特開 2024-41595 体外循環装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024041595

(43)【公開日】2024-03-27

(54)【発明の名称】体外循環装置

(51)【国際特許分類】

   A61M 1/36 20060101AFI20240319BHJP

   A61M 1/16 20060101ALI20240319BHJP

【ＦＩ】

A61M1/36 100

A61M1/16 111

【審査請求】未請求

【請求項の数】2

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022146499

(22)【出願日】2022-09-14

(71)【出願人】

【識別番号】000135036

【氏名又は名称】ニプロ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001427

【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】田中 佑樹

【テーマコード（参考）】

4C077

【Ｆターム（参考）】

4C077AA05

4C077BB01

4C077DD05

4C077DD12

4C077DD16

4C077DD27

4C077DD30

4C077EE01

4C077EE02

4C077EE03

4C077HH03

4C077HH13

4C077HH20

4C077KK19

4C077KK25

(57)【要約】

【課題】状況に応じて柔軟なレイアウトの変更が可能な体外循環装置を実現できるようにする。
【解決手段】体外循環装置１００は、パネル１０１と、パネル１０１の表面に体外循環回路２００を保持する回路保持部１０２とを備えている。回路保持部１０２は、パネル１０１の任意の位置に着脱及び移動が可能である。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

パネルと、
前記パネルの表面に前記体外循環回路を保持する回路保持部とを備え、
前記回路保持部は、前記パネルの任意の位置に着脱及び移動が可能である、体外循環装置。

【請求項2】

前記パネルは磁性体であり、
前記回路保持部は、前記回路を挟持するクリップと、前記パネルに磁着する磁石とを有する、請求項１に記載の体外循環装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は体外循環装置に関する。

【背景技術】

【0002】

腎臓、肝臓及び肺等の機能が低下したり失われたりした場合に、患者から血液を体外へ抜き出し、体外へ抜き出した血液を処理した後、体内へ戻す体外循環治療が行われる。通常の体外循環治療は、ポンプと種々の監視用のセンサとを有する体外循環装置に、体外循環回路及びダイアライザ等の血液処理器具を組み付けて構築したシステムを用いて行う。

【0003】

体外循環装置は、パネル上に、ポンプ及びセンサ等が配置されており、体外循環回路のチューブ等を保持する保持部を有している。体外循環回路の所定の位置を、所定の保持部に取り付けることにより、体外循環回路が設定通りに配置されるようにしている。また、体外循環装置は、レイアウト設計を最適化して、装置をできるだけ小型化しようとしている（例えば、特許文献１を参照。）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開平８－９８８１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、設計段階における最適なレイアウトが、体外循環装置が実際に使用される状況においても最適なレイアウトであるとは限らない。例えば、薬液注入用のラインやサンプリング用のラインは、体外循環装置が設置された場所の状態や、操作者の好みによって、最適な引き出し位置が異なってくる。また、体外循環装置をベッドサイドのどこに配置するかによって、患者側に延びるラインの最適な引き出し位置は変化するし、血液処理器具側に延びるラインの最適な引き出し位置も異なってくる可能性がある。従来の画一的なレイアウトでは、体外循環装置の使用環境等に柔軟に対応することが困難である。

【0006】

本開示の課題は、状況に応じて柔軟なレイアウトの変更が可能な体外循環装置を実現できるようにすることである。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本開示の体外循環装置の一態様は、パネルと、パネルの表面に体外循環回路を保持する回路保持部とを備え、回路保持部は、パネルの任意の位置に着脱及び移動が可能である。

【0008】

体外循環装置の一態様において、パネルの任意の位置に着脱及び移動が可能な回路保持部により体外循環回路の保持位置を柔軟に変更することができる。これにより、体外循環回路の引き出し方向に応じた適切な保持位置を保持することができるので、キンクや折れ曲がりの発生を抑えつつ、状況に応じたレイアウトの最適化ができる。

【0009】

体外循環装置の一態様において、パネルは磁性体であり、回路保持部は、回路を挟持するクリップと、パネルに磁着する磁石とを有していてもよい。このような構成とすることにより、回路保持部の着脱及び移動を容易に行うことができる。

【発明の効果】

【0010】

本開示の体外循環装置によれば、状況に応じた柔軟なレイアウトの変更が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】一実施形態に係る体外循環装置を示すレイアウト図である。

【図2】回路保持部の一例を示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

図１に示すように、一実施形態に係る体外循環装置１００は、人工透析の透析監視装置であり、装置正面のパネル１０１に、体外循環回路２００を取り付けて使用する。

【0013】

体外循環回路２００は、動脈側ライン２０１及び静脈側ライン２０２を有している。動脈側ライン２０１は、患者の動脈側アクセスに接続される動脈側入口チューブ２１１、ポンプ用チューブ２１２、及びダイアライザに接続される動脈側出口チューブ２１３を有している。静脈側ライン２０２は、ダイアライザに接続される静脈側入口チューブ２２３、ドリップチャンバ２２２、患者の静脈側アクセスに接続される静脈側出口チューブ２２１を有している。また、動脈側ライン２０１は、薬液供給等に用いる枝管２１４及び枝管２１５を有している。静脈側ライン２０２は、ドリップチャンバ２２２から分岐する圧力測定用の枝管２２４及び薬液供給用の枝管２２５を有している。

【0014】

本実施形態において、パネル１０１は、ポンプ用チューブ２１２が取り付けられるローターポンプ１１１、ドリップチャンバ２２２が取り付けられる液面監視センサを有するドリップチャンバホルダ１１２、ドリップチャンバ２２２から分岐する圧力測定用の枝管２２４が接続される圧力センサポート１１３、動脈側入口チューブ２１１が取り付けられる成分センサ１１４、動脈側入口チューブ２１１及び静脈側出口チューブ２２１が取り付けられる気泡センサ１１５、薬液等の供給及び排出のための複数のポート１１６等を有している。パネル１０１のこれらの構成には、体外循環回路２００の所定の被取り付け部位がそれぞれ取り付けられる。

【0015】

本実施形態の体外循環装置１００は、体外循環回路２００を保持する、回路保持部１０２を有している。回路保持部１０２は、パネル１０１に着脱及び移動が可能であり、パネル１０１の任意の位置に、任意の個数を配置できる。

【0016】

図１に示す体外循環装置１００の場合、ローターポンプ１１１の右側に動脈側出口チューブ２１３が引き出されており、体外循環装置１００の右側方にダイアライザを配置することを装置の設計者は意図している。この場合に、動脈側出口チューブ２１３を右方向にほぼ水平に引き出した先にダイアライザを配置できれば、コンパクトで効率的なレイアウトとなる。しかし、ダイアライザを常にこのような位置に配置できるとは限らず、図１に示すように、動脈側出口チューブ２１３を右斜め上方に引き出さなければならない場合がある。また、状況によって、右斜め下方に引き出したり、極端な場合左側に引き出さなければならない場合も生じ得る。

【0017】

チューブの引き出し方向によっては、チューブがキンクしたり、折れ曲がったりするおそれがある。このため、チューブの適切な位置を保持して、このような事態の発生を抑えることが重要になる。しかし、チューブの適切な保持位置は、チューブの引き出し方向によって変化するため、パネル上の位置が固定された保持部では、このような事態に対応することができない。

【0018】

本実施形態の回路保持部１０２は、パネル１０１の任意の位置に着脱及び移動が可能可能であり、動脈側出口チューブ２１３の引き出し方向に応じて、最も適切な位置に配置することができる。また、回路保持部１０２の数を増やすことが容易にできるため、キンクや折れ曲がりが生じにくい形状となるように動脈側出口チューブ２１３を引き出すことができる。

【0019】

また、動脈側出口チューブ２１３を装置の設計通りの方向に引き出す場合であっても、チューブが撓んだり、よれたりする可能性がある。チューブが撓んだり、よれたりする場所は、体外循環装置１００の設置状況や運転状況によって変化する可能性があるが、チューブを保持する位置が固定されている場合には、このような変化に対応することができない。本実施形態の体外循環装置１００は、回路保持部１０２の位置を容易に変更できるので、このような変化にも対応できる。

【0020】

動脈側出口チューブ２１３について説明したが、回路保持部１０２は、動脈側入口チューブ２１１、静脈側入口チューブ２２３、静脈側出口チューブ２２１を保持するために回路保持部１０２を用いることができる。また、これらのチューブから分岐する枝管を保持するために用いることもできる。図１においては、薬液注入用の枝管２２５をドリップチャンバ２２２の右側に引き出しているが、薬液注入用の枝管２２５を保持する回路保持部１０２を移動させることにより、容易に引き出し方向を左側にすることができる。薬液注入用の枝管２２５は、保持固定しなくてよい場合や、保持固定するとかえって操作がやりにくくなる場合もあるため、固定的な保持部を設けると無駄になったり邪魔になったりするおそれがある。本実施形態の回路保持部１０２は、必要な場合に設置できるので有利である。

【0021】

図２に示すように、本実施形態の回路保持部１０２は、動脈側入口チューブ２１３等のチューブを挟持するクリップ１２１と、パネル１０１に磁着する磁石１２３を有する基部１２２とを有している。回路保持部１０２をパネル１０１に磁着する構成とすることにより、回路保持部１０２のパネル１０１への着脱及びパネル１０１上の位置の移動を容易に行うことが可能となる。回路保持部１０２をパネル１０１から容易に取り外せる構成とすることにより、体外循環装置１００を使用していない場合には、回路保持部１０２を取り外してパネル１０１の表面を清掃することができる。パネル上の予め想定される位置に複数の保持部を固定的に配置した場合には、多数の凹凸ができて清拭等が困難になるため、着脱が容易な回路保持部１０２には大きな利点がある。

【0022】

本実施形態においては、クリップ１２１を弾性を有する樹脂又は金属等からなる湾曲した板材の間にチューブを挟み込む構成としたが、チューブを押し潰すことなく保持できる種々の構成を採用することができる。また、磁石１２３を有する基部１２２によりパネル１０１に着脱する構成としたが、着脱及び移動が容易にできれば他の構成とすることもできる。例えば、吸盤や面ファスナー等を用いることもできる。なお、磁石によりパネル１０１に取り付ける構成の場合、パネル１０１の表面を平滑面とすることができる。パネル１０１の表面を平滑面とすることにより、パネル１０１の表面を清浄に保つことが容易にできるので大きな利点となる。

【0023】

本実施形態の体外循環装置は、ドリップチャンバホルダ１１２、動脈側気泡センサ１１４及び静脈側気泡センサ１１５は、パネル１０１上の所定の位置に固定されている構成とした。このような構成とすることにより、センサをパネル１０１側に組み込むことができるので、コストを抑え、信頼性を向上させることができる。しかし、これらのセンサ類を有する保持部も、パネル１０１に着脱及び移動が可能な構成とすることができる。例えば、回路保持部１０２のクリップ１２１をドリップチャンバ２２２が保持できるサイズにすると共に液面センサを設け、センサ出力を有線又は無線で体外循環装置１００の制御部に送信できるようにすれば、着脱及び移動が可能な回路保持部により、ドリップチャンバ２２２の保持及び液面の監視をすることができる。成分センサ及び気泡センサ等についても、同様に着脱及び移動が可能なセンサ付の回路保持部とすることができる。なお、ドリップチャンバ２２２の液面監視をする必要がない場合は、クリップ１２１のサイズのみを変更してドリップチャンバホルダとすることができる。

【0024】

本実施形態において、ローターポンプ１１１の右側に動脈側出口チューブ２１３が引き出される例を示したが、上下左右いずれの方向に引き出される構成とすることもできる。また、ローターポンプ１１１が２つ以上設けられた構成としたり、ローターポンプ以外のポンプが設けられていたり、ポンプ自体が存在しない構成としたりすることもできる。各種センサ及びポートも、必要に応じて設ければよく、設けられていなくてもよい。パネル１０１が垂直面である例を示したが、傾斜面又は水平面とすることもできる。また、湾曲した面とすることもできる。

【0025】

本実施形態において、体外循環装置として人工透析用の監視装置を示したが、体外に血液を抜き出して何らかの処置をするあらゆる装置に適用可能であり、例えば、腹膜透析装置や人工心肺装置においても同様の構成を採用することができる。

【産業上の利用可能性】

【0026】

本開示の体外循環装置は、状況に応じた柔軟なレイアウトの変更ができ、体外循環医療等の分野において有用である。

【符号の説明】

【0027】

１００ 体外循環装置
１０１ パネル
１０２ 回路保持部
１１１ ローターポンプ
１１２ ドリップチャンバホルダ
１１３ 圧力センサポート
１１４ 動脈側気泡センサ
１１５ 静脈側気泡センサ
１２１ クリップ
１２３ 基部
２００ 体外循環回路
２０１ 動脈側ライン
２０２ 静脈側ライン
２１１ 動脈側入口チューブ
２１２ ポンプ用チューブ
２１３ 動脈側出口チューブ
２１４ 枝管
２１５ 枝管
２２１ 静脈側出口チューブ
２２２ ドリップチャンバ
２２３ 静脈側入口チューブ
２２４ センサライン
２２５ 枝管

【図1】

【図2】