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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041563
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240319BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146442
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝典
(72)【発明者】
【氏名】南 俊二
(72)【発明者】
【氏名】東山 浩
(72)【発明者】
【氏名】大坪 宏彰
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA03
2H199CA06
2H199CA07
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA34
2H199CA45
2H199CA46
2H199CA48
2H199CA53
2H199CA54
2H199CA77
2H199CA92
2H199CA94
(57)【要約】
【課題】網膜投影方式でユーザに画像を視認させる装置において、導光部の機械強度を補強することが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】画像投影装置1は、ユーザUに装着されて使用され、ユーザUの網膜に画像を投影する。走査部30は、光源から出射されたレーザ光を走査する。導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光をユーザUの眼球EY内に導いて、網膜に画像を投影する。補強部70は、導光部60における、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する部分の周囲の少なくとも一部を囲むように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着されて使用され、前記ユーザの網膜に画像を投影する画像投影装置であって、
光源から出射されたレーザ光を走査する走査部と、
前記走査部により走査された前記レーザ光を前記ユーザの眼球内に導いて、前記網膜に前記画像を投影する導光部と、
前記導光部における、前記画像投影装置が前記ユーザに装着されたときに前記眼球に対向する部分の周囲の少なくとも一部を囲むように配置された補強部と、
を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
前記補強部は、前記導光部における、前記画像投影装置が前記ユーザに装着されたときに前記眼球に対向する方向に沿う3つの面を囲むように配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項3】
前記導光部における前記3つの面とは異なる面側には、前記走査部において前記レーザ光を走査するための走査部材が配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像投影装置。
【請求項4】
前記補強部は、前記画像投影装置が前記ユーザに装着されたときに、前記ユーザの有効視野の外側に位置する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【請求項5】
前記補強部は、予め設定される前記眼球と前記導光部との距離に基づいて、前記有効視野の外側の箇所に配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像投影装置。
【請求項6】
上下方向における前記導光部の幅は、前記上下方向における前記ユーザの眼の開口幅よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【請求項7】
前記補強部は、前記導光部よりも、前記画像投影装置がユーザに装着されたときに前記眼球に対向する方向に突き出ている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【請求項8】
前記補強部は、可視光に対して透明性を有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【請求項9】
前記補強部と前記導光部とが一体的に形成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【請求項10】
前記補強部は、前記導光部に対して着脱可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【請求項11】
前記補強部は、前記導光部の材料とは剛性が異なる材料から形成される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜投影方式により網膜に画像を投影してユーザに画像を視認させる技術が知られている。例えば、特許文献1は、画像光を網膜上に走査することで画像を表示する画像表示装置を開示している。
【0003】
網膜投影方式は、瞳孔に光を通して網膜に画像を直接的に投影するマクスウェル視を利用する。そのため、網膜投影方式は、LCD(Liquid Crystal Display)やOLED(Organic Light Emitting Diode)を使用した仮想スクリーン投影方式に比べて、フリーフォーカスのメリットを有する。これにより、前眼部異常等のロービジョンのユーザにとっても画像を見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-159559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような網膜投影方式でユーザに画像を視認させる装置は、ユーザの眼球の近傍で使用されるため、小型化が追求されている。また、ユーザの眼球に光線を導く導光部の機械強度は、光学材料の特性から弱くなりがちである。このような事情に鑑み、導光部の機械強度を補強することが求められている。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためのものであり、網膜投影方式でユーザに画像を視認させる装置において、導光部の機械強度を補強することが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像投影装置は、
ユーザに装着されて使用され、前記ユーザの網膜に画像を投影する画像投影装置であって、
光源から出射されたレーザ光を走査する走査部と、
前記走査部により走査された前記レーザ光を前記ユーザの眼球内に導いて、前記網膜に前記画像を投影する導光部と、
前記導光部における、前記画像投影装置が前記ユーザに装着されたときに前記眼球に対向する部分の周囲の少なくとも一部を囲むように配置された補強部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、網膜投影方式でユーザに画像を視認させる装置において、導光部の機械強度を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る画像投影装置の外観を示す図である。
図2】実施形態1に係る画像投影装置を正面から見た図である。
図3】実施形態1に係る画像投影装置の制御ユニットの構成を示すブロック図である。
図4】実施形態1に係る画像投影装置におけるレーザ光の光路を示す模式図である。
図5】実施形態1に係る画像投影装置の導光部及び補強部を正面から見た図である。
図6】実施形態1に係る画像投影装置の導光部及び補強部の断面を示す図である。
図7】実施形態2に係る画像投影装置の導光部及び補強部の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0011】
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る画像投影装置1の概略を示す。画像投影装置1は、ユーザUに装着されて使用され、ユーザUの眼球EY内の網膜に画像を投影する網膜投影方式の装置である。画像投影装置1は、マクスウェル視を利用して網膜に画像を投影することで、静止画像及び動画像(映像)を含む様々な画像をユーザUに視認させる。画像投影装置1は、スマートグラス、網膜走査ディスプレイ等とも呼ばれる。
【0012】
なお、図1では、ユーザUの頭部の輪郭を破線で示しており、理解を容易にするため、2つの眼球EY以外の頭部のパーツを省略している。また、図1では、ユーザUから見て前方向が+Y方向であり、ユーザUから見て右方向が+X方向であり、ユーザUから見て上方向が+Z方向であるとして説明する。以降の図でも同様である。
【0013】
図1に示すように、画像投影装置1は、投影ユニット3と、制御ユニット5と、複合ケーブル7と、を備える。
【0014】
投影ユニット3は、ユーザUの眼球EYにレーザ光を入射させて、ユーザUの網膜上に画像を投影するユニットである。投影ユニット3は、レーザモジュール20から出射されたレーザ光を走査する走査部30と、走査部30により走査されたレーザ光を眼球EYに導く導光部60と、導光部60の機械強度を補強する補強部70と、を備える。
【0015】
投影ユニット3は、メガネフレーム等に取り付けられて使用される。投影ユニット3がメガネフレームに取り付けられた場合、走査部30は、メガネフレームの側部に配置される。また、導光部60は、眼球EYの真正面に位置するように、メガネフレームのレンズ部分であって、一例としてレンズの内側に配置される。
【0016】
図2に、メガネフレームに取り付けられた投影ユニット3を、眼球EYの正面から見た様子を示す。理解を容易にするため、図2では、ユーザUの2つの眼球EY以外のパーツは省略している。
【0017】
図2に示すように、投影ユニット3がメガネフレームに取り付けられた場合、導光部60は、眼球EYに対して真正面に位置する。このような状態において、投影ユニット3は、制御ユニット5から出射されたレーザ光を走査部30により走査し、導光部60を通して眼球EYに対して正面から入射させる。
【0018】
図1に戻って、制御ユニット5は、画像投影装置1を制御するユニットである。制御ユニット5は、画像投影装置1がユーザUにより使用される際、ユーザUの衣服のポケット等に入れられる。制御ユニット5は、画像データに基づいて強度変調されたレーザ光を出射して、複合ケーブル7を通して投影ユニット3に出力する。
【0019】
図3を参照して、制御ユニット5の構成について説明する。図3に示すように、制御ユニット5は、入出力インタフェース10と、画像処理部11と、メモリ12と、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)13と、充電回路18と、バッテリ19と、レーザモジュール20と、投影制御部21と、レーザドライバ23と、を備える。
【0020】
入出力インタフェース10は、外部装置との間でデータの入力及び出力するためのインタフェースである。外部装置は、例えば、カメラ、スマートフォン、PC(パーソナルコンピュータ)、SD(Secure Digital)カード等である。入出力インタフェース10は、例えば、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、USB(Universal Serial Bus)等の規格の端子を備えており、外部装置と電気的に接続される。
【0021】
入出力インタフェース10は、外部装置から画像信号を形成するための画像データを受信し、画像処理部11に送信する。画像データは、網膜REに投影する対象となる画像を示すデータである。画像データは、例えば、カメラ又はスマートフォンで撮影された撮影データ、PCで生成された文字、図形、写真等を示すデータ等である。
【0022】
投影対象となる画像は、一例として、横方向に1280個のドット及び縦方向に720個のドットの画素を有する。なお、投影対象となる画像は、静止画像であっても良いし、動画像(映像)であっても良い。
【0023】
画像処理部11は、CPU(Central Processing Unit)等の制御回路を備える。CPUは、EPROM13に記憶されている制御プログラムを読み出して、メモリ12をワークメモリとして用いながら、画像処理部11及び制御ユニット5を制御する。なお、画像処理部11は、CPUの代わりに、SoC(System-on-a-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路を備えても良い。
【0024】
メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリであって、制御ユニット5のワークメモリとして用いられる。
【0025】
EPROM13は、書き込み可能な不揮発性の半導体メモリである。EPROM13は、制御ユニット5によって実行されるプログラム及びデータを記憶している。なお、制御ユニット5は、EPROM13に限らず、不揮発性のメモリとしてフラッシュメモリ、ハードディスク等を備えていても良い。
【0026】
充電回路18は、AC/DC(Alternate Current/Direct Current)アダプタに接続される。AC/DCアダプタから供給された電力を、バッテリ19及び制御ユニット5の各部に供給する。
【0027】
画像処理部11は、入出力インタフェース10を介して外部装置から受信した画像データ、又は、EPROM13に予め記憶された画像データに対して画像処理を行う。これにより、画像処理部11は、レーザモジュール20から出射されるレーザ光のもとになる画像データを生成し、生成した画像データを投影制御部21に転送する。
【0028】
レーザモジュール20は、ユーザUの眼球EYに入射されるレーザ光を出射する。レーザモジュール20は、光源の一例である。
【0029】
より詳細には、レーザモジュール20は、図示しないR(赤色)レーザ光源、G(緑色)レーザ光源、及びB(青色)レーザ光源、を備えており、レーザ光を出射する。Rレーザ光源、Gレーザ光源及びBレーザ光源は、レーザドライバ23から送信された画像信号に応じてそれぞれ強度変調されたレーザ光を出射する。各レーザ光源は、例えば、半導体レーザ(レーザダイオード)、固体レーザ等である。
【0030】
各レーザ光源から出射されたレーザ光は、いずれも図示を省略するが、ダイクロイックミラー等の光学系により合波され、コリメートレンズ等の光学系により平行光化され、集光レンズ等の光学系により集光されて、複合ケーブル7へ出射される。
【0031】
投影制御部21は、レーザモジュール20によるレーザ光の出射と走査部30によるレーザ光の走査とを制御することにより、画像投影装置1による画像の投影を制御する。投影制御部21は、図示を省略するが、CPU、SoC、ASIC等の制御回路を備えており、画像投影装置1における画像投影処理を統括的に制御する。なお、CPU、SoC、ASIC等を総称して、「プロセッサ」と呼んでも良い。
【0032】
投影制御部21は、画像処理部11から転送された画像データを画像信号に変換し、レーザドライバ23を通して画像信号をレーザモジュール20に供給する。投影制御部21は、画像処理部11から転送された画像データの各画素の画素値(RGB値)を1画素ずつ順に読み出し、読み出した画素値に対応する画像信号を生成する。そして、投影制御部21は、生成した画像信号を、1画素ずつ順にレーザドライバ23に送信する。
【0033】
レーザドライバ23は、投影制御部21から受信した画像信号に基づいて、レーザモジュール20を駆動する。具体的に説明すると、レーザドライバ23は、投影制御部21から受信した画像信号に対応する輝度で、Rレーザ光源、Gレーザ光源及びBレーザ光源のそれぞれを発光させる。これにより、レーザドライバ23は、受信した画像信号に対応する色のレーザ光をレーザモジュール20から出射させる。
【0034】
複合ケーブル7は、レーザモジュール20から出射されたレーザ光を伝送し、投影ユニット3に出射するケーブルである。複合ケーブル7は、制御ユニット5及び投影ユニット3と光学的に接続される。複合ケーブル7により伝送されたレーザ光は、図示しないコリメートレンズによって平行光化され、投影ユニット3の走査部30に出射される。また、複合ケーブル7は、投影制御部21から走査部30に送信される制御信号を伝送する。
【0035】
次に、図4を参照して、画像投影装置1におけるレーザ光の光路について説明する。図4は、図1におけるA-Aの断面を示している。図4に示すように、投影ユニット3において、走査部30は、走査部材として機能するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー31と、反射ミラー32と、を備える。
【0036】
走査部30において、MEMSミラー31は、レーザモジュール20から出射されたレーザ光を走査する。具体的に説明すると、MEMSミラー31は、レーザモジュール20から出射されたレーザ光を受光し、レーザ光を反射ミラー32に向けて反射する。MEMSミラー31は、反射面の角度を変化させることで、反射するレーザ光を2次元の範囲に走査させる。
【0037】
より詳細には、MEMSミラー31は、MEMS加工により形成されたミラーである。MEMSミラー31では、ミラー周辺に配置されたコイルに電流を流すことにより発生するローレンツ力により、ミラーの傾きを変更することができる。これにより、ミラー面に入射したレーザ光の光路を変更し、2次元の範囲に走査することができる。
【0038】
MEMSミラー31は、図示を省略するMEMSドライバにより駆動される。投影制御部21は、複合ケーブル7を通してMEMSドライバに制御信号を送信する。MEMSドライバは、投影制御部21から受信した制御信号に基づいて、MEMSミラー31に駆動信号を送信し、MEMSミラー31の傾きを変更する。これにより、MEMSドライバは、MEMSミラー31がレーザ光を走査する方向、言い換えると、MEMSミラー31がレーザ光を反射する方向を制御する。
【0039】
より詳細には、投影制御部21は、MEMSミラー31による走査をレーザモジュール20によるレーザ光の出射と同期させる。具体的に説明すると、投影制御部21は、投影対象となる画像における各座標の画素の画素値に対応するレーザ光が、網膜RE上の同じ座標に対応する位置に投射されるように、レーザモジュール20が各画素の画素値に対応するレーザ光を出射するタイミングと、そのタイミングにおいてMEMSミラー31がレーザ光を走査する方向と、を制御する。
【0040】
MEMSミラー31は、MEMSドライバから受信した駆動信号に基づいて、複合ケーブル7により伝送される平行光化されたレーザ光を、2次元の範囲の方向に走査する。例えば、投影対象となる画像が1280×720ドットの画素を有している場合、1280×720通りの異なる方向にレーザ光を反射する。MEMSミラー31により走査されたレーザ光は、反射ミラー32に入射し、図4において斜線が付された範囲の光路を通って、ユーザUの眼球EY内の網膜RE上に投射される。
【0041】
反射ミラー32は、レーザ光の光路におけるMEMSミラー31の後段に配置されている。反射ミラー32は、凹状の鏡面を備え、MEMSミラー31により走査されたレーザ光を反射及び集光する。反射ミラー32により反射されたレーザ光は、導光部60に入射され、眼球EY内の瞳孔PU付近で集束して、網膜RE上に投射される。
【0042】
導光部60は、レーザ光の光路における反射ミラー32の後段に配置されている。導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光を眼球EYに導くことにより、眼球EY内の網膜REに画像を投影する。導光部60は、レーザ光を通すことが可能な、アクリル等の適宜の光学材料により形成されている。導光部60は、導光リフレクタとも呼ばれる。
【0043】
導光部60は、伝搬面61,62と反射面63とを備える。導光部60におけるレーザ光の光路は、伝搬面61,62と反射面63とにより形成される。
【0044】
伝搬面61,62は、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに、ユーザUの眼球EYに対向する方向であるY方向に垂直となる面である。このうち、伝搬面61は、ユーザUに近い側の面であって、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する対向面である。一方で、伝搬面62は、ユーザUから遠い側の面であって、伝搬面61とは反対側(裏側)に位置する面である。なお、伝搬面61と伝搬面62とを区別して称する場合、それぞれ第1伝搬面及び第2伝搬面と呼ぶ。
【0045】
ここで、画像投影装置1がユーザUに装着されたときとは、具体的には、投影ユニット3がメガネフレーム等に取り付けられた状態で、そのメガネフレーム等がユーザUに装着されたときを意味する。このとき、導光部60はユーザUの眼球EYの真正面に配置されて、画像投影装置1がユーザUの網膜REに画像を投影可能な状態になる。
【0046】
MEMSミラー31により走査されたレーザ光は、反射ミラー32により反射された後、導光部60内において伝搬面61と伝搬面62との間で複数回反射しながら、+X方向に進行する。これにより、レーザ光は、導光部60内においてユーザUの瞳孔PUから眼球EY内に入射可能な位置まで導かれる。
【0047】
反射面63は、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する位置に配置されている。反射面63は、2つの光学材料を貼り合わせることで、2つの光学材料の間の界面として形成される。
【0048】
反射面63は、眼球EYに対向する方向(Y方向)に対して走査部30の側(-X方向)に向けて斜めに傾いている。反射面63は、伝搬面61と伝搬面62との間を+X方向に伝搬されたレーザ光を-Y方向に反射し、導光部60から出射させて瞳孔PUから眼球EY内に入射させる。
【0049】
眼球EY内に入射したレーザ光は、水晶体の中心付近で集束して網膜REに投射される。これにより、網膜REに画像が結像され、ユーザUは結像された画像を視認することができる。このようにして、導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光を眼球EY内に導き、網膜REに画像を投影する。
【0050】
投影ユニット3は、走査部30と導光部60に加えて、補強部70を更に備える。補強部70は、導光部60の機械強度を補強する役割を持つ。
【0051】
より詳細に説明すると、投影ユニット3はメガネフレーム等に取り付けられて使用されるため、小型化に対する要求が大きい。また、導光部60はレーザ光を通す光学材料により形成されているため、導光部60の機械強度は弱くなりがちである。更には、導光部60は、その一部が外観に露出しているため、ユーザUに接触される等により破損しやすい。このように、導光部60の破損を防止するため、投影ユニット3は、導光部60の機械強度を補強する補強部70を備える。
【0052】
図5に、導光部60及び補強部70を正面から、すなわち+Y方向から見た様子を示す。図5に示すように、上下方向(Z方向)における補強部70の幅L2は、導光部60の幅L1よりも大きくなっている。これにより、補強部70は、導光部60の周囲の一部を囲うように配置されている。
【0053】
具体的に説明すると、補強部70は、導光部60における、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する部分の周囲の少なくとも一部を囲むように配置されている。ここで、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する部分は、導光部60のうちの、眼球EYの真正面に位置する部分である。このような眼球EYに対向する部分は、外観に露出しているため、機械強度が不足しやすい部分である。そのため、補強部70は、眼球EYに対向する部分の周囲の少なくとも一部を囲むように配置されることで、眼球EYに対向する部分の機械強度を補強する。
【0054】
より詳細には、補強部70は、Cの字状(Uの字状)の形状をしており、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する方向であるY方向に沿う3つの面を囲むように配置されている。3つの面は、具体的には、導光部60の上面65、下面66及び側面67である。
【0055】
ここで、上面65及び下面66は、上下方向(Z方向)における上側及び下側の端面である。側面67は、導光部60において走査部30とは反対側に位置する端面である。補強部70は、上面65、下面66及び側面67に接合されており、これら3つの面を囲むように支持する。これにより、補強部70は、導光部60の機械強度を補強する。言い換えると、導光部60における3つの面(上面65、下面66及び側面67)とは異なる面側には、走査部30(具体的には、レーザ光を走査する走査部材としてのMEMSミラー31)が配置されている。
【0056】
なお、導光部60と補強部70との接合は、2色成型、2回成型、インサ-ト成型、接着、溶着、アンダ-カット組み立て等のような、公知の接合技術を用いることができる。すなわち、本実施形態においては、導光部60と補強部70とが一体的に形成されている。
【0057】
次に、図6に、導光部60及び補強部70を横方向(X方向)から見た様子を示す。図6は、図2及び図5におけるB-Bの断面を示している。
【0058】
図6に示すように、実施形態1において、Y方向における導光部60の幅(厚み)Tは、Y方向における補強部70の幅(厚み)Tと等しい。これにより、補強部70における、眼球EYに対向する方向(Y方向)に垂直となる面は、導光部60の伝搬面61,62と滑らかに接続されている。
【0059】
また、上下方向(Z方向)における導光部60の幅L1及び補強部70の幅L2は、上下方向における眼の開口幅Wよりも大きい。ここで、眼の開口幅Wは、上眼瞼(上まぶた)E1と下眼瞼(下まぶた)E2との間の幅であって、ユーザUが眼を可能な限り開いた場合におけるまぶたの開口幅に相当する。
【0060】
このように、導光部60の幅L1及び補強部70の幅L2を眼の開口幅Wよりも大きく設計することにより、導光部60及び補強部70が眼球EYに直接触れることを防止することができる。そのため、眼球EYの近くに小型の部品が存在しがちとなる画像投影装置1において、安全性を高めることができる。
【0061】
なお、導光部60の幅L1及び補強部70の幅L2を眼の開口幅Wよりも大きく設計する方法として、種々の方法が考えられる。例えば、公知の調査結果に記載される人体の眼の開口幅の平均的な値を参照して導光部60の幅L1及び補強部70の幅L2を設計してもよいし、画像投影装置1の利用者の眼の開口幅を予め測定した上で導光部60の幅L1及び補強部70の幅L2を設計するようにしてもよい。
【0062】
また、補強部70は、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに、ユーザUの有効視野の外側に位置する。ここで、有効視野は、人間がリアルタイムで細部まで認識できる視野を意味する。有効視野は、視野中心から±20°程度の範囲に相当する。人間の視野は、垂直方向に±70°程度であり、水平方向に±100°程度である。人間は、このような視野の範囲内の物体を認識することができるが、有効視野の範囲外の物体は、リアルタイムではぼやけて見える。
【0063】
具体的に図6において、瞳孔PUの中心から±20°の範囲を、ユーザUの有効視野に相当する範囲として、一点鎖線で示す。このような有効視野の範囲内に2つの材料の界面が存在すると、ユーザUの視野を阻害する、又はユーザUの視覚に違和感を与える要因となる。そのため、有効視野の範囲を考慮して、導光部60と補強部70との間の界面がユーザUの有効視野内に入らないように、補強部70の位置が設計される。
【0064】
具体的には、補強部70における眼球EYに対向する方向(Y方向)に垂直な面のうちの、眼球EYから遠い側の面から瞳孔PUまでの距離をDと表すと、上下方向(Z方向)における導光部60の幅L1は、“L1>2×D×tan20°”の関係式を満たすように設計される。なお、距離Dは、補強部70の幅T1と導光部60の幅T1が等しいため、導光部60の2つの伝搬面61,62のうちの、眼球EYから遠い側の面である伝搬面62から瞳孔PUまでの距離にも相当する。
【0065】
ここで、距離Dは、MEMSミラー31で反射されたレーザ光が瞳孔PUで集光するように設計された距離であって、画像投影装置1の光学的な設計に依存する距離である。そのため、導光部60の幅L1は、画像投影装置1の光学的な設計により予め定められる距離Dに基づいて、上記の関係式“L1>2×D×tan20°”を満たす値に定められる。なお、上述したように、導光部60の幅L1は、眼の開口幅Wよりも大きくなるようにも設計されている。
【0066】
このように補強部70をユーザUの有効視野の範囲外になるように配置することで、ユーザUは、視界に疎外感を覚えることなく、画像投影装置1により網膜REに投影される画像を見ることができる。
【0067】
更に、導光部60及び補強部70は、可視光に対して透明な材料で形成される。言い換えると、導光部60及び補強部70は、可視光に対して透過性を有する。このように、補強部70がユーザUの有効視野の範囲外に配置されることに加えて、可視光に対して透明性を有することで、より一層、ユーザUの視野の疎外感を抑えることができる。
【0068】
なお、補強部70の材料は、用途に応じて、高い剛性を有する材料と、柔軟性を有する衝撃緩衝材料と、を選択することができる。例えば、画像投影装置1が屋外での作業時や運動時等に使用される場合、衝撃を受ける可能性が相対的に高いことを考慮して、補強部70は、高い剛性を有する材料で形成されることが望ましい。一方で、画像投影装置1が屋内で使用される場合、衝撃を受ける可能性が相対的に低いため、補強部70は、柔軟性を有する衝撃緩衝材料で形成される。ここで、柔軟性を有する衝撃緩衝材料は、導光部60を構成するアクリル等の光学材料よりも低い剛性を有する材料のことを指す。また、高い剛性を有する材料は、上記の衝撃緩衝材料よりも剛性が高い材料のことを指す。高い剛性を有する材料として、例えば、導光部60を構成するアクリル等の光学材料よりも剛性が高い材料を利用してもよい。
【0069】
以上説明したように、実施形態1に係る画像投影装置1は、ユーザUに装着されて使用され、ユーザUの網膜REに画像を投影する装置であって、導光部60における、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する部分の周囲の少なくとも一部を囲むように配置された補強部70を備える。このように、導光部60の周囲に補強部70が設けられていることで、小型化の追求や外観に露出していることで機械強度が弱くなりがちな導光部60の機械強度を補強することができる。
【0070】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態1と同様の構成及び機能については、説明を省略する。
【0071】
実施形態1では、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する方向であるY方向における補強部70の幅(厚み)Tは、導光部60の幅(厚み)Tと等しかった。これに対して、実施形態2では、Y方向における補強部70の幅(厚み)T2は、Y方向における導光部60の幅(厚み)T1よりも大きい。
【0072】
図7に、実施形態2における導光部60及び補強部70の断面を示す。実施形態2において、補強部70は、実施形態1と同様に、Y方向から見てCの字状(Uの字状)をしており、導光部60の上面65、下面66及び側面67の3面を囲むように配置される。
【0073】
一方で、実施形態2において、図7に示すように、Y方向における補強部70の幅(厚み)T2は導光部60の幅(厚み)T1よりも大きい。そのため、補強部70は、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する方向であるY方向に突き出ている。
【0074】
より詳細には、補強部70は、導光部60の伝搬面61よりも、眼球EYの側(-Y方向)に寸法Δだけ突き出している。また、補強部70は、導光部60の伝搬面62よりも、眼球EYとは反対側(+Y方向)に寸法(T2-T1-Δ)だけ突き出している。言い換えると、導光部60と補強部70との間には、額縁状の段差が設けられている。
【0075】
このように、導光部60と補強部70との間に額縁状の段差を設けることで、例えば投影ユニット3を机上に置いたときのように、外乱物が導光部60の表面に接触することを回避しやすくなる。その結果、導光部60の表面に汚れが付着すること、及び、導光部60が破損することを抑制することができる。
【0076】
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0077】
例えば、上記実施形態では、補強部70は、Cの字状(Uの字状)の形状をしており、上面65、下面66及び側面67を囲むように配置されていた。しかしながら、補強部70により囲われる面は、これら3つの面に限らず、導光部60における、眼球EYと対向する部分の周囲の少なくとも一部を囲うように配置されるものであれば、どの面であっても良い。例えば、補強部70は、より簡素な構成として、上面65、下面66及び側面67のうちの2つの面のみを囲うように配置されても良い。或いは、補強部70は、上面65、下面66及び側面67のうちのいずれかに加えて、伝搬面62の一部まで含めて囲うように配置されても良い。
【0078】
また、補強部70を、導光部60に対して着脱可能に構成するようにしてもよい。そして、ユーザが用途に応じて補強部70を付け替えるようにしてもよい。また、画像投影装置1を屋外での作業時等に利用する場合に、高い剛性を有する材料で形成された補強部70を導光部60に取り付けて画像投影装置1を使用するようにしてもよい。また、画像投影装置1を屋内で使用する場合に、柔軟性を有する衝撃緩衝材料で形成された補強部70を導光部60に取り付けて画像投影装置1を使用するようにしてもよい。
【0079】
上記実施形態では、投影ユニット3は、メガネフレームの左目部分に取り付けられており、ユーザUの左目の眼球EYにレーザ光を入射させた。しかしながら、投影ユニット3は、このような構成に限らず、メガネフレームの右目部分又は両目部分に取り付けられ、ユーザUの右目又は両目の眼球EYにレーザ光を入射させる構成であっても良い。また、投影ユニット3は、メガネフレームに限らず、ユーザUのヘルメット、帽子、ゴーグル等に取り付けられて使用されるものであっても良い。
【0080】
上記実施形態では、導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光を、眼球EYに対して側方から眼球EYの真正面の位置に導いた。しかしながら、導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光を、眼球EYに対して上方又は下方から眼球EYの真正面の位置に導く構成であっても良い。
【0081】
上記実施形態では、走査部30は、MEMSミラー31と反射ミラー32とを備えていた。しかしながら、走査部30は、このような構成に限らず、レーザモジュール20から出射されたレーザ光を走査可能であれば、どのような構成であっても良い。例えば、走査部30は、凹状の鏡面を備える反射ミラー32に限らず、レーザ光を眼球EY内で集光できるものであれば、例えば、凸レンズ、メニスカスレンズ等を備えていても良い。また、走査部30は、MEMSミラー31以外の光学系を用いても良い。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施形態等について説明したが、本発明は上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0083】
1…画像投影装置、3…投影ユニット、5…制御ユニット、7…複合ケーブル、10…入出力インタフェース、11…画像処理部、12…メモリ、13…EPROM、18…充電回路、19…バッテリ、20…レーザモジュール、21…投影制御部、23…レーザドライバ、30…走査部、31…MEMSミラー、32…反射ミラー、60…導光部、61,62…伝搬面、63…反射面、65…上面、66…下面、67…側面、70…補強部、EY…眼球、E1…上眼瞼、E2…下眼瞼、PU…瞳孔、RE…網膜、U…ユーザ
図1
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図7