(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004149
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ガス発生器及びガス発生器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
B60R21/264
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103652
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】松田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】猪妻 利広
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054DD11
3D054DD17
3D054DD19
3D054DD28
3D054FF16
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】出力性能の安定したガス発生器を提供する。
【解決手段】ガス発生器において、複数のガス排出孔は、閉塞部材の開裂圧力を異ならせた第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とを少なくとも1つずつ含み、第1ガス排出孔が形成するガス流路の最小流路断面積は、第2ガス排出孔が形成するガス流路の最小流路断面積と同等であり、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔は、ハウジングの内面側の開口部の形状及び周長の少なくとも何れか一方が、互いに異なっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火器と、
前記点火器の作動により燃焼することで燃焼ガスを発生させるガス発生剤と、
前記点火器と前記ガス発生剤とを内部に収容するハウジングと、
前記ハウジングの内外を貫通する複数のガス排出孔と、
前記ハウジングの内面に取り付けられ、前記点火器の作動前には前記複数のガス排出孔における前記ハウジングの内面側の開口部を覆うことで前記複数のガス排出孔を閉塞し、前記点火器の作動により発生した前記燃焼ガスの圧力を受けて開裂することで前記複数のガス排出孔を開口させる、閉塞部材と、を備え、
前記複数のガス排出孔は、前記閉塞部材の開裂圧力を異ならせた第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とを少なくとも1つずつ含み、
前記第1ガス排出孔が形成するガス流路の最小流路断面積は、前記第2ガス排出孔が形成するガス流路の最小流路断面積と同等であり、
前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔は、前記ハウジングの内面側の開口部の形状及び周長の少なくとも何れか一方が、互いに異なっている、
ガス発生器。
【請求項2】
前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔は、同一仕様の前記閉塞部材により閉塞されている、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔は、断面が円形の孔であり、
前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とで、前記ハウジングの内面側の開口部の孔径が互いに異なっている、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔は、前記ハウジングの厚み方向において断面が一定なストレート部と、前記ストレート部に連なると共に前記厚み方向において前記ストレート部から離れるに従って断面積が増加するテーパ部と、を含み、
前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とのうちの一方は、前記ハウジングの内面側に前記テーパ部が開口し、前記ハウジングの外面側に前記ストレート部が開口しており、
前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とのうちの他方は、前記ハウジングの内面側に前記ストレート部が開口し、前記ハウジングの外面側に前記テーパ部が開口している、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記ストレート部は、せん断面により形成されており、
前記テーパ部は、破断面により形成されている、
請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記ハウジングの厚みをt1とし、前記ハウジングの厚み方向における前記ストレート部の長さをt2とすると、
0.3<t2/t1<0.7である、
請求項4に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とのうちの何れか一方のみにおける前記ハウジングの内面側の開口部の周縁の少なくとも一部に、前記ハウジングの内側に突起した突起部が形成されており、
前記閉塞部材は、前記突起部を覆うように前記ハウジングの内面に取り付けられている、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とのうちの何れか一方のみにおける前記ハウジングの内面側の開口部の周縁が面取りされている、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項9】
点火器と、前記点火器の作動により燃焼することで燃焼ガスを発生させるガス発生剤と、前記点火器と前記ガス発生剤とを内部に収容するハウジングと、前記ハウジングの内外を貫通する複数のガス排出孔と、前記複数のガス排出孔を閉塞する閉塞部材と、を備えるガス発生器の製造方法であって、
第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とを少なくとも1つずつ含む複数のガス排出孔を、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とで前記閉塞部材の開裂圧力が異なるように、前記ハウジングに形成することと、
前記複数のガス排出孔における前記ハウジングの内面側の開口部を覆うように、前記ハウジングの内面に前記閉塞部材を取り付けることと、を含み、
前記複数のガス排出孔を前記ハウジングに形成することにおいては、前記第1ガス排出孔が形成するガス流路の最小流路断面積と前記第2ガス排出孔が形成するガス流路の最小流路断面積とが同等となるようにし、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とで、前記ハウジングの内面側の開口部の形状及び周長の少なくとも何れか一方を、互いに異ならせる、
ガス発生器の製造方法。
【請求項10】
前記複数のガス排出孔を前記ハウジングに形成することにおいては、
前記ハウジングの外面側からパンチング加工により穿孔することで、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とのうちの一方を形成し、
前記ハウジングの内面側からパンチング加工により穿孔することで、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とのうちの他方を形成する、
請求項9に記載のガス発生器の製造方法。
【請求項11】
前記複数のガス排出孔を前記ハウジングに形成することにおいては、
前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とのうちの何れか一方のみにおける前記ハウジングの内面側の開口部に面取り加工を行う、
請求項9に記載のガス発生器の製造方法。
【請求項12】
前記ハウジングの内面に閉塞部材を取り付けることにおいては、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とを同一仕様の前記閉塞部材により閉塞する、
請求項9から11の何れか1項に記載のガス発生器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生器及びガス発生器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング内に点火器とガス発生剤とを配置し、点火器を作動させることでガス発生剤を燃焼させ、その燃焼ガスをハウジングに形成された複数のガス排出孔から外部へ放出するガス発生器が広く用いられている。
【0003】
ガス発生器は、シールテープ等の閉塞部材により複数のガス排出口が閉塞されることで作動前はハウジング内部が気密に維持され、作動すると燃焼ガスの圧力により閉塞部材が開裂することでガス排出孔が開口するように構成されている。これに関連して、ガス発生器の作動時に閉塞部材を確実に開裂させて出力性能を安定化させるために、ガス排出孔におけるハウジングの内壁面側の周囲に突起(バリ)が形成されるようにガス排出孔を穿孔し、ガス排出孔と突起とを含む範囲をシールテープで覆う技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガス発生器の出力性能は、その燃焼ガスの排出量や排出時間等をパラメータとし、安定した(再現性のよい)出力性能を得るためには、ガス発生剤を安定して燃焼させることが重要である。
【0006】
本開示の技術は、出力性能の安定したガス発生器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の技術は、以下の構成を採用した。即ち、本開示の技術は、ガス発生器である。本開示に係るガス発生器は、点火器と、前記点火器の作動により燃焼することで燃焼ガスを発生させるガス発生剤と、前記点火器と前記ガス発生剤とを内部に収容するハウジングと、前記ハウジングの内外を貫通する複数のガス排出孔と、前記ハウジングの内面に取り付けられ、前記点火器の作動前には前記複数のガス排出孔における前記ハウジングの内面側の開口部を覆うことで前記複数のガス排出孔を閉塞し、前記点火器の作動により発生した前記燃焼ガスの圧力を受けて開裂することで前記複数のガス排出孔を開口させる、閉塞部材と、を備える。そして、前記複数のガス排出孔は、前記閉塞部材の開裂圧力を異ならせた第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とを少なくとも1つずつ含み、前記第1ガス排出孔が形成するガス流路の最小流路断面積は、前記第2ガス排出孔が形成するガス流路の最小流路断面積と同等であり、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔は、前記ハウジングの内面側の開口部の形状及び周長の少なくとも何れか一方が、互いに異なっている。
【0008】
本開示に係るガス発生器によると、ガス排出量をコントロールする最小流路断面積を第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とで同等とすることで、第1ガス排出孔の単位時間当たりのガス排出量と第2ガス排出孔の単位時間当たりのガス排出量とを同等とすることができ
る。更に、ハウジングの内面側の開口部の形状及び周長の少なくとも何れか一方を第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とで互いに異ならせることで、第1ガス排出孔の開裂圧力と第2ガス排出孔の開裂圧力とを互いに異ならせることができる。つまり、ハウジングの内圧コントロール機能が同等で且つ開口のし易さが異なる2種類のガス排出孔を意図的に設定することができる。これによると、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とで開口のタイミングを異ならせ、点火器の作動時にハウジングの急激な内圧降下を抑制できる。その結果、ガス発生剤の燃焼性能を維持し、ガス発生器の出力性能を安定化することができる。
【0009】
また、本開示に係るガス発生器において、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔は、同一仕様の前記閉塞部材により閉塞されてもよい。
【0010】
また、本開示に係るガス発生器において、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔は、断面が円形の孔であり、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とで、前記ハウジングの内面側の開口部の孔径が互いに異なってもよい。
【0011】
また、本開示に係るガス発生器において、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔は、前記ハウジングの厚み方向において断面が一定なストレート部と、前記ストレート部に連なると共に前記厚み方向において前記ストレート部から離れるに従って断面積が増加するテーパ部と、を含み、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とのうちの一方は、前記ハウジングの内面側に前記テーパ部が開口し、前記ハウジングの外面側に前記ストレート部が開口しており、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とのうちの他方は、前記ハウジングの内面側に前記ストレート部が開口し、前記ハウジングの外面側に前記テーパ部が開口してもよい。
【0012】
また、本開示に係るガス発生器において、前記ストレート部は、せん断面により形成されており、前記テーパ部は、破断面により形成されてもよい。
【0013】
また、本開示に係るガス発生器において、前記ハウジングの厚みをt1とし、前記ハウジングの厚み方向における前記ストレート部の長さをt2とすると、0.3<t2/t1<0.7であってもよい。
【0014】
また、本開示に係るガス発生器において、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とのうちの何れか一方のみにおける前記ハウジングの内面側の開口部の周縁の少なくとも一部に、前記ハウジングの内側に突起した突起部が形成されており、前記閉塞部材は、前記突起部を覆うように前記ハウジングの内面に取り付けられてもよい。
【0015】
また、本開示に係るガス発生器において、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とのうちの何れか一方のみにおける前記ハウジングの内面側の開口部の周縁が面取りされてもよい。
【0016】
また、本開示に係る技術は、ガス発生器の製造方法としても特定することができる。即ち、本開示の技術は、点火器と、前記点火器の作動により燃焼することで燃焼ガスを発生させるガス発生剤と、前記点火器と前記ガス発生剤とを内部に収容するハウジングと、前記ハウジングの内外を貫通する複数のガス排出孔と、前記複数のガス排出孔を閉塞する閉塞部材と、を備えるガス発生器の製造方法であって、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とを少なくとも1つずつ含む複数のガス排出孔を、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とで前記閉塞部材の開裂圧力が異なるように、前記ハウジングに形成することと、前記複数のガス排出孔における前記ハウジングの内面側の開口部を覆うように、前記ハウジングの内面に前記閉塞部材を取り付けることと、を含み、前記複数のガス排出孔を前記ハウジングに形成することにおいては、前記第1ガス排出孔が形成するガス流路の最小流路断面積と前
記第2ガス排出孔が形成するガス流路の最小流路断面積とが同等となるようにし、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とで、前記ハウジングの内面側の開口部の形状及び周長の少なくとも何れか一方を、互いに異ならせる、ガス発生器の製造方法であってもよい。
【0017】
また、本開示に係るガス発生器の製造方法において、前記複数のガス排出孔を前記ハウジングに形成することにおいては、前記ハウジングの外面側からパンチング加工により穿孔することで、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とのうちの一方を形成し、前記ハウジングの内面側からパンチング加工により穿孔することで、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とのうちの他方を形成してもよい。
【0018】
また、本開示に係るガス発生器の製造方法において、前記複数のガス排出孔を前記ハウジングに形成することにおいては、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とのうちの何れか一方のみにおける前記ハウジングの内面側の開口部に面取り加工を行ってもよい。
【0019】
また、本開示に係るガス発生器の製造方法において、前記ハウジングの内面に閉塞部材を取り付けることにおいては、前記第1ガス排出孔と前記第2ガス排出孔とを同一仕様の前記閉塞部材により閉塞してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示の技術によれば、出力性能の安定したガス発生器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係るガス発生器の作動前の状態を示す縦断面図である。
【
図3】実施形態1に係る第1小孔の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図4】実施形態1に係る第1小孔におけるハウジングの内面側の開口部の形状を示す図である。
【
図5】実施形態1に係る第2小孔の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図6】実施形態1に係る第2小孔におけるハウジングの内面側の開口部の形状を示す図である。
【
図7】実施形態1に係るガス発生器の製造方法のフローチャートである。
【
図8】実施形態1に係る第1小孔を形成する方法を説明するための断面図である。
【
図9】実施形態1に係る第2小孔を形成する方法を説明するための断面図である。
【
図10】実施形態1の変形例1に係る第2小孔の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図11】実施形態1の変形例2に係る第1小孔の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図12】実施形態1の変形例2に係る第2小孔の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図13】実施形態2に係る第1小孔の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図14】実施形態2に係る第2小孔の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図15】小孔におけるハウジングの内面側の開口部の形状例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るガス発生器について説明する。以下に説明する実施形態は、本開示に係る技術をエアバッグ用のガス発生器(インフレータ)に適用した態様について説明する。但し、本開示に係る技術の用途はこれに限定されず、例えばシートベルトリトラクタ用のガス発生器に適用してもよい。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適
宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0023】
<実施形態1>
以下、実施形態1について説明する。実施形態1は、本開示に係る技術が採り得る態様のうち、第1ガス排出孔におけるハウジングの内面側の開口部の周長と第2ガス排出孔におけるハウジングの内面側の開口部の周長とが互いに異なっている態様に相当する。
【0024】
図1は、実施形態1に係るガス発生器100の作動前の状態を示す縦断面図である。
図1では、符号CA1で示すハウジング1の中心軸に沿う断面が図示されている。実施形態1に係るガス発生器100は、点火器を2つ備える所謂デュアルタイプのガス発生器として構成されている。但し、本開示に係る技術はこれらに限定されない。つまり、本開示に係るガス発生器は、点火器を1つのみ備える所謂シングルタイプのガス発生器であってもよいし、3つ以上の点火器を備えるガス発生器であってもよい。
【0025】
[全体構成]
図1に示すように、ガス発生器100は、第1点火装置4と、第1内筒部材5と、伝火薬6と、第2点火装置7と、第2内筒部材8と、フィルタ9と、第1ガス発生剤110と、第2ガス発生剤120と、これらを収容するハウジング1と、ハウジング1の内外を貫通する複数のガス排出孔H1と、複数のガス排出孔H1を閉塞するシールテープS1と、を備えている。ガス発生器100は、第1点火装置4が備える第1点火器41を作動させることで第1ガス発生剤110を燃焼させ、第2点火装置7が備える第2点火器71を作動させることで第2ガス発生剤120を燃焼させ、これらの燃焼生成物である燃焼ガスをハウジング1に形成された複数のガス排出孔H1から放出するように構成されている。ここで、ハウジング1の中心軸CA1に沿う方向をガス発生器100の上下方向と定義し、符号2で示す上部シェル側(即ち、
図1における上側)をガス発生器100の上側とし、符号3で示す下部シェル側(即ち、
図1における下側)をガス発生器100の下側とする。以下、ガス発生器100の各構成について説明する。なお、本明細書では、点火装置に含まれる点火器が作動することを、便宜上、「点火装置が作動する」又は「ガス発生器が作動する」と表現する場合がある。
【0026】
[ハウジング]
ハウジング1は、夫々が有底略円筒状に形成された金属製の上部シェル2及び下部シェル3が互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されることで、符号11で示す筒状の周壁部を含み該周壁部11の軸方向両端が閉塞した短尺円筒状に形成されている。
図1の中心軸CA1は、周壁部11の中心軸である。
【0027】
上部シェル2は、筒状の上側周壁部21と該上側周壁部21の上端を閉塞する天板部22とを有する。上側周壁部21の下端部には、径方向外側に延在した接合部23が繋がっている。下部シェル3は、筒状の下側周壁部31と該下側周壁部31の下端を閉塞する底板部32とを有する。下側周壁部31の上端部には、径方向外側に延在した接合部33が繋がっている。底板部32には、第1点火装置4を底板部32に取り付けるための第1取付孔32aと第2点火装置7を底板部32に取り付けるための第2取付孔32bとが形成されている。
【0028】
上部シェル2の接合部23と下部シェル3の接合部33とが重ね合わされてレーザ溶接等によって接合されることで、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状のハウジング1が形成されている。これら上部シェル2の上側周壁部21と下部シェル3の下側周壁部31とによって、天板部22と底板部32とを接続する筒状の周壁部11が形成されている。つまり、ハウジング1は、筒状の周壁部11と、周壁部11の一端側に設けられた天板部22
と、他端側に該天板部22と対向するように設けられた底板部32と、を含んで構成されている。これら周壁部11と天板部22と底板部32と後述する第2内筒部材8とによって、第1燃焼室10が画定されている。第1燃焼室10には、第1点火装置4、第1内筒部材5、伝火薬6、フィルタ9、及び第1ガス発生剤110が配置される。
【0029】
[点火装置]
図1に示すように、第1点火装置4は、下部シェル3の底板部32に形成された第1取付孔32aに固定されている。第1点火装置4は、第1点火器41を備える。第2点火装置7は、下部シェル3の底板部32に形成された第2取付孔32bに固定されている。また、第2点火装置7は、第2点火器71を備える。第1点火器41及び第2点火器71は、それぞれの内部に点火薬(図示なし)が収容されており、着火電流の供給により作動することで該点火薬を燃焼させ、その燃焼生成物を外部に放出する。第1点火器41及び第2点火器71は、本開示に係る「点火器」の一例である。第1点火装置4と第2点火装置7は、互いに独立して作動する。第2点火装置7が作動する場合には、第1点火装置4の作動と同時又は第1点火装置4の作動後の所定のタイミングで第2点火装置7が作動する。ガス発生器100は、第1点火装置4の作動による第1ガス発生剤110の燃焼と第2点火装置7の作動による第2ガス発生剤120の燃焼とによって、所謂シングルタイプのガス発生器と比較して多量の燃焼ガスを様々な出力プロファイルで外部に放出することができる。なお、第2点火装置7は、常に作動するものではなく、例えば、ガス発生器100は、センサ(図示せず)が感知した衝撃に応じて、衝撃が弱い場合には第2点火装置7を作動させずに第1点火装置4のみを作動させることや、衝撃が強い場合には第1点火装置4と第2点火装置7とを同時に作動させることができる。
【0030】
[内筒部材]
第1内筒部材5は、底板部32から天板部22に向かって延びる有底筒状の部材であり、筒状の包囲壁部51と包囲壁部51の一端部を閉塞する蓋壁部52とを含む。包囲壁部51の他端部に第1点火装置4が嵌入または圧入されることで、第1内筒部材5が底板部32に取り付けられている。
図1に示すように、第1点火装置4が包囲壁部51によって取り囲まれることで、第1内筒部材5と第1点火装置4との間には伝火室53が形成されている。伝火室53には、第1点火装置4の作動により燃焼する伝火薬6が収容されている。また、第1内筒部材5の包囲壁部51には、その内部空間(即ち、伝火室53)と外部空間とを連通する連通孔h1が複数形成されている。連通孔h1は、第1点火装置4が作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されている。
【0031】
第2内筒部材8は、底板部32から天板部22に向かって延びる有底筒状の部材であり、筒状の包囲壁部81と包囲壁部81の一端部を閉塞する蓋壁部82とを含む。包囲壁部81の他端部に第2点火装置7が嵌入または圧入されることで、第2内筒部材8が底板部32に取り付けられている。
図1に示すように、第2内筒部材8の内部には、第2点火装置7と第2点火装置7の作動により燃焼する第2ガス発生剤120とが配置される第2燃焼室20が形成されている。また、第2内筒部材8の包囲壁部81には、その内部空間(即ち、第2燃焼室20)と外部空間(即ち、第1燃焼室10)とを連通する連通孔h2が複数形成されている。連通孔h2は、第2点火装置7が作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されている。
【0032】
[フィルタ]
図1に示すように、フィルタ9は、筒状に形成されており、第1ガス発生剤110を取り囲み、且つ、その径方向においてガス排出孔H1がその外側に位置するように、第1燃焼室10に配置されている。つまり、フィルタ9は、第1ガス発生剤110を取り囲むように第1ガス発生剤110と複数のガス排出孔H1の間に配置されている。フィルタ9は、上端面が上部シェル2の天板部22に当接して支持され、下端面が下部シェル3の底板
部32に当接して支持されている。このフィルタ9は、第1ガス発生剤110や第2ガス発生剤120の燃焼ガスがフィルタ9を通過する際に、燃焼ガスの熱を奪い取ることで当該燃焼ガスを冷却する。また、フィルタ9は、燃焼ガスの冷却機能に加え、燃焼ガスに含まれる燃焼残渣を捕集することで当該燃焼ガスを濾過する機能を有する。
【0033】
[伝火薬]
伝火薬6としては、公知の黒色火薬の他、着火性が良く、第1ガス発生剤110よりも燃焼温度の高いガス発生剤を使用することができる。伝火薬6の燃焼温度は、1700~3000℃の範囲に設定することができる。このような伝火薬6としては、例えば、ニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)を含む、公知のものを用いることができる。また、伝火薬6には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0034】
[ガス発生剤]
第1ガス発生剤110は、第1点火器41の作動により燃焼することで燃焼ガスを発生させる。第2ガス発生剤120は、第2点火器71の作動により燃焼することで燃焼ガスを発生させる。第1ガス発生剤110や第2ガス発生剤120には、比較的燃焼温度の低いガス発生剤を使用することができる。第1ガス発生剤110や第2ガス発生剤120の燃焼温度は、1000~1700℃の範囲に設定することができる。このような第1ガス発生剤110や第2ガス発生剤120としては、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物を含む、公知のものを用いることができる。また、第1ガス発生剤110や第2ガス発生剤120には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0035】
[ガス排出孔]
図1に示すように、ハウジング1の周壁部11には、ハウジング1の内外を貫通する複数のガス排出孔H1が周方向に並んで形成されている。ガス排出孔H1は、ハウジング1の内面11a(周壁部11の内周面)から外面11b(周壁部11の外周面)まで貫通している。ガス排出孔H1を介して、ハウジング1の内部空間(第1燃焼室10)とハウジング1の外部空間とが連通している。これにより、ガス排出孔H1は、ハウジング1の内部から外部へ燃焼ガスを排出するための流路を形成している。
【0036】
ここで、本明細書では、ガス排出孔H1が形成するガス流路の、燃焼ガスの流れ方向に対して直交する断面の面積を流路断面積と定義する。実施形態1では、ガス排出孔H1がハウジング1を貫通する方向、つまりハウジング1の厚み方向が燃焼ガスの流れ方向となる。そして、ガス流路において最小となる断面積を最小流路断面積と定義する。ガス排出孔H1では、最小流路断面積となる箇所がガス排出の律速(絞り)となる。つまり、ガス排出孔H1の単位時間当たりのガス排出量は、最小流路断面積に応じて決定される。そして、開口するガス排出孔の数やガス排出孔の単位時間当たりのガス排出量を調整することで、ハウジング1の内圧をコントロールすることができる。
【0037】
図1に示すように、複数のガス排出孔H1は、最小流路断面積が異なる大孔12と小孔13とを複数ずつ含んで構成されている。実施形態1に係るガス発生器100では、大孔12の方が小孔13よりも最小流路断面積が大きくなっている。そのため、大孔12の方が小孔13よりも単位時間当たりのガス排出量が大きくなっている。
図1に示すように、周壁部11には、複数の大孔12が周方向に並んで配置され、複数の大孔12よりも下側の位置で複数の小孔13が周方向に並んで配置されている。但し、大孔12及び小孔13の配置はこれに限定されない。
【0038】
[シールテープ]
図1に示すように、ハウジング1の内面11aには、シールテープS1が取り付けられている。シールテープS1は、本開示に係る「閉塞部材」の一例である。シールテープS1は、例えば金属製の基材層の片面に粘着剤層が形成された帯状の部材であり、粘着剤層がハウジング1の内面11aに接着することで、内面11aに取り付けられる。基材層は、アルミニウムからなるものが好ましく、ステンレスや銅からなるものでもよい。粘着剤層は、公知の合成樹脂系接着剤からなる層を採用することができる。粘着剤としては、耐熱性及び粘着性の点から、シリコーン系、ゴム系、エポキシ系粘着剤等が好ましい。但し、シールテープS1の材質は上記に限定されない。
【0039】
図1に示すように、シールテープS1は、ガス排出孔H1におけるハウジング1の内面11a側の開口部を覆った状態で内面11aに取り付けられることで、複数のガス排出孔H1を閉塞している。第1点火器41の作動前は、ガス排出孔H1がシールテープS1によって閉塞されることでガス排出孔H1を通じてハウジング1の内部に外気(湿気)が侵入することが防止され、ハウジング1の内部が気密に維持される。
【0040】
図1に示すように、実施形態1では、大孔12と小孔13とを別個のシールテープS1で閉塞している。1枚のシールテープS1によって全ての大孔12が纏めて閉塞され、それとは別の1枚のシールテープS1によって全ての小孔13が纏めて閉塞されている。なお、複数のガス排出孔H1の夫々を別個のシールテープで閉塞してもよいし、全てのガス排出孔H1を1枚のシールテープで纏めて閉塞してもよい。
【0041】
シールテープS1は、第1点火器41が作動すると、発生したガスの圧力を受けて開裂することで複数のガス排出孔H1を開口させる。ここで、本明細書では、各ガス排出孔において閉塞部材(本例ではシールテープS1)を開裂させて当該ガス排出孔を開口するために必要な圧力を「開裂圧力」と定義する。閉塞部材が開裂するときには、燃焼ガスの圧力を受けた閉塞部材は、ガス排出孔におけるハウジングの内面側の開口部の周縁に押し付けられ、当該周縁に沿ってせん断される。そのため、各ガス排出孔における閉塞部材の開裂圧力は、閉塞部材の仕様やガス排出孔の開口部の性状に応じて決定される。閉塞部材の仕様とは、具体的には、閉塞部材の引張強度や厚みである。閉塞部材の引張強度が低いほど、又は閉塞部材が薄いほど、開裂圧力は低くなる。また、ガス排出孔の開口部の性状とは、具体的には、ガス排出孔におけるハウジングの内面側の開口部の形状や周長(周縁の長さ)である。開口部の形状とは、開口部の周縁が呈する平面形状の他、開口部の周縁に形成される突起や面取りを含むものである。開口部の周縁に突起が形成されていると開裂圧力が低くなり、開口部の周縁が面取りされていると開裂圧力が高くなる。また、開口部の周長が長いほど、開裂圧力は低くなる。
【0042】
実施形態1に係るガス発生器100では、大孔12におけるシールテープS1の開裂圧力の方が小孔13におけるシールテープS1の開裂圧力よりも低くなるように設定されている。大孔12及び小孔13の開裂圧力の設定では、例えば、大孔12のハウジング1の内面11a側の開口部の周長を小孔13の内面11a側の開口部の周長よりも長くしてもよいし、大孔12を閉塞するシールテープS1を小孔13を閉塞するシールテープS1よりも薄いものとしてもよい。
【0043】
[第1小孔と第2小孔]
図2は、
図1のA-A断面図である。
図2では、作動前のガス発生器100の中心軸CA1に対して直交する断面が図示されている。なお、
図2では、便宜上、第1点火装置4、第2点火装置7、及び接合部23,33の図示を省略している。
【0044】
図2に示すように、複数の小孔13は、複数の第1小孔13aと複数の第2小孔13bとを含んでいる。第1小孔13aは、本開示に係る「第1ガス排出孔」の一例であり、第
2小孔13bは、本開示に係る「第2ガス排出孔」の一例である。ハウジング1の周壁部11には、第1小孔13aと第2小孔13bとが周方向において等間隔で交互に並んで配置されている。
【0045】
実施形態1に係るガス発生器100は、第1小孔13aと第2小孔13bとで単位時間当たりのガス排出量を同等としながらも、第1小孔13aにおけるシールテープS1の開裂圧力と第2小孔13bにおけるシールテープS1の開裂圧力とを微妙に異ならせている。詳細については後述するが、実施形態1に係るガス発生器100では、第1小孔13aにおけるシールテープS1の開裂圧の方が第2小孔13bにおけるシールテープS1の開裂圧力よりも低くなるように、小孔13の内面11a側の開口部の性状が設定されている。但し、このことは、本開示に係る技術における第1ガス排出孔(第1小孔)の開裂圧力と第2ガス排出孔(第2小孔)の開裂圧力との大小関係を限定するものではない。また、本開示に係る技術において、第1ガス排出孔及び第2ガス排出孔が複数ずつ存在することは必須ではなく、複数のガス排出孔には、閉塞部材の開裂圧力を異ならせた第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とが少なくとも1つずつ含まれていればよい。また、本開示に係る技術における第1ガス排出孔及び第2ガス排出孔の配置は上記に限定されるものではなく、例えば複数の第1ガス排出孔や複数の第2ガス排出孔が偏在してもよい。
【0046】
図3は、実施形態1に係る第1小孔13aの形状を説明するための拡大断面図である。
図3では、
図2のB-B断面が図示されている。
図3の符号13a1は第1小孔13aにおけるハウジング1の内面11a側の開口部を示し、符号13a2は第1小孔13aにおけるハウジング1の外面11b側の開口部を示す。実施形態1に係る第1小孔13aは、ハウジング1の厚み方向(ガスの流れ方向)に対して直交する断面が円形(真円)の孔として形成されている。第1小孔13aの開口部13a1は、シールテープS1によって覆われている。
【0047】
図3に示すように、第1小孔13aは、ストレート部131とテーパ部132とを含む。ストレート部131は、ハウジング1の厚み方向において断面(断面形状及び断面積)が一定となるように形成されている。ストレート部131を形成する内壁面131aは、ハウジング1の厚み方向において径が一定の円筒形状を有する。テーパ部132は、ストレート部131に連なると共にハウジング1の厚み方向においてストレート部131から離れるに従って断面積が増加するように形成されている。テーパ部132を形成する内壁面132aは、ハウジング1の厚み方向においてストレート部131から離れるに従って拡径した円筒形状を有する。実施形態1に係る第1小孔13aでは、ハウジング1の内面11a側にテーパ部132が開口し、ハウジング1の外面11b側にストレート部131が開口している。第1小孔13aのテーパ部132は、内面11aに開口することで、開口部13a1を形成している。第1小孔13aのストレート部131は、外面11bに開口することで、開口部13a2を形成している。詳細については後述するが、実施形態1に係る第1小孔13aは、ハウジング1の外面11b側からパンチング加工により穿孔することで形成されている。ストレート部131の内壁面131aは、パンチング加工によるせん断面として形成されている。テーパ部132の内壁面132aは、パンチング加工による破断面として形成されている。せん断面は比較的平滑で金属光沢を有する面として形成されており、破断面は比較的粗く金属光沢のない面として形成されている。
【0048】
図3に示すように、第1小孔13aが形成するガス流路の断面積は、ストレート部131において最小となる。つまり、第1小孔13aにおいて、ストレート部131がガス排出の絞りとなる。第1小孔13aの最小流路断面積をA1とする。
図3の断面
図C1は、ストレート部131におけるハウジング1の厚み方向に対して直交する断面を示す。断面
図C1に示すように、実施形態1に係る第1小孔13aでは、ストレート部131の断面積が最小流路断面積A1となる。
【0049】
図4は、実施形態1に係る第1小孔13aにおけるハウジング1の内面11a側の開口部13a1の形状を示す図である。
図4に示すように、第1小孔13aの開口部13a1の周縁が呈する平面形状は、円形である。開口部13a1の直径をD1とし、開口部13a1の周長(開口部13a1の周縁の長さ)をP1とする。
【0050】
図5は、実施形態1に係る第2小孔13bの形状を説明するための拡大断面図である。
図5では、
図2のC-C断面が図示されている。
図5の符号13b1は第2小孔13bにおけるハウジング1の内面11a側の開口部を示し、符号13b2は第2小孔13bにおけるハウジング1の外面11b側の開口部を示す。実施形態1に係る第2小孔13bは、第1小孔13aと同様に、ハウジング1の厚み方向(ガスの流れ方向)に対して直交する断面が円形の孔として形成されている。第2小孔13bの開口部13b1は、シールテープS1によって覆われている。
【0051】
第2小孔13bは、第1小孔13aと同様に、せん断面により形成されたストレート部131と破断面により形成されたテーパ部132とを含む。第2小孔13bのストレート部131の径は、第1小孔13aのストレート部131の径と同等である。実施形態1に係る第2小孔13bでは、第1小孔13aとは反対に、ハウジング1の内面11a側にストレート部131が開口し、ハウジング1の外面11b側にテーパ部132が開口している。第2小孔13bのストレート部131は、内面11aに開口することで、開口部13b1を形成している。第2小孔13bのテーパ部132は、外面11bに開口することで、開口部13b2を形成している。詳細については後述するが、実施形態1に係る第2小孔13bは、第1小孔13aとは反対に、ハウジング1の内面11a側からパンチング加工により穿孔することで形成されている。
【0052】
図5に示すように、第2小孔13bが形成するガス流路の断面積は、第1小孔13aと同様に、ストレート部131において最小となる。つまり、第2小孔13bにおいても、ストレート部131がガス排出の絞りとなる。第2小孔13bの最小流路断面積をA2とする。
図5の断面
図C2は、ストレート部131におけるハウジング1の厚み方向に対して直交する断面を示す。断面
図C2に示すように、実施形態1に係る第2小孔13bでは、ストレート部131の断面積が最小流路断面積A2となる。
【0053】
図6は、実施形態1に係る第2小孔13bにおけるハウジング1の内面11a側の開口部13b1の形状を示す図である。
図4に示すように、第2小孔13bの開口部13b1の周縁が呈する平面形状は、第1小孔13aの開口部13a1と同様に、円形である。開口部13b1の直径をD2とし、開口部13b1の周長(開口部13b1の周縁の長さ)をP2とする。
【0054】
ここで、第1小孔13aと第2小孔13bとで、最小流路断面積及びハウジング1の内面11a側の開口部の性状を比較する。上述のように、第1小孔13a及び第2小孔13bは、互いに同径のストレート部131において流路断面積が最小となる。そのため、第1小孔13aの最小流路断面積A1と第2小孔13bの最小流路断面積A2は同等である。つまり、A1=A2となる。従って、第1小孔13aと第2小孔13bは、単位時間当たりのガス排出量が同等である。また、
図4及び
図6に示すように、第1小孔13aの開口部13a1と第2小孔13bの開口部13b1は、共に形状が円形で同じである。ここで、第1小孔13aの開口部13a1がテーパ部132で形成されている一方で第2小孔13bの開口部13b1はストレート部131で形成されていることから、第1小孔13aの開口部13a1と第2小孔13bの開口部13b1は、互いの孔径が異なっている。具体的には、開口部13a1の直径D1の方が開口部13b1の直径D2よりも大きくなっている。D1>D2であるから、第1小孔13aの開口部13a1の周長P1の方が第
2小孔13bの開口部13b1の周長P2よりも長くなっている。つまり、P1>P2となる。従って、第1小孔13aにおけるシールテープS1の開裂圧力の方が第2小孔13bにおけるシールテープS1の開裂圧力よりも低くなっている。その結果、第1小孔13aの方が第2小孔13bよりも開口し易くなっている。
【0055】
[ガス発生器の製造方法]
次に、実施形態1に係るガス発生器の組立方法について説明する。但し、本願開示に係るガス発生器の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
図7は、実施形態1に係るガス発生器の製造方法のフローチャートである。
図7に示すように、実施形態1に係るガス発生器の組立方法は、ステップS101の準備工程と、ステップS102のガス排出孔の形成工程と、ステップS103の閉塞部材の取付工程と、ステップS104の組立工程と、を含む。
【0056】
先ず、ステップS101の準備工程では、第1点火装置4、第1内筒部材5、伝火薬6、第2点火装置7、第2内筒部材8、フィルタ9、上部シェル2、下部シェル3、第1ガス発生剤110、第2ガス発生剤120、及びシールテープS1を準備する。
【0057】
次に、ステップS102のガス排出孔の形成工程では、第1小孔13aと第2小孔13bとでシールテープS1の開裂圧力が異なるように、ハウジング1に複数のガス排出孔H1を形成する。具体的には、上部シェル2の上側周壁部21に対してパンチング加工により穿孔することで、複数の大孔12と複数の小孔13とを形成する。大孔12のパンチング加工では、小孔13のパンチング加工に用いるパンチよりも径の大きなパンチを用いる。これにより、大孔12の最小流路断面積の方が小孔13の最小流路断面積よりも大きくなる。その結果、大孔12の方が小孔13よりも単位時間当たりのガス排出量が多くなる。
【0058】
また、複数の小孔13の形成では、第1小孔13aにおけるシールテープS1の開裂圧力と第2小孔13bにおけるシールテープS1の開裂圧力とが互いに異なるように、パンチング加工を行う。
図8は、実施形態1に係る第1小孔13aを形成する方法を説明するための断面図である。また、
図9は、実施形態1に係る第2小孔13bを形成する方法を説明するための断面図である。第1小孔13a及び第2小孔13bは、同径のパンチを用いたパンチング加工により形成される。
図8及び
図9の符号200は、加工に用いるパンチを示す。
図8に示すように、第1小孔13aは、ハウジング1の外面11b側からパンチング加工により穿孔することで形成される。これにより、第1小孔13aでは、ハウジング1の外面11b側にはせん断面によるストレート部131が形成され、ハウジング1の内面11a側には破断面によるテーパ部132が形成される。また、
図9に示すように、第2小孔13bは、ハウジング1の内面11a側からパンチング加工により穿孔することで形成される。これにより、第2小孔13bでは、ハウジング1の内面11a側にストレート部131が形成され、ハウジング1の外面11b側にテーパ部132が形成される。
【0059】
ガス排出孔の形成工程では、第1小孔13aと第2小孔13bとで同径のパンチ200を用いるため、第1小孔13a及び第2小孔13bの夫々に同径のストレート部131が形成されることとなる。これにより、第1小孔13aにおける最小流路断面積A1と第2小孔13bにおける最小流路断面積A2とが同等となる。また、ガス排出孔の形成工程では、第1小孔13aと第2小孔13bとでパンチングの方向を反対向きとすることで、ストレート部131とテーパ部132との位置関係が第1小孔13aと第2小孔13bとで互いに逆となる。これにより、第1小孔13aの開口部13a1と第2小孔13bの開口部13b1とで周長が互いに異なっている。本例では、第1小孔13aの開口部13a1の周長P1の方が第2小孔13bの開口部13b1の周長P2よりも長くなっている。
【0060】
次に、ステップS103の閉塞部材の取り付け工程では、複数のガス排出孔H1におけるハウジング1の内面11a側の開口部を覆うように、ハウジング1の内面11aにシールテープS1を取り付ける。これにより、複数のガス排出孔H1が閉塞される。本例では、1枚のシールテープS1によって全ての大孔12を纏めて閉塞し、別の1枚のシールテープS1によって全ての小孔13を纏めて閉塞する。そのため、第1小孔13a及び第2小孔13bは、同一仕様のシールテープS1により閉塞される。
【0061】
次に、ステップS104の組立工程では、第1点火装置4と第2点火装置7とを下部シェル3に取り付け、伝火薬6が充填された第1内筒部材5を第1点火装置4に固定し、第2ガス発生剤120が充填された第2内筒部材8を第2点火装置7に固定する。その後、下部シェル3にフィルタ9を配置し、フィルタ9の内側に第1ガス発生剤110を充填する。最後に、下部シェル3に上部シェル2を被せ、上部シェル2の接合部23と下部シェル3の接合部33とを重ね合わせてレーザ溶接等によって接合することで、ハウジング1を形成する。以上のようにして、ガス発生器100が組み立てられる。
【0062】
[動作]
以下、実施形態1に係るガス発生器100の基本的な動作について、
図1を参照しながら説明する。本例では、第2点火装置7が第1点火装置4に遅れて(つまり、第1点火装置4が作動した後に)作動する場合について説明する。
【0063】
センサ(図示せず)が衝撃を感知すると、第1点火装置4の第1点火器41に着火電流が供給され、第1点火器41が作動する。すると、第1点火器41に収容された点火薬が燃焼し、その燃焼生成物である火炎や高温のガス等が伝火室53内に放出される。これにより、伝火室53に収容された伝火薬6が燃焼し、伝火室53内に燃焼ガスが発生する。第1内筒部材5の包囲壁部51の連通孔h1を閉塞していたシールテープが伝火薬6の燃焼ガスの圧力によって開裂すると、該燃焼ガスが連通孔h1を介して伝火室53の外部へ排出される。すると、包囲壁部51の周囲に配置されている第1ガス発生剤110に伝火薬6の燃焼ガスが接触し、第1ガス発生剤110が着火される。第1ガス発生剤110が燃焼することで、第1燃焼室10に高温・高圧の燃焼ガスが生成される。シールテープS1が燃焼ガスの圧力を受けて開裂することで、複数のガス排出孔H1が開口する。この燃焼ガスがフィルタ9を通過することで、燃焼ガスが冷却され、燃焼残渣が捕集される。フィルタ9によって冷却及び濾過された第1ガス発生剤110の燃焼ガスは、複数のガス排出孔H1を通じてハウジング1の外部へ排出される。
【0064】
次に、第2点火装置7の第2点火器71が作動すると、第2燃焼室20に収容された第2ガス発生剤120が燃焼し、第2燃焼室20内に燃焼ガスが発生する。第2内筒部材8の包囲壁部81の連通孔h2を閉塞していたシールテープが第2ガス発生剤120の燃焼ガスの圧力によって開裂すると、該燃焼ガスが連通孔h2を介して第1燃焼室10へ排出される。第2ガス発生剤120の燃焼ガスは、フィルタ9によって冷却及び濾過された後に、複数のガス排出孔H1を通じてハウジング1の外部へ排出される。
【0065】
第1ガス発生剤110及び第2ガス発生剤120の燃焼ガスは、ハウジング1の外部へ放出された後に、エアバッグ(図示せず)内に流入する。エアバッグが膨張することで、乗員と堅い構造物の間にクッションが形成され、乗員が衝撃から保護される。
【0066】
[開口のタイミングについて]
ところで、一般に、ガス発生剤の燃焼性能は、ガス発生剤の周囲が高温または高圧であるほど向上する傾向がある。つまり、低温・低圧の環境では、ガス発生剤の燃焼が不活発なものとなる。従って、例えば高温下での作動時(高温作動時)と低温下での作動時(低
温作動時)とでガス発生器の出力性能差を小さくし、出力性能を安定化させるためには、低温作動時の特にガス発生剤が燃焼し始める初期段階において、ハウジングの内圧を維持しておく必要がある。
【0067】
上述のように、実施形態1に係るガス発生器100では、大孔12におけるシールテープS1の開裂圧力の方が小孔13におけるシールテープS1の開裂圧力よりも低くなるように設定されている。例えば、低温作動時で第1点火器41と第2点火器71とが同時に作動して、第1ガス発生剤110と第2ガス発生剤120の全てが燃焼する場合を想定する。この場合、初期段階では、ハウジング1の内圧上昇に伴って複数のガス排出孔H1のうち大孔12のみが開口する。それによって燃焼ガスの一部が排出され、ハウジング1の内圧が低下するが、小孔13は閉塞されているので、ガス発生剤の燃焼性能が維持される。そして、ガス発生剤の燃焼に伴ってハウジング1の内圧が更に高まると、大孔12に遅れて小孔13が開口する。しかしながら、このときに全ての小孔13(全ての第1小孔13a及び全ての第2小孔13b)が一気に開口すると、ハウジング1の内圧が急激に落ち込み、ガス発生剤の燃焼性能が低下する懸念がある。これに対して、実施形態1に係るガス発生器100では、第1小孔13aと第2小孔13bとでシールテープS1の開裂圧力を微妙に異ならせることで、第1小孔13aと第2小孔13bとで開口のし易さを異ならせている。そのため、相対的に開裂圧力の低い第1小孔13aが比較的早期に開口し、相対的に開裂圧力の高い第2小孔13bが比較的遅れて開口する。全ての小孔13が一気に開口しないように第1小孔13aと第2小孔13bとで開口のタイミングを異ならせることで、ハウジング1の急激な内圧降下が抑制され、ガス発生剤の燃焼性能が維持される。
【0068】
[作用・効果]
以上のように、実施形態1に係るガス発生器100は、第1点火器41と第1ガス発生剤110とを内部に収容するハウジング1と、ハウジング1の内外を貫通する複数のガス排出孔H1と、ハウジング1の内面11aに取り付けられるシールテープS1と、を備える。シールテープS1は、ガス発生器100の作動前には複数のガス排出孔H1におけるハウジング1の内面11a側の開口部を覆うことで複数のガス排出孔H1を閉塞し、ガス発生器100の作動によりハウジング1内で発生した燃焼ガスの圧力を受けて開裂することで、複数のガス排出孔H1を開口させる。複数のガス排出孔H1は、シールテープS1の開裂圧力を異ならせた第1小孔13aと第2小孔13bとを少なくとも1つずつ含んでいる。そして、第1小孔13aが形成するガス流路の最小流路断面積A1は、第2小孔13bが形成するガス流路の最小流路断面積A2と同等であり、第1小孔13aと第2小孔13bは、互いの開裂圧力が異なるように、ハウジング1の内面11a側の開口部の周長が互いに異なっている。
【0069】
以上のように構成されたガス発生器100によると、ガス排出量をコントロールする最小流路断面積を第1小孔13aと第2小孔13bとで同等とすることで、第1小孔13aの単位時間当たりのガス排出量と第2小孔13bの単位時間当たりのガス排出量とを同等とすることができる。更に、ハウジング1の内面11a側の開口部の周長を第1小孔13aと第2小孔13bとで互いに異ならせることで、第1小孔13aの開裂圧力と第2小孔13bの開裂圧力とを互いに異ならせることができる。つまり、ハウジング1の内圧コントロール機能が同等で且つ開口のし易さが異なる2種類のガス排出孔を意図的に設定することができる。これによると、第1小孔13aと第2小孔13bとで開口のタイミングを異ならせ、ガス発生器100の作動初期にハウジング1の急激な内圧降下を抑制できる。その結果、ガス発生剤の燃焼性能を維持し、ガス発生器100の出力性能を安定化することができる。
【0070】
また、実施形態1に係るガス発生器100では、第1小孔13aと第2小孔13bとが同一仕様のシールテープS1で閉塞されている。つまり、シールテープS1の仕様の差異
ではなく、第1小孔13aの開口部13a1と第2小孔13bの開口部13b1との性状(周長)の差異によって開裂圧力の差を生じさせている。これによると、第1小孔13aと第2小孔13bとでシールテープS1の仕様を異ならせる必要がないため、全ての小孔13を共通の(1枚の)シールテープS1で閉塞することが可能となる。但し、本開示に係る技術は、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とで閉塞部材の仕様が互いに異なっていてもよい。
【0071】
なお、実施形態1に係るガス発生器100では、第1小孔13aの開裂圧力の方が第2小孔13bの開裂圧力よりも低くなるように構成されているが、本開示に係る技術において、第1ガス排出孔の開裂圧力と第2ガス排出孔の開裂圧力との大小関係は、上記に限定されない。第1ガス排出孔の開裂圧力の方が第2ガス排出孔の開裂圧力よりも高くてもよい。また、実施形態1に係るガス発生器100では、最小流路断面積が異なる大孔12と小孔13とが複数のガス排出孔H1に含まれているが、本開示に係る技術において、最小流路断面積が異なるガス排出孔が複数種類存在することは必須ではない。
【0072】
また、本開示に係る技術において、複数のガス排出孔は、第1ガス排出孔及び第2ガス排出孔の他に最小流路断面積が同等で且つ閉塞部材の開裂圧力が第1ガス排出孔及び第2ガス排出孔とは異なるガス排出孔を含んでもよい。つまり、最小流路断面積が同等で且つ閉塞部材の開裂圧力が異なるガス排出孔が3種類以上存在してもよい。
【0073】
実施形態1に係るガス発生器100では、第1小孔13a及び第2小孔13bは、断面が円形の孔として形成されており、第1小孔13aと第2小孔13bとでハウジング1の内面11a側の開口部(13a1,13b1)の孔径(D1,D2)が互いに異なっている。これにより、第1小孔13aと第2小孔13bとでハウジング1の内面11a側の開口部の周長(P1,P2)を互いに異ならせることができる。なお、本開示に係る技術において、第1ガス排出孔及び第2ガス排出孔の断面形状や第1ガス排出孔及び第2ガス排出孔の開口部の形状は、円形に限らず、後述するように楕円形、長円形、多角形等、種々の形状を採用することができる。
【0074】
また、実施形態1に係る第1小孔13a及び第2小孔13bは、ハウジング1の厚み方向において断面が一定なストレート部131と、ストレート部131に連なると共に厚み方向においてストレート部131から離れるに従って断面積が増加するテーパ部132と、を含んでいる。第1小孔13aと第2小孔13bとのうち、一方(第1小孔13a)では、ハウジング1の内面11a側にテーパ部132が開口し、ハウジング1の外面11b側にストレート部131が開口している。また、他方(第2小孔13b)では、ハウジング1の内面11a側にストレート部131が開口し、ハウジング1の外面11b側にテーパ部132が開口している。このようにストレート部131とテーパ部132との位置関係が第1小孔13aと第2小孔13bとで互いに逆となるように構成することで、第1小孔13aと第2小孔13bとで最小流路断面積を同等としながらもシールテープS1の開裂圧力を互いに異ならせることができる。なお、本開示の技術では、第2ガス排出孔(第2小孔13b)はハウジングの内面側にテーパ部が開口し且つハウジングの外面側にストレート部が開口し、第1ガス排出孔(第1小孔13a)はハウジングの内面側にストレート部が開口し且つハウジングの外面側にテーパ部が開口してもよい。
【0075】
また、実施形態1に係るガス発生器100では、ストレート部131はせん断面により形成されており、テーパ部132は破断面により形成されている。このようなストレート部131とテーパ部132を有するガス排出孔H1は、パンチング加工により好適に形成することができる。但し、本開示に係る技術において、第1ガス排出孔及び第2ガス排出孔をハウジングに形成する方法は、パンチング加工に限定されない。例えば、ドリル加工によって第1ガス排出孔及び第2ガス排出孔を穿孔してもよい。
【0076】
ここで、
図3及び
図5に示すように、ハウジング1の厚みをt1とし、ハウジング1の厚み方向における小孔13のストレート部131の長さをt2とする。このとき、0.3<t2/t1<0.7としてもよい。このようなガス排出孔H1は、パンチング加工により好適に形成することができる。但し、本開示に係る技術において、ハウジングの厚みとストレート部の長さとの関係は上記に限定されない。
【0077】
また、実施形態1に係るガス発生器100の製造方法は、第1小孔13aと第2小孔13bとを少なくとも1つずつ含む複数のガス排出孔H1をハウジング1に形成する工程と、複数のガス排出孔H1におけるハウジング1の内面11a側の開口部を覆うように、ハウジング1の内面11aにシールテープS1を取り付ける工程と、を含む。複数のガス排出孔H1をハウジング1に形成する工程においては、第1小孔13aが形成するガス流路の最小流路断面積A1と第2小孔13bが形成するガス流路の最小流路断面積A2とが同等となるようにし、第1小孔13aと第2小孔13bとで、ハウジング1の内面11a側の開口部の周長を、互いに異ならせている。このように、ガス発生器100の製造方法では、第1小孔13aと第2小孔13bとでシールテープS1の開裂圧力が異なるように、複数のガス排出孔H1をハウジング1に形成する。このような製造方法により、第1小孔13aと第2小孔13bとで開口のタイミングを異ならせ、ハウジング1の急激な内圧降下を抑制できる。つまり、出力性能の安定したガス発生器100を製造することができる。
【0078】
また、実施形態1に係るガス発生器100の製造方法では、複数のガス排出孔H1をハウジング1に形成する工程において、ハウジング1の外面11b側からパンチング加工により穿孔することで第1小孔13aを形成し、ハウジング1の内面11a側からパンチング加工により穿孔することで第2小孔13bを形成している。つまり、第1小孔13aと第2小孔13bとでパンチングの方向を反対向きにしている。これにより、第1小孔13aと第2小孔13bとでハウジング1の内面11a側の開口部の周長を互いに異ならせることができる。なお、このようなハウジング1の内面11a側におけるガス排出孔の開口部の周長の相違は、第1小孔13aと第2小孔13b以外にも大孔12に適用してもよい。
【0079】
[実施形態1の変形例]
以下、実施形態1の変形例に係るガス発生器100について説明する。変形例の説明では、
図1~
図9で説明した態様との相違点を中心に説明し、同様の点については詳細な説明は割愛する。
【0080】
[実施形態1の変形例1]
図10は、実施形態1の変形例1に係る第2小孔13bの形状を説明するための拡大断面図である。
図10では、
図5に相当する断面が図示されている。また、
図10の断面
図C3は、第2小孔13bにおけるハウジング1の厚み方向に対して直交する断面を示す。
【0081】
変形例1に係る第2小孔13bは、断面が円形の孔として形成されている。変形例1に係る第2小孔13bは、ハウジング1の内面11a側の開口部13b1から外面11b側の開口部13b2まで断面が一定である点で、
図5に示す第2小孔13bと相違する。つまり、変形例1に係る第2小孔13bは、
図5に示すようなテーパ部132を有さない。そのため、変形例1に係る第2小孔13bが形成するガス流路の断面積は、ハウジング1の厚み方向において、最小流路断面積A2で一定である。
【0082】
変形例1では、最小流路断面積(A1,A2)が同等となるように、
図3に示す第1小孔13aと
図10に示す第2小孔13bとが組み合わされている。そうすることで、第1
小孔13aにおける内面11a側の開口部13a1の直径D1の方が第2小孔13bにおける内面11a側の開口部13b1の直径D2よりも大きくなる。その結果、第1小孔13aの開口部13a1の周長P1の方が第2小孔13bの開口部13b1の周長P2よりも長くなるため、第1小孔13aの開裂圧力が第2小孔13bの開裂圧力よりも低くなる。以上のように、変形例1に係るガス発生器100においても、第1小孔13aと第2小孔13bとで最小流路断面積が同等で且つ閉塞部材の開裂圧力が互いに異なっている。
【0083】
[実施形態1の変形例2]
図11は、実施形態1の変形例2に係る第1小孔13aの形状を説明するための拡大断面図である。
図11では、
図3に相当する断面が図示されている。また、
図11の端面
図E1は、第1小孔13aにおけるハウジング1の外面11b側の開口部13a2を示す。
図12は、実施形態1の変形例2に係る第2小孔13bの形状を説明するための拡大断面図である。
図12では、
図5に相当する断面が図示されている。また、
図12の端面
図E2は、第2小孔13bにおけるハウジング1の内面11a側の開口部13b1を示す。変形例2に係る第1小孔13a及び第2小孔13bは、断面が円形の孔として形成されている。変形例2に係る第1小孔13aは、ハウジング1の外面11b側の開口部13a2から内面11a側の開口部13a1に向かうに従って断面積が増加するように形成されている。一方、変形例2に係る第2小孔13bは、ハウジング1の内面11a側の開口部13b1から外面11b側の開口部13b2に向かうに従って断面積が増加するように形成されている。つまり、変形例2に係る第1小孔13a及び第2小孔13bは、
図3や
図5に示すようなストレート部131を有さず、テーパの向きが互いに逆になっている。
【0084】
図11に示すように、変形例2に係る第1小孔13aは、ハウジング1の外面11b側の開口部13a2において流路断面積が最小となる。また、
図12に示すように、変形例2に係る第2小孔13bは、ハウジング1の内面11a側の開口部13b1において流路断面積が最小となる。
【0085】
変形例2では、第1小孔13aの最小流路断面積A1と第2小孔13bの最小流路断面積A2とが同等となっている。そのため、第1小孔13aにおける内面11a側の開口部13a1の直径D1の方が第2小孔13bにおける内面11a側の開口部13b1の直径D2よりも大きくなる。その結果、第1小孔13aの開口部13a1の周長P1の方が第2小孔13bの開口部13b1の周長P2よりも長くなるため、第1小孔13aの開裂圧力が第2小孔13bの開裂圧力よりも低くすることができる。以上のように、変形例2に係るガス発生器100においても、第1小孔13aと第2小孔13bとで最小流路断面積が同等で且つ閉塞部材の開裂圧力が異なっている。また、
図10~
図12の態様を大孔12にも適用し、最小流路断面積が同じであるが破裂圧を微妙に異ならせた2種類の大孔12を設けてもよい。
【0086】
<実施形態2>
以下、実施形態2に係るガス発生器100について説明する。実施形態2は、本開示に係る技術が採り得る態様のうち、第1ガス排出孔におけるハウジングの内面側の開口部の形状と第2ガス排出孔におけるハウジングの内面側の開口部の形状とが互いに異なっている態様に相当する。実施形態2の説明では、
図1~
図12で説明した実施形態1の態様との相違点を中心に説明し、同様の点については詳細な説明は割愛する。
【0087】
図13は、実施形態2に係る第1小孔13aの形状を説明するための拡大断面図である。
図13では、
図3に相当する断面が図示されている。また、
図13の断面
図C4は、第1小孔13aにおけるハウジング1の厚み方向に対して直交する断面を示す。
図14は、実施形態1の変形例2に係る第2小孔13bの形状を説明するための拡大断面図である。
図12では、
図5に相当する断面が図示されている。また、
図14の断面
図C5は、第2
小孔13bにおけるハウジング1の厚み方向に対して直交する断面を示す。実施形態2に係る第1小孔13a及び第2小孔13bは、断面が円形の孔として形成されており、ハウジング1の内面11a側の開口部から外面11b側の開口部まで断面が一定である。実施形態2では、第1小孔13aの最小流路断面積A1と第2小孔13bの最小流路断面積A2とが同等となっている。
【0088】
図12に示すように、実施形態2に係る第1小孔13aにおけるハウジング1の内面11a側の開口部13a1の周縁には、ハウジング1の内側に突起した突起部133が形成されている。突起部133は、例えば第1小孔13aの加工時に発生するバリである。例えば、複数のガス排出孔H1をハウジング1に形成する工程において、パンチング加工又はドリル加工によりハウジング1の外面11b側から第1小孔13aを穿孔し、ハウジング1の内面11a側の開口部13a1に発生したバリを除去せずに残しておくことで、突起部133を形成することができる。
図13に示すように、シールテープS1は、突起部133を覆うようにハウジング1の内面11aに取り付けられている。ガス発生器100の作動時にガス発生剤110,120が燃焼すると、シールテープS1は、燃焼ガスの圧力によって第1小孔13aの開口部13a1の周縁に押し付けられる。このとき、突起部133がシールテープS1に突き刺さるようにしてシールテープS1を押圧するため、突起部133が形成されていない場合と比較して、シールテープS1が開裂し易くなっている。つまり、突起部133が形成されることで、第1小孔13aにおけるシールテープS1の開裂圧力が低くなっている。
【0089】
図14に示すように、実施形態2に係る第2小孔13bにおけるハウジング1の内面11a側の開口部13b1の周縁には、C面取り加工により面取り部134が形成されている。例えば、複数のガス排出孔H1をハウジング1に形成する工程において、パンチング加工又はドリル加工によりハウジング1の外面11b側から第2小孔13bを穿孔し、ハウジング1の内面11a側の開口部13b1に面取り加工を行うことで、面取り部134を形成することができる。面取り部134は、C面取りに限らず、R面取り等の他の形状であってもよい。
図13に示すように、シールテープS1は、面取り部134を覆うようにハウジング1の内面11aに取り付けられている。ガス発生剤110,120が燃焼すると、シールテープS1は、燃焼ガスの圧力によって第2小孔13bの開口部13b1の周縁に押し付けられるが、面取り部134により周縁の角が落とされていることで、面取り部134が形成されていない場合と比較して、シールテープS1にせん断力が働き難いため、シールテープS1が開裂し難くなっている。つまり、面取り部134が形成されることで、第2小孔13bにおけるシールテープS1の開裂圧力が高くなっている。
【0090】
以上のように、実施形態2に係るガス発生器100では、複数のガス排出孔H1をハウジング1に形成する工程において、第1小孔13aと第2小孔13bとで、ハウジング1の内面11a側の開口部の形状を、互いに異ならせている。そのため、実施形態2に係るガス発生器100においても、第1小孔13aと第2小孔13bとで最小流路断面積が同等で且つシールテープS1の開裂圧力が異なっている。これにより、ガス発生器100の出力性能を安定化することができる。
【0091】
なお、実施形態2では、第1小孔13aに突起部133を形成し、且つ、第2小孔13bに面取り部134を形成したが、本開示に係る技術はこれに限定されない。第1ガス排出孔(第1小孔13a)と第2ガス排出孔(第2小孔13b)とのうちの何れか一方のみにおけるハウジングの内面側の開口部の周縁の少なくとも一部に突起部を形成することで、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とで開裂圧力を互いに異ならせることができる。例えば、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とのうち一方をハウジングの外面側からパンチング加工又はドリル加工により穿孔し、他方をハウジングの内面側からパンチング加工により穿孔することによって、該一方のみにおけるハウジングの内面側の開口部の少なくとも一
部に突起部を形成することができる。また、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とのうちの何れか一方のみにおけるハウジングの内面側の開口部の周縁を面取り加工を行うことで、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とで開裂圧力を互いに異ならせることができる。更に、
図13や
図14のような形状を大孔12にも適用し、最小流路断面積が同じであるが破裂圧を微妙に異ならせた2種類の大孔12を設けてもよい。
【0092】
[実施形態2の変形例]
実施形態2では、ハウジング1の内面11a側の開口部の周縁が呈する平面形状を、第1小孔13aと第2小孔13bとで互いに異ならせてもよい。
図15は、小孔13におけるハウジング1の内面11a側の開口部の形状例を示す図である。
図15(A)は開口部が円形の場合を示し、
図15(B)は開口部が楕円形の場合を示し、
図15(C)は開口部が矩形(長方形)の場合を示し、
図15(D)は開口部が正方形の場合を示す。なお、
図15に示す形状はあくまでも例である。開口部の形状には、
図15に例示する形状の他にも、長円形、四角形以外の多角形等、種々の形状を採用することができる。
【0093】
例えば、第1小孔13aの開口部13a1と第2小孔13bの開口部13b1は、夫々、
図15(A)~(D)の中から別々の形状を選択してもよい。そうすることで、第1小孔13aと第2小孔13bとでシールテープS1の開裂圧力を互いに異ならせることができる。例えば、第1小孔13aを断面が一定の楕円形孔とし、第2小孔13bを断面が一定で流路断面積が第1小孔13aと同等の円形孔としてもよい。同等の面積で比較した場合、楕円形の方が円形よりも周長が長くなる。また、例えば、第1小孔13aを断面が一定の長方形孔とし、第2小孔13bを断面が一定で流路断面積が第1小孔13aと同等の正方形孔としてもよい。同等の面積で比較した場合、長方形の方が正方形よりも周長が長くなる。上記何れの例においても、第1小孔13aの開口部13a1の周長P1の方が第2小孔13bの開口部13b1の周長P2よりも長くなる。つまり、第1小孔13aと第2小孔13bとで、ハウジング1の内面11a側の開口部の形状のみでなく開口部の周長も異ならせることができ、開裂圧力を好適に異ならせることができる。なお、このような形状の違いを大孔12にも適用し、最小流路断面積が同じであるが破裂圧を微妙に異ならせた2種類の大孔12を設けてもよい。
【0094】
<その他>
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。なお、実施形態1では第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とでハウジングの内面側の開口部の周長が互いに異なっている態様を説明し、実施形態2では開口部の形状が互いに異なっている態様を説明したが、開口部の形状及び周長の両方が第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とで互いに異なっていてもよい。つまり、本開示に係る技術は、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔とでハウジングの内面側の開口部の形状及び周長の少なくとも何れか一方が、互いに異なっていればよい。なお、ハウジングの内面側の開口部の形状や周長が異なるガス排出孔が複数存在する場合であっても、形状や周長の差異がガス排出孔の加工公差の範囲内と認められるものは、本開示に係る技術から除外するものとする。また、上述の実施形態では、点火器を2つ備える所謂デュアルタイプのガス発生器を例示したが、例えば特開2019-156107号公報の
図1に示されるような点火器を1つのみ備える所謂シングルタイプのガス発生器に本開示に係る技術を適用した場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、シングルタイプのガス発生器において、単位時間当たりのガス排出量(ハウジングの内圧コントロール機能)が同等で且つ閉塞部材の開裂圧力(開口のし易さ)が異なる少なくとも2種類のガス排出孔(第1ガス排出孔及び第2ガス排出孔)を設けた場合を想定する。この場合においても、ガス発生器の作動時に第1ガス排出孔の開口タイミングと第2ガス排出孔との開口タイミングとが異なるため、つまり、ガス排出孔が多段階的に開口するため、例えば低温作動時に急激な内圧降下を抑制し、常
温時や高温時に近い燃焼性能を発現させることができる。なお、本開示に係る技術はガス発生器の作動時のハウジングの内圧のコントロールを行うことを目的としており、第1ガス排出孔と第2ガス排出孔が開口するタイミングを調整できる使い方であれば、上述の実施形態のような作動時の環境温度が異なる場合だけに適用を限定されるものではない。
【符号の説明】
【0095】
100 ガス発生器
1 ハウジング
41 第1点火器(点火器の一例)
110 第1ガス発生剤(ガス発生剤の一例)
H1 ガス排出孔
13a 第1小孔(第1ガス排出孔の一例)
13b 第2小孔(第2ガス排出孔の一例)
S1 シールテープ(閉塞部材の一例)