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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041612
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/00 20060101AFI20240319BHJP
   H01H 9/44 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01H50/00 D
H01H9/44 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146528
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】石井 智大
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
【テーマコード(参考)】
5G027
【Fターム(参考)】
5G027AA03
5G027BA10
5G027BB05
5G027BC14
(57)【要約】
【課題】電磁接触器において、アークをより短時間で引き伸ばし、消弧性能を向上させる。
【解決手段】ポンプ71と、上板72と、を備える。ポンプ71は、中空状であり、外力を受けて圧縮されたときに吐出口81から気体を吹き出すように形成され、吐出口81を固定接点23及び可動接点24の間に向けて設けられている。上板72は、可動接触子22に固定され、固定接点23から可動接点24を離間させるときに、ポンプ71を押圧する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点が形成された固定接触子と、
可動接点が形成され、奥行方向に変位することで前記可動接点を前記固定接点に接触及び離間させる可動接触子と、
中空状であり、外力を受けて圧縮されたときに吐出口から気体を吹き出すように形成され、前記吐出口を前記固定接点及び前記可動接点の間に向けて設けられたポンプと、
前記可動接触子に固定され、前記固定接点から前記可動接点を離間させるときに、前記ポンプを押圧する可動板と、を備えることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記可動接点は、前記固定接点よりも奥行方向の奥側に配置され、
前記可動接触子は、奥行方向の手前側に位置しているときに、前記固定接点に前記可動接点を接触させ、奥行方向の奥側に位置しているときに、前記固定接点から前記可動接点を離間させ、
前記ポンプは、前記可動接触子よりも奥行方向の手前側に配置され、
前記可動板は、前記ポンプよりも奥行方向の手前側に配置され、前記可動接触子が奥行方向の奥側に変位するときに、前記ポンプを押圧することを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記可動接触子よりも奥行方向の手前側で、且つ前記ポンプを挟んで前記可動板に対向する位置に固定された固定板を備え、
前記ポンプは、前記可動接触子が奥行方向の奥側に変位するときに、前記可動板及び前記固定板に挟まれて圧縮されることを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記吐出口は、前記ポンプにおける奥行方向の奥側の端部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記可動板は、奥行方向に延びる支柱を介して前記可動接触子に固定されることで、前記可動接触子から奥行方向に離間して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項6】
前記ポンプは、前記外力を受けて圧縮されたときに弾性変形し、前記外力が除去されると元の形状に復元する弾性部材によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項7】
前記可動板に固定され、前記ポンプを幅方向の両側から挟んで対向する一対の支持板を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項8】
前記固定接点及び前記可動接点によって形成される接点部に外部磁界を作用させる永久磁石を備え、
前記外部磁界に応じたローレンツ力、及び前記ポンプの吹き出しにより、前記接点部に生じるアークを引き伸ばすことを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示される電磁接触器は、接点部を密閉した容器内に水素等の遮断用ガスを封入してあり、さらに同一磁極面を対向させた一対の永久磁石を備えている。永久磁石の磁界は、接点部に生じるアークをローレンツ力によって引き伸ばし、アーク電圧を高めて遮断性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-098051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
永久磁石の磁界によって生じるローレンツ力だけでは、アークを短時間で引き伸ばして消弧する点で限界があった。
本発明の目的は、電磁接触器において、アークをより短時間で引き伸ばし、消弧性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る電磁接触器は、固定接触子と、可動接触子と、ポンプと、可動板と、を備えている。固定接触子は、固定接点が形成されている。可動接触子は、可動接点が形成され、奥行方向に変位することで可動接点を固定接点に接触及び離間させる。ポンプは、中空状であり、外力を受けて圧縮されたときに吐出口から気体を吹き出すように形成され、吐出口を固定接点及び可動接点の間に向けて設けられている。可動板は、可動接触子に固定され、固定接点から可動接点を離間させるときに、ポンプを押圧する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、固定接点から可動接点を離間させるときに、可動板によってポンプが押圧され、固定接点及び可動接点の間に向けて気体が吹き出される。これにより、アークを短時間で引き伸ばし、消弧性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電磁接触器の外観図である。
図2】電磁接触器の断面図である。
図3】消弧室の断面図である。
図4】閉極時における吹き出し機構の断面図である。
図5】閉極時における吹き出し機構の断面図である。
図6】開極時における吹き出し機構の断面図である。
図7】開極時における吹き出し機構の断面図である。
図8】消弧室における二次側の断面図である。
図9】アーク電圧のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、電磁接触器の外観図である。
電磁接触器11は、電磁力を利用して電路を開閉するものであり、例えば電気自動車やプラグインハイブリッド自動車の高電圧回路に使用される車載用の密閉型高電圧コンタクタである。電磁接触器11は、奥行方向の手前側に接点収容部12が設けられ、奥行方向の奥側に電磁石部13が設けられている。
【0010】
図2は、電磁接触器の断面図である。
ここでは、幅方向の略中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
接点収容部12は、縦方向の両側、及び幅方向の両側が閉塞された金属製の角筒体14を備え、角筒体14における奥行方向の手前側は、セラミック製の蓋体15によって閉塞されている。角筒体14の内側には、縦方向の両側、幅方向の両側、及び奥行方向の奥側が閉塞された樹脂製のケース体16が配置されている。ケース体16は、奥行方向から見ると、略矩形状に形成されており、内側には、一対の固定接触子21と、可動接触子22と、が配置されている。
【0011】
一対の固定接触子21は、導電性を有する金属であり、縦方向に間隔をあけて並んでいる。固定接触子21は、奥行方向に延びる円柱状であり、インサート成形によって蓋体15を突き抜けた状態で一体化されている。固定接触子21は、奥行方向の奥側を向いた端面に固定接点23が形成されている。固定接触子21は、奥行方向の手前側を向いた端面に図示しない端子ねじが締結されることにより、一方が一次側の回路に接続され、他方が二次側の回路に接続される。
可動接触子22は、導電性を有する金属であり、一対の固定接触子21よりも奥行方向の奥側に設けられ、縦方向に延びる帯状に形成され、奥行方向の奥側を向いた端面のうち縦方向の両端側に一対の可動接点24が形成されている。可動接触子22は、曲げ加工により縦方向の両側よりも中央が奥行方向の奥側に平行移動した位置にあり、幅方向から見て上下逆さの略ハット状に形成されている。可動接触子22は、奥行方向に沿って動作することで、可動接点24を固定接点23に接触及び離間させる。固定接点23、及び可動接点24によって、接点部25が形成される。ケース体16及び蓋体15で囲まれた領域は、接点部25を開くときに生じるアークを消滅させるための消弧室26となる。
【0012】
可動接触子22は、軸方向に延びる駆動シャフト27によって支持されている。ケース体16には、奥行方向の奥側の面に貫通孔28が形成され、駆動シャフト27は貫通孔28に挿通されている。駆動シャフト27は、第一シャフト31と、第二シャフト32と、連結ホルダ33と、ブッシュ部材34と、を備える。
第一シャフト31は、奥行方向の手前側に設けられ、第二シャフト32は、奥行方向の奥側に設けられ、これらが同軸上で連結ホルダ33によって連結されている。第一シャフト31における奥行方向の手前側は、ブッシュ部材34の内側に嵌め合わされている。可動接触子22には、縦方向及び幅方向の中心に、奥行方向に貫通した貫通孔35が形成されており、ブッシュ部材34が貫通孔35に挿通されている。ブッシュ部材34における奥行方向の手前側にナット部材36が嵌め合わされることで、駆動シャフト27に可動接触子22が固定されている。接触ばね37は、可動接触子22を奥行方向の手前側に付勢することで接点部25を閉じたときの接触圧力を一定に保つ。
【0013】
電磁石部13は、接点部25の開閉を切り替えるものであり、ヨーク41と、キャップ部材42と、スプール43と、コイル44と、固定プランジャ45と、可動プランジャ46と、復帰ばね47と、固定プランジャ48と、を備える。
ヨーク41は、板状の継鉄であり、コイル44への通電によって励磁されたときに磁路を形成する。ヨーク41は、上片部51と、一対の側片部52と、下片部53と、を備えている。
上片部51は、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成され、角筒体14における奥行方向の奥側を閉塞している。上片部51には、縦方向及び幅方向の中心に、奥行方向に貫通した円形の挿通穴54が形成されている。
【0014】
一対の側片部52は、幅方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、奥行方向の手前側が上片部51に固定され、スプール43における縦方向の両外側を覆っている。
下片部53は、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成され、縦方向における両端の夫々が側片部52における奥行方向の奥側につながっており、スプール43における奥行方向の奥側を覆っている。一対の側片部52、及び下片部53は、プレス加工によって一体成形されており、幅方向から見ると、奥行方向の手前側に向かって開いた略コ字状に形成されている。
【0015】
キャップ部材42は、強い磁気を帯びない常磁性や反磁性を有する金属であり、軸方向に延びる円筒状で、奥行方向における手前側の端部にフランジを有し、奥行方向の奥側が閉塞された上下逆さの略ハット状に形成されている。キャップ部材42は、挿通穴54を覆うように上片部51に固定されている。電磁接触器11は、角筒体14、蓋体15、上片部51、及びキャップ部材42によって密閉され、内部には水素や窒素等の加圧された遮断用ガスが封入されている。
スプール43は、電気絶縁性を有する樹脂であり、軸方向に延びる円筒状の巻き軸55が形成されている。巻き軸55の外側には、コイル44が巻き付けられており、巻き軸55の内側には、キャップ部材42が挿入されている。
【0016】
固定プランジャ45は、軸方向に延びる円柱状の固定鉄心であり、キャップ部材42の内側に挿入され、軸方向の手前側が挿通穴54に嵌め合わされ固定されている。固定プランジャ45には、径方向の中心に軸方向に沿って貫通した貫通孔56が形成されており、第二シャフト32が挿通されている。
可動プランジャ46は、軸方向に延びる円柱状の可動鉄心であり、固定プランジャ45よりも軸方向の奥側に配置され、進退可能な状態でキャップ部材42の内側に挿入されている。可動プランジャ46には、径方向の中心に軸方向に沿って貫通したねじ穴57が形成されており、第二シャフト32が嵌め合わされ連結されている。
【0017】
復帰ばね47は、圧縮コイルばねであり、第二シャフト32に挿通され、固定プランジャ45と可動プランジャ46との間に配置されることで、可動プランジャ46を軸方向の奥側に付勢している。
固定プランジャ48は、軸方向に延びる円柱状の固定鉄心であり、巻き軸55の内側に挿入され、下片部53に固定されている。固定プランジャ48には、軸方向の手前側に軸方向の奥側に向かって凹となる凹部58が形成されており、キャップ部材42が嵌り合っている。
【0018】
上記より、コイル44に通電していない非励磁の状態では、復帰ばね47の反発力によって、可動プランジャ46が軸方向の奥側へと後退している。これに伴って駆動シャフト27も軸方向の奥側へと後退するので、接点部25が開いて開極状態となる。このとき、固定プランジャ45に対して可動プランジャ46が離間している。
この状態から、コイル44に通電して励磁すると、ヨーク41、固定プランジャ45、可動プランジャ46、及び固定プランジャ48によって磁路が形成され、固定プランジャ45に可動プランジャ46が吸引される。すなわち、可動プランジャ46が復帰ばね47の反発力に逆らって軸方向の手前側へと前進し、これに伴って駆動シャフト27も軸方向の手前側へと前進するので、接点部25が閉じて閉極状態となる。
【0019】
次に、アークを引き伸ばす消弧機能について説明する。
図3は、消弧室の断面図である。
ここでは、図2における縦方向及び幅方向に沿ったA‐A断面を奥行方向の手前側から見た状態を示す。ケース体16の外周面には、幅方向の両側に、一対の永久磁石61が設けられている。一対の永久磁石61は、接点部25を幅方向に挟むように設けられ、異なる磁極同士を対向させることで、破線の矢印で示すように、一方から他方へ向かう外部磁界Hを発生させる。角筒体14とケース体16との間には、磁極板62が設けられている。磁極板62は、縦方向の両側に分割されており、奥行方向から見て縦方向の内側に向かって開いた略コ字状に形成されている。永久磁石61は、ケース体16と磁極板62との間に設けられている。一次側では電流Iが固定接触子21から可動接触子22へと流れ、二次側では電流Iが可動接触子22から固定接触子21へと流れる。したがって、フレミング左手の法則により、奥行方向から見て永久磁石61の外部磁界Hに応じたローレンツ力Fが作用する。このローレンツ力Fにより、接点部25に生じるアークが縦方向の外側へと引き延ばされる。
【0020】
消弧室26には、接点部25が開くときに、接点部25に気体を吹き出す吹き出し機構63が設けられている。
図4は、閉極時における吹き出し機構63の断面図である。
ここでは、幅方向の略中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
図5は、閉極時における吹き出し機構63の断面図である。
ここでは、縦方向の略中心を通り、幅方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
吹き出し機構63は、ポンプ71と、上板72(可動板)と、側板73(支持板)と、中空方形板74と、下板75(固定板)と、を備えている。
【0021】
ポンプ71は、外力を受けて圧縮されたときに弾性変形し、外力が除去されると元の形状に自己復元可能な弾性部材によって形成されており、固定接触子21同士の間で、且つ可動接触子22よりも奥行方向の手前側に配置されている。ポンプ71は、縦方向に延びる円筒状に形成され、縦方向の両側に一つずつ吐出口81が形成されている。ポンプ71は、外力を受けて圧縮されたときに吐出口81から気体を吹き出す。吐出口81は、縦方向の外側に向かって突出した細い円筒状であり、ポンプ71における奥行方向の奥側の端部に形成され、固定接点23よりも僅かに奥行方向の奥側に位置している(図4)。そのため、接点部25が開いている開極状態では、吐出口81の先端が固定接点23及び可動接点24の間に向けて位置することになる。ポンプ71の外周面には、奥行方向の手前側に、径方向の外側に向かって凸となる凸部82が形成され、幅方向の両側に、径方向の外側に向かって凸となる凸部83が形成されている。
【0022】
上板72は、例えばステンレス製であり、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成されている。上板72は、奥行方向から見て方形であり、四隅が例えばステンレス製の支柱84を介して可動接触子22に固定されることで、ポンプ71よりも奥行方向の手前側に配置されている。支柱84は、可動接触子22及び上板72の夫々に挿通され、ろう付けやかしめによって固定されている。上板72は、ポンプ71の外周面に接しており、奥行方向の奥側を向いた面には、凸部82に嵌まり合う凹部85が形成されている。凸部82及び凹部85は、ポンプ71における縦方向に沿った軸回りの回転や、縦方向及び幅方向への変位を抑制する構造であり、縦方向に沿って延びる凸条及び凹溝であってもよい。
【0023】
側板73は、例えばステンレス製であり、縦方向及び奥行方向に沿った板状であり、奥行方向の手前側にフランジが設けられることで、縦方向から見て略T字状に形成されている。側板73は、奥行方向の手前側から上板72に挿通され、ろう付けやかしめによって固定されている。一対の側板73は、ポンプ71を幅方向に挟んで対向し、ポンプ71の外周面に接している。したがって、側板73同士の離隔距離は、ポンプ71の外径寸法に対応している。側板73は、幅方向の内側を向いた面に、奥行方向に沿って奥側の先端まで延び、凸部83に嵌まり合う溝状の凹部86が形成されている。凸部83及び凹部86は、ポンプ71における縦方向及び幅方向への変位を抑制する構造である。
【0024】
中空方形板74は、例えばステンレス製であり、縦方向に延び幅方向に離れて並んだ一対の辺、及び幅方向に延び縦方向に離れて並んだ一対の辺によって構成され、奥行方向から見て略ロ字状に形成されている。中空方形板74は、四隅が例えばステンレス製の支柱87を介してケース体16の床面に固定されている。支柱87は、ケース体16の床面及び中空方形板74の夫々に挿通され、ろう付けやかしめによって固定されている。中空方形板74は、可動接触子22のうち奥行方向の奥側に曲げ加工された部分を取り囲むように配置され、可動接触子22に対して非接触状態を保っている。
【0025】
下板75は、例えばステンレス製であり、縦方向及び奥行方向に沿った板状であり、幅方向の両側が奥行方向の奥側に向かい、次いで幅方向の外側に向かうように曲げ加工されていることで、縦方向から見て略ハット状に形成されている。下板75は、幅方向の両端が、中空方形板74のうち縦方向に延び幅方向に離間した一対の辺に対して、リベットやねじによって固定されている。下板75は、ポンプ71を挟んで上板72に対向し、ポンプ71の外周面に接している。接点部25が閉じている閉極状態では、上板72に対する下板75の離隔距離が、ポンプ71の外径寸法に対応している。
【0026】
次に、吹き出し機構63の動作について説明する。
図6は、開極時における吹き出し機構63の断面図である。
ここでは、幅方向の略中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
図7は、開極時における吹き出し機構63の断面図である。
ここでは、縦方向の略中心を通り、幅方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
接点部25が開くときに、可動接触子22と共に上板72が奥行方向の奥側に引き下げられるため、上板72が下板75に接近してポンプ71を押圧する。ポンプ71は、下板75と上板72に挟まれて圧縮されるため、一対の吐出口81から接点部25に向かって気体が吹き出される(図6)。なお、接点部25が閉じると、可動接触子22と共に上板72が奥行方向の手前側に押し上げられるため、上板72が下板75から遠ざかる。ポンプ71は、外力が除去されることで、元の形状に復元する。このとき、ポンプ71は一対の吐出口81から気体を吸引する。
【0027】
《作用効果》
次に、実施形態の主要な作用効果について説明する。
実施形態の電磁接触器11は、固定接触子21と、可動接触子22と、ポンプ71と、上板72と、を備えている。固定接触子21は、固定接点23が形成されている。可動接触子22は、可動接点24が形成され、奥行方向に変位することで可動接点24を固定接点23に接触及び離間させる。ポンプ71は、中空状であり、外力を受けて圧縮されたときに吐出口81から気体を吹き出すように形成され、吐出口81を固定接点23及び可動接点24の間に向けて設けられている。上板72は、可動接触子22に固定され、固定接点23から可動接点24を離間させるときに、ポンプ71を押圧する。したがって、固定接点23から可動接点24を離間させるときに、上板72によってポンプ71押圧され、固定接点23及び可動接点24の間に向けて気体が吹き出される。これにより、アークを短時間で引き伸ばし、消弧性能を向上させることができる。また、可動接触子22の動作に連動して強制的にポンプ71を圧縮させるので、通電電流の大小に関わらず、常に安定した十分な吹き出し圧力Pを生み出すことができる。
【0028】
図8は、消弧室26における二次側の断面図である。
ここでは、幅方向の中心を通り縦方向及び奥行方向に沿った断面を、幅方向の外側から見た状態を示す。接点部25が開くときにアークが発生し、二次側では電流Iが可動接触子22から固定接触子21へと流れる。接点部25に発生したアークを太い実線で示してあり、A1~A3は経時的な変化を示している。A1は初期のアークであり、これに外部磁界Hに応じたローレンツ力F、及びポンプ71の吹き出し圧力Pが作用すると、アークが次第に引き延ばされてゆく。A2は引き延ばされた中期のアークであり、A3はさらに引き延ばされた後期のアークである。このように、アーク電圧を高めることでアークを消弧し、接点部25の絶縁を回復させる。一次側の接点部25についても同様である。
【0029】
図9は、アーク電圧のタイムチャートである。
横軸は、開極してからの経過時間であり、縦軸は、アーク電圧である。太い実線で示した特性線L1は、ローレンツ力F及び吹き出し圧力Pによってアークを引き伸ばしたときのアーク電圧であり、破線で示した特性線L2は、吹き出し機構63を省略し、ローレンツ力Fのみによってアークを引き伸ばしたときのアーク電圧である。特性線L1に示すように、ローレンツ力F及び吹き出し圧力Pによってアークを引き伸ばしたときには、時点t1からアーク電圧が大きく立ち上がり、電源電圧Vpをオーバーシュートし、それから時点t2で、電源電圧Vpに収束して遮断が完了する。一方、特性線L2に示すように、ローレンツ力Fのみによってアークを引き伸ばしたときには、時点t3からアーク電圧が大きく立ち上がり、電源電圧Vpをオーバーシュートし、それから時点t4で、電源電圧Vpに収束して遮断が完了する。このように、ローレンツ力Fのみならず、吹き出し圧力Pによってもアークを引き伸ばすことにより、アーク電圧の立ち上がりを時点t3からt1まで早め、且つ遮断の完了を時点t4から時点t2まで早めることで、消弧性能を向上させることができる。
【0030】
可動接点24は、固定接点23よりも奥行方向の奥側に配置されている。可動接触子22は、奥行方向の手前側に位置しているときに、固定接点23に可動接点24を接触させ、奥行方向の奥側に位置しているときに、固定接点23から可動接点24を離間させる。ポンプ71は、可動接触子22よりも奥行方向の手前側に配置されている。上板72は、ポンプ71よりも奥行方向の手前側に配置され、可動接触子22が奥行方向の奥側に変位するときに、ポンプ71を押圧する。これにより、固定接点23から可動接点24を離間させるときに、固定接点23及び可動接点24の間に向けて、ポンプ71から気体を吹き出すことができる。
【0031】
電磁接触器11は、可動接触子22よりも奥行方向の手前側で、且つポンプ71を挟んで上板72に対向する位置に固定された下板75を備えている。ポンプ71は、可動接触子22が奥行方向の奥側に変位するときに、上板72及び下板75に挟まれて圧縮される。これにより、固定接点23から可動接点24を離間させるときに、上板72でポンプ71を圧縮することができる。
吐出口81は、ポンプ71における奥行方向の奥側の端部に形成されている。これにより、ポンプ71が圧縮されるときでも、吐出口81が奥行方向に変位することを抑制できる。したがって、固定接点23及び可動接点24の間に向けて、気体を安定して吹き出すことができる。
【0032】
上板72は、奥行方向に延びる支柱84を介して可動接触子22に固定されることで、可動接触子22から奥行方向に離間して配置されている。これにより、上板72をポンプ71よりも奥行方向の手前側に配置させ、固定接点23から可動接点24を離間させるときに、上板72でポンプ71を圧縮することができる。
ポンプ71は、外力を受けて圧縮されたときに弾性変形し、外力が除去されると元の形状に復元する弾性部材によって形成されている。これにより、固定接点23に可動接点24を接触させると、ポンプ71が元の形状に復元し、次の吹き出しに備えて気体を吸引することができる。
【0033】
上板72に固定され、ポンプ71を幅方向の両側から挟んで対向する一対の側板73を備えている。これにより、上板72でポンプ71を押圧するときに、ポンプ71が幅方向に変位することを防ぎ、ポンプ71の位置や動作を安定させることができる。
電磁接触器11は、固定接点23及び可動接点24によって形成される接点部25に外部磁界Hを作用させる永久磁石61を備えている。外部磁界Hに応じたローレンツ力F、及びポンプ71の吹き出しにより、接点部25に生じるアークAを引き伸ばす。これにより、アークを短時間で引き伸ばし、消弧性能を向上させることができる。
【0034】
次に、比較例について説明する。
ここでは、吹き出し機構63がない構成を比較例とする。このような比較例では、永久磁石61の外部磁界Hに応じたローレンツ力Fのみによってアークを引き伸ばすことになる。しかしながら、外部磁界Hによって生じるローレンツ力だけでは、アークを短時間で引き伸ばして消弧する点で限界があった。すなわち、図9の特性線L2で示したように、ローレンツ力Fのみでアークを引き伸ばすと、アーク電圧の立ち上がりや遮断の完了を早める点で限界があった。
また、アークの熱で高まった圧力との差圧を用いてポンプを圧縮して気体を吹き出す構造も考えられる。しかしながら、差圧を用いてポンプを圧縮する場合、常に安定した十分な吹き出し圧力Pを生み出すことが難しい。特に、通電電流が小さい領域では入熱量も小さいため、十分な吹き出し圧力Pを生み出すことができない。
【0035】
《変形例》
実施形態では、固定接触子21を、奥行方向に延びる円柱状の電極型とする構成について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば縦方向の両側に突き出る端子板としてもよい。すなわち、可動接点24が固定接点23よりも奥行方向の奥側に配置され、且つ接点部25を開くときに、可動接触子22を奥行方向の手前側から奥側へと変位させる構造であればよい。
実施形態では、外部磁界Hを作用させる永久磁石61を、ケース体16の外周面に設ける構成について説明したが、これに限定されるものではなく、例えばケース体16の内部に設けてもよい。これにより、永久磁石61と接点部25との距離が近づくので、消弧性能を向上させることができる。
【0036】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0037】
11…電磁接触器、12…接点収容部、13…電磁石部、14…角筒体、15…蓋体、16…ケース体、21…固定接触子、22…可動接触子、23…固定接点、24…可動接点、25…接点部、26…消弧室、27…駆動シャフト、28…貫通孔、31…第一シャフト、32…第二シャフト、33…連結ホルダ、34…ブッシュ部材、35…貫通孔、36…ナット部材、37…接触ばね、41…ヨーク、42…キャップ部材、43…スプール、44…コイル、45…固定プランジャ、46…可動プランジャ、47…復帰ばね、48…固定プランジャ、51…上片部、52…側片部、53…下片部、54…挿通穴、55…巻き軸、56…貫通孔、57…ねじ穴、58…凹部、61…永久磁石、62…磁極板、63…吹き出し機構、71…ポンプ、72…上板、73…側板、74…中空方形板、75…下板、81…吐出口、82…凸部、83…凸部、84…支柱、85…凹部、86…凹部、87…支柱、A…アーク、F…ローレンツ力、H…外部磁界、I…電流、P…吹き出し圧力、Vp…電源電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9