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特開2024-41464移動目的判定装置、移動目的判定方法および移動目的判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041464
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】移動目的判定装置、移動目的判定方法および移動目的判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240319BHJP
   G06Q 50/40 20240101ALI20240319BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146296
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 茉莉花
(72)【発明者】
【氏名】廣田 敦士
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC20
5L049CC43
(57)【要約】
【課題】鉄道を利用する旅客の移動が乗り継ぎ目的であるか滞在目的であるかを判定することが可能な移動目的判定装置を提供する。
【解決手段】移動目的判定装置10は、データ取得部12、集計部13、ヒストグラム作成部14、閾値設定部15、判定部16を備える。ヒストグラム作成部14は、集計部13において集計された所定期間における改札機通過データD1のうち、同一エリア内における2つ駅間において出場記録および入場記録の組み合わせを抽出し、当該2つの駅における出場記録時間と入場記録時間との間の時間の分布を示すヒストグラムを作成する。閾値設定部15は、ヒストグラムに基づいて旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値を設定する。判定部16は、閾値設定部15において設定された判定用閾値と旅客ごと出場記録から入場記録までの時間とを比較して旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か滞在目的かを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道を利用する旅客の移動目的を判定する移動目的判定装置であって、
前記旅客ごとの前記鉄道の駅に設置された自動改札機を前記旅客が通過した際に記録される改札機通過データを取得するデータ取得部と、
所定期間における前記改札機通過データを集計する集計部と、
前記集計部において集計された前記所定期間における前記改札機通過データのうち、同一エリア内における2つ駅間において、出場記録および入場記録の組み合わせを抽出し、当該2つの駅における出場記録時間と入場記録時間との間の時間の分布を示すヒストグラムを作成するヒストグラム作成部と、
前記ヒストグラム作成部において作成された前記ヒストグラムに基づいて、前記旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値を設定する閾値設定部と、
前記閾値設定部において設定された前記判定用閾値と、前記旅客ごと前記出場記録から前記入場記録までの時間とを比較して、前記旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か滞在目的かを判定する判定部と、
を備えている移動目的判定装置。
【請求項2】
前記判定部における判定結果を出力する出力部を、さらに備えている、
請求項1に記載の移動目的判定装置。
【請求項3】
前記閾値設定部は、前記ヒストグラム作成部において作成された前記ヒストグラムに基づいて、同一エリア内にある2つの駅間における、前記出場記録時間とその直後の前記入場記録時間の時間差をx(分)とし、最頻値を取る時間差をm(分)とし、このときの件数比率を、関数hを用いてh(m)とし、時間差xを、初期値mから始めて、m+1,m+2,…と順次増やしていった場合において、
(A)h(x)<h(x+1)、
(B)h(x)が所定の閾値T以下となる、
の(A)および(B)の両方の条件を満たすxを、前記旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための前記判定用閾値として設定する、
請求項1または2に記載の移動目的判定装置。
【請求項4】
前記閾値設定部は、前記ヒストグラム作成部において作成された前記ヒストグラムに基づいて、同一エリア内にある2つの駅間における、前記出場記録時間とその直後の前記入場記録時間の時間差をx(分)とし、最頻値を取る時間差をm(分)とし、このときの件数比率を、関数hを用いてh(m)とし、時間差xを、初期値mから始めて、m+1,m+2,…と順次増やしていった場合において、
(C)h(x)が所定の閾値T以下となる(ただし、T<T)、
の条件を満たすxを、前記旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための前記判定用閾値として設定する、
請求項1または2に記載の移動目的判定装置。
【請求項5】
前記閾値設定部は、大津法、K-means法を用いて、乗り継ぎを目的とした分布と、滞在を目的とした分布の前記判定用閾値を設定する、
請求項1または2に記載の移動目的判定装置。
【請求項6】
前記閾値設定部は、前記データ取得部において前記旅客が前記自動改札機を通過した通過日の前の所定期間に得られたデータが追加された前記ヒストグラムに基づいて、前記判定用閾値を更新する閾値更新部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の移動目的判定装置。
【請求項7】
前記同一エリア内に存在する2つの駅のデータを保存する記憶部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の移動目的判定装置。
【請求項8】
前記データ取得部は、1日ごとに、前記改札機通過データを取得する、
請求項1または2に記載の移動目的判定装置。
【請求項9】
前記データ取得部は、1カ月ごとに、前記改札機通過データを取得する、
請求項1または2に記載の移動目的判定装置。
【請求項10】
前記データ取得部は、曜日ごとに、前記改札機通過データを取得する、
請求項1または2に記載の移動目的判定装置。
【請求項11】
前記データ取得部は、季節ごとに、前記改札機通過データを取得する、
請求項1または2に記載の移動目的判定装置。
【請求項12】
鉄道を利用する旅客の移動目的を判定する移動目的判定方法であって、
前記旅客ごとの前記鉄道の駅に設置された自動改札機を前記旅客が通過した際に記録される改札機通過データを取得するデータ取得ステップと、
所定期間における前記改札機通過データを集計する集計ステップと、
前記集計ステップにおいて集計された前記所定期間における前記改札機通過データのうち、同一エリア内における2つ駅間において、出場記録および入場記録の組み合わせを抽出し、当該2つの駅における出場記録時間と入場記録時間との間の時間の分布を示すヒストグラムを作成するヒストグラム作成ステップと、
前記ヒストグラム作成ステップにおいて作成された前記ヒストグラムに基づいて、前記旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値を設定する閾値設定ステップと、
前記閾値設定ステップにおいて設定された前記判定用閾値と、前記旅客ごと前記出場記録から前記入場記録までの時間とを比較して、前記旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か滞在目的かを判定する判定ステップと、
を備えている移動目的判定方法。
【請求項13】
鉄道を利用する旅客の移動目的を判定する移動目的判定プログラムであって、
前記旅客ごとの前記鉄道の駅に設置された自動改札機を前記旅客が通過した際に記録される改札機通過データを取得するデータ取得ステップと、
所定期間における前記改札機通過データを集計する集計ステップと、
前記集計ステップにおいて集計された前記所定期間における前記改札機通過データのうち、同一エリア内における2つ駅間において、出場記録および入場記録の組み合わせを抽出し、当該2つの駅における出場記録時間と入場記録時間との間の時間の分布を示すヒストグラムを作成するヒストグラム作成ステップと、
前記ヒストグラム作成ステップにおいて作成された前記ヒストグラムに基づいて、前記旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値を設定する閾値設定ステップと、
前記閾値設定ステップにおいて設定された前記判定用閾値と、前記旅客ごと前記出場記録から前記入場記録までの時間とを比較して、前記旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か滞在目的かを判定する判定ステップと、
を備えている移動目的判定方法をコンピュータに実行させる移動目的判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道を利用する旅客の移動目的を判定する移動目的判定装置、移動目的判定方法および移動目的判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の利用において、電子乗車券(ICカード、携帯電話に内蔵されたICチップなど)を用いて、鉄道を利用した旅客が鉄道駅の改札から出場して別の鉄道駅の改札から入場する乗り継ぎが行われる場合がある。
このとき、電子乗車券には、一意の識別子が付与されている。そして、電子乗車券の識別子に基づいて、駅の改札機の通過履歴及び購買の履歴を利用して、各利用者が乗車した交通機関の路線情報を取得し、取得された路線情報に応じて利用者へ情報を提供するシステムが提供されている。
【0003】
また、取得された路線情報に基づいて、鉄道を利用する旅客の改札外の乗り継ぎ時間を集計するための手法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1には、交通機関の利用者が該交通機関を利用するために駅の改札へ入場した日時、該入場駅の識別子及び該入場改札の識別子を含む入場データと、上記利用者が該交通機関を利用した後に駅の改札から出場した日時、該出場駅の識別子及び該出場改札の識別子を含む出場データと、を保持し、上記利用者識別子に基づいて、上記出場データと、その直後の上記入場データと、を組み合わせ、上記出場日時から上記入場日時を減じた滞在時間を含む滞在データを生成する滞在データ生成部と、上記生成された滞在データを用いて、時間帯、駅及び改札の少なくとも1つの条件で上記滞在時間を集計する滞在時間集計部と、を備え、上記滞在時間集計部は、同一改札で入出場したデータを、上記滞在データから除外して上記滞在時間を集計することによって、乗り継ぎ時間を集計する乗継時間計算システムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-242996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の乗継時間計算システムでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された乗継時間計算システムでは、ある鉄道駅の改札から出場して別の鉄道駅の改札から再び入場するまでの乗り継ぎ時間を算出することができる。
しかしながら、このようなシステム構成では、一旦、ある鉄道駅の改札から出場して別の鉄道駅の改札から再び入場するまでの乗り継ぎ時間を把握できても、移動目的が乗り継ぎであるかもしくは滞在であるかを示す移動目的の情報を得ることができなかった。
【0006】
そこで本発明の課題は、鉄道を利用する旅客の移動が、乗り継ぎ目的であるか滞在目的であるかを判定することが可能な移動目的判定装置、移動目的判定方法および移動目的判定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る移動目的判定装置は、鉄道を利用する旅客の移動目的を判定する移動目的判定装置であって、データ取得部と、集計部と、ヒストグラム作成部と、閾値設定部と、判定部と、を備えている。データ取得部は、旅客ごとの鉄道の駅に設置された自動改札機を旅客が通過した際に記録される改札機通過データを取得する。集計部は、所定期間における改札機通過データを集計する。ヒストグラム作成部は、集計部において集計された所定期間における改札機通過データのうち、同一エリア内における2つ駅間において、出場記録および入場記録の組み合わせを抽出し、当該2つの駅における出場記録時間と入場記録時間との間の時間の分布を示すヒストグラムを作成する。閾値設定部は、ヒストグラム作成部において作成されたヒストグラムに基づいて、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値を設定する。判定部は、閾値設定部において設定された判定用閾値と、旅客ごと出場記録から入場記録までの時間と、を比較して、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か滞在目的かを判定する。
【0008】
ここでは、改札機通過データに基づいて設定され、各旅客の移動目的を推定するための判定用閾値を用いて、各旅客の移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定する。例えば、判定用閾値が10分である場合、出場記録から入場記録までの時間が10分以下のときは乗り継ぎ目的、10分を超えるときは滞在目的と判定される。
ここで、改札機通過データとは、例えば、鉄道を利用する旅客が改札を通過する際に取得され、旅客1人1人の入場駅、入場時刻、退場駅および退場時刻等のデータである。
【0009】
乗り継ぎとは、例えば、出場駅で特に用事は無く、単に他局の鉄道駅に乗り換えることを目的とした移動のことである。
滞在とは、例えば、出場駅にて買い物や仕事等の用事があり、一定時間以上、その出場駅の周辺に留まる場合の移動である。
これにより、改札機通過データに基づいて設定され、各旅客の移動目的を推定するための判定用閾値を用いて、各旅客の移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定することができる。
この結果、鉄道を利用する旅客の移動が、乗り継ぎ目的であるか滞在目的であるかを判定することができる。
【0010】
第2の発明に係る移動目的判定装置は、第1の発明に係る移動目的判定装置であって、判定部における判定結果を出力する出力部を、さらに備えている。
これにより、出力部は、各旅客の移動目的の判定結果を出力することができるため、例えば、出力されたデータを鉄道会社等に提供することで、当該鉄道会社は、鉄道を利用する旅客の移動目的を把握することができる。
【0011】
第3の発明に係る移動目的判定装置は、第1または第2の発明に係る移動目的判定装置であって、閾値設定部は、ヒストグラム作成部において作成されたヒストグラムに基づいて、同一エリア内にある2つの駅間における、出場記録時間とその直後の入場記録時間の時間差をx(分)とし、最頻値を取る時間差をm(分)とし、このときの件数比率を、関数hを用いてh(m)とし、時間差xを、初期値mから始めて、m+1,m+2,…と順次増やしていった場合において、
(A)h(x)<h(x+1)、
(B)h(x)が所定の閾値T以下となる、
の(A)および(B)の両方の条件を満たすxを、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値として設定する。
【0012】
ここでは、閾値設定部は、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための適切な判定用閾値を設定する。
ここで、(A)および(B)の両方の条件を満たすこととしたのは、例えば、作成されたヒストグラムにおいて、(A)を満たす大きなピークが複数ある場合、(A)の条件のみでは1つ目のピークのみを含むヒストグラムから数値が抽出されるが、(B)の条件を加味することで、1つ目のピークと2つ目以降のピークを含めたヒストグラムから数値を抽出し、xを設定することを可能とするためである。このとき、(B)の条件における閾値Tは、任意に設定される。
これにより、(A)および(B)の両方の条件を満たすxを判定用閾値として設定することで、適切な判定用閾値を設定することができ、精度の高い移動目的を判定することができる。
【0013】
第4の発明に係る移動目的判定装置は、第1から第2の発明のいずれか1つに係る移動目的判定装置であって、閾値設定部は、ヒストグラム作成部において作成されたヒストグラムに基づいて、同一エリア内にある2つの駅間における、出場記録時間とその直後の入場記録時間の時間差をx(分)とし、最頻値を取る時間差をm(分)とし、このときの件数比率を、関数hを用いてh(m)とし、時間差xを、初期値mから始めて、m+1,m+2,…と順次増やしていった場合において、
(C)h(x)が所定の閾値T以下となる(ただし、T<T)、
の条件を満たすxを、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値として設定する。
【0014】
ここでは、閾値設定部は、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための適切な閾値を設定する。
ここで、(C)を条件とした場合、例えば、ヒストグラムのピークがなだらかに減少し、(A)h(x)<h(x+1)の条件を満たさない場合でも、ピークが十分に小さくなったと判断した場合に、閾値Tは、T<Tという条件で、任意に設定される。
これにより、(C)の条件を満たすxを判定用閾値として設定することで、状況に合わせた判定用閾値を設定することができ、適切な移動目的を判定することができる。
【0015】
第5の発明に係る移動目的判定装置は、第1から第2の発明のいずれか1つに係る移動目的判定装置であって、閾値設定部は、大津法、K-means法を用いて、乗り継ぎを目的とした分布と、滞在を目的とした分布の判定用閾値を計算する。
ここでは、閾値設定部は、例えば、大津法、K-means法を用いて、乗り継ぎを目的とした分布と、滞在を目的とした分布の判定用閾値を計算する。
【0016】
なお、大津法とは、対象ごとにおおよそ最適な2値化の閾値を求めることで、閾値を自動的に求める手法である。
K-means法とは、特徴の近い対象を類似する複数の対象群にクラスタリングすることで、適切な閾値を求める手法である。
これにより、閾値設定部は、鉄道を利用した旅客が鉄道駅の改札から出場して別の鉄道駅の改札から入場した場合、乗り継ぎを目的とした分布と滞在を目的とした分布との判定用閾値を計算することで、適切な移動目的を判定することができる。
【0017】
第6の発明に係る移動目的判定装置は、第1から第2の発明のいずれか1つに係る移動目的判定装置であって、閾値設定部は、データ取得部において旅客が自動改札機を通過した通過日の前の所定期間に得られたデータが追加されたヒストグラムに基づいて、判定用閾値を更新する閾値更新部を、さらに備えている。
【0018】
これにより、閾値更新部は、データ取得部において旅客が改札機を通過した通過日の前の所定期間に得られたデータが追加されたヒストグラムに基づいて、判定用閾値を更新することで、例えば、コンサート等の突発的イベントがある場合にも適切な判定用閾値を設定することができ、精度の高い移動目的を判定することができる。
【0019】
第7の発明に係る移動目的判定装置は、第1から第2の発明のいずれか1つに係る移動目的判定装置であって、同一エリア内に存在する2つの駅のデータを保存する記憶部を、さらに備えている。
これにより、記憶部は、同一エリア内に存在する2つの駅のデータを保存することで、例えば、ある旅客が、一旦、改札外へ出て別の鉄道駅の改札から入場する可能性がある同一エリア内の徒歩圏内に位置する2つの駅の組み合わせを把握することができる。
【0020】
第8の発明に係る移動目的判定装置は、第1から第2の発明のいずれか1つに係る移動目的判定装置であって、データ取得部は、1日ごとに、改札機通過データを取得する。
これにより、データ取得部は、1日ごとに、改札機通過データを取得することで、例えば、雨や風等の天候による影響がある場合にも適切な判定用閾値を設定することができ、精度の高い移動目的を判定することができる。
【0021】
第9の発明に係る移動目的判定装置は、第1から第2の発明のいずれか1つに係る移動目的判定装置であって、データ取得部は、1カ月ごとに、改札機通過データを取得する。
これにより、データ取得部は、1カ月ごとに、改札機通過データを取得することで、例えば、1日ごとに取得した場合と比較して、バラつきの少ない判定用閾値を設定することができ、精度の高い移動目的を判定することができる。
【0022】
第10の発明に係る移動目的判定装置は、第1から第2の発明のいずれか1つに係る移動目的判定装置であって、データ取得部は、曜日ごとに、改札機通過データを取得する。
これにより、データ取得部は、曜日ごとに、改札機通過データを取得することで、例えば、平日・土曜日・日曜日・祝日等ごとに適切な判定用閾値を設定することができ、精度の高い移動目的を判定することができる。
【0023】
第11の発明に係る移動目的判定装置は、第1から第2の発明のいずれか1つに係る移動目的判定装置であって、データ取得部は、季節ごとに、改札機通過データを取得する。
これにより、データ取得部は、季節ごとに、改札機通過データを取得することで、例えば、クリスマス等の年中行事や夏休み等の長期休暇がある場合にも適切な判定用閾値を設定することができ、精度の高い移動目的を判定することができる。
【0024】
第12の発明に係る移動目的判定方法は、鉄道を利用する旅客の移動目的を判定する移動目的判定方法であって、データ取得ステップと、集計ステップと、ヒストグラム作成ステップと、閾値設定ステップと、判定ステップと、を備えている。データ取得ステップは、旅客ごとの鉄道の駅に設置された自動改札機を旅客が通過した際に記録される改札機通過データを取得する。集計ステップは、所定期間における改札機通過データを集計する。ヒストグラム作成ステップは、集計ステップにおいて集計された所定期間における改札機通過データのうち、同一エリア内における2つ駅間において、出場記録および入場記録の組み合わせを抽出し、当該2つの駅における出場記録時間と入場記録時間との間の時間の分布を示すヒストグラムを作成する。閾値設定ステップは、ヒストグラム作成ステップにおいて作成されたヒストグラムに基づいて、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値を設定する。判定ステップは、閾値設定ステップにおいて設定された判定用閾値と、旅客ごと出場記録から入場記録までの時間と、を比較して、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か滞在目的かを判定する。
ここでは、改札機通過データに基づいて設定され、各旅客の移動目的を推定するための判定用閾値を用いて、各旅客の移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定する。例えば、判定用閾値が10分である場合、出場記録から入場記録までの時間が10分以下のときは乗り継ぎ目的、10分を超えるときは滞在目的と判定される。
【0025】
ここで、改札機通過データとは、例えば、鉄道を利用する旅客が改札を通過する際に取得され、旅客1人1人の入場駅、入場時刻、退場駅および退場時刻等のデータである。
乗り継ぎとは、例えば、出場駅で特に用事は無く、単に他局の鉄道駅に乗り換えることを目的とした移動のことである。
滞在とは、例えば、出場駅にて買い物や仕事等の用事があり、一定時間以上、その出場駅の周辺に留まる場合の移動である。
これにより、改札機通過データに基づいて設定され、各旅客の移動目的を推定するための判定用閾値を用いて、各旅客の移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定することができる。
この結果、鉄道を利用する旅客の移動が、乗り継ぎ目的であるか滞在目的であるかを判定することができる。
【0026】
第13の発明に係る移動目的判定プログラムは、鉄道を利用する旅客の移動目的を判定する移動目的判定プログラムであって、データ取得ステップと、集計ステップと、ヒストグラム作成ステップと、閾値設定ステップと、判定ステップと、を備えている。データ取得ステップは、旅客ごとの鉄道の駅に設置された自動改札機を旅客が通過した際に記録される改札機通過データを取得する。集計ステップは、所定期間における改札機通過データを集計する。ヒストグラム作成ステップは、集計ステップにおいて集計された所定期間における改札機通過データのうち、同一エリア内における2つ駅間において、出場記録および入場記録の組み合わせを抽出し、当該2つの駅における出場記録時間と入場記録時間との間の時間の分布を示すヒストグラムを作成する。閾値設定ステップは、ヒストグラム作成ステップにおいて作成されたヒストグラムに基づいて、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値を設定する。判定ステップは、閾値設定ステップにおいて設定された判定用閾値と、旅客ごと出場記録から入場記録までの時間と、を比較して、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か滞在目的かを判定する。
【0027】
ここでは、改札機通過データに基づいて設定され、各旅客の移動目的を推定するための判定用閾値を用いて、各旅客の移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定する。例えば、判定用閾値が10分である場合、出場記録から入場記録までの時間が10分以下のときは乗り継ぎ目的、10分を超えるときは滞在目的と判定される。
ここで、改札機通過データとは、例えば、鉄道を利用する旅客が改札を通過する際に取得され、旅客1人1人の入場駅、入場時刻、退場駅および退場時刻等のデータである。
【0028】
乗り継ぎとは、例えば、出場駅で特に用事は無く、単に他局の鉄道駅に乗り換えることを目的とした移動のことである。
滞在とは、例えば、出場駅にて買い物や仕事等の用事があり、一定時間以上、その出場駅の周辺に留まる場合の移動である。
これにより、改札機通過データに基づいて設定され、各旅客の移動目的を推定するための判定用閾値を用いて、各旅客の移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定することができる。
【0029】
この結果、鉄道を利用する旅客の移動が、乗り継ぎ目的であるか滞在目的であるかを判定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る移動目的判定装置によれば、鉄道を利用する旅客の移動が、乗り継ぎ目的であるか滞在目的であるかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る移動目的判定装置の構成を示す制御ブロック図。
図2図1の移動目的判定装置に送信され改札機によって取得される乗り継ぎ目的と推定されるデータを含む改札機通過データを示す図。
図3図1の移動目的判定装置に送信され改札機によって取得される滞在目的と推定されるデータを含む改札機通過データを示す図。
図4図1の移動目的判定装置に保存される同一エリア内の徒歩圏内に位置する2つの駅の組み合わせのデータを含むエリア情報データを示す図。
図5図1の移動目的判定装置に含まれるヒストグラム作成部によって作成される同一エリア内における2つ駅間おける出場記録時間と入場記録時間との間の時間の分布の一例としてのヒストグラムを示す図。
図6図1の移動目的判定装置によって実施される移動目的判定方法の処理の流れを示すフローチャート。
図7図6の乗り継ぎ時間の判定用閾値を算出するステップにおいて用いられる乗り継ぎ時間閾値算出方法の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態に係る移動目的判定装置10および移動目的判定方法について、図1図7を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
また、出願人は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0033】
(1)移動目的判定装置10の構成
本実施形態に係る移動目的判定装置10は、改札機通過データD1に基づいて設定され各旅客の移動目的を推定するための判定用閾値を用いて、各旅客の移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定する。
【0034】
そして、移動目的判定装置10は、図1に示すように、入力装置2、表示装置3およびデータサーバ4と接続されている。
入力装置2は、例えば、キーボード等であって、移動目的判定装置10に記憶されるべきエリア情報データD2の入力を受け付ける。
エリア情報データD2は、図4に示すように、同一エリア内に存在する2つの駅に関するデータである。
【0035】
ここで、同一エリアに存在する2つの駅とは、例えば、ある旅客が、一旦、ある鉄道駅の改札から出場して別の鉄道駅の改札から再び入場する可能性がある、徒歩圏内に位置する2つの駅の組み合わせである。
また、入力装置2から入力されたデータは、移動目的判定装置10の記憶部11に保存することなく、データ取得部12に送信されてもよい。
【0036】
表示装置3は、例えば、鉄道会社が所持するPC(Personal Computer)等であって、移動目的判定装置10において予測される各旅客の移動目的の予測結果を表示する。
データサーバ4は、改札機通過データD1を保存する。改札機通過データD1は、図1に示すように、各鉄道駅に設置されている自動改札機5から収集された鉄道駅への入場記録および出場記録に基づいて生成される。
【0037】
改札機通過データD1は、図2および図3に示すように、旅客の媒体ID(例えば、電子乗車券に内蔵された識別子等)・入場記録および出場記録・駅名・改札機通過時間等が記録されている。
ここで、改札機通過データD1は、複数のトリップデータの集積である。各トリップデータは、入場記録およびこれに対応する出場記録を含む一組のデータである。入場記録は、入場駅、および入場駅に設置されている自動改札機5を通過した時刻を含む。出場記録は、出場駅、および出場駅に設置されている自動改札機5を通過した時刻を含む。
【0038】
入場記録および出場記録は、別の場所で別の時刻に自動改札機5で取得される。自動改札機5で取得された段階で、入場記録および出場記録には、自動改札機5の通過(入場または出場)に使用された乗車券ごとに付与されている乗車券ID情報が含まれる。収集された入場記録および出場記録は、乗車券ID情報を介して互いに紐付けされることによりトリップデータを形成する状態で、データサーバ4上に記憶されている。
【0039】
トリップデータは、ある1人の旅客が、どのような乗車券を利用していつどの駅に入場していつどの駅から出場したのかを示し、入場から出場までの鉄道利用による1つのトリップを特定する。1つのトリップは、その主体としての1人の「旅客」と一対一で対応する。
自動改札機5は、鉄道駅に1または複数設置されており、旅客が通過する際に、旅客が所持しているICカード等へ情報を書き込んだり、情報を読み取って運賃の請求処理を実施したりする。
【0040】
また、本実施形態の移動目的判定装置10は、図1に示すように、記憶部11と、データ取得部12と、集計部13と、ヒストグラム作成部14と、閾値設定部15と、判定部16と、閾値更新部17と、出力部18と、を備えている。
記憶部11は、例えば、入力装置2から入力されたエリア情報データD2等の各種データを保存する。
【0041】
これにより、例えば、各旅客が利用する徒歩圏内の同一エリアに存在する2つの駅を把握することができる。
また、記憶部11は、例えば、新駅が設置され、エリア情報データD2に含まれる徒歩圏内に位置する2つの駅の組み合わせが新たに発生した場合には、その2つの駅の組み合わせをリストに追加、また、変更してもよい。
【0042】
これにより、例えば、移動目的判定装置10は、新駅が設置される等の、周辺環境の変化に対応して新たに追加されたエリア情報データD2を用いて、判定用閾値を設定することができる。
データ取得部12は、データサーバ4からデータ取得部12に送信された改札機通過データD1を取得する。
【0043】
このとき、データ取得部12は、後述する閾値設定部15においてより精度の高い判定用閾値を設定するために、例えば、1日ごとに、所定期間における改札機通過データD1を取得する。
これにより、例えば、1日ごとに改札機通過データD1を取得する場合には、雨や風等の天候による影響を加味して、適切な判定用閾値を設定することができる。
【0044】
また、データ取得部12は、記憶部11に保存されているエリア情報データD2を取得する。あるいは、データ取得部12は、入力装置2から入力され記憶部11に保存することなくデータ取得部12に送信されたエリア情報データD2を取得する。
集計部13は、データ取得部12から取得した所定期間(1日単位等)における改札機通過データD1を集計する。
【0045】
ヒストグラム作成部14は、集計部13において集計された所定期間における改札機通過データD1のうち、同一エリア内における2つ駅間において、出場記録および入場記録の組み合わせを抽出し、図5に示すように、当該2つの駅における出場記録時間と入場記録時間との間の時間の分布を示すヒストグラムを作成する。
このとき、当該ヒストグラムは、縦軸を件数比率とし、横軸を出場時間と入場時間との時間差としてもよい。
【0046】
また、所定時間以降のデータは、1つのピークに集約してもよい。例えば、図5の場合には、60分以降のデータは、60分のピークに含めてもよい。
閾値設定部15は、ヒストグラム作成部14において作成されたヒストグラムに基づいて、同一エリア内にある2つの駅間における旅客ごとの移動が、乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値を設定する。
【0047】
具体的には、閾値設定部15は、例えば、ヒストグラム作成部14において作成されたヒストグラムに基づいて、同一エリア内にある2つの駅間における、出場記録時間とその直後の入場記録時間との時間差をx(分)とし、最頻値を取る時間差をm(分)とし、このときの件数比率を、関数hを用いてh(m)とし、時間差xを、初期値mから始めて、m+1,m+2,…と順次増やしていった場合において、
(A)h(x)<h(x+1)、
(B)h(x)が所定の閾値T以下となる、
の(A)および(B)の両方の条件を満たすxを、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値として設定する。
【0048】
ここで、(A)を満たす場合として、例えば、図5に示すように、最頻値を取る出場時間と入場時間との時間差m=5(分)であり、このときの件数比率は、h(m)=0.16である。上記で求めた点を出発点として、(A)に5,6,…と代入していったとき、m=14(分)のとき、係数比率=0.006となり、m=15(分)のとき、係数比率=0.007となるため、(A)の条件を満たす。
【0049】
また、上記条件のとき、任意に閾値Tを設定し、T=0.02とした場合、(B)の条件を満たす。
したがって、図5に示すヒストグラムの場合には、閾値設定部15は、上述の通り(A)および(B)の両方の条件を満たすとき、x=14(分)として判定用閾値を設定する。
【0050】
これにより、判定部16は、閾値設定部15において設定された判定用閾値(14分)を用いて、出場時間と入場時間との時間差が14分以下の場合は、乗り継ぎ目的、14分を超える場合は、滞在目的の移動であると判定する。
つまり、図2の上から2行目および3行目に示されるように、媒体ID「1234567」に対応する旅客が、B駅を出場した時間は2022/1/30 7:21であり、C駅へ入場時間した時間は2022/1/30 7:25である。よって、出場時間と入場時間との時間差は4分となるため、判定部16は、乗り継ぎ目的であると判定する。
【0051】
同様に、図3の上から2行目および3行目に示されるように、媒体ID「7654321」に対応する旅客が、B駅を出場した時間は2022/1/30 7:21であり、C駅へ入場時間した時間は2022/1/30 8:01である。よって、出場時間と入場時間との時間差は40分となるため、判定部16は、滞在目的であると判定する。現実的に考えれば、乗り継ぎを目的とした徒歩圏内の2つの駅間の移動に40分もかかるのは不自然であるため、当該旅客は、観光や買い物等で滞在していると考えられる。
【0052】
ここで、(A)および(B)の両方の条件を満たすこととしたのは、例えば、作成されたヒストグラムにおいて、最頻値を取る出場時間と入場時間との時間差を出発点として、以降に(A)を満たす大きなピークが複数ある場合に、複数の(A)を満たす大きなピークも含めることで、適切な判定用閾値を設定するためである。
なお、閾値設定部15は、ヒストグラム作成部14において作成されたヒストグラムに基づいて、同一エリア内にある2つの駅間における、出場記録時間とその直後の入場記録時間の時間差をx(分)とし、最頻値を取る時間差をm(分)とし、このときの件数比率を、関数hを用いてh(m)とし、時間差xを、初期値mから始めて、m+1,m+2,…と順次増やしていった場合において、
(C)h(x)が所定の閾値T以下となる(ただし、T<T)、
の条件を満たすxを、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値として設定してもよい。
【0053】
ここで、(C)を満たす場合として、例えば、任意に閾値Tを設定し、T=0.005としたとき、閾値設定部15は、(C)の条件を満たす出場時間と入場時間との時間差xを判定用閾値として設定する。(C)を条件とした場合、例えば、ヒストグラムのピークがなだらかに減少し、上述した(A)h(x)<h(x+1)の条件を満たさない場合でも、ピークが十分に小さくなったと判断した場合に、閾値設定部15は、任意の閾値を設定することで、状況に合わせた判定用閾値を設定して、判定部16は、適切な移動目的を判定する。
【0054】
なお、閾値設定部15は、ヒストグラム作成部14において作成されたヒストグラムに基づいて、例えば、K-means法を用いて、乗り継ぎを目的とした分布と、滞在を目的とした分布の判定用閾値を設定してもよい。
K-means法を用いた場合には、特徴の近い対象を類似する複数の対象群にクラスタリングすることで、適切な判定用閾値を求めることができる。
これにより、閾値設定部15は、鉄道を利用した旅客がある鉄道駅の改札から出場して別の鉄道駅の改札から入場した場合、乗り継ぎを目的とした分布と滞在を目的とした分布との判定用閾値を計算する。これにより、判定部16は、適切な移動目的を判定することができる。
【0055】
判定部16は、上述したように、閾値設定部15において設定された判定用閾値と、図2および図3に示される媒体ID(旅客)の出場記録から入場記録までの時間と、図4に示される徒歩圏内にある入場駅と出場駅と、を比較することで、同一エリア内にある2つの駅間における旅客ごとの移動が、乗り継ぎ目的か滞在目的かを判定する。
また、後述する閾値更新部17において、閾値設定部15で設定された判定用閾値が更新された際に、判定部16は、再度、当該旅客の移動が乗り継ぎ目的か滞在目的かを判定することができる。
【0056】
閾値更新部17は、データ取得部12において旅客が改札機を通過した通過日の前の所定期間に得られたデータが追加されたヒストグラムに基づいて、閾値設定部15で設定された判定用閾値を更新する。なお、例えば、後日、対象日の改札機通過データD1に対して乗り継ぎあるいは滞在判定を行う場合には、閾値更新部17は、データ取得部12において旅客が改札機を通過した通過日の当日に得られたデータをヒストグラムに追加してもよい。
これにより、コンサート等の突発的イベントがある場合にも、直近の改札機通過データD1を用いて作成されたヒストグラムを用いることで、閾値設定部15は、適切な判定用閾値を設定して、判定部16は、精度の高い移動目的を判定することができる。
【0057】
出力部18は、判定部16における判定結果を、例えば、上記同一エリア内の2つの鉄道駅を含む鉄道路線を所有する各鉄道会社等へ出力する。
これにより、移動目的判定装置10の使用者は、出力部18を介して、各旅客の移動目的の判定結果が出力されたデータを、例えば、鉄道会社等に提供することで、当該鉄道会社は、鉄道を利用する旅客の移動目的を把握することができる。
【0058】
本実施形態の移動目的判定装置10は、図1に示すように、鉄道を利用する旅客の移動目的を判定する装置であって、データ取得部12と、集計部13と、ヒストグラム作成部14と、閾値設定部15と、判定部16と、を備えている。データ取得部12は、旅客ごとの鉄道の駅に設置された自動改札機5を旅客が通過した際に記録される改札機通過データD1を取得する。集計部13は、所定期間における改札機通過データD1を集計する。ヒストグラム作成部14は、集計部13において集計された所定期間における改札機通過データD1のうち、同一エリア内における2つ駅間において、出場記録および入場記録の組み合わせを抽出し、当該2つの駅における出場記録時間と入場記録時間との間の時間の分布を示すヒストグラムを作成する。閾値設定部15は、ヒストグラム作成部14において作成されたヒストグラムに基づいて、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定するための判定用閾値を設定する。判定部16は、閾値設定部15において設定された判定用閾値と、旅客ごと出場記録から入場記録までの時間と、を比較して、旅客ごとの移動が乗り継ぎ目的か滞在目的かを判定する。
【0059】
これにより、改札機通過データD1に基づいて設定され、各旅客の移動目的を推定するための判定用閾値を用いて、各旅客の移動が乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定することができる。
この結果、鉄道を利用する旅客の移動が、乗り継ぎ目的であるか滞在目的であるかを判定することができる。
【0060】
<移動目的判定方法>
本実施形態の移動目的判定装置10は、図6および図7に示すフローチャートに従って、移動目的判定方法を実行する。
すなわち、本実施形態の移動目的判定方法は、図6に示すように、ステップS1において、自動改札機5を通過した鉄道を利用する旅客の改札機通過データD1(1日分)を取得する。
【0061】
次に、ステップS2では、集計部13が、入力装置2に入力され記憶部11に保存された同一エリア駅を含むエリア情報データD2を、データ取得部12を介して取得して、推定対象の同一エリア内の出場/入場駅組み合わせを選択する。
次に、ステップS3では、集計部13が、ステップS1において取得された改札機通過データD1およびステップS2において入力されたエリア情報データD2を、データ取得部12を介して取得して、媒体ID毎に改札機通過データD1を集計する。
【0062】
次に、ステップS4では、集計部13が、ステップS3において集計した改札機通過データD1から、ある媒体ID(ある旅客)の改札機通過データD1を抽出する。
次に、ステップS5では、集計部13が、ステップS4において抽出されたある媒体ID(ある旅客)の改札機通過データD1を、改札機通過時間でソートする。
次に、ステップS6では、集計部13が、ステップS5でソートされた改札機通過データD1において、推定対象の出場/入場駅組み合わせの「出場データ=>入場データ」が存在するか否かを判定する。ここで、該当する組み合わせが存在しない場合は、ステップS4へ移行し、存在する場合は、ステップS7へ移行する。
【0063】
次に、ステップS7では、集計部13が、ステップS6において推定対象の出場/入場駅組み合わせの「出場データ=>入場データ」が存在すると判定されたため、推定対象の出場/入場駅組み合わせの「出場データ=>入場データ」を抽出する。
次に、ステップS8では、集計部13が、ステップS7で抽出されたデータに基づいて、(入場時間-出場時間)を出場駅と入場駅間と間の移動に掛かった所要時間として集計する。
【0064】
次に、ステップS9では、集計部13が、ステップS8で集計されたデータが、全改札機通過データD1に関し集計が完了したか否かを判定する。ここで、集計が完了していない場合は、ステップS4へ移行し、完了した場合は、ステップS10へ移行する。
次に、ステップS10では、集計部13が、ステップS9で集計されたデータに基づいて、推定対象の出場/入場駅の組合せで所要時間を集計する。
【0065】
次に、ステップS11では、ヒストグラム作成部14が、集計部13で集計されたデータに基づいて、ヒストグラムを作成する。
次に、ステップS12では、閾値設定部15が、ヒストグラム作成部14において作成されたヒストグラムに基づいて、乗り継ぎ時間の判定用閾値を算出する。
なお、乗り継ぎ時間の判定用閾値の算出方法については、後段において説明する。
【0066】
次に、ステップS13では、判定部16が、閾値設定部15もしくは閾値更新部17において設定された判定用閾値に基づいて、同一エリア内にある2つの駅間における旅客ごとの移動が、乗り継ぎ目的か、滞在目的かを判定し、出力部18が、当該移動目的の判定結果を出力する。
ここで、図6に示すステップS12において算出される判定用閾値の算出方法について、図7のフローチャートを用いてより詳細に説明する。
【0067】
すなわち、図7に示すように、ステップS21では、閾値設定部15が、ヒストグラム作成部14において作成されたヒストグラムに基づいて、ヒストグラムの最頻値m(分)抽出する。
次に、ステップS22では、閾値設定部15が、ステップS21にいて抽出されたヒストグラムの最頻値m(分)を用いて、出入り時間x分をmで初期化する。
【0068】
次に、ステップS23では、閾値設定部15が、ステップS22でヒストグラムの最頻値m(分)によって初期化された出入り時間x分を用いて、x分の件数比率h(x)とx+1分の件数比率h(x+1)と、を算出する。
次に、ステップS24では、閾値設定部15が、ステップS23において算出されたx分の件数比率h(x)とx+1分の件数比率h(x+1)とが、h(x)<h(x+1)の条件を満たすか否かを判定する。ここで、条件を満たさない場合は、ステップS26へ移行し、条件を満たす場合は、ステップS25へ移行する。
【0069】
次に、ステップS25では、閾値設定部15が、ステップS23において算出されたx分の件数比率h(x)が、h(x)≦Tの条件を満たすか否かを判定する。ここで、条件を満たさない場合は、ステップS27へ移行し、条件を満たす場合は、ステップS28へ移行する。
ここで、ステップS23において算出されたx分の件数比率h(x)とx+1分の件数比率h(x+1)とが、h(x)<h(x+1)の条件を満たす大きなピークが複数ある場合に、上記条件を満たす複数の大きなピークも含めることで、閾値設定部15が、適切な判定用閾値を設定するために、閾値Tは、任意に設定される。
【0070】
次に、ステップS26では、閾値設定部15が、ステップS23において算出されたx分の件数比率h(x)とx+1分の件数比率h(x+1)とが、ステップS24において、h(x)<h(x+1)の条件を満たさないと判定されたため、当該件数比率h(x)が、h(x)≦Tの条件を満たすか否かを判定する。ここで、条件を満たさない場合は、ステップS27へ移行し、条件を満たす場合は、ステップS28へ移行する。
【0071】
ここで、ステップS23において算出されたx分の件数比率h(x)とx+1分の件数比率h(x+1)とが、h(x)<h(x+1)の条件を満たさないが、当該ピークが十分に小さくなったと判断した場合に、閾値設定部15が、適切な判定用閾値を設定するために、閾値Tは、T<Tという条件で、任意に設定される。
次に、ステップS27では、閾値設定部15が、ステップS23において算出されたx分の件数比率h(x)とx+1分の件数比率h(x+1)とが、ステップS24において、h(x)<h(x+1)の条件を満たすが、ステップS25において、当該件数比率h(x)が、h(x)≦Tの条件を満たさない判定されたため、ステップS22でヒストグラムの最頻値m(分)によって初期化された出入り時間x分にx+1分を代入する。その後、ステップS23へ戻り、ステップS23以降の処理が繰り返し実行される。
【0072】
また、ステップS23において算出されたx分の件数比率h(x)とx+1分の件数比率h(x+1)とが、ステップS24において、h(x)<h(x+1)の条件を満たさず、ステップS26において、当該件数比率h(x)が、h(x)≦Tの条件を満たさないと判定されたため、閾値設定部15が、ステップS22でヒストグラムの最頻値m(分)によって初期化された出入り時間x分にx+1分を代入する。その後、ステップS23へ戻り、ステップS23以降の処理が繰り返し実行される。
【0073】
次に、ステップS28では、閾値設定部15が、ステップS23において算出されたx分の件数比率h(x)とx+1分の件数比率h(x+1)とが、ステップS24において、h(x)<h(x+1)の条件を満たし、ステップS25において、h(x)≦Tの条件を満たすと判定されたため、判定用閾値をx分として設定する。
また、ステップS23において算出されたx分の件数比率h(x)とx+1分の件数比率h(x+1)とが、ステップS24において、h(x)<h(x+1)の条件を満たさず、ステップS26においてh(x)≦Tの条件を満たすと判定されたため、閾値設定部15が、判定用閾値をx分として設定する。
これにより、閾値設定部15は、乗り継ぎ時間の判定用閾値を算出することができる。
【0074】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、移動目的判定装置および移動目的判定方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
例えば、上述した移動目的判定方法をコンピュータに実行させる移動目的判定プログラムとして本発明を実現してもよい。
この移動目的判定プログラムは、移動目的判定装置に搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存された移動目的判定プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが移動目的判定プログラムを読み込んで、上述したデータ取得ステップと、集計ステップと、ヒストグラム作成ステップと、閾値設定ステップと、判定ステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、移動目的判定プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0076】
(B)
上記実施形態では、判定部16で判定された同一エリア内にある2つの駅間における旅客ごとの移動が、乗り継ぎ目的か滞在目的かの判定結果を出力する出力部18が、移動目的判定装置10内に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、移動目的の判定結果の活用方法としては、出力部から外部へ出力して活用されること以外に、移動目的判定装置にデータとして保存するだけでもよい。つまり、本発明の移動目的判定装置は、出力部を備えていない構成であってもよい。
【0077】
(C)
上記実施形態では、ヒストグラム作成部14において作成されたヒストグラムに基づいて、K-means法を用いて、乗り継ぎを目的とした分布と、滞在を目的とした分布の判定用閾値を設定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0078】
例えば、必ずしもK-means法を使用しなくてもよく、大津法を使用してもよい。
ここで、大津法を用いた場合には、対象ごとにおおよそ最適な2値化の閾値を求めることで、判定用閾値を自動的に求めることができる。
この場合でも、閾値設定部が、鉄道を利用した旅客がある鉄道駅の改札から出場して別の鉄道駅の改札から入場した場合、乗り継ぎを目的とした分布と滞在を目的とした分布との判定用閾値を計算することで、判定部は、適切な移動目的を判定することができる。
【0079】
(D)
上記実施形態では、データ取得部12において旅客が改札機を通過した通過日の前の所定期間に得られたデータが追加されたヒストグラムに基づいて、閾値設定部15で設定された判定用閾値を更新する閾値更新部17が、移動目的判定装置10内に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、1日分のデータから判定用閾値を設定することができるため、本発明の移動目的判定装置は、閾値更新部を備えていない構成であってもよい。
【0080】
(E)
上記実施形態では、データ取得部12で取得されるエリア情報データD2を保存する記憶部11が、移動目的判定装置10内に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0081】
例えば、エリア情報データを保存する記憶部は、移動目的判定装置の外部に設けられたサーバ等に設けられてもよい。つまり、本発明の移動目的判定装置は、外部の記憶装置等から必要なデータを取得することができる構成であれば、記憶部を備えていない構成であってもよい。
この場合でもデータ取得部は移動目的判定装置の外部に設けられたサーバから、エリア情報データを取得することで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(F)
上記実施形態では、閾値設定部15においてより精度の高い判定用閾値を設定するために、1日ごとにおける改札機通過データD1を取得する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、1日ごとにデータを取得する装置だけでなく、1カ月ごと、曜日ごと、季節ごとにデータを取得する装置であってもよい。
【0083】
この場合でも、閾値設定部は、曜日ごとに改札機通過データを取得する場合には、旅客数、旅客の属性が異なると想定される平日・土曜日・日曜日・祝日等の曜日別の影響を加味して、適切な判定用閾値を設定することができる。
また、季節ごとに改札機通過データを取得する場合には、クリスマス等の年中行事や夏休み等の長期休暇による影響をそれぞれ加味することで、各目的の合わせた適切な判定用閾値を設定することができる。
【0084】
さらに、1カ月ごとに改札機通過データを取得する場合には、1カ月という長期スパンで平均的な旅客の流動データを用いることで、バラつきの少ない正確なヒストグラムから判定用閾値を設定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の移動目的判定装置は、鉄道を利用する旅客の移動が、乗り継ぎ目的であるか滞在目的であるかを判定することができるという効果を奏することから、鉄道会社が鉄道を利用する旅客の流動を予測する各種装置等に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
2 入力装置
3 表示装置
4 データサーバ
5 自動改札機
10 移動目的判定装置
11 記憶部
12 データ取得部
13 集計部
14 ヒストグラム作成部
15 閾値設定部
16 判定部
17 閾値更新部
18 出力部
D1 改札機通過データ
D2 エリア情報データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7