(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004162
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】甘味組成物キットの製造方法、甘味組成物の製造方法及び食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240109BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240109BHJP
【FI】
A23L27/00 E
A23L5/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103671
(22)【出願日】2022-06-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】522259223
【氏名又は名称】有限会社食品衛生デザインオフィス
(74)【代理人】
【識別番号】100210147
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100174171
【弁理士】
【氏名又は名称】原 慶多
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B035LC05
4B035LE02
4B035LG32
4B035LG34
4B035LG48
4B035LG51
4B035LP01
4B035LP03
4B035LP21
4B035LP42
4B035LP44
4B047LB07
4B047LB09
4B047LG38
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4B047LG41
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4B047LG62
4B047LP02
4B047LP05
4B047LP18
4B047LP19
4B047LP20
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、天然素材を用いており、かつ、食品を日持ちさせることを可能にする甘味組成物キットの製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の甘味組成物キットの製造方法は、芋類発酵組成物の製造工程と、米発酵組成物の製造工程とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芋類発酵組成物と米発酵組成物とを備える甘味組成物キットの製造方法であって、
裁断された芋類を蒸した後、押しつぶす工程と、
押しつぶされた前記芋類、前記芋類100質量部に対し、0.05~0.15質量部の糖化酵素、25~35質量部の水、及び、30~40質量部の米麹を第1気密容器に封入する工程と、
前記第1気密容器を55~60℃で16時間以上加熱し、内容物を糖化する工程と、
前記糖化された内容物をペースト状にし、第2気密容器に入れた後、気密状態において95℃以上で30分以上加熱殺菌する工程と、
を順に行う、芋類発酵組成物の製造工程と、
洗米と洗米質量の1.4~1.6倍の質量の水を混合して炊飯を行う工程と、
炊飯米を放冷した後、前記炊飯米、前記炊飯米100質量部に対し、0.05~0.15質量部の糖化酵素とを混合し攪拌する工程と、
前記攪拌後に得られた炊飯粥、及び、前記炊飯粥100質量部に対し、15~20質量部の米麹を第3気密容器に封入する工程と、
前記第3気密容器を55~60℃で16時間以上加熱し、内容物を糖化する工程と、
前記糖化された内容物をペースト状にし、第4気密容器に入れた後、気密状態において95℃以上で30分以上加熱殺菌する工程と、
を順に行う、米発酵組成物の製造工程と、
を含む甘味組成物キットの製造方法。
【請求項2】
前記糖化酵素が、α-アミラーゼとグルコアミラーゼを含む請求項1に記載の甘味組成物キットの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法によって得られた芋類発酵組成物と米発酵組成物を混合する工程を含む、甘味組成物の製造方法。
【請求項4】
柑橘系果汁及び/又は酢を混合する工程をさらに含む請求項3に記載の甘味組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に係る製造方法によって製造された甘味組成物キットを用いた食品の製造方法であって、
食品素材、前記食品素材100質量部に対し、10~40質量部の芋類発酵組成物、30~70質量部の米発酵組成物、及び、柑橘系果汁1~3質量部を混合する第一工程と、
前記第一工程の後、95℃以上で30分以上加熱殺菌する第二工程と、
を含む食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘味組成物キットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、健康志向の高まりから、砂糖や人工甘味組成物の使用を避けるという考え方が広まっている。その結果、天然素材を使用した甘味組成物がいくつか提案されている。
【0003】
特許文献1には、糊化した発芽玄米を麹等で糖化させて甘味組成物を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に、大量生産に適した開放系のタンクで糖化工程を行う、特許文献1に例示される製造方法で製造される甘味組成物の場合、製造工程中の二次汚染の危険性があり、日持ちがしにくいという問題があった。このため保存料、pH調整剤等の食品添加物を用いる必要があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、天然素材を用いており、かつ、食品を日持ちさせることを可能にする甘味組成物キットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次の発明を提供する。
〔1〕芋類発酵組成物と米発酵組成物とを備える甘味組成物キットの製造方法であって、
裁断された芋類を蒸した後、押しつぶす工程と、
押しつぶされた前記芋類、前記芋類100質量部に対し、0.05~0.15質量部の糖化酵素、25~35質量部の水、及び、30~40質量部の米麹を第1気密容器に封入する工程と、
前記第1気密容器を55~60℃で16時間以上加熱し、内容物を糖化する工程と、
前記糖化された内容物をペースト状にし、第2気密容器に入れた後、気密状態において95℃以上で30分以上加熱殺菌する工程と、
を順に行う、芋類発酵組成物の製造工程と、
洗米と洗米質量の1.4~1.6倍の質量の水を混合して炊飯を行う工程と、
炊飯米を放冷した後、前記炊飯米、前記炊飯米100質量部に対し、0.05~0.15質量部の糖化酵素とを混合し攪拌する工程と、
前記攪拌後に得られた炊飯粥、及び、前記炊飯粥100質量部に対し、15~20質量部の米麹を第3気密容器に封入する工程と、
前記第3気密容器を55~60℃で16時間以上加熱し、内容物を糖化する工程と、
前記糖化された内容物をペースト状にし、第4気密容器に入れた後、気密状態において95℃以上で30分以上加熱殺菌する工程と、
を順に行う、米発酵組成物の製造工程と、
を含む甘味組成物キットの製造方法。
〔2〕前記糖化酵素が、α-アミラーゼとグルコアミラーゼを含む〔1〕に記載の甘味組成物キットの製造方法。
〔3〕〔1〕に記載の製造方法によって得られた芋類発酵組成物と米発酵組成物を混合する工程を含む、甘味組成物の製造方法。
〔4〕柑橘系果汁及び/又は酢を混合する工程をさらに含む〔3〕に記載の甘味組成物の製造方法。
〔5〕〔1〕に係る製造方法によって製造された甘味組成物キットを用いた食品の製造方法であって、
食品素材、前記食品素材100質量部に対し、10~40質量部の芋類発酵組成物、30~70質量部の米発酵組成物、及び、柑橘系果汁1~3質量部を混合する第一工程と、
前記第一工程の後、95℃以上で30分以上加熱殺菌する第二工程と、
を含む食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、天然素材を用いており、かつ、食品を日持ちさせることを可能にする甘味組成物キットの製造方法を提供することができる。また気密容器の容量を調整することで、少量多品種の甘味組成物キットを同時に製造することができる。また本発明によれば、柑橘系果汁及び/又は酢を混合することで、甘味の調整を行うことができると共に、日持ちを左右するpH値を小さくすることができる。また本発明によれば、製造工程中における二次汚染の危険性がなく、より効率的に甘味を付与した食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して説明する。なお、以下の実施の形態において示す構成は一例であり、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
【0010】
本発明に係る甘味組成物キットの製造方法は、芋類発酵組成物の製造工程と米発酵組成物の製造工程を含む。
【0011】
本発明において、芋類発酵組成物とは、麹を用いて芋類を発酵させた組成物をいう。また、米発酵組成物とは、麹を用いて米を発酵させた組成物をいう。そのような麹としては、例えば、米麹が挙げられる。
【0012】
芋類としては、デンプンの含有量が多いもの、例えば、ヒルガオ科サツマイモ属のサツマイモ、トウダイグサ科イモノキ属のキャッサバ、ナス科ナス属のジャガイモ、キク科ヒマワリ属のキクイモ、サトイモ科サトイモ属のサトイモ、サトイモ科コンニャク属のコンニャクイモ、ヤマノイモ科ヤマノイモ属のナガイモ、ヤマノイモ、大薯(ダイジョ)、自然薯等が挙げられる。これらのうち、甘味組成物に粘性を付与できる観点から、ヤマノイモ科ヤマノイモ属の芋類が好ましく、強い粘性が特徴の兵庫県丹波篠山市産のヤマノイモが、より好ましい。
【0013】
糖化酵素としては、例えば、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ等が挙げられる。これらのうち、糖化効果の観点から、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼが好ましく、α-アミラーゼとグルコアミラーゼを併用することがより好ましい。
【0014】
米麹としては、例えば、うるち米麹、酒米麹、もち米麹等が挙げられ、これらのうち、うるち米麹、酒米麹が好ましい。米麹の麹菌としては、例えば、黄麹菌、黒麹菌、白麹菌等が挙げられ、これらのうち、糖化効果の観点から、黄麹菌が好ましい。
【0015】
本発明に用いられる気密容器の形体としては、第1気密容器、第2気密容器、第3気密容器、及び、第4気密容器ともに、特に限定されないが、例えば、袋型気密容器、箱型気密容器等が挙げられる。これらのうち、気密度の高さの観点から、袋型気密容器が好ましい。気密容器の材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの混合樹脂等が挙げられる。これらのうち、取り扱いの容易性の観点から、ポリエチレンとポリプロピレンの混合樹脂が好ましい。第1気密容器、第2気密容器、第3気密容器、及び、第4気密容器の形体、材質、容量は、同じであってもよいし、異なっていてもよく、内容物等によって適宜選択することができる。なお本明細書において「気密容器」とは、通常の取扱い、運搬又は保存状態において、固形または液状の異物が混入せず、内容物の損失、風解、潮解又は蒸発を防ぐことができる容器のことをいい、通常の取り扱い、運搬又は保存状態において、気体が侵入しない容器であるガラス製等の密封容器も用いることができる。
【0016】
本発明の米発酵組成物の製造工程に用いられる米としては、例えば、酒米、うるち米、もち米、玄米等が挙げられる。これらのうち、良質の米発酵組成物を得る観点から、酒米、もち米が好ましい。なかでも、酒米は、米の中心部に心白と呼ばれる白く不透明な部分が発現する率が高く、心白部分のデンプン構造は疎であるため麹菌の菌糸が中心まで繁殖しやすいという特徴がある。また、糠臭を抑えて用途の広い組成物を得る観点から、精白度が40%以上(精米歩合60%以下)の米を用いることが好ましい。なお本明細書において、「酒米」とは、日本酒の原料として使用される米のことをいう。
【0017】
芋類発酵組成物の製造工程
本発明に係る芋類発酵組成物の製造工程の一実施態様に関し、芋類としてヤマノイモを用いた例について説明する。
【0018】
(押しつぶし工程)
ヤマノイモの水洗いを行った後、皮をむく。皮むき後のヤマノイモを水浸漬させ、裁断する。水浸漬の時間については、通常の調理等と同様、5分以上行うことが好ましい。裁断については、ヤマノイモ全体を蒸す観点から、例えば、最大幅が約2~3センチとなるよう乱切りすることが考えられる。裁断されたヤマノイモは、通常の方法で約10~20分蒸すが、この時間に限定されない。蒸気で加熱する目的は、ヤマノイモに含まれるデンプンを糊化(α化)させ、麹菌の生成する酵素の作用を受けやすくするためである。蒸し終わったヤマノイモは、押しつぶしを行う。押しつぶしを行ったヤマノイモは、温度を下げるために放冷を行ってもよい。放冷の方法としては、ファンで冷やす方法等があるが、これに限定されない。
【0019】
(封入工程)
押しつぶしを行ったヤマノイモ、ヤマノイモ100質量部に対し、0.05~0.15質量部の糖化酵素、25~35質量部の水、及び、30~40質量部の米麹を第1気密容器に封入する。例えば、ヤマノイモ500g、糖化酵素0.5g、水150g、及び、米麹175gを第1気密容器に封入する。
【0020】
(糖化工程)
封入済みの第1気密容器を55~60℃の温度下で、16時間以上加熱する。加熱方法としては、例えば、水を満たしたウォーターバスに浸けて行うことが考えられるが、これに限定されない。糖化後は、内容物を常温付近まで冷ましておくことが好ましい。
【0021】
(加熱殺菌工程)
糖化された内容物を第1気密容器から取り出し、ペースト状にした後、第2気密容器に封入し、気密状態において、95℃以上の温度下で30分以上加熱殺菌して、芋類発酵組成物を得る。
【0022】
上記の工程で製造することにより、好気性菌である麹菌であるにも関わらず、気密状態でも十分な発酵が行われ、Brix値が30以上の糖度の芋類発酵組成物を得ることができる。
【0023】
米発酵組成物の製造工程
本発明に係る米発酵組成物の製造工程の一実施態様について説明する。
【0024】
(炊飯工程)
洗米と洗米質量の1.4~1.6倍の質量の水を混合し、炊飯を行う。炊飯方法としては、通常の方法を用いることができ、特に限定されない。炊飯の目的は、米に含まれるデンプンを糊化(α化)させ、麹菌の生成する酵素の作用を受けやすくするためである。
【0025】
(混合攪拌工程)
炊飯工程で得られた炊飯米を放冷する。放冷時間は、1時間以上であることが好ましい。放冷の方法としては、ファンで冷やす方法等があるが、これに限定されない。放冷後、炊飯米、炊飯米100質量部に対し、0.05~0.15質量部の糖化酵素を混合し攪拌し、炊飯粥を得る。この工程を経ることにより、糖度が高い米発酵組成物を得ることが可能となる。
【0026】
(封入工程)
混合攪拌工程で得られた炊飯粥、炊飯粥100質量部に対し、15~20質量部の米麹を第3気密容器に封入する。例えば、炊飯粥850g、及び、米麹150gを第3気密容器に封入する。
【0027】
(糖化工程)
封入済みの第3気密容器を55~60℃の温度下で、16時間以上加熱する。加熱方法としては、例えば、水を満たしたウォーターバスに浸けて行うことが考えられるが、これに限定されない。
【0028】
(加熱殺菌工程)
糖化された内容物を第3気密容器から取り出し、ペースト状にした後、第4の気密容器に封入し、気密状態において、95℃以上の温度下で30分以上加熱殺菌して、米発酵組成物を得る。
【0029】
上記の工程で製造することにより、好気性菌である麹菌であるにも関わらず、気密状態でも十分な発酵が行われ、Brix値が40以上の糖度の米発酵組成物を得ることができる。上記工程で得られた米発酵組成物の糖度は、加熱濃縮することにより調整することができ、例えばBrix値を65以上まで高めることができる。加熱濃縮の方法としては、通常の方法を用いることができ、特に限定されない。
【0030】
上記工程により得られた芋類発酵組成物と米発酵組成物を含む甘味組成物キットを使用することにより、製造工程中における二次汚染の危険性がなく、食品添加物を使用することがなく、かつ、常温保存が可能で日持ちがする甘味を有する食品を製造することができる。
【0031】
甘味組成物キットに代えて、芋類発酵組成物と米発酵組成物を混合した甘味組成物を気密容器に封入してもよい。繰り返し同じ食品を製造する場合であって、予め混合しておくことによる品質の変化がない食品の場合、製造工程が少なくなり、製造工程中における二次汚染の危険性がなく、より効率的に食品を製造することが可能となる。
【0032】
芋類発酵組成物と米発酵組成物に加え、柑橘系果汁及び/又は酢を混合することにより、甘味の調整を行うことができると共に、日持ちを左右するpH値を小さくすることが可能となる。そのような柑橘系果汁としては、例えば、レモン果汁、ゆず果汁等が挙げられる。酢としては、例えば、果実酢、穀物酢等が挙げられる。
【0033】
本発明に係る甘味組成物キット及び甘味組成物は、様々な食品に使用することができる。そのような食品としては、例えば、フルーツスプレッド、フルーツバター、菓子、スープ、栄養補助食品、衣付き食品を製造するためのバッター液、パン、麺類、お好み焼き、たこ焼き、その他の加工食品等が挙げられる。フルーツスプレッドとしては、特に限定されないが、例えば、いちごスプレッド、ぶどうスプレッド、いちじくスプレッド等が挙げられる。フルーツバターとしては、例えば、いちごバター等が挙げられる。菓子としては、例えば、ゼリー、粘性を有するアイスクリーム、和菓子(特に、どら焼き、回転焼き等)、洋菓子、蒸しパン等が挙げられる。また、卵やゼラチンに対する食材アレルギーを持つ人向けの代替素材として、各種加工食品を製造することも可能となる。スープとしては、例えば、かぼちゃスープ、にんじんスープ、トマトスープ等が挙げられる。栄養補助食品としては、介護食、サプリメント、病院食等が挙げられ、砂糖や食品添加物を使用せず、常温保存可能で日持ちがして安心して摂取できる点で、非常に有効である。本発明に係る甘味組成物キット及び甘味組成物は、対象とする食品に甘味を付与するだけでなく、食感改良(例えば、コシ、つるつるとした口当たり、のどごし、もちもち感等)、保水及び硬化防止、栄養強化等種々の付加価値を与えることができる。
【0034】
食品の調製例
(いちごスプレッドの製造)
実施例1
芋類発酵組成物としてヤマノイモ発酵組成物650g、米発酵組成物1,650g、こんにゃく粉10g、レモン果汁30g、果実酢20gを鍋に投入後、攪拌しながら加熱する。混合物全体の粘度が低くなった後、食品素材としていちごピューレ3,000gを加え、Brix値が33以上となるまで炊き上げた後(第一工程)、気密容器に充填し、95℃以上で30分以上加熱殺菌して(第二工程)、いちごスプレッドを得た。
【0035】
比較例1
上記調製例のヤマノイモ発酵組成物及び米発酵組成物は、気密容器を使用せずに鍋を用いて製造したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、いちごスプレッドを得た。
【0036】
実施例1、及び比較例1のいちごスプレッドについて、(1)水分活性値、(2)pH値、(3)Brix値、(4)一般生菌数、及び、(5)耐熱芽胞菌数を評価した。
【0037】
(1)水分活性値の測定
実施例1、及び比較例1のいちごスプレッドの水分活性値は、水分活性測定装置(型番:SP-W、アズワン株式会社製)を用い、製造直後の各試料を25℃に調温して測定した。
【0038】
(2)pH値の測定
実施例1、及び比較例1のいちごスプレッドのpH値は、卓上型pHメーター(型番:F-51、株式会社堀場製作所製)を用い、製造直後の各試料を25℃に調温して測定した。
【0039】
(3)Brix値の測定
実施例1、及び比較例1のいちごスプレッドのBrix値は、屈折計(型番:RA-600、京都電子工業株式会社製)を用い、製造直後の各試料を25℃に調温して測定した。
【0040】
(4)一般生菌数の測定
実施例1、及び比較例1のいちごスプレッドについて、常温保管して製造から113日目の各試料の一般生菌数を、食品衛生検査指針(厚生労働省)に準拠する試験方法により測定した。
【0041】
(5)耐熱性芽胞菌数の測定
実施例1、及び比較例1のいちごスプレッドについて、常温保管して製造から113日目の各試料の耐熱性芽胞菌数を、食品衛生検査指針(厚生労働省)に準拠する試験方法により測定した。
【0042】
試験結果
実施例1のいちごスプレッドの水分活性値は0.90、pH値は4.0、Brix値は33、一般生菌数は300以下/g、耐熱性芽胞菌は検出されなかった。一方、比較例1のいちごスプレッドの水分活性値は0.89、pH値は3.9、Brix値は34、一般生菌数は300以上/g、耐熱性芽胞菌数は1,000以上/gであった。
【0043】
考察
食品期限表示の設定のためのガイドライン(厚生労働省・農林水産省)によれば、食品の賞味期限は、食品の特性に応じ、設定された期限に対して1未満の係数(安全係数という)をかけて、客観的な項目(例えば、一般生菌数、耐熱性芽胞菌数等の微生物試験の結果)において得られた期限よりも短い期間を設定することが基本となる。実施例1のいちごスプレッドの場合、常温保管で113日経過後も衛生上の危害がないことが確認された。安全係数を0.8とした場合、常温保存で90日の賞味期限を設定できる。一方、比較例1のいちごスプレッドの場合、常温保管で113日経過後は、微生物による汚染が確認され、常温保存で90日の賞味期限を担保できないことが判明した。以上の結果より、本発明の製造方法により得られる甘味組成物キットは、製造工程中の二次汚染の危険性を最小化することができ、食品を日持ちさせることを可能にすることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の製造方法で得られる甘味組成物キットは、天然素材を用いており、かつ、食品を日持ちさせることを可能にし、様々な食品に使用することができる。