(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041545
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】サクションバケット基礎工法及び施工管理システム
(51)【国際特許分類】
E02D 27/52 20060101AFI20240319BHJP
E02D 27/18 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
E02D27/52 Z
E02D27/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146420
(22)【出願日】2022-09-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構2019年度新エネルギー技術研究開発洋上風力発電等技術研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴ケ崎 和博
(72)【発明者】
【氏名】河田 晃靖
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友哉
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA13
2D046DA61
(57)【要約】
【課題】サクションバケットの貫入を阻害することなく、且つサクションバケット基礎施工の管理が容易なサクションバケット基礎工法及び施工管理システムを提供する。
【解決手段】サクションバケット1に取り付けた光ファイバセンサS1,S2,S3,S4の検出信号に基づきサクションバケット1の着底状態(第1検出点、第2検出点、第3検出点、第4検出点の着底)を検知し、検知したサクションバケット1の着底状態に基づきサクションバケット1を水平に調整する。光ファイバセンサS1,S2,S3,S4は、防水処理の必要がないので、サクションバケット基礎施工の管理が容易である。また、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4は、外径が数mm程度であるためサクションバケット1の貫入を阻害することがない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有蓋筒状のサクションバケットを水底地盤に着床させて沈設するサクションバケット基礎工法であって、
前記サクションバケットに光ファイバセンサの一側を取り付ける取付ステップと、
クレーンで吊持した前記サクションバケットを水底地盤に向かって沈降させる沈降ステップと、
前記光ファイバセンサの検出信号に基づき前記サクションバケットの着床状態を算出する算出ステップと、
算出された前記サクションバケットの着床状態をディスプレイに表示する表示ステップと、
前記ディスプレイに表示された前記サクションバケットの着床状態をリアルタイムで確認しながら前記サクションバケットを操作する操作ステップと、
を含むことを特徴とするサクションバケット基礎工法。
【請求項2】
請求項1に記載のサクションバケット基礎工法であって、
前記取付ステップでは、前記サクションバケットに複数本の第1光ファイバセンサを取り付け、前記複数本の第1光ファイバセンサのセンサ部は、前記サクションバケットの下端位置に、かつ前記サクションバケットの周方向に等間隔で設けられ、
前記算出ステップでは、前記複数本の第1光ファイバセンサの検出信号に基づき前記サクションバケットの着底状態を算出し、
前記操作ステップでは、前記ディスプレイに表示された前記サクションバケットの着底状態をリアルタイムで確認しながら前記サクションバケットを水平に調整することを特徴とするサクションバケット基礎工法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサクションバケット基礎工法であって、
前記取付ステップでは、前記サクションバケットの外周面に複数本の第2光ファイバセンサを取り付け、前記複数本の第2光ファイバセンサのセンサ部は、前記サクションバケットの下端位置を基点とした距離が相違するように設けられ、
前記算出ステップでは、前記複数本の第2光ファイバセンサの検出信号に基づき前記サクションバケットの貫入深さを算出することを特徴とするサクションバケット基礎工法。
【請求項4】
請求項3に記載のサクションバケット基礎工法であって、
前記取付ステップでは、前記サクションバケットの内周面に複数本の第3光ファイバセンサを取り付け、前記複数本の第3光ファイバセンサのセンサ部は、前記サクションバケットの下端位置を基点とした距離が相違するように設けられ、
前記算出ステップでは、前記複数本の第3光ファイバセンサの検出信号に基づき前記サクションバケットの下端位置を基点とした前記サクションバケットの内部地盤の高さを算出し、さらに前記サクションバケットの貫入深さと前記サクションバケットの内部地盤の高さとから、前記サクションバケットの内部地盤の盛り上がり量を算出することを特徴とするサクションバケット基礎工法。
【請求項5】
有蓋筒状のサクションバケットを水底地盤に着床させて沈設するサクションバケット基礎工法に適用される施工管理システムであって、
一側が前記サクションバケットに取り付けられる光ファイバセンサと、
前記光ファイバセンサの検出信号に基づき前記サクションバケットの着床状態を算出する制御装置と、
算出された前記サクションバケットの着床状態を表示するディスプレイと、
を含むことを特徴とする施工管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の施工管理システムであって、
前記光ファイバセンサは、複数本の第1光ファイバセンサを含み、
前記複数本の第1光ファイバセンサのセンサ部は、前記サクションバケットの下端位置に、かつ前記サクションバケットの周方向に等間隔で設けられ、
前記制御装置は、前記複数本の第1光ファイバセンサの検出信号に基づき前記サクションバケットの着底状態を算出することを特徴とする施工管理システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の施工管理システムであって、
前記光ファイバセンサは、前記サクションバケットの外周面に設けられる複数本の第2光ファイバセンサを含み、
前記複数本の第2光ファイバセンサのセンサ部は、前記サクションバケットの下端位置を基点とした距離が相違するように設けられ、
前記制御装置は、前記複数本の第2光ファイバセンサの検出信号に基づき前記サクションバケットの貫入深さを算出することを特徴とする施工管理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の施工管理システムであって、
前記光ファイバセンサは、前記サクションバケットの内周面に設けられる複数本の第3光ファイバセンサを含み、
前記複数本の第3光ファイバセンサのセンサ部は、前記サクションバケットの下端位置を基点とした距離が相違するように設けられ、
前記制御装置は、前記複数本の第3光ファイバセンサの検出信号に基づき前記サクションバケットの下端位置を基点とした前記サクションバケットの内部地盤の高さを算出すると共に、前記サクションバケットの貫入深さと前記サクションバケットの内部地盤の高さとから、前記サクションバケットの内部地盤の盛り上がり量を算出することを特徴とする施工管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着床式の洋上風力発電施設等の基礎施工に適用されるサクションバケット基礎工法及び施工管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
着床式の洋上風力発電施設等の基礎施工に適用されるサクションバケット基礎工法は、水底地盤に着底させた筒形のサクションバケットの内部を排水し、サクションバケット内部の圧力を静水圧よりも低くすることによりサクションバケットを海底地盤に貫入させる手法である(例えば「特許文献1」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなサクションバケット基礎工法では、本体の鉛直性の保持や施工中におけるパイピング現象の発生等を抑止するため、サクションバケットを水平に着底させる必要がある。従来のサクションバケット基礎工法では、サクションバケットの着底状態を水中ドローンに取り付けたカメラの映像や潜水士の目視により確認していたが、濁り等で視認性が低下すると確認が困難になる。
【0005】
一方、サクションバケットの下端位置に周方向に間隔をあけて複数個(例えば3個」)の圧力センサを設け、これら圧力センサの電気信号に基づきサクションバケットを水平に調整する手法があるが、サクションバケットの側壁から突出した圧力センサが抵抗になりサクションバケットの貫入を阻害する虞がある。さらに、圧力センサは電気信号を用いるため防水処理が必要であり、取り扱いが煩雑になる。
【0006】
本発明は、サクションバケットの貫入を阻害することなく、且つサクションバケット基礎施工の管理が容易なサクションバケット基礎工法及び施工管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサクションバケット基礎工法は、有蓋筒状のサクションバケットを水底地盤に着床させて沈設するサクションバケット基礎工法であって、前記サクションバケットに光ファイバセンサの一側を取り付ける取付ステップと、クレーンで吊持した前記サクションバケットを水底地盤に向かって沈降させる沈降ステップと、前記光ファイバセンサの検出信号に基づき前記サクションバケットの着床状態を算出する算出ステップと、算出された前記サクションバケットの着床状態をディスプレイに表示する表示ステップと、前記ディスプレイに表示された前記サクションバケットの着床状態をリアルタイムで確認しながら前記サクションバケットを操作する操作ステップと、を含むことを特徴とする。
本発明の施工管理システムは、有蓋筒状のサクションバケットを水底地盤に着床させて沈設するサクションバケット基礎工法に適用される施工管理システムであって、一側が前記サクションバケットに取り付けられる光ファイバセンサと、前記光ファイバセンサの検出信号に基づき前記サクションバケットの着床状態を算出する制御装置と、算出された前記サクションバケットの着床状態を表示するディスプレイと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サクションバケットの貫入を阻害することなく、且つサクションバケット基礎の施工管理が容易なサクションバケット基礎工法及び施工管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本実施形態の説明図であって、第1光ファイバセンサの配置を示す図である。
【
図3】本実施形態の説明図であって、第2光ファイバセンサの配置を示す図である。
【
図4】本実施形態の説明図であって、第3光ファイバセンサの配置を示す図である。
【
図5】本実施形態の説明図であって、施工管理システムの概念図である。
【
図6】本実施形態の説明図であって、サクションバケット基礎工法のフローチャートである。
【
図7】本実施形態の説明図であって、サクションバケットが水底地盤に着底した状態を示す図である。
【
図8】本実施形態の説明図であって、サクションバケット内部が排水される状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
本実施形態では、着床式の洋上発電施設の基礎施工に適用されるサクションバケット基礎工法を例示して説明する。便宜上、
図1における上下方向をそのまま上下方向と称する。
図1に示されるように、サクションバケット1は、有蓋円筒形に形成される。サクションバケット1は、円筒形の側壁3と該側壁3の上端開口部を閉塞する天壁6とを有する。なお、天壁6の上面中央部にはタワー8が立設される。
【0011】
本実施形態に係るサクションバケット基礎工法には、サクションバケット基礎施工を管理する施工管理システム10(
図5参照)が適用される。
図2又は
図5に示されるように、施工管理システム10は、複数本(本実施形態では「4本」)の光ファイバセンサS1,S2,S3,S4(第1光ファイバセンサ)を有する。光ファイバセンサS1,S2,S3,S4の一側は、サクションバケット1の側壁2の外周面3に取り付けられる。また、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4の一側は、サクションバケット1の側壁2の母線(外周面3を含む円柱の母線)に沿うように取り付けられる。さらに、光ファイバセンサS1,S2,S3の一側は、サクションバケット1の側壁2の外周面3の周方向へ等間隔をあけて配置される。なお、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4は、便宜上、
図2に等間隔に表示されていないが、実際はサクションバケット1の中心線の回りに90°間隔である。
【0012】
光ファイバセンサS1,S2,S3,S4の一側の端部は、サクションバケット1の下端面5(下端位置)を越えて下方向へ突出される。光ファイバセンサS1,S2,S3,S4の端部には、回折格子(FBG:Fiber Bragg Gratings)からなるセンサ部s1,s2,s3,s4(検出点)が設けられる。以下、必要に応じて、光ファイバセンサS1のセンサ部s1をサクションバケット1の第1検出点、光ファイバセンサS2のセンサ部s2をサクションバケット1の第2検出点、光ファイバセンサS3のセンサ部s3をサクションバケット1の第3検出点、光ファイバセンサS4のセンサ部s4をサクションバケット1の第4検出点と称する。なお、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4の他側の端部は、光コネクタ(図示省略)を介して光ファイバ測定器11に接続される。
【0013】
図3又は
図5に示されるように、施工管理システム10は、複数本(n本)の光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pn(第2光ファイバセンサ)を有する。光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pnの一側は、サクションバケット1の側壁2の外周面3に取り付けられる。また、光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pnの一側は、、サクションバケット1の側壁2の母線(外周面3を含む円柱の母線)に沿うように取り付けられる。さらに、光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pnの一側は、サクションバケット1の側壁2の周方向へ一定間隔をあけて配置される。なお、光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pnの他側の端部は、光コネクタ(図示省略)を介して光ファイバ測定器12に接続される。
【0014】
光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pnの一側の、サクションバケット1の下端面5(下端位置)を基点とした距離は、光ファイバセンサP1が最も短く、光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pnの順に一定の距離ずつ長くなる。なお、光ファイバセンサP1の一側は、サクションバケット1の下端面5(下端位置)よりも上に配置される。光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pnの端部には、回折格子(FBG)からなるセンサ部p1,p2,p3・・・pn(検出点)が設けられる。換言すれば、光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pnのセンサ部p1,p2,p3・・・pnの、サクションバケット1の下端面5(下端位置)を基点とした距離は、センサ部p1が最も短く、センサ部p1,p2,p3・・・pnの順に一定の距離ずつ長くなる。
【0015】
図4又は
図5に示されるように、施工管理システム10は、複数本(n本)の光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qn(第3光ファイバセンサ)を有する。光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnの一側は、サクションバケット1の側壁2の内周面4に取り付けられる。また、光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnの一側は、、サクションバケット1の側壁2の母線(内周面4を含む円柱の母線)に沿うように取り付けられる。さらに、光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnの一側は、サクションバケット1の側壁2の周方向へ一定間隔をあけて配置される。なお、光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnは、サクションバケット1の天壁6を貫通してサクションバケット1の外部へ延び、他側の端部が光コネクタ(図示省略)を介して光ファイバ測定器13に接続される。
【0016】
光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnの一側の、サクションバケット1の下端面5(下端位置)を基点とした距離は、光ファイバセンサQ1が最も短く、光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnの順に一定の距離ずつ長くなる。なお、光ファイバセンサQ1の一側は、サクションバケット1の下端面5(下端位置)よりも上に配置される。光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnの端部には、回折格子(FBG)からなるセンサ部q1,q2,q3・・・qn(検出点)が設けられる。換言すれば、光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnのセンサ部q1,q2,q3・・・qnの、サクションバケット1の下端面5(下端位置)を基点とした距離は、センサ部q1が最も短く、センサ部q1,q2,q3・・・qnの順に一定の距離ずつ長くなる。
【0017】
図5に示されるように、光ファイバ測定器11は、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4のセンサ部s1,s2,s3,s4(検出点)の光の波長の変化に基づき、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4のセンサ部s1,s2,s3,s4に発生する歪みを測定し、測定結果としての歪み検出信号をインターフェース(図示省略)を介して制御装置15へ送信する。制御装置15は、光ファイバ測定器11から送信された歪み検出信号に基づき、水底面21に着底したサクションバケット1の着底状態(着床状態)を算出し、算出結果をディスプレイ16に数値又は画像で表示する。
【0018】
また、光ファイバ測定器12は、光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pnのセンサ部p1,p2,p3・・・pn(検出点)の光の波長の変化に基づき、光ファイバセンサP1,P2,P3・・・Pnのセンサ部p1,p2,p3・・・pnに発生する歪みを測定し、測定結果としての歪み検出信号をインターフェース(図示省略)を介して制御装置15へ送信する。制御装置15は、光ファイバ測定器12から送信された歪み検出信号(検出点の位置)に基づき、水底面21を基点としたサクションバケット1の水底地盤20への貫入深さD1を算出し、算出結果をディスプレイ16に数値又は画像で表示する。
【0019】
また、光ファイバ測定器13は、光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnのセンサ部q1,q2,q3・・・qn(検出点)の光の波長の変化に基づき、光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnのセンサ部q1,q2,q3・・・qnに発生する歪みを測定し、測定結果としての歪み検出信号をインターフェース(図示省略)を介して制御装置15へ送信する。制御装置15は、光ファイバ測定器13から送信された歪み検出信号(検出点の位置)に基づき、サクションバケット1の下端面5を基点としたサクションバケット1の内部地盤22の高さH1を算出する。さらに、制御装置15は、サクションバケット1の貫入深さD1と内部地盤22の高さH1とから、水底面21を基点としたサクションバケット1の内部地盤22の盛り上がり量H2(H1-D1)を算出し、算出結果をディスプレイ16に数値又は画像で表示する。
【0020】
次に、
図6に示されるフローチャートに基づき、前述した施工管理システム10を用いたサクションバケット基礎工法の工程を説明する。
(取付ステップ)
まず、サクションバケット1に、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4(第1光ファイバセンサ)を取り付ける。
(沈降ステップ)
次に、起重機船に設置されたクレーン(図示省略)によりサクションバケット1を吊り上げて着水させ、サクションバケット1を既定の着床位置に向かって沈降させる(
図6における「ステップ1」)。なお、水底面21の着床位置は予め水平に均されている。
サクションバケット1の沈降中、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4のセンサ部s1,s2,s3,s4の少なくとも1つが歪みを検出した時点、即ち、サクションバケット1の第1検出点、第2検出点、第3検出点、第4検出点の少なくとも1点が水底地盤20に着底した時点で、サクションバケット1の沈降(移動)を停止させる(
図6における「ステップ2」)。
(算出ステップ、表示ステップ)
サクションバケット1の沈降を停止した後、サクションバケット1の第1検出点、第2検出点、第3検出点の着底(着床状態)を算出し、算出結果をディスプレイ16に表示する。
(操作ステップ)
サクションバケット1の着底状態をディスプレイ16で確認しながら、
図7に示されるように、サクションバケット1の下端面5を水平に調整する(
図6における「ステップ3」)。
次に、サクションバケット1の下端面5を水平に保ちながら、サクションバケット1の自重により、サクションバケット1の一部(側壁2の下端部)を水底地盤20に貫入させる(
図6における「ステップ4」)。
次に、
図8に示されるように、ポンプ(図示省略)を作動させてサクションバケット1の内部を排水し、サクションバケット1の内部圧力を静水圧よりも低くすることにより、サクションバケット1を水底地盤20に貫入させる(
図6における「ステップ5」)。
サクションバケット1の貫入中、オペレータは、サクションバケット1の貫入深さD1及びサクションバケット1の内部地盤22の盛り上がり量H2(着床状態)を、ディスプレイ16の表示によりリアルタイムで確認することができる。
【0021】
ところで、サクションバケット基礎工法では、本体の鉛直性の保持や施工中におけるパイピング現象の発生等を抑止するため、サクションバケットを水平に着底させる必要がある。従来のサクションバケット基礎工法では、サクションバケットの着底状態(着床状態)を水中ドローンに取り付けたカメラの映像や潜水士の目視により確認していたが、濁り等で視認性が低下すると確認が困難になる。
これに対し、本実施形態では、サクションバケット1に取り付けた光ファイバセンサS1,S2,S3,S4の検出信号に基づきサクションバケット1の着底状態(第1検出点、第2検出点、第3検出点、第4検出点の着底)を検知し、検知したサクションバケット1の着底状態に基づきサクションバケット1を水平に調整するので、水の濁り等の影響を受けることなく、サクションバケット基礎を能率的に施工することができる。
【0022】
また、従来のサクションバケット基礎工法では、サクションバケットに取り付けた圧力センサの電気信号に基づきサクションバケットの着底状態を検知していたが、圧力センサが抵抗になりサクションバケットの貫入を阻害する虞があった。さらに、圧力センサは電気信号を用いるため防水処理が必要であり、取り扱いが煩雑であった。
これに対し、本実施形態では、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4は、直径が数mm程度であるため、サクションバケット1の貫入を阻害するような抵抗になり得ない。また、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4のセンサ部s1,s2,s3,s4の検出信号は光信号であり、電気信号ではないので取り扱いが容易である。
さらに、光ファイバセンサS1,S2,S3,S4は、サクションバケット1よりも先端部が突き出ているので、バケット本体が着底する前段階から、バケット本体が着底する状況を容易に把握することができる.
【0023】
また、従来のサクションバケット基礎工法では、サクションバケットの内部地盤の盛り上がり量の計測に、例えば変位計(接触式センサ)を用いていたが、変位計は、接触子が地盤に突き刺さったり、砂を噛み込んだりして動作不良を引き起こす虞がある。さらに、変位計は、圧力センサ同様、電気信号を用いるため防水処理が必要であり、取り扱いが煩雑であった。
これに対し、本実施形態では、サクションバケット1の側壁2の外周面3に取り付けた光ファイバセンサP1,P2,P3,・・・Pnの検出信号に基づきサクションバケット1の水底地盤20への貫入深さD1を算出し、他方、サクションバケット1の側壁2の内周面4に取り付けた光ファイバセンサQ1,Q2,Q3・・・Qnの検出信号に基づきサクションバケット1の下端面5を基点としたサクションバケット1の内部地盤22の高さH1を算出し、サクションバケット1の貫入高さD1と内部地盤22の高さH1とからサクションバケット1の内部地盤22の盛り上がり量H2を算出し、その算出結果をディスプレイ16に表示するので、サクションバケット1の内部地盤22の盛り上がり量H2を高い精度及び信頼性で測定することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 サクションバケット、16 ディスプレイ、S1,S2,S3,S4 光ファイバセンサ