(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041574
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ガスタービンプラントの運用方法及びガスタービンプラント
(51)【国際特許分類】
F02C 6/08 20060101AFI20240319BHJP
F02C 6/18 20060101ALI20240319BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20240319BHJP
F02C 7/224 20060101ALI20240319BHJP
F02C 7/143 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F02C6/08
F02C6/18 A
F02C7/00 B
F02C7/224
F02C7/143
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146455
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】澄村 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】本多 正人
(72)【発明者】
【氏名】榊 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】緒方 良太
(72)【発明者】
【氏名】辻 良史
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 真一
(72)【発明者】
【氏名】恵藤 陽介
(57)【要約】
【課題】ガスタービンプラントにおいてガスタービンの運転を継続したままコンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える。
【解決手段】少なくとも一実施形態に係るガスタービンプラントの運用方法は、空冷器を予熱するステップと、水冷器と空冷器で冷却するステップと、第1予熱器を予熱するステップと、第2予熱器と第1予熱器で加熱するステップと、空冷器で冷却するステップと、第1予熱器で加熱するステップと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、前記ガスタービンから排気された排気ガスと水とを熱交換させて、蒸気を発生させる排熱回収ボイラと、を備えるガスタービンプラントの運用方法であって、
前記ガスタービンプラントは、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した圧縮空気を外気で冷却するための空冷器を備える空冷ラインと、前記圧縮空気を排熱回収ボイラからの第1給水で冷却するための水冷器を備える水冷ラインとが並列に接続された圧縮空気冷却ラインと、
前記ガスタービンの燃焼器に供給する燃料を前記空冷器で前記圧縮空気と熱交換されて加熱された前記外気で加熱するための第1予熱器を備える第1加熱ラインと、前記燃料を前記排熱回収ボイラからの第2給水で加熱するための第2予熱器を備える第2加熱ラインとが並列に接続された燃料加熱ラインと、
を備え、
前記圧縮空気を前記空冷器で冷却せずに前記水冷器で冷却し、且つ、前記燃料を前記第1予熱器で加熱せずに前記第2予熱器で加熱する第2運転状態から、前記圧縮空気を前記水冷器で冷却せずに前記空冷器で冷却し、且つ、前記燃料を前記第2予熱器で加熱せずに前記第1予熱器で加熱する第1運転状態へ移行する場合には、
前記空冷器の上流側の前記空冷ラインに設けられた空冷器入口弁を開くとともに、前記空冷器の下流側の前記空冷ラインに設けられたドレン弁を開くことで、前記圧縮空気冷却ラインを流通する前記圧縮空気の一部を前記空冷器に流通させて前記空冷器を予熱するステップと、
前記空冷器を予熱するステップを実施した後、前記ドレン弁を閉じるとともに、前記空冷器の下流側の前記空冷ラインに設けられた空冷器出口弁を開くことで、前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップと、
前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップを実施した後、前記第1予熱器の上流側の前記第1加熱ラインに設けられた第1予熱器入口弁と、前記第1予熱器の下流側の前記第1加熱ラインに設けられた第1予熱器出口弁とを部分開として前記燃料加熱ラインを流通する前記燃料の一部を前記第1予熱器に流通させて前記第1予熱器を予熱するステップと、
前記第1予熱器を予熱するステップを実施した後、前記第1予熱器入口弁及び前記第1予熱器出口弁の開度を大きくすることで、前記燃料を前記第2予熱器と前記第1予熱器とで加熱するステップと、
前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップを実施した後、前記水冷器の上流側の前記水冷ラインに設けられた水冷器入口弁と、前記水冷器の下流側の前記水冷ラインに設けられた水冷器出口弁とを閉じることで、前記圧縮空気を前記水冷器で冷却せずに前記空冷器で冷却するステップと、
前記燃料を前記第2予熱器と前記第1予熱器とで加熱するステップを実施した後、前記第2予熱器の上流側の前記第2加熱ラインに設けられた第2予熱器入口弁と、前記第2予熱器の下流側の前記第2加熱ラインに設けられた第2予熱器出口弁とを閉じることで、前記燃料を前記第2予熱器で加熱せずに前記第1予熱器で加熱するステップと、
を実行する、
ガスタービンプラントの運用方法。
【請求項2】
前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップでは、前記圧縮空気冷却ラインを流通する前記圧縮空気の一部を前記空冷ライン及び前記水冷ラインと並列に接続された圧縮空気バイパスラインを介して流通させることで、前記圧縮空気冷却ラインを流通した後の前記圧縮空気の温度を調節する、
請求項1に記載のガスタービンプラントの運用方法。
【請求項3】
前記燃料を前記第2予熱器と前記第1予熱器とで加熱するステップでは、前記燃料加熱ラインを流通する前記燃料の一部を前記第1加熱ライン及び前記第2加熱ラインと並列に接続された燃料バイパスラインを介して流通させることで、前記燃料加熱ラインを流通した後の前記燃料の温度を調節する、
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントの運用方法。
【請求項4】
前記空冷器入口弁は、並列に接続された親弁と子弁とを含み、
前記空冷器を予熱するステップでは、前記親弁及び前記子弁が閉じた状態から前記子弁を開いて前記空冷ラインの圧力を上昇させた後、前記親弁を開く、
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントの運用方法。
【請求項5】
前記第2給水は、前記排熱回収ボイラの低圧ドラムのドラム水を前記排熱回収ボイラの中圧節炭器で加熱した給水である、
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントの運用方法。
【請求項6】
前記第2運転状態から前記第1運転状態へ移行する場合には、
前記圧縮空気を前記水冷器で冷却せずに前記空冷器で冷却するステップを実施した後、前記水冷器への前記第1給水の供給を停止するステップと、
前記燃料を前記第2予熱器で加熱せずに前記第1予熱器で加熱するステップを実施した後、前記第2予熱器への前記第2給水の供給を停止するステップと、
を実行する、
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントの運用方法。
【請求項7】
ガスタービンと、前記ガスタービンから排気された排気ガスと水とを熱交換させて、蒸気を発生させる排熱回収ボイラと、を備えるガスタービンプラントの運用方法であって、
前記ガスタービンプラントは、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した圧縮空気を外気で冷却するための空冷器を備える空冷ラインと、前記圧縮空気を排熱回収ボイラからの第1給水で冷却するための水冷器を備える水冷ラインとが並列に接続された圧縮空気冷却ラインと、
前記ガスタービンの燃焼器に供給する燃料を前記空冷器で前記圧縮空気と熱交換されて加熱された前記外気で加熱するための第1予熱器を備える第1加熱ラインと、前記燃料を前記排熱回収ボイラからの第2給水で加熱するための第2予熱器を備える第2加熱ラインとが並列に接続された燃料加熱ラインと、
を備え、
前記圧縮空気を前記水冷器で冷却せずに前記空冷器で冷却し、且つ、前記燃料を前記第2予熱器で加熱せずに前記第1予熱器で加熱する第1運転状態から、前記圧縮空気を前記空冷器で冷却せずに前記水冷器で冷却し、且つ、前記燃料を前記第1予熱器で加熱せずに前記第2予熱器で加熱する第2運転状態へ移行する場合には、
前記水冷器への前記第1給水の供給を開始するステップと、
前記第2予熱器への前記第2給水の供給を開始するステップと、
前記水冷器への前記第1給水の供給を開始するステップを実施した後、前記水冷器の上流側の前記水冷ラインに設けられた水冷器入口弁を開くとともに、前記水冷器の下流側の前記水冷ラインに設けられたドレン弁を開くことで、前記圧縮空気冷却ラインを流通する前記圧縮空気の一部を前記水冷器に流通させて前記水冷器を予熱するステップと、
前記水冷器を予熱するステップを実施した後、前記ドレン弁を閉じるとともに、前記水冷器の下流側の前記水冷ラインに設けられた水冷器出口弁を開くことで、前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップと、
前記第2予熱器への前記第2給水の供給を開始するステップを実施した後、前記第2予熱器の上流側の前記第2加熱ラインに設けられた第2予熱器入口弁と、前記第2予熱器の下流側の前記第2加熱ラインに設けられた第2予熱器出口弁とを部分開として前記燃料加熱ラインを流通する前記燃料の一部を前記第2予熱器に流通させて前記第2予熱器を予熱するステップと、
前記第2予熱器を予熱するステップを実施した後、前記第2予熱器入口弁及び前記第2予熱器出口弁の開度を大きくすることで、前記燃料を前記第2予熱器と前記第1予熱器とで加熱するステップと、
前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップを実施した後、前記空冷器の上流側の前記空冷ラインに設けられた空冷器入口弁と、前記空冷器の下流側の前記空冷ラインに設けられた空冷器出口弁とを閉じることで、前記圧縮空気を前記空冷器で冷却せずに前記水冷器で冷却するステップと、
前記燃料を前記第2予熱器と前記第1予熱器とで加熱するステップを実施した後、前記第1予熱器の上流側の前記第1加熱ラインに設けられた第1予熱器入口弁と、前記第1予熱器の下流側の前記第1加熱ラインに設けられた第1予熱器出口弁とを閉じることで、前記燃料を前記第1予熱器で加熱せずに前記第2予熱器で加熱するステップと、
を実行する、
ガスタービンプラントの運用方法。
【請求項8】
ガスタービンと、前記ガスタービンから排気された排気ガスと水とを熱交換させて、蒸気を発生させる排熱回収ボイラと、を備えるガスタービンプラントであって、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した圧縮空気を冷却するための圧縮空気冷却ラインと、
前記ガスタービンの燃焼器に供給する燃料を加熱するための燃料加熱ラインと、
を備え、
圧縮空気冷却ラインは、
前記圧縮空気を外気で冷却するための空冷器を備える空冷ラインと、
前記圧縮空気を排熱回収ボイラからの第1給水で冷却するための水冷器を備える水冷ラインと、
圧縮空気バイパスラインと、
が並列に接続され、
前記燃料加熱ラインは、
前記燃料を前記空冷器で前記圧縮空気と熱交換されて加熱された前記外気で加熱するための第1予熱器を備える第1加熱ラインと、
前記燃料を前記排熱回収ボイラからの第2給水で加熱するための第2予熱器を備える第2加熱ラインと、
燃料バイパスラインと、
が並列に接続されている
ガスタービンプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンプラントの運用方法及びガスタービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンと、ガスタービンから排気された排気ガスと水とを熱交換させて、蒸気を発生させる排熱回収ボイラとを備えるガスタービンプラントが知られている。
ガスタービンは、外気を圧縮して圧縮空気を生成する空気圧縮機と、燃料を圧縮空気中で燃焼させて燃焼ガスを生成する複数の燃焼器と、燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えている。ガスタービンでは、燃焼器の尾筒や、タービンの動翼や静翼等が高温の燃焼ガスに晒されるため、これらの高温部を冷却して、これらの高温部を燃焼ガスの熱から保護する必要がある。
【0003】
ガスタービンの高温部を冷却する冷却系統を備えているガスタービンプラントとして、空気圧縮機からの圧縮空気を外気で冷却するための空冷器を備える空冷ラインと、空気圧縮機からの圧縮空気を排熱回収ボイラからの給水で冷却するための水冷器を備える水冷ラインとが並列に接続された圧縮空気冷却ラインを備えるガスタービンプラントが知られている(例えば特許文献1参照)。
例えば特許文献1に記載のガスタービンプラントにおいて、ガスタービンを運転すると共に排熱回収ボイラを運転するコンバインドサイクル運転では、空気圧縮機からの圧縮空気を排熱回収ボイラからの給水で冷却し、熱効率向上のため、ガスタービンの燃焼器に供給する燃料を排熱回収ボイラからの給水で加熱することが行われている。また、例えば特許文献1に記載のガスタービンプラントにおいて、排熱回収ボイラを運転せずガスタービンを運転するシンプルサイクル運転では、空気圧縮機からの圧縮空気を空冷器にて外気で冷却するとともに、空冷器で圧縮空気と熱交換されて加熱された外気で燃料を加熱することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載したようなガスタービンプラントでは、コンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える際、空冷器による圧縮空気の冷却と水冷器による圧縮空気の冷却とを切り替えるが、この圧縮空気の冷却の切り替えの際に圧縮空気の冷却に影響があるとガスタービンの高温部の保護に影響を及ぼすおそれがある。そのため、特許文献1に記載したようなガスタービンプラントでは、コンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える場合、ガスタービンを停止しなければならなかった。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、ガスタービンプラントにおいてガスタービンの運転を継続したままコンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンプラントの運用方法は、
ガスタービンと、前記ガスタービンから排気された排気ガスと水とを熱交換させて、蒸気を発生させる排熱回収ボイラと、を備えるガスタービンプラントの運用方法であって、
前記ガスタービンプラントは、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した圧縮空気を外気で冷却するための空冷器を備える空冷ラインと、前記圧縮空気を排熱回収ボイラからの第1給水で冷却するための水冷器を備える水冷ラインとが並列に接続された圧縮空気冷却ラインと、
前記ガスタービンの燃焼器に供給する燃料を前記空冷器で前記圧縮空気と熱交換されて加熱された前記外気で加熱するための第1予熱器を備える第1加熱ラインと、前記燃料を前記排熱回収ボイラからの第2給水で加熱するための第2予熱器を備える第2加熱ラインとが並列に接続された燃料加熱ラインと、
を備え、
前記圧縮空気を前記空冷器で冷却せずに前記水冷器で冷却し、且つ、前記燃料を前記第1予熱器で加熱せずに前記第2予熱器で加熱する第2運転状態から、前記圧縮空気を前記水冷器で冷却せずに前記空冷器で冷却し、且つ、前記燃料を前記第2予熱器で加熱せずに前記第1予熱器で加熱する第1運転状態へ移行する場合には、
前記空冷器の上流側の前記空冷ラインに設けられた空冷器入口弁を開くとともに、前記空冷器の下流側の前記空冷ラインに設けられたドレン弁を開くことで、前記圧縮空気冷却ラインを流通する前記圧縮空気の一部を前記空冷器に流通させて前記空冷器を予熱するステップと、
前記空冷器を予熱するステップを実施した後、前記ドレン弁を閉じるとともに、前記空冷器の下流側の前記空冷ラインに設けられた空冷器出口弁を開くことで、前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップと、
前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップを実施した後、前記第1予熱器の上流側の前記第1加熱ラインに設けられた第1予熱器入口弁と、前記第1予熱器の下流側の前記第1加熱ラインに設けられた第1予熱器出口弁とを部分開として前記燃料加熱ラインを流通する前記燃料の一部を前記第1予熱器に流通させて前記第1予熱器を予熱するステップと、
前記第1予熱器を予熱するステップを実施した後、前記第1予熱器入口弁及び前記第1予熱器出口弁の開度を大きくすることで、前記燃料を前記第2予熱器と前記第1予熱器とで加熱するステップと、
前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップを実施した後、前記水冷器の上流側の前記水冷ラインに設けられた水冷器入口弁と、前記水冷器の下流側の前記水冷ラインに設けられた水冷器出口弁とを閉じることで、前記圧縮空気を前記水冷器で冷却せずに前記空冷器で冷却するステップと、
前記燃料を前記第2予熱器と前記第1予熱器とで加熱するステップを実施した後、前記第2予熱器の上流側の前記第2加熱ラインに設けられた第2予熱器入口弁と、前記第2予熱器の下流側の前記第2加熱ラインに設けられた第2予熱器出口弁とを閉じることで、前記燃料を前記第2予熱器で加熱せずに前記第1予熱器で加熱するステップと、
を実行する。
【0008】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンプラントの運用方法は、
ガスタービンと、前記ガスタービンから排気された排気ガスと水とを熱交換させて、蒸気を発生させる排熱回収ボイラと、を備えるガスタービンプラントの運用方法であって、
前記ガスタービンプラントは、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した圧縮空気を外気で冷却するための空冷器を備える空冷ラインと、前記圧縮空気を排熱回収ボイラからの第1給水で冷却するための水冷器を備える水冷ラインとが並列に接続された圧縮空気冷却ラインと、
前記ガスタービンの燃焼器に供給する燃料を前記空冷器で前記圧縮空気と熱交換されて加熱された前記外気で加熱するための第1予熱器を備える第1加熱ラインと、前記燃料を前記排熱回収ボイラからの第2給水で加熱するための第2予熱器を備える第2加熱ラインとが並列に接続された燃料加熱ラインと、
を備え、
前記圧縮空気を前記水冷器で冷却せずに前記空冷器で冷却し、且つ、前記燃料を前記第2予熱器で加熱せずに前記第1予熱器で加熱する第1運転状態から、前記圧縮空気を前記空冷器で冷却せずに前記水冷器で冷却し、且つ、前記燃料を前記第1予熱器で加熱せずに前記第2予熱器で加熱する第2運転状態へ移行する場合には、
前記水冷器への前記第1給水の供給を開始するステップと、
前記第2予熱器への前記第2給水の供給を開始するステップと、
前記水冷器への前記第1給水の供給を開始するステップを実施した後、前記水冷器の上流側の前記水冷ラインに設けられた水冷器入口弁を開くとともに、前記水冷器の下流側の前記水冷ラインに設けられたドレン弁を開くことで、前記圧縮空気冷却ラインを流通する前記圧縮空気の一部を前記水冷器に流通させて前記水冷器を予熱するステップと、
前記水冷器を予熱するステップを実施した後、前記ドレン弁を閉じるとともに、前記水冷器の下流側の前記水冷ラインに設けられた水冷器出口弁を開くことで、前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップと、
前記第2予熱器への前記第2給水の供給を開始するステップを実施した後、前記第2予熱器の上流側の前記第2加熱ラインに設けられた第2予熱器入口弁と、前記第2予熱器の下流側の前記第2加熱ラインに設けられた第2予熱器出口弁とを部分開として前記燃料加熱ラインを流通する前記燃料の一部を前記第2予熱器に流通させて前記第2予熱器を予熱するステップと、
前記第2予熱器を予熱するステップを実施した後、前記第2予熱器入口弁及び前記第2予熱器出口弁の開度を大きくすることで、前記燃料を前記第2予熱器と前記第1予熱器とで加熱するステップと、
前記圧縮空気を前記水冷器と前記空冷器とで冷却するステップを実施した後、前記空冷器の上流側の前記空冷ラインに設けられた空冷器入口弁と、前記空冷器の下流側の前記空冷ラインに設けられた空冷器出口弁とを閉じることで、前記圧縮空気を前記空冷器で冷却せずに前記水冷器で冷却するステップと、
前記燃料を前記第2予熱器と前記第1予熱器とで加熱するステップを実施した後、前記第1予熱器の上流側の前記第1加熱ラインに設けられた第1予熱器入口弁と、前記第1予熱器の下流側の前記第1加熱ラインに設けられた第1予熱器出口弁とを閉じることで、前記燃料を前記第1予熱器で加熱せずに前記第2予熱器で加熱するステップと、
を実行する。
【0009】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンプラントは、
ガスタービンと、前記ガスタービンから排気された排気ガスと水とを熱交換させて、蒸気を発生させる排熱回収ボイラと、を備えるガスタービンプラントであって、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した圧縮空気を冷却するための圧縮空気冷却ラインと、
前記ガスタービンの燃焼器に供給する燃料を加熱するための燃料加熱ラインと、
を備え、
圧縮空気冷却ラインは、
前記圧縮空気を外気で冷却するための空冷器を備える空冷ラインと、
前記圧縮空気を排熱回収ボイラからの第1給水で冷却するための水冷器を備える水冷ラインと、
圧縮空気バイパスラインと、
が並列に接続され、
前記燃料加熱ラインは、
前記燃料を前記空冷器で前記圧縮空気と熱交換されて加熱された前記外気で加熱するための第1予熱器を備える第1加熱ラインと、
前記燃料を前記排熱回収ボイラからの第2給水で加熱するための第2予熱器を備える第2加熱ラインと、
燃料バイパスラインと、
が並列に接続されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ガスタービンプラントにおいてガスタービンの運転を継続したままコンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る発電プラントの全体構成図である。
【
図2】圧縮空気冷却ライン及び燃料加熱ラインの構成について説明するための図である。
【
図3】第2運転状態から第1運転状態への移行に際して実施される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4A】圧縮空気冷却ラインにおける圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ラインにおける燃料ガスの加熱状態を表す図である。
【
図4B】圧縮空気冷却ラインにおける圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ラインにおける燃料ガスの加熱状態を表す図である。
【
図4C】圧縮空気冷却ラインにおける圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ラインにおける燃料ガスの加熱状態を表す図である。
【
図4D】圧縮空気冷却ラインにおける圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ラインにおける燃料ガスの加熱状態を表す図である。
【
図4E】圧縮空気冷却ラインにおける圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ラインにおける燃料ガスの加熱状態を表す図である。
【
図4F】圧縮空気冷却ラインにおける圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ラインにおける燃料ガスの加熱状態を表す図である。
【
図5】第1運転状態から第2運転状態への移行に際して実施される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6A】圧縮空気冷却ラインにおける圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ラインにおける燃料ガスの加熱状態を表す図である。
【
図6B】圧縮空気冷却ラインにおける圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ラインにおける燃料ガスの加熱状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
図1を参照して、一実施形態に係るガスタービンプラントであるコンバインドサイクル発電プラント(以下、発電プラントと称する)1の構成を説明する。
図1に示すように、発電プラント1は、主に、ガスタービン2と、蒸気タービン10と、排熱回収ボイラ20とを備えている。
【0014】
発電プラント1は、ガスタービン2及び蒸気タービン10の回転軸が共通である1軸型であってもよいし、ガスタービン2及び蒸気タービン10の回転軸がそれぞれ独立である多軸型であってもよい。なお、
図1には、1軸型の発電プラント1を示した。
【0015】
ガスタービン2及び蒸気タービン10の回転軸には、発電機8が連結されている。これにより、ガスタービン2及び蒸気タービン10の回転軸が回転することで、発電機8が駆動されて電力が生成されるようになっている。
【0016】
ガスタービン2は、空気圧縮機3と、タービン4と、燃焼器5とを有している。空気圧縮機3は、大気を吸入して圧縮し、燃焼器5に供給する。燃焼器5では、空気圧縮機3から供給された圧縮空気を燃焼用空気として用い、燃料ガスを燃焼させる。燃焼器5における燃焼によって生成された燃焼ガスは、タービン4に供給され、タービン4を駆動する。タービン4を通過した後の燃焼ガス(排ガス)は、排熱回収ボイラ20に導かれて、排熱回収ボイラ20における蒸気生成用熱源として利用された後に排気される。
なお、空気圧縮機3で生成される圧縮空気の一部は、後述する圧縮空気冷却ライン50によって冷却されてタービン冷却空気とされ、タービン4の高温部(例えば動静翼やロータ)の冷却に用いられる。
【0017】
本実施形態に係る発電プラント1では、タービン4の排気口には、主排気ライン40が接続されている。主排気ライン40には、第1排気ライン41と、第2排気ライン42とが接続されている。
第1排気ライン41の下流端は、煙突43に接続されている。
第2排気ライン42の下流端は、排熱回収ボイラ20に接続されている。
また、主排気ライン40には、タービン4からの排ガスの流入先を第1排気ライン41、又は第2排気ライン42に切り替えるための排気ライン切替器44が設けられている。
【0018】
本実施形態に係る発電プラント1は、ガスタービン2を運転すると共に排熱回収ボイラ20を運転するコンバインドサイクル運転と、排熱回収ボイラ20を運転せずガスタービン2を運転するシンプルサイクル運転とを切り替えて運用することができる。
すなわち、本実施形態に係る発電プラント1をシンプルサイクル運転で運用する場合には、排気ライン切替器44によって、タービン4からの排ガスの流入先は、第1排気ライン41に切り替えられる。
本実施形態に係る発電プラント1をコンバインドサイクル運転で運用する場合には、排気ライン切替器44によって、タービン4からの排ガスの流入先は、第2排気ライン42を介した排熱回収ボイラ20に切り替えられる。
【0019】
排熱回収ボイラ20内には、低圧節炭器27、中圧節炭器28、高圧節炭器29、低圧蒸発器24、中圧蒸発器25、及び高圧蒸発器26が配置されている。低圧蒸発器24には低圧ドラム21が付属されている。中圧蒸発器25には中圧ドラム22が付属されている。高圧蒸発器26には高圧ドラム23が付属されている。
【0020】
蒸気タービン10は、高圧タービン11、中圧タービン12、及び低圧タービン13を備えている。高圧タービン11には、高圧ドラム23からの飽和蒸気を排熱回収ボイラ20内の高圧過熱器(不図示)で過熱した高圧蒸気が供給される。高圧タービン11に供給された高圧蒸気は、高圧タービン11で仕事をした後、排熱回収ボイラ20内の再熱器(不図示)に送られる。
【0021】
排熱回収ボイラ20の再熱器には、高圧タービン11で仕事をした後の高圧蒸気(再熱前の低温蒸気)に加えて、中圧ドラム22からの飽和蒸気を排熱回収ボイラ20内の中圧過熱器(不図示)で過熱した蒸気も供給される。そして、再熱器で昇温された蒸気は、再熱蒸気として、中圧タービン12に供給される。中圧タービン12に供給された再熱蒸気は、中圧タービン12で仕事をした後、低圧タービン13に供給される。
【0022】
低圧タービン13には、中圧タービン12で仕事をした後の再熱蒸気に加えて、低圧ドラム21からの飽和蒸気を排熱回収ボイラ20内の低圧過熱器(不図示)で過熱した蒸気も供給される。
【0023】
低圧タービン13からの排気は、復水器15に導かれ、復水される。復水器15で生成された水は、低圧給水ポンプ16により、低圧節炭器27に導入される。
本実施形態に係る発電プラント1は、低圧節炭器27と高中圧給水ポンプ17とを接続する高中圧給水ポンプ吸入側給水ライン33と、高中圧給水ポンプ吸入側給水ライン33から分岐して低圧ドラム21に接続される低圧ドラム給水ライン34とを有する。
低圧節炭器27を通過した水は、高中圧給水ポンプ吸入側給水ライン33、及び、低圧ドラム給水ライン34を介して、一部が低圧ドラム21に給水され、残りは高中圧給水ポンプ吸入側給水ライン33を介して高中圧給水ポンプ17に導かれる。高中圧給水ポンプ17は、高圧節炭器29を介して、高圧給水を高圧ドラム23に供給するとともに、中圧節炭器28を介して、中圧水を中圧ドラム22に給水する。高圧ドラム23、中圧ドラム22、及び低圧ドラム21へ供給された水は、それぞれ、高圧蒸発器26、低圧蒸発器24、及び中圧蒸発器25においてタービン4からの排ガスと熱交換されて蒸発し、各ドラム(23,22,21)に飽和蒸気として溜まるようになっている。
【0024】
なお、本実施形態に係る発電プラント1では、低圧給水ポンプ16の吐出側の復水ライン31は、低圧節炭器27へ水を供給する低圧節炭器給水ライン31aと、低圧節炭器27を迂回して低圧ドラム21に水を供給するバイパスライン31bとに分岐している。バイパスライン31bに設けられたバイパスバルブ32を開くことで、低圧給水ポンプ16からの水は、低圧節炭器27を迂回して低圧ドラム21に供給されるようになっている。
また、本実施形態に係る発電プラント1では、バイパスバルブ32が開かれて、低圧給水ポンプ16からの水が低圧節炭器27を迂回して低圧ドラム21に供給されると、低圧ドラム21のドラム水の一部は、低圧ドラム給水ライン34及び高中圧給水ポンプ吸入側給水ライン33を介してと高中圧給水ポンプ17に導かれるようになっている。
これにより、バイパスバルブ32を開くことで、低圧ドラム21のドラム水の一部は、中圧節炭器28を介して後述するように第2給水として後述する第2予熱器722に供給される。
また、バイパスバルブ32を閉じることで、低圧節炭器27で加熱された水が中圧節炭器28を介して第2給水として第2予熱器722に供給される。
【0025】
さらに本実施形態に係る発電プラント1は、空気圧縮機3からの圧縮空気の一部を冷却してタービン冷却空気とするための圧縮空気冷却ライン50と、燃焼器5に供給する燃料(燃料ガス)を加熱するための燃料加熱ライン70とを備えている。
図2を用いて、圧縮空気冷却ライン50、及び燃料加熱ライン70の構成について説明する。
【0026】
(圧縮空気冷却ライン50)
本実施形態に係る発電プラント1では、圧縮空気冷却ライン50は、互いに並列に接続された空冷ライン51と、水冷ライン52と、圧縮空気バイパスライン53とを備えている。
【0027】
空冷ライン51には、圧縮空気の流れの上流側から順に、空冷器入口弁511と、空冷器512と、ドレン弁513と、空冷器出口弁514とが設けられている。
空冷器入口弁511は、並列に接続された親弁511aと子弁511bとを含む。
空冷器512は、空気圧縮機3から抽気した圧縮空気を外気で冷却するための熱交換器である。空冷器512の外部には、空冷器512に外気を送風するためのファン515が設けられている。
【0028】
水冷ライン52には、圧縮空気の流れの上流側から順に、水冷器入口弁521と、水冷器522と、ドレン弁523と、水冷器出口弁524とが設けられている。
水冷器入口弁521は、並列に接続された親弁521aと子弁521bとを含む。
水冷器522は、空気圧縮機3から抽気した圧縮空気を高中圧給水ポンプ17からの給水(以下、第1給水とも称する)で冷却するための熱交換器である。
【0029】
圧縮空気バイパスライン53には、圧縮空気バイパスライン53を流れる圧縮空気の流量を調節するための圧縮空気バイパス弁531が設けられている。
空冷ライン51と、水冷ライン52と、圧縮空気バイパスライン53との合流地点よりも下流側の圧縮空気冷却ライン50には、圧縮空気の温度を検出するための温度センサ55が設けられている。
【0030】
本実施形態に係る発電プラント1をシンプルサイクル運転で運用する場合には、圧縮空気を水冷器522で冷却せずに空冷器512で冷却し、発電プラント1をコンバインドサイクル運転で運用する場合には、圧縮空気を空冷器512で冷却せずに水冷器522で冷却する。
【0031】
(燃料加熱ライン70)
本実施形態に係る発電プラント1では、燃料加熱ライン70は、互いに並列に接続された第1加熱ライン71と、第2加熱ライン72と、燃料バイパスライン73とを備えている。
【0032】
第1加熱ライン71には、燃料ガスの流れの上流側から順に、第1予熱器入口弁711と、第1予熱器712と、第1予熱器出口弁714とが設けられている。
第1予熱器712は、空冷器512で圧縮空気と熱交換されて加熱された外気で燃料ガスを加熱するための熱交換器である。第1予熱器712は、空冷器512で圧縮空気と熱交換されて加熱された外気が当たるように配置されている。
【0033】
第2加熱ライン72には、燃料ガスの流れの上流側から順に、第2予熱器入口弁721と、第2予熱器722と、第2予熱器出口弁724とが設けられている。
第2予熱器722は、中圧節炭器28からの給水(以下、第2給水とも称する)で燃料ガスを加熱するための熱交換器である。
【0034】
燃料バイパスライン73には、燃料バイパスライン73を流れる燃料ガスの流量を調節するための燃料バイパス弁731が設けられている。
第1加熱ライン71と、第2加熱ライン72と、燃料バイパスライン73との合流地点よりも下流側の燃料加熱ライン70には、燃料ガスの温度を検出するための温度センサ75が設けられている。
【0035】
本実施形態に係る発電プラント1をシンプルサイクル運転で運用する場合には、燃料ガスを第2予熱器722で加熱せずに第1予熱器712で加熱し、発電プラント1をコンバインドサイクル運転で運用する場合には、燃料ガスを第1予熱器712で加熱せずに第2予熱器722で加熱する。
【0036】
本実施形態に係る発電プラント1は、圧縮空気冷却ライン50、及び燃料加熱ライン70に設けられた各弁の開閉や開度を制御可能な制御装置90を備えている。制御装置90は、例えばガスタービン2の全体を制御するための制御装置である。
制御装置90は、各種演算処理を実行するプロセッサ91と、プロセッサ91によって処理される各種データを非一時的または一時的に記憶する不図示のメモリ93等を備える。プロセッサ91は、CPU、GPU、MPU、DSP、これら以外の各種演算装置、又はこれらの組み合わせなどによって実現される。メモリ93は、ROM、RAM、フラシュメモリ、またはこれらの組み合わせなどによって実現される。
本実施形態に係る発電プラント1では、温度センサ55,75の検出信号は、制御装置90に入力される。
【0037】
(コンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転との切り替え)
本実施形態に係る発電プラント1では、ガスタービン2の運転を継続したままコンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替えることができる。
上述したように、コンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転との切り替えに際し、圧縮空気冷却ライン50において圧縮空気を空冷器512で冷却するのか、水冷器522で冷却するのかを切り替える必要がある。
同様に、コンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転との切り替えに際し、燃料加熱ライン70において燃料ガスを第1予熱器712で加熱するのか、第2予熱器722で加熱するのかを切り替える必要がある。
そこで、本実施形態に係る発電プラント1では、以下のようにして圧縮空気の冷却、及び燃料ガスの加熱の切り替えを行うようにしている。
【0038】
(コンバインドサイクル運転からシンプルサイクル運転への切り替え)
コンバインドサイクル運転からシンプルサイクル運転へ切り替える場合、圧縮空気を空冷器512で冷却せずに水冷器522で冷却し、且つ、燃料ガスを第1予熱器712で加熱せずに第2予熱器722で加熱する第2運転状態から、圧縮空気を水冷器522で冷却せずに空冷器512で冷却し、且つ、燃料ガスを第2予熱器722で加熱せずに第1予熱器712で加熱する第1運転状態へ移行する。
以下、第2運転状態から第1運転状態への移行手順について説明する。
【0039】
(第2運転状態から第1運転状態への移行手順)
図3は、第2運転状態から第1運転状態への移行に際して実施される処理の流れを示すフローチャートである。
図3のフローチャートに示す処理を実行するためのプログラムは、制御装置のプロセッサ91がメモリ93から読み込んで実行する。
【0040】
一実施形態に係る発電プラント1の運用方法は、空冷器512を予熱するステップS10と、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20と、第1予熱器712を予熱するステップS30と、第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS40と、空冷器512で冷却するステップS50と、第1予熱器712で加熱するステップS60と、第1給水の供給を停止するステップS70と、第2給水の供給を停止するステップS80と、を備える。
【0041】
図4Aは、コンバインドサイクル運転を行っている場合の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態を表す図である。
図4Aでは、圧縮空気及び燃料ガスの流れを白抜きの破線の矢印で表している。なお、後述する
図4Bから
図4F、
図6A、及び
図6Bにおいても、圧縮空気及び燃料ガスの流れは白抜きの破線の矢印で表す。
コンバインドサイクル運転を行っている場合、上述したように圧縮空気を空冷器512で冷却せずに水冷器522で冷却し、且つ、燃料ガスを第1予熱器712で加熱せずに第2予熱器722で加熱している。なお、ファン515は停止している。
この状態(第2運転状態)を出発点として、ステップS10からステップS80までの各ステップを実行することで、第2運転状態から第1運転状態へ移行する。
【0042】
(空冷器512を予熱するステップS10)
空冷器512を予熱するステップS10は、空冷器入口弁511を開くとともに、ドレン弁513を開くことで、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部を空冷器512に流通させて空冷器512(空冷ライン51)を予熱するステップである。
図4Bは、空冷器512を予熱するステップS10を実施した後の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態を表す図である。
空冷器512を予熱するステップS10では、プロセッサ91は、空冷器入口弁511を開く制御信号、及びドレン弁513を開く制御信号を空冷器入口弁511、及びドレン弁513に出力する。これにより、空冷器入口弁511が開くとともに、ドレン弁513が開くことで、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部が空冷器512に流通して空冷器512、及びドレン弁513よりも上流側の空冷ライン51が予熱される。なお、予熱によって圧縮空気が冷やされることで発生する結露は、ドレン弁513から外部に排出される。
【0043】
なお、空冷器512を予熱するステップS10では、空冷器入口弁511の親弁511a及び子弁511bが閉じた状態から子弁511bを開いて空冷ライン51の圧力を上昇させた後、親弁511aを開くとよい。
例えば空冷器入口弁511の親弁511a及び子弁511bが閉じた状態から親弁511aを先に開いてしまうと、圧縮空気が空冷ライン51に急速に流れ込んでしまい、水冷ライン52を流通してガスタービン2に流れ込む圧縮空気の流量が減少してしまう。子弁511bを先に開くことで、ガスタービン2に流れ込む圧縮空気の流量が減少することを抑制できる。
【0044】
(水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20)
水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20は、空冷器512を予熱するステップS10を実施した後、ドレン弁513を閉じるとともに、空冷器出口弁514を開くことで、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却するステップである。
図4Cは、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20を実施した後の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態を表す図である。
水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20では、プロセッサ91は、ドレン弁513を閉じる制御信号、及び空冷器出口弁514を開く制御信号をドレン弁513、及び空冷器出口弁514に出力する。これにより、ドレン弁513が閉じるとともに、空冷器出口弁514が開くことで、圧縮空気は水冷器522と空冷器512とで冷却される。
【0045】
水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20では、プロセッサ91は、ファン515を駆動する制御信号を出力する。これにより、空冷器512で圧縮空気と熱交換されて加熱された外気が第1予熱器712に送風されて、第1予熱器712を予熱できる。
【0046】
なお、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20では、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部を圧縮空気バイパスライン53を介して流通させることで、圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度を調節するとよい。すなわち、プロセッサ91は、温度センサ55で検出した圧縮空気の温度が目標とする温度の範囲内に収まるように、圧縮空気バイパス弁531の開度を調節する制御信号を圧縮空気バイパス弁531に出力する。これにより、圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度が目標とする温度の範囲内に収まるように調節される。
よって、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却することで圧縮空気が過冷却されて圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度が目標とする温度から変動することを抑制できる。
【0047】
(第1予熱器712を予熱するステップS30)
第1予熱器712を予熱するステップS30は、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20を実施した後、第1予熱器入口弁711と、第1予熱器出口弁714とを部分開として燃料加熱ライン70を流通する燃料の一部を第1予熱器712(第1加熱ライン71)に流通させて第1予熱器712(第1加熱ライン71)を予熱するステップである。
図4Dは、第1予熱器712を予熱するステップS30を実施した後の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態を表す図である。
上述したように、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20を実施することで、空冷器512で圧縮空気と熱交換されて加熱された外気が第1予熱器712に送風されて、第1予熱器712が予熱される。そして、第1予熱器712を予熱するステップS30において、燃料加熱ライン70を流通する燃料の一部を第1予熱器712(第1加熱ライン71)に流通させることで、第1予熱器712で加熱された燃料ガスによって第1予熱器712よりも下流側の第1加熱ライン71を予熱できる。
【0048】
第1予熱器712を予熱するステップS30では、プロセッサ91は、第1予熱器入口弁711を部分開とする制御信号、及び第1予熱器出口弁714を部分開とする制御信号を第1予熱器入口弁711、及び第1予熱器出口弁714に出力する。これにより、第1予熱器入口弁711と、第1予熱器出口弁714とが部分開となって燃料加熱ライン70を流通する燃料の一部が第1予熱器712(第1加熱ライン71)に流通し、第1予熱器712(第1加熱ライン71)が予熱される。
【0049】
(第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS40)
第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS40は、第1予熱器712を予熱するステップS30を実施した後、第1予熱器入口弁711及び第1予熱器出口弁714の開度を大きくすることで、燃料ガスを第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱するステップである。
図4Eは、第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS40を実施した後の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態を表す図である。
第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS40では、プロセッサ91は、第1予熱器入口弁711の開度を大きくする制御信号、及び第1予熱器出口弁714の開度を大きくする制御信号を第1予熱器入口弁711、及び第1予熱器出口弁714に出力する。これにより、第1予熱器入口弁711及び第1予熱器出口弁714の開度が大きくなって、燃料ガスが第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱される。
【0050】
なお、第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS40では、燃料加熱ライン70を流通する燃料ガスの一部を燃料バイパスライン73を介して流通させることで、燃料加熱ライン70を流通した後の燃料ガスの温度を調節するとよい。すなわち、プロセッサ91は、温度センサ75で検出した燃料ガスの温度が目標とする温度の範囲内に収まるように、燃料バイパス弁731の開度を調節する制御信号を燃料バイパス弁731に出力する。これにより、燃料加熱ライン70を流通した後の燃料ガスの温度が目標とする温度の範囲内に収まるように調節される。
よって、燃料ガスを第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱することで燃料ガスが目標とする温度よりも加熱されて燃料加熱ライン70を流通した後の燃料ガスの温度が目標とする温度から変動することを抑制できる。
【0051】
(空冷器512で冷却するステップS50)
空冷器512で冷却するステップS50は、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20を実施した後、水冷器入口弁521と、水冷器出口弁524とを閉じることで、圧縮空気を水冷器522で冷却せずに空冷器512で冷却するステップである。
図4Fは、空冷器512で冷却するステップS50、及び後述する第1予熱器712で加熱するステップS60を実施した後の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態を表す図である。
空冷器512で冷却するステップS50では、プロセッサ91は、水冷器入口弁521を閉じる制御信号、水冷器出口弁524を閉じる制御信号を水冷器入口弁521、及び水冷器出口弁524に出力する。これにより、水冷器入口弁521と、水冷器出口弁524とが閉じられるので、圧縮空気は水冷器522で冷却されずに空冷器512で冷却される。
【0052】
(第1予熱器712で加熱するステップS60)
第1予熱器712で加熱するステップS60は、第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS40を実施した後、第2予熱器入口弁721と、第2予熱器出口弁724とを閉じることで、燃料ガスを第2予熱器722で加熱せずに第1予熱器712で加熱するステップである。
第1予熱器712で加熱するステップS60では、プロセッサ91は、第2予熱器入口弁721を閉じる制御信号、及び第2予熱器出口弁724を閉じる制御信号を第2予熱器入口弁721、及び第2予熱器出口弁724に出力する。これにより、第2予熱器入口弁721と、第2予熱器出口弁724とが閉じられて、燃料ガスは第2予熱器722で加熱されずに第1予熱器712で加熱される。
【0053】
なお、空冷器512で冷却するステップS50と、第1予熱器712で加熱するステップS60とは、何れのステップを先に実行してもよいし、両ステップを同時に実施してもよい。
【0054】
(第1給水の供給を停止するステップS70)
第1給水の供給を停止するステップS70は、空冷器512で冷却するステップS50を実施した後、水冷器522への第1給水の供給を停止するステップである。
第1給水の供給を停止するステップS70では、プロセッサ91は、水冷器522を介して第1給水が流通する流路の何れの箇所に設けられた不図示の開閉弁を閉じる制御信号を該開閉弁に出力する。これにより、該開閉弁が閉じられて、水冷器522への第1給水の供給が停止する。これにより第1給水を供給するための装置等の運転を停止できる。
【0055】
(第2給水の供給を停止するステップS80)
第2給水の供給を停止するステップS80は、第1予熱器712で加熱するステップS60を実施した後、第2予熱器722への第2給水の供給を停止するステップである。
第2給水の供給を停止するステップS80では、プロセッサ91は、第2予熱器722を介して第2給水が流通する流路の何れの箇所に設けられた不図示の開閉弁を閉じる制御信号を該開閉弁に出力する。これにより、該開閉弁が閉じられて、第2予熱器722への第2給水の供給が停止する。これにより第2給水を供給するための装置等の運転を停止できる。
【0056】
以上で、第2運転状態から第1運転状態への移行が完了する。
【0057】
なお、第1給水の供給を停止するステップS70と、第2給水の供給を停止するステップS80とは、何れのステップを先に実行してもよいし、両ステップを同時に実施してもよい。
【0058】
上述した一実施形態に係る発電プラント1の運用方法は、空冷器512を予熱するステップS10と、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS20と、第1予熱器712を予熱するステップS30と、第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS40と、空冷器512で冷却するステップS50と、第1予熱器712で加熱するステップS60と、を備える。
これにより、第2運転状態から第1運転状態へ移行する際に、圧縮空気冷却ライン50で冷却された圧縮空気の温度及び流量の変動を抑制でき、ガスタービン2の高温部の保護に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
一実施形態に係る発電プラント1の運用方法によれば、第2運転状態から第1運転状態へ移行する際に、燃料加熱ライン70で加熱された燃料ガスの温度及び圧力の変動を抑制でき、燃焼器5における燃焼状態に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
一実施形態に係る発電プラント1の運用方法によれば、空冷器512を予熱するステップS10を実施することで、空冷器512の予熱に際して空冷ライン51の温度が上昇する前に空冷ライン51内で発生するドレンを外部に排出できる。
【0059】
上述した一実施形態に係る発電プラント1の運用方法では、第2給水は、低圧ドラム21のドラム水を中圧節炭器28で加熱した給水であってもよい。
例えば何らかの原因で排熱回収ボイラ20の運転が意図せず停止されてしまった場合、第2給水を加熱する熱源が失われて第2給水の温度が急速に低下し、燃焼器5へ供給する燃料の温度も急速に低下してしまうおそれがある。
ここで、第2給水が低圧ドラム21のドラム水を中圧節炭器28で加熱した給水であれば、低圧節炭器27からの給水を中圧節炭器28で加熱することで第2給水を得る場合と比べて、低圧ドラム21及び低圧蒸発器24に存在する比較的多くの給水を利用できるので、第2給水の温度低下を比較的緩やかにすることができる。
【0060】
上述した一実施形態に係る発電プラント1は、ガスタービン2の空気圧縮機3から抽気した圧縮空気を冷却するための圧縮空気冷却ライン50と、ガスタービン2の燃焼器5に供給する燃料ガスを加熱するための燃料加熱ライン70と、を備える。
圧縮空気冷却ライン50は、空冷ライン51と、水冷ライン52と、圧縮空気バイパスライン53と、が並列に接続されている。
燃料加熱ライン70は、第1加熱ライン71と、第2加熱ライン72と、燃料バイパスライン73と、が並列に接続されている。
【0061】
上述した一実施形態に係る発電プラント1によれば、コンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える際に、圧縮空気冷却ライン50で冷却された圧縮空気の温度及び流量の変動を抑制でき、ガスタービン2の高温部の保護に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
上述した一実施形態に係る発電プラント1によれば、コンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える際に、燃料加熱ライン70で加熱された燃料ガスの温度及び圧力の変動を抑制でき、燃焼器5における燃焼状態に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
上述した一実施形態に係る発電プラント1によれば、コンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える際に、空冷器512の予熱に際して空冷ライン51の温度が上昇する前に空冷ライン51内で発生するドレンや、水冷器522の予熱に際して水冷ライン52の温度が上昇する前に水冷ライン52内で発生するドレンを外部に排出できる。
上述した一実施形態に係る発電プラント1によれば、コンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える際に、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却する過程において、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部を圧縮空気バイパスライン53を介して流通させることで、圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度を調節できる。これにより、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却することで圧縮空気が過冷却されて圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度が目標とする温度から変動することを抑制できる。
上述した一実施形態に係る発電プラント1によれば、コンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える際に、燃料ガスを第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱する過程において、燃料加熱ライン70を流通する燃料ガスの一部を燃料バイパスライン73を介して流通させることで、燃料加熱ライン70を流通した後の燃料ガスの温度を調節できる。これにより、燃料ガスを第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱することで燃料ガスが目標とする温度よりも加熱されて燃料加熱ライン70を流通した後の燃料ガスの温度が目標とする温度から変動することを抑制できる。
【0062】
(シンプルサイクル運転からコンバインドサイクル運転への切り替え)
シンプルサイクル運転からコンバインドサイクル運転へ切り替える場合、上述した第1運転状態から上述した第2運転状態へ移行する。
以下、第1運転状態から第2運転状態への移行手順について説明する。
【0063】
(第1運転状態から第2運転状態への移行手順)
図5は、第1運転状態から第2運転状態への移行に際して実施される処理の流れを示すフローチャートである。
図5のフローチャートに示す処理を実行するためのプログラムは、制御装置のプロセッサ91がメモリ93から読み込んで実行する。
【0064】
一実施形態に係る発電プラント1の運用方法は、第1給水の供給を開始するステップS110と、第2給水の供給を開始するステップS120と、水冷器522を予熱するステップS130と、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS140と、第2予熱器722を予熱するステップS150と、第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS160と、水冷器522で冷却するステップS170と、第2予熱器722で加熱するステップS180と、を備える。
【0065】
シンプルサイクル運転を行っている場合の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態は、
図4Fに示すとおりである。
シンプルサイクル運転を行っている場合、上述したように圧縮空気を水冷器522で冷却せずに空冷器512で冷却し、且つ、燃料ガスを第2予熱器722で加熱せずに第1予熱器712で加熱している。なお、ファン515は駆動している。
この状態(第1運転状態)を出発点として、ステップS110からステップS180までの各ステップを実行することで、第1運転状態から第2運転状態へ移行する。
【0066】
(第1給水の供給を開始するステップS110)
第1給水の供給を開始するステップS110は、水冷器522への第1給水の供給を開始するステップである。
第1給水の供給を開始するステップS110では、プロセッサ91は、水冷器522を介して第1給水が流通する流路の何れの箇所に設けられた不図示の開閉弁を開く制御信号を該開閉弁に出力する。これにより、該開閉弁が開かれて、水冷器522へ第1給水が供給される。
【0067】
(第2給水の供給を開始するステップS120)
第2給水の供給を開始するステップS120は、第2予熱器722への第2給水の供給を開始するステップである。
第2給水の供給を開始するステップS120では、プロセッサ91は、第2予熱器722を介して第2給水が流通する流路の何れの箇所に設けられた不図示の開閉弁を開く制御信号を該開閉弁に出力する。これにより、該開閉弁が開かれて、第2予熱器722へ第2給水が供給される。
【0068】
なお、第1給水の供給を開始するステップS110と、第2給水の供給を開始するステップS120とは、何れのステップを先に実行してもよいし、両ステップを同時に実施してもよい。
【0069】
(水冷器522を予熱するステップS130)
水冷器522を予熱するステップS130は、第1給水の供給を開始するステップS110を実施した後、水冷器入口弁521を開くとともに、ドレン弁523を開くことで、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部を水冷器522に流通させて水冷器522(水冷ライン52)を予熱するステップである。
図6Aは、水冷器522を予熱するステップS130、及び後述する第2予熱器722を予熱するステップS150を実施した後の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態を表す図である。
水冷器522を予熱するステップS130では、プロセッサ91は、水冷器入口弁521を開く制御信号、及びドレン弁523を開く制御信号を水冷器入口弁521、及びドレン弁523に出力する。これにより、水冷器入口弁521が開くとともに、ドレン弁523が開くことで、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部が水冷器522に流通して水冷器522、及びドレン弁523よりも上流側の水冷ライン52が予熱される。なお、予熱によって圧縮空気が冷やされることで発生する結露は、ドレン弁523から外部に排出される。
【0070】
なお、水冷器522を予熱するステップS130では、水冷器入口弁521の親弁521a及び子弁521bが閉じた状態から子弁521bを開いて水冷ライン52の圧力を上昇させた後、親弁521aを開くとよい。
例えば水冷器入口弁521の親弁521a及び子弁521bが閉じた状態から親弁521aを先に開いてしまうと、圧縮空気が水冷ライン52に急速に流れ込んでしまい、空冷ライン51を流通してガスタービン2に流れ込む圧縮空気の流量が減少してしまう。子弁521bを先に開くことで、ガスタービン2に流れ込む圧縮空気の流量が減少することを抑制できる。
【0071】
(水冷器522と空冷器512で冷却するステップS140)
水冷器522と空冷器512で冷却するステップS140は、水冷器522を予熱するステップS130を実施した後、ドレン弁523を閉じるとともに、水冷器出口弁524を開くことで、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却するステップである。
図6Bは、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS140、及び後述する第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS160を実施した後の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態を表す図である。
水冷器522と空冷器512で冷却するステップS140では、プロセッサ91は、ドレン弁523を閉じる制御信号、及び水冷器出口弁524を開く制御信号をドレン弁523、及び水冷器出口弁524に出力する。これにより、ドレン弁523が閉じられるとともに、水冷器出口弁524が開かれることで、圧縮空気は水冷器522と空冷器512とで冷却される。
【0072】
なお、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS140では、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部を圧縮空気バイパスライン53を介して流通させることで、圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度を調節するとよい。すなわち、プロセッサ91は、温度センサ55で検出した圧縮空気の温度が目標とする温度の範囲内に収まるように、圧縮空気バイパス弁531の開度を調節する制御信号を圧縮空気バイパス弁531に出力する。これにより、圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度が目標とする温度の範囲内に収まるように調節される。
よって、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却することで圧縮空気が過冷却されて圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度が目標とする温度から変動することを抑制できる。
【0073】
(第2予熱器722を予熱するステップS150)
第2予熱器722を予熱するステップS150は、第2給水の供給を開始するステップS120を実施した後、第2予熱器入口弁721と、第2予熱器出口弁724とを部分開として燃料加熱ライン70を流通する燃料ガスの一部を第2予熱器722に流通させて第2予熱器722(第2加熱ライン72)を予熱するステップである。
上述したように、
図6Aは、水冷器522を予熱するステップS130、及び後述する第2予熱器722を予熱するステップS150を実施した後の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態を表す図である。
第2予熱器722を予熱するステップS150では、プロセッサ91は、第2予熱器入口弁721を部分開とする制御信号、及び第2予熱器出口弁724を部分開とする制御信号を第2予熱器入口弁721、及び第2予熱器出口弁724に出力する。これにより、第2予熱器入口弁721と、第2予熱器出口弁724とが部分開となって燃料加熱ライン70を流通する燃料ガスの一部が第2予熱器722を流通し、第2予熱器722及び第2加熱ライン72が予熱される。
【0074】
(第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS160)
第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS160は、第2予熱器722を予熱するステップS150を実施した後、第2予熱器入口弁721及び第2予熱器出口弁724の開度を大きくすることで、燃料ガスを第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱するステップである。
上述したように、
図6Bは、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS140、及び後述する第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS160を実施した後の圧縮空気冷却ライン50における圧縮空気の冷却状態、及び燃料加熱ライン70における燃料ガスの加熱状態を表す図である。
第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS160では、プロセッサ91は、第2予熱器入口弁721の開度を大きくする制御信号、及び第2予熱器出口弁724の開度を大きくする制御信号を第1予熱器入口弁711、及び第1予熱器出口弁714に出力する。これにより、第2予熱器入口弁721及び第2予熱器出口弁724の開度が大きくなって、燃料ガスが第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱される。
【0075】
なお、第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS160では、燃料加熱ライン70を流通する燃料ガスの一部を燃料バイパスライン73を介して流通させることで、燃料加熱ライン70を流通した後の燃料ガスの温度を調節するとよい。すなわち、プロセッサ91は、温度センサ75で検出した燃料ガスの温度が目標とする温度の範囲内に収まるように、燃料バイパス弁731の開度を調節する制御信号を燃料バイパス弁731に出力する。これにより、燃料加熱ライン70を流通した後の燃料ガスの温度が目標とする温度の範囲内に収まるように調節される。
よって、燃料ガスを第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱することで燃料ガスが目標とする温度よりも加熱されて燃料加熱ライン70を流通した後の燃料ガスの温度が目標とする温度から変動することを抑制できる。
【0076】
(水冷器522で冷却するステップS170)
水冷器522で冷却するステップS170は、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS140を実施した後、空冷器入口弁511と、空冷器出口弁514とを閉じることで、圧縮空気を空冷器512で冷却せずに水冷器522で冷却するステップである。
水冷器522で冷却するステップS170では、プロセッサ91は、空冷器入口弁511を閉じる制御信号、及び空冷器出口弁514を閉じる制御信号を空冷器入口弁511、及び空冷器出口弁514に出力する。これにより、空冷器入口弁511と、空冷器出口弁514とが閉じられるので、圧縮空気は空冷器512で冷却されずに水冷器522で冷却される(
図4Aの圧縮空気冷却ライン50を参照)。
【0077】
(第2予熱器722で加熱するステップS180)
第2予熱器722で加熱するステップS180は、第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱するステップS160を実施した後、第1予熱器入口弁711と、第1予熱器出口弁714とを閉じることで、燃料ガスを第1予熱器712で加熱せずに第2予熱器722で加熱するステップである。
第2予熱器722で加熱するステップS180では、プロセッサ91は、第1予熱器入口弁711を閉じる制御信号、及び第1予熱器出口弁714を閉じる制御信号を第1予熱器入口弁711、及び第1予熱器出口弁714に出力する。これにより、第1予熱器入口弁711と、第1予熱器出口弁714とが閉じられるので、燃料ガスは第1予熱器712で加熱されずに第2予熱器722で加熱される。
【0078】
なお、水冷器522で冷却するステップS170、及び第2予熱器722で加熱するステップS180を実施した後、プロセッサ91は、ファン515を停止させる制御信号をファン515に出力するとよい。これにより、ファン515が停止する。
【0079】
また、水冷器522を予熱するステップS130、及び水冷器522と空冷器512で冷却するステップS140は、第2予熱器722を予熱するステップS150、及び第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS160よりも後に実施してもよく、第2予熱器722を予熱するステップS150、及び第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS160と同時期に実施してもよい。
【0080】
水冷器522で冷却するステップS170と、第2予熱器722で加熱するステップS180とは、何れのステップを先に実行してもよいし、両ステップを同時に実施してもよい。
【0081】
上述した一実施形態に係る発電プラント1の運用方法は、第1給水の供給を開始するステップS110と、第2給水の供給を開始するステップS120と、水冷器522を予熱するステップS130と、水冷器522と空冷器512で冷却するステップS140と、第2予熱器722を予熱するステップS150と、第2予熱器722と第1予熱器712で加熱するステップS160と、水冷器522で冷却するステップS170と、第2予熱器722で加熱するステップS180と、を備える。
これにより、第1運転状態から第2運転状態へ移行する際に、圧縮空気冷却ライン50で冷却された圧縮空気の温度及び流量の変動を抑制でき、ガスタービン2の高温部の保護に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
一実施形態に係る発電プラント1の運用方法によれば、第1運転状態から第2運転状態へ移行する際に、燃料加熱ライン70で加熱された燃料の温度及び圧力の変動を抑制でき、燃焼器5における燃焼状態に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
一実施形態に係る発電プラント1の運用方法によれば、水冷器522を予熱するステップS150を実施することで、水冷器522の予熱に際して水冷ライン52の温度が上昇する前に水冷ライン52内で発生するドレンを外部に排出できる。
【0082】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0083】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンプラント(発電プラント1)の運用方法は、ガスタービン2と、ガスタービン2から排気された排気ガスと水とを熱交換させて、蒸気を発生させる排熱回収ボイラ20と、を備えるガスタービンプラント(発電プラント1)の運用方法である。
ガスタービンプラント(発電プラント1)は、ガスタービン2の空気圧縮機3から抽気した圧縮空気を外気で冷却するための空冷器512を備える空冷ライン51と、圧縮空気を排熱回収ボイラ20からの第1給水で冷却するための水冷器522を備える水冷ライン52とが並列に接続された圧縮空気冷却ライン50を備える。
ガスタービンプラント(発電プラント1)は、ガスタービン2の燃焼器5に供給する燃料を空冷器512で圧縮空気と熱交換されて加熱された外気で加熱するための第1予熱器712を備える第1加熱ライン71と、燃料を排熱回収ボイラからの第2給水で加熱するための第2予熱器722を備える第2加熱ライン72とが並列に接続された燃料加熱ライン70を備える。
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンプラント(発電プラント1)の運用方法では、圧縮空気を空冷器512で冷却せずに水冷器522で冷却し、且つ、燃料を第1予熱器712で加熱せずに第2予熱器722で加熱する第2運転状態から、圧縮空気を水冷器522で冷却せずに空冷器512で冷却し、且つ、燃料を第2予熱器722で加熱せずに第1予熱器712で加熱する第1運転状態へ移行する場合には、以下のステップを実行する。
空冷器512の上流側の空冷ライン51に設けられた空冷器入口弁511を開くとともに、空冷器512の下流側の空冷ライン51に設けられたドレン弁513を開くことで、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部を空冷器512に流通させて空冷器512を予熱するステップS10。
空冷器512を予熱するステップS10を実施した後、ドレン弁513を閉じるとともに、空冷器512の下流側の空冷ライン51に設けられた空冷器出口弁514を開くことで、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却するステップS20。
圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却するステップS20を実施した後、第1予熱器712の上流側の第1加熱ライン71に設けられた第1予熱器入口弁711と、第1予熱器712の下流側の第1加熱ライン71に設けられた第1予熱器出口弁714とを部分開として燃料加熱ライン70を流通する燃料の一部を第1予熱器712に流通させて第1予熱器712を予熱するステップS30。
第1予熱器712を予熱するステップS30を実施した後、第1予熱器入口弁711及び第1予熱器出口弁714の開度を大きくすることで、燃料を第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱するステップS40。
圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却するステップS20を実施した後、水冷器522の上流側の水冷ライン52に設けられた水冷器入口弁521と、水冷器522の下流側の水冷ライン52に設けられた水冷器出口弁524とを閉じることで、圧縮空気を水冷器522で冷却せずに空冷器512で冷却するステップS50。
燃料を第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱するステップS40を実施した後、第2予熱器722の上流側の第2加熱ライン72に設けられた第2予熱器入口弁721と、第2予熱器722の下流側の第2加熱ライン72に設けられた第2予熱器出口弁724とを閉じることで、燃料を第2予熱器722で加熱せずに第1予熱器712で加熱するステップS60。
【0084】
上記(1)の方法によれば、第2運転状態から第1運転状態へ移行する際に、圧縮空気冷却ライン50で冷却された圧縮空気の温度及び流量の変動を抑制でき、ガスタービン2の高温部の保護に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
上記(1)の方法によれば、第2運転状態から第1運転状態へ移行する際に、燃料加熱ライン70で加熱された燃料の温度及び圧力の変動を抑制でき、燃焼器5における燃焼状態に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
上記(1)の方法によれば、空冷器512を予熱するステップS10を実施することで、空冷器512の予熱に際して空冷ライン51の温度が上昇する前に空冷ライン51内で発生するドレンを外部に排出できる。
【0085】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却するステップS20では、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部を空冷ライン51及び水冷ライン52と並列に接続された圧縮空気バイパスライン53を介して流通させることで、圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度を調節するとよい。
【0086】
上記(2)の方法によれば、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却することで圧縮空気が過冷却されて圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度が目標とする温度から変動することを抑制できる。
【0087】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、燃料を第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱するステップS40では、燃料加熱ライン70を流通する燃料の一部を第1加熱ライン71及び第2加熱ライン72と並列に接続された燃料バイパスライン73を介して流通させることで、燃料加熱ライン70を流通した後の燃料の温度を調節するとよい。
【0088】
上記(3)の方法によれば、燃料を第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱することで燃料が目標とする温度よりも加熱されて燃料加熱ライン70を流通した後の燃料の温度が目標とする温度から変動することを抑制できる。
【0089】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの方法において、空冷器入口弁511は、並列に接続された親弁511aと子弁511bとを含んでいるとよい。空冷器512を予熱するステップS10では、親弁511a及び子弁511bが閉じた状態から子弁511bを開いて空冷ライン51の圧力を上昇させた後、親弁511aを開くとよい。
【0090】
例えば親弁511a及び子弁511bが閉じた状態から親弁511aを先に開いてしまうと、圧縮空気が空冷ライン51に急速に流れ込んでしまい、水冷ライン52を流通してガスタービン2に流れ込む圧縮空気の流量が減少してしまう。上記(4)の方法によれば、ガスタービン2に流れ込む圧縮空気の流量が減少することを抑制できる。
【0091】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの方法において、第2給水は、排熱回収ボイラ20の低圧ドラム21のドラム水を排熱回収ボイラ20の中圧節炭器28で加熱した給水であるとよい。
【0092】
例えば何らかの原因で排熱回収ボイラ20の運転が意図せず停止されてしまった場合、第2給水を加熱する熱源が失われて第2給水の温度が急速に低下し、燃焼器5へ供給する燃料の温度も急速に低下してしまうおそれがある。
上記(5)の方法によれば、低圧節炭器27からの給水を中圧節炭器28で加熱することで第2給水を得る場合と比べて、低圧ドラム21及び低圧蒸発器24に存在する比較的多くの給水を利用できるので、第2給水の温度低下を比較的緩やかにすることができる。
【0093】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの方法において、第2運転状態から第1運転状態へ移行する場合には、圧縮空気を水冷器522で冷却せずに空冷器512で冷却するステップS50を実施した後、水冷器522への第1給水の供給を停止するステップS70と、燃料を第2予熱器722で加熱せずに第1予熱器712で加熱するステップS60を実施した後、第2予熱器722への第2給水の供給を停止するステップS80と、を実行するとよい。
【0094】
上記(6)の方法によれば、第2運転状態から第1運転状態へ移行した後には、第1給水や第2給水を供給するための装置等の運転が不必要になるので、これらの装置等を停止できる。
【0095】
(7)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンプラント(発電プラント1)の運用方法は、ガスタービン2と、ガスタービン2から排気された排気ガスと水とを熱交換させて、蒸気を発生させる排熱回収ボイラ20と、を備えるガスタービンプラント(発電プラント1)の運用方法である。
ガスタービンプラント(発電プラント1)は、ガスタービン2の空気圧縮機3から抽気した圧縮空気を外気で冷却するための空冷器512を備える空冷ライン51と、圧縮空気を排熱回収ボイラ20からの第1給水で冷却するための水冷器522を備える水冷ライン52とが並列に接続された圧縮空気冷却ライン50を備える。
ガスタービンプラント(発電プラント1)は、ガスタービン2の燃焼器5に供給する燃料を空冷器512で圧縮空気と熱交換されて加熱された外気で加熱するための第1予熱器712を備える第1加熱ライン71と、燃料を排熱回収ボイラ20からの第2給水で加熱するための第2予熱器722を備える第2加熱ライン72とが並列に接続された燃料加熱ライン70を備える。
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンプラント(発電プラント1)の運用方法では、圧縮空気を水冷器522で冷却せずに空冷器512で冷却し、且つ、燃料を第2予熱器722で加熱せずに第1予熱器712で加熱する第1運転状態から、圧縮空気を空冷器512で冷却せずに水冷器522で冷却し、且つ、燃料を第1予熱器712で加熱せずに第2予熱器722で加熱する第2運転状態へ移行する場合には、以下のステップを実行する。
水冷器522への第1給水の供給を開始するステップS110。
第2予熱器722への第2給水の供給を開始するステップS120。
水冷器522への第1給水の供給を開始するステップS110を実施した後、水冷器522の上流側の水冷ライン52に設けられた水冷器入口弁521を開くとともに、水冷器522の下流側の水冷ライン52に設けられたドレン弁523を開くことで、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部を水冷器522に流通させて水冷器522を予熱するステップS130。
水冷器522を予熱するステップS130を実施した後、ドレン弁523を閉じるとともに、水冷器522の下流側の水冷ライン52に設けられた水冷器出口弁524を開くことで、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却するステップS140。
第2予熱器722への第2給水の供給を開始するステップS120を実施した後、第2予熱器722の上流側の第2加熱ライン72に設けられた第2予熱器入口弁721と、第2予熱器722の下流側の第2加熱ライン72に設けられた第2予熱器出口弁724とを部分開として燃料加熱ライン70を流通する燃料の一部を第2予熱器722に流通させて第2予熱器722を予熱するステップS150。
第2予熱器722を予熱するステップS150を実施した後、第2予熱器入口弁721及び第2予熱器出口弁724の開度を大きくすることで、燃料を第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱するステップS160。
圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却するステップS140を実施した後、空冷器512の上流側の空冷ライン51に設けられた空冷器入口弁511と、空冷器512の下流側の空冷ライン51に設けられた空冷器出口弁514とを閉じることで、圧縮空気を空冷器512で冷却せずに水冷器522で冷却するステップS170。
燃料を第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱するステップS160を実施した後、第1予熱器712の上流側の第1加熱ライン71に設けられた第1予熱器入口弁711と、第1予熱器712の下流側の第1加熱ライン71に設けられた第1予熱器出口弁714とを閉じることで、燃料を第1予熱器712で加熱せずに第2予熱器722で加熱するステップS180。
【0096】
上記(7)の方法によれば、第1運転状態から第2運転状態へ移行する際に、圧縮空気冷却ライン50で冷却された圧縮空気の温度及び流量の変動を抑制でき、ガスタービン2の高温部の保護に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
上記(7)の方法によれば、第1運転状態から第2運転状態へ移行する際に、燃料加熱ライン70で加熱された燃料の温度及び圧力の変動を抑制でき、燃焼器5における燃焼状態に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
上記(7)の方法によれば、水冷器522を予熱するステップS130を実施することで、水冷器522の予熱に際して水冷ライン52の温度が上昇する前に水冷ライン52内で発生するドレンを外部に排出できる。
【0097】
(8)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンプラント(発電プラント1)は、ガスタービン2と、ガスタービン2から排気された排気ガスと水とを熱交換させて、蒸気を発生させる排熱回収ボイラ20と、を備えるガスタービンプラント(発電プラント1)である。
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンプラント(発電プラント1)は、ガスタービン2の空気圧縮機3から抽気した圧縮空気を冷却するための圧縮空気冷却ライン50と、ガスタービン2の燃焼器5に供給する燃料を加熱するための燃料加熱ライン70と、を備える。
圧縮空気冷却ライン50は、圧縮空気を外気で冷却するための空冷器512を備える空冷ライン51と、圧縮空気を排熱回収ボイラ20からの第1給水で冷却するための水冷器522を備える水冷ライン52と、圧縮空気バイパスライン53と、が並列に接続されている。
燃料加熱ライン70は、燃料を空冷器512で圧縮空気と熱交換されて加熱された外気で加熱するための第1予熱器712を備える第1加熱ライン71と、燃料を排熱回収ボイラ20からの第2給水で加熱するための第2予熱器722を備える第2加熱ライン72と、燃料バイパスライン73と、が並列に接続されている。
【0098】
上記(8)の構成によれば、ガスタービンプラント(発電プラント1)においてコンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える際に、圧縮空気冷却ライン50で冷却された圧縮空気の温度及び流量の変動を抑制でき、ガスタービン2の高温部の保護に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
上記(8)の構成によれば、ガスタービンプラント(発電プラント1)においてコンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える際に、燃料加熱ライン70で加熱された燃料の温度及び圧力の変動を抑制でき、燃焼器5における燃焼状態に及ぼす影響を抑制できるので、ガスタービン2の運転を継続できる。
上記(8)の構成によれば、ガスタービンプラント(発電プラント1)においてコンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える際に、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却する過程において、圧縮空気冷却ライン50を流通する圧縮空気の一部を圧縮空気バイパスライン53を介して流通させることで、圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度を調節できる。これにより、圧縮空気を水冷器522と空冷器512とで冷却することで圧縮空気が過冷却されて圧縮空気冷却ライン50を流通した後の圧縮空気の温度が目標とする温度から変動することを抑制できる。
上記(8)の構成によれば、ガスタービンプラント(発電プラント1)においてコンバインドサイクル運転とシンプルサイクル運転とを切り替える際に、燃料を第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱する過程において、燃料加熱ライン70を流通する燃料の一部を燃料バイパスライン73を介して流通させることで、燃料加熱ライン70を流通した後の燃料の温度を調節できる。これにより、燃料を第2予熱器722と第1予熱器712とで加熱することで燃料が目標とする温度よりも加熱されて燃料加熱ライン70を流通した後の燃料の温度が目標とする温度から変動することを抑制できる。
【符号の説明】
【0099】
1 コンバインドサイクル発電プラント(発電プラント)
2 ガスタービン
10 蒸気タービン
20 排熱回収ボイラ
50 圧縮空気冷却ライン
51 空冷ライン
52 水冷ライン
53 圧縮空気バイパスライン
70 燃料加熱ライン
71 第1加熱ライン
72 第2加熱ライン
73 燃料バイパスライン
511 空冷器入口弁
512 空冷器
513 ドレン弁
514 空冷器出口弁
521 水冷器入口弁
522 水冷器
523 ドレン弁
524 水冷器出口弁
711 第1予熱器入口弁
712 第1予熱器
714 第1予熱器出口弁
721 第2予熱器入口弁
722 第2予熱器
724 第2予熱器出口弁