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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041676
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20220101AFI20240319BHJP
   F24H 1/14 20220101ALI20240319BHJP
   F24H 8/00 20220101ALI20240319BHJP
   B05B 17/06 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F24H9/00 B
F24H1/14 B
F24H8/00
B05B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146616
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】木下 将晃
【テーマコード(参考)】
3L034
3L036
4D074
【Fターム(参考)】
3L034BA25
3L034BA26
3L036AA11
4D074AA10
4D074BB03
4D074DD03
4D074DD05
4D074DD09
4D074DD12
4D074DD22
4D074DD34
4D074DD42
4D074DD52
(57)【要約】
【課題】少数の超音波素子でドレン水を処理することが可能な給湯装置を提供する。
【解決手段】給湯装置(1)で生じたドレン水を受けるドレン容器(50)の底面に複数の超音波素子(51)を配置して、超音波素子でドレン水をドレンミストに変換して、給湯装置の外部に排出する。超音波素子は振動面(52)を上方に向けて配置し、互いに隣接する少なくとも二つの超音波素子については、一の超音波素子の振動面から放射される超音波のビーム(55)と、他の超音波素子の振動面から放射される超音波のビームとが交差するように搭載する。こうすれば、それぞれの超音波素子が発生させる水柱が合体して、水柱の内部の流れに乱れが発生し、更に、水柱の内部では二つの超音波のビームによって強め合う干渉が発生する。その結果、ドレン水の霧化が促進されるので、ドレン容器に少数の超音波素子を搭載するだけで、ドレン水を処理することが可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを燃焼させることによって燃焼排気を発生させるバーナと、前記燃焼排気中の顕熱を利用して水を加熱することによって温水を生成する顕熱熱交換器と、前記顕熱熱交換器で加熱される前の水を前記燃焼排気中の潜熱を利用して予熱する潜熱熱交換器と、前記燃焼排気中の水蒸気が前記潜熱熱交換器で結露することによって生じたドレン水を受けるドレン溜め部とを搭載し、前記顕熱熱交換器で生成された前記温水を給湯する給湯装置において、
前記ドレン溜め部の底面に配置されて、前記ドレン溜め部で前記ドレン水を受けると前記ドレン水の中に水没した状態となり、前記ドレン水を霧化することによってドレンミストを発生させる複数の超音波素子と、
前記超音波素子が発生させた前記ドレンミストを前記給湯装置の外部に排出するドレンミスト排出通路と
を備え、
複数の前記超音波素子は、
超音波を放射する振動面を上方に向けた状態で配置されていると共に、
互いに隣接する少なくとも二つの前記超音波素子については、一の前記超音波素子の前記振動面から放射される超音波のビームと、他の前記超音波素子の前記振動面から放射される超音波のビームとが交差するように、互いの前記振動面が斜めに向かい合わせとなる状態で搭載されている
ことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯装置において、
前記超音波のビームが交差する状態で搭載された互いに隣接する二つの前記超音波素子は、二つの前記超音波のビームが、互いの前記振動面の中心を結んだ直線を通る鉛直平面からオフセットした位置で交差するように、二つの前記振動面が一方向に傾いた状態で搭載されている
ことを特徴とする給湯装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の給湯装置において、
前記潜熱熱交換器を通過した前記燃焼排気を前記給湯装置の外部に排出する排気通路を備え、
前記ドレンミスト排出通路は前記排気通路に接続されている
ことを特徴とする給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを燃焼させるバーナと、燃焼排気中の顕熱を回収する顕熱熱交換器と、燃焼排気中の潜熱を回収する潜熱熱交換器とを備え、燃焼排気中の顕熱および潜熱を用いて温水を生成する給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置では、燃料ガスを燃焼させて生じた高温の燃焼排気を熱交換器に導いて、燃焼排気と水とを熱交換させることによって温水を生成する。熱交換器で熱交換した燃焼排気は排気ダクトを通って屋外に排出されるが、この燃焼排気には多量の水蒸気が含まれており、水蒸気は液体の水に戻る際に潜熱を放出することが知られている。そこで、熱交換器を通過した後の燃焼排気を、潜熱熱交換器に導いて水と熱交換させることで、潜熱も回収して熱効率を向上させることが可能な給湯装置も知られている。
【0003】
ここで、潜熱熱交換器では、燃焼排気中の水蒸気が結露することによってドレン水が発生する。このため、潜熱熱交換器を搭載した給湯装置を設置する際には、給湯装置から流出したドレン水を適切な排水位置まで導くためのドレン排水管を給湯装置の設置位置に予め敷設しておく必要が生じる。
【0004】
そこで、ユーザがドレン排水管を敷設する負担を軽減可能とするために、潜熱熱交換器で発生したドレン水をドレン容器に貯留して、超音波素子を用いてドレン水を霧化した状態で給湯装置外に排出する給湯装置も提案されている(特許文献1)。この提案の給湯装置では、ドレン排水管を敷設しておく必要がないので、ユーザの負担を大きく軽減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-046813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した提案の給湯装置では、潜熱熱交換器で発生する全てのドレン水を霧化させようとすると、多数の超音波素子を搭載する必要が生じ、このため給湯装置が大型化したり、給湯装置の製造コストが高くなったりする虞があるという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するために成されたものであり、超音波素子の霧化効率を向上させることによって、少数の超音波素子でドレン水を処理することが可能な給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の給湯装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスを燃焼させることによって燃焼排気を発生させるバーナと、前記燃焼排気中の顕熱を利用して水を加熱することによって温水を生成する顕熱熱交換器と、前記顕熱熱交換器で加熱される前の水を前記燃焼排気中の潜熱を利用して予熱する潜熱熱交換器と、前記燃焼排気中の水蒸気が前記潜熱熱交換器で結露することによって生じたドレン水を受けるドレン溜め部とを搭載し、前記顕熱熱交換器で生成された前記温水を給湯する給湯装置において、
前記ドレン溜め部の底面に配置されて、前記ドレン溜め部で前記ドレン水を受けると前記ドレン水の中に水没した状態となり、前記ドレン水を霧化することによってドレンミストを発生させる複数の超音波素子と、
前記超音波素子が発生させた前記ドレンミストを前記給湯装置の外部に排出するドレンミスト排出通路と
を備え、
複数の前記超音波素子は、
超音波を放射する振動面を上方に向けた状態で配置されていると共に、
互いに隣接する少なくとも二つの前記超音波素子については、一の前記超音波素子の前記振動面から放射される超音波のビームと、他の前記超音波素子の前記振動面から放射される超音波のビームとが交差するように、互いの前記振動面が斜めに向かい合わせとなる状態で搭載されている
ことを特徴とする。
【0009】
このような本発明の給湯装置においては、潜熱熱交換器で生じたドレン水を受けるドレン溜め部の底面に複数の超音波素子が配置されている。このため、ドレン水を超音波素子で霧化することによってドレンミストに変換して、ドレンミスト排出通路から給湯装置の外部に排出することで、ドレン水を処理することができる。ここで、複数の超音波素子は、超音波を放射する振動面を上方に向けた状態で配置されている。更に、互いに隣接する少なくとも二つの超音波素子については、一の超音波素子の振動面から放射される超音波のビームと、他の超音波素子の振動面から放射される超音波のビームとが交差するように、互いの振動面が斜めに向かい合わせとなる状態で搭載されている。
【0010】
超音波素子をドレン水に水没させた状態で超音波のビームを上方に向けて放射すると、超音波の放射圧でドレン水が押し上げられることによって、ドレン水の水面から水柱が立ちあがる。ここで、二つの超音波のビームを交差させると、それぞれの超音波のビームが形成する水柱が合体して、水柱の内部の流れに乱れが発生する。更に、水柱の内部では二つの超音波のビームによって強め合う干渉が発生する。その結果、ドレン水の霧化が促進されるので、ドレン溜め部に少数の超音波素子を搭載するだけで、ドレン水を処理することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明の給湯装置では、二つの超音波素子から放射された超音波のビームが、次のような位置で交差するようにしても良い。すなわち、超音波のビームが交差して互いに隣接する二つの超音波素子について、互いの振動面の中心を結んだ直線を通る鉛直平面を考えた時に、二つの超音波のビームが鉛直平面からオフセットした位置で交差するようにしても良い。
【0012】
こうすれば、二つの超音波のビームによって形成される水柱は斜め上方に向かって形成される。このため、水柱の頂部に達して勢いを失ったドレン水は、水柱から離れた位置を落下することになる。勢いを失って落下するドレン水は、超音波のビームがドレン水を霧化する作用を阻害すると考えられるが、ドレン水が水柱から離れた位置を落下するので、霧化が阻害されることを抑制することができる。その結果、ドレン水の霧化効率を向上させることが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明の給湯装置では、潜熱熱交換器を通過した燃焼排気が排気通路を通って外部に排出されるようにしておき、ドレンミストを排出するためのドレンミスト排出通路を排気通路に接続しておいても良い。
【0014】
こうすれば、ドレンミスト排出通路から排気通路に流入したドレンミストは、排気通路内で燃焼排気と混合した後、給湯装置の外部に排出される。ドレンミストが混合した後の燃焼排気の成分は、バーナでの燃焼によって生成された燃焼排気中に含まれる成分と同様であるから、ドレンミストを燃焼排気と混合してから排出することで、安全に排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例の給湯装置1の大まかな構造を示した説明図である。
図2】本実施例の給湯装置1に搭載されているドレン容器50についての説明図である。
図3】本実施例の他の態様のドレン容器50についての説明図である。
図4】比較例としての従来のドレン容器90についての説明図である。
図5】従来のドレン容器90を基準として本実施例のドレン容器50でのドレン水の霧化能力を比較した実験結果を示す説明図である。
図6】従来のドレン容器90でドレン水が霧化される様子を示した説明図である。
図7】本実施例のドレン容器50ではドレン水を効率よく霧化できる理由を示した説明図である。
図8】本実施例のドレン容器50ではドレン水を効率よく霧化できる他の理由を示した説明図である。
図9】変形例のドレン容器50についての説明図である。
図10】変形例のドレン容器50で同時に駆動する超音波素子51の組み合わせを変更することでドレン水の霧化能力が増減する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施例の給湯装置1の大まかな構造を示す説明図である。図示されるように給湯装置1は、直方体の本体ケース2の内部に、直方体の燃焼筐3が収納された構造となっている。燃焼筐3の内部に形成された空間の下部には、燃料ガスを燃焼させる複数のバーナ単体10aから構成されたバーナ10が収納されており、バーナ10の上方の空間には顕熱熱交換器20が収納され、顕熱熱交換器20の上方の空間には潜熱熱交換器21が収納されている。更に、燃焼筐3の天井には、排気口3aが開口しており、排気口3aからは、本体ケース2の外部まで延びる排気通路4が形成されている。また、燃焼筐3の底部には、燃焼筐3の内部に燃焼用の空気を送風する燃焼ファン5が搭載されている。
【0017】
バーナ10で燃焼させる燃料ガスは、ガス通路30から供給されている。ガス通路30には、ガス通路30を開閉する元ガス電磁弁31が搭載されており、元ガス電磁弁31の下流の位置には、ガス通路30を流れるガス流量を調節するガス流量調節弁32が搭載されている。また、ガス流量調節弁32の下流では、ガス通路30が二つの分岐通路33に分岐しており、一方の分岐通路33aはガスマニホールド11aに接続され、他方の分岐通路33bはガスマニホールド11bに接続されている。そして、分岐通路33aの途中には、分岐通路33aを開閉する開閉弁12aが搭載されており、分岐通路33bの途中には、分岐通路33bを開閉する開閉弁12bが搭載されている。更に、ガスマニホールド11a,11bには複数の噴射ノズル12が突設されており、それぞれの噴射ノズル12に対してバーナ単体10aが搭載されている。図1に示した例では、ガスマニホールド11aには二つの噴射ノズル12が突設されており、ガスマニホールド11bには四つの噴射ノズル12が突設されている。このことに対応して、ガスマニホールド11aに対しては二つのバーナ単体10aが搭載されており、ガスマニホールド11bに対しては四つのバーナ単体10aが搭載されている。
【0018】
バーナ10で燃料ガスを燃焼させるためには、燃焼ファン5を回転させて燃焼筐3内に燃焼用の空気を送風した状態で、元ガス電磁弁31や、ガス流量調節弁32、開閉弁12a,12bを開弁させる。すると、燃料ガスがガス通路30および分岐通路33a,33bを介してガスマニホールド11a,11bに供給された後、ガスマニホールド11a,11bに形成された噴射ノズル12から燃料ガスが噴射される。噴射された燃料ガスは、周囲の空気を巻き込みながらバーナ単体10aの内部に流入して混合した後、混合ガスとなってバーナ単体10aから流出する。この状態で、図示しない点火プラグから火花を飛ばすことによって混合ガスに点火すると、バーナ10での燃焼が開始される。
【0019】
バーナ10で単位時間あたりに燃焼させる燃料ガスのガス流量は、ガス流量調節弁32の開度を変更することによって調節することができる。もっとも、バーナ10での燃焼量を絞る場合、バーナ単体10aで燃焼させるガス流量をあまりに小さくすると、バーナ単体10aで燃料ガスを安定して燃焼させることが困難となるので、開閉弁12aあるいは開閉弁12bの一方を閉弁させることにより、燃料ガスを燃焼させるバーナ単体10aの数を減少させる。図1に示した例では、開閉弁12bを閉弁させて、開閉弁12aを開弁させた場合には、二つのバーナ単体10aで燃焼ガスが燃焼するが、開閉弁12bを開弁させて、開閉弁12aを閉弁させた場合には、燃焼ガスが燃焼するバーナ単体10aの数は四つに増加する。そして、開閉弁12aおよび開閉弁12bの何れも開弁させると、燃焼ガスが燃焼するバーナ単体10aの数は六つに増加する。こうして、燃料ガスを燃焼させるバーナ単体10aの数を切り換えながら、ガス流量調節弁32の開度を変更することで、バーナ10で燃焼する燃料ガスのガス流量を広い流量範囲で調節して、その結果、バーナ10の火力を広い火力範囲で調節することができる。
【0020】
また、バーナ10で燃料ガスを燃焼させると、高温の燃焼排気が燃焼筐3の内部を上昇して顕熱熱交換器20を通過する。この時、顕熱熱交換器20の内部を流れる上水が高温の燃焼排気と熱交換することによって、温水が生成されることになる。顕熱熱交換器20には、次のような経路で上水が供給される。
【0021】
外部から上水が供給される給水通路40は、給湯装置1の内部で潜熱熱交換器21に接続されている。この給水通路40の途中には、給水通路40を流れる上水の流量を検知する水量センサ41や、流量制御弁42が搭載されており、流量制御弁42の開度を変更することによって、潜熱熱交換器21に供給される上水の流量を制御することができる。潜熱熱交換器21は、ステンレス製の中空パイプを蛇行させた形状となっており、潜熱熱交換器21の下流側は、中空の連絡管22を介して顕熱熱交換器20に接続されている。このため、潜熱熱交換器21に供給された上水は、潜熱熱交換器21の内部を通過した後、連絡管22を介して顕熱熱交換器20に流入する。
【0022】
また、顕熱熱交換器20は、複数枚の銅板が所定の間隔で積層された熱交換フィン20aを、蛇行する銅製の中空パイプが貫通した形状となっている。バーナ10で燃料ガスが燃焼したことによって生じた高温の燃焼排気は、熱交換フィン20aの間を通過し、この時に、顕熱熱交換器20の内部を流れる上水と熱交換ことによって上水を加熱する。また、顕熱熱交換器20の下流側には出湯通路43が接続されている。このため、顕熱熱交換器20で加熱された上水は、顕熱熱交換器20の内部を通過した後、出湯通路43から流出する。
【0023】
顕熱熱交換器20で熱交換した燃焼排気は温度が低下するが、依然として露点(約60℃)以上の温度であるため、燃焼排気内の水分は気体(すなわち、水蒸気)のままとなっている。そこで、この燃焼排気を潜熱熱交換器21に導くことによって、潜熱熱交換器21内を流れる上水と熱交換させる。上述したように、潜熱熱交換器21内を流れる上水は給水通路40から供給された常温の上水であるから、潜熱熱交換器21を通過する燃焼排気と熱交換すると、燃焼排気中の水蒸気は露点以下の温度に冷却されて潜熱を放出することによって液体の水になり、常温の上水は潜熱を受け取ることによって温められる。こうして温められた上水が顕熱熱交換器20で高温の燃焼排気と熱交換することによって高温の温水が生成されて、出湯通路43から流出することになる。出湯通路43には温度センサ23が搭載されており、顕熱熱交換器20から流出した温水の温度を検出することが可能となっている。
【0024】
潜熱熱交換器21で熱交換した燃焼排気は、排気口3aから排気通路4を通って給湯装置1の外部に排出される。また、燃焼排気に含まれていた水蒸気は、潜熱熱交換器21を通過する際に潜熱を放出して潜熱熱交換器21の表面に結露する。このため、潜熱熱交換器21からはドレン水と呼ばれる水が滴下する。そこで、潜熱熱交換器21の下方には、滴下するドレン水を受けるためのドレン受皿24が搭載されており、ドレン受皿24で受けられたドレン水は、ドレン通路25を介してドレン容器50に流入するようになっている。尚、本実施例のドレン容器50は、本発明における「ドレン溜め部」に対応する。
【0025】
本実施例の給湯装置1では、ドレン容器50の底面には複数(図1に示した例では二つ)の超音波素子51が搭載されており、ドレン容器50内にドレン水が流入すると超音波素子51がドレン水の中に水没するようになっている。そして、超音波素子51は、超音波を放射する振動面が上方を向くように搭載されている。このため、ドレン容器50内にドレン水が流入すると、超音波素子51を駆動してドレン水を霧化させることによってドレンミストを発生させ、ドレンミスト排出通路26から排気通路4にドレンミストを排出することが可能となっている。
【0026】
また、給湯装置1には、マイクロコンピュータやメモリを内蔵した制御部60も搭載されている。制御部60は、燃焼ファン5や、開閉弁12a,12bや、元ガス電磁弁31や、ガス流量調節弁32や、水量センサ41や、流量制御弁42や、温度センサ23や、図示しない点火プラグなどに接続されており、給湯装置1の動作を制御している。更には、制御部60はドレン容器50内の超音波素子51にも接続されており、超音波素子51を駆動する制御も行っている。
【0027】
図2は、本実施例の給湯装置1に搭載されたドレン容器50の構造を示す説明図である。図示されるようにドレン容器50は中空の直方体形状に形成されており、ドレン容器50の上面にはドレン通路25と、ドレン通路25よりも大径のドレンミスト排出通路26とが接続されている。ドレン容器50の底面50aには複数(本実施例では二つ)の超音波素子51が、振動面52を上向きにした状態で搭載されている。また、本実施例のドレン容器50は、底面50aが長方形に形成されているが、二つの超音波素子51は長方形の一方の短辺50bに近づけた位置で、且つ、短辺50bに対して平行に配置されている。尚、二つの超音波素子51が短辺50bに近づけた位置に配置されている理由については後述する。また、図2(a)では、ドレン容器50の底面50aに超音波素子51が搭載されている様子が分かり易いように、ドレン容器50の側壁の一部が破かれた状態で表示されている。図2(a)に示されるように、二つの超音波素子51は、振動面52が上を向いた状態で搭載されているが、それぞれの振動面52は真上を向いているわけではなく、以下のように若干傾いた状態で搭載されている。
【0028】
図2(b)には、底面50aの短辺50b側の方向(図2(a)中の矢印Aの方向)から見た状態で、ドレン容器50内に超音波素子51が搭載されている様子が示されている。尚、図2(b)でも、ドレン容器50内に超音波素子51が搭載された状態が分かり易いように、ドレン容器50の側壁の一部が破かれた状態で表示されている。図示されるように、二つの超音波素子51は、互いの振動面52が斜めに向かい合わせとなる状態で搭載されている。ここで「互いの振動面52が斜めに向かい合わせとなる状態」とは、次のような状態である。
【0029】
先ず、超音波素子51を駆動すると、超音波素子51の振動面52が同じ位相で振動するので、超音波は振動面52の中央の位置から、振動面52の法線方向に向かってビーム状に放射される。このため、二つの超音波素子51を振動面52が真上を向くように搭載した場合には、それぞれの超音波素子51から放射される超音波のビームは互いに平行となる。次に、二つの超音波素子51を、互いの振動面52が向き合う方向に傾斜させると、それぞれの超音波素子51から放射される超音波のビームが交差するようになる。超音波のビームが交差する位置は、二つの超音波素子51を傾斜させる角度が大きくなるほど近くなり、超音波素子51の傾斜角度が90度に達すると(すなわち、二つの振動面52が完全に向かい合わせになると)二つのビームが重なった状態となる。「振動面52が斜めに向かい合わせとなった状態」とは、二つの超音波素子51の振動面52が完全に向かい合わせになる前の状態、すなわち、二つの超音波素子51から放射される超音波のビームが交差する状態である。
【0030】
図2(b)では、超音波素子51の振動面52から放射される超音波ビームの中心軸53が一点鎖線で表示されており、二つの中心軸53の交差位置Pが白い丸印で表示されている。尚、図2(b)では、二つの超音波のビームの中心軸53が交差するものとして表示されているが、中心軸53は幅を持たない「線」であるのに対して、超音波のビームは振動面52と同程度の直径を有している。従って、太さを有する超音波のビームが交差すれば良く、必ずしもビームの中心軸53は交差していなくても構わない。
【0031】
また、図2(c)には、ドレン容器50の底面50aの長辺側の方向(図2(a)中の矢印Bの方向)から見た状態で、ドレン容器50内に超音波素子51が搭載されている様子が示されている。尚、図2(c)でも、ドレン容器50内に超音波素子51が搭載された状態が分かり易いように、ドレン容器50の側壁の一部が破かれた状態で表示されている。図2(a)を用いて前述したように、二つの超音波素子51は、長方形の底面50aの一方の短辺50bに近づけた位置に搭載されているが、図2(a)中の矢印Bの方向から見ると二つの超音波素子51は、振動面52が同じ方向(底面50aの遠い方の短辺50cの方向)に傾いた状態で搭載されている。より詳しくは、二つの振動面52の中央位置を通過する鉛直平面54(図2(a)を参照)を想定すると、二つの超音波素子51の超音波ビームの中心軸53の交差位置Pが、鉛直平面54に対して、底面50aの短辺50cの方向にオフセットした位置となるように、二つの超音波素子51の振動面52が傾いた状態となっている。
【0032】
本実施例の給湯装置1では、ドレン容器50の底面50aに、上述した状態で超音波素子51が搭載されているので、ドレン容器50内に流入するドレン水を効率よく霧化してドレンミストを発生させることができる。また、上述したように、本実施例のドレン容器50では、二つの超音波素子51の振動面52が、互いに斜めに向かい合わせの状態で搭載されており(図2(b)参照)、更に、二つの振動面52が同じ方向(底面50aの短辺50cの方向)に傾いた状態で搭載されている(図2(c))。
【0033】
尚、本実施例のドレン容器50には、図3に示す状態で超音波素子51を搭載することもできる。すなわち、図3に示した本実施例のドレン容器50では、ドレン容器50の底面50aに、二つの超音波素子51の振動面52が斜めに向かい合わせとなる状態で搭載されている。しかし、図2(c)に示した場合とは異なって、二つの振動面52が同じ方向には傾いておらず、従って、二つの超音波素子51の超音波のビームは、鉛直平面54上で交差している。尚、図3では、二つの超音波素子51が放射する超音波のビームの中心軸53が鉛直平面54の上で交差するものとして表示しているが、太さを有する超音波のビームが鉛直平面54の上で交差していればよく、必ずしもビームの中心軸53が鉛直平面54上で交差する必要はない。このような本実施例のドレン容器50でも、流入するドレン水を効率よく霧化させることができる。以下、この点について説明する。
【0034】
図4には、比較のために、二つの超音波素子51が振動面52を真上に向けた状態で底面90aに搭載された従来例のドレン容器90が示されている。この従来例のドレン容器90と、図2に示した本実施例のドレン容器50と、図4に示した本実施例のドレン容器50とで、同じように超音波素子51を駆動した場合のドレン水の霧化量を計測したところ、次のような結果が得られた。
【0035】
図5は、従来例のドレン容器90を基準として、図2または図3の本実施例のドレン容器50が、単位時間あたりにドレン水を霧化する霧化量を比較した実験結果である。図示したように、図3に示した本実施例のドレン容器50を用いた場合、図4の従来例のドレン容器90を用いた場合に比較して、単位時間あたりのドレン水の霧化量が1.5~2倍に増加した。このことは、超音波のビームを交差させると、ドレン水を霧化する能力が増加することを示している。また、図2に示した本実施例のドレン容器50を用いた場合、図4の従来例のドレン容器90を用いた場合に比較して、単位時間あたりのドレン水の霧化量が2~2.5倍に増加した。このことは、超音波のビームを交差させるだけでなく、交差したビームを傾けてやることで、ドレン水を霧化する能力が更に増加することを示している。このような効果が得られるメカニズムについては調査および解析中であるが、現時点では以下のようなものと考えられる。
【0036】
先ず初めに、超音波のビームを真上に向けて放射した状態で、ドレン水を霧化している状態を観察した結果、次のようなことが判明した。図6は、超音波のビームを真上に向けて放射した場合にドレン水が霧化される様子を概念的に示した説明図である。図6(a)に示したように、超音波素子51をドレン水に水没させた状態で超音波のビーム55を真上に放射すると、ドレン水の水面から水柱が立ちあがり、水柱の周囲にドレン水が霧化したドレンミストが発生する。
【0037】
ここで、水柱は、超音波のビーム55の放射圧によってドレン水が水面から押し上げられたものと考えられる。従って、水柱の中心部分には超音波のビーム55が貫通していると共に、ビーム55で押し上げられるドレン水の流れ(以下、上昇流)が生じていると考えられるが、超音波は水中を進行するに従って強度が減衰する。このため、超音波のビーム55がドレン水を押し上げる力は、水柱の上に行くほど弱くなり、水柱の頂部では、超音波のビーム55がドレン水の重さを支えられなくなったものと考えられる。従って、水柱の内部は次のような構造になっていると考えられる。すなわち、図6(b)に実線の矢印で示したように、水柱の中心部分にはドレン水の上昇流が形成されており、この上昇流は上方に行くほど減速して、水柱の頂部では上昇流の速度が0になる。そして、水柱の頂部からは、速度が0になったドレン水が、自重によって水柱の外周部分を流下する。ドレン水が自重で落下する流れを、以下では下降流と称する。図6(b)では、ドレン水の下降流が破線の矢印で表示されている。このように、超音波のビーム55によって立ち上がった水柱は、中心部分ではドレン水が上昇し、外周部分ではドレン水が落下する二重構造になっていると考えられる。
【0038】
図7は、超音波のビーム55を鉛直平面54(図3参照)上で交差する状態で放射した場合にドレン水が霧化される様子を概念的に示した説明図である。図7(a)に示したように、二つの超音波のビーム55を交差させると、それぞれの超音波のビーム55の水柱が合体して一つの水柱が形成され、合体した水柱の周囲にドレン水が霧化したドレンミストが発生する。
【0039】
ここで、図7(a)に示したように、合体した水柱の内部で二つの超音波のビーム55が交差した部分では、二つの超音波による強め合う干渉が生じて、超音波が強くなっているものと考えられる。また、水柱の内部の構造は、基本的には図6と同様な二重構造になっていると考えられる。すなわち、図7(b)に示したように、水柱の中心部分には、ドレン水の上昇流が生じている。この上昇流は、二つの超音波のビーム55による上昇流が合体したものであるが、合体後の上昇流は真上に向かって流れるため、ドレン水の水面から立ち上がる水柱も真上に向かって立ち上がることになる。そして、水柱の外周部分には、自重で落下するドレン水の下降流が生じていると考えられる。図7(b)でも、ドレン水の上昇流は実線の矢印で表示され、ドレン水の下降流は破線の矢印で表示されている。
【0040】
尚、二つの超音波のビーム55を交差させた場合、水柱内に生じる上昇流は、それぞれのビーム55による上昇流が合体したものであるため、合体後の上昇流の速度は大きくなる。これに伴って、ドレン水の水面から立ち上がる水柱の高さも、単独の超音波のビーム55を真上に放射した場合の水柱の高さよりは高くなる。
【0041】
図7(b)と図6(b)とを比較すれば明らかなように、二つの超音波のビーム55を交差させたからと言って、水柱の内部の流れが大きく変化するわけではない。しかし、超音波のビーム55を交差させることによって、それぞれのビーム55が形成する二つの水柱が一つの水柱に合体する点と、合体した水柱の内部では二つの超音波による強め合う干渉が生じている点の二つの点では、明らかに違っている。図5に示した実験結果では、超音波のビーム55を交差させることによって、ドレン水の霧化量が1.5~2倍に増加しているが、この理由は、これら二つの違いによるものと考えられる。すなわち、二つの水柱が合体することによって合体した水柱の内部に流れの乱れが発生し、この乱れが霧化を促進していることが考えられる。また、水柱の内部では二つの超音波による強め合う干渉が発生して超音波が強くなっているため、霧化が促進されていることが考えられる。現時点では、これらの現象が同時に発生することで、霧化が大きく促進されているものと考えられる。
【0042】
図8は、超音波のビーム55を鉛直平面54からオフセットさせた位置で交差させた場合(図2(c)参照)にドレン水が霧化される様子を概念的に示した説明図である。図8は、図2(a)中の矢印Bの方向から見た場合に相当する。二つの超音波のビーム55を鉛直平面54からオフセットさせた位置で交差させた場合も、鉛直平面54上で交差させた場合(図7参照)と同様に、それぞれの超音波のビーム55の水柱が合体して一つの水柱が形成され、合体した水柱の周囲にドレン水が霧化したドレンミストが発生する。
【0043】
但し、二つの超音波のビーム55は鉛直平面54に対して傾いているので、合体した水柱も斜め上方に向かって立ち上がる。このため、水柱の内部の構造は、図7(b)で前述した構造とは明らかに異なったものとなる。すなわち、図8(b)に示すように、水柱の中心部分には、二つの超音波のビーム55による上昇流が合体することによって上昇流が形成されるが、この上昇流は斜め上方に向かう流れとなる。尚、図8(b)でも上昇流は実線の矢印で表示されている。上昇流は水柱の上に行くほど減速して、水柱の頂部では上昇流の速度が0になる。そして、その後は、自重によってドレン水が落下していく。しかし、水柱は斜め上方に向かって形成されているので、ドレン水は水柱から離れた位置を落下することになる。尚、図8(b)でもドレン水の下降流は破線の矢印で表示されている。
【0044】
ここで、下降流のドレン水は、超音波のビーム55で押し上げられた後、水柱の頂部で失速したドレン水であるから、霧化するだけのエネルギは有していないと考えられる。ドレン水の霧化は、ドレン水と空気とが接する部分で生じると考えられるから、このようなエネルギレベルの低下したドレン水が水柱の外周部分に存在する状態は、ドレン水を霧化する観点からは好ましい状態ではない。すなわち、図7(b)に示した状態は、このような観点で改善の余地があると考えられる。
【0045】
これに対して、水柱を斜め上方に向けて形成した場合は、図8(b)に示したように、ドレン水の下降流は水柱から離れた位置に形成されるので、水柱の上昇流が周囲の空気と接触した状態となる。水柱の上昇流を形成するドレン水は、超音波のビーム55で押し上げられているドレン水であるから、エネルギレベルが高くなっていると考えられ、このようにエネルギレベルが高くなったドレン水と空気とを接触させることで、ドレン水の霧化が促進されると考えられる。図5に示した実験結果では、超音波のビーム55を鉛直平面54からオフセットした位置で交差させると、鉛直平面54上で交差させた場合よりも、ドレン水の霧化量が更に増加しているが、この理由は、上述したように水柱が斜め上方に向けて形成されるため、ドレン水が水中から離れた位置を落下するためと考えられる。
【0046】
また、図8に示すように、超音波のビーム55を鉛直平面54からオフセットさせた位置で交差させた場合は、ドレン水の水面から水柱が斜めに立ち上がった後、水柱の頂部で速度を失ったドレン水は、水柱から遠ざかる方向に斜めに落下する。このとき、落下するドレン水がドレン容器50の内側壁に衝突すると音が発生したり、跳ね返ったドレン水が水中にかかって霧化を阻害したり、更には、ドレン水がドレン容器50の内側壁を腐食させたりする虞がある。そこで、落下するドレン水がドレン容器50の内側壁に衝突することを抑制するために、ドレン容器50の底面50aの一方の短辺50bに近づけた位置に二つの超音波素子51を搭載し、水柱が斜めに立ち上がる方向も、遠くの短辺50cの方向に傾くようにしている。
【0047】
以上に詳しく説明したように、本実施例の給湯装置1では、ドレン容器50の底面50aに、超音波のビーム55が交差する状態で複数の超音波素子51が搭載されている。ビーム55が交差する位置は、二つの超音波素子51の振動面52の中心を通る鉛直平面54の上としても良いし、鉛直平面54からオフセットした位置としても良い。二つのビーム55を交差させれば、上述したメカニズムによって、ドレン容器50内のドレン水を効率よく霧化することができる。そして、ドレン水が霧化したドレンミストはドレンミスト排出通路26から排気通路4に排出することで、排気通路4内の燃焼排気と一緒に屋外に放出することができる。このため、ドレン容器50内に多数の超音波素子51を搭載しなくても、給湯装置1の潜熱熱交換器21で発生したドレン水を処理することが可能となる。
【0048】
上述した実施例では、ドレン容器50内に二つの超音波素子51が搭載されているものとして説明したが、三つ以上の超音波素子51を搭載することもできる。特に三つの超音波素子51を搭載する場合は、次のようにしても良い。
【0049】
図9は、三つの超音波素子51を搭載した変形例のドレン容器50についての説明図である。図9(a)には、変形例のドレン容器50の斜視図が示されている。図示されるように、変形例のドレン容器50では、長方形の底面50aの一方の短辺50bに近づけた位置に、三つの超音波素子51a,51b,51cが搭載されている。また、それぞれの超音波素子51a,51b,51cの振動面52a,52b,52cは、何れも上向きの状態で搭載されている。尚、図9(a)でも、三つの超音波素子51a,51b,51cが搭載されている状態が分かり易いように、ドレン容器50の側壁の一部が破かれた状態で表示されている。
【0050】
ここで、超音波素子51aと超音波素子51bとは、それぞれの振動面52a,52bから放射される超音波のビームが交差し、ビームの交差位置は、それぞれの振動面52a,52bの中央位置を通過する鉛直平面からオフセットした位置となっている。また、超音波素子51bと超音波素子51cとについても同様に、それぞれの振動面52b,52cから放射される超音波のビームが交差し、ビームの交差位置は、それぞれの振動面52b,52cの中央位置を通過する鉛直平面からオフセットした位置となっている。
【0051】
図9(b)には、変形例のドレン容器50を上方から見下ろすことによって、二つの超音波素子51a,51bから放射される超音波のビームが交差する位置が示されている。図9(b)では、超音波素子51aの超音波のビームの中心軸53aと、超音波素子51bの超音波のビームの中心軸53bとが、交差位置Paで交差している。この交差位置Paは、次のような位置となっている。すなわち、超音波素子51aの振動面52aの中央位置と、超音波素子51cの振動面52cの中央位置とを通過する鉛直平面54cを想定すると、交差位置Paは、超音波素子51bから見て鉛直平面54cよりも外側にオフセットした位置となっている。尚、図9(b)では、超音波素子51aの超音波のビームの中心軸53aと、超音波素子51bの超音波のビームの中心軸53bとが交差しているものとして表示されているが、超音波のビームは太さを有しているため、超音波のビーム同士が交差していればよい。従って、必ずしも、ビームの中心軸53aとビームの中心軸53bとが交差している必要はない。
【0052】
また、図9(c)には、変形例のドレン容器50を上方から見下ろすことによって、二つの超音波素子51b,51cから放射される超音波のビームが交差する位置が示されている。図9(c)では、超音波素子51bの超音波のビームの中心軸53bと、超音波素子51cの超音波のビームの中心軸53cとが、交差位置Pbで交差している。この交差位置Pbは、超音波素子51bから見て、前述した鉛直平面54c(超音波素子51aの振動面52aの中央位置と、超音波素子51cの振動面52cの中央位置とを通過する鉛直平面54c)よりも外側にオフセットした位置となっている。尚、図9(c)でも、超音波素子51bの超音波のビームの中心軸53bと、超音波素子51cの超音波のビームの中心軸53cとが交差しているものとして表示されているが、実際には超音波のビーム同士が交差していればよい。従って、必ずしも、ビームの中心軸53bとビームの中心軸53cとが交差している必要はない。
【0053】
尚、図9に示した変形例では、交差位置Paと交差位置Pbとは異なる位置となっており、超音波素子51bの振動面52bからの距離は、交差位置Pbの方が、交差位置Paよりも大きくなっている。尚、交差位置Paと交差位置Pbとを異なせた場合は、超音波素子51aの超音波のビームと、超音波素子51cの超音波のビームとは交差しなくなる。しかし、これに限らず、交差位置Paと交差位置Pbとを一致させても良い。この場合は、三つの超音波素子51a,51b,51cの超音波のビームが、同じ位置で交差することになる。
【0054】
このような変形例のドレン容器50では、三つの超音波素子51a,51b,51cを同時に駆動した時に、それぞれの超音波素子51a,51b,51cの水柱が合体して形成される水柱が斜めに立ちあがるようになる。このため、図8を用いて前述したように、水柱の頂部で勢いを失ったドレン水が水柱から離れた位置を落下するようになるので、ドレン水を効率よく霧化することができる。もちろん、三つの超音波素子51a,51b,51cの中から選択した何れか一つ、あるいは二つの超音波素子51を駆動することで、ドレン水の霧化能力を変更することも可能となる。
【0055】
また、上述した変形例のドレン容器50では、超音波素子51aおよび超音波素子51bのビームの交差位置Paと、超音波素子51bおよび超音波素子51cのビームの交差位置Pbとを異ならせ、更に、超音波素子51aおよび超音波素子51cのビームは交差しないようにしても良い。このような変形例のドレン容器50では、同時に駆動する超音波素子51a,51b,51cの組み合わせを変更することによって、ドレン水の霧化能力を切り換えることができる。
【0056】
図10は、変形例のドレン容器50で、同時に駆動する超音波素子51a,51b,51cの組み合わせと、ドレン水の霧化能力との関係を示した説明図である。当然ながら、霧化能力が最大となるのは、三つの超音波素子51a,51b,51cを同時に駆動した場合となる。また、霧化能力が最小となるのは、三つの超音波素子51a,51b,51cを何れか一つだけを駆動した場合となる。図10では、超音波素子51bだけを駆動するものとしているが、超音波素子51aだけを駆動しても良く、超音波素子51cだけを駆動しても良い。
【0057】
また、ここでは、超音波素子51aの超音波のビームと超音波素子51cの超音波のビームとは交差しないとしているので、これら二つの超音波素子51a,51cを同時に駆動した場合は、単に二つの超音波素子を駆動することによる効果しか得られない。従って、この組み合わせが、霧化能力が最小よりも一つ上のレベル(霧化能力:小)となる。
【0058】
次に、超音波素子51aと超音波素子51bとを同時に駆動した場合や、超音波素子51bと超音波素子51cとを同時に駆動した場合では、何れも超音波のビームが交差する。このため、霧化能力は、超音波素子51aと超音波素子51cとを同時に駆動した状態よりも大きくなる。
【0059】
もっとも、超音波素子51bおよび超音波素子51cのビームの交差位置Pbは、超音波素子51aおよび超音波素子51bのビームの交差位置Paよりも、超音波素子51bからの距離が大きくなっている。そして、ビームが交差する位置が遠くなれば、二つの水柱が合体することによる効果や、二つの超音波のビームが強め合う干渉を起こすことによる効果は小さくなると考えられる。従って、超音波素子51bと超音波素子51cとを同時に駆動した場合に得られる霧化能力は、超音波素子51aと超音波素子51bとを同時に駆動した場合の霧化能力よりも小さくなると考えられる。このことから、超音波素子51bと超音波素子51cとを同時に駆動する組み合わせが、霧化能力が「小」よりも一つ上のレベル(霧化能力:中)となり、超音波素子51aと超音波素子51bとを同時に駆動する組み合わせが、霧化能力が「中」よりも一つ上のレベル(霧化能力:大)となる。
【0060】
このように、変形例のドレン容器50を搭載した給湯装置1では、同時に駆動する超音波素子51の組み合わせを変更することで、ドレン水の霧化能力を変更することができる。こうすれば、次のような利点を得ることができる。先ず、時間あたりのドレン水の発生量は、バーナ10で燃焼させる燃料ガスのガス量にほぼ比例して増減する。超音波素子51を駆動して霧化することが可能なドレン水の霧化量が、ドレン水の発生量よりも小さい場合、ドレン容器50には流入したドレン水が溜まって行くため、ドレン水の水面が上昇していく。すると、超音波素子51の振動面52からドレン水の水面までの距離が長くなるため、超音波のビームが水面に達するまでに減衰する減衰量も大きくなる。その結果、ドレン水の水面が上昇するほど、ドレン水の霧化能力が減少して、更にドレン水の水面が上昇し、ますます霧化能力が減少することになる。
【0061】
一方、超音波素子51で霧化することが可能なドレン水の霧化量が、ドレン水の発生量よりも大きい場合は、ドレン容器50内のドレン水の水面が低下して行き、最終的には、超音波素子51の振動面52がドレン水に水没しなくなる。このような状態で超音波素子51を駆動すると、超音波素子51が故障する虞が生じる。
【0062】
これらの事態を避けようとすると、ドレン水の発生量に応じた適切な霧化能力が得られるように、超音波素子51の駆動電力を規格の範囲内で増減させる必要があるが、給湯装置1ではドレン水の発生量が大きく増減する。このため、超音波素子51の駆動電力を規格の範囲内で増減させたのでは、ドレン水の発生量の変動幅に対して霧化能力の調節幅が不足する。これに対して、変形例のドレン容器50を搭載した給湯装置1では、同時に駆動する超音波素子51の組み合わせを変更することで、霧化能力を広い範囲で調節することができる。このため、給湯する温水の温度や温水の流量などによって定まる給湯装置1の運転条件に応じて、同時に駆動する超音波素子51の組み合わせを変更することで、ドレン水を安定して処理することが可能となる。
【0063】
以上、本実施例および変形例について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上述した本実施例および変形例では、ドレン受皿24で受けたドレン水をドレン通路25でドレン容器50に導いて、ドレン容器50の底面に超音波素子51を配置した。しかし、ドレン受皿24の一部に深い凹部を形成して、ドレン受皿24が受けたドレン水は凹部に溜められるようにしておき、その凹部の底面に超音波素子51を配置しても良い。この場合は、ドレン受皿24がドレン溜め部として機能するので、ドレン通路25は不要となる。
【符号の説明】
【0064】
1…給湯装置、 2…本体ケース、 3…燃焼筐、 3a…排気口、
4…排気通路、 5…燃焼ファン、 10…バーナ、 10a…バーナ単体、
11a…ガスマニホールド、 11b…ガスマニホールド、
12…噴射ノズル、 12a…開閉弁、 12b…開閉弁、
20…顕熱熱交換器、 20a…熱交換フィン、 21…潜熱熱交換器、
22…連絡管、 23…温度センサ、 24…ドレン受皿、
25…ドレン通路、 26…ドレンミスト排出通路、 30…ガス通路、
31…元ガス電磁弁、 32…ガス流量調節弁、 33…分岐通路、
33a…分岐通路、 33b…分岐通路、 40…給水通路、
41…水量センサ、 42…流量制御弁、 43…出湯通路、
50…ドレン容器、 50a…底面、 50b…短辺、 50c…短辺、
51…超音波素子、 52…振動面、 53…中心軸、 54…鉛直平面、
54a…鉛直平面、 54b…鉛直平面、 54b…鉛直平面、
55…ビーム、 60…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10