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特開2024-4160溶接品質評価装置、及び溶接品質評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004160
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】溶接品質評価装置、及び溶接品質評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240109BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240109BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
B23K26/21 F
B23K26/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103667
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】391009833
【氏名又は名称】株式会社ナ・デックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上田 衛
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰三
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信也
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA00
4E168CA06
4E168CB22
4E168CB24
4E168KA15
(57)【要約】
【課題】溶接不良を自動判定できる溶接品質評価装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、溶接点及び溶接点の周囲を含む画像を取得するように構成された撮像部と、撮像部が取得した画像におけるスパッタの発生数を判定するように構成された画像処理部と、画像処理部が判定したスパッタの発生数に基づいて、溶接の不具合の有無を判定するように構成された判定部と、を備える、溶接品質評価装置である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接点及び溶接点の周囲を含む画像を取得するように構成された撮像部と、
前記撮像部が取得した前記画像におけるスパッタの発生数を判定するように構成された画像処理部と、
前記画像処理部が判定した前記スパッタの発生数に基づいて、溶接の不具合の有無を判定するように構成された判定部と、
を備える、溶接品質評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接品質評価装置であって、
前記判定部は、単位時間当たりの前記スパッタの発生数が予め定めた第1閾値未満となる時間が、予め定めた第2閾値以上継続した場合に、不具合が発生したと判定するように構成される、溶接品質評価装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の溶接品質評価装置であって、
前記画像処理部は、前記画像において変化のあった画素の数に基づいて、前記スパッタの発生数をカウントするように構成される、溶接品質評価装置。
【請求項4】
溶接点及び溶接点の周囲を含む画像におけるスパッタの発生数を判定することと、
判定された前記スパッタの発生数に基づいて、溶接の不具合の有無を判定することと、
をコンピュータに実行させる、溶接品質評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接品質評価装置、及び溶接品質評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属材の溶接においては、外乱等の諸因によって不具合が発生し得る。また、溶接時に発生するスパッタが溶接品質に影響を及ぼすことは周知である。そこで、画像処理によってスパッタの挙動を確認する手法が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-126274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにスパッタを認識する技術は考案されているものの、認識されたスパッタから溶接不良を判定することは作業者の経験に基づいて行う必要がある。そのため、溶接の不良判定の基準にばらつきが生じ得る。
【0005】
本開示の一局面は、溶接不良を自動判定できる溶接品質評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、溶接点及び溶接点の周囲を含む画像を取得するように構成された撮像部と、撮像部が取得した画像におけるスパッタの発生数を判定するように構成された画像処理部と、画像処理部が判定したスパッタの発生数に基づいて、溶接の不具合の有無を判定するように構成された判定部と、を備える溶接品質評価装置である。
【0007】
このような構成によれば、スパッタの発生数と溶接の不具合との関係を設定しておくことで、溶接の不具合の有無を判定することができる。そのため、溶接不良の自動判定が可能となる。
【0008】
本開示の一態様では、判定部は、単位時間当たりのスパッタの発生数が予め定めた第1閾値未満となる時間が、予め定めた第2閾値以上継続した場合に、不具合が発生したと判定するように構成されてもよい。このような構成によれば、溶接部分の穴あき時にスパッタの発生が少なくなる関係に基づいて、穴あきを自動判定することができる。
【0009】
本開示の一態様では、画像処理部は、画像において変化のあった画素の数に基づいて、スパッタの発生数をカウントするように構成されてもよい。このような構成によれば、計算量を抑制しつつ、スパッタの発生数のカウント精度を高めることができる。
【0010】
本開示の別の態様は、溶接点及び溶接点の周囲を含む画像におけるスパッタの発生数を判定することと、判定されたスパッタの発生数に基づいて、溶接の不具合の有無を判定することと、をコンピュータに実行させる溶接品質評価プログラムである。
【0011】
このような構成によれば、スパッタの発生数と溶接の不具合との関係を設定しておくことで、溶接不良の自動判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態における溶接品質評価装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図2図2は、図1の溶接品質評価装置における撮像部の模式図である。
図3図3は、図2の撮像部が取得する溶接画像の範囲を示す模式図である。
図4図4A及び図4Bは、溶接画像における1つの判定枠の一例である。
図5図5A及び図5Bは、溶接画像における複数の判定枠の一例である。
図6図6は、スパッタの発生数の時系列データの一例である。
図7図7は、図1の溶接品質評価装置の情報処理装置が実施する処理を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す溶接品質評価装置1は、溶接の品質評価(つまり不具合の検出)を行う。溶接品質評価装置1は、撮像部2と、情報処理装置3とを備える。
【0014】
<撮像部>
図2に示すように、撮像部2は、溶接機101による第1ワークW1と第2ワークW2との溶接中に、溶接部分の画像(以下、「溶接画像」ともいう。)を取得するように構成されている。
【0015】
本実施形態では、第1ワークW1及び第2ワークW2は、それぞれ金属板であり、互いに端部が突き合わされるように配置されている。溶接機101は、第1ワークW1の端部と第2ワークW2の端部とにレーザを照射することで、両者を接合するレーザ溶接機である。
【0016】
なお、溶接機101は、厚み方向に重ね合わされた第1ワークW1及び第2ワークW2をこれらの厚み方向に接合してもよい。また、溶接機101は、レーザ溶接機以外の、例えばアーク溶接機、ガス溶接機等であってもよい。
【0017】
撮像部2は、第1ワークW1及び第2ワークW2の板面と直交する方向から、溶接画像を連続的に取得可能なカメラである。撮像部2は、少なくとも500μ秒以下の間隔で溶接画像を取得する。溶接画像には、溶接点(つまり溶融池B)及び溶接点の周囲が含まれる。
【0018】
具体的には、図3に示すように、溶接画像は、溶接中心P(つまりレーザ光の中心)からの距離が一定以内である円状の判定対象範囲Aの画像を少なくとも含む。判定対象範囲Aの半径としては、例えば100mmである。判定対象範囲A内には、溶接点から飛散する複数のスパッタSが存在する。
【0019】
<情報処理装置>
図1に示す情報処理装置3は、例えば、プロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。情報処理装置3は、画像処理部31と、判定部32と、記憶部33とを有する。
【0020】
情報処理装置3を構成するコンピュータは、記憶媒体(例えば記憶部33)に記憶された溶接品質評価プログラムによって情報処理装置3としての機能を実行する。つまり、溶接品質評価プログラムは、コンピュータに、溶接点及び溶接点の周囲を含む画像におけるスパッタの発生数を判定すること、並びに判定されたスパッタの発生数に基づいて、溶接の不具合の有無を判定することを実行させる。
【0021】
(画像処理部)
画像処理部31は、撮像部2が取得した溶接画像におけるスパッタの発生数を判定するように構成されている。
【0022】
画像処理部31は、撮像部2から溶接画像を同期して連続的に受信してもよいし、一定の受信間隔ごとに、その間の溶接画像をまとめて受信してもよい。受信間隔は、使用者が設定可能であり、例えば15秒である。
【0023】
画像処理部31は、溶接画像のうち判定対象範囲において変化のあった画素の数に基づいて、スパッタの発生数をカウントする。画像処理部31は、溶接画像において、スパッタを構成する光が存在する領域が他の領域に比べて輝度が高いことを利用して、スパッタを認識する。
【0024】
具体的には、画像処理部31は、スパッタの発生数のカウント処理の対象である溶接画像(以下、「処理対象画像」ともいう。)と、処理対象画像よりも処理間隔(例えば、500μ秒)における1つ前の溶接画像(以下、「比較対象画像」ともいう。)とを画素ごとに比較する。ここで、画像処理部31は、図4Aに示すように、例えば10×10の画素で構成される複数の判定枠Fに予め処理対象画像を分割しておく。
【0025】
画像処理部31は、比較対象画像(図4A)で光が存在せず、かつ、処理対象画像(図4B)において光が存在している画素を、変化画素として計上する。なお、図4Bでは、スパッタSの発生によって変化した画素をハッチで表している。
【0026】
画像処理部31は、図4Bに示すように、1つの判定枠Fにおいて変化画素の数が予め定めた閾値(例えば90)以上の場合に、この判定枠Fにおいてスパッタが発生したと判定し、この判定枠FにスパッタのIDナンバー(例えばID-1)を付与する。
【0027】
ただし、画像処理部31は、図5Aに示す処理対象画像において変化画素の数が閾値以上となった判定枠F1について、この判定枠F1に隣接又は近接する(つまり連続する)判定枠F2からスパッタが移動したと推定される場合は、スパッタは新たに発生していないと判定する。
【0028】
具体的には、図5Bに示すように、比較対象画像において判定枠F2にIDナンバーが付与されている(つまり、判定枠F2にスパッタが存在していた)場合は、処理間隔の経過中に、判定枠F2のスパッタが判定枠F1に移動したものと推定する。また、画像処理部31は、処理対象画像の判定枠F1に比較対象画像の判定枠F2のIDナンバーを引き継がせる。
【0029】
また、画像処理部31は、連続する複数の判定枠においてスパッタが発生したと判定された場合は、これら複数の判定枠に跨るスパッタが発生したとして、スパッタの発生数は1として計上する。つまり、画像処理部31は、複数の判定枠に共通のIDナンバーを付与する。
【0030】
画像処理部31は、処理対象画像の全ての判定枠についてスパッタの発生の有無を判定し、処理対象画像におけるスパッタ発生の総数(つまり新たなIDナンバーの付与数)を算出する。
【0031】
さらに、画像処理部31は、このスパッタ発生数の判定を処理間隔ごとに取得された複数の溶接画像に対し実施する。これにより、処理間隔ごとのスパッタ発生数の変化を表す時系列データが得られる。時系列データは、例えば記憶部33に記憶される。
【0032】
(判定部)
判定部32は、画像処理部が判定したスパッタの発生数に基づいて、溶接の不具合の有無を判定するように構成されている。
【0033】
具体的には、判定部32は、画像処理部31が作成した時系列データを参照して、単位時間当たり(つまり500μ秒ごと)のスパッタの発生数が予め定めた第1閾値未満となる時間が、予め定めた第2閾値以上継続した場合に、不具合が発生したと判定する。
【0034】
第1閾値は、例えば12とされる。第2閾値は、例えば0.5秒とされる。第1閾値及び第2閾値は、過去に実施された溶接におけるスパッタの発生数と溶接不良の発生とを紐づけたデータを用いて、溶接条件、溶接画像の画素数、画像処理部31の処理間隔等に合わせて適宜設定される。
【0035】
例えば、処理間隔が500μ秒、第1閾値が12、第2閾値が0.5秒の場合では、画像処理部31は、時間的に連続する100個の溶接画像においていずれもスパッタ発生数が12未満であった場合に、不具合が発生したと判定する。判定部32によって判定される不具合としては、例えば穴あきによる溶接不良が挙げられる。
【0036】
図6に判定部32による判定処理の一例を示す。図6の上側のグラフは、横軸を時間T、縦軸をスパッタの発生数Nとした時系列データである。図6の下側のグラフは、スパッタの発生数が第1閾値以上の場合に「1」、第1閾値未満の場合に「0」とする判定フラグの出力結果である。
【0037】
図6における期間Mでは、判定フラグが「0」である時間が第2閾値以上継続している。そのため、判定部32は、期間Mにおいて、穴あき等の溶接不良が発生したと判定し、アラートを出力する。
【0038】
判定部32は、溶接機101による溶接と並行して(つまりリアルタイムに)溶接の不具合の判定を行う。つまり、判定部32は、溶接中に不具合が検出された時点でアラートを出力装置に出力する。
【0039】
なお、判定部32は、溶接機101による溶接の完了後の品質確認を目的として、溶接後に不具合の判定と、記憶部33や出力装置へのアラート(つまりエラーログ)の出力とを実行してもよい。
【0040】
[1-2.処理]
以下、図7のフロー図を参照しつつ、情報処理装置3が実行する処理の一例について説明する。
【0041】
本処理では、情報処理装置3は、まず、撮像部2から溶接画像を取得する(ステップS110)。次に、情報処理装置3は、取得した溶接画像に対して、スパッタ(つまりイベント)の発生数をカウントする(ステップS120)。
【0042】
スパッタ発生数のカウント後、情報処理装置3は、スパッタ発生数に基づいて不具合が発生したか否かを判定する(ステップS130)。不具合が発生している場合(S130:YES)、情報処理装置3は、アラートを出力する(ステップS140)。不具合が発生していない場合(S130:NO)、情報処理装置3は、アラートの出力は行わない。
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0043】
(1a)スパッタの発生数と溶接の不具合との関係を設定しておくことで、溶接の不具合の有無を判定することができる。そのため、溶接不良の自動判定が可能となる。
(1b)スパッタの発生数が小さい時間が一定以上継続した場合に不具合の発生を判定することで、溶接部分の穴あき時にスパッタの発生が少なくなる関係に基づいて、穴あきを自動判定することができる。
【0044】
(1c)溶接画像において変化のあった画素の数に基づいてスパッタの発生数をカウントすることで、計算量を抑制しつつ、スパッタの発生数のカウント精度を高めることができる。
【0045】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0046】
(2a)上記実施形態の溶接品質評価装置において、スパッタの発生数のカウント手順は一例である。したがって、判定部は、上述以外の手順でスパッタの発生数をカウントしてもよい。
【0047】
(2b)上記実施形態の溶接品質評価装置は、板材以外のワークの溶接にも適用可能である。
【0048】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0049】
1…溶接品質評価装置、2…撮像部、3…情報処理装置、31…画像処理部、
32…判定部、33…記憶部、101…溶接機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7