(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041668
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】車両用照明装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/00 20060101AFI20240319BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20240319BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20240319BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240319BHJP
F21W 102/17 20180101ALN20240319BHJP
【FI】
B60Q1/00 G
F21V14/04
F21V7/00 590
F21W102:155
F21W102:17
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146601
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田古里 眞嘉
(72)【発明者】
【氏名】槌谷 裕志
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA21
3K339AA22
3K339BA01
3K339BA22
3K339CA01
3K339CA30
3K339EA06
3K339EA10
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA03
3K339JA21
3K339KA06
3K339LA06
3K339MA01
3K339MB04
3K339MC06
3K339MC18
3K339MC36
3K339MC48
3K339MC52
3K339MC53
3K339MC77
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】道路側でのインフラ整備を俟たずに、道路の路側で照射パターンの明部が流れるように見える現象を生起させ、運転者に車速の変更を促す心理効果を与えることができる車両用照明装置を提供すること。
【解決手段】車両用照明装置1は、自車の走行路側方の照射領域(右側パターン照射領域12)を明領域13と暗領域14とが交互に繰り返される明暗混合照射パターン(菱形格子照射パターン15、ストライプ照射パターン21)で照射するパターン照射部(プロジェクターユニット8)と、自車の運転者に減速行動または加速行動を促す状況を認識してこの認識に対応する出力を得る状況認識デバイス50と、状況認識デバイス50の出力に基づいて、パターン照射光の明領域13と暗領域14とが車両2の前後方向に移動するようにパターン照射部8を制御する制御部(灯具制御ECU9)と、を備えた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の走行路側方の照射領域を明領域と暗領域とが交互に繰り返される明暗混合照射パターンで照射するパターン照射部と、
自車の運転者に減速行動または加速行動を促す状況を認識してこの認識に対応する出力を得る状況認識デバイスと、
前記状況認識デバイスの出力に基づいて、前記パターン照射光の明領域と暗領域とが車両の前後方向に移動するように前記パターン照射部を制御する制御部と、を備えた車両用照明装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記照射パターンの明領域と暗領域とが移動する速度を変更するように前記パターン照射部を制御する請求項1に記載の車両用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路が下り坂から上り坂に変わる所謂サグ部のような場所では、車両の運転者が自然に車速を緩めてしまう傾向があり、これは渋滞発生の原因になっている。逆にサグ部を過ぎると、運転者が車速を上げ過ぎる傾向も見られる。このような渋滞の解消や、車速超過抑制の方策として、路側に所定間隔で配列した一連の発光部を順次点灯させることにより明部が流れるように見える現象を起こし、運転者に車速の変更を促す心理効果を与えるインフラが整備される場合がある。この場合、運転者に対し、走行方向全体に対する注意力をそぐことなく、車速の調節を促すために、発光部を周囲の明るさに合せて調光する技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1におけるような技術では、渋滞解消や車速超過抑制のために整備されるインフラは大規模なものとなる。このため、高速道路やこれに準ずる道路であったとしても限定的な場所にしかこの種のインフラを整備することはできない。
【0005】
本発明は、上述のような状況に鑑みてなされたものであり、道路側でのインフラ整備を俟たずに、道路の路側で照射パターンの明部が流れるように見える現象を生起させ、運転者に車速の変更を促す心理効果を与えることができる車両用照明装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 自車の走行路側方の照射領域を明領域(例えば、後述する明領域13)と暗領域(例えば、後述する暗領域14)とが交互に繰り返される明暗混合照射パターン(例えば、後述する菱形格子照射パターン15、ストライプ照射パターン21)で照射するパターン照射部(例えば、後述するプロジェクターユニット8)と、自車の運転者に減速行動または加速行動を促す状況を認識してこの認識に対応する出力を得る状況認識デバイス(例えば、後述する状況認識デバイス50)と、前記状況認識デバイスの出力に基づいて、前記パターン照射光の明領域と暗領域とが車両の前後方向に移動するように前記パターン照射部を制御する制御部(例えば、後述する灯具制御ECU9)と、を備えた車両用照明装置。
【0007】
(2) 前記制御部は、前記照射パターンの明領域と暗領域とが移動する速度を変更するように前記パターン照射部を制御する(1)の車両用照明装置。
【発明の効果】
【0008】
(1)の車両用照明装置では、自車の運転者に減速行動または加速行動を促すことが求められる状況に到ったことを状況認識デバイスが認識し、この認識に対応する出力を発する。この出力に応じて制御部がパターン照射部をパターン照射光の明領域と暗領域とが車両の前後方向に移動するように制御する。このため、運転者は、パターン照射部からの照射パターンの流れに促されて、車両に対する加速させる行動、或いは、減速させる行動へと誘導される。
【0009】
(2)の車両用照明装置では、状況認識デバイスにおける認識に対応する出力に基づいて、制御部が、照射光の照射パターンが車両の前後方向に移動する速度を変えるようにパターン照射部を制御する。このため、運転者は、照射パターンの流れの速度の変化を知覚して、車速を適正な程度となるように調節することを促される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の車両用照明装置による照明光の照射の様子を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の車両用照明装置の構成図である。
【
図3】
図2の車両用照明装置における各灯具の照射領域を示す図である。
【
図4】
図2の車両用照明装置の動作モードがロービームモードである場合の該当する灯具の照射領域を示す図である。
【
図5】
図2の車両用照明装置の動作モードがハイビームモードである場合の灯具の照射領域の一例を示す図である。
【
図6】
図2の車両用照明装置におけるパターン照射部による照射パターンのs一例を示す図である。
【
図7】
図2の車両用照明装置で照射された夜間における運転視野の様子を示す図である。
【
図8】
図2の車両用照明装置の動作を示すタイミング図である。
【
図9】
図2の車両用照明装置におけるパターン照射部による照射パターンの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、照射領域とは灯具による光の照射域であり、照射パターンとは照射領域における明領域と暗領域とによる模様、照射領域の輪郭形状、その他の照射形態である。
【0012】
図1は、本発明の実施形態の車両用照明装置1による照明光の照射の様子を示す模式図である。車両2に設けられた車両用照明装置1の正面前方、例えば、25m前方に設定された所定の仮想鉛直面であるテストスクリーン3上に形成される照射パターンによって車両用照明装置1からの照射光の配光が評価される。
【0013】
図2は車両用照明装置1の構成図、
図3は車両用照明装置1における各灯具の照射領域を示す図である。灯具である左側ヘッドライトユニット4および右側ヘッドライトユニット5それぞれに、車両2の車幅方向で内側から外側に向かう順に、ハイビームユニット6、ロービームユニット7、プロジェクターユニット8が配されている。左側ヘッドライトユニット4および右側ヘッドライトユニット5それぞれにおいて、灯具制御ECU9の制御下で、ハイビームユニット6、ロービームユニット7、プロジェクターユニット8が作動する。
【0014】
ハイビームユニット6は、光源である発光素子、リフレクタ、照射領域を規定する遮光板およびレンズを含む。灯具制御ECU9からの制御信号に応じて不図示の電源から電力が供給されて発光素子が発光する。発光素子からの光がリフレクタによって反射される。リフレクタからの反射光が遮光板で規定されるハイビーム照射領域10に向けてレンズから照射される。
【0015】
ロービームユニット7は、光源である発光素子、リフレクタ、照射領域を規定する遮光板およびレンズを含む。灯具制御ECU9からの制御信号に応じて不図示の電源から電力が供給されて発光素子が発光する。発光素子からの光がリフレクタによって反射される。リフレクタからの反射光が遮光板で規定されるロービーム照射領域11に向けてレンズから照射される。
【0016】
プロジェクターユニット8は、光源である発光素子、空間光変調器およびレンズを含む。空間光変調器としては、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)のように多数の反射素子を独立して変調しつつ光を反射させる形態のものを適用できる。この場合、プロジェクターユニット8は、DMDを用いたDLP(Digital Light Processing:登録商標)方式の構成をとり、レンズから車両2の前方その他周辺に種々の所定の照射パターンで光を照射することができる。
【0017】
照射パターンは種々の形の静止画パターンのみならず動画パターンの形態をもとり得る。灯具制御ECU9からの制御信号に応じて不図示の電源から駆動電力が供給されて発光素子が発光する。この発光素子からの光が、灯具制御ECU9からの制御信号に応じて駆動される空間光変調器で空間変調され、種々の所定の照射パターンでプロジェクターユニット8のレンズから車両2の前方その他周辺に光が照射される。即ち、プロジェクターユニット8は、明領域と暗領域が交互に繰り返される明暗混合照射パターンで車両2の走行路側方の側方照射領域に照射光を照射するパターン照射部を構成する。
【0018】
図3を参照して、
図1における車両用照明装置1からテストスクリーン3に光を照射した場合における、ハイビームユニット6、ロービームユニット7およびプロジェクターユニット8による照射領域について説明する。ここで、プロジェクターユニット8による照射領域については、右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8による照射領域を示している。
【0019】
左側ヘッドライトユニット4のプロジェクターユニット8による照射領域はV-V線を対象軸として右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8による照射領域と対称を成すが、図示省略してある。
【0020】
左側ヘッドライトユニット4のプロジェクターユニット8の構成と作用は、右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8と相似的である。このため、以下、左側ヘッドライトユニット4のプロジェクターユニット8の構成と作用については、右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8についての説明を援用する。
【0021】
ロービームユニット7によるロービーム照射領域11は、テストスクリーン3上で左右方向中央のV-V線(鉛直線)よりも右側に、H-H線(水平線)と平行に延びる対向車線側カットオフラインを有する。またV-V線よりも左側に、対向車線側カットオフラインよりも高い位置でH-H線に沿って延びる自車線側カットオフラインを有する。対向車線側カットオフラインと自車線側カットオフラインとの両者は、H-H線に対して傾斜した斜めカットオフラインで連なっている。ロービーム照射領域11は、車両2の前方下側の下部照射領域である。
【0022】
ハイビームユニット6によるハイビーム照射領域10は、H-H線に平行な長辺とV-V線に平行な短辺を持つ長方形をなし、その対角線の交点がH-H線とV-V線との交点に略一致する位置を占める。ハイビーム照射領域10は、対向車線側カットオフラインおよび自車線側カットオフラインそれぞれのV-V線よりの部分を含む下方の部分的領域でロービーム照射領域11に重複している。ハイビーム照射領域10は、下部照射領域であるロービーム照射領域11よりも上側かつ車両2の車幅方向中央側の上部照射領域である。
【0023】
右側ヘッドライトユニット5のプロジェクターユニット8による照射領域である右側パターン照射領域12は、灯具制御ECU9からのモード切り替え信号によって、領域の輪郭形状や当該領域内での照射パターンの形態など、照射パターンが種々変更される。但し、右側パターン照射領域12は、何れの照射パターンの形態をとる場合においても、車両2の走行路側方の側方照射領域である。
【0024】
プロジェクターユニット8の能力上、右側パターン照射領域12は、ハイビーム照射領域10と重なる重複領域12aを含む広い形態をとり得る。この形態をとる場合、右側パターン照射領域12は、高さ方向がH-H線に平行で上底および下底がV-V線に平行な横向きの台形状をなす。この台形は、V-V線に相対的に近い上底よりもV-V線から相対的に離れた下底の方が長い。即ち、右側パターン照射領域12は、車両2の車幅方向外側に向けてV-V線に沿う寸法が広がった形状を成している。
【0025】
灯具制御ECU9は、車両2に搭載された図示しない上位ECU、ライトスイッチ、ライトスイッチレバーおよび後述するカメラ16等からの出力に基づいて、車両用照明装置1の動作モードを切り替える。即ち、灯具制御ECU9は、ハイビームユニット6、ロービームユニット7およびプロジェクターユニット8に対し制御信号を供給して、これら各ユニットの動作モードを切り替える。
【0026】
図4は、灯具制御ECU9により動作モードがロービームモードにされた場合における、車両用照明装置1による照射光の照射領域を示す図である。夜間に、ライトスイッチが「オート」の位置、ライトスイッチレバーがロービーム以外の位置にあるときには、車両用照明装置1は、多くの場合ハイビームモードの状態にある。この状態で、カメラ16が対向車や前走車、一定数の街路灯を検知すると、灯具制御ECU9によって車両用照明装置1の動作モードがロービームモードに切り替えられる。ロービームモード時には、灯具制御ECU9による制御下で、ハイビームユニット6は消灯され、ロービームユニット7がロービーム照射領域11を照射し、プロジェクターユニット8が右側パターン照射領域12を照射する。
【0027】
図5は、灯具制御ECU9により動作モードがハイビームモードにされた場合における、車両用照明装置1による照射光の照射領域を示す図である。夜間にライトスイッチが「オート」の位置、ライトスイッチレバーがハイビーム以外の位置にあるときには、車両用照明装置1は、多くの場合ロービームモードの状態にある。この状態で、カメラ16が対向車や前走車、一定数以上の街路灯を検知していない場合に、灯具制御ECU9によって車両用照明装置1の動作モードがハイビームモードに切り替えられる。詳細には、上位ECUによって、車両2が、例えば、時速30km以上の速度で走行中であることが検知されていることもハイビームモードへの切り替えの必要条件とされる。ハイビームモード時には、灯具制御ECU9による制御下で、ハイビームユニット6がハイビーム照射領域10を照射し、ロービームユニット7がロービーム照射領域11を照射し、プロジェクターユニット8が右側パターン照射領域12を照射する。
【0028】
ハイビームモード時には、灯具制御ECU9による制御下で、ハイビームユニット6が点灯したことに応じて、プロジェクターユニット8による右側パターン照射領域12の照射パターンの形態が変更される。即ち、右側パターン照射領域12が、ロービームモード時におけるような重複領域12aを含む横向き台形状の広い領域を占める形態から、重複領域12aを持たずハイビーム照射領域10と重ならない縮小された形態へと変更される。右側パターン照射領域12の縮小は、プロジェクターユニット8において点灯させる発光素子の数を全数点灯時よりも限定的なものとすることによって実現されるため、電力消費を低減できる。
【0029】
上述したロービームモード時およびハイビームモード時の何れにおいても、右側パターン照射領域12には、プロジェクターユニット8から
図6に示すような、明領域13と暗領域14が交互に繰り返される明暗混合照射パターンでパターン照射光が照射される。
図6における明暗混合照射パターンは、特に、斜め菱形格子の網目模様の明領域13と、この明領域13に囲まれた暗領域14とによる斜め菱形格子照射パターン15である。
【0030】
右側パターン照射領域12では、明暗混合照射パターンにおける明領域13と暗領域14とが車両2の前後方向に車速に応じて動的に移動する。即ち、明暗混合照射パターンは車両2の前後方向に流れる動画の様相を呈する。
【0031】
図7は、車両2のフロントウィンドウからの夜間における運転視野を本実施形態の車両用照明装置1で照射した様子を示す図である。
図7では、
図6との対応部に同一の符号が附されている。
図7の運転視野では、路側の右前方に向けて、
図6の明暗混合照射パターンである斜め菱形格子照射パターン15が、矢線で示されたように流れる動画で照射される。
【0032】
車両2の運転者は、上述のように車両2の前後方向に流れるように動く明暗混合照射パターンによって視覚誘導性自己運動感覚を誘発される。明暗混合照射パターンの流れが車速よりも遅く、
図7におけるように車両2に向かってくるように見えるときには、運転者は、車両2を減速する行動へと誘導される。
図7の場合とは反対に、明暗混合照射パターンの流れが車両2を追い越していくように見えるときには、運転者は、明暗混合照射パターンの流れに追いつこうとして車両2を加速する行動へと誘導される。
【0033】
なお、プロジェクターユニット8からの明暗混合照射パターンは、
図6に示すような斜め菱形格子パターンであるため、ヒトの視覚特性により、路側20の歩行者19の存在が運転者から容易に認識される。夜間でかつ雨天であるといった悪条件の下でも、運転者による歩行者19の見落としを改善できる。
【0034】
ここで、右側パターン照射領域12における明領域13と暗領域14との動的な移動は、灯具制御ECU9による制御下で、例えば、DLP方式のプロジェクターユニット8が駆動されることによって実現される。この場合、灯具制御ECU9は、自車の運転者に減速行動または加速行動を促す状況を認識してこの認識に対応する出力を得る状況認識デバイス50の出力に基づいてプロジェクターユニット8を駆動する。
【0035】
状況認識デバイス50は、カメラ16、スピードメータ17、カーナビゲーションシステム18などを含んで構成される。詳細には、状況認識デバイス50は、カメラ16、スピードメータ17およびカーナビゲーションシステム18のうちの一つまたは複数のものと、これらからの出力が供給される灯具制御ECU9のうちの状況認識に関する機能部とが協働するようにして構成される。また、灯具制御ECU9のうち、ハイビームユニット6、ロービームユニット7およびプロジェクターユニット8の駆動を司る駆動機能部が本実施形態における制御部を構成する。
【0036】
以下の説明において、灯具制御ECU9の状況認識に関する機能部を、適宜、単に、灯具制御ECU9と称する。灯具制御ECU9は、カメラ16から供給される撮像視野に関するデータに基づいて演算により車両2の車速の値を取得し、或いは、スピードメータ17から車両2の車速の値を取得する。灯具制御ECU9は、カメラ16から供給される撮像視野内の道路標識に関するデータを判読して、車両2が走行している道路の制限速度の値を取得する。或いはまた、灯具制御ECU9は、カーナビゲーションシステム18から供給されるデータに基づいて、車両2が走行している道路の制限速度の値を得る。
【0037】
灯具制御ECU9の状況認識に関する機能部は、上述のようにして取得した車両2の車速の値と、車両2が走行している道路の制限速度の値とを比較して、現在時点の車速が適正であるか否かを表す出力を発する。灯具制御ECU9の状況認識に関する機能部の出力が状況認識デバイス50の出力に該当する。
【0038】
図8は、車両用照明装置1の動作を示すタイミング図である。時刻t0からt1までの時間区間は、灯具制御ECU9の状況認識に関する機能部が取得している車両2の車速の値は、車両2が走行している道路の制限速度の値と比較して適正である。即ち、車両2の車速は、概ね制限速度に等しい。従って、時刻t0からt1までは、状況認識デバイス50の出力は「車速適正」に対応した、例えば、ロウレベルである。状況認識デバイス50の出力が「車速適正」であるときには、灯具制御ECU9の上述した駆動機能部が、プロジェクターユニット8を照射パターンの流れが「車速相応」となるように駆動する。照射パターンの流れが「車速相応」である場合には、運転者は加速、減速の何れの行動も促されることがない。
【0039】
時刻t1に到って以降、時刻t3までの時間区間は、灯具制御ECU9の状況認識に関する機能部が取得している車両2の車速の値は、車両2が走行している道路の制限速度の値と比較して不足している状態である。即ち、上述したサグ部におけるように、車速が低下して、渋滞を惹起するおそれがある状態である。従って、時刻t1からt3までは、状況認識デバイス50の出力は「加速促進」に対応した、例えば、ハイレベルをとる。状況認識デバイス50の出力が「加速促進」であるときには、灯具制御ECU9の上述した駆動機能部が、プロジェクターユニット8を照射パターンの流れが「より速い」状態となるように駆動する。照射パターンの流れが「より速い」状態である時間区間では、照射パターンの流れの速さが車両2の車速を上回る。このため、運転者側からは照射パターンの流れが、走行中の自車両を追い越していくように見える。従って、運転者は照射パターンの流れに追いつくように加速行動を促される。
【0040】
なお、照射パターンの流れが、時刻t1に、直ちに「より速い」状態に転じたとしても、運転者は時刻t2までの反応時間だけ遅延して加速行動をとる。このため、車速は、時刻t2から上昇し始める。運転者が時刻t2以降加速行動を持続し、時刻t3に到ると、車速の値は適正値に達する。従って、状況認識デバイス50の出力は「車速適正」に対応したロウレベルに復する。また、灯具制御ECU9の上述した駆動機能部が、プロジェクターユニット8を照射パターンの流れが「車速相応」状態となるように駆動する。「車速相応」である場合には、運転者はその時の車速を維持する。
【0041】
本実施形態の、車両用照明装置1では、プロジェクターユニット8から照射される照射パターンの流れの速さに応じて車速を変化させる行動の主体は車両2の運転者である。即ち、運転者は、自ら意識して加速または減速のための行動をとり、この行動によって、車両2の実際の車速が適正値となうように変化する。従って、運転者が、意図しない車速の変化が起こり違和感を感じてしまうような不都合が生じない。
【0042】
本実施形態の車両用照明装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0043】
(1)の車両用照明装置1では、自車の運転者に減速行動または加速行動を促すことが求められる状況に到ったことを、カメラ16、スピードメータ17およびカーナビゲーションシステム18のうちの一つまたは複数のものと、これらからの出力が供給される灯具制御ECU9のうちの状況認識に関する機能部とが協働するようにして構成される状況認識デバイス50が認識し、この認識に対応する出力を発する。この出力に応じて、灯具制御ECU9のうち、ハイビームユニット6、ロービームユニット7およびプロジェクターユニット8の駆動を司る駆動機能部で構成される制御部が、パターン照射部であるプロジェクターユニット8を、パターン照射光の明領域13と暗領域14とが車両2の前後方向に移動するように制御する。このため、運転者は、パターン照射部からの照射パターンの流れに促されて、車両2を加速し、或いは、減速する行動へと誘導される。一方、プロジェクターユニット8からの明暗混合照射パターンは、明領域13と暗領域14が交互に繰り返される明暗混合照射パターンであるため、ヒトの視覚特性により、路側20の歩行者19の存在が運転者から容易に認識される。夜間でかつ雨天であるといった悪条件の下でも、運転者による歩行者19の見落としを改善できる。
【0044】
(2)の車両用照明装置1では、状況認識デバイス50における認識に対応する出力に基づいて、灯具制御ECU9のうちのハイビームユニット6、ロービームユニット7およびプロジェクターユニット8の駆動を司る駆動機能部で構成される制御部が、照射光の照射パターンが車両の前後方向に移動する速度を変えるようにプロジェクターユニット8を制御する。このため、運転者は、照射パターンの流れの速度の変化を知覚して、車速を適正な程度となるように調節することを促される。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。例えば、プロジェクターユニット8による照射光の照射パターンは、斜め菱形格子の網目模様の明領域13と、この明領域13に囲まれた暗領域14とによる菱形格子照射パターン15に限られない。即ち、プロジェクターユニット8による照射光の照射パターンは、
図9に示すような、明領域13と暗領域14とが交互に並んだ縦縞のストライプパターンであるストライプ照射パターン21であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…車両用照明装置
2…車両
3…テストスクリーン
4…左側ヘッドライトユニット
5…右側ヘッドライトユニット
6…ハイビームユニット
7…ロービームユニット
8…プロジェクターユニット(パターン照射部)
9…灯具制御ECU
10…ハイビーム照射領域(上部照射領域)
11…ロービーム照射領域(下部照射領域)
12…右側パターン照射領域(側方照射領域)
12a…重複領域
13…明領域
14…暗領域
15…菱形格子照射パターン
16…カメラ
17…スピードメータ
18…ナビゲーションシステム
19…歩行者
20…路側
21…ストライプ照射パターン
50…状況認識デバイス