(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041593
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】パーティション
(51)【国際特許分類】
A47B 96/04 20060101AFI20240319BHJP
A47G 5/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A47B96/04 Z
A47G5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146493
(22)【出願日】2022-09-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】520182718
【氏名又は名称】アーリアフレスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】515143153
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 公一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 公一郎
(72)【発明者】
【氏名】村松 才子
(57)【要約】
【課題】相手側への飛沫の飛散を防止しながら、相手の音声が伝わるようにすることができるパーティションを提供することである。
【解決手段】本発明に係るパーティションは、第1領域と、第1領域の上方に位置する第2領域を有する第1の板状部材と、第1の板状部材と所定の距離で互いに対向して配置され第1領域及び第2領域のそれぞれに対応する位置に設けられた第3領域及び第4領域を有する第2の板状部材と、第1の板状部材に第2の板状部材を着脱可能にとりつけるための固定部材とを備える。第1領域には所定の大きさの開口を有する第1の貫通孔が設けられ、第2領域には第1の貫通孔の開口よりも大きな開口を有する第2の貫通孔が設けられている。第3及び第4領域には、第3の貫通孔及び第4の貫通孔が設けられている。また、第1の貫通孔の開口と第3の貫通孔の開口のそれぞれが重ならないように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛沫を防止するためのパーティションであって、
使用者の口元近傍に位置する第1領域と、前記第1領域の上方に位置する第2領域を有する第1の板状部材と、
前記第1の板状部材と所定の距離で第1の方向に互いに対向して配置され、前記第1領域及び第2領域のそれぞれに対応する位置に設けられた第3領域及び第4領域を有する第2の板状部材と、
前記第1の板状部材に前記第2の板状部材を着脱可能にとりつけるための固定部材と、を備え、
前記第1の板状部材の前記第1領域には、所定の大きさの開口を有する複数の第1の貫通孔が設けられ、前記第2領域には、前記第1の貫通孔の開口よりも大きな開口を有する複数の第2の貫通孔が設けられており、
前記第2の板状部材の前記第3領域には、複数の第3の貫通孔が設けられ、前記第4領域には、前記第3の貫通孔の開口よりも大きな開口を有する複数の第4の貫通孔が設けられており、
前記第1の板状部材に前記第2の板状部材を取り付けたときに、前記第1の方向において、前記第1の貫通孔の開口と前記第3の貫通孔の開口のそれぞれが重ならないように配置されていることを特徴とするパーティション。
【請求項2】
前記第2の板状部材は、前記第1の板状部材に対して、前記第1の方向に所定の角度で傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項3】
前記固定部材は、前記第1の板状部材を支持するための溝部を含む第1支持部と、前記第2の板状部材を支持するための溝部を含む第2支持部と有し、
前記第2支持部は、前記第1支持部から所定の距離だけ離れて設けられており、
前記第1支持部及び前記第2支持部により、前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材をそれぞれ支持することにより、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との前記第1の方向の間隔が設定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項4】
前記第1の方向において、前記第2の貫通孔の開口と前記第4の貫通孔の開口のそれぞれが重ならないように配置されており、
前記第1の貫通孔と前記第3の貫通孔とは、略同じ大きさの開口を有し、前記第2の貫通孔と前記第4の貫通孔とは、略同じ大きさの開口を有することを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項5】
前記第2領域及び第4領域は、使用者の目線近傍の位置まで拡大して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項6】
前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材の底部を支持するための複数の溝部を有する脚部を備え、
前記固定部材に設けられた前記第1及び第2支持部と、前記脚部に設けられた複数の溝部によって、前記第1の板状部材と第2の板状部材との前記第1の方向の間隔が設定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項7】
前記第1領域に設けられた前記第1の貫通孔及び/又は前記第2領域に設けられた前記第2の貫通孔は、開口の大きさが、上方にいくほど大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項8】
前記第1領域に設けられた第1の貫通孔の開口の大きさと前記第2領域に設けられた第2の貫通孔の開口の大きさがほぼ同じであり、
前記第3領域に設けられた第3の貫通孔の開口の大きさと前記第4領域に設けられた第4の貫通孔の開口の大きさがほぼ同じであり、
前記第2領域及び第4領域が、使用者の目線近傍の位置まで拡大して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティションに関する。より詳しくは、飛沫感染防止用パーティションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウイルス等の感染を防止するために、飛沫防止用パーティション等が用いられている。飛沫防止用パーティションは、パーティションの両側に座って、向かい合って会話等を行うために、透明なアクリル板等から構成されることが多い。
【0003】
しかし、飛沫防止用パーティションの両側に向かい合って会話等を行う際に、相手側の声が聞き取りにくい場合がある。そのために、パーティションにマイクロフォン、スピーカー、及び増幅器等の電子機器を備えて、音を伝搬する方式が提案されている。また、引用文献1(特許第6987296号公報)には、音声増大装置と、飛沫抑制部材とを備えたパーティションが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パーティションにマイクロフォン、スピーカー、及び増幅器等の電子機器を備えたものでは、会話等により発生する飛沫が相手側に飛散することを防止すると共に、使用者の声をマイクロフォンにより電気信号に変換し、音声増大装置により増幅して、スピーカー等で音に変換することで、相手の声を聞き取りやすくしている。しかし、マイクロフォン、スピーカー、増幅器等の電子機器を新たに準備する必要がある。さらに、電子機器とマイクロフォン、スピーカー等を接続する配線を行う必要がある。さらに、これらの電子機器を備えることで、コストも高価となっている。
【0006】
また、特許文献1に開示されている音声増大装置付きのパーティションでも、新たに音声拡大装置を準備する必要がある。また、音声による飛沫抑制部材の振動を音声増大装置に安定し伝搬する必要があり、そのために飛沫抑制部材に音声増大装置を安定して取り付ける必要がある。
【0007】
求められているのは、飛沫防止用のパーティションにおいて、使用者が会話等を行う際に、マイクロフォン、スピーカー、増幅器等の電子機器や音声拡大装置等を使用しなくとも、相手側への飛沫の飛散を防止しながら、相手の音声が伝わるようにすることができるパーティションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るパーティションは、飛沫を防止するためのパーティションであって、使用者の口元近傍に位置する第1領域と、前記第1領域の上方に位置する第2領域を有する第1の板状部材と、前記第1の板状部材と所定の距離で第1の方向に互いに対向して配置され、前記第1領域及び第2領域のそれぞれに対応する位置に設けられた第3領域及び第4領域を有する第2の板状部材と、前記第1の板状部材に前記第2の板状部材を着脱可能にとりつけるための固定部材とを備える。前記第1の板状部材の前記第1領域には、所定の大きさの開口を有する複数の第1の貫通孔が設けられ、前記第2領域には、前記第1の貫通孔の開口よりも大きな開口を有する複数の第2の貫通孔が設けられており、前記第2の板状部材の前記第3領域には、複数の第3の貫通孔が設けられ、前記第4領域には、前記第3の貫通孔の開口よりも大きな開口を有する複数の第4の貫通孔が設けられており、前記第1の板状部材に前記第2の板状部材を取り付けたときに、前記第1の方向において、前記第1の貫通孔の開口と前記第3の貫通孔の開口のそれぞれが重ならないように配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るパーティションでは、所定の大きさの開口を有する複数の第1の貫通孔と、第1の貫通孔の開口よりも大きな開口を有する複数の第2の貫通孔がそれぞれ設けられた第1及び第2領域を有する第1の板状部材と、複数の第3の貫通孔と、第3の貫通孔の開口よりも大きな開口を有する複数の第4の貫通孔がそれぞれ設けられた第3及び第4領域を有する第2の板状部材とが、所定の距離で第1の方向に互いに対向して配置されている。また、第1の板状部材の第1領域は、使用者の口元近傍に位置している。さらに、前記第1の板状部材に前記第2の板状部材を取り付けたときに、前記第1の方向において、前記第1の貫通孔の開口と前記第3の貫通孔の開口のそれぞれが重ならないように配置されている。これにより、使用者が、パーティションを介して会話を行った際に、飛沫等がパーティションで遮られて相手側に到達することを防ぐことができると同時に、複数の貫通孔を介して相手側に音声を伝えることができる。さらに、口元近傍の第1領域以外の第2領域に貫通孔を設けているので、相手側に伝わる音量も増加させることができる。一方、第2領域は第1領域の上方に位置し、使用者の視界を遮る可能性があるが、第2の貫通孔が、第1の貫通孔の開口よりも大きな開口を有することから、第2の領域に第2の貫通孔を設けても、視認性が劣化することを防ぐことができる。このように、本発明に係るパーティションでは、飛沫等を効果的に防止できる。合わせて、視認性を確保しながら、使用者の音声を相手側に伝えることができるので、相手の表情等を確認しながらスムーズにコミュニ―ケーションをとることができる。
【0010】
また、本発明に係るパーティションにおいて、前記第2の板状部材は、前記第1の板状部材に対して、前記第1の方向に所定の角度で傾斜して配置されていることを特徴としてもよい。これにより、パーティションを介して、相手側に伝わる音量をさらに増加させることができる。
【0011】
また、本発明に係るパーティションにおいて、前記固定部材は、前記第1の板状部材を支持するための溝部を含む第1支持部と、前記第2の板状部材を支持するための溝部を含む第2支持部と有し、前記第2支持部は、前記第1支持部から所定の距離だけ離れて設けられており、前記第1支持部及び前記第2支持部により、前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材をそれぞれ支持することにより、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との前記第1の方向の間隔が設定されるように構成されていることを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明に係るパーティションにおいて、前記第1の方向において、前記第2の貫通孔の開口と前記第4の貫通孔の開口のそれぞれが重ならないように配置されており、前記第1の貫通孔と前記第3の貫通孔とは、略同じ大きさの開口を有し、前記第2の貫通孔と前記第4の貫通孔とは、略同じ大きさの開口を有することを特徴としてもよい。
【0013】
また、本発明に係るパーティションにおいて、前記第2領域及び第4領域は、使用者の目線近傍の位置まで拡大して設けられていることを特徴としてもよい。
【0014】
また、本発明に係るパーティションにおいて、前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材の底部を支持するための複数の溝部を有する脚部を備え、前記固定部材に設けられた前記第1及び第2支持部と、前記脚部に設けられた複数の溝部によって、前記第1の板状部材と第2の板状部材との前記第1の方向の間隔が設定されるように構成されていることを特徴としてもよい。
【0015】
また、本発明に係るパーティションにおいて、前記第1領域に設けられた前記第1の貫通孔及び/又は前記第2領域に設けられた前記第2の貫通孔は、開口の大きさが、上方にいくほど大きくなるように形成されていることを特徴としてもよい。
【0016】
また、本発明に係るパーティションにおいて、前記第1領域に設けられた第1の貫通孔の開口の大きさと前記第2領域に設けられた第2の貫通孔の開口の大きさがほぼ同じであり、前記第3領域に設けられた第3の貫通孔の開口の大きさと前記第4領域に設けられた第4の貫通孔の開口の大きさがほぼ同じであり、前記第2領域及び第4領域が、使用者の目線近傍の位置まで拡大して設けられていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るパーティションは、2枚の板状部材に貫通孔を複数設け、所定の間隔を設けて互いに対向して配置し、かつ、それぞれに設けた貫通孔が互いに正対することの無いように向き合わせた構造を有する。これにより、パーティションを介して会話等を行った際に、飛沫等を効果的に防止できる。合わせて、視認性を確保しながら、使用者の音声を相手側に伝えることができるので、相手の表情等を確認しながらスムーズにコミュニ―ケーションをとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るパーティションの斜視図を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るパーティションの組み立て図を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るパーティション1の概略図を示す図である。
図3において、
図3(a)、及び(c)は、それぞれ第1の板状部材、及び第2の板状部材の正面図を示している。また、
図3(b)は、
図3(a)のIIIa―IIIa線、及び
図3(c)のIIIb―IIIb線に沿って切り取った断面図を示している。
図3(b)において、互いに対向して配置された第1の板状部材、及び第2の板状部材の状態を概略的に説明している。
【
図4】
図4は、パーティションの貫通孔の直径(D)、第1の板状部材と第2の板状部材間の間隔(G)、及び第1の板状部材と第2の板状部材との重なり長さ(S)の各パラメータを説明するための図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るパーティションにおける音の伝搬の様子を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るパーティションにおける飛沫の飛散の様子を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、第1の板状部材と第2の板状部材の間の間隔(G)と、本実施形態に係るパーティションを通過する音量、及び飛沫の量の関係を模式的に示した図である。
【
図8】
図8は、所定の面積を有する領域に複数の貫通孔を設けた場合における、貫通孔の開口径(D)と、本実施形態に係るパーティションを通過する音量、及び飛沫の量の関係を模式的に示した図である。
【
図9】
図9は、第1の板状部材に第2の板状部材を着脱可能に取りつけるための固定部材4を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、脚部材によって、第1の板状部材2第2の板状部材との間隔Gを調整する場合の構成を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係るパーティションの斜視図を概略的に示す図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係るパーティションの概略図を示す図である。
図12において、
図12(a)、及び(c)は、それぞれ第1の板状部材、及び第2の板状部材の正面図を示す。また、
図12(b)は、互いに対向して配置された第1の板状部材、及び第2の板状部材を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態に係るパーティションの斜視図を概略的に示す図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態に係るパーティションの概略図を示す図である。
図14において、
図14(a)、及び(c)は、それぞれ第1の板状部材、及び第2の板状部材の正面図を示す。また、
図14(b)は、互いに対向して配置された第1の板状部材、及び第2の板状部材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
いくつかの実施形態に係るパーティションを、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。説明中、「上」、「下」、「右」、「左」、「表面」、「裏面」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。また、
図1、2、11、13、には、直交座標系Sが示されており、Z軸は第1軸Ax1の方向に向いている。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るパーティション1の斜視図を概略的に示す図である。また、
図2は、パーティション1の組み立て図を示す。
図3に、パーティション1の概略図を示す。
図3において、
図3(a)、及び(c)は、それぞれ第1の板状部材2、及び第2の板状部材3の正面図を示している。また、
図3(b)は、
図3(a)のIIIa-IIIa線、及び
図3(c)のIIIb―IIIb線に沿って切り取った断面図を示している。
図3(b)において、互いに対向して配置された第1の板状部材2、及び第2の板状部材3の状態を概略的に説明している。
【0021】
図1~
図3に示すように、パーティション1は、第1の板状部材2と、第1の板状部材2と所定の間隔を設けて互いに対向して配置された第2の板状部材3と、第1の板状部材2に第2の板状部材3を着脱可能に取りつけるための固定部材4を有することができる。また、第1の板状部材2は、第1の板状部材2の底部が、脚部材5の溝部に挿入されて、支持されている。パーティション1の第1の板状部材2と第2の板状部材3のそれぞれは、使用者の表情を容易に視認できるように、例えばアクリル等の透明の樹脂材料から成ることができる。
【0022】
また、第1の板状部材2には、貫通孔10が設けられており、第2の板状部材には、貫通孔20が設けられている。本実施形態においては、第1の板状部材2には、貫通孔10として、穴の開口の大きさが異なる貫通孔10a、及び10bが設けられている。貫通孔10aは、第1の板状部材2の下方側に設けられた第1領域21内に形成することができる。また、貫通孔10bは、第1の板状部材2の第1領域21の上方側に設けられた第2領域22内に形成することができる。
【0023】
同様に、第2の板状部材3には、貫通孔20として、穴の開口の大きさが異なる貫通孔20a、及び20bが設けられている。貫通孔20aは、第2の板状部材3の下方側に設けられた第3領域31内に形成することができる。また、貫通孔20bは、第2の板状部材3の第3領域31の上方側に設けられた第4領域32内に形成することができる。第1の板状部材2に貫通孔10(10a、10b)を設け、第2の板状部材3に貫通孔20(20a、20b)を設けることで、使用者の声が第1の板状部材2、及び第2の板状部材3を介して、反対側に通りやすくすることができる。
【0024】
第1の板状部材2に設けられた貫通孔10(10a、10b)、及び第2の板状部材3に設けられた貫通孔20(20a、20b)は、第1の板状部材2及び第2の板状部材3の厚み方向に同じ断面形状を有する円柱形状とすることができる。また、第1の板状部材2及び第2の板状部材3の厚み方向に貫通孔の断面積が徐々に大きくなるようにテーパー形状(所謂ラッパ形状)を有するようにしてもよい。このとき、第1の板状部材2又は第2の板状部材3の表面側からの音が貫通孔を通過する際に、広がりながら伝搬するので、より大きな音量を相手側に伝搬することができる。
【0025】
また、
図2、及び
図3に示したように、第1の板状部材2と第2の板状部材3とは、互いに対向して配置されている。また、第1の板状部材2の表側から見たときに、第1の板状部材2に形成された貫通孔10(10a、及び10b)の位置と第2の板状部材3に形成された貫通孔20(20a、及び20b)の位置とが重ならないように配置されている。換言すれば、貫通孔10(10a、及び10b)と貫通孔20(20a、及び20b)とは、第1の板状部材2の表側から見たときに、貫通孔10(10a、及び10b)を介して、対向して配置された第2の板状部材3の裏面が常に見えるように配置されており、第2の板状部材3が壁となって貫通孔20(20a、及び20b)の開口を介して第2の板状部材3の表面側が直接に見通せないようになっている。この結果、飛沫等が貫通孔10(10a、及び10b)を介して通過したとしても、第2の板状部材3の裏面により遮断されるように構成されている。
【0026】
一方、第2の板状部材3の表側から見たときに、第2の板状部材3に形成された貫通孔20(20a、及び20b)の位置と第1の板状部材2に形成された貫通孔10(10a、及び10b)の位置とが重ならないように配置されている。換言すれば、貫通孔20(20a、及び20b)と貫通孔10(10a、及び10b)とは、第2の板状部材3の表側から見たときに、貫通孔20(20a、及び20b)を介して、対向して配置された第1の板状部材2の裏面が常に見えるように配置されており、第1の板状部材2が壁となって貫通孔10(10a、及び10b)の開口を介して第1の板状部材2の表面側が直接に見通せないようになっている。この結果、飛沫等が貫通孔20(20a、及び20b)を介して通過したとしても第1の板状部材2の裏面により遮断されるように構成されている。
【0027】
このようにパーティション1の両側で使用者が会話等を行った際に、飛散した飛沫等が、貫通孔10及び20を通過したとしても、対向する板状部材により遮断されるため相手の使用者に到達することを効果的に防止することができる。
【0028】
また、第1の板状部材2と第2の板状部材3は、所定の間隔を設けて、互いに対向して配置されている。これにより、例えば第1の板状部材2側の使用者からの声は、貫通孔10(10a、及び10b)を介して,第1の板状部材2と第2の板状部材3との間に設けられた空隙内を伝搬し、その後、貫通孔20(20a、及び20b)を通過して第2の板状部材3側の使用者に伝搬することができる。この結果、パーティション1を使用することで、パーティション1の両側で対面して会話等した場合でも、飛沫が相手側に到達することを防止しながら、使用者の声を相手側に容易に伝搬させることが可能となっている。また、貫通孔10(10a、及び10b)、及び貫通孔20(20a、及び20b)を介して、空気の流れを生じるようにすることが可能なため、パーティション1を例えば部屋内に設置した場合でも、速やかに換気することができる。この結果、ウイルス等が部屋内に侵入した場合でも、速やかに部屋から排除することができる。
【0029】
また、本実施形態では、第1の板状部材2は、貫通孔10aが設けられた第1領域21と、第1領域21の上方側に設けられた第2領域22を有している。貫通孔10aは、第1の板状部材2の第1領域21内に形成される。第1領域は、第1の板状部材2の下方側に設けられており、使用者の口元近傍に位置している。また、貫通孔10bは、第1領域21の上方側に配置された第2領域22内に形成されている。貫通孔10bの開口の大きさ(直径)は、貫通孔10aの開口の大きさ(直径)よりも大きい値を有するように設計されている。第2領域22は、使用者の目線近傍の位置に設けることができる。
【0030】
同様に、第2の板状部材3は、貫通孔20aが設けられた第3領域31と、第3領域31の上方側に設けられた第4領域32を有している。貫通孔20aは、第2の板状部材3の第3領域31内に形成される。第3領域31は、第2の板状部材3の下方側に設けられており、使用者の口元近傍に位置している。また、貫通孔20bは、第3領域31の上方側に配置された第4領域32内に形成されている。貫通孔20bの開口の大きさ(直径)は、貫通孔20aの開口の大きさ(直径)よりも大きい値を有するように設計されている。第4領域32は、使用者の目線近傍の位置に設けることができる。本実施形態では、第1の板状部材2、及び第2の板状部材3にそれぞれ設けられた貫通孔10aと貫通孔20aの開口の大きさは、ほぼ同じ値に設定されている。また、第1の板状部材2、及び第2の板状部材3にそれぞれ設けられた貫通孔10bと貫通孔20bの開口の大きさは、ほぼ同じ値に設定されている。
【0031】
上記でも述べたが、パーティション1を使用することで、パーティション1の両側で対面して会話等した場合でも、飛沫が相手側に到達することを防止しながら、使用者の声を相手側に容易に伝搬させることができる。例えば、第1の板状部材2の表側に居る使用者から発せられた声(音)は、第1の板状部材2に到達して、貫通孔10(10a、及び10b)を通過した後、一部は反射して、表側に戻る。一方、貫通孔10(10a、及び10b)を通過した音の一部は、回折して回り込み、第1の板状部材2と第2の板状部材3の間を伝搬し、その後、第1の板状部材2の貫通孔10(10a、及び10b)に近接した第2の板状部材3の貫通孔20(20a、及び20b)を通過して第2の板状部材3の表側に居る相手側に伝わる。パーティション1における音の伝搬については後で詳述するが、相手側に伝搬する声(音)の大きさ(音量)を増加させるためには、回折して伝搬する声(音)の量を増やせばよいことが分かる。所定の面積を有する領域内に設けられた複数の貫通孔から回折して回り込む音の総量は、複数の貫通孔の円周長の合計が大きいほど大きい。このために、使用者の口元近傍の位置に設けられた第1領域21内の複数の貫通孔10aの開口の大きさは、比較的小さな値に設定されている。貫通孔10aの開口の大きさは、例えば、約3mm~15mm程度とすることができる。本実施形態では、貫通孔10aの開口の大きさは、約7mm程度とすることができる。
【0032】
一方、第2領域22において、領域が使用者の目線近傍に位置しているため、相手の表情を確認しながら会話等ができるようにすること、つまり視認性が重要となる。貫通孔の開口の大きさが小さい場合、貫通孔の開口周縁部における光の反射等の影響が大きくなり、これに起因して、視認性が劣化することが分かっている。視認性は、貫通孔の開口の大きさに関係しており、貫通孔の開口の大きさ(直径)が大きくなるほど改善される。発明者の知見によれば、相手の表情を確認しながら会話を行うためには、貫通孔の開口の大きさを、例えば約20mm以上とすればよいことが分かってきた。また、貫通孔の開口の大きさを約25mm以上とすることで、視認性がさらに改善することも明らかになった。そこで、視認性を向上するために第2領域22に設けた貫通孔10bの開口の大きさは、第1領域21に設けた貫通孔10aの開口の大きさよりも大きい値に設定しており、例えば、約20mm以上とすることができる。さらに視認性を向上させるために、例えば、約25mm以上とすることが好ましい。本実施形態では、貫通孔10bの大きさは、約28mm程度とすることができる。
【0033】
同様に、第2の板状部材3においても、使用者の口元近傍に位置する第3領域31に設けられた貫通孔20aの開口の大きさ(直径)は、比較的小さな値に設定することができる。貫通孔20aの開口の大きさは、例えば、約3mm~15mm程度とすることができる。本実施形態では、貫通孔20aの開口の大きさは、約7mm程度とすることができる。一方、使用者の目線近傍に位置する第4領域32内に設けられた貫通孔20bの開口の大きさ(直径)は、視認性を向上するために、比較的大きな値に設定され、例えば約20mm以上とすることができる。さらに好ましくは、約25mm以上とすることができる。本実施形態では、貫通孔20bの開口の大きさは、約28mm程度とすることができる。
【0034】
再び、
図1~
図3を参照すると、第1の板状部材2は、第1領域21、及び第2領域22を有し、第1領域21、及び第2領域22内には、それぞれ開口の大きさが異なる複数の貫通孔10a、及び10bが所定の間隔で2次元的に配列されている。さらに、第1領域21及び第2領域22の周囲には、第1領域21及び第2領域22を取り囲む第5領域7を有することができる。第5領域7は、パーティション1の周縁部に形成されることができる。
【0035】
第1の板状部材2は、例えば、略矩形形状を有することができ、本実施形態では、横幅を約400mm~1500mm程度とすることができる。また、高さは、約400mm~1000mm程度とすることができる。しかし、第1の板状部材2の大きさは、これに限定されず、設置する机や台の大きさによって、適宜設計することができる。また、適当な剛性と強度を確保するためにその厚みを約2mm~10mmとすることができる。
【0036】
また、第1の板状部材2は、視認性をよくするために、例えば透明度の高いアクリル等の樹脂を用いることができる。貫通孔10(10a、10b)は、例えば貫通孔を形成する際、或いは使用中に、樹脂の割れ等の不具合が生じないようにするために、ほぼ円形の形状とすることが望ましいが、多角形の形状を有するようにすることも可能である。
【0037】
また、第2の板状部材3は、固定部材4を用いて、第1の板状部材2に着脱可能に取り付けることができる。第1の板状部材2の第5領域7には、固定部材4を、例えば引っ掛けて取り付けるための取付穴8を設けることができる。取付穴8は、第2の板状部材3を安定的に支持するために複数設けることができる。本実施形態では、取付穴8は、第5領域7内の上側の左右2箇所、及び下側の左右2箇所の合計4箇所に設けられている。
【0038】
また、取付穴8の形状は、例えば、略矩形形状とすることができる。しかし、これに限定されず、略円形形状、または、矩形形状と円形形状の組み合わせ形状とすることもできる。
【0039】
同様に、第2の板状部材3は、第3領域31、及び第4領域32を有し、第3領域31、及び第4領域32内には、それぞれ開口の大きさが異なる複数の貫通孔20a、及び20bが所定の間隔で2次元的に配列されている。さらに、第3領域31及び第4領域32の周囲には、第3領域31及び第4領域32を取り囲む第6領域9を有することができる。第2の板状部材3は、視認性をよくするために、例えば透明度の高いアクリル等の樹脂を用いることができる。貫通孔20(20a、及び20b)は、例えば貫通孔を形成する際、或いは使用中に、樹脂の割れ等の不具合が生じないようにするために、ほぼ円形の形状とすることが望ましいが、多角形の形状を有するようにすることも可能である。
【0040】
第2の板状部材3は、第6領域9の領域に、固定部材4に装着するための装着穴23を有することができる。装着穴23は、第1の板状部材2に設けられた取付穴8に対応させて、複数個設けることができる。このようにパーティション1は、第2の板状部材3を、固定部材4を用いて、第1の板状部材2に着脱可能に取り付けることができるように構成されているので、互いに対向して配置された第1の板状部材2、及び第2の板状部材3の裏面に飛沫等が付着して汚れた場合でも、第2の板状部材3を第1の板状部材2から取り外して、汚れた面を容易にクリーニングすることができる。この結果、常に清潔な状態を維持したまま、飛沫防止用パーティションとして使用可能とすることができる。
【0041】
また、装着穴23の形状は、例えば、略矩形形状とすることができる。しかし、これに限定されず、略円形形状、または、矩形形状と円形形状の組み合わせ形状とすることもできる。
【0042】
また、本実施形態では、固定部材4を用いて、第2の板状部材3を第1の板状部材2に着脱可能に取り付けるように構成されている。ただし、第2の板状部材3を第1の板状部材2に支持固定するための方法としては、これに限定されず、第1の板状部材2と第2の板状部材3の間に所定の厚みの座金(ワッシャー)を挟んで第1の板状部材2と第2の板状部材3との間隔を調整し、ボルトとナット等で支持固定するようにしてもよい。
【0043】
上記で説明したように、本実施形態のパーティションでは、第1の板状部材2、及び第2の板状部材3には、それぞれ貫通孔10(10a、10b)、及び貫通孔20(20a、20b)が形成されている。これにより、パーティション1において、パーティション1を挟んで使用者が対面会話する際に、飛沫の飛散を防止可能とすると共に、相手の音声をより聞き取り易い構成となっている。従来の1枚の板状部材からなるパーティションでは、相手の音声を聞きとるために、使用者の口元近傍にのみ貫通孔(所謂通声穴)が設けられることがある。しかし、視認性を確保するために、口元近傍以外の領域に貫通孔は設けられてこなかった。このため相手の声を十分に聴きとることが困難であった。本実施形態のパーティション1においては、貫通孔10(10a、10b)、及び貫通孔20(20a、20b)は、第1の板状部材2、或いは第2の板状部材3の周縁部近傍まで設けられており、これにより、より相手の音声が聞き取れるように改善されている。さらに、第1の板状部材2、及び第2の板状部材3は、それぞれ上下に2つの領域を有し、使用者の口元近傍に位置する第1領域21、及び第3領域31には、比較的小さな開口を有する貫通孔10a、20aが設けられている。これにより使用者の声(音)が、パーティション1を挟んで反対側に居る相手側に伝搬しやすくなっており、相手側の人が、使用者の声を容易に聞き取ることができる。本実施形態では貫通孔10a、及び20aの開口の大きさは、例えば、約3mm~15mm程度の比較的小さな値に設定することができる。一方、使用者の目線近傍に位置している第2領域22、及び第4領域32には、20mm以上の比較的大きな開口を有する貫通孔10b、20bが設けられており、これにより視認性を向上することができる。この結果、相手側の表情を容易に確認しながら会話等を行うことができる。つまり、パーティション1を用いてより好適にコミュニケーションをとることが可能となっている。
【0044】
次に、貫通孔10(10a,10b)を有する第1の板状部材2、及び貫通孔20(20a、20b)を有する第2の板状部材3を備えたパーティション1における音の伝搬について、詳細に説明する。
【0045】
まず、以下の説明のために、
図4にパーティション1の貫通孔の直径(D)(以下、開口径Dと言う)、第1の板状部材2と第2の板状部材3間の間隔(G)(以下、間隔Gと言う)、第1の板状部材2と第2の板状部材3との重なり長さ(S)(以下、重なり長Sと言う)の各パラメータを概念的に示した。また、
図5に、第1の板状部材2の表側から貫通孔10に向かって進行してきた音が、貫通孔近傍でどのように伝搬するかについて、音の伝搬の様子を模式的に図示した。また、
図6に、第1の板状部材の表側から貫通孔10に向かって飛散した飛沫が、貫通孔近傍でどのように飛散するかについて、飛沫の飛散の様子を模式的に図示した。
【0046】
図5を参照すると、第1の板状部材2の表側から貫通孔10に向かって進行してきた音は、第1の板状部材2の表面で反射される成分と、貫通孔10を通過して、第2の板状部材3の裏側に向かう成分が存在する。この貫通孔10を通過した音の成分は、一部は、第2の板状部材3の裏側の表面で反射されるが、一部は、貫通孔10の開口周縁部近傍で回折し、回り込んで第1の板状部材2と第2の板状部材3の間の空隙を進行しながら伝搬することができる。この貫通孔10の開口周縁部近傍で回折し、回り込んだ音が、所定の間隔(G)で対向して配置された第1の板状部材2と第2の板状部材3の間の空隙を伝搬し、第2の板状部材3に設けられた貫通孔20を介して、相手側に伝搬する。つまり、貫通孔10の開口周縁部近傍で回折し、回り込む音の量を増加させることで、より大きな音量で相手側に伝搬することが可能となる。
【0047】
一方、
図6を参照すると、第1の板状部材2に向かって飛来した飛沫は、粒子状なので、ほとんどが、第1の板状部材2の表面に付着する。また、貫通孔10を通過した飛沫も、ほとんどが第2の板状部材3の裏面に付着する。一方、貫通孔10を通過した飛沫が、第1の板状部材2と第2の板状部材3の間の空隙に入る量は、わずかであると考えられる。
【0048】
図7に、第1の板状部材2と第2の板状部材3との重なり長Sをパラメータとして、第1の板状部材2と第2の板状部材3の間の間隔(G)と、貫通孔10を通過して、第1の板状部材2と第2の板状部材3の間の空隙を伝搬し、第2の板状部材3の貫通孔20を通過する音量、及び飛沫の量の関係を模式的に示した。なお、
図7において、縦軸の音量通過量、及び飛沫通過量は相対値を表している。
図7を参照すると、貫通孔を通過して、第1の板状部材2と第2の板状部材3の間の空隙に入り込む音量は、間隔Gが大きくなると共に、間隔Gに比例して、大きくなることが分かる。また、間隔Gが所定以上の大きさ(
図7においては、4mm以上)では、音量が飽和する傾向にあることが分かる。これは、間隔Gがゼロから所定の範囲までは、間隔Gが大きくなるにしたがって、第1の板状部材2と第2の板状部材3の間の空隙を伝搬し、第2の板状部材3の貫通孔20まで伝搬する音の成分が増大するためであると考えられる。一方、飛沫については、間隔Gが6mm以下では、第1の板状部材2と第2の板状部材3の間の空隙まで到達せずに、ほとんどが第1の板状部材2の表面、及び第2の板状部材3の裏面に付着して捕捉されることが分かる。本実施形態において、
図7を参照すると、音声について所定以上の回折量を確保し、且つ飛沫の拡散を抑制するための板状部材間隔Gの範囲として、2mm以上、10mm以下とすることが好適であることがわかった。一方、飛沫については、間隔Gが小さい範囲では、重なり長Sの値にほとんど依存せずに、通過飛沫量を小さくすることができることが分かる。しかし、間隔Gが大きくなるほど、重なり長Sが小さくなるに従って、通過飛沫量が増大することも分かった。
【0049】
次に、第1の板状部材2、及び第2の板状部材3の所定の面積を有する領域に複数の貫通孔10、及び貫通孔20を設けた場合における、貫通孔10を通過して、第1の板状部材2と第2の板状部材3の間の空隙を伝搬し、第2の板状部材3の貫通孔20を通過する音量、及び飛沫の量の関係について説明する。
図8は、所定の面積を有する領域に複数の貫通孔を設けた場合における、貫通孔の開口径Dと、パーティション1を通過する音量、及び飛沫の量の関係を模式的に示した図である。ただし、
図8において、間隔Gは3mmに設定してある。
図8を参照すると、開口径Dが、重なり長Sよりも大きい領域においては、音量は、貫通孔の開口径Dに半比例して、開口径Dが大きくなるほど、小さくなることが分かる。これは、所定の面積を有する領域に複数の貫通孔を設けた場合、貫通孔の開口周縁部近傍で回折し、回り込む音の総量は、各貫通孔の開口の周縁長の合計で決まるためである。
【0050】
一方、開口径Dが小さい場合は、1個の貫通孔の開口の周縁長は小さいが、貫通孔の個数が大きくなるため、各貫通孔の開口の周縁長(円周長)の合計(総周縁長)が大きくなる。この結果、貫通孔の周縁部で回折して伝搬する音の量が増加することに起因していると考えられる。なお、貫通孔の開口径Dが、重なり長Sと同等の値又はそれ以下の値の時には、貫通孔の数は、開口径Dの大きさよりも重なり長Sの大きさに依存するようになる。特に、開口径Dが、重なり長Sの大きさよりも小さい範囲では、開口径Dを小さくしても、貫通孔10及び貫通孔20の数が増加しない。このために、開口径Dが、重なり長Sの大きさよりも小さい範囲では、開口径Dが小さくなるに従い、各貫通孔の開口の周縁長(円周長)の合計(総周縁長)が小さくなる。この結果、音声の通過量は、開口径Dに比例して、開口径Dが小さくなるに従い小さくなることに留意する必要がある。
【0051】
上記で説明したとおり、パーティション1における音の伝搬は、第1の板状部材2と第2の板状部材3に設けた貫通孔の開口径D、及び第1の板状部材2と第2の板状部材3の間の間隔Gの大きさに関係することが分かってきた。次に、第1の板状部材2、及び第2の板状部材3の間隔Gを制御するための構造について以下に説明する。
【0052】
再び、
図1~
図3を参照すると、第1の板状部材2と第2の板状部材3とは、所定の間隔(G)だけ距離をおいて、互いに対向して配置されている。本実施形態では、この間隔Gは、第1の板状部材2に第2の板状部材3を着脱可能に取りつけるための固定部材4によって設定されている。以下に、この固定部材4について、詳細に説明する。
【0053】
図9に、第1の板状部材2に第2の板状部材3を着脱可能に取りつけるための固定部材4を概略的に示す。
図9を参照すると、固定部材4は、第1の板状部材2の取付穴8に引っ掛けて支持するための第1支持部41を有する。また、第2の板状部材3の装着穴23を固定部材4に引っ掛けて、第2の板状部材3を支持するための第2支持部42を有することができる。第1支持部41は、下方に開口を有する溝形状を有している。第1の板状部材2の取付穴8に固定部材4を引っ掛けて支持する際に、第1支持部41の溝内に第1の板状部材2を挿入する。これにより、固定部材4を第1の板状部材2に引っ掛けて支持することができる。一方、第2支持部42は、上方に開口を有する溝形状を有しており、当該溝に第2の板状部材3の装着穴23を介して第2の板状部材3を挿入することで、第2の板状部材2を固定部材4に支持することができる。
【0054】
第1支持部41及び第2支持部42は、第1の板状部材2と第2の板状部材3が対向する方向に、所定の距離tだけ離れた位置に形成することができる。この第1支持部41と第2支持部42との距離tにより、第1支持部41と第2支持部42に第1の板状部材2と第2の板状部材3を挿入した時に、第1支持部41と第2支持部42との間の間隔(G)が設定される。固定部材4を用いることにより、第1の板状部材2に第2の板状部材3を着脱可能に支持固定することができる。また、第1支持部41と第2支持部42との距離tが異なる固定部材4を複数用意することで、第1の板状部材2と第2の板状部材3との間隔Gを簡単に変更又は調整することができる。
【0055】
また、第1支持部41は、溝部から下方に延伸する隔壁部45を有しており、固定部材4を第1の板状部材2に引っ掛けて取り付ける際に、隔壁部45の側面に第1の板状部材2の表面(裏面)が当接することで、固定部材4を、第1の板状部材2に安定して支持することができる。
【0056】
また、隔壁部45に隣接して、下方に延伸する板状部材ガイド部46を設けることができる。板状部材ガイド部46は、第2支持部42の溝形状に対向して、下方に開口を有する凹部形状の溝を有することができる。第2の板状部材3の装着穴23を介して、第2の板状部材3を第2支持部42の溝形状に挿入し支持固定する際に、第2の板状部材3の重さで、第1の板状部材2に引っ掛けた固定部材4が第1の板状部材2の取付穴8を中心として回転し、第2の板状部材3が第2支持部42から脱落する可能性がある。第2支持部42の溝形状に対向して板状部材ガイド部46を設けることで、板状部材ガイド部46に第2の板状部材3の表面(表の面)が当接し、第2の板状部材3の回転を効果的に防止することができる。この結果、第2の板状部材3を第2支持部42の溝形状に挿入し支持固定する際に、第2の板状部材3が第2支持部42から脱落するのを防止することができる。
【0057】
本実施形態では、まず、第2の板状部材3を第2支持部42の溝形状に挿入し支持固定し、その後、第2の板状部材3を固定部材4に支持固定した状態で固定部材4を保持し、第1の状部材2の取付穴8に第1支持部41を引っ掛けて支持固定できる。このとき、第2の板状部材3を固定部材4に支持固定した状態で固定部材4を保持する必要があるため、固定部材4には、持手部47が設けられている。
【0058】
次に、第1の板状部材2の底部を支持するための脚部材5について説明する。
図1を参照すると、第1の板状部材2は、第1の板状部材2の底部が、脚部材5の溝部に挿入されて、支持されている。この場合、
図1に示したように、第1の板状部材2の第5領域7内の上側の左右2箇所、及び下側の左右2箇所の合計4箇所に設けられた取付穴8に固定部材4を引っ掛けて、第2の板状部材3をこの固定部材4を用いて第1の板状部材2に支持固定することができる。このとき、第1の板状部材2と第2の板状部材3との間隔Gは、
図9において、固定部材4に設けた第1支持部41と第2支持部42との距離tにより制御される。
【0059】
一方、第1の板状部材2と第2の板状部材3との間隔Gは、脚部材5によっても調整が可能である。
図10に、脚部材5によって、第1の板状部材2と第2の板状部材3との間隔Gを調整する場合の構成を説明するための図を示した。
図10(a)は、脚部材5に第1の板状部材2及び第2の板状部材3を取り付けるための2個の板状部材取付溝51,52を設けた場合を示している。
図10(a)において、2個の板状部材取付溝51,52が、脚部材5の底面にほぼ垂直方向に略平行に延伸して設けられている場合を示している。2個の板状部材取付溝51,52の間隔により、第1の板状部材2と第2の板状部材3との間隔Gを調整することができる。
図10(b)は、脚部材5に第1の板状部材2及び第2の板状部材3を取り付けるための3個の板状部材取付溝51,52,53を設けた場合を示している。
図10(a)と同様に、3個の板状部材取付溝51,52,53が、脚部材5の底面にほぼ垂直方向に、所定の間隔で並んで略平行に延伸して設けられている。第1の板状部材2と第2の板状部材3とは、3個の板状部材取付溝51,52,53のいずれかに挿入されて支持される。本実施形態では、板状部材取付溝51を他の板状部材取付溝52,53よりも深く形成しており、板状部材取付溝51に第1の板状部材2を挿入し、板状部材取付溝52,53のいずれかに、第2の板状部材3を挿入するように構成されている。これにより、第1の板状部材2を板状部材取付溝51に挿入することでしっかりと確実に保持することができる。第1の板状部材2と第2の板状部材3とが挿入される板状部材取付溝を適宜選択することで、第1の板状部材2と第2の板状部材3との間隔Gを自由に調整することができるので間隔Gの調整自由度を向上させることができる。
図10(b)には、3個の板状部材取付溝51.52,53が設けられている場合を示したが、これに限らず、3個以上の複数の板状部材取付溝を設けることができる。また、
図10(c)は、2個の板状部材取付溝51,52が、所定の角度を成すように形成される場合を示している。
図10(c)において、一方の板状部材取付溝51は、脚部材5の底面にほぼ垂直方向に延伸して設けられており、他方の板状部材取付溝52が、脚部材5の底面に対して斜めに延伸して設けられている。これにより、第1の板状部材2と第2の板状部材3とを板状部材取付溝51,52に挿入して支持したときに、互いに対向して配置される第1の板状部材2と第2の板状部材3の表面の成す角度を所定の角度となるように調整することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、第1の板状部材2に設けられた取付穴8に固定部材4を引っ掛けて、第2の板状部材3を第1の板状部材2に支持固定するように構成されているが、これに限定されず、固定部材4を、例えば、第1の板状部材2の上端部に引っ掛けて、第2の板状部材3を第1の板状部材2に支持固定するようにしてもよい。また、固定部材4を用いずに、脚部材5のみで、第1の板状部材2及び第2の板状部材3を支持固定するようにしてもよい。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るパーティション101について、詳細に説明する。
図11に、第2の実施形態に係るパーティション101の斜視図を概略的に示す。また、
図12に、パーティション101の概略図を示す。
図12において、
図12(a)、及び(c)は、それぞれ第1の板状部材102、及び第2の板状部材103の正面図を示している。また、
図12(b)は、
図12(a)のXIIa-XIIa線、及び
図12(c)のXIIb―XIIb線に沿って切り取った断面図を示しており、互いに対向して配置された第1の板状部材102、及び第2の板状部材103を説明するための図である。
【0062】
図11,及び
図12において、パーティション101は、第1の実施形態に係るパーティション1と同様に、第1の板状部材102と、第1の板状部材102に対向して配置された第2の板状部材103と、第1の板状部材102に第2の板状部材103を着脱可能に取りつけるための固定部材104、105を有することができる。また、第1の板状部材102は、底部が脚部材5の溝部に挿入されて、支持されている。なお、
図12において、第2の板状部材103は、固定部材105を用いて、第1の板状部材102の取付穴8に引っ掛けて、着脱可能に取り付けることができる。一方、第2の板状部材103の底部を固定部材104の溝に挿入して第2の板状部材103を保持する。固定部材104を用いて第2の板状部材103を保持した状態で、第2の板状部材103を第1の板状部材102に取り付けるように構成されている。しかし、これに限定されず、第2の板状部材103の底部を支持する固定部材104に代えて、脚部材5によって第1の板状部材102と第2の板状部材103の底部を保持固定するように構成しても良い。例えば、第1の実施形態において、
図10でも説明したように、脚部材5に複数の溝を設け、第1の板状部材102と第2の板状部材103のそれぞれの底部を、この複数の溝の一つに挿入し支持することができる。このとき、第1の板状部材102と第2の板状部材103との間隔は、脚部材5に設けた2つの溝の間隔により設定することができる。
【0063】
また、
図11、及び
図12に示したように、第2の実施形態に係るパーティション101では、対向する第1の板状部材102に対して、第2の板状部材103を傾けて配置されている。つまり、互いに対向して配置された第1の板状部材102と第2の板状部材103との間隔が、上下方向で異なっており、下側では小さく、上側で大きくなるように配置されている。本実施形態では、第1の板状部材102は、第1軸Ax1の方向に沿って延伸しており、一方、第2の板状部材103が、第1軸Ax1に対して所定の角度だけ傾いて、配置されている。第1の板状部材102と第2の板状部材103との間隔は、固定部材104、及び固定部材105に設けた第1支持部41と第2支持部42との距離tによって設定することができる。つまり、固定部材105の第1支持部41と第2支持部42との距離t1を、固定部材104に設けた第1支持部41と第2支持部42との距離t2よりも大きくすることによって、第1の板状部材102と第2の板状部材103との成す角度を、所定の値に設定することができる。本実施形態において、第1の板状部材102と第2の板状部材103との頂部での間隔152は、約5mm~約100mm程度とすることができ、一方、第1の板状部材102と第2の板状部材103との底部での間隔151は、約1mm~約5mm程度とすることができる。或いは、第1の板状部材102と第2の板状部材103とのなす角度を、約0.5度~10度程度の範囲で、傾けて対向させて配置させることができる。また、固定部材104に代えて、脚部材5によって第1の板状部材102と第2の板状部材103の底部を支持するように構成してもよい。このとき、
図10(c)に示したように、第2の板状部材103との底部を支持するための溝52を、第1の板状部材102との底部を支持するための溝51に対して、深さ方向で傾けて形成することで、第2の板状部材103を第1の板状部材102に対して、所定の角度だけ傾けて支持できるようにすることができる。また、本実施形態では、第2の板状部材103を第1の板状部材102に対して、所定の角度だけ傾けて配置しているが、これに限定されず、第1の板状部材102、又は第2の板状部材103のいずれかを鉛直軸(第1軸Ax1)に対していずれか一方、又は両方を傾けて配置するようにしてもよい。
【0064】
パーティション101の第1の板状部材102、及び第2の板状部材103は、使用者の表情を容易に視認できるように、例えばアクリル等の透明の樹脂材料から成ることができる。さらに、
図12において、使用者の声が第1の板状部材102、及び第2の板状部材103を介して、反対側に通りやすくするために、第1の板状部材102には、下側領域121、中間領域122、及び上側領域123の3つの領域が設けられており、下側領域121、中間領域122、及び上側領域123の3つの領域には、それぞれ開口(直径)の大きさが異なる複数の貫通孔110a、110b、110cが、設けられている。また、第2の板状部材103には、下側領域131、中間領域132、及び上側領域133の3つの領域が設けられており、下側領域131、中間領域132、及び上側領域133の3つの領域には、それぞれ開口の大きさ(直径)が異なる複数の貫通孔120a,120b,120cが、設けられている。なお、第1の板状部材102の下側領域121、及び第2の板状部材103の下側領域131が、本実施形態における第1領域に該当し、使用者の口元近傍に位置するように形成されている、また、第1の板状部材102の中間領域122又は上側領域123、及び第2の板状部材103の中間領域132又は上側領域133が、本実施形態における第2領域に該当し、使用者の目線近傍に位置するように形成されている。
【0065】
また、第1の板状部材102の表側から見たときに、第1の板状部材102に形成された貫通孔110(貫通孔110a、110b、110c)の位置と第2の板状部材103に形成された貫通孔120(貫通孔120a,120b,120c)の位置とが重ならないように配置されている。換言すれば、貫通孔110(貫通孔110a、110b、110c)と貫通孔120(貫通孔120a,120b,120c)とは、第1の板状部材102の表側から見たときに、貫通孔110(貫通孔110a、110b、110c)を介して、対向して配置された第2の板状部材103の裏面が常に見えるように配置されており、第2の板状部材103が壁となって貫通孔120(貫通孔120a,120b,120c)の開口を介して第2の板状部材103の表面側が直接に見通せないようになっている。この結果、飛沫等が貫通孔110(貫通孔110a、110b、110c)を介して通過したとしても、第2の板状部材103の裏面により遮断されるように構成されている。
【0066】
一方、第2の板状部材103の表側から見たときに、第2の板状部材103に形成された貫通孔120(貫通孔120a,120b,120c)の位置と第1の板状部材102に形成された貫通孔110(貫通孔110a、110b、110c)の位置とが重ならないように配置されている。換言すれば、貫通孔120(貫通孔120a,120b,120c)と貫通孔110(貫通孔110a、110b、110c)とは、第2の板状部材103の表側から見たときに、貫通孔120(貫通孔120a,120b,120c)を介して、対向して配置された第1の板状部材102の裏面が常に見えるように配置されており、第1の板状部材102が壁となって貫通孔110(貫通孔110a、110b、110c)の開口を介して第1の板状部材102の表面側が直接に見通せないようになっている。この結果、飛沫等が貫通孔120(貫通孔120a,120b,120c)を介して通過したとしても第1の板状部材102の裏面により遮断されるように構成されている。
【0067】
なお、互いに対向して配置された第1の板状部材102と第2の板状部材103との間隔が、上下方向で異なっていること(又は、第2の板状部材103を第1の板状部材102に対して、所定の角度だけ傾けて配置していること)、及び、第1の板状部材102の下側領域121、中間領域122、及び上側領域123の3つの領域にそれぞれ貫通孔110a、110b,110cが設けられ、第2の板状部材103の下側領域131、中間領域132、及び上側領域133の3つの領域にそれぞれ貫通孔120a,120b,120cが設けられていること以外は、第1の実施形態に係るパーティション1と同様であるので、特に説明が必要な場合を除き説明を省略する。
【0068】
次に、複数の貫通孔110(貫通孔110a、110b,110c)が設けられた第1の板状部材102と複数の貫通孔120(貫通孔120a,120b,120c)が設けられた第2の板状部材103の配置について詳細に説明する。
【0069】
図11,及び
図12に示したように、本実施形態では、第1の板状部材102には、下側領域121、中間領域122、及び上側領域123の3つの領域が設けられている。さらに第1の板状部材102の下側領域121、中間領域122、及び上側領域123の3つの領域には、開口の大きさ(直径)が異なる複数の貫通孔110a、110b、110cが形成されており、この開口の大きさ(直径)が、第1の板状部材102に設けられた位置によって異なるように設計されている。同様に、第2の板状部材103には、下側領域131、中間領域132、及び上側領域133の3つの領域が設けられている。第2の板状部材103の下側領域131、中間領域132、及び上側領域133の3つの領域には、開口の大きさ(直径)が異なる複数の貫通孔120a、120b、120cが形成されており、この開口の大きさ(直径)が、第2の板状部材103に設けられた位置によって異なるように設計されている。
【0070】
上述したとおり、本実施形態において、第1の板状部材102及び第2の板状部材103の下側領域121、及び131は、使用者の口元により近い領域となっている。また、上側領域123、133は、使用者の目線に近い領域であり、これらの領域を介して主に相手の表情などを確認することができる。また、中間領域122、及び132は、下側領域121、131と上側領域123、及び133の中間に位置する領域である。
【0071】
第1の板状部材102の下側領域121に設けられた貫通孔110aの直径は、比較的小さな値に設計されており、上側領域123に設けられた貫通孔110cの直径は、貫通孔110aの直径よりも大きい値に設定されている。同様に、第2の板状部材103の下側領域131に設けられた貫通孔120aの直径は、比較的小さな値に設計されており、上側領域133に設けられた貫通孔120cの直径は、貫通孔120aの直径よりも大きい値に設定されている。これにより、第1の板状部材102と第2の板状部材103の上側領域123、及び133を介し相手の表情等を視認し易く、視認性を向上することができる。そして、第1の板状部材102と第2の板状部材103の中間領域122、及び132では、下側領域121、及び131と上側領域123、及び133に設けられた貫通孔の開口の大きさに対して、中間的な開口径を有する貫通孔110b及び120bが設けられている。
【0072】
また、本実施形態では、下側領域から上側領域にいくにつれて、第1の板状部材102と第2の板状部材103の間隔が徐々に大きくなるように、第1の板状部材102に対して、第2の板状部材103を傾けて配置している。上記でも説明した通り、例えば、第1の板状部材102と第2の板状部材103の底部(下端)での間隔151は、約1mm~約5mm程度とすることができる。また、第1の板状部材102と第2の板状部材103との頂部(上端)の間隔152は、例えば約5mm~約100mm程度とすることができる。本実施形態では、下端の間隔151を約2mmとし、上端の間隔152を約12mmとした。また、第1の板状部材102及び第2の板状部材103の貫通孔の直径Dは、下側領域121,131では約14mm、中間領域122,132では約21mm、上側領域123,133では約28mmに設定した。また、第1の板状部材102と第2の板状部材103の重なり量Sは、約6mmに設定した。
【0073】
以上で説明したように、本実施形態では、下側領域から上側領域にいくにつれて、第1の板状部材102と第2の板状部材103との間隔が大きくなるように、上下方向で変化させている。このように、第1の板状部材102と第2の板状部材103の一方、又は両方の対向する面の間隔を変化させ、傾斜させて配置している。このように第1の板状部材102と第2の板状部材103の少なくともいずれか一方を傾けて配置することで、例えば第1の板状部材102の表側から貫通孔110(110a,110b、110c)を通過した音は、互いに傾斜して配置された第1の板状部材102と第2の板状部材103の間で反射を繰り返しながら、第2の板状部材103に設けられた貫通孔120(120a,120b、120c)を通過して、第2の板状部材103の表面側に伝搬する。第1の板状部材102と第2の板状部材103とは、互いに傾斜して配置されているので、第1の板状部材102の表側から貫通孔110(110a,110b、110c)を通過した音は、第2の板状部材103の裏面に対して、この裏面の傾きに応じて斜めに入射し、また、この裏面の傾きに対応した角度で反射される。このため、再度貫通孔110の方に戻らずに、第1の板状部材102と第2の板状部材103の間で反射を繰り返しながら、第1の板状部材102と第2の板状部材103の間の間隙部を伝搬する。これにより、より大きな音声を、相手側に伝搬することができる。さらに、
図7で説明したように、第1の板状部材102と第2の板状部材103の間隔が大きくなるほど、パーティションを通過する音量を大きくすることができるので、使用者の口元から遠い位置にある上側の領域でも、通過する音量を大きくできる効果も期待できる。
【0074】
また、視認性確保の観点から、目線を含む第1の板状部材102及び第2の板状部材103の上側領域123、133に設けた貫通孔110c、120cの大きさを、下側領域121、131に設けた貫通孔110a、120aよりも大きくなるようにしている。これにより、視認性を確保しつつ通過する音量を大きくすることができる。
【0075】
また、本実施形態では、第1軸Ax1の方向と略平行に配置された第1の板状部材102に対して、第2の板状部材103を斜めに傾けて、上側の間隔が下側の間隔よりも大きくなるように配置しているが、これに限らず、2枚の板の傾斜方向としては、上下左右のいずれの方向に傾斜をつけてもよい。例えば、上側の間隔が下側の間隔よりも小さくなるように配置してもよい。
【0076】
以上で述べたように、本実施形態では、上下3つの領域を設け、下側領域に設けられた貫通孔の大きさを、上部領域に設けられた貫通孔の大きさよりも小さくすることで、音の通過量が大きくできる。一方、上側領域に設けられた貫通孔の大きさを、下部領域に設けられた貫通孔の大きさよりも大きくしているので、上側領域を介し相手の表情等を視認し易く、視認性を向上することができる。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るパーティション201について、詳細に説明する。
図13に、第3の実施形態に係るパーティション201の斜視図を概略的に示す。また、
図14に、パーティション201の概略図を示す。
図14において、
図14(a)、及び(c)は、それぞれ第1の板状部材202、及び第2の板状部材203の正面図を示している。
図14(b)は、
図14(a)のXIVa-XIVa線、及び
図14(c)のXIVb―XIVb線に沿って切り取った断面図を示しており、互いに対向して配置された第1の板状部材202、及び第2の板状部材203を説明するための図である。
【0078】
図13、14に示すように、パーティション201は、第1の板状部材202と、第1の板状部材202と所定の間隔を設けて互いに対向して配置された第2の板状部材203を有することができる。また、第1の実施形態のパーティション1と同様に、第1の板状部材202に第2の板状部材203を着脱可能に取りつけるための固定部材4を有することができる。また、第1の板状部材202を支持するための脚部材5を備えることができる。パーティション201の第1の板状部材202と第2の板状部材203のそれぞれは、使用者の表情を容易に視認できるように、例えばアクリル等の透明の樹脂材料から成ることができる。さらに、使用者の声が第1の板状部材202、及び第2の板状部材203を介して、反対側に通りやすくするために、第1の板状部材202、及び第2の板状部材203のそれぞれには、複数の貫通孔210、及び複数の貫通孔220が設けられている。なお、互いに対向して配置された第1の板状部材202と第2の板状部材203とに、それぞれ複数の貫通孔210、及び複数の貫通孔220が設けられていること以外は、第1の実施形態に係るパーティション1と同様であるので、以下の説明では、特に説明が必要な場合を除き説明を省略する。
【0079】
本実施形態において、貫通孔210は、第1の板状部材202の第1領域221に所定の間隔で2次元的に配列されて設けられている。また、第1の板状部材202は、第1領域221の周囲を取り囲む第5領域207を有することができる。同様に、貫通孔220は、第2の板状部材203の第3領域231に所定の間隔で2次元的に配列されて設けられている。また、第2の板状部材203は、第3領域231の周囲を取り囲む第6領域209を有することができる。本実施形態において、第1の板状部材202の第1領域221は、第1実施形態における第1領域21及び第2領域22の両領域を含む領域である。また、第2の板状部材203の第3領域231は、第1実施形態における第3領域31及び第4領域32の両領域を含む領域である。
【0080】
また、第1の板状部材202の表側から見たときに、第1の板状部材202に形成された貫通孔210の位置と第2の板状部材203に形成された貫通孔220の位置とが重ならないように配置されている。換言すれば、貫通孔210と貫通孔220とは、第1の板状部材202の表側から見たときに、貫通孔210を介して、対向して配置された第2の板状部材203の裏面が常に見えるように配置されており、第2の板状部材203が壁となって貫通孔210の開口を介して第2の板状部材203の表面側が直接に見通せないようになっている。この結果、飛沫等が貫通孔210を介して通過したとしても、第2の板状部材203の裏面により遮断されるように構成されている。
【0081】
一方、第2の板状部材203の表側から見たときに、第2の板状部材203に形成された貫通孔220の位置と第1の板状部材202に形成された貫通孔210の位置とが重ならないように配置されている。換言すれば、貫通孔220と貫通孔210とは、第2の板状部材203の表側から見たときに、貫通孔220を介して、対向して配置された第1の板状部材202の裏面が常に見えるように配置されており、第1の板状部材202が壁となって貫通孔220の開口を介して第1の板状部材202の表面側が直接に見通せないようになっている。この結果、飛沫等が貫通孔220を介して通過したとしても第1の板状部材202の裏面により遮断されるように構成されている。
【0082】
第1の板状部材202の第1領域221は、使用者の口元近傍に限らず、口元近傍の位置から使用者の目線近傍の位置の範囲まで拡張されて広がって設けられている。同様に、第2の板状部材203の第3領域231は、使用者の口元近傍の位置から使用者の目線近傍の位置の範囲まで拡張されて広がって設けられている。本実施形態では、第1領域221は、第1の板状部材202の周縁近傍まで設けることができる。また、第3領域231は、第2の板状部材203の周縁近傍まで設けることができる。貫通孔210、及び220を第1の板状部材202及び第2の板状部材203の周縁近傍まで設けることで、パーティション201の両側で対面して会話等をした場合でも、飛沫が相手側に到達することを防止できるとともに、使用者の声を通りやすくすることができる。この結果、より相手の音声が聞き取れるように改善されており、パーティション201を用いてより好適にコミュニケーションをとることが可能となっている。
【0083】
また、貫通孔210、及び220の開口の大きさ(直径)は、約20mm以上の比較的大きな値を有することができる。より好ましくは、貫通孔210、及び220の開口の大きさ(直径)は約25mm以上とすることができる。これにより相手の音声が聞き取れやすくなると共に、パーティション201を介して相手側の表情を確認するための視認性を向上することができる。この結果、相手側の表情を確認しながら会話等を行うことができる。つまり、パーティション201を用いてより好適にコミュニケーションをとることが可能となっている。
【0084】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0085】
1、101,201 パーティション
2、102、202 第1の板状部材
3、103、203 第2の板状部材
4、104、105 固定部材
5 脚部材
7、207 第5領域
8 取付穴
9、209 第6領域
10、10a、10b、20,20a、20b、110、110a、110b、110c、120、120a,120b、120c、210、220 貫通孔
20 貫通孔
21、221 第1領域
22 第2領域
23 装着穴
31、231 第3領域
32 第4領域
41 第1支持部
42 第2支持部
45 隔壁部
46 板状部材ガイド部
47 持手部
51、52、53 板状部材取付溝
121、131 下側領域
122、132 中間領域
123、133 上側領域
【手続補正書】
【提出日】2022-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛沫を防止するためのパーティションであって、
使用者の口元近傍に位置する第1領域と、前記第1領域の上方であって、使用者の目線が含まれる高さに位置する第2領域を有する第1の板状部材と、
前記第1の板状部材と所定の距離で第1の方向に互いに対向して配置され、前記第1領域及び第2領域のそれぞれに対応する位置に設けられた第3領域及び第4領域を有する第2の板状部材と、
前記第1の板状部材に設けられた取付穴に引っ掛けて、前記第1の板状部材に前記第2の板状部材を着脱可能にとりつけるための固定部材と、を備え、
前記第1の板状部材の前記第1領域には、所定の大きさの開口を有する複数の第1の貫通孔が設けられ、前記第2領域には、前記第1の貫通孔の開口よりも大きな開口を有する複数の第2の貫通孔が設けられており、
前記第2の板状部材の前記第3領域には、複数の第3の貫通孔が設けられ、前記第4領域には、前記第3の貫通孔の開口よりも大きな開口を有する複数の第4の貫通孔が設けられており、
前記第1の板状部材に前記第2の板状部材を取り付けたときに、前記第1の方向において、前記第1の貫通孔の開口と前記第3の貫通孔の開口のそれぞれが重ならないように配置されており、
前記固定部材は、前記第1の板状部材の前記取付穴に引っ掛けて支持するための第1支持部と、前記第2の板状部材に設けられた装着穴を引っ掛けて前記第2の板状部材を支持するための第2支持部とを有し、
前記第2支持部は、前記第1支持部から所定の距離だけ離れて設けられており、
前記第1の板状部材に前記第1支持部を引っ掛けて、前記第2支持部により前記第2の板状部材を支持することにより、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との前記第1の方向の間隔が設定されるように構成されていることを特徴とするパーティション。
【請求項2】
下側から上側の方向にいくにつれて、第1の板状部材と第2の板状部材との間隔が大きく、又は小さくなるように、前記第2の板状部材が、前記第1の板状部材に対して、前記第1の方向に所定の角度で傾斜して配置されており、互いに対向した第1の板状部材と第2の板状部材の内表面を反響しながら伝搬するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項3】
前記第1の方向において、前記第2の貫通孔の開口と前記第4の貫通孔の開口のそれぞれが重ならないように配置されており、
前記第1の貫通孔と前記第3の貫通孔とは、略同じ大きさの開口を有し、前記第2の貫通孔と前記第4の貫通孔とは、略同じ大きさの開口を有することを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項4】
前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材の底部を支持するための複数の溝部を有する脚部を備え、
前記固定部材に設けられた前記第1及び第2支持部と、前記脚部に設けられた複数の溝部によって、前記第1の板状部材と第2の板状部材との前記第1の方向の間隔が設定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項5】
前記第1領域に設けられた前記第1の貫通孔及び/又は前記第2領域に設けられた前記第2の貫通孔は、開口の大きさが、上方にいくほど大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項6】
前記第1の貫通孔の開口径は、3mm~15mmの範囲に設定されており、
前記第2の貫通孔の開口径が、20mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。
【請求項7】
前記第1領域に設けられた前記第1の貫通孔の開口の大きさと前記第2領域に設けられた前記第2の貫通孔の開口の大きさがほぼ同じであり、
前記第3領域に設けられた前記第3の貫通孔の開口の大きさと前記第4領域に設けられた前記第4の貫通孔の開口の大きさがほぼ同じであることを特徴とする請求項1に記載のパーティション。