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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041573
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240319BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146453
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝典
(72)【発明者】
【氏名】南 俊二
(72)【発明者】
【氏名】東山 浩
(72)【発明者】
【氏名】大坪 宏彰
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA03
2H199CA06
2H199CA07
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA34
2H199CA45
2H199CA46
2H199CA47
2H199CA48
2H199CA53
2H199CA54
2H199CA81
2H199CA92
(57)【要約】
【課題】網膜投影方式でユーザに画像を視認させる装置において、導光部に汚れが付着することを抑制することが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】画像投影装置1は、ユーザUに装着されて使用され、ユーザUの網膜に画像を投影する。走査部30は、光源から出射されたレーザ光を走査する。導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光をユーザUの眼球EY内に導いて、網膜に画像を投影する。導光部60は、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する対向面の表面における、レーザ光が導光部60から眼球EYに向けて出射する際に通過する通過領域以外の領域に、複数の突出部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着されて使用され、前記ユーザの網膜に画像を投影する画像投影装置であって、
光源から出射されたレーザ光を走査する走査部と、
前記走査部により走査された前記レーザ光を前記ユーザの眼球内に導いて、前記網膜に前記画像を投影する導光部と、を備え、
前記導光部は、前記画像投影装置が前記ユーザに装着されたときに前記眼球に対向する対向面の表面における、前記レーザ光が前記導光部から前記眼球に向けて出射する際に通過する通過領域以外の領域に、複数の突出部を備える、
ことを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
前記複数の突出部のピッチ、径及び配置は、前記対向面上において前記複数の突出部が前記通過領域と重ならないように、定められる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項3】
前記複数の突出部のピッチは、前記通過領域のピッチと等しい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像投影装置。
【請求項4】
前記複数の突出部のピッチは、前記通過領域のピッチの2以上の整数倍である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像投影装置。
【請求項5】
前記複数の突出部の高さは、前記複数の突出部のピッチ以上である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像投影装置。
【請求項6】
前記導光部は、前記対向面と反対側に位置する面の表面に、複数の第2突出部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像投影装置。
【請求項7】
前記対向面と反対側に位置する前記面における前記複数の第2突出部の密度は、前記対向面における前記複数の突出部の密度よりも大きい、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像投影装置。
【請求項8】
前記通過領域は、前記網膜に投影される前記画像の画素数に基づいて設定される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像投影装置。
【請求項9】
前記通過領域は、前記網膜に投影される前記画像の画素数と、前記導光部の前記対向面の表面における前記走査部により走査される前記レーザ光の面積の大きさと、に基づいて設定される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜投影方式により網膜に画像を投影してユーザに画像を視認させる技術が知られている。例えば、特許文献1は、画像光を網膜上に走査することで画像を表示する画像表示装置を開示している。
【0003】
網膜投影方式は、瞳孔に光を通して網膜に画像を直接的に投影するマクスウェル視を利用する。そのため、網膜投影方式は、LCD(Liquid Crystal Display)やOLED(Organic Light Emitting Diode)を使用した仮想スクリーン投影方式に比べて、フリーフォーカスのメリットを有する。これにより、前眼部異常等のロービジョンのユーザにとっても画像を見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-159559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような網膜投影方式でユーザに画像を視認させる装置において、ユーザの眼球に光線を導く導光部の一部は、外観に露出している。このような外観に露出している部分は、ユーザが触れることができるため、異物等の汚れが付着しやすい。汚れが付着すると、投影される画像が乱れたり、ユーザの視野が妨害されたりするおそれがある。このような事情に鑑み、導光部における汚れの付着を抑えることが求められている。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためのものであり、網膜投影方式でユーザに画像を視認させる装置において、導光部に汚れが付着することを抑制することが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像投影装置は、
ユーザに装着されて使用され、前記ユーザの網膜に画像を投影する画像投影装置であって、
光源から出射されたレーザ光を走査する走査部と、
前記走査部により走査された前記レーザ光を前記ユーザの眼球内に導いて、前記網膜に前記画像を投影する導光部と、を備え、
前記導光部は、前記画像投影装置が前記ユーザに装着されたときに前記眼球に対向する対向面の表面における、前記レーザ光が前記導光部から前記眼球に向けて出射する際に通過する通過領域以外の領域に、複数の突出部を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、網膜投影方式でユーザに画像を視認させる装置において、導光部に汚れが付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る画像投影装置の外観を示す図である。
図2】実施形態1に係る画像投影装置の投影ユニットを正面から見た図である。
図3】実施形態1に係る画像投影装置の制御ユニットの構成を示すブロック図である。
図4】実施形態1に係る画像投影装置におけるレーザ光の光路を示す模式図である。
図5】実施形態1に係る画像投影装置の導光部の断面を示す図である。
図6】(a)は、実施形態1において導光部の第1伝搬面の表面の一部を拡大して示す図である。(b)は、(a)を正面から見た図である。
図7】(a)は、実施形態2において導光部の第2伝搬面の表面の一部を拡大して示す図である。(b)は、(a)を正面から見た図である。
図8】(a)は、実施形態3において導光部の第1伝搬面の表面の一部を拡大して示す図である。(b)は、(a)を正面から見た図である。
図9】(a)は、変形例において導光部の第1伝搬面の表面の一部を拡大して示す図である。(b)は、(a)を正面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0011】
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る画像投影装置1の概略を示す。画像投影装置1は、ユーザUに装着されて使用され、ユーザUの眼球EY内の網膜に画像を投影する網膜投影方式の装置である。画像投影装置1は、マクスウェル視を利用して網膜に画像を投影することで、静止画像及び動画像(映像)を含む様々な画像をユーザUに視認させる。画像投影装置1は、スマートグラス、網膜走査ディスプレイ等とも呼ばれる。
【0012】
なお、図1では、ユーザUの頭部の輪郭を破線で示しており、理解を容易にするため、2つの眼球EY以外の頭部のパーツを省略している。また、図1では、ユーザUから見て前方向が+Y方向であり、ユーザUから見て右方向が+X方向であり、ユーザUから見て上方向が+Z方向であるとして説明する。以降の図でも同様である。
【0013】
図1に示すように、画像投影装置1は、投影ユニット3と、制御ユニット5と、複合ケーブル7と、を備える。
【0014】
投影ユニット3は、ユーザUの眼球EYにレーザ光を入射させて、ユーザUの網膜上に画像を投影するユニットである。投影ユニット3は、レーザモジュール20から出射されたレーザ光を走査する走査部30と、走査部30により走査されたレーザ光を眼球EYに導く導光部60と、を備える。
【0015】
投影ユニット3は、メガネフレーム等に取り付けられて使用される。投影ユニット3がメガネフレームに取り付けられた場合、走査部30は、メガネフレームの側部に配置される。また、導光部60は、眼球EYの真正面に位置するように、メガネフレームのレンズ部分であって、一例としてレンズの内側に配置される。
【0016】
図2に、メガネフレームに取り付けられた投影ユニット3を、眼球EYの正面から見た様子を示す。理解を容易にするため、図2では、ユーザUの2つの眼球EY以外のパーツは省略している。
【0017】
図2に示すように、投影ユニット3がメガネフレームに取り付けられた場合、導光部60は、眼球EYに対して真正面に位置する。このような状態において、投影ユニット3は、制御ユニット5から出射されたレーザ光を走査部30により走査し、導光部60を通して眼球EYに対して正面から入射させる。
【0018】
図1に戻って、制御ユニット5は、画像投影装置1を制御するユニットである。制御ユニット5は、画像投影装置1がユーザUにより使用される際、ユーザUの衣服のポケット等に入れられる。制御ユニット5は、画像データに基づいて強度変調されたレーザ光を出射して、複合ケーブル7を通して投影ユニット3に出力する。
【0019】
図3を参照して、制御ユニット5の構成について説明する。図3に示すように、制御ユニット5は、入出力インタフェース10と、画像処理部11と、メモリ12と、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)13と、充電回路18と、バッテリ19と、レーザモジュール20と、投影制御部21と、レーザドライバ23と、を備える。
【0020】
入出力インタフェース10は、外部装置との間でデータの入力及び出力するためのインタフェースである。外部装置は、例えば、カメラ、スマートフォン、PC(パーソナルコンピュータ)、SD(Secure Digital)カード等である。入出力インタフェース10は、例えば、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、USB(Universal Serial Bus)等の規格の端子を備えており、外部装置と電気的に接続される。
【0021】
入出力インタフェース10は、外部装置から画像信号を形成するための画像データを受信し、画像処理部11に送信する。画像データは、網膜REに投影する対象となる画像を示すデータである。画像データは、例えば、カメラ又はスマートフォンで撮影された撮影データ、PCで生成された文字、図形、写真等を示すデータ等である。
【0022】
投影対象となる画像は、一例として、横方向に1280個のドット及び縦方向に720個のドットの画素を有する。なお、投影対象となる画像は、静止画像であっても良いし、動画像(映像)であっても良い。
【0023】
画像処理部11は、CPU(Central Processing Unit)等の制御回路を備える。CPUは、EPROM13に記憶されている制御プログラムを読み出して、メモリ12をワークメモリとして用いながら、画像処理部11及び制御ユニット5を制御する。なお、画像処理部11は、CPUの代わりに、SoC(System-on-a-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路を備えても良い。
【0024】
メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリであって、制御ユニット5のワークメモリとして用いられる。
【0025】
EPROM13は、書き込み可能な不揮発性の半導体メモリである。EPROM13は、制御ユニット5によって実行されるプログラム及びデータを記憶している。なお、制御ユニット5は、EPROM13に限らず、不揮発性のメモリとしてフラッシュメモリ、ハードディスク等を備えていても良い。
【0026】
充電回路18は、AC/DC(Alternate Current/Direct Current)アダプタに接続される。AC/DCアダプタから供給された電力を、バッテリ19及び制御ユニット5の各部に供給する。
【0027】
画像処理部11は、入出力インタフェース10を介して外部装置から受信した画像データ、又は、EPROM13に予め記憶された画像データに対して画像処理を行う。これにより、画像処理部11は、レーザモジュール20から出射されるレーザ光のもとになる画像データを生成し、生成した画像データを投影制御部21に転送する。
【0028】
レーザモジュール20は、ユーザUの眼球EYに入射されるレーザ光を出射する。レーザモジュール20は、光源の一例である。
【0029】
より詳細には、レーザモジュール20は、図示しないR(赤色)レーザ光源、G(緑色)レーザ光源、及びB(青色)レーザ光源、を備えており、レーザ光を出射する。Rレーザ光源、Gレーザ光源及びBレーザ光源は、レーザドライバ23から送信された画像信号に応じてそれぞれ強度変調されたレーザ光を出射する。各レーザ光源は、例えば、半導体レーザ(レーザダイオード)、固体レーザ等である。
【0030】
各レーザ光源から出射されたレーザ光は、いずれも図示を省略するが、ダイクロイックミラー等の光学系により合波され、コリメートレンズ等の光学系により平行光化され、集光レンズ等の光学系により集光されて、複合ケーブル7へ出射される。
【0031】
投影制御部21は、レーザモジュール20によるレーザ光の出射と走査部30によるレーザ光の走査とを制御することにより、画像投影装置1による画像の投影を制御する。投影制御部21は、図示を省略するが、CPU、SoC、ASIC等の制御回路を備えており、画像投影装置1における画像投影処理を統括的に制御する。なお、CPU、SoC、ASIC等を総称して、「プロセッサ」と呼んでも良い。
【0032】
投影制御部21は、画像処理部11から転送された画像データを画像信号に変換し、レーザドライバ23を通して画像信号をレーザモジュール20に供給する。投影制御部21は、画像処理部11から転送された画像データの各画素の画素値(RGB値)を1画素ずつ順に読み出し、読み出した画素値に対応する画像信号を生成する。そして、投影制御部21は、生成した画像信号を、1画素ずつ順にレーザドライバ23に送信する。
【0033】
レーザドライバ23は、投影制御部21から受信した画像信号に基づいて、レーザモジュール20を駆動する。具体的に説明すると、レーザドライバ23は、投影制御部21から受信した画像信号に対応する輝度で、Rレーザ光源、Gレーザ光源及びBレーザ光源のそれぞれを発光させる。これにより、レーザドライバ23は、受信した画像信号に対応する色のレーザ光をレーザモジュール20から出射させる。
【0034】
複合ケーブル7は、レーザモジュール20から出射されたレーザ光を伝送し、投影ユニット3に出射するケーブルである。複合ケーブル7は、制御ユニット5及び投影ユニット3と光学的に接続される。複合ケーブル7により伝送されたレーザ光は、図示しないコリメートレンズによって平行光化され、投影ユニット3の走査部30に出射される。また、複合ケーブル7は、投影制御部21から走査部30に送信される制御信号を伝送する。
【0035】
次に、図4を参照して、画像投影装置1におけるレーザ光の光路について説明する。図4は、図1におけるA-Aの断面を示している。図4に示すように、投影ユニット3において、走査部30は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー31と、反射ミラー32と、を備える。
【0036】
走査部30において、MEMSミラー31は、レーザモジュール20から出射されたレーザ光を走査する。具体的に説明すると、MEMSミラー31は、レーザモジュール20から出射されたレーザ光を受光し、レーザ光を反射ミラー32に向けて反射する。MEMSミラー31は、反射面の角度を変化させることで、反射するレーザ光を2次元の範囲に走査させる。
【0037】
より詳細には、MEMSミラー31は、MEMS加工により形成されたミラーである。MEMSミラー31では、ミラー周辺に配置されたコイルに電流を流すことにより発生するローレンツ力により、ミラーの傾きを変更することができる。これにより、ミラー面に入射したレーザ光の光路を変更し、2次元の範囲に走査することができる。
【0038】
MEMSミラー31は、図示を省略するMEMSドライバにより駆動される。投影制御部21は、複合ケーブル7を通してMEMSドライバに制御信号を送信する。MEMSドライバは、投影制御部21から受信した制御信号に基づいて、MEMSミラー31に駆動信号を送信し、MEMSミラー31の傾きを変更する。これにより、MEMSドライバは、MEMSミラー31がレーザ光を走査する方向、言い換えると、MEMSミラー31がレーザ光を反射する方向を制御する。
【0039】
より詳細には、投影制御部21は、MEMSミラー31による走査をレーザモジュール20によるレーザ光の出射と同期させる。具体的に説明すると、投影制御部21は、投影対象となる画像における各座標の画素の画素値に対応するレーザ光が、網膜RE上の同じ座標に対応する位置に投射されるように、レーザモジュール20が各画素の画素値に対応するレーザ光を出射するタイミングと、そのタイミングにおいてMEMSミラー31がレーザ光を走査する方向と、を制御する。
【0040】
MEMSミラー31は、MEMSドライバから受信した駆動信号に基づいて、複合ケーブル7により伝送される平行光化されたレーザ光を、2次元の範囲の方向に走査する。例えば、投影対象となる画像が1280×720ドットの画素を有している場合、1280×720通りの異なる方向にレーザ光を反射する。MEMSミラー31により走査されたレーザ光は、反射ミラー32に入射し、図4において斜線が付された範囲の光路を通って、ユーザUの眼球EY内の網膜RE上に投射される。
【0041】
反射ミラー32は、レーザ光の光路におけるMEMSミラー31の後段に配置されている。反射ミラー32は、凹状の鏡面を備え、MEMSミラー31により走査されたレーザ光を反射及び集光する。反射ミラー32により反射されたレーザ光は、導光部60に入射され、眼球EY内の瞳孔PU付近で集束して、網膜RE上に投射される。
【0042】
導光部60は、レーザ光の光路における反射ミラー32の後段に配置されている。導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光を眼球EYに導くことにより、眼球EY内の網膜REに画像を投影する。導光部60は、レーザ光を通すことが可能な、アクリル等の適宜の光学材料により形成されている。導光部60は、導光リフレクタとも呼ばれる。
【0043】
導光部60は、伝搬面61,62と反射面63とを備える。導光部60におけるレーザ光の光路は、伝搬面61,62と反射面63とにより形成される。
【0044】
伝搬面61,62は、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに、ユーザUの眼球EYに対向する方向であるY方向に垂直となる面である。このうち、伝搬面61は、ユーザUに近い側の面であって、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する対向面である。一方で、伝搬面62は、ユーザUから遠い側の面であって、伝搬面61とは反対側(裏側)に位置する面である。なお、伝搬面61と伝搬面62とを区別して称する場合、それぞれ第1伝搬面及び第2伝搬面と呼ぶ。
【0045】
ここで、画像投影装置1がユーザUに装着されたときとは、具体的には、投影ユニット3がメガネフレーム等に取り付けられた状態で、そのメガネフレーム等がユーザUに装着されたときを意味する。このとき、導光部60はユーザUの眼球EYの真正面に配置されて、画像投影装置1がユーザUの網膜REに画像を投影可能な状態になる。
【0046】
MEMSミラー31により走査されたレーザ光は、反射ミラー32により反射された後、導光部60内において伝搬面61と伝搬面62との間で複数回反射しながら、+X方向に進行する。これにより、レーザ光は、導光部60内においてユーザUの瞳孔PUから眼球EY内に入射可能な位置まで導かれる。
【0047】
反射面63は、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する位置に配置されている。反射面63は、2つの光学材料を貼り合わせることで、2つの光学材料の間の界面として形成される。
【0048】
反射面63は、眼球EYに対向する方向(Y方向)に対して走査部30の側(-X方向)に向けて斜めに傾いている。反射面63は、伝搬面61と伝搬面62との間を+X方向に伝搬されたレーザ光を-Y方向に反射し、導光部60から出射させて瞳孔PUから眼球EY内に入射させる。
【0049】
眼球EY内に入射したレーザ光は、水晶体の中心付近で集束して網膜REに投射される。これにより、網膜REに画像が結像され、ユーザUは結像された画像を視認することができる。このようにして、導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光を眼球EY内に導き、網膜REに画像を投影する。
【0050】
図5に、導光部60を横方向(X方向)からみた様子を示す。図5は、図2におけるB-Bの断面を示している。図5に示すように、導光部60は、上下方向(Z方向)に幅L1を有し、眼球EYに対向する方向(Y方向)に幅(厚み)Tを有する。
【0051】
ここで、上下方向(Z方向)における導光部60の幅L1は、上下方向における眼の開口幅Wよりも大きい。ここで、眼の開口幅Wは、上眼瞼(上まぶた)E1と下眼瞼(下まぶた)E2との間の幅であって、ユーザUが眼を可能な限り開いた場合におけるまぶたの開口幅に相当する。
【0052】
このように、導光部60の幅L1を眼の開口幅Wよりも大きく設計することにより、導光部60が眼球EYに直接触れることを防止することができる。そのため、眼球EYの近くに小型の部品が存在しがちとなる画像投影装置1において、安全性を高めることができる。
【0053】
なお、導光部60の幅L1を眼の開口幅Wよりも大きく設計する方法として、種々の方法が考えられる。例えば、公知の調査結果に記載される人体の眼の開口幅の平均的な値を参照して導光部60の幅L1を設計してもよいし、画像投影装置1の利用者の眼の開口幅を予め測定した上で導光部60の幅L1を設計するようにしてもよい。
【0054】
次に、図6(a)及び(b)を参照して、導光部60の表面に設けられた複数の突出部81について説明する。図6(a)及び(b)に示すように、導光部60は、画像投影装置1がユーザUに装着されたときに眼球EYに対向する伝搬面である伝搬面61の表面に複数の突出部81を備える。
【0055】
複数の突出部81は、高さHの微小な突起であって、横方向(X方向)及び縦方向(Z方向)に等しいピッチPで配置されている。複数の突出部81のそれぞれは、伝搬面61の表面から外側に向けて、すなわち-Y方向に突き出した形状をしている。
【0056】
複数の突出部81のそれぞれは、その底部が最も太く、底部から先端部に向けて徐々に細くなる形状をしている。なお、図6(a)及び(b)では各突出部81の先端部は球状をしているが、各突出部81の形状はこれに限らず、例えば先端が尖っていても良いし、先端が平面状であっても良い。
【0057】
複数の突出部81は、伝搬面61の表面に対するユーザUの指などの接触を防止するための役割を持つ。より詳細に説明すると、導光部60において、眼球EYに対向する対向面である伝搬面61は、レーザ光を眼球EYに向けて出射するため、外観に露出している。このような外観に露出している部分は、ユーザUが触れることができるため、異物や埃等のような汚れが付着しやすい。汚れが付着すると、投影される画像が乱れたり、ユーザUの視野が妨害されたりするおそれがある。複数の突出部81は、このような汚れの付着を抑える目的で、伝搬面61の表面に設けられている。
【0058】
複数の突出部81は、微細な構造であって、導光部60から眼球EY内に導かれるレーザ光に影響を与えないように設けられている。具体的には、導光部60は、伝搬面61におけるレーザ光が通過する通過領域85以外の領域に、複数の突出部81を備える。
【0059】
ここで、通過領域85は、走査部30により2次元の範囲に走査されたレーザ光が導光部60から眼球EYに向けて出射する際に通過する、伝搬面61上の領域(レーザスポット)である。図6(a)及び(b)では、理解を容易にするため、通過領域85に斜線を付して示している。
【0060】
一例として、投影対象となる画像が1280×720個のドットの画素を有する場合、走査部30は画素数と同じ数の方向にレーザ光を走査するため、伝搬面61上に1280×720個の通過領域85が存在する。この場合において、例えば伝搬面61における約9mm×5mmの面積の範囲にレーザ光が走査されると仮定すると、通過領域85のピッチは、横方向(X方向)で“9mm/1280=約7μm”と計算され、縦方向(Z方向)で“5mm/720=約7μm”と計算される。すなわち、通過領域85は、横方向及び縦方向のそれぞれに約7μmのピッチで伝搬面61上に並ぶ。なお、この例ではμmの単位における小数点1桁目を四捨五入している。
【0061】
また、投影対象となる画像が2560×1440個のドットの画素を有し、伝搬面61における約9mm×5mmの面積の範囲にレーザ光が走査されると仮定した場合には、伝搬面61上に、2560×1440個の通過領域85が存在する。そして、通過領域85のピッチは、横方向(X方向)で“9mm/2560=約3.5μm”と計算され、縦方向(Z方向)で“5mm/1440=約3.5μm”と計算される。なお、この例ではμmの単位における小数点2桁目を四捨五入している。
【0062】
その他の場合でも同様に、投影対象となる画像がA×B個のドットの画素を有しており、伝搬面61におけるレーザ光の走査範囲がXmm×Ymmの面積である場合、伝搬面61上における通過領域80の横方向のピッチPwはX/A[mm]となり、縦方向のピッチPvはY/B[mm]となる。
【0063】
このような通過領域85の位置は、走査部30により走査されたレーザ光が集光する瞳孔PU付近の位置までの距離に依存するため、画像投影装置1の光学的な設計に応じて定められる。
【0064】
複数の突出部81のピッチP、径φ及び配置は、伝搬面61上において複数の突出部81がこのようなピッチで並ぶ複数の通過領域85と重ならないように、定められる。具体的に説明すると、図6(b)に示すように、横方向と縦方向とのそれぞれの方向において、複数の突出部81のピッチPは、通過領域85のピッチPと等しい。言い換えると、複数の突出部81は、横方向と縦方向とのそれぞれの方向において、通過領域85と同じピッチPで配置される。そして、複数の突出部81のそれぞれは、横方向と縦方向とのそれぞれの方向において、通過領域85と突出部81とが交互に並ぶように、隣り合う2つの通過領域85の間の中央に配置される。
【0065】
更に、各突出部81が通過領域85と重ならないようにするためには、各突出部81の径(直径)Φaと各通過領域85の径(直径)Φbとの和が、ピッチPよりも小さくなることが必要である。すなわち、“Φa+Φb<P”の関係式が満たされる必要がある。各突出部81の径Φaは、各通過領域85の径ΦbとピッチPとに基づいて、このような関係式を満たす値(例えば3.5μm)に定められる。
【0066】
このように、伝搬面61上に形成された複数の突出部81は、導光部60から眼球EYに向けて出射されるレーザ光に影響を与えないように、そのピッチP、径Φa及び配置が定められている。言い換えると、各突出部81は、伝搬面61におけるレーザ光の通過領域85に対応して、通過領域85とは重ならない領域に設けられている。
【0067】
また、複数の突出部81の高さHは、導光部60に接触する可能性が高いものがユーザUの指であることを考慮して、ユーザUの指が突出部81の先端に触れても伝搬面61の表面に届かない程度の高さであることが好適である。具体的に説明すると、指の柔軟性を考慮すると、各突出部81の高さHは、ピッチP以上である、すなわち“H≧P(H≠0)”を満たす値に設計されることが好適である。
【0068】
以上説明したように、実施形態1に係る画像投影装置1は、ユーザUに装着されて使用され、ユーザUの網膜REに画像を投影する装置であって、導光部60の伝搬面61の表面に複数の突出部81を備える。複数の突出部81が設けられていることにより、伝搬面61の表面に直接触れにくくなる。例えば、ユーザUの指が突出部81の先端に触れたとしても、皮脂の塊が突出部81の微細な形状により分散し、伝搬面61の表面に定着しない。そのため、伝搬面61に対する異物や埃等の汚れが付着することを抑制することができる。その結果として、網膜REに投影される画像が乱れたり、ユーザUの視野が妨害されたりすることを回避することができる。
【0069】
特に、実施形態1に係る画像投影装置1は、複数の突出部81を、導光部60の伝搬面61の表面における、レーザ光が導光部60から眼球EYに向けて出射する際に通過する通過領域85以外の領域に備える。これにより、導光部60から眼球EYに向けて出射されるレーザ光を阻害することなく、導光部60の表面に汚れが付着することを抑制することができる。
【0070】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態1と同様の構成及び機能については、説明を省略する。
【0071】
実施形態1では、導光部60は、画像投影装置1がユーザUに装着されたときにユーザUの眼球EYと対向する対向面である伝搬面61の表面に、複数の突出部81を備えていた。これに対して、実施形態2では、導光部60は、伝搬面61の表面に加えて、伝搬面61とは反対側の面である伝搬面62の表面にも、複数の突出部82を備える。
【0072】
なお、伝搬面61の表面に設けられた各突出部81と伝搬面62の表面に設けられた各突出部82と区別して称する場合、それぞれ第1突出部及び第2突出部と呼ぶ。
【0073】
図7(a)及び(b)に、実施形態2における伝搬面62の表面の一部を示す。図7(a)及び(b)に示すように、導光部60は、伝搬面62の表面に複数の突出部82を備える。複数の突出部82は、高さH2の微小な突起であって、横方向(X方向)及び縦方向(Z方向)に等しいピッチP2で配置されている。
【0074】
複数の突出部82のそれぞれは、伝搬面62の表面から外側に向けて、すなわち+Y方向に突き出した形状をしている。複数の突出部82は、伝搬面62の表面に対する接触を防止するための役割を持つ。
【0075】
このように、伝搬面61に複数の突出部81が設けられているだけでなく、伝搬面62にも複数の突出部82が設けられていることで、伝搬面61と伝搬面62との両方の面における汚れの付着を抑えることができる。
【0076】
より詳細に説明すると、伝搬面62はレーザ光を反射することが目的の面であるため、伝搬面61とは異なり、レーザ光が通る通過領域85は存在しない。そのため、伝搬面62における複数の突出部82の密度を、伝搬面61における複数の突出部81の密度よりも大きくすることができる。
【0077】
具体的には、伝搬面62における突出部82のピッチP2を、伝搬面61における突出部81のピッチPよりも小さくする。或いは、伝搬面62における突出部82の径(直径)φ2を、伝搬面61における突出部81の径Φaよりも大きくする。このように伝搬面62における突出部82の密度を大きくすることで、伝搬面62を通して眼球EY内に入射する外光を遮蔽することができ、網膜REに投影される画像を視認しやすくすることができる。
【0078】
このように、伝搬面62における複数の突出部82のピッチP2、径(直径)φ2及び配置は、通過領域85に依存することなく、定めることができる。これにより、網膜REに投影される画像の視認性を調整することができる。
【0079】
なお、伝搬面62における突出部82の高さH2は、実施形態1と同様に、ユーザUの指が突出部82の先端に触れても伝搬面62の表面に届かないように、伝搬面62における突出部82のピッチP2以上であっても良い。
【0080】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態1,2と同様の構成及び機能については、説明を省略する。
【0081】
実施形態1では、伝搬面61の表面に設けられた複数の突出部81のピッチPは、複数の通過領域85のピッチPと等しかった。これに対して、実施形態3では、伝搬面61の表面に設けられた複数の突出部81のピッチは、複数の通過領域85のピッチPの2以上の整数倍である。
【0082】
図8(a)及び(b)に、実施形態3における伝搬面61の表面の一部を示す。図8(a)及び(b)に示すように、導光部60は、伝搬面61の表面に複数の突出部81を備える。
【0083】
複数の突出部81のそれぞれは、実施形態1と同様に、伝搬面61の表面から外側に向けて、すなわち-Y方向に突き出した形状をしている。一方で、実施形態3において、複数の突出部81のピッチP3は、横方向と縦方向とのそれぞれの方向において、通過領域85のピッチPの2倍である。言い換えると、複数の突出部81は、横方向と縦方向とのそれぞれの方向において、通過領域85の2倍のピッチP3で配置される。そして、複数の突出部81のそれぞれは、横方向と縦方向とのそれぞれの方向において、1つの突出部81と2つの通過領域85とが交互に並ぶように、通過領域85の間に1つおきに配置される。
【0084】
このように突出部81のピッチP3を通過領域85のピッチPの2倍にすることで、実施形態1に比べて突出部81の数を減らすことができる。そのため、簡単な構成で、導光部60から眼球EYに向けて出射されるレーザ光に影響を与えずに、伝搬面61における汚れの付着を抑制することができる。
【0085】
なお、突出部81のピッチP3は、通過領域85のピッチPの2倍であることに限らず、通過領域85のピッチPの整数倍であれば、3倍、4倍等であっても良い。突出部81のピッチP3を大きくすることで伝搬面61に汚れが付着することを抑制する能力は低下するが、構成を簡略化につながる。
【0086】
また、実施形態3における突出部81の高さHは、実施形態1と同様に、ユーザUの指が突出部81の先端に触れても伝搬面61の表面に届かないように、突出部81のピッチP3以上であっても良い。
【0087】
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0088】
例えば、上記実施形態では、複数の突出部81は、横方向と縦方向とのそれぞれの方向において通過領域85と突出部81とが交互に並ぶように配置された。一方で、複数の突出部81の配置は、通過領域85と重ならない位置であれば、これに限らず他の配置も可能である。
【0089】
一例として、図9(a)及び(b)に示すように、複数の突出部81のそれぞれは、四角形の頂点に配置された4つの通過領域85の中心に配置されても良い。この場合、各突出部81が通過領域85と重ならないようにするためには、各突出部81の径(直径)Φaと各通過領域85の径(直径)Φbとの和が、ピッチPの√2倍よりも小さくなることが必要である。すなわち、“Φa+Φb<P×√2”の関係式が満たされる必要がある。言い換えると、実施形態1に比べて、突出部81の径Φaが満たすべき条件が緩和される。各突出部81の径Φaは、各通過領域85の径ΦbとピッチPとに基づいて、このような関係式を満たす値に定められる。
【0090】
上記実施形態では、投影ユニット3は、メガネフレームの左目部分に取り付けられており、ユーザUの左目の眼球EYにレーザ光を入射させた。しかしながら、投影ユニット3は、このような構成に限らず、メガネフレームの右目部分又は両目部分に取り付けられ、ユーザUの右目又は両目の眼球EYにレーザ光を入射させる構成であっても良い。また、投影ユニット3は、メガネフレームに限らず、ユーザUのヘルメット、帽子、ゴーグル等に取り付けられて使用されるものであっても良い。
【0091】
上記実施形態では、導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光を、眼球EYに対して側方から眼球EYの真正面の位置に導いた。しかしながら、導光部60は、走査部30により走査されたレーザ光を、眼球EYに対して上方又は下方から眼球EYの真正面の位置に導く構成であっても良い。
【0092】
上記実施形態では、走査部30は、MEMSミラー31と反射ミラー32とを備えていた。しかしながら、走査部30は、このような構成に限らず、レーザモジュール20から出射されたレーザ光を走査可能であれば、どのような構成であっても良い。例えば、走査部30は、凹状の鏡面を備える反射ミラー32に限らず、レーザ光を眼球EY内で集光できるものであれば、例えば、凸レンズ、メニスカスレンズ等を備えていても良い。また、走査部30は、MEMSミラー31以外の光学系を用いても良い。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施形態等について説明したが、本発明は上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0094】
1…画像投影装置、3…投影ユニット、5…制御ユニット、7…複合ケーブル、10…入出力インタフェース、11…画像処理部、12…メモリ、13…EPROM、18…充電回路、19…バッテリ、20…レーザモジュール、21…投影制御部、23…レーザドライバ、30…走査部、31…MEMSミラー、32…反射ミラー、60…導光部、61,62…伝搬面、63…反射面、81,82…突出部、85…通過領域、EY…眼球、E1…上眼瞼、E2…下眼瞼、PU…瞳孔、RE…網膜、U…ユーザ
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