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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041546
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】積層体、印刷シート、及び、物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/14 20060101AFI20240319BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240319BHJP
【FI】
B32B3/14
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146421
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】522365694
【氏名又は名称】株式会社典沃
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】松尾 友達
(72)【発明者】
【氏名】本間 豊章
(72)【発明者】
【氏名】山田 正寿
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AR00A
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DC00A
4F100DC00B
4F100DC00C
4F100HB31B
4F100HB31C
4F100HB32
4F100HB35
4F100JN01B
4F100JN01C
4F100JN06A
4F100JN08B
4F100JN08C
(57)【要約】
【課題】文字等の表示物を表現するための積層体において、表示物の輪郭への装飾として新規な装飾を実現する。
【解決手段】積層体10は、インク支持面11a上に積層されて表示物20を形成する主インク層12と、インク支持面11a上に積層されて表示物20の輪郭20cに沿って線状に延びる第1輪郭インク層13と、第1輪郭インク層13を被覆するようにインク支持面11a上に積層されて表示物20の輪郭20cに沿って第1輪郭インク層13よりも太い線幅で線状に延びる第2輪郭インク層14と、第1輪郭インク層13及び第2輪郭インク層14の裏側を被覆する光反射層15とを備え、断面視における第1輪郭インク層13の両側面13sには、両側面13sを被覆する第2輪郭インク層14との境界面18が形成され、両側面13sの境界面18は、積層体10の表側から視認可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク支持面上に、表側から視認可能な表示物が表現された積層体であって、
前記インク支持面上に積層されて、表示物を形成する主インク層と、
透明又は半透明のインクにより構成されて、前記インク支持面上に積層され、前記表示物の輪郭に沿って線状に延びる第1輪郭インク層と、
透明又は半透明のインクにより構成されて、前記第1輪郭インク層を被覆するように前記インク支持面上に積層され、前記表示物の輪郭に沿って前記第1輪郭インク層よりも太い線幅で線状に延びる第2輪郭インク層と、
前記第1輪郭インク層、及び、前記第2輪郭インク層の裏側を被覆する光反射層とを備え、
断面視における前記第1輪郭インク層の両側面には、該両側面を被覆する前記第2輪郭インク層との境界面が形成され、前記両側面の境界面は、当該積層体の表側から視認可能である、積層体。
【請求項2】
前記主インク層は、前記インク支持面上に白抜き領域により前記表示物を形成するベースインク層であり、
前記第1輪郭インク層は、前記白抜き領域において前記ベースインク層に近接して配置されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第2輪郭インク層は、前記第1輪郭インク層と共に前記ベースインク層も被覆するように、前記インク支持面上に積層されている、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
断面視において前記第2輪郭インク層の幅方向の中心は、前記第1輪郭インク層の幅方向の中心よりも前記ベースインク層側に位置している、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記主インク層は、前記光反射層であり、
前記光反射層は、前記インク支持面上に白抜き領域により前記表示物を形成する、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記白抜き領域を覆うように、前記光反射層よりも低輝度の装飾インク層が積層されている、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の積層体と、
片面が前記インク支持面を構成する基材層とを備えている、印刷シート。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の積層体を有する物品であって、
前記物品の表面は、前記インク支持面を構成し、
前記光反射層は、前記物品の表面に積層され、
前記第1輪郭インク層、及び、前記第2輪郭インク層は、前記光反射層に積層されている、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字等の表示物を表現するための積層体等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、文字、数字、記号、図形、模様パターン又は具象画などの表示物を表現するための積層体として、印刷シートなどが知られている。特許文献1には、表示物の輪郭への装飾が施された印刷シートが記載されている。
【0003】
特許文献1には、立体感を有する印刷シートが記載されている。この印刷シートは、透明基材層と、透明基材層に部分的に印刷されて意匠領域を形成するベースインク層と、意匠領域の輪郭に沿って印刷された透明又は半透明の第1輪郭インク層と、意匠領域の輪郭から所定の距離を有し、且つ第1輪郭インク層と重なる領域を有して印刷された透明又は半透明の第2輪郭インク層と、意匠領域、第1及び第2輪郭インク層を覆って透明基材層に印刷された反射層と、を備えている。この印刷シートでは、第1及び第2輪郭インク層が重なる領域を形成することで、意匠領域に立体感とエッジ感を出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-6372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の積層体では、第1輪郭インク層と、第1輪郭インク層に重なる第2輪郭インク層とが、レンズのような働きをすることで、文字等の表示物の輪郭に立体感を付与している。また、第1輪郭インク層の片方の側面に、その側面を覆う第2輪郭インク層との境界面が形成される。本願発明者は、レンズのような働きをする第1及び第2輪郭インク層において、第1輪郭インク層の側面における第2輪郭インク層との境界面が、積層体を厚さ方向(積層方向)に見た場合に、表示物の輪郭に一定の装飾効果を付与していることに気が付いた。そして、本願発明者は、境界面の設け方によって、従来とは異なる輪郭の装飾を実現することができると考えた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、文字等の表示物を表現するための積層体において、表示物の輪郭への装飾として新規な装飾を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、インク支持面上に、表側から視認可能な表示物を表現するための積層体であって、インク支持面上に積層されて、表示物を形成する主インク層と、透明又は半透明のインクにより構成されて、インク支持面上に積層され、表示物の輪郭に沿って線状に延びる第1輪郭インク層と、透明又は半透明のインクにより構成されて、第1輪郭インク層を被覆するようにインク支持面に積層され、表示物の輪郭に沿って第1輪郭インク層よりも太い線幅で線状に延びる第2輪郭インク層と、第1輪郭インク層、及び、第2輪郭インク層の裏側を被覆する光反射層とを備え、断面視における第1輪郭インク層の両側面には、該両側面を被覆する第2輪郭インク層との境界面が形成され、両側面の境界面は、表側から視認可能である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、主インク層は、インク支持面上に白抜き領域により表示物を形成するベースインク層であり、第1輪郭インク層及び第2輪郭インク層は、白抜き領域においてベースインク層に近接して配置されている。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、第2輪郭インク層は、第1輪郭インク層と共にベースインク層も被覆するように、インク支持面上に積層されている。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、断面視において第2輪郭インク層の幅方向の中心は、第1輪郭インク層の幅方向の中心よりもベースインク層側に位置している。
【0011】
第5の発明は、第1の発明において、主インク層は、光反射層であり、光反射層は、インク支持面上に白抜き領域により表示物を形成する。
【0012】
第6の発明は、第5の発明において、白抜き領域を覆うように、光反射層よりも低輝度の装飾インク層が積層されている。
【0013】
第7の発明は、第1乃至第6の何れか1つの発明の積層体と、片面がインク支持面を構成する基材層とを備えている、印刷シートである。
【0014】
第8の発明は、第1乃至第4の何れか1つの発明の積層体を有する物品であって、物品の表面は、インク支持面を構成し、光反射層は、物品の表面に積層され、第1輪郭インク層、及び、第2輪郭インク層は、光反射層に積層されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、インク支持面上に、表側から視認可能な表示物が形成されている。そして、インク支持面上において、表示物の輪郭に沿って線状に延びる第1輪郭インク層が、第1輪郭インク層よりも太い線幅で線状に延びる第2輪郭インク層によって被覆され、さらに第1輪郭インク層、及び、第2輪郭インク層が、反射層により裏側から被覆されている。これにより、第1輪郭インク層、及び、第2輪郭インク層は、表示物の輪郭においてレンズのような働きをして、表示物の輪郭に立体感を付与する。
【0016】
さらに、本発明では、断面視における第1輪郭インク層の両側面に、両側面を被覆する第2輪郭インク層との境界面(以下、「両側面の境界面」と言う。)が形成されており、両側面の境界面は、表側から視認可能である。従って、従来は、第1輪郭インク層の片方の側面だけに、表示物の輪郭に装飾効果を付与する境界面が形成されていたのに対し、本発明では、第1輪郭インク層の両側面に、表示物の輪郭に装飾効果を付与する境界面が形成され、従来とは異なる新規な装飾となる。本発明によれば、文字等の表示物を表現するための積層体において、表示物の輪郭への装飾として新規な装飾を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る印刷シートの正面図である。
図2図2は、実施形態に係る印刷シートにおける表示物の横断箇所の断面図である。
図3図3は、実施形態の第1変形例に係る印刷シートにおける表示物の横断箇所の断面図である。
図4図4は、実施形態の第2変形例に係る印刷シートにおける表示物の横断箇所の断面図である。
図5図5(a)は、実施形態の第3変形例に係る印刷シートにおける表示物の横断箇所の断面図であり、図5(b)は、印刷シートの転写対象部が転写された物品表面の断面図である。
図6図6は、実施形態の第4変形例に係る印刷シートにおける表示物の横断箇所の断面図である。
図7図7は、実施形態の第5変形例に係る物品表面の断面図である。
図8図8は、実施形態の第6変形例に係る物品表面の断面図である。
図9図9は、実施形態の第7変形例に係る物品表面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0019】
本実施形態は、図1に示すように、文字、数字、記号、図形、模様パターン又は具象画などの表示物20が表現された印刷シート10である。印刷シート10は、本発明に係る積層体の一例である。本実施形態では、表示物20が、基材層11に印刷されたベースインク層(主インク層)12により形成されている(図2参照)。表示物20は、ベースインク層12を載せない白抜き領域20rにより構成されている。白抜き領域20rは、印刷シート10に意匠を施す意匠領域と言うこともできる。印刷シート10では、光反射層15が設けられた表示物20の輪郭20cを綺麗に引き立たせるために、第1輪郭インク層13及び第2輪郭インク層14による装飾が施されている。以下、印刷シート10について具体的に説明する。なお、本実施形態では、印刷シート10について基材層11側が「表側」となり、その反対側が「裏側」となる。
【0020】
[印刷シートの構造について]
印刷シート10は、図2に示すように、片面がインク支持面11aを構成する基材層11と、印刷シート10の表側から視認可能な表示物20を形成するベースインク層12と、基材層11のベースインク層12側の白抜き領域20rに積層された第1輪郭インク層13と、第1輪郭インク層13を被覆するように基材層11のベースインク層12側に積層された第2輪郭インク層14と、白抜き領域20rと第1輪郭インク層13と第2輪郭インク層14の裏側を少なくとも被覆するように基材層11のベースインク層12側に積層された光反射層15とを備えている。なお、図2は、印刷シート10において、表示物20(白抜き領域20r)を横断する箇所(図1のA-A切断線の箇所)の断面図である。
【0021】
基材層11は、透明性を有する板材(例えば、透明フィルム)である。基材層11には、透明材料を用いてもよいし、光透過性を損なわない程度に着色された半透明材料を用いてもよい。基材層11は、本実施形態では平らな板材であるが、湾曲した板材であってもよい。また、本実施形態では印刷シート10において基材層11は1層であるが、複数の基材層11を設けてもよい。
【0022】
基材層11の材料は、例えばポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート又はポリアクリルエステルなどの合成樹脂を用いることができる。また、基材層11には、ガラス板など他の材料を用いることもできる。
【0023】
ベースインク層12は、視覚的に基材層11上で表示物20を認識できるインク(基材層11とは色、透明度合い又は質感が異なるインク)を用いて、基材層11に印刷されている。本実施形態では、ベースインク層12が、基材層11の裏面(インク支持面11a)に直接的に積層されている。ベースインク層12は、表示物20の形状が白抜きとなるようにベタ印刷されている。白抜き領域20rとベースインク層12との境界が、表示物20の輪郭20cとなる。なお、本明細書において、印刷シート10の断面視において、表示物20の輪郭20cを基準にして、ベースインク層12側を「外側」、白抜き領域20r側を「内側」と言う。
【0024】
ベースインク層12の厚みは、例えば3μm以上に設計することができるが、但しこの数値範囲には限定されない。ベースインク層12は2回印刷などにより厚くしてもよい。
【0025】
ベースインク層12のインクには、遮光性を有する不透明インク(着色インクなど)、透光性を有する透明着色インクなどの通常のインク材料を用いることができるし、透明度を調整した透明インクを用いることもできる。ベースインク層12のインクに透明インクを用いる場合に、ベースインク層12の表側面に微細な凹凸を設けることで、表示物20の周囲の質感などを調整することができる。なお、ベースインク層12の代わりに、光反射層15により表示物20を形成してもよい。この内容は変形例として後述する。
【0026】
第1輪郭インク層13は、透明インク又は半透明インクを用いて、基材層11の裏側における白抜き領域20rに印刷されている。平面視において、第1輪郭インク層13は、ベースインク層12に対し隙間Gを存して近接するように表示物20の輪郭20cに沿って線状に延びている。第1輪郭インク層13の両側面13sは、基材層11に近づくに従って広がる斜面となっている。なお、本実施形態では、第1輪郭インク層13は、表示物20の輪郭20cの全長に亘ってベースインク層12に対し隙間Gを存しているが、表示物20の輪郭20cの全長に亘ってベースインク層12に対し隙間Gを存していなくてもよく、ベースインク層12に接触する箇所があってもよい。この接触箇所は、意図的な設計により設けてもよいし、印刷精度が低い場合に生じることもある。
【0027】
印刷シート10を厚さ方向に見た時に、第1輪郭インク層13はベースインク層12に近接している。第1輪郭インク層13とベースインク層12との距離(インク支持面11aにおける距離)dは、表示物(文字など)の大きさにより調整される。また、第1輪郭インク層13の幅も、表示物20の大きさ、又は、表示物20を描く線の太さにより調整される。なお、本実施形態では、第1輪郭インク層13の厚みは、ベースインク層12の厚みよりも大きいが、ベースインク層12の厚み以下にしてもよい。
【0028】
第2輪郭インク層14は、透明インク又は半透明インクを用いて、基材層11の裏側においてベースインク層12と白抜き領域20rに跨るように印刷されている。平面視において、第2輪郭インク層14は、表示物20の輪郭20cに沿って第1輪郭インク層13よりも太い線幅で線状に延びている。
【0029】
断面視において、第2輪郭インク層14は、ベースインク層12の端部を被覆すると共に、第1輪郭インク層13の全幅に亘って第1輪郭インク層13を被覆している。第2輪郭インク層14は、隙間Gの部分に充填され、隙間Gの部分で基材層11に接触し、第1輪郭インク層13の内側でも基材層11に接触している。第2輪郭インク層14の両側面は、基材層11に近づくに従って広がる斜面となっている。第2輪郭インク層14の幅は、第1輪郭インク層13の幅よりも大きい。
【0030】
第2輪郭インク層14は、第1輪郭インク層13の両側面13sに接触している。断面視において、第1輪郭インク層の両側面13sには、両側面13sを被覆する第2輪郭インク層14との境界面18が形成されている。境界面18は、断層のように斜めに延びている。
【0031】
第1輪郭インク層13及び第2輪郭インク層14の各インクには、透明インク、輪郭インク層の機能を損なわない範囲で透明性を低下させた半透明のインク、又は、薄く着色された着色透明インクなどを用いることができる。第1輪郭インク層13及び第2輪郭インク層14の各インクには、無色透明のメジウム材料が配合された透明メジウムインク、又は、シリカなどのマットメジウムを配合した、つや消し状のマットインクを用いることもできる。なお、メジウムインクは、メジウムの配合量を変えることで、インクの粘度を調整できるため、幅が狭いインク層の形成に適している。なお、第1輪郭インク層13と第2輪郭インク層14で同じインクを用いてもよいし、異なるインクを用いてもよい。
【0032】
光反射層15は、光沢インク、反射性インク又はハーフミラーインクなどの光反射性のインクを用いて、基材層11の裏側において白抜き領域20r、第1輪郭インク層13及び第2輪郭インク層14を被覆するように印刷されている。光反射層15は、ベースインク層12の内側部分も被覆している。光反射性のインクの選択肢には、例えばメタリック粒子インク、パール反射インクなども含まれる。本実施形態では、光反射層15が、白抜き領域20r及びその少し外側まで被覆するように積層されているが、光反射層15は、基材層11の裏側の全面に積層してもよい。また光反射層15のインクには、例えば遮光性を有するものを用いることができる。光反射層15は、白抜き領域20r、第1輪郭インク層13又は第2輪郭インク層14を表側から通過した光を反射して、表側に戻すことで、表示物20に立体感やエッジ感、光沢感を付与するなどの装飾効果を付与する。
【0033】
なお、本実施形態では、断面視において光反射層15が概ね一定の厚みで形成されており、印刷シート10の裏面が凹凸を有するが、印刷シート10の裏面が平坦面となるように光反射層15を形成してもよい。また、印刷シート10は、光反射層15の裏面を被覆する保護層を有していてもよい。また、光反射層15は、インクを用いずに、メッキ、金属箔(箔のホットスタンプなど)又は蒸着膜(蒸着フィルムなど)などにより構成してもよい。
【0034】
[印刷シートの製造方法について]
印刷シート10の製造には、スクリーン印刷などの通常の印刷技術を用いることができる。例えば、シルクスクリーン印刷法を用いることができる。印刷の順番としては、例えば、ベースインク層12の印刷、第1輪郭インク層13の印刷、第2輪郭インク層14の印刷、光反射層15の印刷の順番で、印刷シート10を製造することができる。
【0035】
[実施形態の用途、効果等]
本実施形態に係る印刷シート10は、人が表側から視認される表示物20として、文字、数字、記号、図形、模様パターン又は具象画などを設けるものに適用することができる。例えば、印刷シート10は、電気製品など装置の外面や、器具の外面に取り付けられる印字プレートや銘板に用いることができる。なお、ベースインク層12と光反射層15を比較して光反射層15の方が高輝度である本実施形態では、表示物20が立体的に隆起したように視認される。
【0036】
本実施形態では、断面視における第1輪郭インク層13の両側面13sに、その両側面13sを被覆する第2輪郭インク層14との境界面18が形成されている。ここで、第1輪郭インク層13は、ベースインク層12に対し隙間Gを存するように線状に延びている。そのため、第1輪郭インク層13の両側面13sにおける境界面18は、ベースインク層12に遮蔽されることなく、印刷シート10の表側から視認可能である。従って、従来は、第1輪郭インク層の片方の側面だけに、表示物の輪郭に装飾効果を付与する境界面が形成されていたのに対し、本実施形態では、第1輪郭インク層13の両側面13sに、表示物20の輪郭20cに装飾効果を付与する境界面18が形成され、従来とは異なる新規な装飾となる。本実施形態によれば、文字等の表示物20が表現された印刷シート10において、表示物20の輪郭20cへの装飾として新規な装飾を実現することができる。
【0037】
本実施形態では、第2輪郭インク層14が、第1輪郭インク層13と共にベースインク層12も被覆するため、表示物20の輪郭20c近傍には、第1輪郭インク層13及び第2輪郭インク層14以外の装飾層が存在しない。そのため、第1輪郭インク層13及び第2輪郭インク層14による装飾効果を効果的に輪郭20cに付与することができる。
【0038】
本実施形態では、断面視において、第2輪郭インク層14の幅方向の中心が、第1輪郭インク層13の幅方向の中心よりもベースインク層12側(外側)に位置する。そのため、白抜き領域20rにおいて過度な装飾となることを抑制しつつ、印刷精度が低い場合でもベースインク層12にオーバーラップする幅が確保されるようにしている。
【0039】
<実施形態の第1変形例>
本変形例は、基材層11とは反対側が、表側となる印刷シート50である。表示物20は、表側から視認可能である。図3に示すように、ベースインク層12の裏側には、光反射層35が設けられている。光反射層35は、実施形態の光反射層15と同じ材料を用いて、印刷などに形成することができる。また、光反射層35を印刷により設けずに、片面が鏡面となる鏡面基材35,11を用いてもよい。鏡面基材としては、例えば片面に蒸着フィルム35が積層された基材などを用いることができる。光反射層35の表側には、ベースインク層12、第1輪郭インク層13及び第2輪郭インク層14が印刷されている。光反射層35は、白抜き領域20r、ベースインク層12、第1輪郭インク層13及び第2輪郭インク層14を裏側から被覆している。
【0040】
また、印刷シート50は、表側を被覆する透明インク層(例えば保護層)19を備えている。光反射層35の配置及び透明インク層19以外の構成は、図2に示す実施形態と同じである。図3には、実施形態と同一構成には、同一の符号を付している。なお、透明インク層19は省略してもよい。また、基材層11は、透明性を有しなくてもよい。また、基材層11の裏側に、粘着剤又は接着剤により構成された接着層を設けてもよい。
【0041】
本変形例に係る印刷シート50を表側から見ると、立体的に隆起したように表示物20が視認される。また、実施形態と同様に、第1輪郭インク層13の両側面13sにおける境界面18によって、表示物20の輪郭20cには装飾効果が付与される。
【0042】
<実施形態の第2変形例>
本変形例では、印刷シート51が、図4に示すように、光反射層15の裏側に積層された接着層31を備えている。接着層31は、接着剤又は粘着剤により構成されている。接着層31の裏面は、剥離性を有するシート32(剥離紙など)により被覆されている。接着層31及びシート32以外の構成は、図2に示す実施形態と同じである。図4には、実施形態と同一構成には、同一の符号を付している。
【0043】
本変形例に係る印刷シート51は、シート32を剥がして、接着層31によって任意の物品に対し印刷シート51を貼り付けることができる。印刷シート51は、シールやステッカーとして用いることができる。
【0044】
<実施形態の第3変形例>
本変形例では、印刷シート52が、転写シートとして構成されている。印刷シート52は、図5(a)に示すように、ベースインク層12及び光反射層15の裏側に積層された接着層31を備えている。接着層31は、第2変形例と同様に、接着剤又は粘着剤により構成されている。
【0045】
また、基材層36としては、第1基材層41と、第1基材層41を剥がすことができるように、剥離性を有する第2基材層42とを有するものが用いられている。第1基材層41には、実施形態の基材層11と同じものを用いることができるし、グラシン紙などの紙、OPPフィルム、ポリエステルフィルムなどの合成樹脂フィルムを用いることもできる。第2基材層42には、カルナバワックスなどの植物ワックス、パラフインワックスなど合成樹脂のワックスを用いることができる。第2基材層42の裏面は、インク支持面36aを構成する。接着層31及び基材層36以外の構成は、図2に示す実施形態と同じである。図5(a)には、実施形態と同一構成には、同一の符号を付している。
【0046】
本変形例に係る印刷シート52は、熱転写などの手法で、衣類の布地、日用品の外面、装置又は器具の外装などの物品40に対し、印刷シート52の表示物20を転写することができる。熱転写の場合、物品40に対し、接着層31によって印刷シート52を貼り付けた状態で、加熱及び加圧を行うことで第1基材層41を剥がす。その結果、図5(b)に示すように、印刷シート52のうち第1基材層41以外の転写対象部25が、物品40に転写される。表示物20は、物品40の表側から視認可能である。
【0047】
なお、物品では、物品40の表面がインク支持面40aを構成する。光反射層15は、接着層31を介して物品40の表面に積層され、ベースインク層12の内側部分、第1輪郭インク層13、及び、第2輪郭インク層14は、光反射層15に積層されている。
【0048】
<実施形態の第4変形例>
本変形例では、印刷シート53が、水転写シートとして構成されている。印刷シート52は、図6に示すように、第3変形例と同様に、光反射層15の裏側に接着層31が積層されている。接着層31の裏面は、剥離性を有するシート32(剥離紙など)により被覆されている。
【0049】
接着層31は、水に浸漬させると粘着性を発現する水性感圧接着層である。本変形例に係る印刷シート53は、水転写によって樹脂などの成型品に対して、表示物20を含む転写対象部25を貼り付けることができる。なお、シート32は、水転写の際に剥離する。また基材層11には柔軟なフィルムが用いられる。
【0050】
<実施形態の第5変形例>
本変形例は、表示物20が形成された積層体54を有する物品40である。物品40には、転写ではなく、印刷によって表示物20が付加されている。光反射層35が物品40に積層されている以外の構成は、図3に示す第1変形例と同じである。図7は、実施形態又は第1変形例と同一構成には、同一の符号を付している。
【0051】
物品40は、図7に示すように、物品40の表面(インク支持面40a)に積層された光反射層35と、光反射層35に積層され、積層方向に視認される表示物20を形成するベースインク層(主インク層)12と、透明又は半透明のインクにより構成されて、光反射層35のベースインク層12側に積層された層であって、ベースインク層12に対し隙間Gを存するように表示物20の輪郭20cに沿って線状に延びる第1輪郭インク層13と、透明又は半透明のインクにより構成されて、第1輪郭インク層13を被覆するように光反射層35のベースインク層12側に積層された層であって、表示物20の輪郭20cに沿って第1輪郭インク層13よりも太い線幅で線状に延びる第2輪郭インク層14とを備え、断面視における第1輪郭インク層13の両側面13sには、該両側面13sを被覆する第2輪郭インク層14との境界面18が形成されている。両側面13sの境界面18は、積層体の表側から視認可能である。
【0052】
<実施形態の第6変形例>
本変形例は、図8に示すように、上述の実施形態におけるベースインク層12の箇所に、光反射層15が設けられた印刷シート55である。表示物20を形成する主インク層は、光反射層15である。
【0053】
本変形例では、第1輪郭インク層13及び第2輪郭インク層14の形成後に、光反射層15が形成される。光反射層15を印刷により形成する場合は、光反射層15は、これらの輪郭インク層13,14を被覆し、且つ、表示物20の形状が白抜きとなるようにベタ印刷されている。なお、左右の第2輪郭インク層14の外端の間が、表示物20として視認される。第2輪郭インク層14の外端の位置が、表示物20の輪郭20cとなる。光反射層15の形成後は、白抜き領域20rを覆うように、光反射層15よりも低輝度の装飾インク層16が形成される。本変形例では、表示物20の色調を構成する装飾インク層16が、高輝度の光反射層15に囲まれることで表示物20が凹んで見える。なお、装飾インク層16を省略してもよい。この場合、表示物20は、基材層11の色調で視認される。また、基材層11の部分が物品40であってもよい。
【0054】
<実施形態の第7変形例>
本変形例は、図9に示すように、上述の実施形態からベースインク層12が省略された印刷シート56である。この場合、光反射層15が、表示物20を形成する主インク層を構成している。
【0055】
<その他の実施形態>
上述の実施形態では、表示物20の形成方法について、表示物20の形状が白抜きとなるようにベタ印刷を行ったが、基材層11にベースインク層12のインクでベタ印刷を行った後に、レーザー等によって表示物20に相当する領域を除去してもよい。
【0056】
上述の実施形態において、白抜き領域20rに、インク層又は模様層などの装飾層を設けてもよい。
【0057】
上述の実施形態において、第1輪郭インク層13のインクに、UV硬化インクを用いてもよい。この場合、印刷の直後にUV照射がなされて、第1輪郭インク層13が硬化する。また、第1輪郭インク層13は、印刷ではなく、成形型を用いて形成してもよい。この場合に、第1輪郭インク層13の両側面13sを基材層11に対し略垂直にすることもできる。
【0058】
上述の実施形態において、第2輪郭インク層14のインクに、UV硬化インクを用いてもよい。この場合、印刷の直後にUV照射がなされて、第2輪郭インク層14が硬化する。また、第2輪郭インク層14は、印刷ではなく、成形型を用いて形成してもよい。この場合に、第2輪郭インク層14の両側面を基材層11に対し略垂直にすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、文字等の表示物を表現するための積層体等に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 印刷シート10
11 基材層
11a インク支持面
12 ベースインク層(主インク層)
13 第1輪郭インク層13
14 第2輪郭インク層14
15 光反射層
18 境界面
20 表示物
20c 輪郭
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9