(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041554
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】光ファイバセンサの貫通構造及びガス化装置
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20240319BHJP
G02B 6/46 20060101ALI20240319BHJP
C10J 3/46 20060101ALI20240319BHJP
C10J 3/48 20060101ALI20240319BHJP
G01K 11/32 20210101ALI20240319BHJP
G01D 5/353 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G01K1/14 B
G02B6/46 301
C10J3/46 M
C10J3/48
G01K1/14 J
G01K11/32 Z
G01D5/353 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146431
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂
(72)【発明者】
【氏名】中野 要治
(72)【発明者】
【氏名】森 真一郎
【テーマコード(参考)】
2F056
2F103
2H038
【Fターム(参考)】
2F056CB05
2F103BA43
2F103BA49
2F103CA03
2F103CA04
2F103CA06
2F103EB01
2F103EB11
2F103EB19
2F103EC09
2F103GA07
2F103GA14
2F103GA15
2F103GA16
2H038AA02
2H038AA07
2H038AA12
2H038CA42
2H038CA46
(57)【要約】
【課題】光ファイバを容易に設置、交換可能な光ファイバセンサの貫通構造及びガス化装置を提供する。
【解決手段】第1空間と前記第1空間よりも内部の温度が高い第2空間の間を仕切る隔壁を貫通する光ファイバセンサの貫通構造であって、上記隔壁を貫通する貫通孔に挿通される少なくとも1本の光ファイバと、少なくとも1本の光ファイバを挿通させる金属シール管と、少なくとも1本の光ファイバの一端部が接続される接続部を有する光ファイバコネクタと、金属シール管を挿通させる挿通孔を有し、挿通孔に挿入された金属シール管を着脱可能に支持するように構成された継手部材と、を備え、継手部材の挿通孔は、光ファイバコネクタを挿通可能な大きさに形成された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間と前記第1空間よりも内部の温度が高い第2空間の間を仕切る隔壁を貫通する光ファイバセンサの貫通構造であって、
前記隔壁を貫通する貫通孔に挿通される少なくとも1本の光ファイバと、
前記少なくとも1本の光ファイバを挿通させる金属シール管と、
前記少なくとも1本の光ファイバの一端部が接続される接続部を有する光ファイバコネクタと、
前記金属シール管を挿通させる挿通孔を有し、前記挿通孔に挿入された前記金属シール管を着脱可能に支持するように構成された継手部材と、を備え、
前記継手部材の前記挿通孔は、前記光ファイバコネクタを挿通可能な大きさに形成された、
光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項2】
前記継手部材は、
前記金属シール管を挿通させる第1挿通孔を有する継手本体と、
前記金属シール管を挿通させる第2挿通孔及び前記継手本体に螺合する螺合部を有するナット部材と、を少なくとも含む、
請求項1に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項3】
前記継手本体は、前記第1空間に配置され、前記第1挿通孔の延在方向における一方側の端部が前記隔壁に接続された、
請求項2に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項4】
前記第1空間に配置され、前記継手本体の前記第1挿通孔の延在方向における一方側の端部に一端が接続され、前記隔壁に他端が接続された金属延長管をさらに備える、
請求項2に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項5】
前記金属延長管の内部に配置され、前記少なくとも1本の光ファイバを着脱可能に中継する中継コネクタをさらに備える、
請求項4に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項6】
前記金属シール管に一端が接続され、前記少なくとも1本の光ファイバの軸方向における少なくとも一部を被覆する被覆管であって、前記被覆管の周方向に沿って延びる山部及び谷部を前記被覆管の軸方向に沿って交互に有するようなフレキシブルな被覆管をさらに備える、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項7】
前記第2空間の内部に配置され、前記少なくとも1本の光ファイバの円形状又は楕円形状に巻回した余長部分を収納可能に構成された中継箱をさらに備える、
請求項6に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項8】
前記少なくとも1本の光ファイバは、余長部分を有するように前記被覆管の内部に挿入されている、
請求項6に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項9】
前記金属シール管の内部に前記金属シール管との間に隙間を介して配置され、前記少なくとも1本の光ファイバを挿通させる少なくとも1本の内側金属管をさらに備える、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項10】
前記少なくとも1本の内側金属管は、前記金属シール管にロウ付けされている、
請求項9に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項11】
前記少なくとも1本の内側金属管は、前記内側金属管の少なくとも一方の端部に前記金属シール管が周方向溶接された溶接部を有する、
請求項9に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項12】
前記少なくとも1本の内側金属管は、各々が前記少なくとも1本の光ファイバを挿通させる複数本の内側金属管を含む、
請求項9に記載の光ファイバセンサの貫通構造。
【請求項13】
炭素含有固体燃料を部分燃焼させてガス化させるように構成されたガス化装置であって、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の光ファイバセンサの貫通構造と、
ガス化炉が内側に設置された圧力容器の内部に形成される前記第2空間と前記圧力容器の外部に形成される前記第1空間を仕切る前記隔壁と、を備える、
ガス化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバセンサの貫通構造及び該光ファイバセンサの貫通構造を備えるガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素含有固体燃料のガス化を行うように構成されたガス化炉とガス化炉を覆う圧力容器との二重構造のガス化装置が知られている(特許文献1参照)。従来、ガス化炉の内部と外部を仕切る炉壁の一部を構成する炉壁管の温度変動を評価するために、圧力容器壁よりも内側にコーダル熱電対を設置することがある。ガス化炉全体の温度変動を適切に把握することは、安定運転のために重要であるが、コーダル熱電対を多数設置することは、設置工期、コスト、ポート上限数の制約から、現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多点計測には、1本の光ファイバにより多点計測が可能な光ファイバセンサが上述したコーダル熱電対よりも好ましい。しかしながら、炉壁を計測する光ファイバセンサを設けるためには、比較的高温高圧の圧力容器内から気密性を確保しつつ、光ファイバを取り出す光ファイバセンサの貫通構造が必要となる。そして、光ファイバセンサは、比較的損傷し易い。このため、上記光ファイバセンサの貫通構造は、光ファイバを容易に設置できる構造であり、光ファイバの損傷時等において光ファイバを容易に取り換えできる構造が望まれる。
【0005】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、光ファイバを容易に設置、交換可能な光ファイバセンサの貫通構造及びガス化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る光ファイバセンサの貫通構造は、
第1空間と前記第1空間よりも内部の温度が高い第2空間の間を仕切る隔壁を貫通する光ファイバセンサの貫通構造であって、
前記隔壁を貫通する貫通孔に挿通される少なくとも1本の光ファイバと、
前記少なくとも1本の光ファイバを挿通させる金属シール管と、
前記少なくとも1本の光ファイバの一端部が接続される接続部を有する光ファイバコネクタと、
前記金属シール管を挿通させる挿通孔を有し、前記挿通孔に挿入された前記金属シール管を着脱可能に支持するように構成された継手部材と、を備え、
前記継手部材の前記挿通孔は、前記光ファイバコネクタを挿通可能な大きさに形成された。
【0007】
本開示の一実施形態に係るガス化装置は、
炭素含有固体燃料を部分燃焼させてガス化させるように構成されたガス化装置であって、
前記光ファイバセンサの貫通構造と、
ガス化炉が内側に設置された圧力容器の内部に形成される前記第2空間と前記圧力容器の外部に形成される前記第1空間を仕切る前記隔壁と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、光ファイバを容易に設置、交換可能な光ファイバセンサの貫通構造及びガス化装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る光ファイバセンサの貫通構造の概略断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る金属シール管の長手方向に沿った概略断面図である。
【
図3】比較例に係る光ファイバセンサの貫通構造の概略断面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る光ファイバセンサの貫通構造の概略断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る光ファイバセンサの貫通構造の概略断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る光ファイバセンサの貫通構造の概略断面図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る光ファイバセンサの貫通構造の概略断面図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る光ファイバセンサの貫通構造の概略断面図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る金属シール管の長手方向に沿った概略断面図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係る金属シール管の長手方向に沿った概略断面図である。
【
図11】本開示の一実施形態に係る金属シール管の長手方向に沿った概略断面図である。
【
図12】
図11に示される金属シール管の長手方向に直交する断面を示す概略断面図である。
【
図13】本開示の一実施形態に係るガス化装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
(光ファイバセンサの貫通構造)
図1、
図4~
図8の各々は、本開示の一実施形態に係る光ファイバセンサの貫通構造1の概略断面図である。幾つかの実施形態に係る光ファイバセンサの貫通構造1は、
図1、
図4~
図8に示されるように、第1空間21と第1空間21よりも内部の温度が高い第2空間22の間を仕切る隔壁23を貫通するものである。第2空間22は、第1空間21よりも内部の圧力も高い。
【0012】
(隔壁)
図示される実施形態では、上述した隔壁23は、圧力容器2の内部に形成された第2空間22と、圧力容器2の外部に形成された第1空間21を仕切る圧力容器壁を含む。圧力容器2は、隔壁23(圧力容器壁)の内面により、その内部に第2空間22が形成されている。圧力容器2の外部には、第2空間22との間に隔壁23を挟んで第1空間21が形成されている。図示される実施形態では、圧力容器2の内側には、ガス化炉20(
図13参照)が設置されている。このガス化炉20は、ガス化炉20に導かれる炭素含有固体燃料(例えば、石炭)を部分燃焼させてガス化させるように構成されている。ガス化炉20を駆動させ、炭素含有固体燃料を部分燃焼させることで、ガス化炉20内が高温となり、ガス化炉20の外部と内部を仕切るガス化炉壁28(
図13参照)の伝熱により、第2空間22の内部の温度が、第1空間21の内部の温度よりも高くなる。また、第2空間22の内部の圧力は、第1空間21の内部の圧力よりも高く保たれている。なお、本開示の圧力容器2は、第1空間21と第2空間22とを仕切る隔壁23(圧力容器壁)を有していればよく、圧力容器2の内側にガス化炉20が設置されない場合にも適用可能である。
【0013】
或る実施形態では、第2空間22の内部の温度は、300℃以上の高温になっている。第2空間22の内部の圧力は、1MPa以上の高圧になっている。第1空間21の内部の温度は、常温(大気温度)になっており、第1空間21の内部の圧力は、常圧(大気圧)になっている。なお、本開示の隔壁23は、第1空間21と第2空間22の間を仕切るものであればよい。隔壁23は、比較的高温高圧の流体を収納する第2空間22が内部に形成された収納装置(例えば、収納タンク)の内部と外部を仕切る隔壁等であってもよい。
【0014】
図示される実施形態では、隔壁23は、
図1、
図4~
図8に示されるように、第1空間21と第2空間22の間を仕切る隔壁本体231と、隔壁本体231から第1空間21側に突出し、その内面により貫通孔24を形成する筒状の突出部232と、突出部232の先端部(第1空間21側の端部)から外周側(突出部232の径方向における外側)に突出するフランジ部233と、フランジ部233に締結部材26を介して締結され、貫通孔24を封止する板状の封止部材25と、を含む。隔壁23は、隔壁本体231の外面(第1空間21に面する面)に取り付けられる断熱材27をさらに含んでもよい。図示される実施形態では、断熱材27は、第1空間21に配置され、突出部232、フランジ部233、締結部材26及び封止部材25を被覆するようになっている。断熱材27により、隔壁本体231を介した第2空間22から第1空間21への熱移動を低減できる。
【0015】
図示される実施形態では、締結部材26は、フランジ部233に形成された貫通孔234及び封止部材25の外周部に形成された貫通孔251を挿通するボルト26Aと、ボルト26Aに螺合し、ボルト26Aとの間にフランジ部233及び封止部材25の外周部を挟持するナット26Bと、を含む。封止部材25は、貫通孔24よりも孔径が小さい中心孔(貫通孔)252が形成された環状板からなる。貫通孔24及び封止部材25の中心孔252を介して第1空間21と第2空間22とが連通している。
【0016】
光ファイバセンサの貫通構造1は、
図1、
図4~
図8に示されるように、隔壁23を貫通する貫通孔24に挿通される少なくとも1本の光ファイバ3と、少なくとも1本の光ファイバ3を挿通させる金属シール管4と、少なくとも1本の光ファイバ3の一端部が接続される接続部(第1接続部)51を有する光ファイバコネクタ5と、を備える。
【0017】
(光ファイバ、光ファイバセンサ)
光ファイバ3は、光信号を伝送するための伝送路である。光ファイバ3は、比較的屈折率の高いコアを比較的屈折率の低いクラッドにより覆う同心円状の構造を有し、光(光信号)をコアの内部に閉じこめられた状態で伝搬するようになっている。光ファイバ3は、石英ガラス、フッ化物ガラス、カルコゲナイドガラス、又はプラスチック等により形成される細い繊維状の物質からなる。
【0018】
光ファイバ3は、貫通孔24及び封止部材25の中心孔252を挿通している。光ファイバ3の長手方向の一方側(第2空間22側)には、センシング部31が設けられる。センシング部31は、センシング部31が配置された第2空間22(測定環境)の状態の変化により光が変化する性質を利用して、第2空間22(測定環境)の状態を取得するようになっている。センシング部31は、光ファイバ3のコア中に存在する検出素子(FBG)であってもよく、光ファイバ3と一体に構成されていてもよい。また、センシング部31は、光ファイバ3とは別体であり、光ファイバ3の長手方向の一方側(第2空間22側)の端部に着脱可能に接続されていてもよい。
【0019】
光ファイバ3の長手方向の他方側(第1空間21側)の端部32は、光ファイバコネクタ5の第1接続部51に接続される。光ファイバセンサは、センシング部31を含む光ファイバ3と、光信号を送受信可能に構成された計測器10と、を備える。計測器10は、光の照射部(光源)101と、光の受光部(受光素子)102と、を含む。図示される実施形態では、光ファイバセンサは、上述した光ファイバコネクタ5と、光ファイバコネクタ5の第2接続部52に一端側が接続され、他端側が計測器10に接続された中継用光ファイバ11をさらに備える。なお、光ファイバコネクタ5を計測器10に接続してもよく、この場合には、光ファイバセンサは、中継用光ファイバ11を備えていなくてもよい。
【0020】
照射部101から照射された光は、中継用光ファイバ11、光ファイバコネクタ5や光ファイバ3を介してセンシング部31に導かれる。センシング部31に導かれた光は、第2空間22(測定環境)の状態の変化に応じて変化する。センシング部31から第2空間22(測定環境)の状態の変化に応じて変化した反射光は、光ファイバ3、光ファイバコネクタ5や中継用光ファイバ11を介して受光部102に導かれる。計測器10は、センシング部31が配置された第2空間22(測定環境)の状態の変化(例えば、歪変化又は温度変化の少なくとも一方)を、センシング部31から受光部102に導かれた反射光の変化(例えば、反射光の波長の変化)として検出するようになっている。
【0021】
(金属シール管)
金属シール管4は、金属材料から形成されており、外面41と内面42とを有する筒状に形成されている。金属シール管4の内面42は、少なくとも1本の光ファイバ3を緩く挿通させる挿通孔を形成するようになっており、金属シール管4の内面42と光ファイバ3の外面との間に隙間43が形成されている。光ファイバ3は、センシング部31と上記他方側(第1空間21側)の端部32との間に金属シール管4に挿入される部分である挿入部33を有する。図示される実施形態では、金属シール管4は、金属シール管4の長手方向に直交する断面において外面41及び内面42の輪郭形状が円形状に形成された円筒状に形成されている(
図12参照)。
【0022】
図2は、本開示の一実施形態に係る金属シール管4の長手方向に沿った概略断面図である。幾つかの実施形態では、
図2に示されるように、金属シール管4の内部には、上述した隙間43に充填され、金属シール管4の内部を封止するシール部材43Aが配置されている。シール部材43Aは、金属シール管4の内面42に当接するとともに、光ファイバ3の外面に当接するようになっている。シール部材43Aは、300℃以上の高温に適用可能な金属、セラミックス又は樹脂材料から形成されている。シール部材43Aにより、金属シール管4の上記挿通孔を封止することで、金属シール管4の上記挿通孔を介した流体の流通(漏れ)を抑制できる。
【0023】
(継手部材)
光ファイバセンサの貫通構造1は、
図1、
図4~
図8に示されるように、継手部材6をさらに備える。継手部材6は、金属シール管4を挿通させる挿通孔63、64を有し、挿通孔63、64に挿入された金属シール管4を着脱可能に支持するように構成されている。継手部材6の挿通孔63及び挿通孔64は、光ファイバコネクタ5を挿通可能な大きさに形成されている。また、継手部材6の挿通孔63及び挿通孔64は、センシング部31を挿通可能な大きさに形成されている。
【0024】
継手部材6は、挿通孔63、64に挿入された金属シール管4を支持する際に、挿通孔63又は挿通孔64の少なくとも一方と、金属シール管4の外面41と、の間を封止するように構成されている。継手部材6により、挿通孔63又は挿通孔64の少なくとも一方を封止することで、挿通孔63、64を介した流体の流通(漏れ)を抑制できる。
【0025】
(比較例に係る継手部材)
図3は、比較例に係る光ファイバセンサの貫通構造01の概略断面図である。比較例に係る光ファイバセンサの貫通構造01は、
図3に示されるように、上述した少なくとも1本の光ファイバ3と、上述した金属シール管4と、上述した光ファイバコネクタ5と、継手部材06と、を備える。継手部材06は、光ファイバ3を挿通させる挿通孔063を有する継手本体061と、金属シール管4を挿通させる挿通孔64を有するナット部材62と、を含む。継手本体061の挿通孔063は、金属シール管4及び光ファイバコネクタ5を挿通可能な大きさに形成されていない。
【0026】
比較例に係る光ファイバセンサの貫通構造01では、光ファイバ3の設置作業(新設作業)や、光ファイバ3が損傷した場合等における光ファイバ3の交換作業が困難なものとなる虞がある。具体的には、光ファイバ3を設置、交換する際に、金属シール管4や光ファイバコネクタ5に取り付けられていない、単体の光ファイバ3を継手部材06の挿通孔063、64を挿通させた後に、金属シール管4や光ファイバコネクタ5に取り付ける作業が必要となる。光ファイバ3を金属シール管4に取り付ける際には、光ファイバ3と金属シール管4との間にシール部材43Aを充填する作業も必要となる。
【0027】
上記の構成によれば、光ファイバセンサの貫通構造1は、隔壁23を貫通する貫通孔24に挿通される少なくとも1本の光ファイバ3により、比較的高温の第2空間22から比較的低温の第1空間21に光ファイバ3が伝送する光信号(反射光)を取り出すことができる。光ファイバセンサの貫通構造1は、金属シール管4及び継手部材6により、貫通孔24を介した第1空間21と第2空間22との間の流体の流通(漏れ)を抑制できる。
【0028】
また、上記の構成によれば、光ファイバセンサの貫通構造1は、継手部材6の挿通孔63、64を、金属シール管4及び光ファイバコネクタ5を挿通可能な大きさに形成することで、光ファイバ3が取り付けられた金属シール管4や光ファイバコネクタ5を、挿通孔63、64の内部を通過させることができる。この場合には、比較例に係る光ファイバセンサの貫通構造01のように、金属シール管4や光ファイバコネクタ5に取り付けられていない、単体の光ファイバ3を継手部材06の挿通孔063、64を挿通させた後に、金属シール管4や光ファイバコネクタ5に取り付けなくて良い。このような光ファイバセンサの貫通構造1は、光ファイバ3を容易に設置(新設)可能であり、且つ光ファイバ3が損傷した場合等において光ファイバ3を容易に交換可能である。
【0029】
(継手本体、ナット部材)
幾つかの実施形態では、上述した継手部材6は、
図1、
図4~
図8に示されるように、金属シール管4を挿通させる第1挿通孔63を有する継手本体61と、金属シール管4を挿通させる第2挿通孔64及び継手本体61に螺合する螺合部66を有するナット部材62と、を少なくとも含む。継手本体61は、ナット部材62の螺合部66に螺合する螺合部65を有する。継手本体61及びナット部材62の各々は、金属材料から形成されている。
【0030】
継手本体61は、その内面により形成された第1挿通孔63の延在方向に沿って長手方向を有する筒状に形成されている。ナット部材62は、その内面により形成された第2挿通孔64の延在方向に沿って長手方向を有する筒状に形成されている。
【0031】
図示される実施形態では、継手本体61の長手方向における貫通孔24から離れた側の端部(一端部)の外面に螺合部(ネジ部)65が形成されている。ナット部材62の長手方向における貫通孔24側の端部(一端部)の内面に螺合部(ネジ部)66が形成されている。継手本体61の螺合部65にナット部材62の螺合部66を螺合させることで、継手本体61の螺合部65が形成された上記一端部に生じる内周側(継手部材6の径方向における内側)に向かう付勢力により、継手本体61の上記一端部の内面が金属シール管4の外面に押し付けられる。これにより、継手本体61と金属シール管4の間が封止される。
【0032】
なお、上述した継手部材6は、継手本体61の螺合部65とナット部材62の螺合部66の螺合により生じる上記付勢力により、継手本体61又はナット部材62の少なくとも一方の内面と、金属シール管4の外面との間を封止する不図示のシール部材をさらに含んでいてもよい。この不図示のシール部材は、樹脂材料から形成されていてもよい。
【0033】
上記の構成によれば、ナット部材62の螺合部66を継手本体61に螺合させることで、第1挿通孔63及び第2挿通孔64に挿通された金属シール管4を継手部材6により支持できる。また、継手本体61とナット部材62の螺合を解除することで、継手部材6から金属シール管4を容易に取り外すことができる。このような継手部材6を備える光ファイバセンサの貫通構造1は、光ファイバ3を容易に設置(新設)可能であり、且つ光ファイバ3が損傷した場合等において光ファイバ3を容易に交換可能である。
【0034】
(継手部材の固定)
幾つかの実施形態では、
図1、
図4~
図6に示されるように、上述した継手本体61は、第1空間21に配置され、継手本体61の長手方向(第1挿通孔63の延在方向)における一方側の端部(貫通孔24側の端部)が隔壁23に接続されている。
【0035】
図示される実施形態では、金属シール管4は、上述した継手部材6の挿通孔63、64及び封止部材25の中心孔252に挿通されている。上述した断熱材27には、継手部材6を緩く挿通させるための挿通孔が形成されている。封止部材25の中心孔252を形成する内面には、中心孔252の貫通方向における少なくとも一部に螺合部(ネジ部)253が形成されている。継手本体61の貫通孔24側の端部の外面に螺合部(ネジ部)253に螺合する螺合部(ネジ部)67が形成されている。封止部材25の螺合部253に、継手本体61の螺合部67が螺合されている。
【0036】
継手本体61は、継手本体61の外面に封止部材25の第1空間21側の面の内周縁(中心孔252の縁)が周方向溶接された溶接部W1を有する。溶接部W1により、継手本体61の貫通孔24側の端部が封止部材25(隔壁23)に固定されている。
【0037】
上記の構成によれば、継手本体61の一方側の端部(貫通孔24側の端部)を隔壁23に接続することで、継手部材6を隔壁23に固定できる。継手本体61を比較的低温の第1空間21に配置することで、比較的高温の第2空間22に配置される場合に比べて、継手部材6や金属シール管4への外部からの入熱を抑制でき、継手部材6や金属シール管4の熱による損傷を抑制できる。
【0038】
(金属延長管)
幾つかの実施形態では、
図7及び
図8に示されるように、上述した光ファイバセンサの貫通構造1は、第1空間21に配置され、継手本体61の第1挿通孔63の延在方向における一方側の端部(貫通孔24側の端部)に一端71(貫通孔24側の端部)が接続され、隔壁23に他端72(貫通孔24から離れた側の端部)が接続された金属延長管7をさらに備える。
【0039】
金属延長管7は、金属シール管4及び光ファイバコネクタ5を挿通可能な大きさに形成された内面を有する筒状に形成されている。図示される実施形態では、金属シール管4は、上述した継手部材6の挿通孔63、64に挿通されており、金属シール管4の貫通孔24側の端部が金属延長管7に挿入されている。上述した断熱材27には、金属延長管7を緩く挿通させるための挿通孔が形成されている。
【0040】
図示される実施形態では、金属延長管7は、上述した一端71を含む第1金属延長管7Aと、第1金属延長管7Aの貫通孔24から離れた側の端部に、貫通孔24側の端部が接続され、且つ上述した他端72を含む第2金属延長管7Bと、を含む。第2金属延長管7Bよりも外面及び内面が大きい。
【0041】
封止部材25の中心孔252を形成する内面には、中心孔252の貫通方向における少なくとも一部に螺合部(ネジ部)253が形成されている。第1金属延長管7A(金属延長管7)の一端71(貫通孔24側の端部)の外面には、螺合部(ネジ部)253に螺合する螺合部(ネジ部)73が形成されている。封止部材25の螺合部253に、第1金属延長管7Aの螺合部73が螺合されている。第1金属延長管7Aは、第1金属延長管7Aの外面に封止部材25の第1空間21側の面の内周縁(中心孔252の縁)が周方向溶接された溶接部W6を有する。溶接部W6により、第1金属延長管7Aの貫通孔24側の端部が封止部材25(隔壁23)に固定されている。
【0042】
第1金属延長管7Aの貫通孔24から離れた側の端部の外面には、螺合部(ネジ部)74が形成されている。第2金属延長管7Bの貫通孔24側の端部の内面には、螺合部74に螺合する螺合部(ネジ部)75が形成されている。第1金属延長管7Aの螺合部74に、第2金属延長管7Bの螺合部75が螺合されている。第1金属延長管7Aは、第1金属延長管7Aの外面に第2金属延長管7Bの貫通孔24側の端面が周方向溶接された溶接部W7を有する。溶接部W7により、第1金属延長管7Aの貫通孔24から離れた側の端部が第2金属延長管7Bの貫通孔24側の端部に固定されている。
【0043】
第2金属延長管7Bの他端72(貫通孔24から離れた側の端部)の内面には、螺合部(ネジ部)76が形成されている。継手本体61の貫通孔24側の端部の外面に螺合部76に螺合する螺合部(ネジ部)67Aが形成されている。第2金属延長管7Bの螺合部76に、継手本体61の螺合部67Aが螺合されている。継手本体61は、継手本体61の外面に第2金属延長管7Bの貫通孔24から離れた側の端面が周方向溶接された溶接部W8を有する。溶接部W8により、継手本体61の貫通孔24側の端部が第2金属延長管7Bの貫通孔24から離れた側の端部に固定されている。以上より、継手本体61の貫通孔24側の端部は、金属延長管7(第1金属延長管7A及び第2金属延長管7B)を介して封止部材25(隔壁23)に固定されている。なお、他の実施形態では、金属延長管7は、外面及び内面の大きさが異なる複数の金属延長管7A、7Bを含まずに、外面及び内面の大きさが長手方向において一定である一本の金属延長管からなるものであってもよい。
【0044】
上記の構成によれば、金属延長管7を介して継手本体61の一方側の端部を隔壁23に接続することで、継手部材6を隔壁23に固定できる。継手本体61は、金属延長管7を介して隔壁23に接続されることで、直接隔壁23に接続される場合に比べて、継手部材6や金属シール管4への外部からの入熱を抑制でき、継手部材6や金属シール管4の熱による損傷を抑制できる。
【0045】
光ファイバセンサの貫通構造1は、金属延長管7を備えることで、封止部材25(隔壁23)と金属シール管4の間の距離Lを大きなものとすることができる。金属延長管7の内部から外部への放熱により金属シール管4に導かれる流体の温度は、第2空間22の内部の温度よりも低温となる。金属延長管7は、上記距離Lが金属シール管4の内部を封止するシール部材43Aの温度が、シール部材43Aの耐熱温度以下を維持できる長さとなるように設定されている。
【0046】
或る実施形態では、第2空間22の内部の温度は、300℃以上の高温になっている。第2空間22の内部の圧力は、1MPa以上の高圧になっている。第1空間21の内部の温度は、常温(大気温度)になっており、第1空間21の内部の圧力は、常圧(大気圧)になっている。金属延長管7の外面の大きさ(外径)は、0.5インチ以上1インチ以下である。この場合には、上記距離Lが0.2m以上の長さがあれば、シール部材43Aの温度を耐熱温度以下に維持できる。なお、金属延長管7の内部に流体(高温ガス)の流れを阻害する絞り部等を配置することで、上記距離Lを短くすることができる。
【0047】
(中継コネクタ)
幾つかの実施形態では、上述した光ファイバセンサの貫通構造1は、
図8に示されるように、金属延長管7の内部に配置され、少なくとも1本の光ファイバ3を着脱可能に中継する中継コネクタ13をさらに備える。
【0048】
中継コネクタ13は、光ファイバ3が着脱可能に接続される第1接続部131と、第1接続部131に接続される光ファイバ3とは異なる光ファイバ3が着脱可能に接続される第2接続部132と、を含む。中継コネクタ13は、第1接続部131に接続された光ファイバ3と、第2接続部132に接続された光ファイバ3との間で光を伝達するようになっている。光ファイバ3の各々は、第1接続部131に一端が接続された第1光ファイバ3Aと、第2接続部132に一端が接続された第2光ファイバ3Bと、を含む。第1光ファイバ3Aには、上述したセンシング部31が設けられている。第2光ファイバ3Bの他端は、光ファイバコネクタ5の第1接続部51に接続されている。
【0049】
上記の構成によれば、金属延長管7の内部から外部(第1空間21)への放熱により、金属延長管7の内部の温度は、第2空間22内の温度よりも低くなる。金属延長管7の内部の温度を中継コネクタ13の耐熱温度(具体的には、中継コネクタ13の内部において接着に用いられる接着剤の耐熱温度)よりも下げることで、金属延長管7の内部に中継コネクタ13を配置することが可能となる。中継コネクタ13を金属延長管7の内部に配置することで、中継コネクタ13に接続される少なくとも1本の光ファイバ3に断線や信号異常発生等の異常が生じた場合等において、光ファイバ3を容易に交換可能である。第1光ファイバ3A又は第2光ファイバ3Bのうちの一方に異常が発生した場合等において、異常が発生した上記一方の光ファイバ(3A又は3B)を交換すればよい。
【0050】
なお、金属延長管7の内部から外部への放熱が促進されるように、第1空間21に配置され、金属延長管7の外面には、不図示の放熱フィンが接続されるようになっていてもよい。
【0051】
(被覆管)
幾つかの実施形態では、上述した光ファイバセンサの貫通構造1は、
図4~
図8に示されるように、金属シール管4に一端81が接続され、少なくとも1本の光ファイバ3の軸方向(長手方向)における少なくとも一部を被覆する被覆管8をさらに備える。被覆管8は、被覆管8の周方向に沿って延びる山部82及び谷部83を被覆管8の軸方向(長手方向)に沿って交互に有するような蛇腹管形状に形成され、フレキシブルである。被覆管8は、継手部材6の挿通孔63、64に挿通可能な大きさに形成されている。すなわち、被覆管8の外径(最大径)は、挿通孔63及び挿通孔64の孔径よりも小さい。
【0052】
図示される実施形態では、被覆管8は、金属シール管4の第2空間22側(図中左側)の端部に一端81A(81)が接続された第1被覆管8Aと、金属シール管4の第2空間22から離れた側(図中右側)の端部に一端81B(81)が接続された第2被覆管8Bと、を含む。第1被覆管8Aは、金属シール管4の第2空間22側の端部に周方向の少なくとも一部が溶接された溶接部W2を有し、溶接部W2により金属シール管4の第2空間22側の端部に固定されている。第2被覆管8Bは、金属シール管4の第2空間22から離れた側の端部に周方向の少なくとも一部が溶接された溶接部W3を有し、溶接部W3により金属シール管4の第2空間22から離れた側の端部に固定されている。なお、被覆管8(第1被覆管8A、第2被覆管8B及び後述する第3被覆管8C)は、溶接以外のカシメ、接着、嵌合、ロウ付け又はネジ締結などにより、金属シール管4や後述する中継箱12に接続されてもよい。
【0053】
図4、
図5及び
図7に示される実施形態では、第1被覆管8Aは、センシング部31までに亘り少なくとも1本の光ファイバ3を被覆している。
図4~
図8に示される実施形態では、第2被覆管8Bは、光ファイバコネクタ5の第1接続部51までに亘り少なくとも1本の光ファイバ3を被覆している。
【0054】
図6に示される実施形態では、第1被覆管8Aは、後述する中継箱12までに亘り少なくとも1本の光ファイバ3を被覆している。第1被覆管8Aの他端は、中継箱12に周方向の少なくとも一部が溶接された溶接部W5を有し、溶接部W5により中継箱12に固定されている。光ファイバセンサの貫通構造1は、
図6に示されるように、中継箱12に一端が接続され、センシング部31までに亘り少なくとも1本の光ファイバ3を被覆する第3被覆管8Cをさらに備えていてもよい。第3被覆管8Cは、第3被覆管8Cの周方向に沿って延びる山部82及び谷部83を第3被覆管8Cの軸方向(長手方向)に沿って交互に有するような蛇腹管形状に形成されている。第3被覆管8Cの上記一端は、中継箱12に周方向の少なくとも一部が溶接された溶接部W4を有し、溶接部W4により中継箱12に固定されている。
【0055】
図8に示される実施形態では、第1被覆管8Aは、中継コネクタ13の第2接続部132までに亘り少なくとも1本の光ファイバ3(3B)を被覆している。光ファイバセンサの貫通構造1は、
図8に示されるように、中継コネクタ13の第1接続部131からセンシング部31までに亘り少なくとも1本の光ファイバ3を被覆する第4被覆管8Dをさらに備えていてもよい。第4被覆管8Dは、第4被覆管8Dの周方向に沿って延びる山部82及び谷部83を第4被覆管8Dの軸方向(長手方向)に沿って交互に有するような蛇腹管形状に形成されている。
【0056】
上記の構成によれば、光ファイバ3の軸方向(長手方向)における少なくとも一部を、被覆管8により被覆し、被覆管8により光ファイバ3を保護することで、光ファイバ3の損傷を抑制できる。光ファイバ3の損傷を抑制することで、光ファイバ3の交換回数(交換頻度)の低減が図れる。
【0057】
(中継箱)
幾つかの実施形態では、上述した光ファイバセンサの貫通構造1は、
図6に示されるように、上述した第2空間22の内部に配置され、上述した少なくとも1本の光ファイバ3の円形状又は楕円形状に巻回した余長部分34Cを収納可能に構成された中継箱12をさらに備える。
【0058】
図示される実施形態では、中継箱12は、貫通孔24の内部に配置されている。中継箱12は、上述した少なくとも1本の光ファイバ3の余長部分34Cを収納するための内部空間120が形成されている。
【0059】
上記の構成によれば、被覆管8は、光ファイバ3よりも線膨張係数が大きい。このため、被覆管8の外部からの入熱により被覆管8が延びたときに、光ファイバ3は、被覆管8よりも延びないため、余長部分がないと断線する虞がある。第2空間22の内部に配置された中継箱12に、光ファイバ3の円形状又は楕円形状に巻回した余長部分34Cを収納しておくことで、被覆管8の外部からの入熱により被覆管8が延びた際における、光ファイバ3の断線を抑制できる。光ファイバ3の断線を抑制することで、光ファイバ3の交換回数(交換頻度)の低減が図れる。
【0060】
(光ファイバの余長部分)
幾つかの実施形態では、
図5に示されるように、上述した少なくとも1本の光ファイバ3は、余長部分34A、34Bを有するように被覆管8の内部に挿入されている。
【0061】
図示される実施形態では、第1被覆管8Aに挿入された光ファイバ3は、余長部分34Aを有する。すなわち、第1被覆管8Aの軸方向(長手方向)における長さをD1と定義し、光ファイバ3の第1被覆管8Aに挿入されている部分の長さをL1と定義した場合において、L1>D1の条件を満たす。余長部分34Aは、0.7%×D1以上であることが好ましく、L1≧D1+0.7%×D1の条件を満たすことが好ましい。
【0062】
図示される実施形態では、第2被覆管8Bに挿入された光ファイバ3は、余長部分34Bを有する。すなわち、第2被覆管8Bの軸方向(長手方向)における長さをD2と定義し、光ファイバ3の第2被覆管8Bに挿入されている部分の長さをL2と定義した場合において、L2>D2の条件を満たす。余長部分34Bは、0.7%×D2以上であることが好ましく、L2≧D2+0.7%×D2の条件を満たすことが好ましい。
【0063】
上記の構成によれば、被覆管8は、光ファイバ3よりも線膨張係数が大きい。このため、被覆管8の外部からの入熱により被覆管8が延びたときに、光ファイバ3は、被覆管8よりも延びないため、余長部分がないと断線する虞がある。被覆管8の内部に余長部分を有するように挿入しておくことで、被覆管8の外部からの入熱により被覆管8が延びた際における、光ファイバ3の断線を抑制できる。光ファイバ3の断線を抑制することで、光ファイバ3の交換回数(交換頻度)の低減が図れる。
【0064】
(内側金属管)
金属シール管4と該金属シール管4に挿通される少なくとも1本の光ファイバ3との間をシール部材43A(
図2参照)により封止する場合には、シール部材43Aの外径(最大径)が比較的大きなものとなる。シール部材43Aの外径が大きいと、シール部材43Aとシール部材43Aの外側に接続される金属シール管4との間に生じる径方向の熱膨張差により、シール部材43Aと金属シール管4とが剥離し、シール部材43Aと金属シール管4の間の封止から漏れが生じる虞がある。
【0065】
図9~
図11の各々は、本開示の一実施形態に係る金属シール管4の長手方向に沿った概略断面図である。
図12は、
図11に示される金属シール管4の長手方向に直交する断面を示す概略断面図である。幾つかの実施形態では、上述した光ファイバセンサの貫通構造1は、
図9~
図12に示されるように、金属シール管4の内部に金属シール管4との間に隙間44を介して配置され、少なくとも1本の光ファイバ3を挿通させる少なくとも1本の内側金属管9をさらに備える。
【0066】
内側金属管9は、金属材料から形成されており、外面91と内面92とを有する筒状に形成されている。内側金属管9は、金属シール管4の内部に緩く挿通され、金属シール管4の内面42と内側金属管9の外面91の間に上述した隙間44が形成されている。内側金属管9の内面92は、少なくとも1本の光ファイバ3を緩く挿通させる挿通孔を形成するようになっており、内側金属管9の内面92と光ファイバ3の外面との間に隙間43が形成されている。図示される実施形態では、内側金属管9は、内側金属管9の長手方向に直交する断面において外面91及び内面92の輪郭形状が円形状に形成された円筒状に形成されている(
図12参照)。
【0067】
内側金属管9の内部には、上述した隙間43に充填され、内側金属管9の内部を封止するシール部材43Bが配置されている。シール部材43Bは、内側金属管9の内面92に当接するとともに、光ファイバ3の外面に当接するようになっている。シール部材43Bは、樹脂材料又はガラスから形成されている。シール部材43Bにより、内側金属管9の内部に形成された隙間43を封止することで、隙間43を介した流体の流通(漏れ)を抑制できる。
【0068】
上記の構成によれば、金属シール管4の内部に配置される内側金属管9は、金属シール管4よりも内径(最小径)が小さなものとなる。この場合には、内側金属管9と該内側金属管9に挿通される少なくとも1本の光ファイバ3との間を封止するシール部材43Bの外径(最大径)を比較的小さなものにすることができる。これにより、シール部材43Bと内側金属管9との間に生じる径方向の熱膨張差によって、シール部材43Bと内側金属管9とが剥離することを抑制でき、且つシール部材43Bと内側金属管9の間の封止から漏れが生じることを抑制できる。
【0069】
(ロウ付けによる内側金属管の固定)
幾つかの実施形態では、
図9に示されるように、上述した少なくとも1本の内側金属管9は、金属シール管4にロウ付けされている。上述した隙間44には、ロウ付けにより接合させるろう44Aが充填されている。
【0070】
上記の構成によれば、ロウ付けにより、少なくとも1本の内側金属管9と金属シール管4とが接合される。そして、ロウ付けにより接合させるろう44Aにより、少なくとも1本の内側金属管9と金属シール管4との間が封止される。少なくとも1本の内側金属管9と金属シール管4との間を封止する部材をろう44Aとすることで、内側金属管9と金属シール管4の間の熱膨張を、内側金属管9や金属シール管4の熱膨張と同等にできるため、内側金属管9と金属シール管4の間に生じる熱応力を軽減できる。
【0071】
なお、ロウ付け温度は、シール部材43Bの耐熱温度を超える虞があるため、ロウ付けは、シール部材43Bを隙間43に充填する前に行うことが好ましい。
【0072】
(溶接による内側金属管の固定)
幾つかの実施形態では、
図10に示されるように、上述した少なくとも1本の内側金属管9は、内側金属管9の少なくとも一方の端部93、94に金属シール管4が周方向溶接された溶接部W8、W9を有する。
【0073】
図示される実施形態では、内側金属管9は、内側金属管9の軸方向(長手方向)の一端部の外面に、金属シール管4の軸方向(長手方向)の一端面が周方向溶接された溶接部W8を有する。溶接部W8により、内側金属管9が金属シール管4に固定されるとともに、金属シール管4と内側金属管9の間が封止される。
【0074】
図示される実施形態では、内側金属管9は、内側金属管9の軸方向(長手方向)の他端部の外面に、金属シール管4の軸方向(長手方向)の他端面が周方向溶接された溶接部W9を有する。溶接部W9により、内側金属管9が金属シール管4に固定されるとともに、金属シール管4と内側金属管9の間が封止される。なお、内側金属管9は、溶接部W8又は溶接部W9の少なくとも一方を有していればよい。
【0075】
上記の構成によれば、上記周方向溶接された溶接部W8、W9により、少なくとも1本の内側金属管9と金属シール管4とが接合される。そして、上記周方向溶接された溶接部W8、W9により、少なくとも1本の内側金属管9と金属シール管4との間が封止される。
【0076】
なお、溶接部W8、W9を形成する溶接の温度は、シール部材43Bの耐熱温度を超える虞があるため、溶接部W8、W9を形成する溶接は、シール部材43Bを隙間43に充填する前に行うことが好ましい。
【0077】
(複数本の内側金属管)
幾つかの実施形態では、
図11及び
図12に示されるように、上述した少なくとも1本の内側金属管9は、各々が少なくとも1本の光ファイバ3(3C~3F)を挿通させる複数本の内側金属管9(9A~9D)を含む。
【0078】
図示される実施形態では、金属シール管4の内部に複数本の内側金属管9が挿通されている。複数本の内側金属管9の各々は、金属シール管4にロウ付けされている。なお、他の実施形態では、複数本の内側金属管9の各々は、金属シール管4に溶接により固定され、複数本の内側金属管9の各々と金属シール管4との間が封止されるようになっていてもよい。
【0079】
上記の構成によれば、複数本の内側金属管9の各々により、各内側金属管9に挿通された光ファイバ3を保護することで、光ファイバ3の損傷を抑制できる。金属シール管4の内部に複数本の内側金属管9を配置することで、各々が内側金属管9に保護された複数本の光ファイバ3を一括して金属シール管4に挿通させることができる。
【0080】
(ガス化装置)
図13は、本開示の一実施形態に係るガス化装置の概略断面図である。幾つかの実施形態に係るガス化装置2Aは、炭素含有固体燃料を部分燃焼させてガス化させるように構成されている。ガス化装置2Aは、
図13に示されるように、上述した光ファイバセンサの貫通構造1と、上述した圧力容器2の内部に形成される上述した第2空間22と圧力容器2の外部に形成される上述した第1空間21を仕切る上述した隔壁23と、を備える。圧力容器2の内側には上述したガス化炉20が設置される。ガス化炉20は、ガス化炉20の内部に形成されるガス化炉内空間280とガス化炉20に形成される上述した第2空間22を仕切る上述したガス化炉壁28と、第2空間22においてガス化炉壁28に取り付けられて、ガス化炉内空間280に導かれた炭素含有固体燃料を燃焼させるための少なくとも1つ(図示例では複数)のバーナー装置29と、を備える。
図13に示されるように、上述した第2空間22は、ガス化炉壁28の外面と、ガス化炉壁28の外周を覆う圧力容器2の隔壁(圧力容器壁)23の内面とにより形成されるアニュラス部であってもよい。
【0081】
上記の構成によれば、圧力容器2の内部と外部を仕切る隔壁23を貫通する貫通孔24に挿通される少なくとも1本の光ファイバ3により、圧力容器2の内部から外部に光ファイバ3が伝送する光信号を取り出すことができる。また、金属シール管4及び継手部材6により、貫通孔24を介した圧力容器2の内部と外部との間の流体の流通(漏れ)を抑制できる。また、光ファイバセンサの貫通構造1を備えるガス化装置2Aは、ガス化装置2Aの内部の状態を監視するための光ファイバ3を容易に設置(新設)可能であり、且つ光ファイバ3が損傷した場合等において光ファイバ3を容易に交換可能である。
【0082】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0083】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0084】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0085】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る光ファイバセンサの貫通構造(1)は、
第1空間(21)と前記第1空間(21)よりも内部の温度が高い第2空間(22)の間を仕切る隔壁(23)を貫通する光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記隔壁(23)を貫通する貫通孔(24)に挿通される少なくとも1本の光ファイバ(3)と、
前記少なくとも1本の光ファイバ(3)を挿通させる金属シール管(4)と、
前記少なくとも1本の光ファイバ(3)の一端部が接続される接続部(51)を有する光ファイバコネクタ(5)と、
前記金属シール管(4)を挿通させる挿通孔(63、64)を有し、前記挿通孔(63、64)に挿入された前記金属シール管(4)を着脱可能に支持するように構成された継手部材(6)と、を備え、
前記継手部材(6)の前記挿通孔(63、64)は、前記光ファイバコネクタ(5)を挿通可能な大きさに形成された。
【0086】
上記1)の構成によれば、光ファイバセンサの貫通構造(1)は、隔壁(23)を貫通する貫通孔(24)に挿通される少なくとも1本の光ファイバ(3)により、比較的高温の第2空間から比較的低温の第1空間に光ファイバ(3)が伝送する光信号を取り出すことができる。光ファイバセンサの貫通構造(1)は、金属シール管(4)及び継手部材(6)により、貫通孔(24)を介した第1空間(21)と第2空間(22)との間の流体の流通(漏れ)を抑制できる。
【0087】
また、上記1)の構成によれば、光ファイバセンサの貫通構造(1)は、継手部材(6)の挿通孔(63、64)を、金属シール管(4)及び光ファイバコネクタ(5)を挿通可能な大きさに形成することで、光ファイバ(3)が取り付けられた金属シール管(4)や光ファイバコネクタ(5)を、挿通孔(63、64)の内部を通過させることができる。この場合には、従来のように、金属シール管(4)や光ファイバコネクタ(5)に取り付けられていない、単体の光ファイバ(3)を継手部材(06)の挿通孔(063、064)を挿通させた後に、金属シール管(4)や光ファイバコネクタ(5)に取り付けなくて良い。このような光ファイバセンサの貫通構造(1)は、光ファイバ(3)を容易に設置(新設)可能であり、且つ光ファイバ(3)が損傷した場合等において光ファイバ(3)を容易に交換可能である。
【0088】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記継手部材(6)は、
前記金属シール管(4)を挿通させる第1挿通孔(63)を有する継手本体(61)と、
前記金属シール管(4)を挿通させる第2挿通孔(64)及び前記継手本体(61)に螺合する螺合部(66)を有するナット部材(62)と、を少なくとも含む。
【0089】
上記2)の構成によれば、ナット部材(62)の螺合部(66)を継手本体(61)に螺合させることで、第1挿通孔(63)及び第2挿通孔(64)に挿通された金属シール管(4)を継手部材(6)により支持できる。また、継手本体(61)とナット部材(62)の螺合を解除することで、継手部材(6)から金属シール管(4)を容易に取り外すことができる。このような継手部材(6)を備える光ファイバセンサの貫通構造(1)は、光ファイバ(3)を容易に設置(新設)可能であり、且つ光ファイバ(3)が損傷した場合等において光ファイバ(3)を容易に交換可能である。
【0090】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記継手本体(61)は、前記第1空間(21)に配置され、前記第1挿通孔(63)の延在方向における一方側の端部が前記隔壁(23)に接続された。
【0091】
上記3)の構成によれば、継手本体(61)の一方側の端部を隔壁(23)に接続することで、継手部材(6)を隔壁(23)に固定できる。継手本体(61)を比較的低温の第1空間(21)に配置することで、比較的高温の第2空間(22)に配置される場合に比べて、継手部材(6)や金属シール管(4)への外部からの入熱を抑制でき、継手部材(6)や金属シール管(4)の熱による損傷を抑制できる。
【0092】
4)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記第1空間(21)に配置され、前記継手本体(61)の前記第1挿通孔(63)の延在方向における一方側の端部に一端(71)が接続され、前記隔壁(23)に他端(72)が接続された金属延長管(7)をさらに備える。
【0093】
上記4)の構成によれば、金属延長管(7)を介して継手本体(61)の一方側の端部を隔壁(23)に接続することで、継手部材(6)を隔壁(23)に固定できる。継手本体(61)は、金属延長管(7)を介して隔壁(23)に接続されることで、直接隔壁(23)に接続される場合に比べて、継手部材(6)や金属シール管(4)への外部からの入熱を抑制でき、継手部材(6)や金属シール管(4)の熱による損傷を抑制できる。
【0094】
5)幾つかの実施形態では、上記4)に記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記金属延長管(7)の内部に配置され、前記少なくとも1本の光ファイバ(3)を着脱可能に中継する中継コネクタ(13)をさらに備える。
【0095】
上記5)の構成によれば、金属延長管(7)の内部から外部(第1空間21)への放熱により、金属延長管(7)の内部の温度は、第2空間(22)内の温度よりも低くなる。金属延長管(7)の内部の温度を中継コネクタ(13)の耐熱温度よりも下げることで、金属延長管(7)の内部に中継コネクタ(13)を配置することが可能となる。中継コネクタ(13)を金属延長管(7)の内部に配置することで、中継コネクタ(13)に接続される少なくとも1本の光ファイバ(3)に断線や信号異常発生等の異常が生じた場合等において、光ファイバ(3)を容易に交換可能である。
【0096】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から上記5)までの何れかに記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記金属シール管(4)に一端(81)が接続され、前記少なくとも1本の光ファイバ(3)の軸方向における少なくとも一部を被覆する被覆管(8)であって、前記被覆管(8)の周方向に沿って延びる山部及び谷部を前記被覆管(8)の軸方向に沿って交互に有するようなフレキシブルな被覆管(8)をさらに備える。
【0097】
上記6)の構成によれば、光ファイバ(3)の軸方向における少なくとも一部を、被覆管(8)により被覆し、被覆管(8)により光ファイバ(3)を保護することで、光ファイバ(3)の損傷を抑制できる。光ファイバ(3)の損傷を抑制することで、光ファイバ(3)の交換回数(交換頻度)の低減が図れる。
【0098】
7)幾つかの実施形態では、上記6)に記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記第2空間(22)の内部に配置され、前記少なくとも1本の光ファイバ(3)の円形状又は楕円形状に巻回した余長部分を収納可能に構成された中継箱(12)をさらに備える。
【0099】
上記7)の構成によれば、被覆管(8)は、光ファイバ(3)よりも線膨張係数が大きい。このため、被覆管(8)の外部からの入熱により被覆管(8)が延びたときに、光ファイバ(3)は、被覆管(8)よりも延びないため、余長部分がないと断線する虞がある。第2空間(22)の内部に配置された中継箱(12)に、光ファイバ(3)の円形状又は楕円形状に巻回した余長部分を収納しておくことで、被覆管(8)の外部からの入熱により被覆管(8)が延びた際における、光ファイバ(3)の断線を抑制できる。光ファイバ(3)の断線を抑制することで、光ファイバ(3)の交換回数(交換頻度)の低減が図れる。
【0100】
8)幾つかの実施形態では、上記6)に記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記少なくとも1本の光ファイバ(3)は、余長部分を有するように前記被覆管(8)の内部に挿入されている。
【0101】
上記8)の構成によれば、被覆管(8)は、光ファイバ(3)よりも線膨張係数が大きい。このため、被覆管(8)の外部からの入熱により被覆管(8)が延びたときに、光ファイバ(3)は、被覆管(8)よりも延びないため、余長部分がないと断線する虞がある。被覆管(8)の内部に余長部分を有するように挿入しておくことで、被覆管(8)の外部からの入熱により被覆管(8)が延びた際における、光ファイバ(3)の断線を抑制できる。光ファイバ(3)の断線を抑制することで、光ファイバ(3)の交換回数(交換頻度)の低減が図れる。
【0102】
9)幾つかの実施形態では、上記1)から上記8)までの何れかに記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記金属シール管(4)の内部に前記金属シール管(4)との間に隙間を介して配置され、前記少なくとも1本の光ファイバ(3)を挿通させる少なくとも1本の内側金属管(9)をさらに備える。
【0103】
金属シール管(4)と該金属シール管(4)に挿通される少なくとも1本の光ファイバ(3)との間をシール部材により封止する場合には、シール部材の外径(最大径)が比較的大きなものとなる。シール部材の外径が大きいと、シール部材とシール部材の外側に接続される金属シール管4との間に生じる径方向の熱膨張差により、シール部材と金属シール管(4)とが剥離し、シール部材と金属シール管(4)の間の封止から漏れが生じる虞がある。上記9)の構成によれば、金属シール管(4)の内部に配置される内側金属管(9)は、金属シール管(4)よりも内径(最小径)が小さなものとなる。この場合には、内側金属管(9)と該内側金属管(9)に挿通される少なくとも1本の光ファイバ(3)との間を封止するシール部材の外径(最大径)を比較的小さなものにすることができる。これにより、シール部材と内側金属管(9)との間に生じる径方向の熱膨張差によって、シール部材と内側金属管(9)とが剥離することを抑制でき、且つシール部材と内側金属管(9)の間の封止から漏れが生じることを抑制できる。
【0104】
10)幾つかの実施形態では、上記9)に記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記少なくとも1本の内側金属管(9)は、前記金属シール管(4)にロウ付けされている。
【0105】
上記10)の構成によれば、ロウ付けにより、少なくとも1本の内側金属管(9)と金属シール管(4)とが接合される。そして、ロウ付けにより接合させるろうにより、少なくとも1本の内側金属管(9)と金属シール管(4)との間が封止される。少なくとも1本の内側金属管(9)と金属シール管(4)との間を封止する部材をろうとすることで、内側金属管(9)と金属シール管(4)の間の熱膨張を、内側金属管(9)や金属シール管(4)の熱膨張と同等にできるため、内側金属管(9)と金属シール管(4)の間に生じる熱応力を軽減できる。
【0106】
11)幾つかの実施形態では、上記9)に記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記少なくとも1本の内側金属管(9)は、前記内側金属管(9)の少なくとも一方の端部に前記金属シール管(4)に周方向溶接された溶接部(W8、W9)を有する。
【0107】
上記11)の構成によれば、上記周方向溶接された溶接部(W8、W9)により、少なくとも1本の内側金属管(9)と金属シール管(4)とが接合される。そして、上記周方向溶接された溶接部(W8、W9)により、少なくとも1本の内側金属管(9)と金属シール管(4)との間が封止される。
【0108】
12)幾つかの実施形態では、上記9)から上記11)までの何れかに記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)であって、
前記少なくとも1本の内側金属管(9)は、各々が前記少なくとも1本の光ファイバ(3)を挿通させる複数本の内側金属管(9)を含む。
【0109】
上記12)の構成によれば、複数本の内側金属管(9)の各々により、各内側金属管(9)に挿通された光ファイバ(3)を保護することで、光ファイバ(3)の損傷を抑制できる。金属シール管(4)の内部に複数本の内側金属管(9)を配置することで、各々が内側金属管(9)に保護された複数本の光ファイバ(3)を一括して金属シール管(4)に挿通させることができる。
【0110】
13)本開示の少なくとも一実施形態に係るガス化装置(2A)は、
炭素含有固体燃料を部分燃焼させてガス化させるように構成されたガス化装置(2A)であって、
上記1)から上記12)までの何れかに記載の光ファイバセンサの貫通構造(1)と、
ガス化炉(20)が内側に設置された圧力容器(2)の内部に形成される前記第2空間(22)と前記圧力容器(2)の外部に形成される前記第1空間(21)を仕切る前記隔壁(23)と、を備える。
【0111】
上記13)の構成によれば、圧力容器(2)の内部と外部を仕切る隔壁(23)を貫通する貫通孔(24)に挿通される少なくとも1本の光ファイバ(3)により、圧力容器(2)の内部から外部に光ファイバ(3)が伝送する光信号を取り出すことができる。また、金属シール管(4)及び継手部材(6)により、貫通孔(24)を介したガス化装置(2A)の内部と外部との間の流体の流通(漏れ)を抑制できる。また、光ファイバセンサの貫通構造(1)を備えるガス化装置(2A)は、ガス化装置(2A)の内部の状態を監視するための光ファイバ(3)を容易に設置(新設)可能であり、且つ光ファイバ(3)が損傷した場合等において光ファイバ(3)を容易に交換可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 光ファイバセンサの貫通構造
2 圧力容器
2A ガス化装置
3 光ファイバ
3A 第1光ファイバ
3B 第2光ファイバ
4 金属シール管
5 光ファイバコネクタ
6 継手部材
7 金属延長管
7A 第1金属延長管
7B 第2金属延長管
8 被覆管
8A 第1被覆管
8B 第2被覆管
8C 第3被覆管
8D 第4被覆管
9 内側金属管
10 計測器
11 中継用光ファイバ
12 中継箱
13 中継コネクタ
20 ガス化炉
21 第1空間
22 第2空間
23 隔壁
24 貫通孔
25 封止部材
26 締結部材
26A ボルト
26B ナット
27 断熱材
28 ガス化炉壁
29 バーナー装置
31 センシング部
34A,34B,34C 余長部分
43,44 隙間
43A,43B シール部材
44A ろう
61 継手本体
62 ナット部材
63 第1挿通孔
64 第2挿通孔
65,66 螺合部
82 山部
83 谷部
101 照射部
102 受光部
120 内部空間
231 隔壁本体
232 突出部
233 フランジ部
252 中心孔
L 距離
W1~W9 溶接部