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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041600
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】車両用照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/00 20060101AFI20240319BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20240319BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20240319BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20240319BHJP
   F21W 102/17 20180101ALN20240319BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240319BHJP
【FI】
B60Q1/00 G
F21V14/04
F21V7/00 590
B60Q1/04 E
F21W102:17
F21W102:155
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146512
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田古里 眞嘉
(72)【発明者】
【氏名】槌谷 裕志
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA22
3K339BA01
3K339BA21
3K339BA22
3K339CA01
3K339CA30
3K339EA06
3K339EA10
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA03
3K339JA21
3K339KA06
3K339LA06
3K339MA01
3K339MC06
3K339MC36
3K339MC77
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】歩行者側における眩惑を抑制しつつ、運転者側における歩行者視認のための特性が減殺されるおそれがない車両用照明装置を提供すること。
【解決手段】車両用照明装置1は、車両2前方下側の下部照射領域(ロービーム照射領域11)を照らすロービーム照射部7と、下部照射領域11よりも上側かつ車幅方向中央側の上部照射領域(ハイビーム照射領域10)を照らすハイビーム照射部6と、明領域13と暗領域14が交互に繰り返される照射パターンで車両2の走行路側方の側方照射領域(右側パターン照射領域12)に照射光を照射するパターン照射部(プロジェクターユニット8)とを備え、パターン照射部8は、側方照射領域12のうちの上側の上部パターン照射領域17に所定の第1の態様で照射光を照射し、側方照射領域12のうちの下側の下部パターン照射領域18に第1の態様とは異なる第2の態様で照射光を照射する。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方下側の下部照射領域を照らすロービーム照射部と、
前記下部照射領域よりも上側かつ車幅方向中央側の上部照射領域を照らすハイビーム照射部と、
明領域と暗領域が交互に繰り返される照射パターンで前記車両の走行路側方の側方照射領域に照射光を照射するパターン照射部とを備え、
前記パターン照射部は、前記側方照射領域のうちの上側の上部パターン照射領域に所定の第1の態様で照射光を照射し、前記側方照射領域のうちの下側の下部パターン照射領域に第1の態様とは異なる第2の態様で照射光を照射する、車両用照明装置。
【請求項2】
前記第2の態様は前記第1の態様よりも照射強度が高い態様である、請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項3】
前記第1の態様は、菱形格子の網目模様の明領域とこの明領域に囲まれた暗領域とによる菱形格子パターンの照射パターンで照射光を照射する態様であり、前記第2の態様は、背景となる暗領域に縦横格子状の明領域が重畳された格子状パターンで照射光を照射する態様である、請求項1または2に記載の車両用照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用照明装置として、歩行者の眩惑を抑制しつつ運転者が歩行者を良好に視認可能な装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の車両用照明装置では、歩行者検出センサにより取得した歩行者までの距離に応じて、歩行者の上半身への照明量を低下させる(ゼロにする)ようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-184614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、直線単路で車両前方の歩行者の見落としによる事故が多くなる傾向にある。こうした歩行者の見落としが生じないようにしなくてはならない。特許文献1では、歩行者側における眩惑の抑制を重視すると、運転者側における歩行者視認のための特性が減殺されるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述のような状況に鑑みてなされたものであり、歩行者側における眩惑を抑制しつつ、運転者側における歩行者視認のための特性が減殺されるおそれがない車両用照明装置を提供すること目的とする。また、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 車両(例えば、後述する車両2)前方下側の下部照射領域(例えば、後述するロービーム照射領域11)を照らすロービーム照射部(例えば、後述するロービームユニット7)と、前記下部照射領域よりも上側かつ車幅方向中央側の上部照射領域(例えば、後述するハイビーム照射領域10)を照らすハイビーム照射部(例えば、後述するハイビームユニット6)と、明領域(例えば、後述する明領域13)と暗領域(例えば、後述する暗領域14)が交互に繰り返される照射パターン(例えば、後述する第1の照射パターン15)で前記車両の走行路側方の側方照射領域(例えば、後述する右側パターン照射領域12)に照射光を照射するパターン照射部(例えば、後述するプロジェクターユニット8)とを備え、前記パターン照射部は、前記側方照射領域のうちの上側の上部パターン照射領域(例えば、後述する上部パターン照射領域17)に所定の第1の態様で照射光を照射し、前記側方照射領域のうちの下側の下部パターン照射領域(例えば、後述する下部パターン照射領域18)に第1の態様とは異なる第2の態様で照射光を照射する、車両用照明装置。
【0007】
(2) 前記第2の態様は前記第1の態様よりも照射強度が高い態様である(1)の車両用照明装置。
【0008】
(3) 前記第1の態様は、菱形格子の網目模様の明領域(例えば、後述する明領域13)とこの明領域に囲まれた暗領域(例えば、後述する暗領域14)とによる菱形格子パターンの照射パターン(例えば、後述する第1の照射パターン15)で照射光を照射する態様であり、前記第2の態様は、背景となる暗領域に縦横格子状の明領域が重畳された格子状の照射パターン(例えば、後述する第2の照射パターン20)で照射光を照射する態様である(1)または(2)の車両用照明装置。
【発明の効果】
【0009】
(1)の車両用照明装置では、パターン照射部の側方照射領域のうちの上部パターン照射領域に照射する第1の態様での照射光による照度を抑制して、歩行者側における眩惑を回避しながら、ヒトの視覚特性により、運転者側からは路側の歩行者の存在を容易に認識できる。一方、側方照射領域のうちの下部パターン照射領域に第1の態様とは異なる第2の態様での照射光を照射するが、第2の態様での照射光を路側の歩行者の存在を容易に認識可能な態様のものにすることができる。また、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与することに通じる。
【0010】
(2)の車両用照明装置では、下部パターン照射領域に対する第2の態様での照射光の照射強度が相対的に高いため、第2の態様での照射光が路側の歩行者の脚部を高照度で照射でき、運転者側から歩行者の脚部の動きを顕著に認識できる。一方、上部パターン照射領域に対する第1の態様での照射光の照射強度が相対的に低いため、歩行者側における眩惑を回避できる。
【0011】
(3)の車両用照明装置では、菱形格子パターンである第1の照射パターンの光が歩行者に照射されると、ヒトの視覚特性により、運転者は容易に歩行者の存在を認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の車両用照明装置による照明光の照射の様子を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態の車両用照明装置の構成図である。
図3図2の車両用照明装置における各灯具の照射領域を示す図である。
図4図2の車両用照明装置がロービームモードで作動している場合の灯具の照射領域を示す図である。
図5図2の車両用照明装置におけるパターン照射部による照射パターンの一例を示す図である。
図6図2の車両用照明装置で照射された夜間における運転視野の様子を示す図である。
図7図2の車両用照明装置におけるパターン照射部による照射パターンの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、照射領域とは灯具による光の照射域であり、照射パターンとは照射領域における明領域と暗領域とによる模様、照射領域の輪郭形状、その他の照射形態である。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の車両用照明装置1による照明光の照射の様子を示す模式図である。車両2に設けられた車両用照明装置1の正面前方、例えば、25m前方に設定された所定の仮想鉛直面であるテストスクリーン3上に形成される照射パターンによって車両用照明装置1からの照射光の配光が評価される。
【0015】
図2は車両用照明装置1の構成図、図3は車両用照明装置1における各灯具の照射領域を示す図である。灯具である左側ヘッドライトユニット4および右側ヘッドライトユニット5それぞれに、車両2の車幅方向で内側から外側に向かう順に、ハイビームユニット6、ロービームユニット7、プロジェクターユニット8が配されている。左側ヘッドライトユニット4および右側ヘッドライトユニット5それぞれにおいて、灯具制御ECU9の制御下で、ハイビームユニット6、ロービームユニット7、プロジェクターユニット8が作動する。
【0016】
ハイビームユニット6は、光源である発光素子、リフレクタ、照射領域を規定する遮光板およびレンズを含む。灯具制御ECU9からの制御信号に応じて不図示の電源から電力が供給されて発光素子が発光する。発光素子からの光がリフレクタによって反射される。リフレクタからの反射光が遮光板で規定されるハイビーム照射領域10に向けてレンズから照射される。
【0017】
ロービームユニット7は、光源である発光素子、リフレクタ、照射領域を規定する遮光板およびレンズを含む。灯具制御ECU9からの制御信号に応じて不図示の電源から電力が供給されて発光素子が発光する。発光素子からの光がリフレクタによって反射される。リフレクタからの反射光が遮光板で規定されるロービーム照射領域11に向けてレンズから照射される。
【0018】
プロジェクターユニット8は、光源である発光素子、空間光変調器およびレンズを含む。空間光変調器としては、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)のように多数の反射素子を独立して変調しつつ光を反射させる形態のものを適用できる。この場合、プロジェクターユニット8は、DMDを用いたDLP(Digital Light Processing:登録商標)方式の構成をとり、レンズから車両2の前方その他周辺に種々の所定の照射パターンで光を照射することができる。
【0019】
照射パターンは種々の形の静止画パターンのみならず動画パターンの形態をもとり得る。灯具制御ECU9からの制御信号に応じて不図示の電源から駆動電力が供給されて発光素子が発光する。この発光素子からの光が、灯具制御ECU9からの制御信号に応じて駆動される空間光変調器で空間変調され、種々の所定の照射パターンでプロジェクターユニット8のレンズから車両2の前方その他周辺に光が照射される。即ち、プロジェクターユニット8は、明領域と暗領域が交互に繰り返される照射パターンで車両2の走行路側方の側方照射領域に照射光を照射するパターン照射部を構成する。
【0020】
図3を参照して、図1における車両用照明装置1からテストスクリーン3に光を照射した場合における、ハイビームユニット6、ロービームユニット7およびプロジェクターユニット8による照射領域について説明する。ここで、プロジェクターユニット8による照射領域については、右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8による照射領域を示している。
【0021】
左側ヘッドライトユニット4のプロジェクターユニット8による照射領域はV-V線を対象軸として右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8による照射領域と対称を成すが、図示省略してある。
【0022】
左側ヘッドライトユニット4のプロジェクターユニット8の構成と作用は、右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8と相似的である。このため、以下、左側ヘッドライトユニット4のプロジェクターユニット8の構成と作用については、右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8についての説明を援用する。
【0023】
ロービームユニット7によるロービーム照射領域11は、テストスクリーン3上で左右方向中央のV-V線(鉛直線)よりも右側に、H-H線(水平線)と平行に延びる対向車線側カットオフラインを有する。またV-V線よりも左側に、対向車線側カットオフラインよりも高い位置でH-H線に沿って延びる自車線側カットオフラインを有する。対向車線側カットオフラインと自車線側カットオフラインとの両者は、H-H線に対して傾斜した斜めカットオフラインで連なっている。ロービーム照射領域11は、車両2の前方下側の下部照射領域である。
【0024】
ハイビームユニット6によるハイビーム照射領域10は、H-H線に平行な長辺とV-V線に平行な短辺を持つ長方形をなし、その対角線の交点がH-H線とV-V線との交点に略一致する位置を占める。ハイビーム照射領域10は、対向車線側カットオフラインおよび自車線側カットオフラインそれぞれのV-V線よりの部分を含む下方の部分的領域でロービーム照射領域11に重複している。ハイビーム照射領域10は、下部照射領域であるロービーム照射領域11よりも上側かつ車両2の車幅方向中央側の上部照射領域である。
【0025】
右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8による照射領域である右側パターン照射領域12は、灯具制御ECU9からのモード切り替え信号によって、領域の輪郭形状や当該領域内での照射パターンの形態など、照射パターンが種々変更される。但し、右側パターン照射領域12は、何れの照射パターンの形態をとる場合においても、車両2の走行路側方の側方照射領域である。
【0026】
プロジェクターユニット8の能力上、右側パターン照射領域12は、ハイビーム照射領域10と重なる重複領域12aを含む広い形態をとり得る。この形態をとる場合、右側パターン照射領域12は、高さ方向がH-H線に平行で上底および下底がV-V線に平行な横向きの台形状をなす。この台形は、V-V線に相対的に近い上底よりもV-V線から相対的に離れた下底の方が長い。即ち、右側パターン照射領域12は、車両2の車幅方向外側に向けてV-V線に沿う寸法が広がった形状を成している。
【0027】
灯具制御ECU9は、車両2に搭載された図示しない上位ECU、カメラ、ライトスイッチおよびライトスイッチレバー等からの出力に基づいて、車両用照明装置1の動作モードを切り替える。即ち、灯具制御ECU9は、ハイビームユニット6、ロービームユニット7およびプロジェクターユニット8に対し制御信号を供給して、これら各ユニットの動作モードを切り替える。
【0028】
図4は、灯具制御ECU9により動作モードがロービームモードにされた場合における、車両用照明装置1による照射光の照射領域を示す図である。夜間に、ライトスイッチが「オート」の位置、ライトスイッチレバーがロービーム以外の位置にあるときには、車両用照明装置1は、多くの場合ハイビームモードの状態にある。この状態で、カメラが対向車や前走車、一定数の街路灯を検知すると、灯具制御ECU9によって車両用照明装置1の動作モードがロービームモードに切り替えられる。ロービームモード時には、灯具制御ECU9による制御下で、ハイビームユニット6は消灯され、ロービームユニット7がロービーム照射領域11を照射し、プロジェクターユニット8が右側パターン照射領域12を照射する。
【0029】
ロービームモード時には、右側パターン照射領域12は、上述の重複領域12aを含む横向き台形状の広い領域を占める。この広い領域に、プロジェクターユニット8から図7に示すような、明領域13と暗領域14が交互に繰り返される第1の照射パターン15でパターン照射光が照射される。図7における第1の照射パターン15は、特に、菱形格子の網目模様の明領域13と、この明領域13に囲まれた暗領域14とによる菱形格子パターンである。
【0030】
右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8からの第1の照射パターンの照射光によって、ヒトの視覚特性により、路側の歩行者の存在が運転者から容易に認識される。夜間でかつ雨天であるといった悪条件の下でも、運転者による歩行者の見落としを改善できる。
【0031】
本実施形態の車両用照明装置1では、右側パターン照射領域12は、H-H線に沿ってこの領域を横断する境界線16の上側の上部パターン照射領域17と、境界線16の下側の下部パターン照射領域18とに区分され得る。この区分は、灯具制御ECU9の制御下でプロジェクターユニット8が上部パターン照射領域17と下部パターン照射領域18とを独立して照射することにより画定される。図5に示された例では、上部パターン照射領域17および下部パターン照射領域18に、菱形格子パターンの形状である第1の照射パターン15で照射光が照射されている。ただし、上部パターン照射領域17は相対的に照射強度が低い態様で照射され、下部パターン照射領域18は相対的に照射強度が高い態様で照射される。
【0032】
図6は、車両2のフロントウィンドウからの夜間における運転視野を本実施形態の車両用照明装置1で照射した様子を示す図である。図6では、図5との対応部に同一の符号が附されている。図6の運転視野では、路側の右前方に向けて、右側パターン照射領域12における上部パターン照射領域17と下部パターン照射領域18とに、図5の第1の照射パターン15である菱形格子パターンが照射されている。
【0033】
路側の右前方に歩行者19が視認される。歩行者19は、菱形格子パターンが照射されて、ヒトの視覚特性により、顕著にその存在が認識される。この場合、歩行者19の輪郭が視認されるというよりも、その輪郭内におけるパターン照射に対応した格子状の明暗の動的変化が運転者側から際立って認識され、歩行者19を見落とすおそれが効果的に低減される。
【0034】
さらに、上部パターン照射領域17は相対的に照射強度が低い態様で照射されるため、歩行者19側における眩惑が低減される一方、下部パターン照射領域18は相対的に照射強度が高い態様で照射されるため、運転者側からは、歩行者19の脚部が顕著に認識される。
【0035】
図7は、灯具制御ECU9の制御下でプロジェクターユニット8が上部パターン照射領域17と下部パターン照射領域18とを異なる照射パターンで照度するようにした場合を示す図である。プロジェクターユニット8は、右側パターン照射領域12における上部パターン照射領域17に既述の第1の態様である第1の照射パターン15で照射光を照射する。同時に、プロジェクターユニット8は、下部パターン照射領域18に第1の態様とは異なる第2の態様で照射光を照射する。第2の態様である第2の照射パターン20は、背景となる暗領域14に縦横格子状の明領域13が重畳された格子状パターンである。
【0036】
図7の照射パターン形状をとる場合においても、灯具制御ECU9の制御下で、上部パターン照射領域17は相対的に照射強度が低い態様で照射され、下部パターン照射領域18は相対的に照射強度が高い態様で照射される。これにより、歩行者19側における眩惑が低減されつつ、運転者側からは、菱形格子パターンにより照射される歩行者19の上半身が、ヒトの視覚特性により、顕著に認識される。また、運転者側からは、高い照射強度の格子状パターンで照射される歩行者19の脚部も顕著に認識される。このため、運転者が歩行者19を見落とすおそれが効果的に低減される。
【0037】
本実施形態の車両用照明装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0038】
(1)の車両用照明装置1は、ロービーム照射領域11を照らすロービームユニット7と、ハイビーム照射領域10を照らすハイビームユニット6と、車両2の走行路側方の側方照射領域である右側パターン照射領域12を照らすパターン照射部としてのプロジェクターユニット8とを備える。プロジェクターユニット8は、明領域13と暗領域14が交互に繰り返される第1の照射パターン15の形で右側パターン照射領域12に照射光を照射する。この場合、プロジェクターユニット8は、右側パターン照射領域12のうちの上側の上部パターン照射領域17に相対的に照射強度が低い第1の態様で照射光を照射し、右側パターン照射領域12のうちの下側の下部パターン照射領域18に相対的に照射強度が高い第2の態様で照射光を照射する。上部パターン照射領域17は相対的に照射強度が低い態様で照射されるため、歩行者19側における眩惑が低減される。一方、下部パターン照射領域18は相対的に照射強度が高い態様で照射されるため、運転者側からは、歩行者19の脚部が顕著に認識される。夜間でかつ雨天であるといった悪条件の下でも、運転者による歩行者12の見落としを改善できる。
【0039】
(2)の車両用照明装置1では、下部パターン照射領域18に対する照射光の照射態様である第2の態様は、上部パターン照射領域17に対する照射光の照射態様である第1の態様よりも照射強度が高い態様である。これにより、下部パターン照射領域18への照射光が路側の歩行者19の脚部を高照度で照射し、運転者側から歩行者19の脚部の動きを顕著に認識できる。一方、上部パターン照射領域17への照射光の照射強度が相対的に低いため、歩行者側における眩惑を回避できる。
【0040】
(3)の車両用照明装置1では、下部パターン照射領域18に対する照射光の照射態様である第1の態様は、菱形格子の網目模様の明領域13とこの明領域に囲まれた暗領域14とによる菱形格子パターンの照射パターン(第1の照射パターン15)で照射光を照射する態様である。また、下部パターン照射領域18に対する照射光の照射態様である第2の態様は、背景となる暗領域に縦横格子状の明領域が重畳された格子状の照射パターン(第2の照射パターン20)で照射光を照射する態様である。第1の照射パターン15の光が歩行者に照射されると、ヒトの視覚特性により、運転者は容易に歩行者19の存在を認識できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。上述の実施形態では、灯具制御ECU9によりプロジェクターユニット8の作動を管理する構成を採った。これに替えて、例えば、自車の走行状況を常時監視している上位ECUによってプロジェクターユニット8の作動を管理し、照射光の照射態様を切り替える構成を採ることもできる。また、車両前方を撮像する撮像装置などの歩行者検出装置を備え、側方照射領域に歩行者の存在を検出した場合に、パターン照射部は側方照射領域のうちの上側の上部パターン照射領域に所定の第1の態様で照射光を照射し、側方照射領域のうちの下側の下部パターン照射領域に第1の態様とは異なる第2の態様で照射光を照射してもよい。さらに、歩行者検出装置により、歩行者の上半身部分と下半身部分を検出し、パターン照射部は側方照射領域のうちの上側の上部パターン照射領域としての歩行者の上半身部分に所定の第1の態様で照射光を照射し、側方照射領域のうちの下側の下部パターン照射領域としての歩行者の下半身部分に第1の態様とは異なる第2の態様で照射光を照射してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…車両用照明装置
2…車両
3…テストスクリーン
4…左側ヘッドライトユニット
5…右側ヘッドライトユニット
6…ハイビームユニット
7…ロービームユニット
8…プロジェクターユニット(可変パターン照射部)
9…灯具制御ECU
10…ハイビーム照射領域(上部照射領域)
11…ロービーム照射領域(下部照射領域)
12…右側パターン照射領域(側方照射領域)
12a…重複領域
13…明領域
14…暗領域
15…第1の照射パターン
16…境界線
17…上部パターン照射領域
18…下部パターン照射領域
19…歩行者
20…第2の照射パターン

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7