(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041460
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
H04R 17/10 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
H04R17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146290
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】福島 岳行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由香里
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】濤川 雄一
【テーマコード(参考)】
5D004
【Fターム(参考)】
5D004AA01
5D004AA09
5D004CD08
5D004FF08
5D004FF09
(57)【要約】
【課題】小型化かつ高出力化が可能な振動発生装置を提供する。
【解決手段】振動発生装置は、圧電体層と、圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することで第1電極および第2電極が圧電体層を挟む方向に伸縮する圧電素子10a、10bと、圧電素子を前記方向において挟む第1部材30および第2部材20を備え、第1部材と第2部材とは圧電素子を前記方向に押圧し、第1部材は前記方向に圧電素子の伸縮に対応する音波を出力する筐体25と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体層と、前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1電極および前記第2電極が前記圧電体層を挟む方向に伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子を前記方向において挟む第1部材および第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは前記圧電素子を前記方向に押圧し、前記第1部材は前記方向に前記圧電素子の伸縮に対応する音波を出力する筐体と、
を備える振動発生装置。
【請求項2】
前記第1部材と前記第2部材とは、前記第1部材に設けられたねじ山と前記第2部材に設けられたねじ山とを嵌め合わせることにより前記圧電素子を押圧する請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記第1部材と前記第2部材とが接合する第3部材を備え、
前記第1部材に設けられたねじ山と前記第3部材に設けられたねじ山とを嵌め合わせ、かつ前記第2部材に設けられたねじ山と前記第3部材に設けられたねじ山とを嵌め合わせることにより、前記第1部材と前記第2部材とは、前記圧電素子を押圧する請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記第1部材と前記圧電素子との間に設けられ、前記第1部材のヤング率および前記圧電体層のヤング率より大きなヤング率を有する第4部材と、前記第2部材と前記圧電素子との間に設けられ、前記第2部材のヤング率および前記圧電体層のヤング率より大きなヤング率を有する第5部材と、の少なくとも一方の部材を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項5】
前記第1部材および前記第2部材が前記圧電素子を押圧する圧力は、5×105Pa以上である請求項1から3のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項6】
前記圧電体層、前記第1電極および前記第2電極は各々複数設けられ、前記複数の第1電極および前記第2電極は前記方向において互い違いに設けられ、前記複数の圧電体層の1つは、前記複数の第1電極のうち1つと前記複数の第2電極のうち1つに前記方向において挟まれる請求項1から3のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項7】
前記第1部材は、前記方向の空間に前記音波を出力し、
前記圧電素子に、前記電圧として前記筐体の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の周波数を有する搬送波を前記搬送波の周波数より低い周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波が供給される請求項1から3のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項8】
前記信号波の周波数は70Hz以上かつ1000Hz以下である請求項7に記載の振動発生装置。
【請求項9】
前記第1部材は、前記方向の空間に前記音波を出力し、
前記圧電素子に、前記電圧として、前記筐体の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の周波数を有する第1搬送波を、50Hz以上かつ300Hz以下である周波数を有する第2搬送波を1Hz以上かつ60Hz以下である周波数を有する信号波で振幅変調された第1変調波で、振幅変調された第2変調波を供給する請求項1から3のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項10】
前記第1部材の前記空間側の面は、中央部が前記圧電素子の方に凹む請求項7に記載の振動発生装置。
【請求項11】
前記圧電素子に、前記電圧として前記変調波を供給する駆動装置を備える請求項7に記載の振動発生装置。
【請求項12】
前記第1部材の前記方向における表面を被押当部材に押当てることで前記被押当部材から音波が発生するように、前記圧電素子に前記電圧が供給される請求項1から3のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項13】
前記第1部材の前記表面を前記被押当部材に押当てる押当部材と、
前記圧電素子に前記電圧を供給する駆動装置と、
を備える請求項12に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関し、圧電素子を有する振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号を音波に変換するトランスデューサのように振動発生装置に圧電素子を用いることが知られている。超音波の生成に振動板を有するランジュバン型振動子を用いることが知られている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動発生装置が振動板を有する場合、振動板を小さくすると出力が低下する。振動板を有さない構造では、小型化が可能となるが高出力化が難しい。このように、振動発生装置の小型化と高出力化を両立することが難しかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、小型化かつ高出力化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電体層と、前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1電極および前記第2電極が前記圧電体層を挟む方向に伸縮する圧電素子と、前記圧電素子を前記方向において挟む第1部材および第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは前記圧電素子を前記方向に押圧し、前記第1部材は前記方向に前記圧電素子の伸縮に対応する音波を出力する筐体と、を備える振動発生装置である。
【0007】
上記構成において、前記第1部材と前記第2部材とは、前記第1部材に設けられたねじ山と前記第2部材に設けられたねじ山とを嵌め合わせることにより前記圧電素子を押圧する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第1部材と前記第2部材とが接合する第3部材を備え、前記第1部材に設けられたねじ山と前記第3部材に設けられたねじ山とを嵌め合わせ、かつ前記第2部材に設けられたねじ山と前記第3部材に設けられたねじ山とを嵌め合わせることにより、前記第1部材と前記第2部材とは、前記圧電素子を押圧する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1部材と前記圧電素子との間に設けられ、前記第1部材のヤング率および前記圧電体層のヤング率より大きなヤング率を有する第4部材と、前記第2部材と前記圧電素子との間に設けられ、前記第2部材のヤング率および前記圧電体層のヤング率より大きなヤング率を有する第5部材と、の少なくとも一方の部材を備える構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1部材および前記第2部材が前記圧電素子を押圧する圧力は、5×105Pa以上である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記圧電体層、前記第1電極および前記第2電極は各々複数設けられ、前記複数の第1電極および前記第2電極は前記方向において互い違いに設けられ、前記複数の圧電体層の1つは、前記複数の第1電極のうち1つと前記複数の第2電極のうち1つに前記方向において挟まれる構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1部材は、前記方向の空間に前記音波を出力し、前記圧電素子に、前記電圧として前記筐体の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の周波数を有する搬送波を前記搬送波の周波数より低い周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波が供給される構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記信号波の周波数は70Hz以上かつ1000Hz以下である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1部材は、前記方向の空間に前記音波を出力し、前記圧電素子に、前記電圧として、前記筐体の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の周波数を有する第1搬送波を、50Hz以上かつ300Hz以下である周波数を有する第2搬送波を1Hz以上かつ60Hz以下である周波数を有する信号波で振幅変調された第1変調波で、振幅変調された第2変調波を供給する構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記第1部材の前記空間側の面は、中央部が前記圧電素子の方に凹む構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記圧電素子に、前記電圧として前記変調波を供給する駆動装置を備える構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記第1部材の前記方向における表面を被押当部材に押当てることで前記被押当部材から音波が発生するように、前記圧電素子に前記電圧が供給される構成とすることができる。
【0018】
上記構成において、前記第1部材の前記表面を前記被押当部材に押当てる押当部材と、前記圧電素子に前記電圧を供給する駆動装置と、
を備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小型化かつ高出力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係る振動発生素子の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A断面図である。
【
図2】
図2(a)は、実施例1における第2部材の平面図、
図2(b)は、
図2(a)のA-A断面図、
図2(c)は、第1部材の断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1における圧電素子の断面図である。
【
図4】
図4は、実施例2に係る振動発生装置の模式図である。
【
図5】
図5は、実施例2において駆動装置が圧電素子に供給する変調波を示す図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、実験1における第2部材の断面図である。
【
図7】
図7は、実施例2の変形例1において駆動装置が圧電素子に供給する変調波を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例2の変形例2に係る振動発生装置の模式図である。
【
図9】
図9は、実施例3に係る振動発生装置の模式図である。
【
図11】
図11は、実施例4に係る振動発生素子の断面図である。
【
図12】
図12は、実施例4の変形例1に係る振動発生装置の模式図である。
【
図13】
図13は、実験2における。Vp-pに対する振幅を示す図である。
【
図14】
図14は、実施例4の変形例3に係る振動発生装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0022】
振動子の機械振動のQ値(Quality Factor)特性を向上させることにより、振動板を用いなくても振動発生装置の高出力化が可能となる。実施例1では、筐体の機械振動のQ値を向上させることが可能な振動発生装置について説明する。
【0023】
図1(a)は、実施例1に係る振動発生素子の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A断面図である。
図2(a)は、実施例1における第2部材の平面図、
図2(b)は、
図2(a)のA-A断面図、
図2(c)は、第1部材の断面図である。第1部材30と第2部材20が圧電素子10aおよび10bを挟む方向をZ方向、Z方向に直交し、圧電素子10aおよび10bの平面視における辺の延伸方向をX方向およびY方向とする。
【0024】
図1(a)から
図2(c)に示すように、実施例1の振動発生素子100では、筐体25は、第1部材30および第2部材20を備えている。第1部材30と第2部材20は接合されている。第2部材20の+Z方向における面には、凹部28が設けられている。凹部28は、+Z側に設けられた第1部分22と-Z側に設けられた第2部分24とを有する。第1部分22の平面形状は略円形状であり、第2部分24の平面形状は略矩形状である。第1部分22の側面には、雌ねじとなるねじ山26が形成されている。第2部分24の側面には、ねじ山は形成されていない。凹部28内には、-Z側から支持部材12a、圧電素子10a、10bおよび支持部材12bが順に挿入されている。支持部材12a、圧電素子10a、10bおよび支持部材12bは第2部材20には接合されておらず、移動自由である。
【0025】
第1部材30は、+Z側に設けられた頭部32と、-Z側に設けられたねじ部34を備えている。頭部32の平面形状は略円形である。頭部32の+Z側の面は、平面視における中央部が周縁部に対し-Z方向に逆円錐状に凹む。ねじ部34の側面には、雄ねじとなるねじ山36が形成されている。第1部材30のねじ部34は、第2部材20の凹部28の第1部分22に、ねじ山26と36とを嵌め合わせることにより接合される。ねじを締めることで、第2部材20は、支持部材12aを介し圧電素子10aを矢印50aのように+Z方向に押圧する。第1部材30は、支持部材12bを介し圧電素子10bを矢印50bのように-Z方向に押圧する。圧電素子10aおよび10bを押圧する応力は例えば5×106Pa以上である。
【0026】
第1部材30および第2部材20の材料は、例えば金属または樹脂である。支持部材12aおよび12bの材料は、第1部材30、第2部材20、圧電素子10aおよび10bよりヤング率の大きい材料であり、例えばステンレスまたはアルミニウムである。第1部材30の頭部32のX方向およびY方向の幅は一例として10mm、頭部32のZ方向の高さは一例として2.5mm、頭部32の+Z面の逆円錐状の頂点の凹み量は一例として1.5mm、ねじ部34のX方向およびY方向の幅は一例として6mm、ねじ部34のZ方向の高さは一例として5mmである。第2部材20のX方向およびY方向の幅は一例として8mm、高さは一例として15mm、凹部28のZ方向の深さは一例として14mm、第1部分22のZ方向の深さは一例として6mm、第2部分24のX方向およびY方向の幅は一例として4.5mmである。第1部材30、第2部材20、支持部材12aおよび12bの材料、形状および寸法は適宜設計できる。
【0027】
図3は、実施例1における圧電素子の断面図である。
図3に示すように、圧電素子10aおよび10bは、複数の圧電体層41からなる圧電体40、複数の第1電極42および複数の第2電極44を備えている。複数の圧電体層41は、Z方向に積層されている。圧電体層41、第1電極42および第2電極44は、XY平面に広がる平板状である。複数の第1電極42および複数の第2電極44はZ方向において互い違いに設けられている。1つの圧電体層41は、Z方向において1つの第1電極42と1つの第2電極44とに挟まれている。圧電体40の-X側の側面に第1外部電極43が設けられ、圧電体40の+X側の側面に第2外部電極45が設けられている。複数の第1電極42は第1外部電極43に電気的に接続する。複数の第2電極44は第2外部電極45に電気的に接続する。第1外部電極43と第2外部電極45との間に電圧を印加することで、逆圧電効果により、圧電体40は、矢印52のようにZ方向に伸縮する。このように、第1電極42および第2電極44に電圧を印加することで、第1電極42および第2電極44の積層方向に伸縮する振動モードを縦変位型モードまたはd33モードという。
【0028】
圧電体40は、第1領域46、第2領域47および第3領域48を備えている。第1領域46および第2領域47は、Z方向に交互に設けられている。第3領域48は、Z方向において最も外側の第1領域46の外に設けられている。第1領域46は、Z方向において第1電極42と第2電極44とが一定間隔で交互に設けられた領域である。第1領域46における圧電体層41の積層数は一例として50層である。第2領域47および第3領域48は、第1電極42および第2電極44が設けられていない領域である。第2領域47は設けられていなくてもよい。第2領域47を設けることで信頼性が向上する場合もある。
【0029】
圧電体層41の材料としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸バリウム系材料(BaTiO3、BaはCaでもよく、TiはZrでもよい)、チタン酸ビスマス系材料(BiTiO3、Biの一部がNaでもよい)、ニオブ酸アルカリ系材料(NaNbO3、NaはLiまたはKでもよい)を用いることができる。第1電極42、第2電極44、第1外部電極43および第2外部電極45の材料としては、例えばAg、Pd、Pt、Cu、NiおよびAu等の金属を用いることができる。圧電素子10aおよび10bは、表面に第1電極42および第2電極44が形成された圧電体シートを積層し、焼結することにより形成される焼結体からなるチップである。圧電素子10aおよび10bは例えば直方体であり、圧電素子10aおよび10bのX方向およびY方向の幅は一例として3.5mm、Z方向の高さは一例として3mmである。
【0030】
圧電素子10aおよび10bにおける±Z側の表面におけるZ方向の変位量ΔZ、圧電体層41の積層数をN、第1電極42と第2電極44との間に印加される電圧をV、逆圧電定数に関連した定数をd33すると、ΔZ=d33×V×Nである。よって、圧電体層41の積層数Nを多くすることで変位量ΔZが大きくなる。しかし、製造上の制約などにより、1つの圧電素子10aまたは10bにおける積層数Nを多くすることができない場合がある。このような場合には、筐体25内に圧電素子10aおよび10bをZ方向に積層することができる。これにより、圧電素子10aおよび10bの合計の変位量を大きくできる。Z方向に積層される圧電素子10aおよび10bの個数は1個でもよいし3個以上でもよい。
【0031】
筐体25が圧電素子10aおよび10bを押圧することで、筐体25が圧電素子10aおよび10bを押圧しない場合に比べ、Q値が向上する。このような現象は、圧電素子10aおよび10bとして、横変位型モードの圧電素子を用いた場合には得られない現象であり、発明者らがはじめて発見した現象である。なお、横変位型モードとは、第1電極42と第2電極44の積層方向に対し圧電素子10aおよび10bの振動方向が直交するモードである。圧電素子10aおよび10bの押圧の有無に対し、共振周波数があまり変動していない。これは、支持部材12aを設けたためと考えられる。
【0032】
実施例1によれば、
図3のように、Z方向において第1電極42と第2電極44とが圧電体層41を挟み、第1電極42と第2電極44との間に電圧を印加することでZ方向に伸縮する圧電素子10aおよび10bを用いる。
図1(b)のように、第1部材30と第2部材20とは圧電素子10aをZ方向に押圧し、第1部材30はZ方向に圧電素子10aおよび10bの伸縮に対応する音波を出力する。このように、縦変位型の圧電素子10aおよび10bを筐体25が押圧することで、筐体25の機械振動のQ値が向上する。よって、振動板を有さない小型の振動発生装置においても高出力化が可能となる。
【0033】
第1部材30と第2部材20とは、ねじ山26と36とを嵌め合わせることにより圧電素子10aおよび10bを押圧する。これにより、大きい力で安定的に圧電素子10aおよび10bを押圧できる。また、圧電素子10aおよび10bに加わる圧力のばらつきを抑制できる。よって、共振周波数のばらつき等を抑制できる。一例として、複数の構造を作製したところ、共振周波数のばらつきは600Hz以下であった。圧電素子10aおよび10bを押圧する機構はねじの嵌め合わせ以外でもよい。
【0034】
実施例1において、第1部材30のねじ山36の呼び径d(最大径)が6mmのとき、トルクレンチを用い第1部材30の締め付けトルクTを測定すると約0.1N・mであった。第1部材30が圧電素子10bを押す力FはT/(k×d)であり、トルク係数kを0.2とすると、F=83Nである。圧電素子10aおよび10bのXY平面の面積は3.5mm×3.5mmである。よって、第1部材30が圧電素子10bを押圧する圧力は6.8×106Paである。筐体25の機械振動のQ値を向上させる効果は、圧力が6.8×106Paの1/10程度でも生じると考えられる。よって、第1部材30および第2部材20が圧電素子10aおよび10bを押圧する圧力は、5×105Pa以上が好ましく、1×106Pa以上がより好ましく、2×106Pa以上がさらに好ましい。第1部材30および第2部材20が圧電素子10aおよび10bを押圧する圧力は、圧電素子10aおよび10bが破戒される圧力以下とする。
【0035】
第1部材30と圧電素子10bとの間に支持部材12b(第4部材)を設け、第2部材20と圧電素子10aとの間に支持部材12a(第5部材)を設ける。支持部材12aおよび12bの少なくとも一方が設けられていればよい。圧電体40としてPZTを用いた場合、PZTのヤング率は約60GPaである。筐体25として樹脂を用いた場合には、樹脂のヤング率は10GPa以下である。これに対し、支持部材12aおよび12bとしてステンレスを用いた場合、ステンレスのヤング率は約120GPaである。また、アルミニウムのヤング率は約70GPaである。このように、支持部材12bのヤング率は、圧電体40のヤング率および第1部材30のヤング率より大きく、支持部材12bのヤング率は、圧電体40のヤング率および第2部材20のヤング率より大きい。支持部材12aおよび12bを設けることで、圧電素子10aおよび10bに荷重が加わり、振動の伝達を強化することができる。よって、筐体25の共振周波数が押圧により変動することが抑えられ、かつQ値がより向上する。支持部材12aおよび12bの少なくとも一方が設けられていればよい。支持部材12bおよび12aのヤング率は、圧電体40のヤング率並びにそれぞれ第1部材30および第2部材20のヤング率の1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。
【0036】
図3のように、圧電素子10aおよび10bにおいて、複数の第1電極42および複数の第2電極44はZ方向において互い違いに設けられ、複数の圧電体層41の1つは、複数の第1電極42のうち1つと複数の第2電極44のうち1つにZ方向において挟まれる。このような構造により、Z方向の変位量をより大きくでき、振動発生装置の特性をより向上できる。
搬送波64の周波数f1は、例えば筐体25の共振周波数である。共振周波数は、基本波でもよいし高調波でもよい。信号波の周波数f2は、人体の皮膚の受容器であるパチニ小体が敏感に感じる周波数である。このような周波数として例えば70Hz以上かつ1000Hz以下である。パチニ小体等が敏感に感じる周波数は250Hzである。
変調波66における包絡線65の最も大きい振幅をA1、包絡線の最も小さい振幅をA2としたとき、変調度MをM=(A1-A2)/(A1+A2)と定義する。変調波66の変調度Mは例えば50%以上かつ100%以下であり、80%以上かつ100%以下である。
第1部材30、第2部材20、支持部材12aおよび12bの材料、並びに圧電素子10aおよび10bの構成は、実験1と同じである。第1部材30の頭部32のX方向およびY方向の幅は10mm、頭部32のZ方向の高さ2.5mm、頭部32の+Z面の逆円錐状の頂点の凹み量は1.5mm、ねじ部34のX方向およびY方向の幅は6mm、ねじ部34のZ方向の高さは5mmである。第2部材20のX方向およびY方向の幅は8mm、高さは15mm、凹部28のZ方向の深さは14mm、第1部分22のZ方向の深さは6mm、第2部分24のX方向およびY方向の幅は4.5mmである。
表1に示すように、サンプルA~CにおいてVp-pはほぼ同じ、搬送波の周波数はほぼ同じである。信号波の周波数はパチニ小体が最も敏感に感じる周波数である。サンプルAは、サンプルBおよびCに比べ、距離D1が最も大きく、かつ最も触覚が得られた。サンプルBとCとでは、距離D1はほぼ同じであるが、触覚はサンプルCの方が大きい。以上のように、サンプルAが最も触覚が得られることがわかった。また、サンプルA~Cのいずれにおいても空中触覚が得られることがわかった。
表2において、サンプルDおよびEは、市販されている横変位型モードの圧電素子と円盤状の振動版を用い、圧電素子に部材Aのような音波を放出する部材を設けている。サンプルDおよびEにおける圧電素子の平面形状は円形であり、直径はそれぞれ10mmおよび15mmである。このように、サンプルDおよびEは圧電素子が大きい。「D1」は、音圧レベルが80dBにおける距離D1である。
表2に示すように、サンプルDおよびEでは、判定する音圧レベルが表1より低いため厳密な比較はできないものの、サンプルDおよびEの距離D1はサンプルAと同程度である。サンプルDおよびEの圧電素子の平面面積がサンプルAの5倍以上である。このように、サンプルAは、振動板を用いることなく、サンプルDおよびEより小さな圧電素子10aおよび10bを用い、サンプルDおよびEと同程度の空中触覚を得ることができる。このように、サンプルAでは、小型化かつ高出力化が可能となる。
搬送波64の周波数を共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の範囲とすると空中触覚が得られる。搬送波64の周波数は共振周波数の0.9倍以上かつ1.1倍以下がより好ましい。なお、共振周波数は基本波モードの共振周波数でもよいし、高調波モードの共振周波数でもよい。搬送波64の周波数は、例えば20kHz以上かつ110kHz以下であり、30kHz以上かつ90kHz以下である。
信号波の周波数は、パチニ小体が感じるため、70Hz以上かつ1000Hz以下が好ましく、110Hz以上かつ300Hz以下がより好ましい。変調度Mは、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
サンプルAのように、第1部材30の空間側(+Z側)の面は、中央部が圧電素子10bの方に凹む。これにより、表1のように、空中触覚をより大きくできる。第1部材30の凹みの断面形状は、サンプルAのように、中央を頂点とする三角形でもよいし、中央を頂点とする放物線等の曲線でもよい。頭部32の+Z面の最大の凹み量は頭部32の幅の1/10倍以上かつ1/2倍以下が好ましい。
このように、実施例2の変形例1では、第2搬送波として、パチニ小体に敏感な周波数を有する信号を用い、信号波としてマイスナー小体に敏感な周波数を有する信号を用いる。例えば周波数f1を変えることで、異なる空中触覚を得ることができる。例えば周波数f2を3Hzとすると、パチパチといった触覚が得られ、周波数f2を30Hzとすると、ズィーンといった触覚が得られる。