(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041616
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】加工システム及び製品フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240319BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146534
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】村上 協司
(72)【発明者】
【氏名】白藤 文明
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】本発明は、熟練者でなくとも高収率で原反フィルムから製品フィルムを抽出できる加工システムを提供する。
【解決手段】原反情報と製品情報を入力する入力部と、下記の(1)~(3)に基づく第1報酬を設定する報酬設定部と、欠陥情報と製品情報が入力部に入力されたときに、複数の製品フィルムの抽出位置モデルを算出し、算出した各抽出位置モデルに対して第1報酬の合計を算出し、第1報酬の合計が第1閾値以上となる第1候補モデルを抽出し、第1候補モデルを用いて位置提案モデルを作成するモデル生成部を備える構成とする。
(1)原反フィルムの欠陥位置に対する製品フィルムの抽出領域の最短距離
(2)原反フィルムのエッジ位置に対する製品フィルムの抽出領域の最短距離
(3)原反フィルムから抽出可能な製品フィルムの抽出領域の数
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置提案モデルに基づいて原反フィルムから複数の製品フィルムを抽出する加工システムであって、
前記原反フィルムの欠陥位置に関する欠陥情報を含む原反情報と、前記製品フィルムに関する製品情報とを入力する入力部と、
下記の(1)~(3)に基づく第1報酬を設定する報酬設定部と、
前記欠陥情報と前記製品情報が前記入力部に入力されたときに、複数の製品フィルムの抽出位置モデルを算出し、算出した各抽出位置モデルに対して前記第1報酬の合計を算出し、前記第1報酬の合計が第1閾値以上となる第1候補モデルを抽出し、前記第1候補モデルを用いて前記位置提案モデルを作成するモデル生成部を備える、加工システム。
(1)前記原反フィルムの欠陥位置に対する前記製品フィルムの抽出領域の最短距離
(2)前記原反フィルムのエッジ位置に対する前記製品フィルムの抽出領域の最短距離
(3)前記原反フィルムから抽出可能な前記製品フィルムの抽出領域の数
【請求項2】
前記報酬設定部は、下記の(4)及び(5)に基づく第2報酬を設定可能であり、
前記モデル生成部は、各第1候補モデルに対して前記第2報酬の合計を算出し、前記第2報酬の合計が第2閾値以上となる第2候補モデルを抽出し、前記第2候補モデルを用いて前記位置提案モデルを作成する、請求項1に記載の加工システム。
(4)前記原反フィルムの欠陥位置又は隣接する他の製品フィルムの抽出領域に対する製品フィルムの抽出領域の最短距離
(5)前記原反フィルムの幅方向の中央位置に対する相対位置
【請求項3】
前記モデル生成部は、前記第2候補モデルの前記抽出領域を分割する前記位置提案モデルを作成可能であり、
前記報酬設定部は、前記抽出領域を分割して得られる前記製品フィルムの長さ、及び前記原反フィルムに対する前記製品フィルムの廃棄量のそれぞれに対して第3報酬を設定可能であり、
前記モデル生成部は、前記報酬設定部が設定した前記第3報酬の合計が最大になる分割位置に基づいて前記位置提案モデルを作成する、請求項2に記載の加工システム。
【請求項4】
前記入力部は、前記製品フィルムの収率と前記製品フィルムの長さの間の優先度に関する優先度情報を入力可能であり、
前記報酬設定部は、前記入力部に入力された前記優先度情報に基づいて前記第3報酬を設定する、請求項3に記載の加工システム。
【請求項5】
前記モデル生成部は、前記第3報酬の合計が同点になった場合に、前記原反フィルムの面積と前記複数の製品フィルムの合計面積の差が最も小さくなる前記第2候補モデルに基づいて前記位置提案モデルを作成する、請求項3又は4に記載の加工システム。
【請求項6】
位置提案モデルに基づいて原反フィルムから複数の製品フィルムを抽出する加工システムであって、
前記原反フィルムに関する原反情報と、前記製品フィルムに関する製品情報とを入力する入力部と、
前記原反フィルムからの抽出領域を設定し、前記抽出領域を分割する前記位置提案モデルを作成するモデル生成部と、
前記抽出領域を分割して得られる前記製品フィルムの長さ、及び前記原反フィルムに対する前記製品フィルムの廃棄量のそれぞれに対して第3報酬を設定する報酬設定部を有し、
前記モデル生成部は、前記報酬設定部が設定した前記第3報酬の合計が最大になる位置を分割位置に基づいて前記位置提案モデルを作成する、加工システム。
【請求項7】
位置提案モデルに基づいて原反フィルムから複数の製品フィルムを抽出する製品フィルムの製造方法であって、
前記原反フィルムの欠陥位置に関する欠陥情報を含む原反情報と、前記製品フィルムに関する製品情報を取得する工程と、
下記の(1)~(3)に基づく第1報酬を設定する工程と、
複数の製品フィルムの抽出位置モデルを算出し、算出した各抽出位置モデルに対して前記第1報酬の合計を算出し、前記第1報酬の合計が第1閾値以上となる第1候補モデルを抽出する工程と、
前記第1候補モデルを用いて前記位置提案モデルを作成する工程を含む、製品フィルムの製造方法。
(1)前記原反フィルムの欠陥位置に対する前記製品フィルムの抽出領域の最短距離
(2)前記原反フィルムのエッジ位置に対する前記製品フィルムの抽出領域の最短距離
(3)前記原反フィルムから抽出可能な前記製品フィルムの抽出領域の数
【請求項8】
位置提案モデルに基づいて原反フィルムから複数の製品フィルムを抽出する製品フィルムの製造方法であって、
前記原反フィルムに関する原反情報と、前記製品フィルムに関する製品情報とを取得する工程と、
前記原反フィルムからの抽出領域を設定し、前記抽出領域を分割する前記位置提案モデルを作成する工程と、
前記抽出領域を分割して得られる前記製品フィルムの長さ、及び前記原反フィルムに対する前記製品フィルムの廃棄量のそれぞれに対して第3報酬を設定する工程と、
前記第3報酬の合計が最大になる位置を分割位置に基づいて前記位置提案モデルを作成する工程を含む、製品フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原反フィルムから複数の製品フィルムに加工する加工システム及び製品フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から原反フィルムをスリットによって切断して所望の長さの製品フィルムに加工している。
製品フィルムの仕様は、様々であり、一つの原反フィルムから複数種類の長さの製品フィルムに加工されることがある。
このような場合、材料コストの観点から、できる限り収率を高くするべく、製品フィルムの仕様と原反フィルムの欠陥位置をもとに、熟練者の感覚や計算によって、欠陥位置を避けた長さ方向における製品フィルムのスリット位置や抽出する製品フィルムの組み合わせを算出し、スリット計画書を作成する。そして、作成したスリット計画書に基づいて原反フィルムから製品フィルムに加工される。
本願に関連する文献としては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のスリット計画書は、熟練者の感覚の部分が大きく、熟練者でしか指示書を作成することができない問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、熟練者でなくとも高収率で原反フィルムから製品フィルムを抽出できる加工システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、位置提案モデルに基づいて原反フィルムから複数の製品フィルムを抽出する加工システムであって、前記原反フィルムの欠陥位置に関する欠陥情報を含む原反情報と、前記製品フィルムに関する製品情報とを入力する入力部と、下記の(1)~(3)に基づく第1報酬を設定する報酬設定部と、前記欠陥情報と前記製品情報が前記入力部に入力されたときに、複数の製品フィルムの抽出位置モデルを算出し、算出した各抽出位置モデルに対して前記第1報酬の合計を算出し、前記第1報酬の合計が第1閾値以上となる第1候補モデルを抽出し、前記第1候補モデルを用いて前記位置提案モデルを作成するモデル生成部を備える、加工システムである。
(1)前記原反フィルムの欠陥位置に対する前記製品フィルムの抽出領域の最短距離
(2)前記原反フィルムのエッジ位置に対する前記製品フィルムの抽出領域の最短距離
(3)前記原反フィルムから抽出可能な前記製品フィルムの抽出領域の数
【0007】
本様相によれば、抽出位置モデルの中から第1候補モデルを抽出して絞り、第1候補モデルを用いて位置提案モデルを作成するので、余分な計算を省略することができ、提案位置モデルを作成しやすく、熟練者でなくとも高収率で原反フィルムから製品フィルムを抽出できる。
【0008】
好ましい様相は、前記報酬設定部は、下記の(4)及び(5)に基づく第2報酬を設定可能であり、前記モデル生成部は、各第1候補モデルに対して前記第2報酬の合計を算出し、前記第2報酬の合計が第2閾値以上となる第2候補モデルを抽出し、前記第2候補モデルを用いて前記位置提案モデルを作成する。
(4)前記原反フィルムの欠陥位置又は隣接する他の製品フィルムの抽出領域に対する製品フィルムの抽出領域の最短距離
(5)前記原反フィルムの幅方向の中央位置に対する相対位置
【0009】
本様相によれば、第1候補モデルの中から第2候補モデルを抽出して絞り、第2候補モデルを用いて位置提案モデルを作成するので、さらに余分な計算を省略することができ、提案位置モデルを作成しやすい。
【0010】
ところで、より収率を上げるには、欠陥部分を避けて複数の独立した抽出領域を設定し、各抽出領域を切り取って製品フィルムに加工するよりも、欠陥部分を避けて抽出領域を最大限に設定し、抽出領域を分割した方が原反フィルムの廃棄量が少なくなり、高収率になる。
また、欠陥部分は原反フィルムによって異なるため、欠陥部分を避けて抽出できる抽出領域の大きさも異なってくる。
一般的に製品フィルムの大きさは、サイズの規格がある程度決まっており、大きい方が高価値であることが多く、抽出領域からできる限り大きな製品フィルムを取り出したい要望がある。
そのため、抽出領域を分割して製品フィルムを抽出する場合には、廃棄物の量だけではなく、分割した後の製品フィルムの長さも重要となり、廃棄物の量と分割後の製品フィルムの長さのバランスを取ることが望まれる。
そこで、本発明者は、抽出領域から分割する前記製品フィルムの長さごと及び原反フィルムに対する製品フィルムの廃棄量ごとに報酬をそれぞれ設定し、対応する報酬を割り当てて報酬の合計が最大となる分割位置にすることで廃棄物の量と分割後の製品フィルムの長さのバランスを良好にすることを考えた。
【0011】
このような考えのもと導き出された、より好ましい様相は、前記モデル生成部は、前記第2候補モデルの前記抽出領域を分割する前記位置提案モデルを作成可能であり、前記報酬設定部は、前記抽出領域を分割して得られる前記製品フィルムの長さ、及び前記原反フィルムに対する前記製品フィルムの廃棄量のそれぞれに対して第3報酬を設定可能であり、前記モデル生成部は、前記報酬設定部が設定した前記第3報酬の合計が最大になる分割位置に基づいて前記位置提案モデルを作成する。
【0012】
本様相によれば、抽出領域から分割する製品フィルムの長さと、原反フィルムに対する製品フィルムの廃棄量に基づいて、それぞれに第3報酬を割り当て、第3報酬の合計が最大となる分割位置に基づいて分割位置モデルを作成し、位置提案モデルを作成するので、従来に比べて最適な位置提案モデルを作成できる。
【0013】
さらに好ましい様相は、前記入力部は、前記製品フィルムの収率と前記製品フィルムの長さの間の優先度に関する優先度情報を入力可能であり、前記報酬設定部は、前記入力部に入力された前記優先度情報に基づいて前記第3報酬を設定する。
【0014】
本様相によれば、収率優先の場合と長さ優先の場合のそれぞれにおいて、最適な位置提案モデルを作成できる。
【0015】
好ましい様相は、前記モデル生成部は、前記第3報酬の合計が同点になった場合に、前記原反フィルムの面積と前記複数の製品フィルムの合計面積の差が最も小さくなる前記第2候補モデルに基づいて前記位置提案モデルを作成する。
【0016】
本様相によれば、より収率が大きい位置提案モデルを作成できる。
【0017】
本発明の一つの様相は、位置提案モデルに基づいて原反フィルムから複数の製品フィルムを抽出する加工システムであって、前記原反フィルムに関する原反情報と、前記製品フィルムに関する製品情報とを入力する入力部と、前記原反フィルムからの抽出領域を設定し、前記抽出領域を分割する前記位置提案モデルを作成するモデル生成部と、前記抽出領域を分割して得られる前記製品フィルムの長さ、及び前記原反フィルムに対する前記製品フィルムの廃棄量のそれぞれに対して第3報酬を設定する報酬設定部を有し、前記モデル生成部は、前記報酬設定部が設定した前記第3報酬の合計が最大になる位置を分割位置に基づいて前記位置提案モデルを作成する、加工システムである。
【0018】
本様相によれば、抽出領域から分割する製品フィルムの長さと、原反フィルムに対する製品フィルムの廃棄量に基づいて、それぞれに第3報酬を割り当て、第3報酬の合計が最大となる分割位置に基づいて分割位置モデルを作成し、位置提案モデルを作成するので、従来に比べて最適な位置提案モデルを作成でき、熟練者でなくとも従来に比べて高収率で原反フィルムから製品フィルムを抽出できる。
【0019】
本発明の一つの様相は、位置提案モデルに基づいて原反フィルムから複数の製品フィルムを抽出する製品フィルムの製造方法であって、前記原反フィルムの欠陥位置に関する欠陥情報を含む原反情報と、前記製品フィルムに関する製品情報を取得する工程と、下記の(1)~(3)に基づく第1報酬を設定する工程と、複数の製品フィルムの抽出位置モデルを算出し、算出した各抽出位置モデルに対して前記第1報酬の合計を算出し、前記第1報酬の合計が第1閾値以上となる第1候補モデルを抽出する工程と、前記第1候補モデルを用いて前記位置提案モデルを作成する工程を含む、製品フィルムの製造方法である。
(1)前記原反フィルムの欠陥位置に対する前記製品フィルムの抽出領域の最短距離
(2)前記原反フィルムのエッジ位置に対する前記製品フィルムの抽出領域の最短距離
(3)前記原反フィルムから抽出可能な前記製品フィルムの抽出領域の数
【0020】
本様相によれば、抽出位置モデルの中から第1候補モデルを抽出して絞り、第1候補モデルを用いて位置提案モデルを作成するので、余分な計算を省略することができ、提案位置モデルを作成しやすく、熟練者でなくとも高収率で原反フィルムから製品フィルムを抽出できる。
【0021】
本発明の一つの様相は、位置提案モデルに基づいて原反フィルムから複数の製品フィルムを抽出する製品フィルムの製造方法であって、前記原反フィルムに関する原反情報と、前記製品フィルムに関する製品情報とを取得する工程と、前記原反フィルムからの抽出領域を設定し、前記抽出領域を分割する前記位置提案モデルを作成する工程と、前記抽出領域を分割して得られる前記製品フィルムの長さ、及び前記原反フィルムに対する前記製品フィルムの廃棄量のそれぞれに対して第3報酬を設定する工程と、前記第3報酬の合計が最大になる位置を分割位置に基づいて前記位置提案モデルを作成する工程を含む、製品フィルムの製造方法である。
【0022】
本様相によれば、抽出領域から分割する製品フィルムの長さと、原反フィルムに対する製品フィルムの廃棄量に基づいて、それぞれに第3報酬を割り当て、第3報酬の合計が最大となる分割位置に基づいて分割位置モデルを作成し、位置提案モデルを作成するので、従来に比べて最適な位置提案モデルを作成でき、熟練者でなくとも従来に比べて高収率で原反フィルムから製品フィルムを抽出できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の管理システムによれば、熟練者でなくとも高収率で原反フィルムから製品フィルムを抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態の管理システムのブロック図である。
【
図2】
図1の管理システムの抽出位置モデルの一例を模式的に示した平面図である。
【
図3】
図1の管理システムの製品フィルムの位置提案動作のフローチャートである。
【
図4】
図3に続く管理システムの製品フィルムの位置提案動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
本発明の第1実施形態の加工システム1は、
図2のように、取得不能な欠陥部分100を有する原反フィルム101から、欠陥部分100を避けるように、所望の製品フィルム102を切断して抽出するものである。
【0027】
加工システム1は、主に、
図1のように、モデル設計部2と、切断部3を備えており、モデル設計部2と切断部3が無線又は有線によって接続されている。
【0028】
(モデル設計部2)
モデル設計部2は、加工プログラムによって、原反フィルム101の欠陥部分100の位置(以下、欠陥位置ともいう)に関する欠陥情報を含む原反情報20と、製品フィルム102に関する製品情報21と、優先モードに関する優先度情報22から、スリット部30によって切り取られる原反フィルム101の抽出領域105を含む提案位置モデルを提案するものである。
【0029】
モデル設計部2は、ハードウェア構成として、各装置を制御する制御装置とデータに対する演算を行う演算装置で構成される中央処理装置と、データを記憶する記憶装置、外部からデータを入力する入力装置、外部にデータを出力する出力装置を備えたコンピュータである。
モデル設計部2は、
図1のように、主要構成部位として、入力部10と、報酬設定部11と、モデル生成部12と、データ蓄積部13と、出力部15を備えている。
【0030】
入力部10は、原反情報20、製品情報21、及び優先度情報22を入力可能な部位である。
原反情報20は、原反フィルム101に関する情報であり、原反フィルム101の製造工程で得られた欠陥部分100の位置等の欠陥情報を含んでいる。
欠陥部分100は、製品フィルム102として抽出できない抽出不能部分であり、例えば、原反フィルム101の製造工程によって発生した錆や虫、穴、発泡部位や茶点などである。
製品情報21は、製品フィルム102に関する情報であり、製品フィルム102の長さや幅、在庫等の情報を含んでいる。
優先度情報22は、原反フィルム101から得られる製品フィルム102の長さを優先する長さ優先モードと、原反フィルム101から得られる製品フィルム102の収率を優先する収率優先モードを含む情報である。
【0031】
報酬設定部11は、加工プログラムによって、各種の報酬を設定する部位である。
【0032】
モデル生成部12は、加工プログラムによって、原反フィルム101から抽出する製品フィルム102の抽出位置を設定する提案位置モデルを生成する部位である。
【0033】
データ蓄積部13は、過去又は現在の原反情報20、製品情報21、及び優先度情報22などの情報や加工プログラム等のデータを蓄積する部位である。
【0034】
出力部15は、切断部3にモデル設計部2で提案された位置提案モデルを出力する部位である。
【0035】
(切断部3)
切断部3は、モデル設計部2の出力部15によって出力された提案位置モデルに従って原反フィルム101を切断するものであり、スリット部30を備えている。
【0036】
続いて、本実施形態の加工システム1による製品フィルム102の製造方法について説明する。
【0037】
本実施形態の製造方法は、主に提案工程と、切断工程によって構成されている。
【0038】
(提案工程)
提案工程は、加工プログラムによって実行されるものであり、位置提案モデルを生成し、原反フィルム101から複数の製品フィルム102のスリット部30による切断位置をマッピングした位置提案モデルを作成し提案するものである。
【0039】
以下、提案工程について
図3、
図4のフローチャートに基づいて説明する。
まず、
図3のように、作業者又はプログラムにより入力部10に原反情報20、製品情報21、及び優先度情報22が入力されると(ステップS1-1)、モデル生成部12が原反情報20及び製品情報21から複数の抽出位置モデルを作成する(ステップS1-2)。
【0040】
このときの抽出位置モデルは、原反フィルム101から抽出される複数の抽出領域105を含むものである。すなわち、抽出位置モデルは、モデル生成部12によって抽出領域105の組み合わせごとに作成される。
【0041】
続いて、作成した抽出位置モデルに対して、原反情報20から得られた欠陥位置に対する抽出領域105の距離を評価し(ステップS1-3)、原反情報20から得られた原反フィルム101のエッジ位置に対する抽出領域105の距離を評価し(ステップS1-4)、抽出可能な抽出領域105の数を評価して(ステップS1-5)、それぞれの評価結果に対して第1報酬を与え、第1報酬の合計が第1閾値P1以上であるか判断する(ステップS1-6)。
【0042】
このとき、ステップS1-3における第1報酬は、報酬設定部11によって設定される報酬であって、原反情報20から得られた欠陥位置に対する抽出領域105の最短距離が小さいほど報酬が高くなっており、例えば、0点~10点の範囲で設定される。
ステップS1-4における第1報酬は、報酬設定部11によって設定される報酬であって、原反情報20から得られた原反フィルム101のエッジ位置に対する抽出領域105の最短距離が小さいほど報酬が高くなっており、例えば、0点~5点の範囲で設定される。
ステップS1-5における第1報酬は、報酬設定部11によって設定される報酬であって、抽出可能な抽出領域105の数が多いほど報酬が高くなっており、例えば、0点~10点の範囲で設定される。
また、ステップS1-6における第1閾値P1は、生成した抽出位置モデルの数等に合わせて適宜設定できるが、計算量を少なくしつつ、漏れを減らす観点から10点以上20点以下であることが好ましい。
【0043】
第1報酬が第1閾値P1以上である場合には(ステップS1-6でYes)、当該抽出位置モデルを第1候補モデルとして抽出する(ステップS1-7)。
【0044】
続いて、第1候補モデルとして抽出された抽出位置モデルに対して、欠陥位置又は他の抽出領域105に対する抽出領域105の距離を評価し(ステップS1-8)、
図2に示されるような幅方向の中央位置CLに対する抽出領域105の相対位置を評価して(ステップS1-9)、
図4のように、それぞれの評価結果に対して第2報酬を与え、第2報酬の合計が第2閾値P2以上であるか判断する(ステップS1-10)。
【0045】
このとき、ステップS1-8における第2報酬は、報酬設定部11によって設定される報酬であって、欠陥位置又は他の抽出領域105に対する抽出領域105の最短距離が小さいほど報酬が高くなっており、例えば、0点~10点の範囲で設定される。
ステップS1-9における第2報酬は、報酬設定部11によって設定される報酬であって、幅方向の中央位置CLに対する抽出領域105の相対位置が近いほど報酬が高くなっており、例えば、0点~10点の範囲で設定される。
また、ステップS1-10における第2閾値P2は、適宜設定できるが、計算量を少なくしつつ、漏れを減らす観点から5点以上15点以下であることが好ましい。
【0046】
図4のように、第2報酬が第2閾値P2以上である場合には(ステップS1-10でYes)、取得不能面積を評価し、当該抽出位置モデルを第2候補モデルとして抽出する(ステップS1-11)。
【0047】
このとき、取得不能面積は、原反フィルム101の面積から抽出領域105の総面積を引いて計算できる。
【0048】
第2候補モデルの抽出領域105を製品フィルム102に加工するにあたって分割可能であるかを判断する(ステップS1-12)。
【0049】
このとき、抽出領域105の分割の可否は、抽出領域105から製品情報21における最小単位の製品フィルム102を複数確保できるかで判断する。
【0050】
抽出領域105を製品フィルム102として分割可能である場合には(ステップS1-12でYes)、第2候補モデルとして抽出された抽出位置モデルを用いて分割位置モデルを作成する(ステップS1-13)。
【0051】
このとき、分割位置モデルは、製品情報21から得られる製品フィルム102の組み合わせの数に準じて作成する。
分割位置モデルにおける抽出領域105の分割位置は、製品情報21から得られる製品フィルム102の規格に沿って設定される。すなわち、抽出領域105の分割位置は、製品フィルム102の規格のうち、最小の規格以上となるように設定される。
【0052】
各分割位置モデルに対して、分割後の各製品フィルム102の長さとフィルムの廃棄量を評価し(ステップS1-14)、評価結果に対し優先度情報22の優先モードに基づいた第3報酬を与え、分割位置モデルの中で第3報酬の合計が最大になるかどうかそれぞれ判断する(ステップS1-15)。
【0053】
第3報酬は、報酬設定部11によって設定される報酬であって、分割後の各製品フィルム102の長さによって、優先度情報22の優先モードごとにそれぞれ点数が割り当てられている。
例えば、収率優先モードの場合、分割後の製品フィルム102の長さが廃棄となる0m以上100m未満の場合に-20点、分割後の製品フィルム102の長さが100m以上600m未満の場合に-5点、分割後の製品フィルム102の長さが600m以上1050m未満の場合に3点、分割後の製品フィルム102の長さが1050m以上1500m以下の場合に7点、分割後の製品フィルム102の長さが1501m以上の場合に-7点のように、廃棄が発生する場合に大きく減点することで、できる限り収率を向上させるように設定されている。
例えば、長さ優先モードの場合、分割後の製品フィルム102の長さが廃棄となる0m以上100m未満の場合に-7点、分割後の製品フィルム102の長さが100m以上600m未満の場合に-5点、分割後の製品フィルム102の長さが600m以上1050m未満の場合に3点、分割後の製品フィルム102の長さが1050m以上1500m以下の場合に20点、分割後の製品フィルム102の長さが1501m以上の場合に-7点のように、収率優先モードに比べて廃棄による減点が小さく、1050m以上1500m以下の長さの点数が大きくなっており、できる限り、分割後の製品フィルム102の長さが1050m以上1500m以下の長さが得られるように設定されている。
【0054】
具体例を挙げると、収率優先モードの場合、1720mの原反フィルム101において、分割後の製品フィルム102の長さの組み合わせが670mと1050mでは3+7=10点、分割後の製品フィルム102の長さの組み合わせが860mと860mでは3+3=6点、分割後の製品フィルム102の長さの組み合わせが120mと1500mでは-20+7=-13点となる。
そうすると、収率優先モードでは、分割後の製品フィルム102の長さの組み合わせが670mと1050mである場合に第3報酬の合計が最大となる。
【0055】
一方、長さ優先モードの場合、1720mの原反フィルム101において、分割後の製品フィルム102の長さの組み合わせが670mと1050mでは3+20=23点、分割後の製品フィルム102の長さの組み合わせが860mと860mでは3+3=6点、分割後の製品フィルム102の長さの組み合わせが120mと1500mでは-7+20=13点となる。
そうすると、長さ優先モードにおいても、分割後の製品フィルム102の長さの組み合わせが670mと1050mである場合に第3報酬の合計が最大となる。
【0056】
このように、各種優先モードによって製品フィルム102の長さの組み合わせの第3報酬が変動し、最適な製品フィルム102の長さの組み合わせが導かれる。
【0057】
分割位置モデルが全分割位置モデルの中で第3報酬の合計が最大になる場合には(ステップS1-15でYes)、第3報酬の合計が同点の他の分割位置モデルがあるか判断する(ステップS1-16)。
【0058】
第3報酬の合計が同点となる他の分割位置モデルがある場合は(ステップS1-16でYes)、ステップS1-11で評価した取得不能面積が他の分割位置モデルに比べて最小となるか判断する(ステップS1-17)。すなわち、原反フィルム101の面積と抽出領域105の合計面積の差が最も小さくなるかどうか判断する。
【0059】
取得不能面積が最小となる場合、すなわち、原反フィルム101の面積と抽出領域105の合計面積の差が最も小さくなる場合には(ステップS1-17でYes)、当該分割位置モデルを位置提案モデルとして提案する(ステップS1-18)。
【0060】
一方、ステップS1-6において、第1報酬の合計が第1閾値P1未満の場合には(ステップS1-6でNo)、当該抽出位置モデルを位置提案モデルから除外する(ステップS1-19)。
【0061】
ステップS1-10において、第2報酬の合計が第2閾値P2未満の場合には(ステップS1-10でNo)、ステップS1-19に移行し、当該抽出位置モデルを位置提案モデルから除外する。
【0062】
ステップS1-12において、抽出領域105を分割できない場合には(ステップS1-12でNo)、ステップS1-18に移行し、当該抽出位置モデルを位置提案モデルとして提案する。
【0063】
ステップS1-15において、分割位置モデルが全分割位置モデルの中で第3報酬の合計が最大でない場合には(ステップS1-15でNo)、ステップS1-19に移行し、当該分割位置モデルを位置提案モデルから除外する。
【0064】
ステップS1-16において、第3報酬の合計が同点となる他の分割位置モデルがない場合は(ステップS1-16でNo)、ステップS1-18に移行し、当該分割位置モデルを位置提案モデルとして提案する。
【0065】
ステップS1-17において、取得不能面積が最小とならない場合、すなわち、原反フィルム101の面積と抽出領域105の合計面積の差が最も小さくならない場合には(ステップS1-17でNo)、ステップS1-19に移行し、分割位置モデルを位置提案モデルから除外する。
【0066】
(切断工程)
切断工程では、作業者が提案工程で提案された位置提案モデルを確認し、問題なければ位置提案モデルを切断部3に出力し、スリット部30が原反フィルム101を切断する。すなわち、位置提案モデルに基づいて欠陥位置を避けるように原反フィルム101を切断し、製品フィルム102を抽出する。
【0067】
本実施形態の加工システム1によれば、抽出位置モデルの中から第1候補モデルを抽出して絞り、第1候補モデルを用いて位置提案モデルを作成するので、余分な計算を省略することができ、提案位置モデルを作成しやすく、熟練者でなくとも高収率で原反フィルム101から製品フィルム102を抽出できる。
【0068】
本実施形態の加工システム1によれば、第1候補モデルの中から第2候補モデルを抽出して絞り、第2候補モデルを用いて位置提案モデルを作成するので、さらに余分な計算を省略することができ、提案位置モデルを作成しやすい。
【0069】
本実施形態の加工システム1によれば、第3報酬の合計が最大となる分割位置に基づいて位置提案モデルを作成するので、従来に比べて収率が高くできる。
【0070】
本実施形態の加工システム1によれば、収率優先モードの場合と長さ優先モードの場合のそれぞれにおいて、最適な位置提案モデルを作成できる。
【0071】
上記した実施形態では、提案工程において、抽出位置モデルを第1候補モデル、第2候補モデル、分割位置モデルの順に絞っていき、位置提案モデルを提案していたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2候補モデルや分割位置モデルを抽出せずに、第1候補モデルから位置提案モデルを提案してもよいし、分割位置モデルを抽出せずに、第2候補モデルから位置提案モデルを提案してもよい。
また、第1候補モデルを第2候補モデルで絞らずに、分割位置モデルで絞ってもよい。
【0072】
上記した実施形態では、モデル設計部2は、無線又は有線によって直接切断部3に接続されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。モデル設計部2は、イントラネットやインターネット等のネットワークを介して間接的に切断部3に接続されていてもよい。
【0073】
上記した実施形態では、欠陥位置に対する抽出領域105の距離(ステップS1-3)、原反フィルム101のエッジ位置に対する抽出領域105(ステップS1-4)、抽出領域105の数(ステップS1-5)をこの順に評価したが、本発明はこれに限定されるものでない。これらの順番は、入れ替わっていてもよいし、同時に評価してもよい。
【0074】
上記した実施形態では、欠陥位置又は他の抽出領域105に対する抽出領域105の距離(ステップS1-8)、幅方向の中央位置CLに対する抽出領域105の相対位置(ステップS1-9)をこの順に評価したが、本発明はこれに限定されるものでない。これらの順番は、入れ替わっていてもよいし、同時に評価してもよい。
【0075】
上記した実施形態では、第1候補モデルの抽出と、第2候補モデルの抽出を別のステップで行っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1候補モデルの抽出と、第2候補モデルの抽出を同時に行ってもよい。すなわち、ステップS1-2で作成された抽出位置モデルから第1候補モデルの選別を経ずに第2候補モデルを選別してもよい。
【0076】
上記した実施形態では、データ蓄積部13がモデル設計部2に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。データ蓄積部13は、サーバーコンピュータ等の外部機器に設けられていてもよい。
【0077】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【実施例0078】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
上記した第1実施形態に係る加工システムにおいて収率優先モードに設定し、長さ3383m幅1050mmのフィルムに対して位置提案モデルを作成し、これを実施例1とした。
なお、第3報酬は、0m以上100m未満の場合に-20点、100m以上600m未満の場合に-5点、600m以上1050m未満の場合に3点、1050m以上1500m以下の場合に7点、1501m以上の場合に-7点とした。
【0080】
(実施例2)
実施例1において長さ優先モードに設定し、長さ2674m幅1050mmmのフィルムに対して位置提案モデルを作成し、これ以外を同様にして実施例2とした。
なお、第3報酬は、0m以上100m未満の場合に-7点、100m以上600m未満の場合に-5点、600m以上1050m未満の場合に3点、1050m以上1500m以下の場合に20点、1501m以上の場合に-7点とした。
【0081】
実施例1,2において想定収率を算出すると、実施例1の想定収率は、98.7%となり、実施例2の想定収率は97.4%となり、いずれも想定収率が95%以上の高い収率となった。