(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041652
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】口腔周囲筋の機能を改善するためのトレーニング方法
(51)【国際特許分類】
A63B 23/03 20060101AFI20240319BHJP
A63B 71/08 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A63B23/03
A63B71/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146576
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】505340722
【氏名又は名称】鈴木 芳和
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジョン ファレル
(57)【要約】
【課題】睡眠時の呼吸障害、正常ではない歯並び、顎関節症などの原因となりうる口腔周囲筋の機能を改善するためのトレーニング方法を提供する。
【解決手段】マウスピースを用いて口腔周囲筋の機能を改善するためのトレーニング方法であって、前記マウスピースは、平面視で一方に膨出するアーチ形状を有する本体部と、前記本体部から前記一方に延出するとともに、その先端に開口が形成された連通孔を有する口唇チューブ部と、前記本体部から他方に延出するとともに、その先端に開口が形成された舌チューブ部と、平面視で前記本体部の両端に形成され、前記本体部を厚み方向に貫通する一対の貫通孔を有する顎スプリング部と、を備える。当該トレーニング方法は、前記マウスピースを口腔内に装着して行う、鼻呼吸移行ステップ、口唇強化ステップ、舌強化ステップ、及び顎関節強化ステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピースを用いて口腔周囲筋の機能を改善するためのトレーニング方法であって、
前記マウスピースは、
平面視で一方に膨出するアーチ形状を有する本体部と、
前記本体部から前記一方に延出するとともに、その先端に開口が形成された連通孔を有する口唇チューブ部と、
前記本体部から他方に延出するとともに、その先端に開口が形成された舌チューブ部と、
平面視で前記本体部の両端に形成され、前記本体部を厚み方向に貫通する一対の貫通孔を有する顎スプリング部と、
を備え、
前記マウスピースを口腔内に装着して行う、鼻呼吸移行ステップ、口唇強化ステップ、舌強化ステップ、及び顎関節強化ステップを含み、
前記鼻呼吸移行ステップは、上口唇と下口唇とによって前記口唇チューブ部の圧縮及び拡張を繰り返すことにより鼻呼吸へ移行することを含み、
前記口唇強化ステップは、上口唇と下口唇とによって前記口唇チューブ部を圧縮した状態を維持することを含み、
前記舌強化ステップは、舌によって前記舌チューブ部を口蓋に押し付けた状態を維持することを含み、
前記顎関節強化ステップは、下顎によって前記顎スプリング部を圧縮した状態を維持することを含む、
トレーニング方法。
【請求項2】
前記口唇強化ステップは、前記口唇チューブ部を圧縮した状態で鼻呼吸することをさらに含む、
請求項1に記載のトレーニング方法。
【請求項3】
前記舌強化ステップは、前記舌チューブ部を口蓋に押し付けた状態で鼻呼吸することをさらに含む、
請求項1に記載のトレーニング方法。
【請求項4】
前記顎関節強化ステップは、前記顎スプリング部を圧縮した状態で鼻呼吸することをさらに含む、
請求項1に記載のトレーニング方法。
【請求項5】
前記鼻呼吸移行ステップ、前記口唇強化ステップ、前記舌強化ステップ、及び前記顎関節強化ステップのそれぞれを、顎を上げた姿勢で行う、
請求項1に記載のトレーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口唇、舌、及び顎などの口腔周囲筋の機能を改善するためのトレーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)に対に対する社会的な関心が高まっている。無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)は、睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数を示し、この指数に応じてSASの重症度が分類される。最近の研究によると、口唇、舌、及び顎などの口腔周囲筋の機能を改善することにより、AHIが、成人で約50%、小児で約60%低下することが分かっている。
【0003】
また、従来、子供(3~15歳)の正常ではない歯並びの原因は、遺伝的要因にあるといわれている。遺伝的要因の例は、歯のサイズや顎のサイズである。しかし、最近の研究によると、正常ではない歯並びの原因は、遺伝的要因だけではなく、環境的要因にもあることが分かっている。環境的要因の例は、口唇、舌、及び顎などの口腔周囲筋の機能不全である。口腔周囲筋の機能不全は、上下の顎の発達不足を引き起こし、その結果、歯並びに歪みが生じたり、顎関節や咀嚼筋に痛みが生じたりすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、睡眠時の呼吸障害、正常ではない歯並び、顎関節症などの原因となりうる口腔周囲筋の機能を改善するためのトレーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、マウスピースを用いて口腔周囲筋の機能を改善するためのトレーニング方法であって、前記マウスピースは、平面視で一方に膨出するアーチ形状を有する本体部と、前記本体部から前記一方に延出するとともに、その先端に開口が形成された連通孔を有する口唇チューブ部と、前記本体部から他方に延出するとともに、その先端に開口が形成された舌チューブ部と、平面視で前記本体部の両端に形成され、前記本体部を厚み方向に貫通する一対の貫通孔を有する顎スプリング部と、を備え、前記マウスピースを口腔内に装着して行う、鼻呼吸移行ステップ、口唇強化ステップ、舌強化ステップ、及び顎関節強化ステップを含み、前記鼻呼吸移行ステップは、上口唇と下口唇とによって前記口唇チューブ部の圧縮及び拡張を繰り返すことにより鼻呼吸へ移行することを含み、前記口唇強化ステップは、上口唇と下口唇とによって前記口唇チューブ部を圧縮した状態を維持することを含み、前記舌強化ステップは、舌によって前記舌チューブ部を口蓋に押し付けた状態を維持することを含み、前記顎関節強化ステップは、下顎によって前記顎スプリング部を圧縮した状態を維持することを含む、トレーニング方法を提供する(発明1)。
【0006】
鼻呼吸移行ステップの実施によって、口呼吸から鼻呼吸への移行が促される。口唇強化ステップの実施によって、口唇の筋肉を強化することができるので、口唇の閉鎖を確立することができる。舌強化ステップの実施によって、舌の筋肉を強化することができるので、正しい舌の位置を確立することができる。顎関節強化ステップの実施によって、顎関節機能及び閉口を助ける咀嚼筋を強化することができる。このように、かかる発明(発明1)によれば、口唇、舌、及び顎などの口腔周囲筋の機能を改善することができる。
【0007】
上記発明(発明1)において、前記口唇強化ステップは、前記口唇チューブ部を圧縮した状態で鼻呼吸することをさらに含んでいてもよい(発明2)。
【0008】
かかる発明(発明2)によれば、鼻呼吸への移行がより促される。
【0009】
上記発明(発明1,2)において、前記舌強化ステップは、前記舌チューブ部を口蓋に押し付けた状態で鼻呼吸することをさらに含んでいてもよい(発明3)。
【0010】
かかる発明(発明3)によれば、鼻呼吸への移行がより促される。
【0011】
上記発明(発明1-3)において、前記顎関節強化ステップは、前記顎スプリング部を圧縮した状態で鼻呼吸することをさらに含んでいてもよい(発明4)。
【0012】
かかる発明(発明4)によれば、鼻呼吸への移行がより促される。
【0013】
上記発明(発明1-4)は、前記鼻呼吸移行ステップ、前記口唇強化ステップ、前記舌強化ステップ、及び前記顎関節強化ステップのそれぞれを、顎を上げた姿勢で行ってもよい(発明5)。
【0014】
かかる発明(発明5)によれば、舌骨上筋群及び咽頭筋群などの気道周囲の筋肉を強化することができるので、鼻呼吸への移行がより促される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、睡眠時の呼吸障害、正常ではない歯並び、顎関節症などの原因となりうる口唇、舌、及び顎などの口腔周囲筋の機能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るトレーニング方法で用いられるマウスピースを示す概略図であって、(a)は正面斜視図、(b)は背面斜視図である。
【
図2】
図1のマウスピースを用いたトレーニング方法の一例を示すフロー図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るトレーニング方法で用いられるマウスピースの代替マウスピースを示す概略斜視図である。
【
図4】代替マウスピースを用いたトレーニング方法の一例を示すフロー図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るトレーニング方法で用いられる追加のマウスピースを付属部材とともに示す概略図であって、(a)は追加のマウスピースの斜視図、(b)は付属部材の斜視図である。
【
図6】付属部材が取り付けられた追加のマウスピースを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は、以下に説明する実施形態にのみ限定されるものではなく、記載された実施形態はあくまでも本発明の技術的特徴を説明するための例示にすぎない。また、各図面に示す形状や寸法はあくまでも本発明の内容の理解を容易にするために示したものであり、実際の形状や寸法を正しく反映したものではない。
【0018】
[マウスピース]
図1は、本発明の実施形態に係るトレーニング方法で用いられるマウスピース10を示す概略図であって、(a)は正面斜視図、(b)は背面斜視図である。マウスピース10は、本体部1、口唇チューブ部2、舌チューブ部3、及び顎スプリング部4を備える。当該トレーニング方法は、マウスピース10を口腔内に装着して行う。
【0019】
本体部1は、平面視で一方に膨出するアーチ形状を有する。本体部1は、膨出する方向とは逆の方向において、アーチ形状に沿って設けられた突出部11を有する。突出部11は、本体部1のアーチ形状の内側に向かって張り出すように設けられている。装着した際、本体部1の突出部11は、上側の歯列と下側の歯列との間に配置される
【0020】
口唇チューブ部2は、本体部1から膨出する方向に延出するように設けられている。口唇チューブ部2は、その先端に開口22が形成された連通孔22を有する。連通孔22は、口腔内と口腔外とを連通するように設けられている。連通孔22によって、口呼吸が確保される。装着した際、口唇チューブ部2は、上口唇と下口唇との間に配置される。
【0021】
舌チューブ部3は、本体部1から膨出する方向とは逆の方向に延出するように設けられている。舌チューブ部3は、その先端に開口31が形成されている。装着した際、舌チューブ部3は、舌と口蓋との間に配置される。
【0022】
顎スプリング部4は、平面視で本体部1の両端に形成されている。顎スプリング部4は、本体部1を厚み方向に貫通する一対の貫通孔41を有する。厚み方向とは、本体部1のアーチ形状の内側から外側(又は外側から内側)に向かう方向を意味する。貫通孔41は、本体部1の突出部11と同じ高さに設けられている。装着した際、顎スプリング部4は、上顎と下顎との間に配置される。
【0023】
マウスピース10は、弾性を有する樹脂材料によって形成されている。弾性を有する樹脂材料は、例えば、医療用シリコンである。
【0024】
[マウスピースを用いたトレーニング方法]
当該トレーニング方法は、鼻呼吸移行ステップ、口唇強化ステップ、舌強化ステップ、及び顎関節強化ステップを含む。
【0025】
(鼻呼吸移行ステップ)
鼻呼吸移行ステップは、上口唇と下口唇とによって口唇チューブ部2の圧縮及び拡張を繰り返すことにより鼻呼吸へ移行することを含む。口唇チューブ部2を圧縮すると連通孔22が閉鎖されるので、口呼吸が難しくなり、自然と鼻呼吸への移行が促される。したがって、口唇チューブ部2の圧縮及び拡張を繰り返すことにより、口呼吸から鼻呼吸への移行が促される。鼻呼吸ができるようになったら、別のステップに進んでもよい。
【0026】
(口唇強化ステップ)
口唇強化ステップは、上口唇と下口唇とによって口唇チューブ部2を圧縮した状態を維持することを含む。口唇チューブ部2を圧縮すると連通孔22が閉鎖される。この状態を維持することで、口唇の筋肉を強化することができるので、口唇の閉鎖を確立することができる。口唇チューブ部2を所定の時間(例えば、1分間)圧縮し続けることができるようになったら、別のステップに進んでもよい。
【0027】
口唇強化ステップは、口唇チューブ部2を圧縮した状態で鼻呼吸することをさらに含んでいてもよい。複数回(例えば、3回)呼吸する間、上口唇と下口唇とによって口唇チューブ部2を圧縮し、かつ、口唇チューブ部2を圧縮した状態を維持して鼻呼吸を行ってもよい。これにより、鼻呼吸への移行がより促される。
【0028】
(舌強化ステップ)
舌強化ステップは、舌によって舌チューブ部3を口蓋に押し付けた状態を維持することを含む。舌を口蓋に向かって持ち上げて、舌チューブ部3を口蓋に押し付けることで、舌の筋肉を強化することができるので、正しい舌の位置を確立することができる。舌チューブ部3を所定の時間(例えば、1分間)押し続けることができるようになったら、別のステップに進んでもよい。
【0029】
舌強化ステップは、舌チューブ部3を口蓋に押し付けた状態で鼻呼吸することをさらに含んでいてもよい。複数回(例えば、3回)呼吸する間、上口唇と下口唇とによって口唇チューブ部2を圧縮し、かつ、舌チューブ部3を口蓋に押し付けた状態を維持して鼻呼吸を行ってもよい。これにより、鼻呼吸への移行がより促される。
【0030】
(顎関節強化ステップ)
顎関節強化ステップは、下顎によって顎スプリング部4を圧縮した状態を維持することを含む。顎スプリング部4を圧縮すると貫通孔41が縮小される。この状態を維持することで、顎関節機能及び閉口を助ける咀嚼筋を強化することができる。顎スプリング部4を所定の時間(例えば、1分間)圧縮し続けることができるようになったら、別のステップに進んでもよい。
【0031】
顎関節強化ステップは、顎スプリング部4を圧縮した状態で鼻呼吸することをさらに含んでいてもよい。複数回(例えば、3回)呼吸する間、上口唇と下口唇とによって口唇チューブ部2を圧縮し、かつ、下顎によって顎スプリング部4を圧縮した状態を維持して鼻呼吸を行ってもよい。これにより、鼻呼吸への移行がより促される。
【0032】
当該トレーニング方法によれば、口唇、舌、及び顎などの口腔周囲筋の機能を改善することができる。
【0033】
鼻呼吸移行ステップ、口唇強化ステップ、舌強化ステップ、及び顎関節強化ステップのそれぞれを、顎を上げた姿勢で行ってもよい。顎を上げた姿勢で各ステップを行うことにより、舌骨上筋群及び咽頭筋群などの気道周囲の筋肉を強化することができるので、鼻呼吸への移行がより促される。顎の角度は、頭頸部及び顎に違和感がない程度の角度(例えば、目線斜め上45度程度)で行うことが好ましい。
【0034】
上述した各ステップを行う順序及び回数は特に限定されない。例えば、1分間の舌強化ステップを3回行った後、1分間の口唇強化ステップを3回行ってもよい。
【0035】
上述した各ステップは、2つ以上のステップを同時に行ってもよい。例えば、口唇強化ステップと舌強化ステップとを同時に行ってもよい。
【0036】
次に、マウスピース10を用いたトレーニング方法の一例について、
図2を用いて説明する。
図2は、マウスピース10を用いたトレーニング方法の一例を示すフロー図である。
【0037】
まず、3回呼吸する間、口唇強化ステップと舌強化ステップとを同時に行う(ST1)。具体的には、3回呼吸する間、上口唇と下口唇とによって口唇チューブ部2を圧縮した状態を維持するとともに、舌によって舌チューブ部3を口蓋に押し付けた状態を維持する。
【0038】
次に、1分間の舌強化ステップを3セット行う(ST2)。具体的には、舌によって舌チューブ部3を口蓋に押し付けた状態を1分間維持する。これを3回繰り返す。
【0039】
次に、1分間の口唇強化ステップを3セット行う(ST3)。具体的には、上口唇と下口唇とによって口唇チューブ部2を圧縮した状態を1分間維持する。これを3回繰り返す。
【0040】
次に、1分間の顎関節強化ステップを3セット行う(ST4)。具体的には、下顎によって顎スプリング部4を圧縮した状態を1分間維持する。これを3回繰り返す。
【0041】
最後に再び、3回呼吸する間、口唇強化ステップと舌強化ステップとを同時に行う(ST5)。具体的には、3回呼吸する間、上口唇と下口唇とによって口唇チューブ部2を圧縮した状態を維持するとともに、舌によって舌チューブ部3を口蓋に押し付けた状態を維持する。
【0042】
図2のフロー図に示すトレーニング方法をさらに顎を上げた姿勢で行ってもよい。顎を上げた姿勢で行うことにより、舌骨上筋群及び咽頭筋群などの気道周囲の筋肉を強化することができるので、鼻呼吸への移行がより促される。顎の角度は、頭頸部及び顎に違和感がない程度の角度(例えば、目線斜め上45度程度)で行うことが好ましい。
【0043】
[代替マウスピース]
当該トレーニング方法は、顎関節強化ステップを除き、
図3に示す代替マウスピース100を用いて行うことができる。
図3は、当該トレーニング方法で用いられる代替マウスピース100を示す概略斜視図である。代替マウスピース100は、本体部101、ハンドル部102、及び呼吸チューブ部103を備える。当該トレーニング方法は、顎関節強化ステップを除き、代替マウスピース100の呼吸チューブ部103を上口唇と下口唇とによって挟み込んで行うことができる。
【0044】
本体部101は、棒形状を有し、ハンドル部102と呼吸チューブ部103とを接続する部分である。
【0045】
ハンドル部102は、本体部101の一端に位置している。ハンドル部102は平面形状を有している。代替マウスピース100を使用する際、ハンドル部102は手指によって挟持される。
【0046】
呼吸チューブ部103は、本体部101の他端に位置している。呼吸チューブ部103は、その先端に開口104が形成されている。代替マウスピース100を使用する際、呼吸チューブ部103は、上口唇と下口唇との間、又は、舌と口蓋との間に配置される。すなわち、呼吸チューブ部103は、
図1のマウスピース20の口唇チューブ部2又は舌チューブ部3として使用されうる。
【0047】
代替マウスピース100は、弾性を有する樹脂材料によって形成されている。弾性を有する樹脂材料は、例えば、ポリウレタンである。
【0048】
[代替マウスピースを用いたトレーニング方法]
代替マウスピース100を用いて行われる各ステップ(顎関節強化ステップを除く)について、以下説明する。
【0049】
(鼻呼吸移行ステップ)
鼻呼吸移行ステップは、上口唇と下口唇とによって呼吸チューブ部103の圧縮及び拡張を繰り返すことにより鼻呼吸へ移行することを含む。呼吸チューブ部103を圧縮することで、口呼吸が難しくなり、自然と鼻呼吸への移行が促される。したがって、呼吸チューブ部103の圧縮及び拡張を繰り返すことにより、口呼吸から鼻呼吸への移行が促される。鼻呼吸ができるようになったら、別のステップに進んでもよい。
【0050】
(口唇強化ステップ)
口唇強化ステップは、上口唇と下口唇とによって呼吸チューブ部103を圧縮した状態を維持することを含む。呼吸チューブ部103を圧縮した状態を維持することで、口唇の筋肉を強化することができるので、口唇の閉鎖を確立することができる。呼吸チューブ部103を所定の時間(例えば、1分間)圧縮し続けることができるようになったら、別のステップに進んでもよい。
【0051】
口唇強化ステップは、呼吸チューブ部103を圧縮した状態で鼻呼吸することをさらに含んでいてもよい。複数回(例えば、3回)呼吸する間、呼吸チューブ部103を圧縮した状態を維持して鼻呼吸を行ってもよい。これにより、鼻呼吸への移行がより促される。
【0052】
口唇強化ステップは、上口唇と下口唇とによって呼吸チューブ部103を圧縮した状態と開放した状態とを繰り返す口唇の開閉運動をさらに含んでいてもよい。口唇の開閉運動は、所定時間(例えば、1分間)繰り返してもよい。
【0053】
(舌強化ステップ)
舌強化ステップは、舌によって呼吸チューブ部103を口蓋に押し付けた状態を維持することを含む。舌を口蓋に向かって持ち上げて、呼吸チューブ部103を口蓋に押し付けることで、舌の筋肉を強化することができるので、正しい舌の位置を確立することができる。呼吸チューブ部103を所定の時間(例えば、1分間)押し続けることができるようになったら、別のステップに進んでもよい。
【0054】
舌強化ステップは、呼吸チューブ部103を口蓋に押し付けた状態で鼻呼吸することをさらに含んでいてもよい。複数回(例えば、3回)呼吸する間、上口唇と下口唇とを閉じ、かつ、呼吸チューブ部103を口蓋に押し付けた状態を維持して鼻呼吸を行ってもよい。これにより、鼻呼吸への移行がより促される。
【0055】
舌強化ステップは、舌によって呼吸チューブ部103を口蓋に押し付けた状態と舌を呼吸チューブ部7から離した状態とを繰り返す舌の上下運動をさらに含んでいてもよい。舌の上下運動は、所定時間(例えば、1分間)繰り返してもよい。
【0056】
代替マウスピース100を用いた当該トレーニング方法では、鼻呼吸移行ステップ、口唇強化ステップ、及び舌強化ステップのそれぞれを、顎を上げた姿勢で行ってもよい。顎を上げた姿勢で各ステップを行うことにより、舌骨上筋群及び咽頭筋群などの気道周囲の筋肉を強化することができるので、鼻呼吸への移行がより促される。顎の角度は、頭頸部及び顎に違和感がない程度の角度(例えば、目線斜め上45度程度)で行うことが好ましい。
【0057】
次に、代替マウスピース100を用いたトレーニング方法の一例について、
図4を用いて説明する。
図4は、代替マウスピース100を用いたトレーニング方法の一例を示すフロー図である。
【0058】
まず、5回呼吸する間、舌強化ステップを行う(STP1)。具体的には、5回呼吸する間、舌によって呼吸チューブ部103を口蓋に押し付けた状態を維持する。
【0059】
続けて、舌の上下運動を5セット行う(STP2)。具体的には、舌によって呼吸チューブ部103を口蓋に押し付けた状態と舌を呼吸チューブ部103から離した状態とを繰り返す舌の上下運動を1分間行う。これを5回繰り返す。
【0060】
再び、5回呼吸する間、舌強化ステップを行う(STP3)。具体的には、5回呼吸する間、舌によって呼吸チューブ部103を口蓋に押し付けた状態を維持する。
【0061】
次に、5回呼吸する間、口唇強化ステップを行う(STP4)。具体的には、5回呼吸する間、上口唇と下口唇とによって呼吸チューブ部103を圧縮した状態を維持する。
【0062】
続けて、口唇の開閉運動を5セット行う(STP5)。具体的には、上口唇と下口唇とによって呼吸チューブ部103を圧縮した状態と開放した状態とを繰り返す口唇の開閉運動を1分間行う。これを5回繰り返す。
【0063】
最後に再び、5回呼吸する間、口唇強化ステップを行う(STP6)。具体的には、5回呼吸する間、上口唇と下口唇とによって呼吸チューブ部103を圧縮した状態を維持する。
【0064】
図4のフロー図に示すトレーニング方法をさらに顎を上げた姿勢で行ってもよい。顎を上げた姿勢で各ステップを行うことにより、舌骨上筋群及び咽頭筋群などの気道周囲の筋肉を強化することができるので、鼻呼吸への移行がより促される。顎の角度は、頭頸部及び顎に違和感がない程度の角度(例えば、目線斜め上45度程度)で行うことが好ましい。
【0065】
[追加のマウスピース]
本発明のトレーニング方法は、以下に説明する追加のマウスピースを用いた追加のステップを含んでいてもよい。
図5は、追加のマウスピース20を付属部材30とともに示す概略図であって、(a)はマウスピース20の斜視図、(b)は付属部材30の斜視図である。
図6は、付属部材30が取り付けられたマウスピース20を示す概略斜視図である。
【0066】
マウスピース20は、本体部5及びリング部6を備える。追加のステップは、マウスピース20を口腔内に装着して行う。
【0067】
本体部5は、平面視で一方に膨出するアーチ形状を有する。装着した際、本体部5の内側面52は、上下の歯列と上下の歯茎との間に配置される。本体部5は、下側にリップバンパー51を有する。リップバンパー51は、装着した際、下口唇に当接する部分である。
【0068】
リング部6は、本体部1から膨出する方向に延出するように設けられている。リング部6は、上下方向に貫通する穴61を有する。リング部6の穴61は、後述する付属部材30のストラップ部8が着脱可能に構成されている。
【0069】
付属部材30は、本体部7、ストラップ部8、及び口唇プレート部9を備える。
【0070】
本体部7は、棒形状を有し、ストラップ部8と口唇プレート部9とを接続する部分である。
【0071】
ストラップ部8は、本体部7の一端に位置している。ストラップ部8はマウスピース20のリング部6に着脱可能である限り、その形状は制限されない。例えば、
図5(b)に示す例では、ストラップ部8は、リング部6の穴61に挿入可能な挿入部81と、リング部6の穴61に挿入した挿入部81を係合可能な係合部82とを備えている。
【0072】
口唇プレート部9は、本体部7の他端側に位置している。口唇プレート部9は、平面形状を有している。付属部材30を単独で使用する際、口唇プレート部9は、上口唇と下口唇との間に配置される。
【0073】
口唇プレート部9は、本体部7の他端に位置する第1口唇プレート部91と、第1口唇プレート部91よりもストラップ部8側に位置する第2口唇プレート部92とを含む。付属部材30を単独で使用する際、第1口唇プレート部91は、主に上級者が口唇閉鎖をトレーニングするステップ(口唇閉鎖改善ステップ)に用いられる。第2口唇プレート部92は、主に初心者が口唇閉鎖をトレーニングするステップ(口唇閉鎖改善ステップ)に用いられる。
【0074】
マウスピース20及び付属部材30は、弾性を有する樹脂材料によって形成されている。弾性を有する樹脂材料は、例えば、医療用シリコンである。
【0075】
[追加のマウスピースを用いた追加のステップ]
追加のマウスピース20を用いた追加のステップについて、以下説明する。追加のステップは、付属部材30が取り付けられたマウスピース20、及び、付属部材3のみを用いて行われる。
【0076】
追加のステップは、嚥下機能改善ステップ、及び口唇閉鎖改善ステップを含む。
【0077】
(嚥下機能改善ステップ)
嚥下機能改善ステップは、付属部材30が取り付けられたマウスピース20(
図6)を装着して行う。嚥下機能改善ステップは、上口唇と下口唇とを閉じた状態で付属部材3を引っ張ることを含む。付属部材3を引っ張ることによって、マウスピース20のリップバンパー51が下口唇に当たる。これにより、嚥下時のオトガイ筋の緊張を抑制することができ、嚥下機能が改善する。さらに、口腔周囲筋を強化することができるので、口唇の閉鎖の確立をより高めることができる。
【0078】
付属部材3を引っ張る力は、付属部材3を上口唇と下口唇とで保持できる程度であることが好ましい。
【0079】
嚥下機能改善ステップにおいて、付属部材3は水平方向以外の方向に引っ張ってもよい。付属部材3の角度を異ならせて引っ張ることで、上口唇及び下口唇の筋肉をより強化することができる。
【0080】
(口唇閉鎖改善ステップ)
口唇閉鎖改善ステップは、必要に応じて実施される補助的なステップの1つである。口唇閉鎖改善ステップは、付属部材30(
図5(b))の口唇プレート部9を上口唇と下口唇とによって挟み込んで行う。第1口唇プレート部91は、主に上級者が行う口唇閉鎖改善ステップに用いられる。第2口唇プレート部92は、主に初心者が行う口唇閉鎖改善ステップに用いられる。
【0081】
口唇閉鎖改善ステップは、上口唇と下口唇とによって口唇プレート部9(第1口唇プレート部91又は第2口唇プレート部92)を保持した状態を維持することを含む。口唇プレート部9を保持した状態を維持することで、口唇の筋肉を強化することができるので、口唇の閉鎖をトレーニングすることができる。また、口唇を閉鎖している間のオトガイ筋の緊張を抑制することができる。口唇閉鎖改善ステップは、所定の時間(例えば、10分間)行うことが好ましい。
【0082】
嚥下機能改善ステップ及び口唇閉鎖改善ステップのそれぞれを、さらに顎を上げた姿勢で行ってもよい。顎を上げた姿勢で各ステップを行うことにより、舌骨上筋群及び咽頭筋群などの気道周囲の筋肉を強化することができるので、鼻呼吸への移行がより促される。顎の角度は、頭頸部及び顎に違和感がない程度の角度(例えば、目線斜め上45度程度)で行うことが好ましい。
【0083】
以上、本発明に係るトレーニング方法について図面を用いて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 マウスピース
1 本体
11 突出部
2 口唇チューブ部
21 開口
22 連通孔
3 舌チューブ部
31 開口
4 顎スプリング部
41 貫通孔
20 追加のマウスピース
5 本体
51 リップバンパー
52 内側面
6 リング部
61 穴
30 付属部材
7 本体
8 ストラップ部
81 挿入部
82 係合部
9 口唇プレート部
91 第1口唇プレート部
92 第2口唇プレート部
100 代替マウスピース
101 本体
102 ハンドル部
103 呼吸チューブ部
104 開口