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特開2024-41654位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041654
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/32 20120101AFI20240319BHJP
   G03F 1/80 20120101ALI20240319BHJP
【FI】
G03F1/32
G03F1/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146578
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】米丸 直人
(72)【発明者】
【氏名】黒木 恭子
(72)【発明者】
【氏名】松井 一晃
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】前田 仁
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BB03
2H195BB14
2H195BC05
2H195BC20
(57)【要約】
【課題】ヘイズ欠陥の少ない、即ちヘイズの発生を十分に抑制することができる位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及びその位相シフトマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る位相シフトマスクブランク10は、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクを作製するために用いられる位相シフトマスクブランクであって、基板11と位相シフト膜12とを備え、位相シフト膜12は、位相層13と保護層14とを備え、保護層14は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層15と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層16とを備え、タンタル含有保護層16全体におけるタンタル含有率が10原子%以上90原子%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクを作製するために用いられる位相シフトマスクブランクであって、
透明基板と、前記透明基板の上に形成された位相シフト膜と、を備え、
前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層と、前記位相差透過率調整層の上に形成され、前記位相差透過率調整層への気体透過を阻止する気体透過保護層と、を備え、
前記気体透過保護層は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層と、を備え、
前記タンタル含有保護層全体におけるタンタル含有率が10原子%以上90原子%以下であることを備えることを特徴とする位相シフトマスクブランク。
【請求項2】
前記位相差透過率調整層の膜厚をd1とし、前記ケイ素含有保護層の膜厚をd2とし、前記タンタル含有保護層の膜厚をd3としたときに、d1が20nm以上であり、且つd2とd3の合計が2nm以上20nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項3】
前記位相シフト膜は、酸素含有塩素系エッチングに対して耐性を有し、且つフッ素系エッチングでエッチング可能であることを特徴とする請求項2に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項4】
前記位相差透過率調整層は、ケイ素と、遷移金属、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有し、
前記遷移金属は、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、及びハフニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項5】
前記タンタル化合物は、タンタルと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項4に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項6】
前記ケイ素化合物は、ケイ素と、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項5に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項7】
前記ケイ素化合物は、遷移金属を含有しないことを特徴とする請求項6に記載の位相シフトマスクブランク。
【請求項8】
波長200nm以下の露光光が適用され、転写パターンが形成された位相シフトマスクであって、
透明基板と、前記透明基板の上に形成された位相シフト膜と、を備え、
前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層と、前記位相差透過率調整層の上に形成され、前記位相差透過率調整層への気体透過を阻止する気体透過保護層と、を備え、
前記気体透過保護層は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層と、を備え、
前記タンタル含有保護層全体におけるタンタル含有率が10原子%以上90原子%以下であることを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法であって、
前記位相シフト膜上に遮光膜を形成する工程と、
前記位相シフト膜上に形成された前記遮光膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを形成した後に、酸素含有塩素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、
前記遮光膜にパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記位相シフト膜を構成する前記位相差透過率調整層と前記気体透過保護層とにパターンを形成する工程と、
前記位相シフト膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去する工程と、
前記レジストパターンを除去した後に、前記位相シフト膜上から、酸素含有塩素系エッチングにて前記遮光膜を除去する工程と、を含むことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等の製造において使用される位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体加工においては、特に大規模集積回路の高集積化により、回路パターンの微細化が必要になってきており、回路を構成する配線パターンやコンタクトホールパターンの微細化技術への要求が高まってきている。そのため、半導体デバイス等の製造で用いられる露光光源は、KrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
【0003】
また、ウエハ転写特性を向上させたマスクとして、例えば、位相シフトマスクがある。位相シフトマスクでは、透明基板を透過するArFエキシマレーザー光と、透明基板と位相シフト膜の両方を透過するArFエキシマレーザー光との位相差(以下、単に「位相差」という。)が180度、かつ透明基板を透過するArFエキシマレーザー光の光量に対し、透明基板と位相シフト膜の両方を透過するArFエキシマレーザー光の光量の比率(以下、単に「透過率」という)が6%というように、位相差と透過率の両方を調整することが可能である。
【0004】
例えば、位相差が180度の位相シフトマスクを製造する場合、位相差が177度付近になるよう位相シフト膜の膜厚を設定した後、位相シフト膜をフッ素系ガスにてドライエッチングすると同時に透明基板を3nm程度加工して、最終的に位相差を180度付近に調整する方法が知られている。
波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクにおいては、露光することにより、マスクに「ヘイズ」と呼ばれる異物が徐々に生成・成長・顕在化して、そのマスクが使用できなくなることがある。特に位相シフト膜がシリコンと遷移金属と酸素や窒素などの軽元素とで構成された膜である場合、位相シフト膜表面に異物が発生することがある。
【0005】
ヘイズを抑制するための技術としては、例えば、特許文献1、2に記載されたものある。
しかしながら、特許文献1、2に記載された技術では、上述のようなヘイズを抑制する効果が十分でない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-173621号公報
【特許文献2】特許第4579728号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情の元になされ、ヘイズ欠陥の少ない、即ちヘイズの発生を十分に抑制することができる位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及びその位相シフトマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであって、本発明の一態様に係る位相シフトマスクブランクは、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクを作製するために用いられる位相シフトマスクブランクであって、透明基板と、前記透明基板の上に形成された位相シフト膜と、を備え、前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層と、前記位相差透過率調整層の上に形成され、前記位相差透過率調整層への気体透過を阻止する気体透過保護層と、を備え、前記気体透過保護層は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層と、を備え、前記タンタル含有保護層全体におけるタンタル含有率が10原子%以上90原子%以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る位相シフトマスクは、波長200nm以下の露光光が適用され、転写パターンが形成された位相シフトマスクであって、透明基板と、前記透明基板の上に形成された位相シフト膜と、を備え、前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層と、前記位相差透過率調整層の上に形成され、前記位相差透過率調整層への気体透過を阻止する気体透過保護層と、を備え、前記気体透過保護層は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層と、を備え、前記タンタル含有保護層全体におけるタンタル含有率が10原子%以上90原子%以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る位相シフトマスクの製造方法は、上述した位相シフトマスクの製造方法であって、前記位相シフト膜上に遮光膜を形成する工程と、前記位相シフト膜上に形成された前記遮光膜上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを形成した後に、酸素含有塩素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、前記遮光膜にパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記位相シフト膜を構成する前記位相差透過率調整層と前記気体透過保護層とにパターンを形成する工程と、前記位相シフト膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去する工程と、前記レジストパターンを除去した後に、前記位相シフト膜上から、酸素含有塩素系エッチングにて前記遮光膜を除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る位相シフトマスクを用いることで、マスク上におけるヘイズの発生を十分に抑制することができる。さらに、本発明の一態様に係る位相シフトマスクブランクを用いることで、位相シフト膜のフッ素系エッチング(F系)における加工性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランクの構成を示す断面概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る位相シフトマスクの構成を示す断面概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造工程を示す断面概略図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る位相シフトマスクブランクの構成を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明者らは、位相シフトマスクブランクまたは位相シフトマスクを構成する位相シフト膜の構成材料と、水や酸素等の酸化性気体と、露光エネルギーとの3要素が全て揃わなければマスクブランクまたはマスクにおけるヘイズの発生は低減可能と考え、位相シフトマスクブランクまたは位相シフトマスクを下記構成とした。つまり、本実施形態に係る位相シフトマスク及びその製造方法は、回路パターンを備えた位相差透過率調整層(所謂、位相層パターン)の少なくとも上面に気体透過保護層(所謂、気体バリア層)を設けることで、位相シフト膜の構成材料に酸化性気体が接触しないようにしてヘイズの発生を低減するという技術的思想に基づくものである。さらに、その気体透過保護層を、気体バリア特性と、種類が互いに異なる特定の材料で形成することで、気体透過保護層のフッ素系エッチング(F系)によるエッチングレートを高めるという技術的思想に基づくものである。
【0014】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。なお、断面概略図は、実際の寸法比やパターン数を正確には反映しておらず、透明基板の掘り込み量や膜のダメージ量は省略してある。
本発明の位相シフトマスクブランクの好適な実施形態としては、以下に示す形態が挙げられる。
【0015】
(位相シフトマスクブランクの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランクの構成を示す断面概略図である。図1に示す位相シフトマスクブランク10は、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクを作製するために用いられる位相シフトマスクブランクであって、露光波長に対して透明な基板(以下、単に「基板」ともいう)11と、基板11の上に成膜された位相シフト膜12とを備えている。また、位相シフト膜12は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする機能を有している位相差透過率調整層13と、その位相差透過率調整層13の上に形成され、位相差透過率調整層13への気体透過を阻止する気体透過保護層14と、を備えている。また、気体透過保護層14は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層15と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層16と、を備えている。
以下、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランク10の構成する各層について詳しく説明する。
【0016】
(基板)
基板11に対する特別な制限はなく、基板11としては、例えば、石英ガラスやCaFあるいはアルミノシリケートガラスなどが一般的に用いられる。
【0017】
(位相シフト膜)
位相シフト膜12は、基板11上に他の膜を介して又は介さずに形成されている。
位相シフト膜12は、例えば、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有し、且つフッ素系エッチング(F系)でエッチング可能な膜である。
【0018】
<位相差透過率調整層13>
位相シフト膜12を構成する位相差透過率調整層(以下、単に「位相層」ともいう)13の透過率の値は、基板11の透過率に対して、例えば、3%以上80%以下の範囲内であり、所望のウエハパターンに応じて最適な透過率を適宜選択することが可能である。また、位相層13の位相差の値は、例えば、160度以上220度以下の範囲内であり、175度以上190度以下の範囲内であればより好ましい。つまり、位相層13は、露光光に対する透過率が3%以上80%以下の範囲内であり、位相差が160度以上220度以下の範囲内であってもよい。位相層13の露光光に対する透過率が3%未満の場合には、良好な露光性能が得られないことがある。また、位相差が160度以上220度以下の範囲内であれば、必要な露光性能を容易に維持することができる。
【0019】
つまり、位相層13は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする層である。ここで、「位相を調整」とは、例えば、位相を反転させることを意味する。また、「透過率」とは、露光光に対する透過率を意味する。
位相層13は、例えば、ケイ素を含有し、且つ遷移金属、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種を含有した単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜であり、組成と膜厚とを適宜選択することで露光波長に対する透過率と位相差とを調整させたものである。
【0020】
位相層13は、位相層13全体の元素比率において、ケイ素を20原子%以上60原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、遷移金属を0原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を30原子%以上80原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を0原子%以上30原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上10原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。位相層13における各元素のより好ましい含有量の範囲は、位相層13全体の元素比率において、ケイ素は30原子%以上50原子%以下の範囲内であり、遷移金属は0原子%以上10原子%以下の範囲内であり、窒素は40原子%以上70原子%以下の範囲内であり、酸素は0原子%以上20原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上5原子%以下の範囲内である。位相層13における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、位相層13の透過率とともに、位相差も容易に制御することができる。
【0021】
なお、位相層13は、金属シリサイドの酸化物、炭化物及び窒化物の少なくとも1種を含有したものであってもよい。その場合、金属シリサイドを構成する金属は、上述した遷移金属であってもよい。
位相層13が含有する遷移金属は、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、及びハフニウムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、モリブデンであればより好ましい。位相層13が含有する遷移金属が、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、及びハフニウムから選ばれる少なくとも1種であれば、位相層13の加工が容易になり、モリブデンであればさらに位相層13のエッチング等の加工性が高くなる。
【0022】
<気体透過保護層>
位相シフト膜12を構成する気体透過保護層(以下、単に「保護層」ともいう)14は、位相層13上に他の膜を介して又は介さずに形成されており、位相層13への気体透過(特に、水や酸素等の酸化性気体の透過)を阻止・抑制するための層、即ち気体バリア層である。本実施形態であれば、ヘイズ発生の要素の1つと考える気体の位相層13への侵入を阻止・抑制することができるため、長期間マスクを使用した場合(例えば、マスク上のドーズ量が100kJ/cmを超えた場合)であっても、位相シフトマスク表面におけるヘイズの発生を阻止・抑制することができる。
なお、保護層14で透過が阻止・抑制される気体(雰囲気ガス)は、酸化性気体であり、具体的には酸素含有分子であり、さらに具体的には水分子である。
保護層14は、フッ素系ガス(F系)を用いたエッチングが可能な層である。
【0023】
《ケイ素含有保護層》
保護層14を構成するケイ素含有保護層15は、ケイ素化合物を含有する保護層であって、ケイ素と、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる1種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜であってもよい。
【0024】
ケイ素含有保護層15は、ケイ素含有保護層15全体の元素比率において、ケイ素を10原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を10原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を0原子%以上80原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。ケイ素含有保護層15における各元素のより好ましい含有量の範囲は、ケイ素含有保護層15全体の元素比率において、ケイ素は20原子%以上60原子%以下の範囲内であり、酸素は20原子%以上80原子%以下の範囲内であり、窒素は0原子%以上70原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上60原子%以下の範囲内である。ケイ素含有保護層15における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、ケイ素含有保護層15(保護層14)の位相層13への気体透過のバリア性が高まる。
【0025】
以上のように、ケイ素含有保護層15が、ケイ素と、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる1種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜であれば、位相層13への気体透過を効果的に阻止することができる。
さらに、ケイ素含有保護層15が上記組成であれば、フッ素系ガス(F系)を用いたエッチングによる保護層14(ケイ素含有保護層15)の加工性が向上する。
また、ケイ素含有保護層15に含まれるケイ素化合物は、遷移金属を含有していないことが好ましい。ケイ素含有保護層15のケイ素化合物が遷移金属を含有していなければ(つまり、ケイ素含有保護層15が遷移金属を含んでいなければ)、ケイ素含有保護層15(保護層14)の位相層13への気体透過のバリア性を高め、ヘイズ耐性をさらに高めることができる。
【0026】
《タンタル含有保護層》
保護層14を構成するタンタル含有保護層16は、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有する保護層であって、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有する単層膜、またはこれらの化合物の混合膜、もしくは複数層膜であることが好ましいが、バリア機能を備える層であれば特に組成は限定されるものではない。また、タンタル化合物は、タンタルを含有し、且つ酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。なお、上述のタンタル金属は、金属の単体を意味する。
【0027】
タンタル含有保護層16は、タンタル含有保護層16全体の元素比率において、タンタルを10原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を10原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を0原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上60原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。タンタル含有保護層16における各元素のより好ましい含有量の範囲は、タンタル含有保護層16全体の元素比率において、タンタルは20原子%以上80原子%以下の範囲内であり、酸素は20原子%以上80原子%以下の範囲内であり、窒素は0原子%以上60原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上50原子%以下の範囲内である。タンタル含有保護層16における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、タンタル含有保護層16(保護層14)の位相層13への気体透過のバリア性が高まる。
【0028】
以上のように、タンタル含有保護層16が、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有する単層膜、またはこれらの化合物の混合膜、もしくは複数層膜であれば、位相層13への気体透過を効果的に阻止することができる。
さらに、タンタル含有保護層16が上記組成であれば、フッ素系ガス(F系)を用いたエッチングによる保護層14(タンタル含有保護層16)の加工性が向上する。
【0029】
本実施形態において、位相層13の膜厚をd1とし、ケイ素含有保護層15の膜厚をd2とし、タンタル含有保護層16の膜厚をd3としたときに、位相層13の膜厚d1は20nm以上であり、且つケイ素含有保護層15の膜厚d2とタンタル含有保護層16の膜厚d3との合計が2nm以上20nm以下の範囲内であれば好ましい。位相層13の膜厚d1、ケイ素含有保護層15の膜厚d2、及びタンタル含有保護層16の膜厚d3が上記数値範囲内であれば、光学特性を維持しつつ、位相層13への気体透過のバリア性も維持することができる。さらに、位相層13の膜厚d1、ケイ素含有保護層15の膜厚d2、及びタンタル含有保護層16の膜厚d3が上記数値範囲内であれば、フッ素系ガス(F系)を用いたエッチングによる位相シフト膜12の加工性が向上する。
【0030】
なお、位相層13の膜厚d1が20nm未満であると、光学特性において影響を受ける可能性がある。また、ケイ素含有保護層15の膜厚d2とタンタル含有保護層16の膜厚d3との合計が2nm未満であると、位相層13への気体透過のバリア性を維持できない可能性がある。また、ケイ素含有保護層15の膜厚d2とタンタル含有保護層16の膜厚d3との合計が20nmを超えると、光学特性において影響を受ける可能性がある。
なお、位相層13の膜厚d1の上限値は、特に制限されないが、露光性能の観点から100nm以下であれば好ましい。
【0031】
また、ケイ素含有保護層15の膜厚d2とタンタル含有保護層16の膜厚d3との合計が20nm以内であれば、ケイ素含有保護層15の膜厚d2及びタンタル含有保護層16の膜厚d3の各保護層の上限値及び下限値は特に制限されないが、成膜性の観点から、例えばそれぞれ1nm以上19nm以下の範囲内であれば好ましい。
保護層14は、公知の方法により成膜することができる。最も容易に均質性に優れた膜を得る方法としては、スパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、本実施形態ではスパッタ成膜法に限定する必要はない。
【0032】
(位相シフトマスクの全体構成)
以下、本発明の実施形態に係る位相シフトマスク100の構成について説明する。
図2(a)は、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクの構成を示す断面概略図である。また、図2(b)は、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクの構成の一部を拡大して示す断面概略図である。図2に示す位相シフトマスク100は、波長200nm以下の露光光が適用され、回路パターンを備えた位相シフトマスク(即ち、パターニングされた位相シフトマスク)であって、露光波長に対して透明な基板11と、基板11の上に成膜され、回路パターンを備えた位相層13と、その位相層13の上面を少なくとも覆うように形成された保護層14と、を備えている。また、位相層13は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする機能を有している。また、保護層14は、位相層13への気体透過を阻止する機能を有している。保護層14は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層15と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層16と、を備えている。位相層13の膜厚をd1とし、ケイ素含有保護層15の膜厚をd2とし、タンタル含有保護層16の膜厚をd3としたときに、位相層13の膜厚d1は20nm以上であり、且つケイ素含有保護層15の膜厚d2とタンタル含有保護層16の膜厚d3との合計が2nm以上20nm以下の範囲内であれば好ましい。
【0033】
位相シフトマスク100は、位相シフトマスクブランク10を構成する位相シフト膜12の一部を除去して基板11の表面を露出することで形成した位相シフト膜パターン12a(回路パターンを備えた位相シフト膜12)を備えている。
なお、本発明の実施形態に係る位相シフトマスク100を構成する基板11及び回路パターンを備えた位相シフト膜12の組成等は、上述した本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランク10の構成する基板11及び位相シフト膜12の組成等と同じである。そのため、基板11及び回路パターンを備えた位相シフト膜12の組成等に関する詳細な説明については省略する。
【0034】
(位相シフトマスクの製造方法)
本実施形態に係る位相シフトマスクブランク10を用いる位相シフトマスク100の製造方法は、基板11上に位相シフト膜12(位相層13、ケイ素含有保護層15、タンタル含有保護層16の3層)を形成する工程と、位相シフト膜12上に遮光膜17を形成する工程と、位相シフト膜12上に形成された遮光膜17上にレジストパターン18を形成する工程と、レジストパターン18を形成した後に、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)にて遮光膜17にパターンを形成する工程と、遮光膜17にパターンを形成した後に、フッ素系エッチング(F系)にて位相シフト膜12(タンタル含有保護層16、ケイ素含有保護層15、位相層13の3層)にパターンを形成する工程と、位相シフト膜12にパターンを形成した後に、レジストパターン18を除去する工程と、レジストパターン18を除去した後に、パターンが形成された位相シフト膜12上から、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)にて遮光膜17を除去する工程と、を有している。
ここで、本発明の実施形態に係る遮光膜17について説明する。
【0035】
(遮光膜)
遮光膜17は、上述した本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランク10(位相シフト膜12)の上に形成される層である。
遮光膜17は、例えば、クロム単体、又はクロム化合物からなる単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。より詳しくは、クロム化合物からなる遮光膜17は、クロムと、炭素、窒素及び酸素から選ばれる1種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。
【0036】
クロム化合物からなる遮光膜17は、遮光膜17全体の元素比率において、クロムを30原子%以上100原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を0原子%以上50原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を0原子%以上50原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。クロム化合物からなる遮光膜17における各元素のより好ましい含有量の範囲は、遮光膜17全体の元素比率において、クロムは50原子%以上100原子%以下の範囲内であり、酸素は0原子%以上40原子%以下の範囲内であり、窒素は0原子%以上40原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上18原子%以下の範囲内である。クロム化合物からなる遮光膜17における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、遮光膜17の遮光性が高まる。
【0037】
遮光膜17の膜厚は、例えば、15nm以上80nm以下の範囲内、特に20nm以上75nm以下の範囲内が好ましい。
遮光膜17は、公知の方法により成膜することができる。最も容易に均質性に優れた膜を得る方法としては、スパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、本実施形態ではスパッタ成膜法に限定する必要はない。
【0038】
ターゲットとスパッタガスは膜組成によって選択される。例えば、クロムを含有する膜の成膜方法としては、クロムを含有するターゲットを用い、アルゴンガス等の不活性ガスのみ、酸素等の反応性ガスのみ、又は不活性ガスと反応性ガスとの混合ガス中で反応性スパッタリングを行う方法を挙げることができる。スパッタガスの流量は膜特性に合わせて調整すればよく、成膜中一定としてもよいし、炭素量、酸素量や窒素量を膜の厚み方向に変化させたいときは、目的とする組成に応じて変化させてもよい。また、ターゲットに対する印加電力、ターゲットと基板との距離、成膜チャンバー内の圧力を調整してもよい。
【0039】
以下、本発明の実施形態に係る位相シフトマスク100の製造方法が有する各工程について詳しく説明する。
図3は、図1に示す位相シフトマスクブランク10を用いた位相シフトマスク100の製造工程を示す断面概略図である。図3(a)は、基板11上に形成された位相層13と、位相層13上に形成されたケイ素含有保護層15と、ケイ素含有保護層15上に形成されたタンタル含有保護層16とを備える位相シフト膜12上に遮光膜17を形成する工程を示す。図3(b)は、遮光膜17上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン18を形成する工程を示す。図3(c)は、レジストパターン18に沿って酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により遮光膜17をパターニングする工程を示す。図3(d)は、遮光膜17のパターンに沿ってフッ素系エッチング(F系)により位相シフト膜12(タンタル含有保護層16、ケイ素含有保護層15、位相層13の3層)をパターニングし、位相シフト膜パターン12aを形成する工程を示す。図3(e)は、レジストパターン18を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図3(f)は、パターンが形成された位相シフト膜12(位相シフト膜パターン12a)上から、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)にて遮光膜17を除去する工程を示す。こうして、本実施形態に係る位相シフトマスク100を製造する。
【0040】
上記製造工程により製造された本実施形態に係る位相シフトマスク100は、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクであって、基板11と、基板11上に他の膜を介して又は介さずに形成された位相層13と、その位相層13の少なくとも上面に形成された保護層14と、を備えている。また、回路パターンを備えた位相層13は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする機能を有している。また、ケイ素含有保護層15とタンタル含有保護層16とを備える保護層14は、位相層13への気体透過を阻止する機能を有している。
【0041】
また、位相シフトマスク100は、基板11の一部が露出するように位相シフト膜12の一部を除去して形成した位相シフト膜パターン12aを備えている。そして、位相層13の膜厚をd1とし、ケイ素含有保護層15の膜厚をd2とし、タンタル含有保護層16の膜厚をd3としたときに、位相層13の膜厚d1は20nm以上であり、且つケイ素含有保護層15の膜厚d2とタンタル含有保護層16の膜厚d3との合計が2nm以上20nm以下の範囲内となっている。
【0042】
図3(b)の工程において、レジスト膜の材料としては、ポジ型レジストでもネガ型レジストでも用いることができるが、高精度パターンの形成を可能とする電子ビーム描画用の化学増幅型レジストを用いることが好ましい。レジスト膜の膜厚は、例えば50nm以上250nm以下の範囲内である。特に、微細なパターン形成が求められる位相シフトマスクを作製する場合、パターン倒れを防止する上で、レジストパターン18のアスペクト比が大きくならないようにレジスト膜を薄膜化することが必要であり、200nm以下の膜厚が好ましい。一方、レジスト膜の膜厚の下限は、用いるレジスト材料のエッチング耐性などの条件を総合的に考慮して決定され、60nm以上が好ましい。レジスト膜として電子ビーム描画用の化学増幅型のものを使用する場合、描画の際の電子ビームのエネルギー密度は35μC/cmから100μC/cmの範囲内であり、この描画の後に加熱処理及び現像処理を施してレジストパターン18を得る。
【0043】
また、図3(e)の工程において、レジストパターン18の剥離除去は、剥離液によるウェット剥離であってもよく、また、ドライエッチングによるドライ剥離であってもよい。
また、図3(c)の工程において、クロム単体、又はクロム化合物からなる遮光膜17をパターニングする酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、クロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものであってもよく、塩素ガスと酸素ガスとに加えて、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の位相シフト膜12は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0044】
また、図3(d)の工程において、位相シフト膜12をパターニングするフッ素系ドライエッチング(F系)の条件は、ケイ素系化合物膜、タンタル化合物膜、あるいはモリブデン化合物膜等をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものであってもよく、フッ素系ガスとしては、CFやCやSFが一般的であり、必要に応じて酸素などの活性ガスや窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。図3(d)の場合は、上層の遮光膜17又はレジストパターン18は、フッ素系ドライエッチング(F系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。図3(d)では、同時に基板11を1nmから3nm程度掘り込み、位相シフト膜12の抜け不良を防止すると共に、位相差の微調整を行うことが一般的である。
【0045】
また、図3(f)の工程において、遮光膜17を除去する酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、クロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものであってもよく、塩素ガスと酸素ガスとに加えて、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の位相シフト膜12及び基板11は、いずれも酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0046】
(その他の実施形態)
本実施形態では、位相層13の少なくとも上面にケイ素含有保護層15を形成し、ケイ素含有保護層15の上面にタンタル含有保護層16を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、位相層13の上面にタンタル含有保護層16を形成し、タンタル含有保護層16の上面にケイ素含有保護層15を形成してよい。上記形態であっても、優れた気体バリア性を備え、且つ優れたヘイズ耐性を備え、さらには優れたエッチング加工性を備える。
また、本実施形態ではケイ素含有保護層15及びタンタル含有保護層16の各保護層がそれぞれ単層である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ケイ素含有保護層15及びタンタル含有保護層16の各保護層は、それぞれ複層(積層膜)であってもよい。
【0047】
本実施形態では、位相層13の膜厚d1が20nm以上となるように、且つケイ素含有保護層15の膜厚d2とタンタル含有保護層16の膜厚d3との合計が2nm以上20nm以下の範囲内となるように、位相層13、ケイ素含有保護層15、タンタル含有保護層16が形成されていれば好ましい。そのため、ケイ素含有保護層15の膜厚d2は、タンタル含有保護層16の膜厚d3よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。ケイ素含有保護層15の膜厚d2がタンタル含有保護層16の膜厚d3よりも厚い場合には、保護層14全体のエッチング速度を高めることができる。また、タンタル含有保護層16の膜厚d3がケイ素含有保護層15の膜厚d2よりも厚い場合には、保護層14全体の気体バリア性を高めることができる。なお、勿論、ケイ素含有保護層15の膜厚d2と、タンタル含有保護層16の膜厚d3とを同じ厚さにしてもよい。
【0048】
また、ケイ素含有保護層15の膜厚d2とタンタル含有保護層16の膜厚d3は、位相層13により近い層の膜厚を相対的に厚くしてもよいし、位相層13からより遠い層の膜厚を相対的に厚くしてもよい。位相層13により近い層の膜厚が相対的に厚ければ、位相層13に対する応力が緩和されて位相層13の歪みが少なくなるので、位相層13としての機能が確実に発揮できる。また、位相層13からより遠い層の膜厚が相対的に厚ければ、外部からの衝撃等に対し、優れた耐衝撃性が備わる。なお、勿論、位相層13により近い層の膜厚と、位相層13からより近い層の膜厚とを同じ厚さにしてもよい。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る位相シフトマスクブランク10及び位相シフトマスク100であれば、基板11と位相シフト膜12とを備え、位相シフト膜12は、位相層13と保護層14とを備え、保護層14は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層15と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層16とを備えているため、タンタル含有保護層16に添加されたタンタルに起因してヘイズの発生を低減することが可能であり、且つ、ケイ素含有保護層15に添加されたケイ素に起因して位相シフト膜12全体のエッチングレートを向上させることが可能である。
【0050】
[実施例]
以下、実施例により、本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を59nmの厚さで成膜した。モリブデンとケイ素とを含むターゲットを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。
次に、この位相層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、ケイ素と酸素とからなるケイ素含有保護層を11nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このケイ素含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Si:O=35:65(原子%比)であった。
【0051】
次に、このケイ素含有保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、タンタルと酸素とからなるタンタル含有保護層を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このタンタル含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=30:70(原子%比)であった。
こうして形成した位相層とケイ素含有保護層、タンタル含有保護層からなる位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が177度であった。なお、本実施例において、「露光光の透過率」とは、位相シフト膜の開口部に対する非開口部の露光光の透過率を意味する。また、「位相差」とは、位相シフト膜の開口部に対する非開口部の位相差を意味する。
【0052】
次に、このタンタル含有保護層(位相シフト膜)の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と炭素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と二酸化炭素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:C=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0053】
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜(つまり、タンタル含有保護層、ケイ素含有保護層、位相層の3層)をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。こうして、位相シフト膜をパターニングし、且つ石英基板を平均3nm掘り込んだ状態における位相差は180度であった。
タンタル含有保護層及びケイ素含有保護層で構成された保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で2.5であった。
【0054】
上記エッチングレートは大きいことが好ましい。比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値でエッチングレートが1.1以上2.0未満(下記表で「△」と評価)であれば位相シフト膜を加工する上で問題ない程度であり、2.0以上2.3未満(下記表で「〇」と評価)であれば好ましい。また、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値でエッチングレートが2.3以上(下記表で「◎」と評価)であれば極めて好ましい。なお、エッチングレートが1.1未満(下記表で「×」と評価)であれば、従来技術に係る位相シフトマスクと同程度である。
上記測定結果から、実施例1の位相シフトマスクであれば、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値でエッチングレートが2.5であり、極めて良好であることが確認された。
【0055】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例1に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、160kJ/cmであった。
【0056】
上記「加速露光によりヘイズが発生したドーズ量」は、その値が大きい程、ヘイズが発生しにくいことを意味する。ドーズ量が70kJ/cm以上(下記表で「△」と評価)であれば、位相シフトマスクを使用する上で何ら問題なく、ドーズ量が100kJ/cm以上(下記表で「〇」と評価)であれば、ヘイズが発生しにくい位相シフトマスクといえる。また、ドーズ量が110kJ/cm以上(下記表で「◎」と評価)であれば、極めてヘイズが発生しにくい位相シフトマスクといえる。また、ドーズ量が170kJ/cm以上(下記表で「◎◎」と評価)であれば、極めて過酷な条件下において極めて長時間使用したとしてもヘイズが発生しにくい位相シフトマスクといえる。なお、ドーズ量が70kJ/cm未満(下記表で「×」と評価)であれば、従来技術に係る位相シフトマスクと同程度である。
上記測定結果から、実施例1の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が160kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
【0057】
(実施例2)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を57nmの厚さで成膜した。モリブデンとケイ素とを含むターゲットを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。
次に、この位相層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、ケイ素と酸素と窒素とからなるケイ素含有保護層を7nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。このケイ素含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Si:O:N=40:40:20(原子%比)であった。
【0058】
次に、このケイ素含有保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、タンタルと酸素とからなるタンタル含有保護層を8nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このタンタル含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=60:40(原子%比)であった。
こうして形成した位相層とケイ素含有保護層、タンタル含有保護層からなる位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が177度であった。
次に、このタンタル含有保護層(位相シフト膜)の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と炭素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と二酸化炭素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:C=55:35:10(原子%比)であった。
【0059】
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0060】
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜(つまり、タンタル含有保護層、ケイ素含有保護層、位相層の3層)をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。こうして、位相シフト膜をパターニングし、且つ石英基板を平均3nm掘り込んだ状態における位相差は180度であった。
タンタル含有保護層及びケイ素含有保護層で構成される保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で2.0であった。
上記測定結果から、実施例2の位相シフトマスクであれば、保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で2.0であり、良好であることが確認された。
【0061】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例2に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、180kJ/cmであった。
上記測定結果から、実施例2の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が180kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
【0062】
(実施例3)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を55nmの厚さで成膜した。モリブデンとケイ素とを含むターゲットを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。
次に、この位相層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、タンタルと酸素とからなるタンタル含有保護層を6nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このタンタル含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=30:70(原子%比)であった。
【0063】
次に、このタンタル含有保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、ケイ素と酸素とからなるケイ素含有保護層を9nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このケイ素含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Si:O=35:65(原子%比)であった。
こうして形成した位相層とタンタル含有保護層、ケイ素含有保護層からなる位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が177度であった。
次に、このケイ素含有保護層(位相シフト膜)の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と炭素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と二酸化炭素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:C=55:35:10(原子%比)であった。
【0064】
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0065】
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜(つまり、ケイ素含有保護層、タンタル含有保護層、位相層の3層)をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。こうして、位相シフト膜をパターニングし、且つ石英基板を平均3nm掘り込んだ状態における位相差は180度であった。
ケイ素含有保護層及びタンタル含有保護層で構成される保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で2.3であった。
上記測定結果から、実施例3の位相シフトマスクであれば、保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で2.3であり、極めて良好であることが確認された。
【0066】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例3に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、160kJ/cmであった。
上記測定結果から、実施例3の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が160kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
【0067】
(比較例1)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を70nmの厚さで成膜した。モリブデンとケイ素とを含むターゲットを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
こうして形成した位相層は、露光光の透過率が6%であり、位相差が177度であった。
【0068】
次に、この位相層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と炭素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と二酸化炭素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:C=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0069】
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相層をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。こうして、位相層のみをパターニングし、且つ石英基板を平均3nm掘り込んだ状態における位相差は180度であった。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の位相層及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、比較例1に係る位相シフトマスクを得た。
【0070】
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、58kJ/cmであった。
上記測定結果から、比較例1の位相シフトマスクでは、ドーズ量が58kJ/cmであるため、ヘイズの発生を十分に低減することができないことが確認された。
以上より、位相層の上面に保護層としてケイ素含有保護層及びタンタル含有保護層を形成することは、位相シフトマスクにおけるヘイズの発生量を低減させる際に有効であることが分かる。
【0071】
(比較例2)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を65nmの厚さで成膜した。モリブデンとケイ素とを含むターゲットを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。
次に、この位相層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、タンタルと酸素とからなるタンタル含有保護層を8nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このタンタル含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=30:70(原子%比)であった。
こうして形成した位相層とタンタル含有保護層からなる位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が177度であった。
【0072】
次に、このタンタル含有保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と炭素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と二酸化炭素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:C=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0073】
次に、ドライエッチング装置を用いて、タンタル含有保護層と位相層の両方をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。こうして、タンタル含有保護層と位相層の両方をパターニングし、且つ石英基板を平均3nm掘り込んだ状態における位相差は180度であった。
タンタル含有保護層のみで構成される保護層のエッチングレートは、実施例や他の比較例の基準とし、1.0とした。
【0074】
上記測定結果から、比較例2の位相シフトマスクは、保護層のエッチングレートは、1.0であり、従来技術に係る位相シフトマスクと同程度であることが確認された。
以上より、位相層の上面に保護層としてケイ素含有保護層及びタンタル含有保護層を形成することは、位相シフトマスクにおける保護層のエッチングレートを高める際に有効であることが分かる。
【0075】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層のタンタル含有保護層と位相層の両方及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、比較例2に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、135kJ/cmであった。
上記測定結果から、比較例2の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が135kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
【0076】
(比較例3)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を66nmの厚さで成膜した。モリブデンとケイ素とを含むターゲットを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。
次に、この位相層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、ケイ素と酸素と窒素からなるケイ素含有保護層を8nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。このタンタル含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Si:O:N=40:40:20(原子%比)であった。
こうして形成した位相層とケイ素含有保護層からなる位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が177度であった。
【0077】
次に、このケイ素含有保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と炭素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と二酸化炭素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:C=55:35:10(原子%比)であった。
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0078】
次に、ドライエッチング装置を用いて、ケイ素含有保護層と位相層の両方をパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。こうして、ケイ素含有保護層と位相層の両方をパターニングし、且つ石英基板を平均3nm掘り込んだ状態における位相差は180度であった。
ケイ素含有保護層のみで構成される保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で3.2であった。
上記測定結果から、比較例3の位相シフトマスクであれば、保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で3.2であり、極めて良好であることが確認された。
【0079】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層のケイ素含有保護層と位相層の両方及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、比較例3に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、100kJ/cmであった。
上記測定結果から、比較例3の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が100kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
【0080】
(比較例4)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を62nmの厚さで成膜した。モリブデンとケイ素とを含むターゲットを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。
次に、この位相層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、タングステンと酸素とからなるタングステン含有保護層を3nmの厚さで成膜した。ターゲットはタングステンを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このタングステン含有保護層の組成をESCAで分析したところ、W:O=25:75(原子%比)であった。
【0081】
次に、このタングステン含有保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、タンタルと酸素とからなるタンタル含有保護層を8nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このタンタル含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=30:70(原子%比)であった。
こうして形成した位相層とタングステン含有保護層、タンタル含有保護層からなる位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が177度であった。
次に、このタンタル含有保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と炭素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と二酸化炭素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:C=55:35:10(原子%比)であった。
【0082】
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、タンタル含有保護層、タングステン含有保護層、及び位相層の全てをパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。こうして、タンタル含有保護層、タングステン含有保護層、及び位相層の全てをパターニングし、且つ石英基板を平均3nm掘り込んだ状態における位相差は180度であった。
【0083】
タングステン含有保護層及びタンタル含有保護層で構成される保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で1.5であった。
上記測定結果から、比較例4の位相シフトマスクであれば、保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で1.5であり、位相シフト膜を加工する上で問題ない程度であることが確認された。
以上より、位相層の上面に保護層としてケイ素含有保護層及びタンタル含有保護層を形成することは、位相シフトマスクにおける保護層のエッチングレートを高める際に有効であることが分かる。
【0084】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層のタンタル含有保護層、タングステン含有保護層、位相層及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、比較例4に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、156kJ/cmであった。
上記測定結果から、比較例4の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が156kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
【0085】
(比較例5)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相層を62nmの厚さで成膜した。モリブデンとケイ素とを含むターゲットを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=30:5:20:45(原子%比)であった。
次に、この位相層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、テルルと酸素とからなるテルル含有保護層を4nmの厚さで成膜した。ターゲットはテルルを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このテルル含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Te:O=35:65(原子%比)であった。
【0086】
次に、このテルル含有保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、保護層として、タンタルと酸素とからなるタンタル含有保護層を6nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。このタンタル含有保護層の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=30:70(原子%比)であった。
こうして形成した位相層とテルル含有保護層、タンタル含有保護層からなる位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が177度であった。
次に、このタンタル含有保護層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と炭素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と二酸化炭素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:C=55:35:10(原子%比)であった。
【0087】
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0088】
次に、ドライエッチング装置を用いて、タンタル含有保護層、テルル含有保護層、及び位相層の全てをパターニングした。エッチングガスはCFと酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。こうして、タンタル含有保護層、テルル含有保護層、及び位相層の全てをパターニングし、且つ石英基板を平均3nm掘り込んだ状態における位相差は180度であった。
タンタル含有保護層、テルル含有保護層で構成される保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で1.5であった。
【0089】
上記測定結果から、比較例5の位相シフトマスクであれば、保護層のエッチングレートは、比較例2のタンタル含有保護層のみで構成される保護層に対する相対値で1.5であり、位相シフト膜を加工する上で問題ない程度であることが確認された。
以上より、位相層の上面に保護層としてケイ素含有保護層及びタンタル含有保護層を形成することは、位相シフトマスクにおける保護層のエッチングレートを高める際に有効であることが分かる。
【0090】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層のタンタル含有保護層、テルル含有保護層、位相層及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、比較例5に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、155kJ/cmであった。
上記測定結果から、比較例5の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が155kJ/cmであるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
【0091】
【表1】
【0092】
このように、本実施例に係る位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクであれば、基板と位相シフト膜とを備え、位相シフト膜は、位相層と保護層とを備え、保護層は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層とを備えているため、ヘイズの発生を低減可能であり、且つ位相シフト膜(特に保護層)のエッチングレートを向上させることが可能である。
【0093】
以上、上記実施例により、本発明の位相シフトマスクブランクおよびこれを用いて作成される位相シフトマスクについて説明したが、上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの実施例を変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において他の様々な実施例が可能であることは上記の記載から自明である。
【0094】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクを作製するために用いられる位相シフトマスクブランクであって、
透明基板と、前記透明基板の上に形成された位相シフト膜と、を備え、
前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層と、前記位相差透過率調整層の上に形成され、前記位相差透過率調整層への気体透過を阻止する気体透過保護層と、を備え、
前記気体透過保護層は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層と、を備え、
前記タンタル含有保護層全体におけるタンタル含有率が10原子%以上90原子%以下であることを備えることを特徴とする位相シフトマスクブランク。
(2)
前記位相差透過率調整層の膜厚をd1とし、前記ケイ素含有保護層の膜厚をd2とし、前記タンタル含有保護層の膜厚をd3としたときに、d1が20nm以上であり、且つd2とd3の合計が2nm以上20nm以下の範囲内であることを特徴とする上記(1)に記載の位相シフトマスクブランク。
(3)
前記位相シフト膜は、酸素含有塩素系エッチングに対して耐性を有し、且つフッ素系エッチングでエッチング可能であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の位相シフトマスクブランク。
(4)
前記位相差透過率調整層は、ケイ素と、遷移金属、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有し、
前記遷移金属は、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、及びハフニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
(5)
前記タンタル化合物は、タンタルと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
(6)
前記ケイ素化合物は、ケイ素と、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
(7)
前記ケイ素化合物は、遷移金属を含有しないことを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランク。
(8)
波長200nm以下の露光光が適用され、転写パターンが形成された位相シフトマスクであって、
透明基板と、前記透明基板の上に形成された位相シフト膜と、を備え、
前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする位相差透過率調整層と、前記位相差透過率調整層の上に形成され、前記位相差透過率調整層への気体透過を阻止する気体透過保護層と、を備え、
前記気体透過保護層は、ケイ素化合物を含有するケイ素含有保護層と、タンタル金属及びタンタル化合物の少なくとも一方を含有するタンタル含有保護層と、を備え、
前記タンタル含有保護層全体におけるタンタル含有率が10原子%以上90原子%以下であることを特徴とする位相シフトマスク。
(9)
上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法であって、
前記位相シフト膜上に遮光膜を形成する工程と、
前記位相シフト膜上に形成された前記遮光膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを形成した後に、酸素含有塩素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、
前記遮光膜にパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記位相シフト膜を構成する前記位相差透過率調整層と前記気体透過保護層とにパターンを形成する工程と、
前記位相シフト膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去する工程と、
前記レジストパターンを除去した後に、前記位相シフト膜上から、酸素含有塩素系エッチングにて前記遮光膜を除去する工程と、を含むことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明では、位相シフトマスクブランクの組成及び膜厚及び層構造と、これを用いた位相シフトマスクの製造工程及び条件を適切な範囲で選択したので、28nm以下のロジック系デバイス、又は30nm以下のメモリ系デバイス製造に対応した、微細なパターンを高精度で形成した位相シフトマスクを提供することができる。
【符号の説明】
【0096】
10・・・位相シフトマスクブランク
11・・・露光波長に対して透明な基板(基板)
12・・・位相シフト膜
12a・・位相シフト膜パターン
13・・・位相層(位相差透過率調整層)
14・・・保護層(気体透過保護層)
15・・・ケイ素含有保護層
16・・・タンタル含有保護層
17・・・遮光膜
18・・・レジストパターン
100・・位相シフトマスク
d1・・・位相層の膜厚
d2・・・ケイ素含有保護層の膜厚
d3・・・タンタル含有保護層の膜厚
図1
図2
図3
図4