(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041514
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/02 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
G03G15/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146377
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】加納 富由樹
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA19
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA33
2H200GA44
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200HB47
2H200JA02
2H200JB10
2H200JC04
2H200MA02
2H200MA03
2H200MC01
2H200MC06
(57)【要約】
【課題】粒状性に優れる画像が得られる帯電部材を提供すること。
【解決手段】導電性基材と、前記導電性基材上に設けられた弾性層と、前記弾性層上に設けられた表面層と、を有し、前記表面層の表面における、周方向の粗さ曲線をフーリエ変換して得られた周期毎の振幅強度に、明度L
*に関する下記式(V)で示される視覚特性VTFL
*(f=周期)により得られる各周期毎のVTF係数を乗じた、各周期毎の補正後振幅強度に対して、周期100μm以上1000μmの範囲を積分したPFVTF値が、1.5以下である帯電部材。
式(V):VTFL
*(f)=5.05×(e
(-0.843×1×f)-e
(-1.454×1×f))
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材と、
前記導電性基材上に設けられた弾性層と、
前記弾性層上に設けられた表面層と、
を有し、
前記表面層の表面における、周方向の粗さ曲線をフーリエ変換して得られた周期毎の振幅強度に、明度L*に関する下記式(V)で示される視覚特性VTFL*(f=周期)により得られる各周期毎のVTF係数を乗じた、各周期毎の補正後振幅強度に対して、周期100μm以上1000μmの範囲を積分したPFVTF値が、1.5以下である帯電部材。
式(V):VTFL*(f)=5.05×(e(-0.843×1×f)-e(-1.454×1×f))
【請求項2】
前記表面層の表面における、前記PFVTF値が、1.0以下である請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記表面層の表面における、前記PFVTF値が、0.7以下である請求項2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記弾性層の表面における、周方向の粗さ曲線をフーリエ変換して得られた周期毎の振幅強度に、明度L*に関する下記式(V)で示される視覚特性VTFL*(f=周期)により得られる各周期毎のVTF係数を乗じた、各周期毎の補正後振幅強度に対して、周期100μm以上1000μmの範囲を積分したPFVTF値が、1.5以下である請求項1に記載の帯電部材。
式(V):VTFL*(f)=5.05×(e(-0.843×1×f)-e(-1.454×1×f))
【請求項5】
前記弾性層の表面における、前記PFVTF値が、1.0以下である請求項4に記載の帯電部材。
【請求項6】
前記弾性層の表面における、前記PFVTF値が、0.7以下である請求項5に記載の帯電部材。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の帯電部材を備える帯電装置。
【請求項8】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電し、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の帯電部材を有する帯電装置であって、前記帯電部材が前記像保持体の表面に接触して配置されている帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光装置と、
を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項9】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電し、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の帯電部材を有する帯電装置であって、前記帯電部材が前記像保持体の表面に接触して配置されている帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光装置と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置においては、先ず、無機又は有機材料からなる光導電性感光体からなる像保持体の表面に帯電装置を用いて帯電し、濳像を形成した後、帯電したトナーで濳像を現像して可視化したトナー像を形成する。そして、該トナー像を、中間転写体を介して、又は直接、記録紙等の記録媒体に転写し、記録媒体に定着することにより目的とする画像を形成する。
【0003】
帯電装置に備えられる帯電ロール等の帯電部材として、次の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、「軸体と、該軸体の外周に沿って形成され、表面に凹凸部が設けられている弾性層と、該弾性層の表面を被覆する表層とを備える電子写真機器用の帯電ロールであって、前記弾性層の凹凸部が表面の凹凸加工により形成されたものであり、
前記弾性層の表面の、十点平均粗さRzが1.5μm以上、8μm未満、負荷長さ率tp(50%)が60%以上、負荷長さ率tp(40%)が80%以下であることを特徴とする帯電ロール。」が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、「外部に設けられた像担持体へ電荷を付与する帯電装置であって、前記帯電装置は、芯金部材と、前記芯金部材の表面に設けられる導電性樹脂層と、を含み、前記導電性樹脂層の膜厚は、200μm以下であり、前記芯金部材の軸方向における、ろ波最大うねりが、基準長さ60mmの範囲において、8μm以下である、帯電装置。」が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、「回転可能で感光体を帯電可能な帯電ローラであって、
前記帯電ローラの表面の粗さ曲線に関して、十点平均粗さをRz、二乗平均平方根傾斜をRΔqとした場合に、Rz≧7[μm]、かつ、RΔq≦0.1の関係を満たす、ことを特徴とする帯電ローラ」が開示されている。
【0007】
また、特許文献4には、「導電性基材と、前記導電性基材上に設けられた弾性層と、前記弾性層上に設けられた表面層と、を有し、前記表面層の表面において、軸方向での十点平均粗さRzに対する凹凸間距離Smの比、及び突出山高さSpkが、15≦Sm/Rz≦35、かつ、Spk≦5μmである、帯電部材。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-233442号公報
【特許文献2】特開2018-146612号公報
【特許文献3】特開2020-173402号公報
【特許文献4】特開2020-160444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、導電性基材と、導電性基材上に設けられた弾性層と、弾性層上に設けられた表面層と、を有する帯電部材において、表面層の表面におけるPFVTF値が1.5超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、次の態様を含む。
<1>
導電性基材と、
前記導電性基材上に設けられた弾性層と、
前記弾性層上に設けられた表面層と、
を有し、
前記表面層の表面における、周方向の粗さ曲線をフーリエ変換して得られた周期毎の振幅強度に、明度L*に関する下記式(V)で示される視覚特性VTFL*(f=周期)により得られる各周期毎のVTF係数を乗じた、各周期毎の補正後振幅強度に対して、周期100μm以上1000μmの範囲を積分したPFVTF値が、1.5以下である帯電部材。
式(V):VTFL*(f)=5.05×(e(-0.843×1×f)-e(-1.454×1×f))
<2>
前記表面層の表面における、前記PFVTF値が、1.0以下である<1>に記載の帯電部材。
<3>
前記表面層の表面における、前記PFVTF値が、0.7以下である<2>に記載の帯電部材。
<4>
前記弾性層の表面における、周方向の粗さ曲線をフーリエ変換して得られた周期毎の振幅強度に、明度L*に関する下記式(V)で示される視覚特性VTFL*(f=周期)により得られる各周期毎のVTF係数を乗じた、各周期毎の補正後振幅強度に対して、周期100μm以上1000μmの範囲を積分したPFVTF値が、1.5以下である<1>~<3>のいずれか1項に記載の帯電部材。
式(V):VTFL*(f)=5.05×(e(-0.843×1×f)-e(-1.454×1×f))
<5>
前記弾性層の表面における、前記PFVTF値が、1.0以下である<4>に記載の帯電部材。
<6>
前記弾性層の表面における、前記PFVTF値が、0.7以下である<5>に記載の帯電部材。
<7>
<1>~<6>のいずれか1項に記載の帯電部材を備える帯電装置。
<8>
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電し、<1>~<6>のいずれか1項に記載の帯電部材を有する帯電装置であって、前記帯電部材が前記像保持体の表面に接触して配置されている帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光装置と、
を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<9>
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電し、<1>~<6>のいずれか1項に記載の帯電部材を有する帯電装置であって、前記帯電部材が前記像保持体の表面に接触して配置されている帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光装置と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
<1>に係る発明によれば、導電性基材と、導電性基材上に設けられた弾性層と、弾性層上に設けられた表面層と、を有する帯電部材において、表面層の表面におけるPFVTF値が1.5超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
<2>に係る発明によれば、表面層の表面におけるPFVTF値が1.0超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
<3>に係る発明によれば、表面層の表面におけるPFVTF値が0.7超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
【0012】
<4>に係る発明によれば、弾性層の表面におけるPFVTF値が1.5超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
<5>に係る発明によれば、弾性層の表面におけるPFVTF値が1.0超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
<6>に係る発明によれば、弾性層の表面におけるPFVTF値が0.7超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
【0013】
<7>、<8>、又は<9>に係る発明によれば、導電性基材と、導電性基材上に設けられた弾性層と、弾性層上に設けられた表面層と、を有する帯電部材において、表面層の表面におけるPFVTF値が1.5超えである帯電部材を備える場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電装置、プロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る帯電部材を示す概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る帯電部材の概略断面図である。
【
図3】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【
図4】表面層の表面におけるPFVTF値を求める方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「電子写真感光体」を単に「感光体」ともいう。
本明細書において、帯電部材の「軸方向」とは、帯電部材の回転軸が延びる方向を意味する。「周方向」とは、帯電部材の回転方向を意味する。
また、本明細書において「導電性」とは、20℃における体積抵抗率が1×1014Ωcm以下であることを意味する。
【0016】
本実施形態に係る帯電部材は、導電性基材と、導電性基材上に設けられた弾性層と、弾性層上に設けられた表面層と、を有する。
そして、表面層の表面における、周方向の粗さ曲線をフーリエ変換して得られた周期毎の振幅強度に、明度L*に関する下記視覚特性VTFL*(f=周期)により得られる各周期毎のVTF係数を乗じた、各周期毎の補正後振幅強度に対して、周期100μm以上1000μmの範囲を積分したPFVTF値が、1.5以下である。
【0017】
本実施形態に係る帯電部材は、上記構成により、粒状性に優れた画像が得られる。その理由は、次の通り推測される。
【0018】
従来、帯電部材の表面層の表面性状について、例えば、十点平均粗さRz、凹凸間距離Sm、突出山高さSpk等の制御して、帯電部材の汚染性を改善し、筋状の画像欠陥を抑制している。
しかし、十点平均粗さRz、凹凸間距離Sm、突出山高さSpk等は、1μmから数十μmの周期の表面凹凸を制御しているため、汚染性は改善するが、表面凹凸の周期が100μmから1000μmまでに感度がある粒状性については低い傾向がある。
【0019】
そこで、本実施形態に係る帯電部材では、表面層の表面におけるPFVTF値を低減し、粒状性に感度がある、表面凹凸の周期が100μmから1000μmまで大きな周期を制御する。
それにより、本実施形態に係る帯電部材では、粒状性に優れた画像が得られる。
【0020】
以下、本実施形態に係る帯電部材ついて、図面を参照しつつ、説明する。
図1は、本実施形態に係る帯電部材を示す概略斜視図である。
図2は、本実施形態に係る帯電部材の概略断面図である。なお、
図2は、
図1のA-A断面図である。
【0021】
本実施形態に係る帯電部材310は、
図1及び
図2に示すように、例えば、円筒状または円柱状の導電性基材312(シャフト)と、導電性基材312の外周面に配置された弾性層314と、弾性層314の外周面に配設された表面層316と、を有するロール部材である。
【0022】
本実施形態に係る帯電部材310は、上記構成に限られず、例えば、表面層316を有しない態様、つまり、本実施形態に係る帯電部材310は、導電性基材312と弾性層314とで構成される態様であってもよい。
また、帯電部材310は、弾性層314と導電性基材312との間に配置される中間層(例えば接着層)、弾性層314と表面層316との間に配置される抵抗調整層又は移行防止層を設けた態様であってもよい。
【0023】
以下、本実施形態に係る帯電部材310の詳細について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0024】
(表面層におけるPFVTF値)
本実施形態に係る帯電部材において、表面層の表面におけるPFVTF値は、1.5以下であるが、画像の粒状性向上の観点から、1.0が好ましく、0.7以下がより好ましい。
PFVTF値の下限は、理想的には0であるが、製造上の制約の観点から、例えば1.5以上である。
【0025】
PFVTF値は、例えば、弾性層の表面性状により調整する。具体的には、PFVTF値を上記範囲とする方法としては、次の方法等が挙げられる。
1)表面層を設ける弾性層の表面を、砥石及びラッピングペーパーで研磨する方法。特に、ラッピングペーパーによる研磨は、番手粒度4000~10000範囲のラッピングペーパーを使用することが好ましく、番手粒度4000~10000の範囲で2種のラッピングペーパーを使用することが好ましい。
2)表面層を設ける弾性層を押出製法で成形するとき、金型温度を高くすることで金型表面形状の転写を促進する方法。
【0026】
表面層におけるPFVTF値の測定は、次の通りである。
まず、測定対象の帯電部材の表面層の周方向の粗さ曲線を得る。具体的には、帯電部材の軸方向中央部で、JIS B 0601:1994に準拠し、接触式表面粗さ測定装置(サーフコム570A、東京精密社製)を用いて、周方向一周の振幅を求める(
図4(A)参照)。接触針としては先端がダイヤモンド(5μmR、90°円錐)の接触針を用いる。
次に、帯電部材の周方向の粗さ曲線を、高速フーリエ変換(fast Fourier transform,FFT)し、周期毎の振幅強度を得る(
図4(B))。
次に、視覚の伝達関数と呼ばれるDooleyの近似式に基づく、明度L
*に関する下記式(V)で示される視覚特性VTFL
*(f=周期)により、各周期毎のVTF係数を求める(
図4(C)参照)。
式(V):VTFL
*(f)=5.05×(e
(-0.843×1×f)-e
(-1.454×1×f))
次に、周期毎の振幅強度に各周期毎のVTF係数で重み付けし(つまり、周期毎の振幅強度に各周期毎のVTF係数を乗じて)、各周期毎の補正後振幅強度を得る(
図4(D)参照)。
そして、各周期毎の補正後振幅強度のうち、周期100μm以上1000μmの範囲を積分し、得られた積分値をPFVTF値として算出する。
【0027】
(弾性層におけるPFVTF値)
本実施形態に係る帯電部材において、画像の粒状性向上の観点から、弾性層の表面におけるPFVTF値も、1.5以下が好ましく、1.0が好ましく、0.7以下がより好ましい。
PFVTF値の下限は、理想的には0であるが、製造上の制約の観点から、例えば、0.5以上である。
【0028】
弾性層におけるPFVTF値も、表面層におけるPFVTF値と同じ方法で測定される。
【0029】
以下、本実施形態に係る帯電部材の各部材の詳細について説明する。
【0030】
(導電性基材)
導電性基材について説明する。
導電性基材としては、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;導電性の樹脂などの導電性の材質で構成されたものが用いられる。
【0031】
導電性基材は、帯電ロールの電極および支持部材として機能するものであり、例えば、その材質としては鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。導電性基材としては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂や、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂や、セラミック部材)等も挙げられる。導電性基材は、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
【0032】
(弾性層)
弾性層について説明する。
弾性層は、例えば、弾性材料と、導電剤と、を含む導電性の層である。弾性層は、必要に応じて、その他添加剤を含んでもよい。
【0033】
弾性材料としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム、これらの混合ゴム等が挙げられる。中でも、弾性材料としては、ポリウレタン、シリコーンゴム、EPDM、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR、これらの混合ゴム等が好ましい。これらの弾性材料は、発泡したものであっても無発泡のものであってもよい
【0034】
導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤等が挙げられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ-酸化アンチモン固溶体、酸化スズ-酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ここで、カーボンブラックとして具体的には、オリオンエンジニアドカーボンズ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、同「MONARCH1300」、同「MONARCH1400」、同「MOGUL-L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
これら導電剤の平均粒径としては、1nm以上200nm以下であることが望ましい。
なお、平均粒子径は、弾性層を切り出した試料を用い、電子顕微鏡により観察し、導電剤の100個の直径(最大径)を測定し、それを平均することにより算出する。また、平均粒径は、例えば、シスメックス社製ゼータサイザーナノZSを用いて測定してもよい。
【0036】
導電剤の含有量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、弾性材料100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲であることが望ましく、15質量部以上25質量部以下の範囲であることがより望ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、弾性材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが望ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲であることがより望ましい。
【0037】
弾性層に配合されるその他添加剤としては、例えば、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)等の通常弾性層に添加され得る材料が挙げられる。
【0038】
弾性層の厚みは、1mm以上10mm以下とすることが好ましく、2mm以上5mm以下とすることがより好ましい。
そして、弾性層の体積抵抗率は103Ωcm以上1014Ωcm以下が好ましい。
【0039】
なお、弾性層の体積抵抗率は、次に示す方法により測定された値である。
弾性層からシート状の測定試料を採取し、その測定試料に対し、JIS K 6911(1995)に従って、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加した後、その流れる電流値より、下記式を用いて算出する。
体積抵抗率(Ωcm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定試料厚(cm))
【0040】
(表面層)
表面層は、例えば、樹脂を含む層である。表面層は、必要に応じて、その他添加剤等を含んでもよい。
【0041】
-樹脂-
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂。ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等)が挙げられる。また、樹脂は、硬化性樹脂を硬化剤若しくは触媒により硬化又は架橋したものが好ましい。
ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含む共重合体である。なお、共重合ナイロンには、6ナイロン、66ナイロン等の他の重合単位を含んでいてもよい。
【0042】
これらの中でも、表面層の汚染を抑える点から、樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がより好ましい。ポリアミド樹脂は、被帯電体(例えば像保持体)との接触による摩擦帯電を起こし難く、トナー、外添剤の付着が抑制され易い。
【0043】
ポリアミド樹脂としては、ポリアミド樹脂ハンドブック,福本修(日刊工業新聞社)に記述のポリアミド樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に、ポリアミド樹脂としては、表面層316の汚染を抑える点から、アルコール可溶性ポリアミドが好ましく、アルコキシメチル化ポリアミド(アルコキシメチル化ナイロン)がより好ましく、メトキシメチル化ポリアミド(メトキシメチル化ナイロン)が更に好ましい。
【0044】
なお、樹脂は、表面層の機械的強度を向上させ、表面層の割れの発生を抑制する点から、架橋構造を有していてもよい。
【0045】
表面層は、表面層の表面に凹凸を付与する凹凸形成用粒子を含んでもよい。
凹凸形成用粒子の材質としては、特に制限はなく、無機粒子であっても、有機粒子であってもよい。
凹凸形成用粒子として、具体的には、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコン(ZrSiO4)粒子等の無機粒子、及び、ポリアミド粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等の樹脂粒子が挙げられる。
これらの中でも、帯電部材の汚染性低減の観点から、樹脂粒子であることがより好ましく、ポリアミド粒子であることがさらに好ましい。
凹凸形成用粒子は、表面層に、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
【0046】
また、帯電部材の汚染性低減の観点から、表面層は、凹凸形成用粒子として、体積平均粒径が5μm以上20μm以下である凹凸形成用粒子を、結着樹脂100質量部に対して5質量部以上30質量部以下で含有することが好ましい。また、体積平均粒径が5μm以上10μm以下である凹凸形成用粒子を、結着樹脂100質量部に対して8質量部以上20質量部以下で含有することがより好ましい。
【0047】
凹凸形成用粒子の体積平均粒径の測定方法は、層を切り出した試料を用い、電子顕微鏡により観察し、粒子の100個の直径(最大径)を測定し、それを体積平均することにより算出する。また、平均粒径は、例えば、シスメックス社製ゼータサイザーナノZSを用いて測定してもよい。
【0048】
表面層に凹凸形成用粒子を含む場合、表面層のみに含有していてもよく、表面層と弾性層との両層に含有していてもよい。
【0049】
-その他添加剤-
その他添加剤としては、例えば、導電剤、充填剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の通常表面層に添加され得る周知の添加剤が挙げられる。
【0050】
表面層の厚さは、例えば、0.01μm以上1000μm以下が好ましく、2μm以上25μm以下がより好ましい。
表面層の厚さは、次の方法により測定される値である。表面層を切り出した試料を用い、電子顕微鏡により表面層断面を10点測定し、平均することにより算出する。
【0051】
表面層の体積抵抗率は103Ωcm以上1014Ωcm以下の範囲であることが望ましい。
なお、表面層の体積抵抗率は、弾性層の体積抵抗率と同じ方法により測定される値である。
【0052】
ここで、表面層は、例えば、溶媒に上記各成分を溶解又は分散させた塗布液を、導電性基材(弾性層の外周面)上に、浸漬法、ブレードコート法、スプレー法、真空蒸着法、プラズマコーティング法等で塗布し、形成した塗膜を乾燥して形成する。
【0053】
(接着層)
本実施形態に係る帯電部材は、導電性基材と弾性層との間に、接着層を有していてもよい。
弾性層と導電性基材との間に介在する接着層としては、樹脂層が挙げられ、具体的には、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ニトリルゴム、塩素ゴム、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂層が挙げられる。接着層は、導電剤(例えば、前述の電子導電剤又はイオン導電剤)を含有していてもよい。
【0054】
接着層の厚さは、密着性の観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上50μm以下がより好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。
【0055】
<帯電装置、画像形成装置、及び、プロセスカートリッジ>
本実施形態に係る帯電装置は、本実施形態に係る帯電部材を有し、接触帯電方式により電子写真感光体を帯電させる帯電装置である。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光装置と、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、を備える。そして、帯電装置として、上記本実施形態に係る帯電部材を備える帯電装置であって、帯電部材が前記像保持体の表面に接触して配置されている帯電装置(本実施形態に係る帯電装置)を適用する。
【0056】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、例えば、上記構成の画像形成装置に脱着され、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、を備える。そして、帯電装置として、上記本実施形態に係る帯電装置を適用する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、必要に応じて、例えば、帯電した像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光装置、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置、および像保持体表面をクリーニングするクリーニング装置からなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。
【0057】
次に、本実施形態に係る画像形成装置、およびプロセスカートリッジについて図面を参照しつつ説明する。
【0058】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。なお、図中に示す矢印UPは、鉛直方向上方を示している。
【0059】
画像形成装置210は、
図3に示すように、各構成部品が内部に収容される画像形成装置本体211を備えている。画像形成装置本体211の内部には、用紙等の記録媒体Pが収容される収容部212と、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部214と、収容部212から画像形成部214へ記録媒体Pを搬送する搬送部216と、画像形成装置210の各部の動作を制御する制御部220と、が設けられている。また、画像形成装置本体211の上部には、画像形成部214によって画像が形成された記録媒体Pが排出される排出部218が設けられている。
【0060】
画像形成部214は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する画像形成ユニット222Y、222M、222C、222K(以下、222Y~222Kと示す)と、画像形成ユニット222Y~222Kで形成されたトナー像が転写される中間転写ベルト224と、画像形成ユニット222Y~222Kで形成されたトナー像を中間転写ベルト224に転写する第1転写ロール226と、第1転写ロール226によって中間転写ベルト224に転写されたトナー像を中間転写ベルト224から記録媒体Pへ転写する第2転写ロール228と、を備えている。なお、画像形成部214は、上記の構成に限られず、他の構成であってもよく、記録媒体Pに画像を形成するものであればよい。
ここで、中間転写ベルト224、第1転写ロール226、及び第2転写ロール228からなるユニットが、転写装置の一例に相当する。
【0061】
画像形成ユニット222Y~222Kは、水平方向に対して傾斜した状態で、画像形成装置210の上下方向中央部に並んで配置されている。また、画像形成ユニット222Y~222Kは、一方向(例えば、
図3における時計回り方向)へ回転する感光体232(像保持体の一例)をそれぞれ有している。なお、画像形成ユニット222Y~222Kは、同様に構成されているので、
図3において、画像形成ユニット222M、222C、222Kの各部の符号を省略している。
【0062】
各感光体232の周囲には、感光体232の回転方向上流側から順に、感光体232を帯電させる帯電ロール223Aを有する帯電装置223と、帯電装置223によって帯電した感光体232を露光して感光体232に潜像を形成する露光装置236と、露光装置236によって感光体232に形成された潜像を現像してトナー像を形成する現像装置238と、感光体232に接触して感光体232に残留しているトナーを除去する除去部材(クリーニングブレード等)240と、が設けられている。
【0063】
ここで、感光体232、帯電装置223、露光装置236、現像装置238、及び除去部材240は、ハウジング(筐体)222Aにより一体的に保持されてカートリッジ化されている(プロセスカートリッジ)。
【0064】
露光装置236は、自己走査型のLEDプリントヘッドが適用されている。なお、露光装置236は、光源からポリゴンミラーを介して感光体232を露光する光学系の露光装置であってもよい。
露光装置236は、制御部220から送られた画像信号に基づき潜像を形成するようになっている。制御部220から送られる画像信号としては、例えば、制御部220が外部装置から取得した画像信号がある。
【0065】
現像装置238は、感光体232へ現像剤を供給する現像剤供給体238Aと、現像剤供給体238Aへ付与される現像剤を攪拌しながら搬送する複数の搬送部材238Bと、を備えている。
【0066】
中間転写ベルト224は、環状に形成されると共に、画像形成ユニット222Y~222Kの上側に配置されている。中間転写ベルト224の内周側には、中間転写ベルト224が巻き掛けられる巻掛ロール242・244が設けられている。中間転写ベルト224は、巻掛ロール242・244のいずれかが回転駆動することによって、感光体232と接触しながら一方向(例えば、
図3における反時計回り方向)へ循環移動(回転)するようになっている。なお、巻掛ロール242は、第2転写ロール228に対向する対向ロールとされている。
【0067】
第1転写ロール226は、中間転写ベルト224を挟んで感光体232に対向している。第1転写ロール226と感光体232との間が、感光体232に形成されたトナー像が中間転写ベルト224に転写される第1転写位置とされている。
【0068】
第2転写ロール228は、中間転写ベルト224を挟んで巻掛ロール142に対向している。第2転写ロール228と巻掛ロール242との間が、中間転写ベルト224に転写されたトナー像が記録媒体Pに転写される第2転写位置とされている。
【0069】
搬送部216は、収容部212に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール246と、送出ロール246に送り出された記録媒体Pが搬送される搬送路248と、搬送路248に沿って配置され送出ロール246によって送り出された記録媒体Pを第2転写位置へ搬送する複数の搬送ロール250と、が設けられている。
【0070】
第2転写位置より搬送方向下流側には、画像形成部214によって記録媒体Pに形成されたトナー像を記録媒体Pに定着させる定着装置260が設けられている。
【0071】
定着装置260は、記録媒体P上の画像を加熱する加熱ロール264と、加圧部材の一例としての加圧ロール266と、が設けられている。加熱ロール264の内部には、加熱源264Bを備えててる。
【0072】
定着装置260より搬送方向下流側には、トナー像が定着された記録媒体Pを排出部218へ排出する排出ロール252が設けられている。
【0073】
次に、画像形成装置210における、記録媒体Pへ画像を形成する画像形成動作について説明する。
【0074】
画像形成装置210では、収容部212から送出ロール246によって送り出された記録媒体Pが、複数の搬送ロール250によって第2転写位置へ送り込まれる。
【0075】
一方、画像形成ユニット222Y~222Kでは、帯電装置223によって帯電した感光体232が、露光装置236によって露光されて感光体232に潜像が形成される。その潜像が現像装置238によって現像されて感光体232にトナー像が形成される。画像形成ユニット222Y~222Kで形成された各色のトナー像は、第1転写位置にて中間転写ベルト224に重ねられて、カラー画像が形成される。そして、中間転写ベルト224に形成されたカラー画像が、第2転写位置にて記録媒体Pへ転写される。
【0076】
トナー像が転写された記録媒体Pは、定着装置260へ搬送され、転写されたトナー像が定着装置260により定着される。トナー像が定着された記録媒体Pは、排出ロール152によって排出部218に排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0077】
なお、本実施形態に係る画像形成装置210は、上記構成に限られず、例えば、画像形成ユニット222Y~222Kの各感光体232に形成されたトナー像を直接記録媒体Pに転写する直接転写方式の画像形成装置等、周知の画像形成装置を採用してもよい。
【実施例0078】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は、「質量部」を意味する。
【0079】
<実施例1>
-導電性基材の準備-
SUM23L製の基材に5μmの厚さの無電解ニッケルメッキ後、6価クロム酸を施し直径8mmの導電性基材を得た。
【0080】
-接着層の形成-
次いで、下記混合物をボールミルで1時間混合後、刷毛塗りにより前記導電性基材表面に膜厚10μmの接着層を形成した。
・塩素化ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸塩素化ポリプロピレン樹脂、スーパークロン930、日本製紙ケミカル(株)製):100部
・エポキシ樹脂(EP4000、(株)ADEKA製):10部
・導電剤(カーボンブラック、ケッチェンブラックEC、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製):2.5部
なお、粘度調整には、トルエン又はキシレンを用いた。
【0081】
-弾性層の形成-
・エピクロロヒドリンゴム(Hydrin T3106、日本ゼオン(株)製):100質量部
・カーボンブラック(旭♯60、旭カーボン(株)製):6質量部
・炭酸カルシウム(ホワイトンSB、白石カルシウム(株)製):20質量部
・イオン導電剤(BTEAC、ライオン(株)製):5質量部
・加硫促進剤:ステアリン酸(日油(株)製):1質量部
・加硫剤:硫黄(パルノックR、大内新興化学工業(株)製):1質量部
・加硫促進剤:酸化亜鉛:1.5質量部
上記に示した組成の混合物を、接線式加圧ニーダーを用いて混練してストレーナーを通過させゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物をオープンロールで混練りし、準備した導電性基材の表面に、接着層を介して押出し成形機を用いて直径12mmのロールを形成した後、175℃で70分間加熱、ロール状の弾性層を得た。
次いで、得られた弾性層を、砥石研磨にて粗研磨/仕上げ研磨実施後、さらに、番手粒度の異なる2種のラッピングペーパー(3M社製「商品名:ラッピングフィルムシート」、番手粒度=4000、番手粒度=10000)を用いて、番手粒度4000のラッピングペーパーによる研磨、番手粒度10000のラッピングペーパーによる研磨の順に、ロールを回転させながら表面全体を研磨した。
【0082】
-表面層の形成-
・結着樹脂:N-メトキシメチル化ナイロン1(商品名:FR101、(株)鉛市製):100質量部
・導電剤:カーボンブラック(体積平均粒径:43nm、商品名:MONAHRCH1000、キャボット社製):15質量部
・凹凸形成用粒子:ポリアミド粒子(体積平均粒径10μm、商品名:Orgasol2001EXDNat1、アルケマ社製):12質量部
上記組成の混合物をメタノールで希釈し、ビーズミルにて下記条件にて分散した。
・ビーズ材質:ガラス
・ビーズ径:1.3mm
・プロペラ回転数:2,000rpm
・分散時間:60分
上記で得られた分散液を前記弾性層の表面にブレードコート法で塗布した後、150℃で30分間加熱乾燥し、膜厚10μmの表面層を形成し、実施例1の帯電ロールを得た。
【0083】
<実施例2>
ラッピングペーパーによる研磨において、番手粒度4000のラッピングペーパーによる研磨のみを実施した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0084】
<実施例3>
ラッピングペーパーによる研磨を実施せず、砥石研磨において、ロールの回転数を増やし、仕上げ研磨時間を延長した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0085】
<実施例4>
砥石研磨及びラッピングペーパーによる研磨を実施せず、押出し成形機を用いたロールを形成において、金型温度を上昇させた以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0086】
<比較例1>
ラッピングペーパーによる研磨を実施せず、砥石研磨のみを実施した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0087】
<比較例2>
砥石研磨による仕上げ研磨時間を低減した以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0088】
<比較例3>
押出し成形機を用いたロールの形成後、砥石研磨及びラッピングペーパーによる研磨を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、帯電ロールを得た。
【0089】
<評価>
各例の帯電ロールを、富士フイルムビジネスイノベーション(株)製の画像形成装置「ApeosPro C650」に装着した。
これら画像形成装置を用いて、ハーフトーン画像を含むチャートを10枚印字し、10枚目の画像を用い次の評価を実施した。
【0090】
(粒状性)
粒状性について、次の通り評価した。
画像をCIELCh空間に変換し、2次元FFTにより振幅スペクトルを算出し、同一周波数の振幅スペクトルを合計することで、1次元化を行う。次に、視覚特性(視覚感度補正係数(VTF))を乗算した後、振幅スペクトルの積分を行い、予測モデルに当てはめることで粒状性評価値を算出する。Specを100%(小さい方が良い)とし、評価基準で評価した。
A(◎◎): 96%以下
B(◎) : 96%を超え98%以下
C(〇) : 98%を超え100以下
D(△) : 100%を超え101%以下
E(×) : 101%超え
【0091】
【0092】
上記結果から、本実施例の帯電部材(帯電ロール)は、比較例の帯電部材(帯電ロール)に比べ、粒状性に優れた画像が得られることがわかる。
【0093】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
導電性基材と、
前記導電性基材上に設けられた弾性層と、
前記弾性層上に設けられた表面層と、
を有し、
前記表面層の表面における、周方向の粗さ曲線をフーリエ変換して得られた周期毎の振幅強度に、明度L*に関する下記式(V)で示される視覚特性VTFL*(f=周期)により得られる各周期毎のVTF係数を乗じた、各周期毎の補正後振幅強度に対して、周期100μm以上1000μmの範囲を積分したPFVTF値が、1.5以下である帯電部材。
式(V):VTFL*(f)=5.05×(e(-0.843×1×f)-e(-1.454×1×f))
(((2)))
前記表面層の表面における、前記PFVTF値が、1.0以下である(((1)))に記載の帯電部材。
(((3)))
前記表面層の表面における、前記PFVTF値が、0.7以下である(((2)))に記載の帯電部材。
(((4)))
前記弾性層の表面における、周方向の粗さ曲線をフーリエ変換して得られた周期毎の振幅強度に、明度L*に関する下記式(V)で示される視覚特性VTFL*(f=周期)により得られる各周期毎のVTF係数を乗じた、各周期毎の補正後振幅強度に対して、周期100μm以上1000μmの範囲を積分したPFVTF値が、1.5以下である(((1)))~(((3)))のいずれか1項に記載の帯電部材。
式(V):VTFL*(f)=5.05×(e(-0.843×1×f)-e(-1.454×1×f))
(((5)))
前記弾性層の表面における、前記PFVTF値が、1.0以下である(((4)))に記載の帯電部材。
(((6)))
前記弾性層の表面における、前記PFVTF値が、0.7以下である(((5)))に記載の帯電部材。
(((7)))
(((1)))~(((6)))のいずれか1項に記載の帯電部材を備える帯電装置。
(((8)))
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電し、(((1)))~(((6)))のいずれか1項に記載の帯電部材を有する帯電装置であって、前記帯電部材が前記像保持体の表面に接触して配置されている帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光装置と、
を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
(((9)))
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電し、(((1)))~(((6)))のいずれか1項に記載の帯電部材を有する帯電装置であって、前記帯電部材が前記像保持体の表面に接触して配置されている帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光装置と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【0094】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))に係る発明によれば、導電性基材と、導電性基材上に設けられた弾性層と、弾性層上に設けられた表面層と、を有する帯電部材において、表面層の表面におけるPFVTF値が1.5超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
(((2)))に係る発明によれば、表面層の表面におけるPFVTF値が1.0超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、表面層の表面におけるPFVTF値が0.7超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
【0095】
(((4)))に係る発明によれば、弾性層の表面におけるPFVTF値が1.5超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、弾性層の表面におけるPFVTF値が1.0超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
(((6)))に係る発明によれば、弾性層の表面におけるPFVTF値が0.7超えである場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電部材が提供される。
【0096】
(((7)))、(((8)))、又は(((9)))に係る発明によれば、導電性基材と、導電性基材上に設けられた弾性層と、弾性層上に設けられた表面層と、を有する帯電部材において、表面層の表面におけるPFVTF値が1.5超えである帯電部材を備える場合に比べ、粒状性に優れる画像が得られる帯電装置、プロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
210 画像形成装置、214 画像形成部、216 搬送部、218 排出部、220 制御部、222 画像形成ユニット、223 帯電装置、223A 帯電ロール、224 中間転写ベルト、226 第1転写ロール、228 第2転写ロール、232 感光体、236 露光装置、238 現像装置、240 除去部材、260 定着装置、310 帯電部材、312 導電性基材、314 弾性層、316 表面層