(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041720
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/02 20060101AFI20240319BHJP
G01N 29/024 20060101ALI20240319BHJP
G01N 29/44 20060101ALI20240319BHJP
G01F 23/296 20220101ALI20240319BHJP
G01N 11/00 20060101ALI20240319BHJP
G01N 11/16 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G01N29/02
G01N29/024
G01N29/44
G01F23/296
G01N11/00 A
G01N11/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138393
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2022146571
(32)【優先日】2022-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 来
【テーマコード(参考)】
2F014
2G047
【Fターム(参考)】
2F014FB00
2G047AA01
2G047AA03
2G047BA03
2G047BC02
2G047BC03
2G047BC04
2G047GG12
2G047GG20
2G047GG28
2G047GG30
2G047GG32
2G047GG33
2G047GG46
(57)【要約】
【課題】液体の状態をより容易に測定できる測定装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る測定装置1は、液体Lを含む容器105に対し配置される測定装置1であって、容器105に対して固定される出力検出部であって、容器105に含まれる液体Lの内部を伝搬する超音波を出力し、液体L内を伝搬した超音波を検出する複数の出力検出部と、出力検出部により検出された超音波に基づいて容器105内での液体Lの状態を測定する制御部50と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を含む容器に対し配置される測定装置であって、
前記容器に対して固定される出力検出部であって、前記容器に含まれる前記液体の内部を伝搬する超音波を出力し、前記液体内を伝搬した前記超音波を検出する複数の前記出力検出部と、
前記出力検出部により検出された前記超音波に基づいて前記容器内での前記液体の状態を測定する制御部と、
を備える、
測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記液体に対象物を撹拌するために前記液体を貯留する前記容器に対し配置され、
前記液体の状態は、撹拌における前記液体の製品性状を含み、
前記制御部は、第1基準状態にある前記液体の製品性状に関する基準データと、撹拌中の前記液体の製品性状に関する測定データと、に基づいて前記液体の製品性状を測定する、
測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記基準データからの前記測定データの差分を算出し、前記差分が所定時間にわたり一定となると前記液体に対する前記対象物の撹拌が完了したと判定する、
測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記液体の状態は、前記容器内における前記液体の液面の位置を含み、
前記制御部は、複数の前記出力検出部によりそれぞれ検出された前記超音波の複数の検出信号に基づいて前記液体の液面の位置を測定する、
測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測定装置であって、
前記制御部は、第1検出信号を示す一の前記出力検出部と、前記第1検出信号と異なる第2検出信号を示す隣接する他の前記出力検出部と、の間の位置を前記液体の液面の位置として算出する、
測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記液体の状態は、気泡又は粒子の存否を含み、
前記制御部は、前記出力検出部により検出された前記超音波の波形の始まりの正負及び音速の少なくとも一方に基づいて、気泡又は粒子の存否を測定する、
測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記液体を用いたときの前記波形の始まりの正負が第2基準状態にある前記液体を用いたときの基準波形の始まりの正負に対し反転していると気泡が存在すると判定する、
測定装置。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記液体の状態は、気泡又は粒子の密度を含み、
前記制御部は、前記出力検出部により検出された前記超音波の音速に基づいて、気泡又は粒子の密度を測定する、
測定装置。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
複数の前記出力検出部が前記容器の外面に沿って配置され、
前記出力検出部は、出力された前記超音波の反射波又は透過波を検出する、
測定装置。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記出力検出部は、前記液体内の対象物を前記超音波により微細化して前記液体内に分散させるホモジナイザを有し、前記ホモジナイザからの前記超音波を検出する、
測定装置。
【請求項11】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記容器に貯留される前記液体の粘度、前記液体の前記容器内での圧力、前記液体の前記容器内での温度、及び前記液体の前記容器内での外観の少なくとも1つを前記液体の状態に加えてさらに測定する、
測定装置。
【請求項12】
液体を含む容器に対し配置される測定装置により実行される測定方法であって、
前記容器に含まれる前記液体の内部を伝搬する超音波を出力するステップと、
前記容器に対して固定された位置で、前記液体内を伝搬した前記超音波を検出するステップと、
検出された前記超音波に基づいて前記容器内での前記液体の状態を測定するステップと、
を含む、
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、液体に対象物を混ぜ合わせるための撹拌に関連する技術が知られている。例えば、特許文献1には、所望のとろみ付けを実現しやすい、とろみ付け支援システム及び撹拌子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、撹拌などに用いられる液体の状態を、容器内での撹拌中に容器の蓋を開けることなく、特定の物理量以外のセンシングにより定量的に測定する点について十分に考慮されていなかった。
【0005】
本開示は、液体の状態をより容易に測定できる測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る測定装置は、液体を含む容器に対し配置される測定装置であって、前記容器に対して固定される出力検出部であって、前記容器に含まれる前記液体の内部を伝搬する超音波を出力し、前記液体内を伝搬した前記超音波を検出する複数の前記出力検出部と、前記出力検出部により検出された前記超音波に基づいて前記容器内での前記液体の状態を測定する制御部と、を備える。
【0007】
これにより、例えば、撹拌に用いられる液体の状態を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置は、撹拌に用いられる液体の状態を、容器内での撹拌中に容器の蓋を開けることなく、特定の物理量以外のセンシングにより定量的に測定することができる。測定装置は、撹拌中であっても、撹拌機の内部の液体を取り出すことなく、リアルタイムに液体の状態を測定することができる。以上により、撹拌機の容器内での撹拌に用いられる液体の状態を測定するときの測定装置の利便性が向上する。
【0008】
一実施形態における測定装置は、前記液体に対象物を撹拌するために前記液体を貯留する前記容器に対し配置され、前記液体の状態は、撹拌における前記液体の製品性状を含み、前記制御部は、第1基準状態にある前記液体の製品性状に関する基準データと、撹拌中の前記液体の製品性状に関する測定データと、に基づいて前記液体の製品性状を測定してもよい。
【0009】
これにより、測定装置は、撹拌における液体の製品性状を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置は、上記のリアルタイム測定において特定の物理量を一意の式で測定することなく、撹拌における液体の製品性状を定量的に判定することで、撹拌における液体の製品性状を容易に確認できる。したがって、上述した測定装置1の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0010】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記基準データからの前記測定データの差分を算出し、前記差分が所定時間にわたり一定となると前記液体に対する前記対象物の撹拌が完了したと判定してもよい。
【0011】
これにより、測定装置は、対象物が液体に対して正常に混ぜ合わされたことを定量的に判定することができる。測定装置は、撹拌が完了したことを、容器の蓋を開けることなく定量的に判定することができる。測定装置は、撹拌機の内部の液体を取り出すことなく、リアルタイムに、撹拌が完了したことを判定することができる。以上により、上述した測定装置の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0012】
一実施形態における測定装置では、前記液体の状態は、前記容器内における前記液体の液面の位置を含み、前記制御部は、複数の前記出力検出部によりそれぞれ検出された前記超音波の複数の検出信号に基づいて前記液体の液面の位置を測定してもよい。
【0013】
これにより、測定装置は、液体の液面の位置を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置は、液体の液面の位置を、容器内での撹拌中に容器の蓋を開けることなく容易に測定することができる。測定装置は、撹拌中であっても、蓋を開けることなく、リアルタイムに液体の液面の位置を測定することができる。以上により、上述した測定装置の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0014】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、第1検出信号を示す一の前記出力検出部と、前記第1検出信号と異なる第2検出信号を示す隣接する他の前記出力検出部と、の間の位置を前記液体の液面の位置として算出してもよい。
【0015】
これにより、測定装置は、複数の出力検出部によってそれぞれ得られた複数の検出信号の様子に基づいて、液体の液面の位置を、撹拌中であってもより容易に測定できる。以上により、上述した測定装置の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0016】
一実施形態における測定装置では、前記液体の状態は、気泡又は粒子の存否を含み、前記制御部は、前記出力検出部により検出された前記超音波の波形の始まりの正負及び音速の少なくとも一方に基づいて、気泡又は粒子の存否を測定してもよい。
【0017】
これにより、測定装置は、気泡又は粒子の存否を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置は、気泡又は粒子の存否を、容器内での撹拌中に容器の蓋を開けることなく容易に測定することができる。測定装置は、撹拌中であっても、蓋を開けることなく、リアルタイムに気泡又は粒子の存否を測定することができる。以上により、上述した測定装置の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0018】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記液体を用いたときの前記波形の始まりの正負が第2基準状態にある前記液体を用いたときの基準波形の始まりの正負に対し反転していると気泡が存在すると判定してもよい。
【0019】
これにより、測定装置は、波形の形状変化に基づいて客観的に気泡の存否を測定することができる。以上により、上述した測定装置の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0020】
一実施形態における測定装置では、前記液体の状態は、気泡又は粒子の密度を含み、前記制御部は、前記出力検出部により検出された前記超音波の音速に基づいて、気泡又は粒子の密度を測定してもよい。
【0021】
これにより、測定装置は、気泡又は粒子の密度を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置は、気泡又は粒子の密度を、容器内での撹拌中に容器の蓋を開けることなく容易に測定することができる。測定装置は、撹拌中であっても、蓋を開けることなく、リアルタイムに気泡又は粒子の密度を測定することができる。以上により、上述した測定装置の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0022】
一実施形態における測定装置では、複数の前記出力検出部が前記容器の外面に沿って配置され、前記出力検出部は、出力された前記超音波の反射波又は透過波を検出してもよい。
【0023】
これにより、測定装置は、撹拌中の液体の状態を、撹拌機の外部から容易に測定できる。測定装置は、液体の状態を、容器内での撹拌中に容器の蓋を開けることなく外部から容易に測定することができる。測定装置は、撹拌中であっても、蓋を開けることなく、リアルタイムに液体の状態を外部から測定することができる。以上により、上述した測定装置の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0024】
一実施形態における測定装置では、前記出力検出部は、前記液体内の対象物を前記超音波により微細化して前記液体内に分散させるホモジナイザを有し、前記ホモジナイザからの前記超音波を検出してもよい。
【0025】
これにより、測定装置は、液体内を伝搬した、ホモジナイザからの超音波を用いて、後述する測定方法と同様の原理に基づいて液体の状態を測定することができる。
【0026】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記容器に貯留される前記液体の粘度、前記液体の前記容器内での圧力、前記液体の前記容器内での温度、及び前記液体の前記容器内での外観の少なくとも1つを前記液体の状態に加えてさらに測定してもよい。
【0027】
これにより、測定装置は、複数の物理量を組み合わせてその相関を取得し、液体の状態、例えば液体の製品性状をより精度良く定義することも可能になる。例えば、測定装置は、所定の時間領域で液体が所定の性状を有し液体に対する対象物の撹拌が完了していると定義することも可能である。
【0028】
幾つかの実施形態に係る測定方法は、液体を含む容器に対し配置される測定装置により実行される測定方法であって、前記容器に含まれる前記液体の内部を伝搬する超音波を出力するステップと、前記容器に対して固定された位置で、前記液体内を伝搬した前記超音波を検出するステップと、検出された前記超音波に基づいて前記容器内での前記液体の状態を測定するステップと、を含む。
【0029】
これにより、例えば、撹拌に用いられる液体の状態を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置は、撹拌に用いられる液体の状態を、容器内での撹拌中に容器の蓋を開けることなく、特定の物理量以外のセンシングにより定量的に測定することができる。測定装置は、撹拌中であっても、撹拌機の内部の液体を取り出すことなく、リアルタイムに液体の状態を測定することができる。以上により、撹拌機の容器内での撹拌に用いられる液体の状態を測定するときの測定装置の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、液体の状態をより容易に測定できる測定装置及び測定方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本開示の一実施形態に係る測定装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図1の測定装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3A】検出部からの検出信号の第1例を示すグラフ図である。
【
図3B】検出部からの検出信号の第2例を示すグラフ図である。
【
図3C】検出部からの検出信号の第3例を示すグラフ図である。
【
図3D】検出部からの検出信号の第4例を示すグラフ図である。
【
図4A】検出部からの検出信号の第5例を示すグラフ図である。
【
図4B】検出部からの検出信号の第6例を示すグラフ図である。
【
図4C】検出部からの検出信号の第7例を示すグラフ図である。
【
図4D】検出部からの検出信号の第8例を示すグラフ図である。
【
図5】
図1の測定装置の動作の第1例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図1の測定装置の動作の第2例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】容器が空であるときの各検出信号の一例を示す模式図である。
【
図8】容器が空でないときの各検出信号の第1例を示す模式図である。
【
図9】容器が空でないときの各検出信号の第2例を示す模式図である。
【
図10】容器が空でないときの各検出信号の第3例を示す模式図である。
【
図11】容器が空でないときの各検出信号の第4例を示す模式図である。
【
図12】
図1の測定装置の動作の第3例を説明するためのフローチャートである。
【
図13】
図1の測定装置の動作の第3例を説明するための模式図である。
【
図14】
図1の測定装置の動作の第4例を説明するためのフローチャートである。
【
図15】液体の音速を算出する算出方法を説明するための模式図である。
【
図16】
図1の測定装置の第1変形例を示す模式図である。
【
図17】
図1の測定装置の第2変形例を示す模式図である。
【
図18】
図1の測定装置の第3変形例を示す模式図である。
【
図19】
図1の測定装置の第4変形例を示す模式図である。
【
図20】
図1の測定装置の第5変形例を示す模式図である。
【
図21】
図1の測定装置の第6変形例を示す模式図である。
【
図22】
図1の測定装置の第7変形例を示す模式図である。
【
図23】
図22の測定装置により得られた測定データの一例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0033】
液体に対象物を混ぜ合わせるために用いられる撹拌機は、主な構成として、モータと、撹拌軸と、撹拌翼と、蓋と、容器と、を有する。撹拌機の容器には、主剤としての液体と、撹拌によって液体内で分散させる対象となる対象物とが混在する。撹拌機は、モータの回転による回転力を、撹拌軸を介して撹拌翼に伝え、撹拌翼を回転させることで、液体に対し対象物を混ぜ合わせる。対象物によっては、撹拌によって気泡が混入する場合もある。撹拌機は、容器の内部の状態を確認可能とするために、サイトガラス並びに温度計及び圧力計などの計測機器が蓋に対し設置されている場合もある。
【0034】
主剤としての液体に対し対象物が完全に混ざり合ったか否かを確認するための方法がいくつか考えられる。第1の方法は、予め設定された時間だけ撹拌を行う方法である。第2の方法は、容器の蓋を開け、容器内部の液体を取り出して確認する方法である。第3の方法は、容器の外側のサイトガラスから容器内部の液体を視認する方法である。第4の方法は、モータの回転数及び消費電流を測定し、撹拌トルクが所定のトルクになったか否かを判定する方法である。第5の方法は、計測機器により測定された温度及び圧力などの容器内側からの二次情報に基づいて判定する方法である。
【0035】
しかしながら、いずれの方法も、撹拌中に液体の状態を容器の外部から測定することは容易ではなかった。例えば、撹拌における液体の製品性状を確認するためには、一度撹拌を中断し、容器の蓋を開けて容器内部の液体を柄杓で取得し、外部機器で確認を行う必要があった。例えば、上記第4の方法では、撹拌中の製品性状を確認することも一応は可能であるが、対象物によっては撹拌トルクが変化しない場合もある。
【0036】
加えて、撹拌が行われると、容器内での沈殿物に密度差が生じたり、気泡の混入状態に差が生じたりすることもある。その結果、撹拌における液体の製品性状が安定しないといった課題も生じる。これらを測定するためには、複数の検出部を設置する必要がある。
【0037】
さらに、撹拌条件によっては内部の液体の液面の位置が上昇し、蓋の上面に設置されたサイトガラスが汚れたり、温度計及び圧力計などの付属の計測機器が故障したりする可能性もある。したがって、液体の液面の位置を液体の状態として測定することも重要となるが、サイトグラスから視認する方法が一般的である。
【0038】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、撹拌に用いられる液体の状態を、撹拌中であってもより容易に測定できる測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。より具体的には、本開示は、撹拌に用いられる液体の状態を、容器内での撹拌中に容器の蓋を開けることなく容器の外部から測定し、特定の物理量以外のセンシングにより定量的に測定することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【0039】
(構成)
以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0040】
図1は、本開示の一実施形態に係る測定装置1の概略構成を示す模式図である。
図2は、
図1の測定装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。初めに、
図1を参照しながら、液体Lに対象物Sを撹拌するために用いられる撹拌機100の構成について主に説明する。本開示において、「対象物S」は、例えば固体、液体、及び気体などの任意の状態のものを含む。
【0041】
撹拌機100は、モータ101と、撹拌軸102と、撹拌翼103と、蓋104と、容器105と、を有する。容器105内には、主剤としての液体Lと、撹拌によって液体L内で分散させる対象となる対象物Sとが混在する。容器105は、液体Lを貯留する。撹拌機100は、モータ101の回転による回転力を、撹拌軸102を介して撹拌翼103に伝え、撹拌翼103を回転させることで、液体Lに対し対象物Sを混ぜ合わせる。対象物Sによっては、撹拌によって気泡Bが混入する場合もある。
【0042】
撹拌機100は、容器105の内部の状態を確認可能とするために、サイトガラス106並びに温度計及び圧力計などの計測機器107を蓋104において付加的に有してもよい。
【0043】
図1及び
図2を参照しながら、撹拌機100に対して配置される測定装置1の構成について主に説明する。測定装置1は、出力部10と、検出部20と、表示部30と、記憶部40と、制御部50と、を有する。
図1に示す例では、1つの出力部10と1つの検出部20とは、1つのモジュールにより兼用可能であり、1つの出力検出部として一体的に構成されている。1つの出力部10と1つの検出部20とは、モジュール構成としては1つの出力検出部にまとめられるが、機能としてはそれぞれ別個の機能ブロックとして定義可能である。1つの出力検出部は、1つの出力部10と1つの検出部20とを有する。出力検出部は、容器105に対して固定される。
【0044】
出力部10は、容器105に対して固定される任意の超音波出力モジュールを含む。出力部10は、容器105に貯留される液体Lの内部を伝搬する超音波を出力する。出力部10は、例えば矩形波、正弦波、及び三角波などの制御信号が制御部50から印加されることで超音波を出力する。
【0045】
検出部20は、容器105に対して固定される任意の超音波検出モジュールを含む。検出部20は、出力部10から出力され、容器105に貯留される液体L内を伝搬した超音波を検出する。
【0046】
表示部30は、情報を出力してユーザに通知する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、表示部30は、情報を画像で出力するディスプレイなどを含む。
【0047】
記憶部40は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部40は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部40は、測定装置1に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートによって接続されている外付け型の記憶モジュールを含んでもよい。記憶部40は、測定装置1の動作に用いられる任意の情報を記憶する。
【0048】
制御部50は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部50は、検出部20により検出された超音波に基づいて容器105内での撹拌に用いられる液体Lの状態を測定する。
【0049】
本開示において、「液体Lの状態」は、例えば撹拌における液体Lの製品性状、容器105内における液体Lの液面の位置、気泡B又は対象物Sなどに基づく粒子の存否、気泡B又は対象物Sなどに基づく粒子の密度、撹拌される液体Lの密度、及び液体Lの粘度などを含む。「製品性状」は、例えば液体Lに対する対象物Sの混ざり具合などを含む。
【0050】
図1を参照すると、測定装置1は、液体Lに対象物Sを撹拌するために用いられる容器105に対し配置される。測定装置1における複数対の出力部10及び検出部20が、容器105の外面に沿って配置される。測定装置1は、例えば三対の出力部10及び検出部20を有する。出力部10a及び検出部20aは、容器105の外面に沿って上段に配置される。出力部10b及び検出部20bは、容器105の外面に沿って中段に配置される。出力部10c及び検出部20cは、容器105の外面に沿って下段に配置される。
【0051】
制御部50は、複数対の出力部10及び検出部20の動作を制御する制御回路51を有する。制御回路51は、出力部10による超音波の出力を制御する。制御回路51は、検出部20による超音波の検出を制御する。制御部50は、制御回路51に接続されている情報処理端末52を有する。情報処理端末52は、例えばPC(Personal Computer)、タブレットPC、若しくはスマートフォンなどの汎用の電子機器又は無線伝送可能な任意の他の小型機器である。
【0052】
複数対の出力部10及び検出部20の各々は、制御部50による制御に基づいて超音波を出力及び検出する。超音波は、超音波を出力させるための制御信号を制御回路51が出力部10に送信することで生成され、容器105の内部を伝搬する。伝搬した超音波は、容器105の壁面で反射する。超音波は、容器105の内部に液体Lが貯留されていると、液体Lの中を伝搬し、撹拌翼103、撹拌軸102、及び容器105の対向内壁面で反射する。加えて、液体L中に入射した超音波は、液体L中に分散している対象物S及び気泡Bなどで反射する。
【0053】
検出部20は、対となる出力部10から出力された超音波の反射波を検出する。制御回路51は、複数の検出部20の各々に対し超音波の検出を制御する。すなわち、各検出部20に対して超音波の検出信号が得られる。
【0054】
容器105の外面に沿って固定される出力部10及び検出部20の一の対と隣接する他の対との間には所定の間隔が設けられている。情報処理端末52に位置する記憶部40は、当該所定の間隔を記憶する。
【0055】
情報処理端末52は、制御回路51から超音波の検出信号を取得し、容器105内での撹拌に用いられる液体Lの状態を測定する。情報処理端末52は、測定結果をデータとして表示部30により出力する。すなわち、測定結果は、例えば表示部30に表示される。
【0056】
図3Aは、検出部20からの検出信号の第1例を示すグラフ図である。
図3Aは、容器105内に液体Lが存在せず容器105が空である場合の検出信号の一例を示す。
【0057】
容器105内に液体Lが存在せず容器105が空である場合、出力部10から出力された超音波は、出力部10及び検出部20が配置されている容器105の壁部の内面で最初に反射し、時間領域R1において大きな振幅の反射信号として検出される。超音波の大部分は、当該壁部の内面で反射し、容器105の内部に入射しない。超音波は、容器105の壁部の内面で最初に反射した後、当該壁部の内面と外面との間で反射を繰り返して往復し、時間領域R1に続く他の時間領域において連続的に減衰する繰り返しの反射信号として検出される。
【0058】
図3Bは、検出部20からの検出信号の第2例を示すグラフ図である。
図3Bは、容器105内に対象物S及び気泡Bなどが存在せず液体Lのみが貯留されている場合の検出信号の一例を示す。
【0059】
容器105内に液体Lのみが存在する場合、出力部10から出力された超音波の一部は、出力部10及び検出部20が配置されている容器105の壁部の内面で反射するが、その大部分は、当該内面から容器105の内部へと入射する。容器105の内部へと入射した超音波は、撹拌翼103の位置によっては撹拌翼103で反射する。超音波は、撹拌翼103で反射すると、時間領域R2において大きな振幅の反射信号として検出される。
【0060】
図3Cは、検出部20からの検出信号の第3例を示すグラフ図である。
図3Cは、容器105内に対象物S及び気泡Bなどが存在せず液体Lのみが貯留されている場合の検出信号の一例を示す。
【0061】
容器105内に液体Lのみが存在する場合、出力部10から出力された超音波の一部は、出力部10及び検出部20が配置されている容器105の壁部の内面で反射するが、その大部分は、当該内面から容器105の内部へと入射する。容器105の内部へと入射した超音波は、撹拌翼103ではなく撹拌軸102で反射することもある。超音波は、撹拌軸102で反射すると、時間領域R4において大きな振幅の反射信号として検出される。
【0062】
対象物Sが液体Lに対して完全に溶解している場合の反射信号は、容器105内に対象物S及び気泡Bなどが存在せず液体Lのみが貯留されている場合の
図3B及び
図3Cにおける検出信号の一例と同様の傾向を有する。
【0063】
図3Dは、検出部20からの検出信号の第4例を示すグラフ図である。
図3Dは、容器105内に貯留されている液体L内で対象物S及び気泡Bなどが存在する場合の検出信号の一例を示す。
【0064】
容器105内に液体Lに加えて対象物S及び気泡Bなどが存在する場合、出力部10及び検出部20が配置されている容器105の壁部の内面から容器105の内部へと入射した超音波は、対象物S及び気泡Bなどで反射する。容器105内のいずれかの場所で対象物Sが沈殿すると、壁部の内面以外、例えば沈殿がある範囲での反射信号は、その振幅が小さくなる傾向にある。超音波は、上記壁部の内面から撹拌軸102までの間で液体L中に存在する対象物S及び気泡Bなどで反射すると、時間領域R3において小さな振幅の複数の反射信号として検出される。
【0065】
加えて、超音波は、撹拌軸102で反射すると、時間領域R4において比較的大きな振幅の反射信号として検出される。その他にも、超音波は、撹拌軸102から上記壁部に対向する反対側の壁部の内面までの間で液体L中に存在する対象物S及び気泡Bなどで反射すると、時間領域R3における反射信号と同様の反射信号として時間領域R5においても検出される。
【0066】
図3A乃至
図3Dでは、時間領域R5についてその一部のみが示されている。上記壁部に対向する反対側の壁部の内面での反射位置は、各グラフの右端よりもさらに右側に位置する。
【0067】
図4Aは、検出部20からの検出信号の第5例を示すグラフ図である。
図4Aは、
図3Aに示される検出信号に対し、検出信号を処理する方法の一例としてエンベロープ処理を実行したときの様子を示す。
【0068】
図4Bは、検出部20からの検出信号の第6例を示すグラフ図である。
図4Bは、
図3Bに示される検出信号に対し、検出信号を処理する方法の一例としてエンベロープ処理を実行したときの様子を示す。
【0069】
図4Cは、検出部20からの検出信号の第7例を示すグラフ図である。
図4Cは、
図3Cに示される検出信号に対し、検出信号を処理する方法の一例としてエンベロープ処理を実行したときの様子を示す。
【0070】
図4Dは、検出部20からの検出信号の第8例を示すグラフ図である。
図4Dは、
図3Dに示される検出信号に対し、検出信号を処理する方法の一例としてエンベロープ処理を実行したときの様子を示す。
【0071】
測定装置1の制御部50は、
図3A乃至
図3D、又は
図4A乃至
図4Dに示される検出信号の波形パターンなどを利用して、液体Lの状態を測定する。
【0072】
以下では、測定装置1により実行される測定方法について詳細に説明する。
【0073】
(液体Lの製品性状)
測定装置1は、特定の出力周波数にて変調された超音波を出力部10において生成し、液体L中で反射した反射波を検出部20において検出する。測定装置1は、
図3A乃至
図4Dに示されるように、超音波の検出信号における伝搬波形のデータを、主に時間領域R1乃至R5において取得する。後述するとおり、測定装置1は、複数設置されている各検出部20から取得された測定データを、撹拌開始前の初期状態で取得された基準データと比較判断することで、液体Lの製品性状を測定する。
【0074】
図5は、
図1の測定装置1の動作の第1例を説明するためのフローチャートである。
図5を参照しながら、
図1の測定装置1により実行される測定方法の第1例について説明する。
図5に示すフローチャートは、液体Lの状態のうち撹拌における液体Lの製品性状を、測定装置1を用いて測定するときの測定方法の基本的な処理の流れを示す。
【0075】
ステップS100では、撹拌機100は、液体L及び対象物Sなどの撹拌に必要な材料を容器105の内部に受け入れる。ユーザは、撹拌機100の蓋104を開けて、液体L及び対象物Sなどの撹拌に必要な材料を容器105の中に投入する。
【0076】
ステップS101では、撹拌機100は、撹拌動作を開始する。より具体的には、撹拌機100は、モータ101を動作させて、撹拌軸102及び撹拌翼103を所定の回転速度で駆動する。これにより、撹拌機100は、ステップS100において受け入れた材料を容器105の内部で撹拌する。
【0077】
ステップS102では、測定装置1の制御部50に含まれる制御回路51は、複数対の出力部10及び検出部20の中から、動作させる出力部10及び検出部20の対を選択する。
【0078】
ステップS103では、測定装置1の制御部50に含まれる制御回路51は、ステップS102において選択された出力部10を用いて容器105の内部に向けて超音波を出力させる。より具体的には、制御回路51は、容器105に貯留される液体Lの内部を伝搬する超音波を出力部10から出力させる。
【0079】
ステップS104では、測定装置1の制御部50に含まれる制御回路51は、ステップS102において選択された検出部20を用いて超音波を検出させる。より具体的には、制御回路51は、容器105に対して固定された位置で、液体L内を伝搬した超音波を検出部20に検出させる。
【0080】
ステップS105では、測定装置1の制御部50に含まれる制御回路51は、ステップS104において検出された超音波の検出信号を情報として記憶部40に記憶させる。
【0081】
ステップS106では、測定装置1の制御部50に含まれる制御回路51は、全ての検出部20を用いて検出を実行したか否かを判定する。制御部50は、全ての検出部20を用いて検出を実行したと判定すると、ステップS107の処理を実行する。例えば、制御部50は、
図1に示す3つの検出部20に対し下段から上段まで全ての検出部20を用いて検出を実行したと判定すると、ステップS107の処理を実行する。制御部50は、全ての検出部20を用いて検出を実行していないと判定すると、ステップS102の処理を再度実行する。
【0082】
ステップS107では、測定装置1の制御部50に含まれる情報処理端末52は、ステップS106において全ての検出部20を用いて検出を実行したと判定されると、ステップS104において検出された超音波に基づいて容器105内での撹拌に用いられる液体Lの状態を測定する。より具体的には、情報処理端末52は、撹拌中の液体Lの製品性状を測定する。
【0083】
ステップS108では、測定装置1の制御部50に含まれる情報処理端末52は、ステップS107において測定された液体Lの製品性状が所定の性状となり液体Lに対する対象物Sの撹拌が完了したか否かを判定する。本開示において、「所定の性状」は、例えば液体Lに対し対象物Sが完全に混ざり合った状態を含む。制御部50は、液体Lに対する対象物Sの撹拌が完了したと判定すると、ステップS109の処理を実行する。制御部50は、液体Lに対する対象物Sの撹拌が完了していないと判定すると、ステップS102の処理を再度実行する。
【0084】
ステップS109では、測定装置1の制御部50に含まれる情報処理端末52は、ステップS108において液体Lに対する対象物Sの撹拌が完了したと判定すると、判定結果を表示部30に表示させる。より具体的には、情報処理端末52は、液体Lが所定の性状を有し液体Lに対する対象物Sの撹拌が完了していることを表示部30に視覚情報として表示させる。
【0085】
ステップS110では、撹拌機100は、撹拌動作を終了する。より具体的には、撹拌機100は、モータ101の動作を停止させて、撹拌軸102及び撹拌翼103の回転動作を停止させる。これにより、撹拌機100は、ステップS100において受け入れた材料の容器105内部での撹拌を終了する。
【0086】
以下では、上記ステップS107及びステップS108における制御部50の処理内容についてより詳細に説明する。
【0087】
液体Lの製品性状の測定方法は、リファレンスとの比較を含む。より具体的には、制御部50は、第1基準状態にある液体Lの製品性状に関する基準データと、撹拌中の液体Lの製品性状に関する測定データと、に基づいて液体Lの製品性状を測定する。本開示において、「第1基準状態」は、例えば気泡Bなどが液体Lの内部に存在せず、かつ対象物Sが液体Lに対して投入されたまま全く混ぜ合わされていない初期状態を含む。第1基準状態にある液体Lの製品性状では、例えば液体Lに対する対象物Sの混ざり具合はゼロである。
【0088】
基準データは、第1基準状態にある液体Lの内部を伝搬した超音波の反射信号のパラメータを含む。このような基準データは、全ての検出部20に対して検出された超音波に関するデータを含み、リファレンスとして記憶部40に記憶される。本開示において、「パラメータ」は、例えば波形の始まりの正負、最大振幅、伝搬時間、音速、及びスペクトラムを含む周波数の少なくとも1つを含む。
【0089】
制御部50は、対象物Sが液体Lに対して正常に混ぜ合わされたことを確認したい系の初期状態、すなわち第1基準状態でパラメータを含む基準データをリファレンスとして予め取得する。例えば、制御部50は、
図3A乃至
図4Dの時間領域R1乃至時間領域R5の各領域に対して個別に閾値を設定し、反射信号の波形の始まりの正負、最大振幅、伝搬時間、及び音速を取得する。例えば、制御部50は、
図3A乃至
図4Dの時間領域R1乃至時間領域R5の各領域に対してFFT(Fast Fourier Transform)処理を実行し、反射信号のスペクトラムを含む周波数を取得する。
【0090】
制御部50は、撹拌中の任意のタイミングで、再度、基準データと同様のデータを上記の測定データとして取得し、記憶部40に記憶させる。制御部50は、リファレンスと同様の処理を実行し、上記のパラメータを液体Lの撹拌中においても取得する。以上のように、
図5のステップS107では、制御部50は、データ分析を行う。
【0091】
制御部50は、基準データからの測定データの差分を算出し、差分が所定時間にわたり一定となると液体Lに対する対象物Sの撹拌が完了したと判定する。制御部50は、差分がゼロであれば第1基準状態から液体Lの製品性状に変化なしと判定する。制御部50は、差分の変化量が飽和したら正常、すなわち撹拌が完了したと判定する。基準データからの測定データの差分は、例えば上記5つのパラメータの少なくとも1つに関する差分を含む。制御部50は、5つのパラメータのうち、第1基準状態と撹拌中の任意の状態との間で変化する少なくとも1つのパラメータに対して差分を算出すればよい。
【0092】
(液体Lの液面の位置)
図6は、
図1の測定装置1の動作の第2例を説明するためのフローチャートである。
図6を参照しながら、
図1の測定装置1により実行される測定方法の第2例について説明する。
図6に示すフローチャートは、液体Lの状態のうち容器105内における液体Lの液面の位置を、測定装置1を用いて測定するときの測定方法の基本的な処理の流れを示す。
【0093】
測定装置1の制御部50は、複数の検出部20によりそれぞれ検出された超音波の複数の検出信号に基づいて液体Lの液面の位置を測定する。
【0094】
ステップS200では、測定装置1の制御部50は、容器105の外面に沿って配置されている複数の検出部20を用いて、対応する複数の出力部10から出力された超音波に関する複数の検出信号をそれぞれ取得する。各検出信号は、例えば
図3A乃至
図3Dのいずれかに例として示したものに対応する。
【0095】
ステップS201では、測定装置1の制御部50は、ステップS200において取得された複数の検出信号が全て同一の特徴を有するか否かを判定する。制御部50は、全て同一の特徴を有すると判定するとステップS202の処理を実行する。制御部50は、一部の特徴が異なると判定するとステップS204の処理を実行する。
【0096】
ステップS202では、測定装置1の制御部50は、ステップS201において全て同一の特徴を有すると判定すると、当該特徴が全て第1検出信号に対応するものであるか否かを判定する。本開示において、「第1検出信号」は、例えば容器105内に液体Lが存在せず容器105が空である場合の
図3A又は
図4Aに示す検出信号を含む。制御部50は、全て第1検出信号に対応すると判定すると、ステップS203の処理を実行する。制御部50は、全て第1検出信号に対応しないと判定すると、ステップS205の処理を実行する。
【0097】
ステップS203では、測定装置1の制御部50は、ステップS202において全て第1検出信号に対応すると判定すると、容器105内に液体Lが存在せず容器105が空であると決定する。
【0098】
ステップS204では、測定装置1の制御部50は、ステップS201において一部の特徴が異なると判定すると、ステップS200において取得された複数の検出信号の中に第1検出信号があるか否かを判定する。制御部50は、第1検出信号があると判定するとステップS206の処理を実行する。制御部50は、第1検出信号がないと判定するとステップS205の処理を実行する。
【0099】
ステップS205では、測定装置1の制御部50は、ステップS204において第1検出信号がないと判定すると、複数の検出部20が配置されている全領域に対して容器105内が液体Lで満たされており容器105が満水であると決定する。
【0100】
ステップS206では、測定装置1の制御部50は、ステップS204において第1検出信号があると判定すると、第1検出信号を示す一の検出部20と、第1検出信号と異なる第2検出信号を示す隣接する他の検出部20と、を識別する。本開示において、「第2検出信号」は、例えば容器105内に液体Lが存在し容器105が空でない場合の
図3B乃至
図3Dのいずれか又は
図4B乃至
図4Dのいずれかに示す検出信号を含む。
【0101】
ステップS207では、測定装置1の制御部50は、ステップS206において識別された一の検出部20と他の検出部20との間の位置を液体Lの液面の位置として算出する。
【0102】
ステップS208では、測定装置1の制御部50は、ステップS203、S205、及びS207のいずれかの処理に基づいて、液体Lの液面の位置に関する結果を表示部30に表示させる。より具体的には、制御部50は、容器105内での液体Lの液面の位置などを表示部30に視覚情報として表示させる。
【0103】
図7は、容器105が空であるときの各検出信号の一例を示す模式図である。
【0104】
容器105が空であると、検出部20a、20b、及び20cの各々により検出された超音波の検出信号は、全て第1検出信号S1に対応する。すなわち、検出信号は、
図3A又は
図4Aに示すとおり、容器105の壁部の内面からの反射信号が時間領域R1で最大となり、かつ撹拌軸102からの反射信号が時間領域R4でゼロとなるような波形を示す。
【0105】
一方で、容器105が満水であると、検出部20a、20b、及び20cの各々により検出された超音波の検出信号は、全て第1検出信号S1と異なる。このとき、複数の検出信号は、全てが互いに同一の特徴を有してもよいし、少なくとも一部が異なる特徴を有してもよい。
【0106】
図8は、容器105が空でないときの各検出信号の第1例を示す模式図である。
【0107】
容器105が空でないと、検出部20a、20b、及び20cの各々により検出された超音波の検出信号は、少なくとも一部において第1検出信号S1と異なる第2検出信号S2を含む。例えば、
図8に示す第1例では、液体Lが満たされ、撹拌翼103が検出部20c側を向いている下段に位置する検出部20cにおいて、
図3Bに対応する第2検出信号S2が得られる。一方で、液体Lが満たされていない中段及び上段にそれぞれ位置する検出部20b及び20aにおいて、第1検出信号S1が得られる。
【0108】
図9は、容器105が空でないときの各検出信号の第2例を示す模式図である。
【0109】
例えば、
図9に示す第2例では、液体Lが満たされている下段及び中段にそれぞれ位置する検出部20c及び20bにおいて、第2検出信号S2が得られる。より具体的には、撹拌翼103が検出部20c側を向いている下段の検出部20cにおいて、
図3Bに対応する第2検出信号S2が得られる。撹拌軸102が延在する中段の検出部20bにおいて、
図3Cに対応する第2検出信号S2が得られる。一方で、液体Lが満たされていない上段に位置する検出部20aにおいて、第1検出信号S1が得られる。
【0110】
図10は、容器105が空でないときの各検出信号の第3例を示す模式図である。
【0111】
例えば、
図10に示す第3例では、液体Lが満たされている下段及び中段にそれぞれ位置する検出部20c及び20bにおいて、第2検出信号S2が得られる。より具体的には、対象物Sが存在せず、かつ撹拌翼103が検出部20cと反対側を向いて撹拌軸102が検出部20cと対向する下段の検出部20cにおいて、
図3Cに対応する第2検出信号S2が得られる。対象物Sが存在し、かつ撹拌軸102が延在する中段の検出部20bにおいて、
図3Dに対応する第2検出信号S2が得られる。一方で、液体Lが満たされていない上段に位置する検出部20aにおいて、第1検出信号S1が得られる。
【0112】
図11は、容器105が空でないときの各検出信号の第4例を示す模式図である。
【0113】
例えば、
図11に示す第4例では、液体Lが満たされている下段及び中段にそれぞれ位置する検出部20c及び20bにおいて、第2検出信号S2が得られる。より具体的には、対象物S及び気泡Bなどが存在する下段の検出部20cにおいて、
図3Dに対応する第2検出信号S2が得られる。同様に、対象物S及び気泡Bなどが存在する中段の検出部20bにおいて、
図3Dに対応する第2検出信号S2が得られる。一方で、液体Lが満たされていない上段に位置する検出部20aにおいて、第1検出信号S1が得られる。
【0114】
図8乃至
図11に示されるように、制御部50は、全ての検出部20に対して超音波の検出を行った結果、第2検出信号S2が得られる個所で液体Lが存在し、第1検出信号S1が得られる個所で液体Lが存在しないと識別できる。すなわち、制御部50は、第1検出信号S1を示す一の検出部20と、第1検出信号S1と異なる第2検出信号S2を示す隣接する他の検出部20と、の間の位置を液体Lの液面の位置として算出可能である。
【0115】
例えば、制御部50は、
図8に示す第1例では、一の検出部20bと他の検出部20cとの間の位置を液体Lの液面の位置として算出する。例えば、制御部50は、
図9乃至
図11にそれぞれ示す第2例乃至第4例では、一の検出部20aと他の検出部20bとの間の位置を液体Lの液面の位置として算出する。
【0116】
固定されている各検出部20の間には所定の間隔が設けられている。制御部50は、記憶部40に記憶されている当該所定の間隔に関する情報を読み出し、当該情報に基づいて液体Lの液面の位置を所定の上下範囲として算出する。
【0117】
(気泡B又は粒子の存否)
測定装置1の制御部50は、検出部20により検出された超音波の波形の始まりの正負及び音速の少なくとも一方に基づいて、気泡B又は粒子の存否を測定する。例えば、制御部50は、初めに容器105の内部が第2基準状態にある液体Lで満たされた状態で、各検出部20から出力された超音波の反射信号における基準波形の始まりの正負を取得し、記憶部40に記憶させる。本開示において、「第2基準状態」は、例えば気泡Bが液体Lの内部に存在しない状態を含む。
【0118】
液体L内に気泡Bが存在しない限り、超音波の反射信号における波形の始まりの正負は変化しない。したがって、制御部50は、当該波形の始まりの正負に関する情報に基づいて液体Lにおける気泡Bの存否を判定可能である。例えば、金属部品である、撹拌翼103、撹拌軸102、及び容器105の内面のいずれかからの反射信号の波形の始まりは、透過率の式より正又は負となる。当該波形は、透過率により振幅差があるものの一意に同一の形になる。
【0119】
図12は、
図1の測定装置1の動作の第3例を説明するためのフローチャートである。
図13は、
図1の測定装置1の動作の第3例を説明するための模式図である。
図12及び
図13を参照しながら、
図1の測定装置1により実行される測定方法の第3例について説明する。
図12に示すフローチャートは、液体Lの状態のうち気泡B又は粒子の存否を、測定装置1を用いて測定するときの測定方法の基本的な処理の流れを示す。
【0120】
ステップS300では、測定装置1の制御部50は、複数の検出部20の各々により検出信号を取得する。
【0121】
ステップS301では、測定装置1の制御部50は、ステップS300において取得された検出信号に含まれる所定の反射信号に対して、その伝搬波形から正の波形のみを抽出する。例えば、このような伝搬波形は、時間領域R3における任意の波形を含む。例えば、制御部50は、
図13に示されるように、伝搬波形Wから正の波形W1のみを抽出する。
【0122】
ステップS302では、測定装置1の制御部50は、ステップS301において抽出された正の波形に対して、エンベローブ処理を実行する。例えば、制御部50は、
図13に示されるように、正の波形W1のエンベロープE1を取得する。
【0123】
ステップS303では、測定装置1の制御部50は、ステップS300において取得された検出信号に含まれる上記所定の反射信号に対して、その伝搬波形から負の波形のみを抽出して正負を反転させる。例えば、制御部50は、
図13に示されるように、伝搬波形Wから負の波形W2のみを抽出して正負を反転させる。
【0124】
ステップS304では、測定装置1の制御部50は、ステップS303において抽出された負の波形に対して、エンベローブ処理を実行する。例えば、制御部50は、
図13に示されるように、負の波形W2のエンベロープE2を取得する。
【0125】
ステップS305では、測定装置1の制御部50は、ステップS302及びS304において取得されたエンベロープに対して閾値を設定する。例えば、制御部50は、
図13に示されるように、ステップS302において取得されたエンベロープE1に対して閾値V1を設定する。例えば、制御部50は、ステップS304において取得されたエンベロープE2に対して閾値V2を設定する。
【0126】
ステップS306では、測定装置1の制御部50は、ステップS305において設定された閾値に対応する時間よりも早いゼロクロスの時間を算出する。例えば、制御部50は、
図13に示されるように、ステップS305において設定された閾値V1に対応する時間よりも早いゼロクロスの時間T1を算出する。例えば、制御部50は、ステップS305において設定された閾値V2に対応する時間よりも早いゼロクロスの時間T2を算出する。
図13に示す例では、正の波形W1に対する時間T1が負の波形W2に対する時間T2よりも早い。したがって、制御部50は、伝搬波形Wの始まりが正であると算出する。
【0127】
ステップS307では、測定装置1の制御部50は、ステップS306において算出された波形の始まりの正負を、第2基準状態にある液体Lを用いたときの基準波形と比較する。
【0128】
ステップS308では、測定装置1の制御部50は、ステップS306において算出された波形の始まりの正負が第2基準状態にある液体Lを用いたときの基準波形の始まりの正負に対し反転しているか否かを判定する。制御部50は、波形の始まりの正負が反転していると判定すると、ステップS309の処理を実行する。制御部50は、波形の始まりの正負が反転していないと判定すると、ステップS310の処理を実行する。
【0129】
ステップS309では、測定装置1の制御部50は、ステップS308において波形の始まりの正負が反転していると判定すると、液体L中に気泡Bが存在すると決定する。このように、制御部50は、撹拌中の液体Lを用いたときの波形の始まりの正負が第2基準状態にある液体Lを用いたときの基準波形の始まりの正負に対し反転していると液体L中に気泡Bが存在すると判定する。
【0130】
ステップS310では、測定装置1の制御部50は、ステップS308において波形の始まりの正負が反転していないと判定すると、液体L中に気泡Bではなく粒子が存在すると決定する。このように、制御部50は、撹拌中の液体Lを用いたときの波形の始まりの正負が第2基準状態にある液体Lを用いたときの基準波形の始まりの正負に対し反転していないと液体L中に気泡Bではなく粒子が存在すると判定する。
【0131】
ステップS311では、測定装置1の制御部50は、ステップS309及びS310のいずれかの処理に基づいて、気泡B又は粒子の存否に関する結果を表示部30に表示させる。より具体的には、制御部50は、液体L中の気泡B又は粒子の存否などを表示部30に視覚情報として表示させる。
【0132】
図14は、
図1の測定装置1の動作の第4例を説明するためのフローチャートである。
図14を参照しながら、
図1の測定装置1により実行される測定方法の第4例について説明する。
図14に示すフローチャートは、
図12のステップS307において比較処理に用いられる基準波形のデータを取得するときの測定方法の基本的な処理の流れを示す。
【0133】
ステップS400では、測定装置1の制御部50は、複数の検出部20の各々を用いて、撹拌軸102からの超音波の反射波の基準波形を取得する。
【0134】
ステップS401では、測定装置1の制御部50は、ステップS400において取得された基準波形から正の波形のみを抽出する。
【0135】
ステップS402では、測定装置1の制御部50は、ステップS401において抽出された正の波形に対して、エンベローブ処理を実行する。制御部50は、正の波形のエンベロープを取得する。
【0136】
ステップS403では、測定装置1の制御部50は、ステップS400において取得された基準波形から負の波形のみを抽出して正負を反転させる。
【0137】
ステップS404では、測定装置1の制御部50は、ステップS403において抽出された負の波形に対して、エンベローブ処理を実行する。制御部50は、負の波形のエンベロープを取得する。
【0138】
ステップS405では、測定装置1の制御部50は、ステップS402及びS404において取得されたエンベロープに対して閾値を設定する。
【0139】
ステップS406では、測定装置1の制御部50は、ステップS405において設定された閾値に対応する時間よりも早いゼロクロスの時間を算出する。
【0140】
ステップS407では、測定装置1の制御部50は、ステップS406において算出された正の波形に対するゼロクロスの時間が負の波形に対するゼロクロスの時間よりも早いか否かを判定する。制御部50は、正の方の時間が早いと判定すると、ステップS408の処理を実行する。制御部50は、負の方の時間が早いと判定すると、ステップS409の処理を実行する。
【0141】
ステップS408では、測定装置1の制御部50は、ステップS407において正の方の時間が早いと判定すると、基準波形の始まりが正であると算出する。
【0142】
ステップS409では、測定装置1の制御部50は、ステップS407において負の方の時間が早いと判定すると、基準波形の始まりが負であると算出する。
【0143】
ステップS410では、測定装置1の制御部50は、ステップS408又はステップS409で算出された基準波形の始まりの正負を記憶部40に記憶させる。
【0144】
測定装置1の制御部50は、上記のような超音波の波形の始まりの正負に代えて、又は加えて検出部20により検出された超音波の音速に基づいて、気泡B又は粒子の存否を測定してもよい。気泡B又は粒子が液体L中に存在すると、液体L中を伝搬する超音波の音速が変化する。したがって、超音波の伝搬時間が変化し、検出信号において伝搬波形の時間位置が変化する。制御部50は、このような時間位置の変化に基づいて気泡B又は粒子の存否を測定することもできる。
【0145】
(気泡B又は粒子の密度)
測定装置1の制御部50は、検出部20により検出された超音波の音速に基づいて、気泡B又は粒子の密度を測定する。
【0146】
例えば、液体Lの密度をρ
w、気泡Bの密度をρ
a、気泡Bの体積弾性率をK
a、気泡Bの体積分率をαとする。体積分率αは、ρ
a/(ρ
w+ρ
a)で表される。このとき、気泡Bが混ざった液体Lの音速cは、
【数1】
で表される。式1に示されるように、気泡Bの量、すなわち密度ρ
aが増えると、音速cが遅くなる。制御部50は、撹拌中に検出された反射信号に基づいて、気泡Bが混ざった液体Lの音速cを算出することで、式1から体積分率αを逆算することができる。
【0147】
図15は、液体Lの音速を算出する算出方法を説明するための模式図である。
【0148】
制御部50は、基準となる音速をリファレンスの検出信号から予め取得し、撹拌中に検出された反射信号の時間位置をリファレンスの検出信号と比較することで気泡Bの量の割合、すなわち体積分率αを算出可能である。リファレンスは、音速の変化を測定するために必要となる。より具体的には、制御部50は、
図15に示されるように、出力部10から出力された超音波の、撹拌機100中の基準となる反射物までの伝搬時間tを、検出部20により検出された反射信号に基づいて測定する。本開示において、「基準となる反射物」は、例えば撹拌軸102、撹拌翼103、及び対向する反対側の壁部の内面などを含む。
【0149】
液体Lの内部に気泡Bが存在する場合、容器105の壁部の内面と基準となる反射物との間で反射信号が検出部20により検出されることがある。このような反射信号を検知して音速が算出されることを避けるために、移動しない基準となる反射物を用いて反射信号を何回か取得し、その波形を平均化してからスレッシュホールドを用いて伝搬時間tが算出される。
【0150】
制御部50は、記憶部40に予め記憶されている容器105の壁部内での音速c1及び当該壁部の厚さL1、並びに容器105の壁部の内面から基準となる反射物までの距離L2と、測定された伝搬時間tと、に基づいて媒質としての液体Lの基準時の音速c2を算出する。同様に、制御部50は、撹拌中に媒質が変化したときの伝搬時間tを測定し、液体Lの撹拌中の音速c2を算出する。制御部50は、音速c2を、基準時と撹拌中との間で比較し、式1から体積分率αを逆算する。
【0151】
体積分率αに関する以上の算出処理は、液体L内で分散するものが気泡Bではなく固体としての粒子である場合にも同様に当てはまる。
【0152】
(液体Lの密度)
液体Lに対して対象物Sを撹拌することで液体Lの密度は変化する。液体Lの密度が変化すると、液体L中を伝搬する超音波の音速が変化する。例えば、固体中を伝搬する超音波の音速cは、固体の弾性率をM、密度をρとして、
【数2】
で表される。
【0153】
同様に、液体L中を伝搬する超音波の音速cは、液体Lの体積弾性率をK、密度をρとして、
【数3】
で表される。
【0154】
以上により、密度ρが増加すれば、音速が遅くなり、減少すると音速が速くなる。制御部50は、例えば
図15を用いて説明した基準となる反射物での反射信号の変化に基づいて液体Lの密度ρを測定可能である。より具体的には、制御部50は、基準となる反射物での反射信号の伝搬時間tを測定し、媒質としての液体L中の音速c
2を算出する。制御部50は、算出した音速c
2に基づいて式3から密度ρを逆算する。
【0155】
(液体Lの粘度)
以上のような液体Lの状態に加えて、制御部50は、液体Lの粘度を測定することもできる。液体Lの粘度が大きいと
図15に示す反射信号の振幅の減衰が大きくなる。一方で、液体Lの粘度が小さいと反射信号の振幅の減衰が小さくなる。制御部50は、反射信号の振幅と液体Lの粘度とを互いに関連付けた参照データを予め取得する。制御部50は、撹拌中の液体L中を伝搬した超音波の反射信号に基づいてその振幅を測定し、当該参照データと比較することで液体Lの粘度を測定することもできる。
【0156】
(効果)
以上のような一実施形態に係る測定装置1によれば、撹拌に用いられる液体Lの状態を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置1は、容器105に対して固定されている複数の検出部20により超音波を検出することで、容器105内での撹拌に用いられる液体Lの状態を測定する。これにより、測定装置1は、撹拌に用いられる液体Lの状態を、容器105内での撹拌中に容器105の蓋104を開けることなく、特定の物理量以外のセンシングにより定量的に測定することができる。測定装置1は、撹拌中であっても、撹拌機100の内部の液体Lを取り出すことなく、リアルタイムに液体Lの状態を測定することができる。以上により、撹拌機100の容器105内での撹拌に用いられる液体Lの状態を測定するときの測定装置1の利便性が向上する。
【0157】
測定装置1は、基準データと撹拌中の測定データとに基づいて液体Lの製品性状を測定することで、撹拌における液体Lの製品性状を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置1は、上記のリアルタイム測定において特定の物理量を一意の式で測定することなく、撹拌における液体Lの製品性状を定量的に判定することで、撹拌における液体Lの製品性状を容易に確認できる。したがって、上述した測定装置1の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0158】
測定装置1は、基準データからの測定データの差分が所定時間にわたり一定となると撹拌が完了したと判定することで、対象物Sが液体Lに対して正常に混ぜ合わされたことを定量的に判定することができる。測定装置1は、撹拌が完了したことを、容器105の蓋104を開けることなく定量的に判定することができる。測定装置1は、撹拌機100の内部の液体Lを取り出すことなく、リアルタイムに、撹拌が完了したことを判定することができる。以上により、上述した測定装置1の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0159】
測定装置1は、複数の検出部20によりそれぞれ検出された複数の検出信号に基づいて液体Lの液面の位置を測定することで、液体Lの液面の位置を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置1は、液体Lの液面の位置を、容器105内での撹拌中に容器105の蓋104を開けることなく容易に測定することができる。測定装置1は、撹拌中であっても、蓋104を開けることなく、リアルタイムに液体Lの液面の位置を測定することができる。以上により、上述した測定装置1の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0160】
測定装置1は、第1検出信号S1を示す一の検出部20と、第1検出信号S1と異なる第2検出信号S2を示す隣接する他の検出部20と、の間の位置を液体Lの液面の位置として算出する。これにより、測定装置1は、複数の検出部20によってそれぞれ得られた複数の検出信号の様子に基づいて、液体Lの液面の位置を、撹拌中であってもより容易に測定できる。以上により、上述した測定装置1の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0161】
測定装置1は、検出部20により検出された超音波の波形の始まりの正負及び音速の少なくとも一方に基づいて、気泡B又は粒子の存否を測定することで、気泡B又は粒子の存否を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置1は、気泡B又は粒子の存否を、容器105内での撹拌中に容器105の蓋104を開けることなく容易に測定することができる。測定装置1は、撹拌中であっても、蓋104を開けることなく、リアルタイムに気泡B又は粒子の存否を測定することができる。以上により、上述した測定装置1の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0162】
測定装置1は、撹拌中の液体Lを用いたときの波形の始まりの正負が第2基準状態にある液体Lを用いたときの基準波形の始まりの正負に対し反転していると気泡Bが存在すると判定する。これにより、測定装置1は、波形の形状変化に基づいて客観的に気泡Bの存否を測定することができる。以上により、上述した測定装置1の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0163】
測定装置1は、検出部20により検出された超音波の音速に基づいて、気泡B又は粒子の密度を測定することで、気泡B又は粒子の密度を、撹拌中であってもより容易に測定できる。測定装置1は、気泡B又は粒子の密度を、容器105内での撹拌中に容器105の蓋104を開けることなく容易に測定することができる。測定装置1は、撹拌中であっても、蓋104を開けることなく、リアルタイムに気泡B又は粒子の密度を測定することができる。以上により、上述した測定装置1の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0164】
複数対の出力部10及び検出部20が、容器105の外面に沿って配置されることで、測定装置1は、撹拌中の液体Lの状態を、撹拌機100の外部から容易に測定できる。測定装置1は、液体Lの状態を、容器105内での撹拌中に容器105の蓋104を開けることなく外部から容易に測定することができる。測定装置1は、撹拌中であっても、蓋104を開けることなく、リアルタイムに液体Lの状態を外部から測定することができる。以上により、上述した測定装置1の利便性の向上と同様の効果が得られる。
【0165】
(変形例)
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0166】
例えば、本開示は、上述した測定装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0167】
例えば、上述した各構成部の形状、大きさ、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、大きさ、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0168】
上記実施形態では、制御部50は、制御回路51と情報処理端末52とを別構成として有すると説明したが、これに限定されない。制御部50は、制御回路51の機能と情報処理端末52の機能とを併せ持つ単一の制御モジュールとして構成されてもよい。
【0169】
上記実施形態では、第1基準状態は、例えば気泡Bなどが液体Lの内部に存在せず、かつ対象物Sが液体Lに対して投入されたまま全く混ぜ合わされていない初期状態を含むと説明したが、これに限定されない。第1基準状態は、このような初期状態に代えて、又は加えて、例えば気泡Bなどが液体Lの内部に存在せず、かつ対象物Sが液体Lに対して完全に混ぜ合わされた終状態を含んでもよい。
【0170】
このとき、測定装置1は、基準データからの測定データの差分が所定時間にわたり一定となると液体Lに対する対象物Sの撹拌が完了したと判定する判定処理に代えて、又は加えて、異なる判定処理を実行してもよい。このような判定処理は、終状態としての第1基準状態にある液体Lの製品性状に関する基準データに対して測定データが所定の誤差範囲内に収まると液体Lに対する対象物Sの撹拌が完了したと判定することを含んでもよい。
【0171】
上記実施形態では、測定装置1は、液体Lの液面の位置の測定にあたり、複数の検出部20を用いると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、このような測定処理に代えて、又は加えて、1つの検出部20のみを用いて繰り返し超音波の検出を実行し、検出信号が第1検出信号S1から第2検出信号S2へと変化する様子を観察することで、液体Lの液面の位置が一定のレベルを超えたと判定してもよい。
【0172】
上記実施形態では、測定装置1は、気泡B又は粒子の存否を測定するにあたり、例えば時間領域R3から任意の伝搬波形Wを抽出して、エンベローブ処理などを実行すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、このような処理に代えて、又は加えて異なる波形処理を実行してもよい。このような波形処理は、例えばゼロクロス法、相関、及びヒルベルト変換などに基づく方法を含んでもよい。
【0173】
上記実施形態では、複数対の出力部10及び検出部20が、容器105の外面に沿って配置されると説明したが、これに限定されない。複数の出力部10と複数の検出部20とは、それぞれ対として同一の位置に配置されなくてもよく、互いに分離されてもよい。複数の出力部10の少なくとも1つが容器105の外面ではなく容器105の内部に配置されてもよい。複数の検出部20の少なくとも1つが容器105の外面ではなく容器105の内部に配置されてもよい。
【0174】
図16は、
図1の測定装置1の第1変形例を示す模式図である。
図16に示す例では、1つの出力部10と1つの検出部20とは、互いに異なるモジュールとして構成されている。1つの出力検出部は、互いに異なるモジュールとして構成される1つの出力部10と1つの検出部20とを有してもよい。
【0175】
各対の出力部10及び検出部20は、
図1に示されるように互いに同一の位置に配置されると説明したが、これに限定されない。各対の出力部10及び検出部20は、
図16に示されるように互いに分離して配置されてもよい。例えば、検出部20a、検出部20b、及び検出部20cの各々が容器105の一方側の外面に沿って配置されてもよい。例えば、出力部10a、出力部10b、及び出力部10cの各々が容器105の他方側の外面に沿って配置されてもよい。
【0176】
このとき、検出部20から出力される検出信号は、液体L内を伝搬した超音波の反射信号ではなく透過信号を含むことになる。すなわち、検出部20は、対となる出力部10から出力された超音波の透過波を検出する。測定装置1は、検出信号が透過信号を含む場合であっても、上述した測定方法と同様の原理に基づいて液体Lの状態を測定することができる。ただし、液体L内を伝搬する超音波の伝搬時間は半分となる。
【0177】
図17は、
図1の測定装置1の第2変形例を示す模式図である。
【0178】
各対の出力部10及び検出部20は、
図1に示されるように互いに容器105の側面に配置されると説明したが、これに限定されない。各対の出力部10及び検出部20は、
図17に示されるように容器105の底面に配置されてもよい。
【0179】
このとき、検出部20から出力される検出信号は、上記実施形態での説明と同様に液体L内を伝搬した超音波の反射信号を含むことになる。測定装置1は、上述した測定方法と同様の原理に基づいて液体Lの状態を測定することができる。ただし、液体L内を伝搬する超音波の伝搬時間が異なる。
【0180】
図18は、
図1の測定装置1の第3変形例を示す模式図である。
【0181】
各対の出力部10及び検出部20は、
図1に示されるように互いに同一の位置に配置されると説明したが、これに限定されない。
図18に示されるように、一の出力部10が、複数の検出部20に対して異なる位置に配置されてもよい。例えば、検出部20a、検出部20b、及び検出部20cの各々が容器105の側面に沿って配置されてもよい。このとき、出力部10は、例えばモータ101に取り付けられ、撹拌軸102を介して撹拌機100の内部から超音波を発生させてもよい。
【0182】
このとき、検出部20から出力される検出信号は、液体L内を伝搬した超音波の反射信号に加えて、透過信号も含むことになる。測定装置1は、検出信号が反射信号及び透過信号を含む場合であっても、上述した測定方法と同様の原理に基づいて液体Lの状態を測定することができる。ただし、液体L内を伝搬する超音波の伝搬時間が異なる。
【0183】
以上のような測定装置1は、液体L中に対象物Sを分散させることを目的とした撹拌機100に代えて、又は加えて、撹拌された液体Lの状態を測定する対象となる任意の他の製品に対しても応用可能である。例えば、測定装置1は、搬送ポンプ、食品製造装置、解重合槽、及び液体Lを貯蔵する容器などに対しても応用可能である。
【0184】
図19は、
図1の測定装置1の第4変形例を示す模式図である。
【0185】
上記実施形態では、測定装置1は、液体Lに対象物Sを撹拌するために用いられる撹拌機100の容器105に対し配置されると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、撹拌機100に代えて、液体Lがその内部を一方向に流れる配管200に対し配置されていてもよい。例えば、測定装置1は、配管200の一部を構成する容器201に対し配置されていてもよい。配管200は、例えば、丸配管又は角配管を含んでもよい。
【0186】
図19に示す第4変形例では、
図1に示す例と同様に、1つの出力部10と1つの検出部20とは、1つのモジュールにより兼用可能であり、1つの出力検出部として一体的に構成されている。1つの出力検出部は、1つの出力部10と1つの検出部20とを有する。出力検出部は、容器201に対して固定される。
【0187】
出力部10は、容器201に対して固定される任意の超音波出力モジュールを含む。出力部10は、容器201の内部を一方向に流れる液体Lの内部を伝搬する超音波を出力する。検出部20は、容器201に対して固定される任意の超音波検出モジュールを含む。検出部20は、出力部10から出力され、容器201の内部を一方向に流れる液体L内を伝搬した超音波を検出する。
【0188】
測定装置1における複数対の出力部10及び検出部20が、容器201の外面に沿って配置される。測定装置1は、例えば三対の出力部10及び検出部20を有する。出力部10a及び検出部20aは、容器201の外面に沿って上段に配置される。出力部10b及び検出部20bは、容器201の外面に沿って中段に配置される。出力部10c及び検出部20cは、容器201の外面に沿って下段に配置される。
【0189】
制御部50による液体Lの状態の測定の原理は上記実施形態と同一である。検出部20から出力される検出信号は、液体L内を伝搬した超音波の反射信号を含むことになる。測定装置1は、検出信号が反射信号を含む場合に、上述した測定方法と同様の原理に基づいて液体Lの状態を測定可能である。このとき、液体L内を伝搬する超音波の伝搬時間が液体Lの種類に応じて異なる。したがって、測定装置1は、液体Lの成分が異なるものが流れてきているときに、液体Lの状態のみならず、その液体Lの種類も超音波の伝搬時間に基づいて判別することも可能である。
【0190】
図20は、
図1の測定装置1の第5変形例を示す模式図である。
【0191】
図20に示す第5変形例では、
図19に示す第4変形例と同様に、測定装置1は、撹拌機100に代えて、液体Lがその内部を一方向に流れる配管200に対し配置されていてもよい。一方で、
図20に示す第5変形例では、
図16に示す第1変形例と同様に、1つの出力部10と1つの検出部20とは、互いに異なるモジュールとして構成されていてもよい。1つの出力検出部は、互いに異なるモジュールとして構成される1つの出力部10と1つの検出部20とを有してもよい。
【0192】
各対の出力部10及び検出部20は、
図20に示されるように互いに分離して配置されてもよい。例えば、検出部20a、検出部20b、及び検出部20cの各々が容器201の一方側の外面に沿って配置されてもよい。例えば、出力部10a、出力部10b、及び出力部10cの各々が容器201の他方側の外面に沿って配置されてもよい。
【0193】
このとき、検出部20から出力される検出信号は、液体L内を伝搬した超音波の反射信号ではなく透過信号を含むことになる。すなわち、検出部20は、対となる出力部10から出力された超音波の透過波を検出する。測定装置1は、検出信号が透過信号を含む場合であっても、上述した測定方法と同様の原理に基づいて液体Lの状態を測定可能である。ただし、液体L内を伝搬する超音波の伝搬時間は、
図19に示す第4変形例と比較して半分となる。
【0194】
このとき、液体L内を伝搬する超音波の伝搬時間が液体Lの種類に応じて異なる。したがって、測定装置1は、液体Lの成分が異なるものが流れてきているときに、液体Lの状態のみならず、その液体Lの種類も超音波の伝搬時間に基づいて判別することも可能である。
【0195】
図21は、
図1の測定装置1の第6変形例を示す模式図である。
【0196】
図21に示す第6変形例では、撹拌機100は、
図1に示される撹拌翼103に代えて、ホモジナイザ108を有してもよい。ホモジナイザ108は、容器105に貯留される液体L内の対象物Sを超音波により微細化して液体L内に均一に分散させる。このとき、出力検出部は、ホモジナイザ108を出力部10として有してもよい。出力検出部は、ホモジナイザ108からの超音波を検出してもよい。
【0197】
例えば、検出部20a、検出部20b、及び検出部20cの各々が容器105の側面に沿って配置されてもよい。出力部10は、例えばホモジナイザ108により構成され、撹拌軸102を介して撹拌機100の内部から超音波を発生させてもよい。
【0198】
このとき、検出部20から出力される検出信号は、液体L内を伝搬した、ホモジナイザ108からの超音波の反射信号に加えて、透過信号も含むことになる。測定装置1は、検出信号が反射信号及び透過信号を含む場合であっても、上述した測定方法と同様の原理に基づいて液体Lの状態を測定することができる。ただし、液体L内を伝搬する超音波の伝搬時間が異なる。
【0199】
図22は、
図1の測定装置1の第7変形例を示す模式図である。
【0200】
図22に示す第7変形例では、1つの出力部10と1つの検出部20とは、互いに異なるモジュールとして構成されていてもよい。1つの出力検出部は、互いに異なるモジュールとして構成される1つの出力部10と1つの検出部20とを有してもよい。
【0201】
各対の出力部10及び検出部20は、
図22に示されるように互いに分離して配置されてもよい。例えば、検出部20a、検出部20b、及び検出部20cの各々が容器105の一方側の外面に沿って配置されてもよい。例えば、出力部10a、出力部10b、及び出力部10cの各々が容器105の他方側の外面に沿って配置されてもよい。
【0202】
このとき、検出部20から出力される検出信号は、液体L内を伝搬した超音波の反射信号ではなく透過信号を含むことになる。すなわち、検出部20は、対となる出力部10から出力された超音波の透過波を検出する。測定装置1は、検出信号が透過信号を含む場合であっても、上述した測定方法と同様の原理に基づいて液体Lの状態を測定可能である。
【0203】
撹拌機100は、
図1に示される各構成部に加えて、カメラ109をさらに有してもよい。撹拌機100の計測機器107は、温度計及び圧力計などのセンサ機器を含んでもよい。測定装置1の制御部50は、容器105に貯留される液体Lの粘度、液体Lの容器105内での圧力、液体Lの容器105内での温度、及び液体Lの容器105内での外観の少なくとも1つを液体Lの状態に加えてさらに測定してもよい。
【0204】
例えば、制御部50は、容器105に貯留される液体Lの粘度の変化を撹拌機100の撹拌軸102及び撹拌翼103によって得られる軸力の変化に基づいて測定してもよい。制御部50は、容器105に貯留される液体Lの容器105内での圧力変化を計測機器107に基づいて測定してもよい。制御部50は、容器105に貯留される液体Lの容器105内での温度変化を計測機器107に基づいて測定してもよい。制御部50は、容器105に貯留される液体Lの容器105内での外観の様子の変化をカメラ109に基づいて測定してもよい。制御部50は、以上のような測定により得られた測定データを、クラウドネットワーク300などにアップロードしてもよい。
【0205】
図23は、
図22の測定装置1により得られた測定データの一例を示すグラフ図である。
【0206】
図23において、グラフG1は、例えば、測定装置1により測定された液体Lの状態を示す。例えば、グラフG1は、撹拌における液体Lの製品性状、すなわち液体Lに対する対象物Sの混ざり具合を示す。グラフG1は、これに限定されず、液体L内を伝搬した超音波の音速及び振幅などを示してもよい。
【0207】
グラフG2は、例えば、測定装置1により測定された、液体Lの容器105内での温度を示す。グラフG3は、例えば、測定装置1により測定された液体Lの粘度を示す。グラフG4は、例えば、測定装置1により測定された、液体Lの容器105内での圧力を示す。
【0208】
測定装置1は、
図23に示されるような複数の物理量を同時に測定することで、複数の物理量を組み合わせてその相関を取得し、液体Lの状態、例えば液体Lの製品性状をより精度良く定義することも可能になる。例えば、測定装置1は、
図23において、各グラフの変化が収束する傾向にある、点線以降の時間領域で液体Lが所定の性状を有し液体Lに対する対象物Sの撹拌が完了していると定義することも可能である。
【0209】
以下に本開示の実施形態の一部について例示する。しかしながら、本開示の実施形態はこれらに限定されない点に留意されたい。
[付記1]
液体を含む容器に対し配置される測定装置であって、
前記容器に対して固定される出力検出部であって、前記容器に含まれる前記液体の内部を伝搬する超音波を出力し、前記液体内を伝搬した前記超音波を検出する複数の前記出力検出部と、
前記出力検出部により検出された前記超音波に基づいて前記容器内での前記液体の状態を測定する制御部と、
を備える、
測定装置。
[付記2]
付記1に記載の測定装置であって、
前記液体に対象物を撹拌するために前記液体を貯留する前記容器に対し配置され、
前記液体の状態は、撹拌における前記液体の製品性状を含み、
前記制御部は、第1基準状態にある前記液体の製品性状に関する基準データと、撹拌中の前記液体の製品性状に関する測定データと、に基づいて前記液体の製品性状を測定する、
測定装置。
[付記3]
付記2に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記基準データからの前記測定データの差分を算出し、前記差分が所定時間にわたり一定となると前記液体に対する前記対象物の撹拌が完了したと判定する、
測定装置。
[付記4]
付記1乃至3のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記液体の状態は、前記容器内における前記液体の液面の位置を含み、
前記制御部は、複数の前記出力検出部によりそれぞれ検出された前記超音波の複数の検出信号に基づいて前記液体の液面の位置を測定する、
測定装置。
[付記5]
付記4に記載の測定装置であって、
前記制御部は、第1検出信号を示す一の前記出力検出部と、前記第1検出信号と異なる第2検出信号を示す隣接する他の前記出力検出部と、の間の位置を前記液体の液面の位置として算出する、
測定装置。
[付記6]
付記1乃至5のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記液体の状態は、気泡又は粒子の存否を含み、
前記制御部は、前記出力検出部により検出された前記超音波の波形の始まりの正負及び音速の少なくとも一方に基づいて、気泡又は粒子の存否を測定する、
測定装置。
[付記7]
付記6に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記液体を用いたときの前記波形の始まりの正負が第2基準状態にある前記液体を用いたときの基準波形の始まりの正負に対し反転していると気泡が存在すると判定する、
測定装置。
[付記8]
付記1乃至7のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記液体の状態は、気泡又は粒子の密度を含み、
前記制御部は、前記出力検出部により検出された前記超音波の音速に基づいて、気泡又は粒子の密度を測定する、
測定装置。
[付記9]
付記1乃至8のいずれか1つに記載の測定装置であって、
複数の前記出力検出部が前記容器の外面に沿って配置され、
前記出力検出部は、出力された前記超音波の反射波又は透過波を検出する、
測定装置。
[付記10]
付記1乃至9のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記出力検出部は、前記液体内の対象物を前記超音波により微細化して前記液体内に分散させるホモジナイザを有し、前記ホモジナイザからの前記超音波を検出する、
測定装置。
[付記11]
請求項1乃至10のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記容器に貯留される前記液体の粘度、前記液体の前記容器内での圧力、前記液体の前記容器内での温度、及び前記液体の前記容器内での外観の少なくとも1つを前記液体の状態に加えてさらに測定する、
測定装置。
[付記12]
液体を含む容器に対し配置される測定装置により実行される測定方法であって、
前記容器に含まれる前記液体の内部を伝搬する超音波を出力するステップと、
前記容器に対して固定された位置で、前記液体内を伝搬した前記超音波を検出するステップと、
検出された前記超音波に基づいて前記容器内での前記液体の状態を測定するステップと、
を含む、
測定方法。
【符号の説明】
【0210】
1 測定装置
10、10a、10b、10c 出力部(出力検出部)
20、20a、20b、20c 検出部(出力検出部)
30 表示部
40 記憶部
50 制御部
51 制御回路
52 情報処理端末
100 撹拌機
101 モータ
102 撹拌軸
103 撹拌翼
104 蓋
105 容器
106 サイトガラス
107 計測機器
108 ホモジナイザ
109 カメラ
200 配管
201 容器
300 クラウドネットワーク
B 気泡
E1、E2 エンベロープ
G1、G2、G3、G4 グラフ
L 液体
L1 厚さ
L2 距離
R1、R2、R3、R4、R5 時間領域
S 対象物
S1 第1検出信号
S2 第2検出信号
T1、T2 時間
V1、V2 閾値
W 伝搬波形
W1 正の波形
W2 負の波形
α 体積分率
ρ 密度
c、c1、c2 音速
t 伝搬時間