(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041500
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240319BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146353
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 一洋
(72)【発明者】
【氏名】西田 恵
(72)【発明者】
【氏名】藤原 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 祐士
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】川尻 聡
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC12
(57)【要約】
【課題】対象空間に存在する人の感情の当該対象空間における分布状況を把握することができる情報処理装置及び情報処理プログラムを得る。
【解決手段】サーバ10は、対象空間に存在する人の位置を示す位置情報、及び当該人の予め定められた種類の感情の高さを示す感情値を特定する特定部11Aと、特定部11Aによって特定された感情値が示す感情の高さを示す情報を、対応する位置情報が示す位置を特定可能に提示する提示部11Bと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間に存在する人の位置を示す位置情報、及び当該人の予め定められた種類の感情の高さを示す感情値を特定する特定部と、
前記感情値が示す感情の高さを示す情報を、対応する前記位置情報が示す位置を特定可能に提示する提示部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記提示部は、複数の前記人の前記感情値を用いて、当該複数の人において前記感情が同時に起きる度合いを示す共起値を更に提示する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記提示部は、dEを前記複数の人における前記感情値の合計値の所定時間経過後の変化量とし、Yを前記複数の人における前記感情値が所定閾値以上である人数として、次の式により共起値Cを算出する、
C=dE×(Y-1)
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記予め定められた種類の感情は、肯定的な感情を含む、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
対象空間に存在する人の位置を示す位置情報、及び当該人の予め定められた種類の感情の高さを示す感情値を特定し、
前記感情値が示す感情の高さを示す情報を、対応する前記位置情報が示す位置を特定可能に提示する、
処理をコンピュータに実行させるための情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内外の利用者の間でのコミュニケーションの向上に寄与することができる技術として、次の技術があった。
【0003】
特許文献1には、対象者が非言語メッセージを発していることをリアルタイムにユーザに知らせることができるようにすることを目的としたモニタリング装置が開示されている。
【0004】
このモニタリング装置は、対象者の挙動を表す時系列データを取得する取得部と、前記時系列データを、教師なし学習により生成された判定モデルに入力し、前記判定モデルの出力に基づき、前記時系列データが外れ値を含むか否かを判定する判定部と、を備える。また、このモニタリング装置は、前記時系列データに基づいて、前記判定モデルに含まれるパラメータを更新する更新部と、前記時系列データが外れ値を含むと判定された場合に、ユーザに通知する通知部と、を備える。
【0005】
また、特許文献2には、話者の音声から場の雰囲気を判定することを目的とした音声解析システムが開示されている。
【0006】
この音声解析システムは、第1の話者の第1の音声を集音する第1の集音装置と、第2の話者の第2の音声を集音する第2の集音装置と、を備える。また、この音声解析システムは、前記第1の話者の複数種類の定量化された感情を複数の成分とするベクトル表現である第1の感情ベクトルを前記第1の音声から演算し、前記第2の話者の複数種類の定量化された感情を複数の成分とするベクトル表現である第2の感情ベクトルを前記第2の音声から演算し、前記第1の感情ベクトルと前記第2の感情ベクトルとを用いて、前記第1の話者と前記第2の話者との間の場の雰囲気を示す複数種類の定量化された感情を複数の成分とするベクトル表現である雰囲気ベクトルを演算する演算装置を備える。そして、この音声解析システムは、前記第1の感情ベクトルの少なくとも一つの成分と、前記第2の感情ベクトルの少なくとも一つの成分と、前記雰囲気ベクトルの長さとを表示する表示装置を備える。
【0007】
更に、特許文献3には、コミュニケーションに介入することができるようにすることを目的としたコミュニケーション解析装置が開示されている。
【0008】
このコミュニケーション解析装置は、複数の参加者によるコミュニケーションを解析するコミュニケーション解析装置であって、複数の参加者の発声を音声データとして取得するマイクと、複数の参加者の画像データを取得するカメラと、を備える。また、このコミュニケーション解析装置は、前記音声データおよび前記画像データにもとづき、コミュニケーションを評価する解析評価部を備える。そして、このコミュニケーション解析装置は、前記解析評価部による評価結果またはそれにもとづくフィードバックを前記複数の参加者にリアルタイムで提供するフィードバック部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-91527号公報
【特許文献2】特開2019-56879号公報
【特許文献3】国際公開第2018/174088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、対象空間に存在する複数の人について、当該対象空間における何れの位置において、どのような感情となっている人が多いのかを知ることは、当該対象空間でのコミュニケーションの向上を企図するうえで、極めて重要である。
【0011】
しかしながら、特許文献1~特許文献3の各文献に開示されている技術では、対象空間に存在する複数の人における感情の種類毎の分布状況については考慮されていない。このため、上記各文献に開示されている技術では、対象空間に存在する人の感情の当該対象空間における分布状況を把握することができない、という問題点があった。
【0012】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、対象空間に存在する人の感情の当該対象空間における分布状況を把握することができる情報処理装置及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の本発明に係る情報処理装置は、対象空間に存在する人の位置を示す位置情報、及び当該人の予め定められた種類の感情の高さを示す感情値を特定する特定部と、前記感情値が示す感情の高さを示す情報を、対応する前記位置情報が示す位置を特定可能に提示する提示部と、を備えている。
【0014】
請求項1に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、対象空間に存在する人の位置を示す位置情報、及び当該人の予め定められた種類の感情の高さを示す感情値を特定し、当該感情値が示す感情の高さを示す情報を、対応する位置情報が示す位置を特定可能に提示することで、対象空間に存在する人の感情の当該対象空間における分布状況を把握することができる。
【0015】
請求項2に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置であって、前記提示部が、複数の前記人の前記感情値を用いて、当該複数の人において前記感情が同時に起きる度合いを示す共起値を更に提示するものである。
【0016】
請求項2に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、複数の人の感情値を用いて、当該複数の人において感情が同時に起きる度合いを示す共起値を更に提示することで、当該共起値も把握することができる結果、より効果的にコミュニケーションの向上に寄与することができる。
【0017】
請求項3に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項2に記載の情報処理装置であって、前記提示部が、dEを前記複数の人における前記感情値の合計値の所定時間経過後の変化量とし、Yを前記複数の人における前記感情値が所定閾値以上である人数として、次の式により共起値Cを算出するものである。
【0018】
C=dE×(Y-1)
【0019】
請求項3に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、上記式により共起値Cを算出することで、比較的簡易に共起値を得ることができる。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の情報処理装置であって、前記予め定められた種類の感情が、肯定的な感情を含むものである。
【0021】
請求項4に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、上記予め定められた種類の感情に肯定的な感情を含むことで、上記予め定められた種類の感情を否定的な感情のみとする場合に比較して、より効果的にコミュニケーションの向上に寄与することができる。
【0022】
請求項5に記載の本発明に係る情報処理プログラムは、対象空間に存在する人の位置を示す位置情報、及び当該人の予め定められた種類の感情の高さを示す感情値を特定し、前記感情値が示す感情の高さを示す情報を、対応する前記位置情報が示す位置を特定可能に提示する、処理をコンピュータに実行させる。
【0023】
請求項5に記載の本発明に係る情報処理プログラムによれば、対象空間に存在する人の位置を示す位置情報、及び当該人の予め定められた種類の感情の高さを示す感情値を特定し、当該感情値が示す感情の高さを示す情報を、対応する位置情報が示す位置を特定可能に提示することで、対象空間に存在する人の感情の当該対象空間における分布状況を把握することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、対象空間に存在する人の感情の当該対象空間における分布状況を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る交流空間評価システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係るサーバの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る提示画面の一例を示す概略図である。
【
図5】実施形態に係る提示画面の他の一例を示す概略図である。
【
図6】実施形態に係る提示画面の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明を、本発明の対象空間として商業施設の1フロアを適用し、当該商業施設を利用する複数のユーザが各々所持する端末装置と、本発明の情報処理装置として機能するサーバと、を有する交流空間評価システムに適用した場合について説明する。
【0027】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る交流空間評価システム90の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る交流空間評価システム90のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る交流空間評価システム90は、ネットワーク80に各々アクセス可能とされた、サーバ10と、複数の端末装置30と、を含む。なお、サーバ10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の各種コンピュータが挙げられる。また、端末装置30の例としては、スマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant、携帯情報端末)等の携帯型の装置が挙げられる。
【0029】
本実施形態に係る端末装置30は、交流空間評価システム90が対応する対象空間への来訪者(以下、単に「ユーザ」という。)が各々所持する端末である。
【0030】
端末装置30は、CPU(Central Processing Unit)31、一時記憶領域としてのメモリ32、不揮発性の記憶部33、タッチパネル等の入力部34、液晶ディスプレイ等の表示部35、媒体読み書き装置(R/W)36、及び無線通信部38を備えている。CPU31、メモリ32、記憶部33、入力部34、表示部35、媒体読み書き装置36、及び無線通信部38はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置36は、記録媒体37に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体37への情報の書き込みを行う。
【0031】
記憶部33は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部33には、感情分布表示プログラム33Aが記憶されている。感情分布表示プログラム33Aは、当該プログラム33Aが書き込まれた記録媒体37が媒体読み書き装置36にセットされ、媒体読み書き装置36が記録媒体37からの当該プログラム33Aの読み出しを行うことで、記憶部33へ記憶(インストール)される。CPU31は、感情分布表示プログラム33Aを記憶部33から読み出してメモリ32に展開し、感情分布表示プログラム33Aが有するプロセスを順次実行する。
【0032】
一方、サーバ10は、交流空間評価システム90において中心的な役割を有する装置であり、本発明の情報処理装置として機能することは前述した通りである。サーバ10は、CPU11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置16、及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16、及び通信I/F部18はバスB2を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0033】
記憶部13はHDD、SSD、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、情報処理プログラム13Aが記憶されている。情報処理プログラム13Aは、当該プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの当該プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶(インストール)される。CPU11は、情報処理プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、当該情報処理プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0034】
また、
図1に示すように、本実施形態に係る交流空間評価システム90は、ネットワーク80に各々アクセス可能とされた、撮影装置50と、表示装置60と、を含む。
【0035】
本実施形態に係る撮影装置50は、対象空間に設けられており、当該対象空間のほぼ全域が撮影画角内に収まるように、360度カメラとされているが、これに限るものではない。例えば、対象空間を複数の領域に区分し、区分領域毎に1台ずつ撮影装置50を設ける形態としてもよい。また、本実施形態では、撮影装置50としてカラーの動画像を撮影するものが適用されているが、これに限るものではない。モノクロの動画像を撮影するものを撮影装置50として適用する形態としてもよいし、カラー又はモノクロの静止画像を撮影するものを撮影装置50として適用する形態としてもよい。
【0036】
また、本実施形態に係る表示装置60は、対象空間における比較的人目に付きやすい位置(本実施形態では、対象空間の出入口の付近)に設けられた大型で、かつ、カラーのモニター装置とされているが、これに限るものでないことは言うまでもない。
【0037】
なお、本実施形態では、ネットワーク80として、インターネット、電話回線網等の公共の通信回線を適用しているが、この形態に限定されるものではない。例えば、ネットワーク80として、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の企業内の通信回線を適用してもよく、これらの企業内の通信回線及び公共の通信回線を組み合わせて適用してもよい。
【0038】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係るサーバ10の機能的な構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るサーバ10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0039】
図2に示すように、本実施形態に係るサーバ10は、特定部11A及び提示部11Bを含む。サーバ10のCPU11が情報処理プログラム13Aを実行することで、特定部11A及び提示部11Bとして機能する。
【0040】
本実施形態に係る特定部11Aは、対象空間に存在する人の位置を示す位置情報、及び当該人の予め定められた種類の感情の高さを示す感情値を特定する。
【0041】
なお、本実施形態に係る特定部11Aでは、撮影装置50による撮影によって得られた画像を用いて上記対象空間に存在する人の位置を示す位置情報、及び当該人の予め定められた種類の感情の高さを示す感情値を特定しているが、これに限るものではない。例えば、端末装置30が撮影装置を備えたものである場合は、当該撮影装置による撮影によって得られた画像を用いて、上記位置情報及び感情値を特定する形態としてもよい。また、本実施形態では、感情値として、感情のレベルが最も低い場合の値を0(零)とし、感情のレベルが最も高い場合の値を100とした、0(零)から100までの範囲の値を適用しているが、これに限るものでないことは言うまでもない。
【0042】
そして、本実施形態に係る提示部11Bは、特定部11Aによって特定された感情値が示す感情の高さを示す情報を、対応する位置情報が示す位置を特定可能に提示する。
【0043】
なお、本実施形態では、上記感情の高さを示す情報を、対応する位置情報が示す位置を特定可能に提示する形態として、上記感情の高さを示す情報を、対象空間の平面図の対応する位置に重畳させて表示する形態を適用しているが、これに限るものではない。例えば、上記感情の高さを示す情報を、対応する位置を示す座標情報と共に表示する形態を、上記感情の高さを示す情報を、対応する位置情報が示す位置を特定可能に提示する形態として適用する形態としてもよい。
【0044】
また、本実施形態に係る提示部11Bは、上記複数の人の感情値を用いて、当該複数の人において感情が同時に起きる度合いを示す共起値を更に提示する。なお、本実施形態では、dEを上記複数の人における感情値の合計値の所定時間経過後の変化量とし、Yを上記複数の人における感情値が所定閾値以上である人数として、次の式(1)により共起値Cを算出する。
【0045】
C=dE×(Y-1) (1)
【0046】
また、本実施形態では、上記予め定められた種類の感情として、肯定的な感情及び否定的な感情の双方を適用している。ここでいう肯定的な感情には、喜び、驚き、敬服、共感、夢中、興奮、賞賛等が含まれる。また、否定的な感情には、怒り、悲しみ、恐れ、嫌悪等が含まれる。本実施形態では、これらの肯定的な感情及び否定的な感情として、喜び、驚き、怒り、嫌悪、及び軽蔑の5種類を適用しているが、これに限るものでないことは言うまでもない。また、これらの肯定的な感情及び否定的な感情のうち、肯定的な感情のみや、否定的な感情のみを上記予め定められた種類の感情として適用する形態としてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、提示部11Bによる各種情報の提示として、表示装置60による表示による提示を適用しているが、これに限るものではない。例えば、プリンタ等の画像形成装置による印刷による提示や、音声生成装置による音声による提示を、提示部11Bによる各種情報の提示として適用する形態としてもよい。
【0048】
次に、
図3~
図4を参照して、本実施形態に係る交流空間評価システム90の作用として、情報処理を実行する場合のサーバ10の作用を説明する。
図3は、本実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
本実施形態では、サーバ10のユーザによって情報処理プログラム13Aの実行の開始を指示する指示入力が入力部14を介して行われた場合に、サーバ10のCPU11が情報処理プログラム13Aを実行することで、
図3に示す情報処理が実行される。
【0050】
図3のステップ100で、CPU11は、撮影装置50に対して撮影を開始するように指示する。この指示に応じて、撮影装置50は撮影を開始し、当該撮影によって得られた画像情報をリアルタイムでサーバ10に送信する。
【0051】
そこで、ステップ102で、CPU11は、1フレーム分の画像情報が受信されるまで待機する。ステップ104で、CPU11は、受信した画像情報が示す画像(以下、「撮影画像」という。)から人の顔の画像領域(以下、「顔画像領域」という。)を抽出する。そして、CPU11は、抽出した顔画像領域の位置を特定することで、対応する人の位置を示す位置情報を特定する。
【0052】
なお、本実施形態では、上記顔画像領域を抽出する手法として、生体認証技術の一つである人工知能を用いた手法を適用しているが、これに限るものではない。例えば、パターンマッチング等の従来既知の画像認識技術を適用して上記顔画像領域を抽出する形態としてもよい。また、本実施形態では、上記対応する人の位置を示す位置情報として、顔画像領域の対象空間における水平方向に対する2次元座標系の位置情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、上記水平方向に対する2次元座標系に対して、高さ方向も含めた3次元座標系の位置情報を、上記対応する人の位置を示す位置情報として適用する形態としてもよい。
【0053】
また、ステップ104で、CPU11は、更に、抽出した顔画像領域の画像情報を用いて、対応する人の感情値を特定する。本実施形態では、上記人の感情値を特定する方法として、Affectiva社製の感情認識ソフトウェアである製品名Affdexを用いる方法を適用しているが、これに限るものではない。例えば、富士通株式会社による表情認識技術(インターネット<URL:https://www.fujitsu.com/jp/about/research/article/202103-facial-expression-recognition.html>)、株式会社ACESによる非言語メッセージ分析技術(インターネット<URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000044470.html>)等の他の技術を、上記人の感情値を特定する方法として適用する形態としてもよい。
【0054】
ステップ106で、CPU11は、ステップ104の処理によって得られた各人の感情値を用いて、以下に示すように、各感情の種類毎の共起値を導出する。
【0055】
まず、CPU11は、撮影画像において認識された人の数(人数)をXとし、次の式(2)により、感情の種類毎に各人の感情値Enの合計値TEを算出する。
【0056】
TE=E1+E2+・・・EX (2)
【0057】
次いで、CPU11は、合計値TEのフレーム間の差分をΔTEとし、フレーム間の経過時間をΔtとして、次の式(3)により、感情の種類毎に感情値の変化量dEを算出する。
【0058】
dE=ΔTE÷Δt (3)
【0059】
そして、CPU11は、フレーム内において対応する感情を発現させている人数をYとして、次の式(4)により、感情の種類毎に共起値Cを算出する。ここで、本実施形態では、人数Yとして、対応する感情値が予め定められた閾値(本実施形態では、10)以上である人の人数を適用しているが、これに限るものではない。例えば、感情値が0(零)ではない人の人数を人数Yとして適用する形態としてもよい。
【0060】
C=dE×(Y-1) (4)
【0061】
式(4)において(Y-1)を乗じることで、フレーム内の対応する感情を発現させている対象者が1名のみである場合の共起値Cは0(零)となる。即ち、複数人の感情値が同時に変化しないと共起値Cは変化しない。
【0062】
例えば、A、B、Cの3名が映像に捉えられており、顔認識されている場合を想定する。
【0063】
ここで、ある時点(t=0(零)の時点)におけるA、B、Cの同一種類の感情(以下、「同一種類感情」という。)の感情値が各々EA=0、EB=0、EC=0であり、次のフレームにおけるA、B、Cの同一種類感情の感情値が各々EA=0、EB=50、EC=25とし、フレーム間で0.5秒(=Δt)が経過したとする。
【0064】
この場合、t=0(零)の時点では、フレーム内の顔認識されている人数Xが3人であり、フレーム内において同一種類感情を発現させている対象者の人数Yが0(零)となる。また、t=0.5の時点、即ち、0.5秒経過後の時点においては、フレーム内の顔認識されている人数Xが3人であり、フレーム内の同一種類感情を発現させている対象者の人数Yが2人となる。
【0065】
この場合、t=0(零)の場合の同一種類感情の合計値TEは0(零)(=EA+EB+EC=0+0+0)になる。また、t=0.5の場合の同一種類感情の合計値TEは75(=EA+EB+EC=0+50+25)となる。
【0066】
従って、同一種類感情の変化量dEは150(=ΔTE÷Δt=75÷0.5)となり、以上の各値を用いて、t=0.5の時点の共起値Cは150(=dE×(Y-1)=150×(2-1))となる。
【0067】
このように、本実施形態に係る共起値Cは、フレーム間の差分を用いるため、本情報処理の実行が開始されて最初にステップ106を実行する場合には、共起値Cを導出することはできない。従って、共起値Cは、ステップ106の処理の実行が2回目以降である場合に導出されることになる。
【0068】
ステップ108で、CPU11は、以上の処理によって得られた各情報を用いて、予め定められた構成とされた提示画面を示す情報(以下、「提示画面情報」という。)を作成し、記憶部13に記憶する。ステップ110で、CPU11は、作成した提示画面情報を用いて上記提示画面を表示するように表示装置60を制御する。
図4には、本実施形態に係る提示画面の一例が示されている。
【0069】
図4に示すように、本実施形態に係る提示画面では、対象空間の平面図が表示されると共に、予め定められた種類の感情(
図4に示す例では、喜び(Joy))に関する、当該対象空間における分布状態が表示される。なお、
図4における円状や楕円状の部分が該当する感情の分布状態を示しており、濃度が高い部分ほど、該当者が多いことを示している。なお、上述したように、この時点では共起値Cは表示されない。
【0070】
ステップ112で、CPU11は、本情報処理を終了するタイミングとして予め定められた終了タイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ114に移行する。ステップ114で、CPU11は、予め定められた期間(本実施形態では、0.5秒)が経過するまで待機し、その後にステップ102に戻る。
【0071】
このように、本実施形態に係る情報処理では、終了タイミングが到来するまでステップ102からステップ114までの処理を繰り返し実行する。このため、情報処理の実行が開始されてから2回目以降のステップ106の処理によって共起値Cが導出される結果、2回目以降のステップ110の処理によって表示装置60に表示される提示画面には、一例として
図4に示すように共起値Cが表示される。
【0072】
なお、本実施形態では、上記終了タイミングとして、サーバ10のユーザによって情報処理プログラム13Aの実行を終了する指示入力が入力部14を介して行われたタイミングを適用している。このように、本実施形態では、情報処理の実行期間として、ユーザによる指示に応じた期間を適用しているが、これに限るものではない。例えば、交流空間評価システム90による評価期間として予め定められた期間(例えば、毎日の6時から23時までの期間)を、情報処理の実行期間として適用する形態としてもよい。
【0073】
一方、ステップ112で肯定判定となった場合はステップ116に移行し、CPU11は、ステップ100の処理によって開始した撮影装置50による撮影を停止するように指示し、その後に本情報処理を終了する。
【0074】
なお、上記情報処理によって記憶部13に記憶された提示画面情報が示す、一例として
図4に示す提示画面は、各ユーザが所持する端末装置30のCPU31が感情分布表示プログラム33Aを実行することで、自身の表示部35によって表示することができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、対象空間に存在する人の位置を示す位置情報、及び当該人の予め定められた種類の感情の高さを示す感情値を特定し、当該感情値が示す感情の高さを示す情報を、対応する位置情報が示す位置を特定可能に提示している。従って、対象空間に存在する人の感情の当該対象空間における分布状況を把握することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、複数の人の感情値を用いて、当該複数の人において感情が同時に起きる度合いを示す共起値を更に提示している。従って、当該共起値も把握することができる結果、より効果的にコミュニケーションの向上に寄与することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、式(4)により共起値Cを算出している。従って、比較的簡易に共起値を得ることができる。
【0078】
更に、本実施形態によれば、上記予め定められた種類の感情に肯定的な感情を含めている。従って、上記予め定められた種類の感情を否定的な感情のみとする場合に比較して、より効果的にコミュニケーションの向上に寄与することができる。
【0079】
なお、上記実施形態では、一例として
図4に示したように、提示画面において喜びの感情の分布状態を示す画像を表示した場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、怒り、驚き等といった他の感情の分布状態を示す画像を提示画面において表示する形態としてもよい。
【0080】
また、提示画面の構成は
図4に示すものに限るものではなく、提示画面の構成として、
図5や
図6に示す構成を適用する形態としてもよい。
図5及び
図6は、本実施形態に係る提示画面の他の例を示す概略図である。
【0081】
図5に示す提示画面では、対象空間を複数の領域に区分した区分領域毎に、喜び(Joy)、怒り(Anger)、嫌悪(Disgust)、驚き(Surprise)、及び軽蔑(Contempt)の各感情の感情値(ここでは、対応する区分領域に存在する人の感情値の平均値)がレーダーチャートとして表示される。従って、ユーザは、当該提示画面を参照することで、区分領域毎の各種感情の傾向を把握することができる。
【0082】
また、
図6に示す提示画面では、共起値Cが、スピードメーター型のグラフとして、リアルタイムに表示される。従って、ユーザは、当該提示画面を参照することで、共起値Cの変化を直感的に把握することができる。
【0083】
その他、特定対象としている感情のうちの一部の感情(例えば、「喜び」のみや、「肯定的な感情」等)の感情値の対象空間に存在する人の合計値と、他の感情の感情値の対象空間に存在する人の合計値との比率を示すグラフや、各人別の感情値の時間経過に伴う累積値を示すグラフ等を上記提示画面に表示する形態としてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、感情の種類毎に共起値Cを導出する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、肯定的な感情のうちの複数種類の感情を組み合わせて共起値Cを導出する形態としてもよいし、否定的な感情のうちの複数種類の感情を組み合わせて共起値Cを導出する形態としてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、式(4)により共起値Cを導出する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、式(4)における人数Yを用いることなく、共起値Cを導出する形態としてもよい。
【0086】
また、上記実施形態において、例えば、特定部11A及び提示部11Bの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0087】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0088】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0089】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
10 サーバ
11 CPU
11A 特定部
11B 提示部
12 メモリ
13 記憶部
13A 情報処理プログラム
14 入力部
15 表示部
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
30 端末装置
31 CPU
32 メモリ
33 記憶部
33A 感情分布表示プログラム
34 入力部
35 表示部
36 媒体読み書き装置
37 記録媒体
38 無線通信部
50 撮影装置
60 表示装置
80 ネットワーク
90 交流空間評価システム