体ウェーハWの表面に電子回路が形成されることとなる。
【0031】
レチクル収容容器30は、特に限定されるものではないが、
図4ないし
図6に示すように、例えば6インチのレチクルを1枚収容してアダプタ40に搭載される平面矩形の底板31と、この底板31にシールガスケットを介し上方から着脱自在に嵌合される平面略矩形の上蓋32とを備えたレチクルSMIFポッド(RSP)である。このレチクル収容容器30の底板31と上蓋32とは、例えば静電気によるレチクルの損傷を防止する観点から、カーボン等の導電材料を含有する所定の成形材料(例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等の各種合成樹脂)によりそれぞれ成形される。
【0032】
底板31は、相対向する平面略矩形の上板と下板とを備え、これら上板と下板との間に隙間が区画形成されており、この隙間に施錠用のロック機構が内蔵される。上板の上面には、1枚のレチクルの周縁部を水平に支持する一対の支持部材が間隔をおいて敷設され、各支持部材がレールに形成されており、上板の上面周縁部付近には、弾性変形可能な平面枠形のシールガスケットが装着される。
【0033】
上蓋32は、例えば透明あるいは半透明の断面略ハット形に形成され、底板31との嵌合時に幅方向外側に水平に突出するフランジにより、シールガスケットを圧接変形してシール性を確保する。この上蓋32の内部天井には、レチクルの上面周縁部に接触して保持する一対の保持部材が間隔をおいて対設され、各保持部材が例えばレールに形成されて支持部材に上方から対向する。
【0034】
上蓋32の幅方向外側に突出するフランジは、その周縁部33の先端が下方に短く屈曲形成されて底板31の周面に対向し、この先端の内面に、ロック機構の出没バーの先端部に嵌合されるロック溝がそれぞれ凹み形成される。また、上蓋32の外面天井には、搬送装置等に把持される搬送用フランジ34が装着される。
【0035】
レチクル収容容器30の製品例としては、RSP‐150、RSP‐200〔大日商事株式会社製:製品名〕、レチクルケース〔ナガセエンジニアリング株式会社製:製品名〕、レチクルカセット〔三洋マテリアル株式会社製:製品名〕等があげられる。
【0036】
アダプタ40は、
図2ないし
図6に示すように、容器本体1内の一対の支持片2に支持される略板形に成形され、レチクル収容容器30を搭載する平坦な上面である搭載面41の後部に、レチクル収容容器30の底板後部に隙間を介して対向する逃げ(relief)が傾斜角拡大溝43に凹み形成されており、この傾斜角拡大溝43が左右横方向に伸長される。アダプタ40は、所定の成形材料により、基本的には容器本体1の隣接する支持片2と支持片2との間に挿入可能な厚さと大きさを有する円板に成形され、容器本体1の正面側に位置する前部42が位置方向を示す観点から左右方向に直線的に切り欠かれており、左右の両側部が容器本体1の一対の支持片2に水平に支持される。
【0037】
アダプタ40の所定の成形材料としては、例えば耐薬品性・耐摩耗性・耐衝撃性・汎用性等に優れる軽量のポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等の各種合成樹脂、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系等の熱可塑性エラストマーがあげられる。この成形材料には、導電性を付与してレチクルの静電気破壊を防止するため、適量のカーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性高分子、金属繊維、金属酸化物等が好ましくは添加される。
【0038】
傾斜角拡大溝43は、
図5や
図6に示すように、アダプタ40の搭載面後部に連接されて徐々に下降しながら傾く傾斜面44と、この傾斜面44の端部に水平に連接されて後部位置決めバー53に隣接する平坦面45とから一体形成され、レチクル収容容器30の取り外し時にレチクル収容容器30を上方向に大きく傾斜させ、レチクル収容容器30の取り外し作業に資するよう機能する。この傾斜角拡大溝43は、例えば傾斜面44が10°程度の傾斜角度で傾斜してレチクル収容容器30の底面後部に摺接され、平坦面45がアダプタ40の搭載面41から1mm程度の深さで切り欠かれて傾斜面44よりも低位に位置する。
【0039】
複数の位置決めバー50は、
図2ないし
図4に示すように、アダプタ40の搭載面41の周縁部付近に螺着されて平面矩形の搭載領域51を描くよう間隔をおいて配列され、各位置決めバー50が平面略半円形等に形成されており、レチクル収容容器30の上蓋周縁部33に前後左右から近接して位置決めするよう機能する。この複数の位置決めバー50は、アダプタ40と同様の成形材料により成形され、この成形材料には導電性を付与してレチクルの静電気破壊を防止するため、適量のカーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性高分子、金属繊維、金属酸化物等が好ましくは添加される。
【0040】
複数の位置決めバー50は、レチクル収容容器30の上蓋の周縁前部に近接して位置決めする前部位置決めバー52と、レチクル収容容器30の上蓋32の周縁後部に近接して位置決め係止する後部位置決めバー53と、レチクル収容容器30の上蓋32の周縁側部に近接して位置決めする左右一対の側部位置決めバー57とを備えてレチクル収容容器30の四隅部以外の大部分を包囲し、前部位置決めバー52にレチクル収容容器30用のクランプ58が回転可能に支持される。前部位置決めバー52、後部位置決めバー53、及び左右一対の側部位置決めバー57の間には隙間がそれぞれ区画形成され、後部位置決めバー53がやや背の高い断面逆L字形に屈曲形成される。
【0041】
後部位置決めバー53は、製造作業や組立作業を容易にする観点から、
図5や
図6に示すように、上蓋32の周縁後部に横方向から対向近接するブロック形の起立部54と、この起立部54に螺子等の複数の締結具55を介し着脱自在に螺着されて上蓋32の周縁後部に上方から係止する平面略半円形で略L字形の係止被覆部56とに分割され、起立部54が傾斜角拡大溝43の平坦面45に隣接しており、位置決め機能の他、係止機能を発揮する。
【0042】
クランプ58は、
図2ないし
図5に示すように、前部位置決めバー52の中央部にボルト60を介して支持され、水平横方向に回転する。このクランプ58は、アダプタ40や位置決めバー50と同様の成形材料により略倒L字形に成形され、レチクル収容容器30の上蓋周縁部33に長片部を上方から係止してZ方向への浮き上がりを防止したり、長片部の係止を解除してレチクル収容容器30の取り外しを可能にするよう機能する。
【0043】
クランプ58の成形材料には、レチクルの静電気破壊を防止する観点から、好ましくは適量のカーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性高分子、金属繊維、金属酸化物等が添加される。また、ボルト60は、特に限定されるものではないが、例えば耐熱性や機械特性等に優れる高機能のポリエーテルエーテルケトン樹脂等により成形され、クランプ58の短片筒部59に上方から螺挿される。
【0044】
上記構成において、基板収納容器の容器本体1にレチクルを収容したレチクル収容容器30をアダプタ40を介して収納する場合には、先ず、アダプタ40を用意してそのクランプ58の長片部を前部位置決めバー52の左右長手方向に向け、アダプタ40の搭載面41に傾けたレチクル収容容器30の後部を接触させ、このレチクル収容容器30を後方にスライドさせてその上蓋32の周縁後部を後部位置決めバー53の係止被覆部56に係止させる(
図5参照)とともに、前部位置決めバー52、後部位置決めバー53、及び一対の側部位置決めバー57の間の搭載領域51にレチクル収容容器30を嵌入して位置決めする。
【0045】
レチクル収容容器30を嵌入して搭載したら、クランプ58の長片部をアダプタ40の中心部方向に回転させ、クランプ58の長片部をレチクル収容容器30の周縁部に係止させてレチクル収容容器30がZ方向に浮き上がらないようにし(
図4参照)、空の容器本体1内に複数のアダプタ40を順次収納してその両側部を容器本体1の対向する一対の支持片2にそれぞれ支持させ、アダプタ40の位置や姿勢を安定させた後、容器本体1の開口した正面に蓋体10を圧入して嵌合すれば、容器本体1にレチクル収容容器30をアダプタ40を介し安全に収納することができる。この際、アダプタ40とアダプタ40の間隔を空け、アダプタ40の下面にレチクル収容容器30が衝突しないようにすることが好ましい。
【0046】
次に、基板収納容器の容器本体1からアダプタ40を引き抜いてレチクル収容容器30を取り外す場合には、先ず、容器本体1の正面から蓋体10を引き抜いて取り外し、容器本体1の開口した正面からアダプタ40を引き抜く。こうして容器本体1からアダプタ40を引き抜いたら、クランプ58を回転させてその長片部をアダプタ40の中心部方向から前部位置決めバー52の左右長手方向に向けることにより、クランプ58の長片部のレチクル収容容器30に対する係止を解除し、レチクル収容容器30の前部両側を摘まんで徐々に引き上げる(
図5参照)とともに、このレチクル収容容器30を前部42方向に徐々にスライド(
図5参照)させてその上蓋32の周縁後部に対する後部位置決めバー53の係止被覆部56の係止を解除する。
【0047】
この際、レチクル収容容器30の底面後部は、傾斜角拡大溝43の平坦面45に落下してレチクル収容容器30の周縁後部と後部位置決めバー53の係止被覆部56との間に動作用の隙間を形成した後、傾斜角拡大溝43の傾斜面44に案内されつつアダプタ40の前部42方向に上昇しながらスライドするので、係止被覆部56の存在に拘わらず、係止被覆部56の係止が円滑かつ確実に解除され、レチクル収容容器30の上方向への傾斜角が拡大する。
【0048】
後部位置決めバー53の係止を解除したら、レチクル収容容器30の前部両側を掴んで前部位置決めバー52、後部位置決めバー53、及び一対の側部位置決めバー57の間の搭載領域51から持ち上げれば、アダプタ40からレチクル収容容器30を取り外し、このレチクル収容容器30からレチクルを取り出すことができる。
【0049】
上記構成によれば、アダプタ40に搭載されたレチクル収容容器30の周縁後部と後部位置決めバー53の起立部54とを近接させて位置決めするとともに、後部位置決めバー53の係止被覆部56を係止させるので、レチクル収容容器30がアダプタ40の前後方向にずれるのを抑制することができ、しかも、アダプタ40からレチクル収容容器30がZ方向に浮き上がって位置ずれしたり、がたついたり、脱落するのを防ぐことができる。また、別体の起立部54と係止被覆部56とを組み立てて後部位置決めバー53を構成するので、形状が複雑な後部位置決めバー53を容易に組み立てて使用することができる。
【0050】
また、レチクル収容容器30に後部位置決めバー53を係止させる他、クランプ58をも係止させ、レチクル収容容器30を前後二箇所で係止するので、例え基板収納容器が衝突して外力が作用しても、アダプタ40からレチクル収容容器30が浮き上がって位置ずれしたり、がたついたり、脱落するのを有効に防止することができる。したがって、レチクル収容容器30内のレチクルの損傷防止が大いに期待できる。
【0051】
また、傾斜角拡大溝43の平坦面45にレチクル収容容器30の底面後部が接触すれば、レチクル収容容器30の周縁後部と後部位置決めバー53の係止被覆部56との間に揺動用の隙間を区画形成することができるので、係止被覆部56の存在に拘わらず、レチクル収容容器30を上方向に大きく傾斜させることが可能となる。したがって、アダプタ40からレチクル収容容器30を取り外す作業に何ら支障を来すことがない。さらに、アダプタ40、複数の位置決めバー50、及びクランプ58を樹脂と導電フィラー含有の成形材料によりそれぞれ成形すれば、導電性の付与によりレチクルの静電気破壊を防止することが可能となる。
【0052】
次に、
図7は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、前部位置決めバー52に、水平横方向に回転可能な左右一対のクランプ58をボルト60を介しそれぞれ支持させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、一対のクランプ58を用いるので、例え一方のクランプ58が外れても、他方のクランプ58により、レチクル収容容器30の位置ずれやがたつき、脱落等を確実に防止することができる。
【0053】
次に、
図8は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、前部位置決めバー52と一対の側部位置決めバー57の中央部にクランプ58をボルト60を介しそれぞれ回転可能に支持させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、クランプ58の数を増やして後部位置決めバー53と共に前後左右の四箇所で係止するので、レチクル収容容器30が浮き上がって位置ずれしたり、がたついたり、脱落するのを確実に防止することができるのは明らかである。
【0054】
なお、上記実施形態ではアダプタ40、複数の位置決めバー50、及びクランプ58を樹脂と導電フィラー含有の成形材料により成形したが、これらの少なくともいずれかを樹脂と導電フィラー含有の成形材料により成形しても良い。また、アダプタ40の径方向に、複数の位置決めバー50用の取付孔を複数穿孔し、レチクル収容容器30の大きさに応じ、複数の取り付け孔に位置決めバー50を選択的に螺着しても良い。また、アダプタ40の下面における両側部周縁に、支持片のストッパ3に近接する切り欠きを他の部分よりも厚さが薄くなるようそれぞれ形成し、各切り欠きを支持片のストッパ3に接触させてアダプタ40が前後方向、特に前方向に位置ずれしたり、がたつくのを防止するようにしても良い。
【0055】
また、アダプタ40の搭載面41に必要数の凹凸を配列形成してレチクル収容容器30の底面との間に僅かな隙間を形成可能とし、レチクル収容容器30の取り付け取り外しを容易にしても良い。また、段差である傾斜角拡大溝43の傾斜面44を後方に延長し、平坦面45を省略しても良い。また、上記実施形態では前部位置決めバー52と一対の側部位置決めバー57のうち、少なくとも前部位置決めバー52にクランプ58を支持させたが、一対の側部位置決めバー57のみに必要数のクランプ58を回転可能に支持させることができる。
【0056】
また、特に支障を来さなければ、アダプタ40の搭載面41に必要数のクランプ58を回転可能に支持させることができる。また、各位置決めバー50に可撓性やバネ性を付与してレチクル収容容器30の周縁部に密接させ、レチクル収容容器30の位置ずれや脱落を防止することもできる。また、後部位置決めバー53の係止被覆部56のレチクル収容容器30に対向する起立面を傾斜させてレチクル収容容器30の上方への傾斜角を拡大させることが可能である。さらに、後部位置決めバー53の締結具55は、クランプ58のボルト60と同様でも良いし、異なる結合具とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る基板収納容器は、半導体やレチクルを取り扱う分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 容器本体
2 支持片
5 ロボティックフランジ
8 搬送レール
10 蓋体
11 蓋本体
14 カバープレート
16 施錠機構
30 レチクル収容容器
31 底板
32 上蓋
33 周縁部
40 アダプタ
41 搭載面
42 前部
43 傾斜角拡大溝
44 傾斜面
45 平坦面
50 位置決めバー(位置決め部材)
51 搭載領域
52 前部位置決めバー(位置決め部材、前部位置決め部材)
53 後部位置決めバー(位置決め部材、後部位置決め部材)
54 起立部
56 係止被覆部
57 側部位置決めバー(位置決め部材、側部位置決め部材)
58 クランプ(クランプ部材)
W 半導体ウェーハ