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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041697
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】静電型スピーカー
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/02 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
H04R19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003578
(22)【出願日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2022146604
(32)【優先日】2022-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512019295
【氏名又は名称】森保染色株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】早川 典雄
【テーマコード(参考)】
5D021
【Fターム(参考)】
5D021CC02
5D021CC09
5D021CC11
(57)【要約】
【課題】静電型スピーカーにおいて、より可撓性を高くするとともに、静電型スピーカーのより有効な活用を可能にする技術を提供する。
【解決手段】静電型スピーカー101は、導電性の布地である第1の導電布111と、第1の導電布111を挟むように配置された導電性の布地であり、第1の導電布と絶縁された第2および第3の導電布121,131と、第1ないし第3の導電布111,121,131を覆うように配置され、第1ないし第3の導電布111,121,131よりも厚手で、絶縁性の布地で構成された第1および第2の外装布140,150とを有している。これら第1ないし第3の導電布111,121,131と、第1および第2の外装布140,150とは、絶縁性の糸によって縫い付けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電型スピーカーであって、
導電性の布地である第1の導電布と、
前記第1の導電布を挟むように配置された導電性の布地であり、前記第1の導電布と絶縁された第2と第3の導電布と、
前記第1ないし第3の導電布を覆うように配置され、前記第1ないし第3の導電布よりも厚手で、絶縁性の布地で構成された第1と第2の外装布と、
を備え、
前記第1ないし第3の導電布および前記第1と第2の外装布は、絶縁性の糸によって縫い付けられている、
静電型スピーカー。
【請求項2】
請求項1記載の静電型スピーカーであって、
前記静電型スピーカーは、前記第1の外装布が前記第2外装布よりも内周側に位置する状態で巻き取られるように構成されており、
前記第1の外装布は、前記静電型スピーカーが巻き取られる巻取方向に対して伸縮性を有しており、
前記第1と第2の外装布の端部は、前記静電型スピーカーが巻き取られた状態において、前記第1の外装布の前記巻取方向における長さが自然長となるように縫い付けられている、
静電型スピーカー。
【請求項3】
請求項2記載の静電型スピーカーであって、
前記第1ないし第3の導電布は、前記巻取方向に対して伸縮性を有しており、
前記第1ないし第3の導電布および前記第1と第2の外装布の端部は、前記静電型スピーカーが巻き取られた状態において、前記第1ないし第3の導電布の前記巻取方向における長さが自然長となるように縫い付けられている、
静電型スピーカー。
【請求項4】
前記第1ないし第3の導電布のそれぞれの端部は、ほつれ止め加工が施されている、請求項1ないし3のいずれか記載の静電型スピーカー。
【請求項5】
前記第1ないし第3の導電布のそれぞれの端部には、前記第1ないし第3の導電布の端部をそれぞれ包むように絶縁性の保護布が取り付けられている、請求項4記載の静電型スピーカー。
【請求項6】
前記第1と第2の外装布は、帯電列において紙よりも正側に位置する繊維で形成されている、請求項1ないし3のいずれか記載の静電型スピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電型スピーカーに関し、特に、可撓性に優れた静電型スピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号に応じた音声を発生するスピーカーとして、静電型スピーカーが知られている。静電型スピーカーは、一般的に、間隔を開けて向かい合う一対の電極と、当該一対の電極の間に挿入された導電性を有するシート状の振動体とから構成される。そして、振動体に所定のバイアス電圧を印加した状態で、電極に印加する電圧を電気信号に応じて変化させることにより、振動体が電気信号に応じて変位し、音声が発生する。そして、近年では、このような静電型スピーカーにおいて、屈曲させることを可能にする様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-100438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案されている静電型スピーカーでは、導電布からなる一対の電極と、振動体との間に弾性部材が挿入されるため、得られる静電型スピーカーの可撓性は必ずしも十分ではない。
【0005】
また、静電型スピーカーとしてある程度の可撓性を持たせることが可能であっても、静電型スピーカーに皺等が発生すれば、静電型スピーカーを有効に活用することが難しくなる。
【0006】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、静電型スピーカーにおいて、より可撓性を高くするとともに、静電型スピーカーのより有効な活用を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
静電型スピーカーであって、導電性の布地である第1の導電布と、前記第1の導電布を挟むように配置された導電性の布地であり、前記第1の導電布と絶縁された第2と第3の導電布と、前記第1ないし第3の導電布を覆うように配置され、前記第1ないし第3の導電布よりも厚手で、絶縁性の布地で構成された第1と第2の外装布と、を備え、前記第1ないし第3の導電布および前記第1と第2の外装布は、絶縁性の糸によって縫い付けられている、静電型スピーカー。
【0009】
この適用例によれば、第1ないし第3の導電布および第1と第2の外装布が、それらの変形や伸縮と縫い付ける糸の撓みとで許容される範囲で、面方向に対して移動可能となるので、静電型スピーカーの可撓性をより高くすることができる。そして、第1と第2の外装布を第1ないし第3の導電布よりも厚手の布地で構成することにより、静電型スピーカーに皺等が発生することが抑制されるので、静電型スピーカーをより有効に活用することができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載の静電型スピーカーであって、前記静電型スピーカーは、前記第1の外装布が前記第2外装布よりも内周側に位置する状態で巻き取られるように構成されており、前記第1の外装布は、前記静電型スピーカーが巻き取られる巻取方向に対して伸縮性を有しており、前記第1と第2の外装布の端部は、前記静電型スピーカーが巻き取られた状態において、前記第1の外装布の前記巻取方向における長さが自然長となるように縫い付けられている、静電型スピーカー。
【0011】
この適用例によれば、収納等のために巻き取られた巻取状態と、使用等のために引き出された展開状態とのそれぞれにおいて、静電型スピーカーの外表面に皺等が発生することがより確実に抑制されるので、巻取状態における内周側と外周側とがあらかじめ決まっている静電型スピーカーをより有効に活用することがより容易となる。
【0012】
[適用例3]
適用例2記載の静電型スピーカーであって、前記第1ないし第3の導電布は、前記巻取方向に対して伸縮性を有しており、前記第1ないし第3の導電布および前記第1と第2の外装布の端部は、前記静電型スピーカーが巻き取られた状態において、前記第1ないし第3の導電布の前記巻取方向における長さが自然長となるように縫い付けられている、静電型スピーカー。
【0013】
この適用例によれば、音声の発生に関与する第1ないし第3の導電布に皺が発生することが抑制されるので、より確実に、静電型スピーカーから平面波として音声を放射することが可能となる。
【0014】
[適用例4]
前記第1ないし第3の導電布のそれぞれの端部は、ほつれ止め加工が施されている、適用例1ないし3のいずれか記載の静電型スピーカー。
【0015】
この適用例によれば、第1ないし第3の導電布からほつれた導電性の糸によって第1ないし第3の導電布の間で短絡が発生することを抑制することができる。
【0016】
[適用例5]
前記第1ないし第3の導電布のそれぞれの端部には、前記第1ないし第3の導電布の端部をそれぞれ包むように絶縁性の保護布が取り付けられている、適用例4記載の静電型スピーカー。
【0017】
この適用例によれば、静電型スピーカーの屈曲を繰り返してほつれが発生しても、ほつれた導電性の糸が与える影響が抑制されるので、静電型スピーカーの耐久性をより高くすることが可能となる。
【0018】
[適用例6]
前記第1と第2の外装布は、帯電列において紙よりも正側に位置する繊維で形成されている、適用例1ないし3のいずれか記載の静電型スピーカー。
【0019】
一般的に、帯電列において紙よりも正側に位置する繊維は吸湿性を有しているので、静電気が蓄積しにくい。そのため、この適用例によれば、高圧直流電圧の印加に伴って、表層布140や下地布150に静電気が蓄積することが抑制されるので、蓄積された静電気によって、静電型スピーカーに接触した使用者との間で放電が発生する可能性を低減することができる。
【0020】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、静電型スピーカー、その静電型スピーカーと静電型スピーカーのドライブユニットとを含むスピーカーシステム、その静電型スピーカーを利用したプロジェクタースクリーン、それらの静電型スピーカーやスピーカーシステムを利用した防音システム、等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態としてのスピーカーシステムの利用態様を示す説明図。
図2】第1実施形態としてのスピーカーシステムの電気的構成を示す説明図。
図3】第1実施形態におけるスピーカーの具体的な構成を示す説明図。
図4】第2実施形態におけるスピーカーの具体的な構成を示す説明図。
図5】第3実施形態におけるスピーカーの具体的な構成を示す説明図。
図6】巻取状態と展開状態とのそれぞれにおけるスピーカーの様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を以下の順序で説明する。
A.第1実施形態:
A1.スピーカーシステムの利用態様:
A2.スピーカーシステムの電気的構成:
A3.静電型スピーカーの具体的構成:
B.第2実施形態:
C.第3実施形態:
D.変形例:
【0023】
A.第1実施形態:
A1.スピーカーシステムの利用態様:
図1は、本発明の第1実施形態としてのスピーカーシステム10の利用態様を示す説明図である。図1に示すように第1実施形態のスピーカーシステム10は、巻取機構を有する引き出し型のプロジェクタースクリーン100(以下、単に「スクリーン」とも呼ぶ)と、スクリーン100に接続されたドライブユニット200とを有している。
【0024】
図1に示す利用態様では、ドライブユニット200には、映像を記録したビデオディスクを再生するビデオディスクプレイヤー900から、音声信号ASが供給される。また、ビデオディスクプレイヤー900から図示しないプロジェクターには、映像信号VSが供給される。そして、プロジェクターからスクリーン100の投影面101に映像信号VSで変調された変調光が照射されることにより、スクリーン100の投影面101には、投影映像PIMが表示される。
【0025】
一方、詳細については後述するが、ドライブユニット200は、供給された音声信号ASに基づいてスクリーン100の投影面101を振動駆動する。これにより、ビデオディスクプレイヤー900から供給された音声信号ASに応じた音声が、スクリーン100の投影面101から、投影面101の法線方向に向かって放射される。
【0026】
A2.スピーカーシステムの電気的構成:
図2は、第1実施形態のスピーカーシステム10の電気的構成を示す説明図である。図2に示すように、スピーカーシステム10において、音声を放射するスクリーン100(図1)の投影面101には、ドライブユニット200が接続されている。
【0027】
投影面101は、振動することにより音声を放射する振動膜110と、空隙を挟んで振動膜110と対向するように配置された2つの電極膜120,130とを有している。スクリーン100の投影面101に接続されるドライブユニット200は、増幅回路210と、トランス出力回路220と、高電圧発生回路230とを有している。
【0028】
増幅回路210は、入力されたシングルエンド信号を増幅し、+と-の逆極性の信号を組み合わせた差動信号を出力する差動増幅器U1によって構成される。増幅回路210に入力されたシングルエンドの音声信号ASは、差動増幅器U1によって増幅され、差動音声信号DASとして、増幅回路210からトランス出力回路220に供給される。
【0029】
なお、第1実施形態では、増幅回路210において、差動信号を出力する差動増幅器U1を使用しているが、入力された音声信号ASと同様のシングルエンド信号を出力する増幅器を使用することも可能である。但し、ドライブユニット200を構成する高電圧発生回路230は、後述するようにチョッパ回路を有しているため、大きなノイズが発生する可能性がある。このように高電圧発生回路230において発生するノイズの影響を低減するため、増幅回路210としては、差動信号を出力する差動増幅器を使用し、差動音声信号DASを出力するようにするのが好ましい。
【0030】
トランス出力回路220は、同一構成の2つのトランスT1,T2を有している。これら2つのトランスT1,T2は、増幅回路210に接続される1次側においては、並列に接続されている。一方、スクリーン100の投影面101に接続される2次側においては、2つのトランスT1,T2は直列に接続されている。また、トランスT1,T2の2次側の巻数は、1次側の巻数よりも高く設定されている。これにより、増幅回路210から供給された差動音声信号DASは、直列接続されたトランスT1,T2の両端において、トランスT1,T2の巻線比の2倍の電圧まで昇圧され、投影面101を構成する2つの電極膜120,130に伝達される。
【0031】
高電圧発生回路230は、電源電圧Vddよりも高電圧の直流電圧を発生する回路であり、発生した高圧直流電圧は、高電圧発生回路230に接続されたトランス出力回路220に供給される。第1実施形態では、高電圧発生回路230として、発振器OSCが発生する矩形波によってMOS型電界効果トランジスタQ1のドレイン-ソース間をオン/オフし、チョークコイルLの逆起電力により高圧を発生させる昇圧型チョッパ回路と、ダイオードD1~D6およびコンデンサC1~C6を用いて昇圧するコッククロフト・ウォルトン回路とを組み合わせた昇圧回路を使用している。但し、高電圧発生回路としては、昇圧型チョッパ回路あるいはコッククロフト・ウォルトン回路を単独で使用した昇圧回路や、発振器とフライバックトランスを使用した昇圧回路等、種々の昇圧回路を使用することも可能である。
【0032】
高電圧発生回路230によって発生された高圧直流電圧は、トランス出力回路220において直列接続された2つのトランスT1,T2の間に供給される。そして、直列接続されたトランスT1,T2の両端を投影面101の2つの電極膜120,130に接続するとともに、振動膜110をトランス出力回路220の接地電極に接続して接地することにより、2つの電極膜120,130には、振動膜110を基準として高圧直流電圧が印加された状態となる。
【0033】
一方、上述の通り、差動音声信号DASは、直列接続されたトランスT1,T2の両端において昇圧され、投影面101を構成する2つの電極膜120,130に伝達される。そのため、電極膜120,130には、振動膜110を基準として、差動音声信号DASあるいは音声信号ASに応じた互いに逆極性の電圧が印加され、振動膜110に対する2つの電極膜120,130の電圧は、互いに逆方向に変動する。振動膜110は、この電極膜120,130の電圧変動に応じて、その全体が電極膜120,130の対向方向に振動し、振動膜110からは、差動音声信号DAS(音声信号AS)に応じた音声が放射される。なお、このように、振動膜110および2つの電極膜120,130からなる投影面101は、静電的な作用により音声を放射する機能を有しているので、「静電型スピーカー」とも謂うことができる。
【0034】
A3.静電型スピーカーの具体的構成:
図3は、第1実施形態の静電型スピーカー101(以下、単に「スピーカー101」と呼ぶ)の具体的な構成を示す説明図である。スピーカー101は、上述の通り、電気的な構成として、振動膜110と、空隙を挟んで振動膜110と対向するように配置された2つの電極膜120,130とを有している。スピーカー101は、また、これら振動膜110および電極膜120,130の他、スクリーン100(図1)において投影映像PIMが表示される表層布140と、スクリーン100においてスピーカー(投影面)101が取り付けられる下地としての下地布150とを有している。
【0035】
振動膜110は、導電性を有する織布である導電布111と、導電布111の両面に接着された絶縁フィルム112,113とから構成される。導電布111は、原糸に銅やアルミ等の金属を鍍金し、鍍金された原糸を周知の製織技術を用いて織り上げることにより形成される。
【0036】
導電布111を織り上げるための原糸としては、ポリエステルやアクリル等の化学繊維、木綿やウール等の自然繊維、あるいは、複数種類の繊維を混合した混紡繊維を使用することができる。但し、難燃性を確保するため、原糸としては、難燃性のポリアミド繊維やアラミド繊維、あるいは、難燃化処理を施した各種繊維を用いるのが好ましい。
【0037】
なお、導電布111としては、鍍金された原糸を織り上げた織布の他、銅などの金属細線あるいは金属糸を織り上げた織布、銅などの金属からなる網状体、銅などの金属細線を含む原糸を織り上げた織布や、炭素繊維等の導電性の繊維を原糸として織り上げた炭素繊維織布を用いることも可能である。但し、導電布111の可撓性の低下を抑制することができる点で、導電布111としては、鍍金された原糸を織り上げた織布を用いるのが好ましい。なお、鍍金された原糸、金属細線を含む原糸および炭素繊維等の導電性の繊維を用いた原糸は、いずれも導電性を有しているので、「導電性の原糸」と謂うこともできる。
【0038】
導電布111に接着される絶縁フィルム112,113としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、エポキシ、ポリイミドあるいはアラミド等の種々の樹脂からなるフィルムを用いることができる。これらの絶縁フィルム112,113は、導電布111に接着されるため、それ自体で強度を担保する必要がない。そのため、電極膜120,130に印加される高圧直流電圧に対して十分な耐圧を有していれば、より薄いものを用いるのが好ましい。
【0039】
電極膜120,130は、それぞれ、導電性を有する織布である導電布121,131と、振動膜110側に接着された絶縁フィルム122,132とから構成される。導電布121,131は、振動膜110を構成する導電布111と同様に形成される。また、絶縁フィルム122,132も、振動膜110を構成する絶縁フィルム112,113と同様に形成される。
【0040】
なお、導電布121,131は、振動膜110の振動で発生した音声の電極膜120を通した外部への放出を容易にし、また、振動膜110における振動が、振動膜110と電極膜130との間の背圧により抑圧されることを抑制するため、その織密度を、振動膜110の導電布111の織密度よりも低く設定するのが好ましい。
【0041】
表層布140と下地布150とは、スクリーン100(図1)としての機能が実現可能となるように、強度等の機械的特性やその他の特性に基づいて適宜選択された絶縁性の織布である。これらの表層布140および下地布150は、振動膜110および電極膜120,130を覆うように、それらの外部に設けられる織布であるため、「外装布」とも呼ぶことができる。
【0042】
表層布140および下地布150としては、いずれも、導電布111,121,131よりも厚手の織布が使用される。ここで、厚手の織布とは、厚みと張りがある織布のことを謂う。このような厚手の織布としては、例えば、デニムやキャンバス(帆布)等が使用される。これら表層布140および下地布150に厚みを持たせるため、表層布140および下地布150は、例えば、7.5番手や10番手の太い原糸を織り上げて形成するものとしても良く、また、二重織や三重織等の多重織を行うことにより形成するものとしても良い。
【0043】
表層布140および下地布150を織り上げる原糸としては、種々の繊維を用いることが可能であるが、正に帯電しやすい繊維、すなわち、帯電列において紙よりも正側に位置する繊維を用いるのが好ましい。また、正に帯電しやすい複数種類の繊維を混紡した原糸を織り上げて表層布140および下地布150を形成することも可能である。なお、正に帯電しやすい繊維としては、麻、木綿あるいは羊毛等の天然繊維や、アセテート繊維やナイロン等のポリアミド繊維を挙げることができる。
【0044】
一般的に、正に帯電しやすい繊維は、吸湿性を有しているので、静電気が蓄積しにくい。そのため、正に帯電しやすい繊維を用いて表層布140や下地布150を形成することにより、電極膜120,130(導電布121,131)への高圧直流電圧の印加に伴って表層布140や下地布150に静電気が蓄積することが抑制されるので、蓄積した静電気によって、スピーカー101に接触した使用者との間で放電が発生する可能性を低減することができる。
【0045】
以上の説明では、第1実施形態のスピーカー101の利用態様として、スピーカー101をプロジェクタースクリーン100に適用する例を示している。このように、スピーカー101をプロジェクタースクリーン100に適用する場合、スピーカー101においてスクリーン100としての機能を実現するため、例えば、表層布140には、その外表面、すなわち、電極膜120とは反対側の表面に、照射された光を良好に反射するための各種加工が必要に応じて施される。
【0046】
スピーカー101を構成する振動膜110、電極膜120,130、表層布140および下地布150は、これらの積層方向(図3の紙面における上下方向)に、絶縁性の糸によって縫い付けられる。これにより、振動膜110、電極膜120,130、表層布140および下地布150が一体となったスピーカー101が形成される。
【0047】
このように形成されたスピーカー101と、ドライブユニット200との間の接続は、トランス出力回路220(図2)の接地電極および直列接続されたトランスT1,T2の両端とから伸びる配線119,129,139を、振動膜110および電極膜120,130にそれぞれ縫い付けることにより行われる。なお、図3の例では、配線119,129,139は、振動膜110および電極膜120,130の端部に縫い付けられているが、配線を縫い付ける箇所は適宜変更可能である。
【0048】
また、第1実施形態では、トランス出力回路220から伸びる配線119,129,139を、振動膜110および電極膜120,130にそれぞれ縫い付けているが、他の方法によってスピーカー101とドライブユニット200とを接続することも可能である。例えば、トランス出力回路220から伸びる配線119,129,139を、導電性ペースト等を用いて振動膜110および電極膜120,130に取り付けることによって、スピーカー101とドライブユニット200とを接続するものとしても良い。但し、配線119,129,139と、振動膜110および電極膜120,130との接続をより確実にするとともに、接続部分の強度をより高くすることができる点で、配線119,129,139は、振動膜110および電極膜120,130に縫い付けるのが好ましい。
【0049】
このように構成された第1実施形態のスピーカー101では、振動膜110、電極膜120,130、表層布140および下地布150は、互いに縫い付けられた状態となっている。そのため、振動膜110、電極膜120,130、表層布140および下地布150は、それらの変形や伸縮と縫い付ける糸の撓みとで許容される範囲で、面方向、すなわち、積層方向と直交方向に対して移動可能となっている。このように振動膜110、電極膜120,130、表層布140および下地布150が面方向に移動可能となっていることにより、スピーカー101の可撓性が高くなるので、スピーカー101を含むスクリーンの布部分を巻き取る際の曲率半径をより小さくすることができる。そのため、収納時におけるスクリーン100の大きさをより小さくし、スクリーン100の可搬性や収納性をより高くすることができる。
【0050】
さらに、第1実施形態のスピーカー101では、表層布140および下地布150を導電布111,121,131よりも厚みと張りがある厚手の織布としている。そのため、プロジェクタースクリーン100の使用状態(図1)において投影面(スピーカー)101に皺が発生することが抑制されるので、投影映像PIMをより適切に表示することが可能となる。
【0051】
加えて、表層布140および下地布150を厚手の織布とすることで、高圧直流電圧が印加される導電布121,131と、スピーカー101の外表面との間の絶縁性が高くなる。そのため、導電布121,131に印加された高圧直流電圧が、外部に漏電する虞を低減することができる。
【0052】
また、第1実施形態のスピーカー101を用いることにより、図1に示すように、スクリーン100の投影面101には、ビデオディスクプレイヤー900から供給された映像信号VSに応じた投影映像PIMが表示されるとともに、ビデオディスクプレイヤー900から供給された音声信号ASに応じた音声が投影面(スピーカー)101から放射される。そのため、スクリーン100とは別個のスピーカーを用意することなく、プレゼンテーション動画の放映や、遠隔会議の実施を行うことができる。
【0053】
そして、第1実施形態のスピーカー101では、振動膜110の全体が振動することによって音声が放射されるので、振動膜110および電極膜120,130の積層方向、すなわち、スピーカー101の法線方向に平面波として音声が放射される。これにより、音声がスピーカー101の法線方向に集中的に放射されるため、第1実施形態のスピーカー101によれば、プレゼンテーション動画の放映等に際して、対象とする視聴者を限定することが可能となる。
【0054】
さらに、音声信号ASに応じた音声は、投影映像PIMが表示される投影面(スピーカー)101から放射されるので、図1に示すように投影映像PIMに話者等の画像が含まれている場合には、投影映像PIMの視聴者は、あたかも当該話者が音声を発しているように感じることができる。そのため、プレゼンテーション動画や、遠隔会議の臨場感をより高くすることができる。
【0055】
なお、図1に示す第1実施形態では、プレゼンテーションや遠隔会議に使用する可搬型のスクリーン100を用いているが、本発明は、ホームシアター等で使用される据置型のスクリーンに適用することも可能である。この場合においても、動画が表示されるスクリーンから音声が放射されることによって臨場感より高くなるので、動画の視聴者に対して良好に没入感を感じさせることができる。
【0056】
加えて、本発明を適用したスクリーン(スピーカー)を、サラウンド方式で音声の再生を行うホームシアター等で使用する場合、スクリーン自体をスクリーン側に配置されるセンタースピーカーとして使用することができる。この場合、別個のセンタースピーカーの配置が省略できるので、スクリーンの配置の自由度をより高くすることができる。
【0057】
さらに、振動膜110および電極膜120,130を構成する導電布111,121,131と、表層布140および下地布150との織密度を適宜調整することにより、下地布150側から表層布140側に音声を良好に透過させることが可能となる。このようにすれば、スピーカをスクリーンの後方に配置することができるので、スクリーンの配置の自由度をさらに高くすることができる。
【0058】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態におけるスピーカー101aの具体的な構成を示す説明図である。第2実施形態は、スピーカー101aの構成が異なっている点で第1実施形態と異なっている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0059】
具体的には、第2実施形態のスピーカー101aでは、振動膜110aおよび電極膜120a,130aのそれぞれの端部に、絶縁性の織布である保護布114a,124a,134aが取り付けられている点で、図3に示す第1実施形態のスピーカー101と異なっている。なお、図4では、便宜上、振動膜110aおよび電極膜120a,130aへの配線119,129,139(図3)の取付部分の図示を省略している。
【0060】
図4に示すように、保護布114a,124a,134aは、振動膜110aおよび電極膜120a,130aのそれぞれの端部を包むように取り付けられる。振動膜110aおよび電極膜120a,130aの端部への保護布114a,124a,134aの取付は、例えば、絶縁性の糸で縫い付けることにより行われる。
【0061】
保護布114a,124a,134aは、ポリエステルやアクリル等の化学繊維、木綿やウール等の自然繊維、あるいは、複数種類の繊維を混合した混紡繊維を使用した原糸を織り上げることにより形成される。但し、難燃性を確保するため、原糸としては、難燃性のポリアミド繊維やアラミド繊維、あるいは、難燃化処理を施した各種繊維を用いるのが好ましい。
【0062】
スピーカー101aの使用に伴って、振動膜110aおよび電極膜120a,130aを構成する導電布111,121,131の端部がほつれる可能性がある。しかしながら、第2実施形態では、図4に示すように、保護布114a,124a,134aによって、導電布111,121,131から導電性を有するほつれた糸の露出が抑制される。そのため、ほつれた糸を介して、導電布111,121,131の間が短絡することが抑制される。また、ほつれた糸の露出が抑制されることにより、導電布121,131に印加された高圧直流電圧が、外部に漏電する虞を低減することができる。
【0063】
なお、図4の例では、保護布114a,124a,134aで導電布111,121,131(振動膜110aおよび電極膜120a,130a)の端部を包むことにより、導電布111,121,131からほつれた糸の露出を抑制して、導電布111,121,131の間の短絡を抑制し、また、導電布121,131に印加された高圧直流電圧の外部への漏電を抑制している。このことは、導電布111,121,131からほつれた糸の影響を低減することになるので、第2実施形態のスピーカー101aでは、導電布111,121,131のほつれを抑制するほつれ止め加工が施されているものと捉えることができる。
【0064】
このように、導電布111,121,131のほつれを抑制するという観点でいえば、図4の例で示す導電布111,121,131の端部を保護布114a,124a,134aで包む構成とは異なる構成によって、ほつれ止め加工を実現することも可能である。
【0065】
例えば、導電布111,121,131の端部にほつれ止め液を塗布することにより、導電布111,121,131のほつれを抑制することができる。塗布するほつれ止め液としては、例えば、上市されている、ナイロンをエタノールに溶解したほつれ止め液等を使用することができる。また、導電布111,121,131を織り上げた原糸が熱可塑性を有する繊維であれば、導電布111,121,131のそれぞれの端部を加熱して端部の原糸を溶着することによっても、導電布111,121,131のほつれを抑制することができる。
【0066】
但し、導電布111,121,131の端部にほつれ止め液を塗布し、あるいは、導電布111,121,131のそれぞれの端部の原糸を溶着した場合、スピーカーの屈曲回数が増加する従って、ほつれを抑制する効果が低下する可能性がある。そのため、ほつれ止め加工は、第2実施形態のように、導電布111,121,131の端部を包むように、導電布111,121,131に保護布114a,124a,134aを取り付けて行うのが好ましい。このようにすれば、スピーカーの屈曲を繰り返してほつれが発生しても、ほつれた導電性の糸が与える影響が抑制されるので、スピーカー101aの耐久性をより高くすることが可能となる。
【0067】
C.第3実施形態:
図5は、第3実施形態におけるスピーカー101bの具体的な構成を示す説明図である。第3実施形態のスピーカー101bは、振動膜110b、電極膜120b,130bおよび表層布140bの構成が異なっている点で、第1実施形態のスピーカー101と異なっている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。また、図5では、便宜上、振動膜110bおよび電極膜120b,130bへの配線119,129,139(図3)の取付部分の図示を省略している。
【0068】
具体的には、第3実施形態のスピーカー101bは、振動膜110bおよび電極膜120b,130bを構成する導電布111b,121b,131bと、表層布140bとを、伸縮性を有する編布(ニット)としている点で、導電布111,121,131および表層布140を織布としている第1実施形態のスピーカー101と異なっている。
【0069】
導電布111b,121b,131bは、第1実施形態と同様に選択された導電性の原糸を周知の製編技術を用いて編み上げることにより形成される。また、表層布140bは、第1実施形態と同様に選択された絶縁性の原糸を編み上げることにより形成される。
【0070】
なお、導電布111b,121b,131bおよび表層布140bは、伸縮性の高い方向がスピーカー101bを巻き取る際の巻取方向と一致するように、すなわち、当該巻取方向に対して伸縮性を有するように形成される。
【0071】
導電布111b,121b,131bに接着される絶縁フィルム112b,113b,122b,132bとしては、導電布111b,121b,131bの伸縮性が阻害されず、振動膜110bおよび電極膜120b,130bが伸縮性を有するように、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、ポリブタジエンあるいはシリコーン等の易伸長性の樹脂からなるフィルムが使用される。これにより、第3実施形態のスピーカー101bでは、スピーカー101bを構成する振動膜110b、電極膜120b,130bおよび表層布140bは、巻取方向に対して伸縮性を有することとなる。
【0072】
図6は、巻取状態と展開状態とのそれぞれにおけるスピーカー101bの様子を示す説明図である。図6(a)は、巻取状態、すなわち、収納等のためにスピーカー101bが巻き取られた状態におけるスピーカー101bの様子を示し、図6(b)は、展開状態、すなわち、使用等のためにスピーカー101bが引き出された状態におけるスピーカー101bの様子を示している。具体的には、図6(a)および図6(b)は、巻取状態と展開状態とのそれぞれにおいて、一点鎖線で囲んだ端部と、二点鎖線で囲んだ中間部とにおける、振動膜110b、電極膜120b,130bおよび表層布140bの状態を示している。なお、図6から判るように、第3実施形態では、スピーカー101bは、表層布140bが内周側となり、下地布150が外周側となるように、巻き取られる。
【0073】
図6(a)に示す巻取状態では、振動膜110b、電極膜120b,130b、表層布140bおよび下地布150は、伸縮性を有する振動膜110b、電極膜120b,130bおよび表層布140bが巻取方向における長さが自然長となるように、端部において縫い付けられる。そのため、巻取状態において、スピーカー101bを構成する振動膜110b、電極膜120b,130b、表層布140bおよび下地布150は、いずれも巻取方向の長さが自然長となる。これにより、スピーカー101bを巻き取る際に、内周側の表層布140bや電極膜120bが撓み、スピーカー101bに皺が発生することが抑制される。
【0074】
一方、巻き取られたスピーカー101bを引き出した展開状態では、振動膜110b、電極膜120b,130bおよび表層布140bが伸縮性を有しているので、振動膜110b、電極膜120b,130bおよび表層布140bが、下地布150との周長の違いにより巻取方向に伸びる。そのため、周長の違いによって、外周側の下地布150や電極膜130bが撓み、スピーカー101bに皺が発生することが抑制される。
【0075】
このように、第3実施形態では、巻取状態において内周側に位置する外装布(すなわち、表層布140b)と、振動膜110bおよび電極膜120b,130bとが、巻取方向に対して伸縮性を有しているため、巻取状態と展開状態とのいずれの状態においても、スピーカー101bに皺が発生することが抑制される。
【0076】
なお、第3実施形態では、表層布140bが内周側となるようにスピーカー101bが巻き取られるため、表層布140bを伸縮性を有する編布としているが、下地布が内周側となるように巻取を行う場合には、下地布が伸縮性を有する編布とされる。
【0077】
また、第3実施形態では、スピーカー101bを、巻取機構を有する引き出し型のプロジェクタースクリーン100(図1)に適用しているため、巻取状態における内周側と外周側とがあらかじめ決まっている。しかしながら、垂幕型あるいは掛図型のプロジェクタースクリーンのように、巻取機構を有さないプロジェクタースクリーンに適用する場合には、巻取状態における内周側と外周側とが決定されない。このような場合、表層布と下地布との双方を伸縮性を有する編布とすれば、巻取状態と展開状態とのいずれの状態においても、スピーカーに皺が発生することが抑制される。なお、この場合、スピーカーの展開状態において、振動膜、2つの電極膜、表層布および下地布のいずれもが、その巻取方向の長さが自然長となるように、端部において縫い付けられる。
【0078】
さらに、第3実施形態では、表層布140bのほか、振動膜110b(導電布111b)および電極膜120b,130b(導電布121b,131b)に伸縮性を持たせているが、表層布140bのみに伸縮性を持たせるものとしても良い。このようにしても、スピーカーの外表面に皺が発生することが抑制されるので、投影映像PIM(図1)をより適切に表示することが可能となる。
【0079】
但し、振動膜110b(導電布111b)および電極膜120b,130b(導電布121b,131b)に伸縮性を持たせることにより、音声の発生に関与する振動膜110bおよび電極膜120b,130bに皺が発生することが抑制され、より確実にスピーカー101bから平面波として音声を放射することが可能となるので、振動膜110b(導電布111b)および電極膜120b,130b(導電布121b,131b)に伸縮性を持たせるのが好ましい。
【0080】
また、第3実施形態では、導電布111b,121b,131bおよび表層布140bに伸縮性を持たせるため、これらの布地111b,121b,131b,140bを伸縮性を有する編布としている。しかしながら、伸縮性を有する布地であれば、これらの布地111b,121b,131b,140bの少なくとも一部を織布とすることも可能である。なお、伸縮性を有する布地の一部を織布とする場合、表層布(下地布に伸縮性を持たせる場合には、下地布)を織布とするのが好ましい。このようにすれば、スピーカーの外表面がひっかきに強い織布となるので、スピーカーの耐久性をより高くすることができる。
【0081】
第3実施形態のスピーカー101bでは、導電布111b,121b,131bの端部にほつれ止め加工を施していないが、第2実施形態のスピーカー101aと同様に、導電布111b,121b,131bの端部にほつれ止め加工を施すことも可能である。なお、ほつれ止め加工として、編布である導電布111b,121b,131bの端部を包むように絶縁性の保護布を取り付ける場合、保護布としては、導電布111b,121b,131bと同様に編布を使用するのが好ましい。
【0082】
D.変形例:
本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0083】
D1.変形例1:
上記各実施形態では、電極膜120,120a,120b,130,130a,130bのそれぞれに絶縁フィルム122,122b,132,132bを設けているが、これらの絶縁フィルム122,122b,132,132bを省略することも可能である。この場合、振動膜110,110a,110bの振動で発生した音声の外部への放出がより容易となり、振動膜110,110a,110bの振動の抑圧がより抑制される。
【0084】
また、振動膜110,110a,110bに設けられる絶縁フィルム112,112b,113,113bを省略し、電極膜120,120a,120b,130,130a,130bのそれぞれにのみ絶縁フィルム122,122b,132,132bを設けるものとしても良い。一般的には、振動膜110,110a,110bと、電極膜120,120a,120b,130,130a,130bとの間が絶縁可能であれば良く、絶縁フィルムは、振動膜110,110a,110bと一方の電極膜120,120a,120bとの少なくとも一方、および、振動膜110,110a,110bと他方の電極膜130,130a,130bとの少なくとも一方に、それぞれ設けられていれば良い。
【0085】
但し、振動膜110,110a,110bの両面に絶縁フィルム112,112b,113,113bを設けるとともに、電極膜120,120a,120b,130,130a,130bのそれぞれに絶縁フィルム122,122b,132,132bを設けることにより、これらの絶縁フィルム112,112b,113,113b,122,122b,132,132bの一部の損傷によって、振動膜110,110a,110bと電極膜120,120a,120b,130,130a,130bとが短絡する可能性を低減できる点で、上記各実施形態のように、振動膜110,110a,110bの両面に絶縁フィルム112,112b,113,113bを設けるとともに、電極膜120,120a,120b,130,130a,130bのそれぞれに絶縁フィルム122,122b,132,132bを設けるのが好ましい。
【0086】
D2.変形例2:
また、振動膜110,110a,110bを構成する導電布111,111bと、電極膜120,120a,120b,130,130a,130bを構成する導電布121,121b,131,131bとを絶縁するために、電極膜120,120a,120b,130,130a,130bのそれぞれに絶縁フィルム122,122b,132,132bを設けているが、他の手段によって、導電布111,111bと、導電布121,121b,131,131bとを絶縁することも可能である。
【0087】
例えば、このような絶縁手段として、絶縁フィルム112,112b、113,113b,122,122b,132,132bに換えて、絶縁性の布地を導電布111,111b,121,121b,131,131bに取り付けることも可能である。なお、絶縁性の布地の導電布111,111b,121,121b,131,131bへの取付は、接着や縫付のほか、多重織りの手法等を用いて行うことができる。
【0088】
D3.変形例3:
上記各実施形態では、本発明に係るスピーカー101,101a,101bをスクリーン100に適用しているが、本発明に係るスピーカーは、必ずしもプロジェクタースクリーンに対してのみに適用されるものではない。本発明に係るスピーカーは、例えば、防音システムに適用することもできる。
【0089】
本発明に係るスピーカーを防音システムに適用する一態様において、本発明に係るスピーカーは、建築物の壁紙として使用される。この場合、壁紙全体で音声を発生させることが可能となるので、会議室における会話等の音声や、集合住宅における隣戸からの騒音を打ち消すように音声を発生させれば、会議室における会話等の外部への漏出を抑制し、あるいは、隣戸からの騒音を良好に除去する防音システムを構築することができる。この場合においても、主として布地で構成されている本発明に係るスピーカーによれば、壁面の凹凸に合わせて施工することが容易であり、より適切に壁紙として使用することができる。
【0090】
また、本発明に係るスピーカーを防音システムに適用する別の態様において、本発明に係るスピーカーは、パーティションや間仕切り等の表装や、パーティションや間仕切り等に取り付けられるタペストリーとして使用される。この場合においても、パーティションや間仕切り等で仕切られた領域における会話等の音声を打ち消すように音声を発生させれば、当該領域における会話等が外部に漏出することを抑制することができる。
【0091】
<静電型スピーカーの用途>
本発明の静電型スピーカーは、上記の如く、音質が良好で指向性が高く、かつ、可撓性を有するものであるから、プロジェクターなどのスクリーン、パーテーション、つい立て、屏風、床、天井、壁、壁紙、カーテン、机、デスクマット、ドア、扉、階段、トイレ、事務用品、ブックカバー、スケジュールボード、展示会パネルやシート、説明看板やボード、ホワイトボード、家具、椅子、椅子カバー、シートのヘッドレスト、椅子、長椅子の座面、ロッカー、柱、窓ガラス、照明器具の傘、郵便受け、枕、クッション、布団、毛布、マットレス、ラグ、座布団、ベッドなどの寝具、テーブルクロス、タンス、ハンガー、食器棚、書棚あるいは本棚、マガジンラック、各種の陳列棚、ベンチ、立て看板(木製あるいは合成樹脂製)、天幕、緞帳、葬祭用具、ゆりかご、マネキン人形、鞄、バック、靴、洋服類、雑貨、帽子、ヘルメット、傘、うちわ、扇子、ステッキ、杖、タペストリー、掛軸、壁掛け、絵、額縁、彫刻、銅像、台座、仏壇、カレンダー、ポスター、ペット用の被服類、ペット用のベット、ペットの小屋、傘立て、下駄箱、寝台、玩具、遊戯用具、運動用具、パソコンなどの電子機器、携帯電話用などのビジネス、ホーム、インテリア、エクステリア、車輛、船舶、航空機、医療、介護、レジャー、アウトドアなどの各種の用途の物品に好適に用いることができる。そして、それらの物品に内蔵させたり付設したりすることによって、発する音(音声や音楽など)を特定の人のみに聞き取らせることが可能なスピーカー(たとえば、車輛などで所定のシートの上方の天井やヘッドレストから音を発するが、他のシートの使用者には、その音が聞こえないスピーカー)として機能させることができる。
【符号の説明】
【0092】
10…スピーカーシステム
100…スクリーン(プロジェクタースクリーン)
101,101a,101b…スピーカー(投影面)
110,110a,110b…振動膜
111,111b…導電布
112,112b,113,113b…絶縁フィルム
114a,124a,134a…保護布
119…配線
120,120a,120b,130,130a,130b…電極膜
121,121b,131,131b…導電布
122,122b,132,132b…絶縁フィルム
129,139…配線
140,140b…表層布
150…下地布
200…ドライブユニット
210…増幅回路
220…トランス出力回路
230…高電圧発生回路
900…ビデオディスクプレイヤー
AS…音声信号
C1~C6…コンデンサ
D1~D6…ダイオード
DAS…差動音声信号
L…チョークコイル
OSC…発振器
PIM…投影映像
Q1…MOS型電界効果トランジスタ
T1,T2…トランス
U1…差動増幅器
VS…映像信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6