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特開2024-41526バケット基礎貫入装置及びバケット基礎貫入方法
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  • 特開-バケット基礎貫入装置及びバケット基礎貫入方法 図1
  • 特開-バケット基礎貫入装置及びバケット基礎貫入方法 図2
  • 特開-バケット基礎貫入装置及びバケット基礎貫入方法 図3
  • 特開-バケット基礎貫入装置及びバケット基礎貫入方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041526
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】バケット基礎貫入装置及びバケット基礎貫入方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/18 20060101AFI20240319BHJP
   E02D 27/52 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
E02D27/18
E02D27/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146392
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴ケ崎 和博
(72)【発明者】
【氏名】宮本 順司
(72)【発明者】
【氏名】傳 亮司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達典
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA13
2D046DA61
(57)【要約】
【課題】水底地盤の強度が低い場合や、サクション圧を高くしても、バケット基礎の外方からバケット基礎内に向かって水底地盤に作用する浸透流の発生を抑制することができ、適切にバケット基礎を水底地盤に貫入させるバケット基礎貫入装置を提供する。
【解決手段】バケット基礎貫入装置1は、バケット基礎4の円筒状部10内から注排水する注排水手段5と、バケット基礎4の周りで、水底地盤上に配置される環状プレート6と、を備えている。これにより、水底地盤の強度が低い場合や、サクション圧を高くしても、バケット基礎4の外方からバケット基礎4内に向かって水底地盤に作用する浸透流の発生を抑制することができ、適切にバケット基礎4を水底地盤に貫入することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケット基礎内から排水することで、前記バケット基礎を水底地盤中に貫入させるバケット基礎貫入装置であって、
前記バケット基礎の周りで、水底地盤上に配置される環状部材を備えることを特徴とするバケット基礎貫入装置。
【請求項2】
前記バケット基礎は、前記環状部材に対して上下動自在に構成されることを特徴とする請求項1に記載のバケット基礎貫入装置。
【請求項3】
前記バケット基礎の外周面と前記環状部材の内周面との間には、シール部材が配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のバケット基礎貫入装置。
【請求項4】
バケット基礎内から排水することで、前記バケット基礎を水底地盤中に貫入させるバケット基礎貫入方法であって、
前記バケット基礎の周りの水底地盤上に環状部材を配置した後、前記バケット基礎内から排水して、前記バケット基礎を水底地盤中に貫入することを特徴とするバケット基礎貫入方法。
【請求項5】
前記バケット基礎を、前記環状部材が水底地盤上に位置した状態を維持しながら、水底地盤に貫入することを特徴とする請求項4に記載のバケット基礎貫入方法。
【請求項6】
前記バケット基礎を、前記環状部材との間に配置したシール部材により、互いの密着性を確保しながら貫入することを特徴とする請求項4または5に記載のバケット基礎貫入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケット基礎内から排水することで、当該バケット基礎を水底地盤中に貫入させるバケット基礎貫入装置及びバケット基礎貫入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海上に設置される着床式の水上構造物、例えば、着底式洋上風力発電施設の基礎施工として、サクションバケット基礎が採用されている。このサクションバケット基礎の施工方式は、サクション圧を利用してバケット基礎を水底地盤中に貫入させる方式である。具体的には、天面部を有する有蓋筒状のバケット基礎上に排水ポンプを搭載して、当該排水ポンプにより、バケット基礎の内部から排水することによって、バケット基礎の内部に静水圧よりも低い圧力(サクション圧)を作用させ、そのサクション圧によって、バケット基礎を水底地盤へ貫入させる方式が採用されている。
【0003】
図4を参照して、従来のバケット基礎貫入装置50では、水底地盤の強度が低い場合や、排水ポンプ20の排水によるサクション圧が高い場合には、強い浸透流(図4の黒塗矢印)が、バケット基礎4の外方からバケット基礎4内に向かって水底地盤に作用する。そのために、パイピンク現象のように、バケット基礎4の外周縁部の土砂がバケット基礎4の内部へ流入することで、サクション圧が作用しなくなる。
【0004】
その結果、バケット基礎4の貫入も進まなくなると共に、設置したバケット基礎4の外周縁部の水底地盤が大きく陥没しつつ、バケット基礎4の内周縁部の水底地盤が大きく隆起する可能性がある。また、ジェット水を併用する場合でも、局所的に緩い地盤が形成されることで、上述した同様の現象により、サクション圧が作用しなくなり、バケット基礎4の貫入が止まってしまう可能性がある。なお、特に、浸透流による水底地盤の流動現象は、土被り圧の浅い、バケット基礎4の貫入直後の水底地盤に発生しやすい。
【0005】
なお、特許文献1には、内部に空間を形成する構造を有して、一部が地盤中に埋没された躯体部を備え、前記躯体部の、前記地盤から突出した部分における前記空間に粒状物が補充されているサクション基礎が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021‐147937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、サクション基礎の発明であって、当該サクション基礎に対して、外力に対する抵抗力を有するとともに撤去時の作業を容易化することができるものの、上述した問題を解決することは困難である。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、水底地盤の強度が低い場合や、サクション圧を高くしても、バケット基礎の外方からバケット基礎内に向かって水底地盤に作用する浸透流の発生を抑制することができ、適切にバケット基礎を水底地盤に貫入することができるバケット基礎貫入装置及びバケット基礎貫入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、請求項1のバケット基礎貫入装置に係る発明は、バケット基礎内から排水することで、前記バケット基礎を水底地盤中に貫入させるバケット基礎貫入装置であって、前記バケット基礎の周りで、水底地盤上に配置される環状部材を備えることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、バケット基礎の周りであって、水底地盤上に環状部材が配置されているので、従来発生していた、バケット基礎の外方からバケット基礎内に向かって水底地盤に作用する浸透流の発生を抑制することができる。
【0010】
請求項2のバケット基礎貫入装置に係る発明は、請求項1に記載した発明において、前記バケット基礎は、前記環状部材に対して上下動自在に構成されることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、バケット基礎が水底地盤中に貫入されている最中でも、環状部材は、常に、水底地盤上に位置するために、前記浸透流の抑制を継続することができる。
【0011】
請求項3のバケット基礎貫入装置に係る発明は、請求項1または2に記載した発明において、前記バケット基礎の外周面と前記環状部材の内周面との間には、シール部材が配置されることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、バケット基礎の外周面と環状部材の内周面との間に設けたシール部材により互いの密着性が向上する。これにより、前記浸透流を確実に抑制することができる。
【0012】
請求項4のバケット基礎貫入方法に係る発明は、バケット基礎内から排水することで、前記バケット基礎を水底地盤中に貫入させるバケット基礎貫入方法であって、前記バケット基礎の周りの水底地盤上に環状部材を配置した後、前記バケット基礎内から排水して、前記バケット基礎を水底地盤中に貫入することを特徴とするものである。
【0013】
請求項5のバケット基礎貫入方法に係る発明は、請求項4に記載した発明において、前記バケット基礎を、前記環状部材が水底地盤上に位置した状態を維持しながら、水底地盤に貫入することを特徴とするものである。
【0014】
請求項6のバケット基礎貫入方法に係る発明は、請求項4または5に記載した発明において、前記バケット基礎を、前記環状部材との間に配置したシール部材により、互いの密着性を確保しながら貫入することを特徴とするものである。
【0015】
請求項4~6のバケット基礎貫入方法に係る発明では、上述した、請求項1~3のバケット基礎貫入装置に係る発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るバケット基礎貫入装置及びバケット基礎貫入方法によれば、水底地盤の強度が低い場合や、サクション圧を高くしても、バケット基礎の外方からバケット基礎内に向かって水底地盤に作用する浸透流の発生を抑制することができ、適切にバケット基礎を水底地盤に貫入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係るバケット基礎貫入装置の一部断面図を含む側面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るバケット基礎貫入装置の平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るバケット基礎貫入装置に採用した環状プレートの断面図である。
図4図4は、従来のバケット基礎貫入装置にて、その課題を説明するための一部断面図を含む側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図1図3に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係るバケット基礎貫入装置1は、バケット基礎4内から排水することで、バケット基礎4を水底地盤中に貫入させるものである。具体的に、図1及び図2を参照して、本実施形態に係るバケット基礎貫入装置1は、天面部11を有する有蓋円筒状のバケット基礎4内から注排水する注排水手段5と、バケット基礎4の周りで、水底地盤上に配置される環状プレート6と、を備えている。バケット基礎4は、円筒状部10と、該円筒状部10の上端開口を塞ぐ天面部11とを有する有蓋円筒状に形成される。バケット基礎4は、例えば、鋼製である。
【0019】
バケット基礎4の円筒状部10内は、注排水管13を介して注排水手段5と連通している。注排水手段5は、注排水ポンプで構成される。注排水手段5は、バケット基礎4の天面部11上に配置される。注排水手段5により、注排水管13を介してバケット基礎4の円筒状部10内から排水する一方、注排水管13を介してバケット基礎4の円筒状部10内へ注水することも可能になる。
【0020】
環状プレート6が環状部材に相当する。環状プレート6は、所定幅及び所定厚を有する円環状に形成される。環状プレート6は、例えば、鋼製である。環状プレート6の幅長は、1m~2mの範囲で適宜設定される。また、環状プレート6の厚みは、2cm~5cmの範囲で適宜設定される。環状プレート6の内部にバケット基礎4が配置される。すなわち、環状プレート6は、バケット基礎4の円筒状部10の外周面にシール部材16を介して密着した状態で、バケット基礎4の外方周辺の水底地盤上に配置される。言い換えれば、環状プレート6は、バケット基礎4とシール部材16を介して密着した状態で、バケット基礎4の外方周辺の水底地盤を覆うように配置される。バケット基礎4は、環状プレート6に対して上下動自在となる。要するに、環状プレート6が水底地盤上に配置されたまま、バケット基礎4を水底地盤内に貫入することができる。
【0021】
環状プレート6の内周面にはシール部材16が装着される。シール部材16はゴムシート等で構成されるが、バケット基礎4と環状プレート6との密着性が向上するものであればこれに限定されることはない。そして、バケット基礎4の円筒状部10の外周面と、環状プレート6の内周面との間に配置されるシール部材16により、バケット基礎4と環状プレート6との間の密着性が確保される。
【0022】
なお、本実施形態では、環状部材として環状プレート6を採用したが、バケット基礎4の周りで、水底地盤上に配置できるもの、例えば所定の周壁厚を有する筒状のものを採用することができる。また、本実施形態では、環状プレート6は、円環状に形成されているが、その外周面が平面視で波状に形成されてもよい。また、バケット基礎4の周りの水底地盤の強弱に伴って、その弱い地盤上を局所的に覆うようにその外周面が平面視にて凹凸する複雑な形状を呈してもよい。
【0023】
そして、本実施形態に係るバケット基礎貫入装置1により、バケット基礎4を水底地盤内に貫入する際には、まず、バケット基礎4を水底まで自沈させ、バケット基礎4の下端を水底地盤内に若干貫入させつつ、バケット基礎4の周りの水底地盤上に環状プレート6を配置する。続いて、注排水手段5により、バケット基礎4の円筒状部10内から注排水管13を介して排水する。すると、バケット基礎4の円筒状部10内に静水圧よりも低い圧力(サクション圧力)が発生する。その結果、バケット基礎4は、サクション圧力により、さらに水底地盤内に貫入される。
【0024】
このとき、バケット基礎4は、シール部材16を介して環状プレート6に対して上下動自在に構成されているので、バケット基礎4が水底地盤中に貫入されている最中でも、環状プレート6は、常に、水底地盤上に位置する。言い換えれば、環状プレート6が水底地盤上に位置した状態を維持しながら、バケット基礎4が水底地盤に貫入される。また、バケット基礎4は、環状プレート6との間に配置したシール部材16により、互いの密着性を確保しながら貫入される。そして、この環状プレート6により、従来発生していた、バケット基礎4の円筒状部10の外方からバケット基礎4の円筒状部10内に向かって水底地盤に作用する浸透流を抑制することができる。
【0025】
以上説明した、本実施形態では、バケット基礎貫入装置1は、バケット基礎4の円筒状部10内から注排水する注排水手段5と、バケット基礎4の周りで、水底地盤上に配置される環状プレート6と、を備え、バケット基礎4の周りの水底地盤上に環状プレート6を配置した後、注排水手段5によりバケット基礎4内から排水して、バケット基礎4を水底地盤中に貫入している。そして、この環状プレート6により、バケット基礎4の円筒状部10の外方からバケット基礎4の円筒状部10内に向かって水底地盤に作用する浸透流を抑制することができる。
【0026】
その結果、高いサクション圧をバケット基礎4の円筒状部10内に作用させることが可能となり、バケット基礎4の貫入がより促進される。また、浸透流が抑制された結果、水底地盤の強度が低い場合でも、バケット基礎4の円筒状部10内にサクション圧が適切に作用して、バケット基礎4を容易に水底地盤に貫入させることができる。さらに、浸透流が抑制された結果、バケット基礎4を設置した内外の水底地盤の流動を抑制でき、結果として、バケット基礎4を設置した内外の水底地盤の陥没や隆起を抑制することができ、ひいては、バケット基礎4を傾斜させず、安定して水底地盤に貫入することができる。
【0027】
また、本実施形態に係るバケット基礎貫入装置1では、バケット基礎4は、環状プレート6に対して上下動自在に構成されているので、バケット基礎4が水底地盤中に貫入している最中でも、環状プレート6は、常に、水底地盤上に位置するために、浸透流の抑制を継続することができる。
【0028】
さらに、本実施形態に係るバケット基礎貫入装置1では、バケット基礎4の円筒状部10の外周面と、環状プレート6の内周面との間にシール部材16が配置され、バケット基礎4を、環状プレート6に対して、シール部材16により、互いの密着性を確保しながら貫入しているので、浸透流の抑制効果を向上させることができる。
【0029】
なお、本実施形態に係るバケット基礎貫入装置1では、浸透流を抑制するという観点から、バケット基礎4の円筒状部10の外周面と、環状プレート6の内周面との間にシール部材16が配置されているが、施工性の観点から、シール部材16を配設することなく、バケット基礎4の円筒状部10の外周面と環状プレート6の内周面とを直接当接させるか、あるいは、バケット基礎4の円筒状部10の外周面と環状プレート6の内周面との間に微小な隙間を設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 バケット基礎貫入装置,4 バケット基礎,6 環状プレート(環状部材),16 シール部材
図1
図2
図3
図4