(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041469
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】スライドハンマー
(51)【国際特許分類】
A01G 17/16 20060101AFI20240319BHJP
E02D 5/80 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A01G17/16
E02D5/80 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146302
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】518363358
【氏名又は名称】吉村 富士夫
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】吉村 富士夫
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041GD02
(57)【要約】
【課題】 農作物などの添木や支柱用更には薬剤注入用などの穴を田畑など植物の育っている地中に簡単に開けることができる道具であるスライドハンマーを提供すること。
【解決手段】 所定長さを有する手握円筒部2と、該手握円筒部2の一端部を塞ぐように設けられた叩打部3と、前記手握円筒部2内で長手方向にスライド自在に設けられた棒頭部4と、該棒頭部4に一端が固定され他端を前記手握円筒部2の他端部から突出するように設けた地中打込棒5と、前記地中打込棒5の直径よりも大きく前記棒頭部4の直径よりも小さい挿通穴6を有する前記手握円筒部2の他端部に設けたストッパー7と、を具備することを特徴とするスライドハンマーとしたこと。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さを有する手握円筒部と、
該手握円筒部の一端部を塞ぐように設けられた叩打部と、
前記手握円筒部内で長手方向にスライド自在に設けられた棒頭部と、
該棒頭部に一端が固定され他端を前記手握円筒部の他端部から突出するように設けた地中打込棒と、
前記地中打込棒の直径よりも大きく前記棒頭部の直径よりも小さい挿通穴を有する前記手握円筒部の他端部に設けたストッパーと、
を具備することを特徴とするスライドハンマー。
【請求項2】
前記手握円筒部の外周面に持手を設けたことを特徴とする請求項1に記載のスライドハンマー。
【請求項3】
前記地中打込棒の他端を尖らせたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスライドハンマー。
【請求項4】
前記ストッパーが前記手握円筒部の下端部の外周に固定した補助円筒部に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスライドハンマー。
【請求項5】
前記叩打部が前記手握円筒部の一端部の内側に挿入して固定したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスライドハンマー。
【請求項6】
前記地中打込棒に目盛を付したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスライドハンマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地面に添木や杭柱などの長尺物の下方部の埋込用の細長い杭穴を形成するために用いるスライドハンマーに関する。
【背景技術】
【0002】
田畑などの農業用耕作地においては、植物の茎や苗などを支える添木の下方を地中に差し込んで倒れないように固定し、上方部分で苗木の茎などを紐などで結んで固定して、苗木の重さを支え、或いは成熟しつつある実によって垂れ下がる茎や小枝を支持したり、風や雨・雪などによっても倒れることがないように補強して、収穫物が傷ついたり収穫量が減じないようにする作業が行われている。
又、つるで実る野菜や果物、例えば、キュウリ、えんどう豆、ごうや、いんげん豆、ネットメロンなどを栽培する場合、つるが絡まるネットなどを支持する支柱を立てておいて、この立てた支柱に連結材を介してネットを取付けたりしている。
【0003】
このように、地面に添木や支柱を埋めたり打ち込むためには、多くはスコップやつるはしなどの道具を用いて人力で行っているために、或いはハンマーで叩いて打ち込まなければならないので、数が多い場合には相当な重労働となっていた。地面が堅い場合には尚更この作業はきついものとなっていた。このような作業は農作業従事者の人手で行うのが慣例となっていたので従来技術は殆ど存在しなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、地中に埋設する添木や支柱などを埋め込む穴を簡単に形成することができるスライドハンマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための手段とするところは、所定長さを有する手握円筒部と、該手握円筒部の一端部を塞ぐように設けられた叩打部と、前記手握円筒部内で長手方向にスライド自在に設けられた棒頭部と、該棒頭部に一端が固定され他端を前記手握円筒部の他端部から突出するように設けた地中打込棒と、前記地中打込棒の直径よりも大きく前記棒頭部の直径よりも小さい挿通穴を有する前記手握円筒部の他端部に設けたストッパーと、を具備するスライドハンマーにしたことにある。
【0006】
更に、前記手握円筒部の外周面に持手を設けたことにある。
【0007】
更にまた、前記地中打込棒の他端を尖らせたことにある。
【0008】
更に、前記ストッパーが前記手握円筒部の下端部の外周に固定した補助円筒部に設けたことにある。
【0009】
前記叩打部が前記手握円筒部の一端部の内側に挿入して固定したことにある。
【0010】
前記地中打込棒に目盛を付したことにある。
【発明の効果】
【0011】
上記のスライドハンマーによると、地中打込棒の先端を穴を掘るべき地面上において、手握円筒部を手で握って上下方向に移動させるだけで地中に地中打込棒を打ち込むことができる。更に詳しくは、手握円筒部を握り持って上方へ持ち上げてから下降させると、叩打部が棒頭部に当たった打撃力で地中打込棒を地中へと侵入させて行く。打撃後に再び手握円筒部を持ち上げてゆくと、ストッパーも上昇して徐々に棒頭部に近づき遂には当接するが、その当接までのどの時点でも手握円筒部の持ち上げから下降に切替えて叩打部で棒頭部を叩くようにしても良い。このような下降による打撃と持ち上げの繰り返しによって地中打込棒を徐々に地中深くに侵入させることができる。所望の地中深さまで地中打込棒が到達したならば、手握円筒部を持ち上げ降下させる動作を行うと、持ち上げ時にストッパーが棒頭部の下方に衝突して地中打込棒を引き抜き方向の上方へ移動させるので、この動作を何回か繰り返すことによって、打ち込まれた地中打込棒を地中から引き抜きでき、地中には杭穴が形成される。
【0012】
上記の一連の作業において、持手が手握円筒部の外周に取付けられていれば、これを手で持って重量のある手握円筒部の持ち上げ、下降の作業できるので労力の軽減化を図ることができる。スライドハンマーの持ち運びが楽である。また、掘り進んだ後に引き抜く際にも持手を持てば引き抜き易い。地中打込棒の先端を尖らせておけば地中が固い時でも打込がスムーズになる。地中の土地が深く耕地されている場合には尖らせておく必要がない。手握円筒部、叩打部、地中打込棒が一体的に纏まっているので持ち運びに便利である。
【0013】
前記ストッパーが前記手握円筒部の下端部の外周に固定した補助円筒部に設ければ、作業中に地面と衝突する手握円筒部の下端の保護を図れると共にストッパーの取付の安定化を図ることができる。また、前記叩打部が前記手握円筒部の一端部の内側に挿入して固定してあれば、一端部の上方に突出して設けるなどして設けた場合に比べて、手握円筒部の上下動作が安定する。更に、前記地中打込棒に先端からの長さの目盛を刻んでおけば、杭穴の掘り込み中の深さを外から視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】掘り込み予定地面上に手握円筒部を持ち上げて地中打込棒の先端を置いた状態の全体断面図
【
図3】手握円筒部を下降させて叩打部で棒頭部を叩いて地中に先端が侵入した状態の断面説明図
【
図4】
図3の状態から手握円筒部を持ち上げた状態の断面説明図
【
図5】
図4の状態から手握円筒部を下降させて叩打部で棒頭部を叩いて地中打込棒の先端がさらに地中深く侵入した状態の断面説明図
【
図6】所定深さまで打ち込んだ地中打込棒を引き抜き途中の状態の断面説明図
【
図7】斜方向からの杭穴を地中に形成する場合の断面説明図
【
図8】斜めに形成した杭穴に添木を挿入して苗を補強した状態の説明図
【
図9】垂直方向に形成した杭穴に支柱を挿入して柵を取付けた状態の説明図
【
図10】樹齢が大きい樹木の根元に改良剤注入用の穴を開けるイメージ説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の最良の実施形態について図面を参照しつつ以下説明する。
この実施形態のスライドハンマー1は、
図1~7に示すように、手握円筒部2と、該手握円筒部2の一端部を塞ぐように設けられた叩打部3と、前記手握円筒部2内で長手方向に摺動自在に設けられた棒頭部4と、該棒頭部4に一端が固定され他端を前記手握円筒部2の他端部から突出するように設けた地中打込棒5と、前記手握円筒部2の他端部の内側に設けられ中心に前記地中打込棒5の挿通穴6を有する前記棒頭部4の抜けを防止し、且つ前記棒頭部4を下方から打撃して前記地中打込棒5を地中から引き抜き方向に作用させ
るストッパー7と、を具備している。
【0016】
前記手握円筒部2は、人手で握れる程度の3~6cm程の直径を有するものが好ましく使用され、長さが40~70cm位で重さが1~4Kg程度の長円筒形状が好ましい。この手握円筒部2の内部空間2aの一端部には金属塊などからなる叩打部3が溶接によって挿入固定されている。この叩打部3の長さはとくに限定されるものではないが、手握円筒部2の20~40%程度で重さが3~6kg程度が好ましく用いられる。この実施形態では叩打部3を手握円筒部2内の内部空間2aに設けたが、手握円筒部2の上方に固定したりし或いは外周囲に固定してもよく、この叩打部4と手握円筒部2の合計重量の衝撃力が棒頭部4に加わる構造とすればよいので取付位置には限定されるものではない。
【0017】
手握円筒部2の叩打部4の下方と前記ストッパー7の間の手握円筒部2の内部空間2aである棒頭部スライド室8には、地中打込棒5の上端に固定している棒頭部4が上下方向にスライド自在となるように挿入されている。このため、手握円筒部2を手で握るなどして持ち上げると、棒頭部4の自重と地中打込棒5の重さによって棒頭部4はストッパー7に当接するまで落下する(
図2参照)。棒頭部4の直径は手握円筒部2の内径より若干短く、縦方向の長さは2~4cm程である。地中打込棒5の直径は1~3cm程度が適当であるが、形成する杭穴Bに埋め込む添木Cや支柱Dの太さによって適宜選択使用される。地中打込棒5の下方の先端5aは尖っていると地面Aに打ち込み易くなるので作業が楽になるが、深くまで耕地した田畑などの地面Aであると柔らかいため特に尖っている必要はないもののそれでも深い地中まで開けておくと支柱の支持力が向上する。
【0018】
手握円筒部2の下端部に設けるストッパー7は、
図1などにおいて示されるように、中心に地中打込棒5の挿通穴6を有するドーナツ形状のものであって、その外周は手握円筒部2の下端部の外周に嵌着した補強筒部9の内周面に溶接で固定されると共に手握円筒部2の下端と密着した構造となっている。しかしこの構造に代えて、ストッパー7を手握円筒部2の下端部の内周面に固定したり、手握円筒部2の下端に直接に溶接などによって固定した構造としてもよい。このストッパー7は、棒頭部4の下方への抜け防止と、打ち込まれた地中打込棒5の引き抜き打撃用として使用される。
なお、以上の説明における各構成部材の長さ寸法や重さは標準的なものであって、使用目的応じて適宜変更が加えられるものである。
【0019】
次に、上記構成からなるこの発明のスライドハンマー1を用いて、植物の添木Cやネット用の支柱Dの杭穴Bを開ける場合の使用例、及び改良剤を注入の穴を開ける場合について
図8~10に基づいて説明する。
【0020】
まず、
図1に示すように、スライドハンマー1の手握円筒部2を手で握って地中打込棒5の先端5aを杭穴Bを形成する予定の地面A上に置く。この時、棒頭部4の上端に叩打部3の下面が当接している。できれば地中打込棒5を図示するようにもう一方の手で動かないように握っておく。次に、
図2に示すように、手握円筒部2を棒頭部スライド室8の長さ距離Lだけ持ち上げると、地中打込棒5は自重によって先端5aを地面A上に置いた状態で、棒頭部4の下面がストッパー7の上面に当接する。この時に突如重く感じたり接触音が生じたり或いは振動が生じるので、それを感知して手握円筒部2の持ち上げを止める。
【0021】
次に、
図3に示すように、手握円筒部2を握った手で強く下降させて叩打部3の下面で棒頭部4を叩打すると地中打込棒5の先端5aが地面Aからの深さ距離L1だけ地中へと入り込む。手握円筒部2には自身の重量に加えて叩打部3の重量も加わっているので衝撃力も強くなって地中への深さ距離L1が長くなり、杭穴Bの形成速度が早められる。
【0022】
この状態で
図4に示すように、再び
図2と同じように手握円筒部2を握った手で棒頭部4の下面がストッパー7の上面に当たるまで持ち上げる。持ち上げの終点を前記したように持ち上げ力の強弱、音或いは振動などで感知すると、手握円筒部2の持ち上げを止めて、
図5に示すように、叩打部3の重量をも掛かった手握円筒部2を強く下降させて、叩打部3の下端で棒頭部4を叩いて地中打込棒5の先端5aを距離L2だけ更に深く打ち込む。先に距離L1を打ち込んでいるので距離L1+L2の長さの杭穴Bがこの段階で形成されることになる。このように手握円筒部2の上下動によって地中打込棒5が地中に打ち込まれてゆくが、手握円筒部2の持ち上げ距離は棒頭部4がストッパー7に当たる迄持ち上げる必要はなく、棒頭部スライド室8内で上下動して叩打出来れば移動範囲は特に限定されるものではない。
【0023】
このような
図2~5の作業の繰り返しによって徐々に地中打込棒5が所望の深さ、通常25~30cm程度まで打ち込まれる。15~20cm程度までは柔らかい地盤であるので支持力が十分ではないので、20~30cmの硬い地盤にまで打ち込みするのが望ましい。この所望の深さは地中打込棒5に
図1に示すような目盛11を付しておくと、杭穴Bの深さが作業しながら目視でき作業能率が向上する。そして、
図6に示すように、所望の深さまで地中打込棒5が侵入したことが確認できると、手握円筒部2を上方へ強く持ち上げて、ストッパー7の上面に棒頭部3の下面を打撃する動作を繰り返して、地中打込棒5が地中から徐々に引き抜かれて杭穴Bが地中に形成される。この際に、
図3に示すように、手握円筒部2の外周面に持手10を設けておくと作業が効率よく行える。
【0024】
以上の説明においては手握円筒部2を持ち上げる時には棒頭部4がストッパー7に当接するまでとしたが、前述したように当接する途中で止めて下降して棒頭部4を叩打部3で叩くように往復運動してもよいのは勿論である。又、地面Aに垂直方向に杭穴Bを形成することについて説明したが、傾斜した杭穴Bを形成する場合には、
図7に示すように、手握円筒部2を水平方向に対して斜め方向に傾けて地中打込棒5の先端5aを当てて前述した垂直方向と同じ手順で手握円筒部2を斜めに傾斜した方向に上下に往復移動させるだけでよいので、作業が簡単である。
【0025】
この実施形態のスライドハンマー1を用いて形成した斜めの杭穴Bに添木Cを差し込んで使用する使用例を
図8に示す。この例では、苗Eの茎の部分を金属丸棒を細工した支持金具Fの縦棒に締結材Gで結び付け、上方の引掛け部に複数の添木Cの上方部分を支持して安定させて、この苗Eの実のなる小枝などを締結材Gで添木Cに結んで使用する場合を示す。通常は苗Eの作付け数量が多いので、添木C用の杭穴Bの数もそれ以上に多くなり杭穴Bが本発明を利用することにより効率的に容易に形成できることで農作業全体の労力が節減される。更にまた、植林用、植物植え付け用の穴を形成するためにも利用可能である。
【0026】
更に、
図9に示すように、つるで実る野菜や果物、例えば、キュウリ、えんどう豆、ごうや、いんげん豆、ネットメロンなどを田畑で栽培する場合、つるが絡まるネットGを支持する支柱Dをあらかじめ形成した杭穴Bに埋め込んで立てておいて、この立てた支柱Dの頭部にキャップとフックを具備した連結材Hを介してネットGを取付けたものである。
【0027】
図10は、樹木の根元に杭穴Bを開けて、注入機で土質改良剤を注入する場合の杭穴Bの形成作業イメージ図であり、この実施例の場合には特に樹木の樹齢が大きい場合に有効である。大きな樹木になると、根が周囲に太く長く伸びているので、土質改良剤の注入箇所は百箇所を超えることもあり、このような場合、従来はドリルを用いて穴を掘る作業をすることで、根に傷つけることも度々生じていたが、この発明のスライドハンマー1によれば傷が付いても再生可能な程度で済む。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明のスライドハンマーは、地中に開けた穴を利用する添木、支柱などの下部の埋め込み穴形成用としてとくに有効に利用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 スライドハンマー
2 手握円筒部
3 叩打部
4 棒頭部
5 地中打込棒
6 挿通穴
7 ストッパー
8 棒頭部スライド室
9 補強筒部
10 持手
11 目盛
A 地面
B 杭穴
C 添木
D 支柱
E 苗
F 金属丸棒
G ネット
H 連結材