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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041729
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】生体対象物を選別するための磁気装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/28 20060101AFI20240319BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240319BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B03C1/28 107
G01N33/543 541A
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023146946
(22)【出願日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】18/072,362
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/406,437
(32)【優先日】2022-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518374022
【氏名又は名称】アプライド セルズ インク
【氏名又は名称原語表記】Applied Cells Inc
【住所又は居所原語表記】3350 Scott Blvd,Bldg 6, Santa Clara,California 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユーチェン ゾォウ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流体中の磁性の又は磁気標識された生体対象物を選別するための磁気装置を提供する。
【解決手段】下端部156及び先細状先端部158を有する軟磁性中心磁極154と、軟磁性中心磁極の両側に配置され、第一及び第二の下端部164及び166をそれぞれ有する第一及び第二の軟磁性側面磁極160及び162であって、軟磁性中心磁極に向かって内側に屈曲する第一及び第二の上端部168及び170をそれぞれ有し、第一の上端部の第一の外方側172及び第二の上端部の第二の外方側174が実質的に同一平面上にある、第一及び第二の軟磁性側面磁極と、軟磁性中心磁極並びに第一及び第二の軟磁性側面磁極において磁束182を発生させる磁束源と、内部に埋め込まれたチャネル178と第一及び第二の外方側と接触又は近接するように動作可能な第一の平坦面180とを有するチャネルプレート176と、を含む、生体対象物を処理するための磁気装置150。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部および先細状先端部を有する軟磁性中心磁極と、
軟磁性中心磁極の両側に配置され、第一および第二の下端部をそれぞれ有する第一および第二の軟磁性側面磁極であって、軟磁性中心磁極に向かって内側に屈曲する第一および第二の上端部をそれぞれ有し、第一の上端部の第一の外方側および第二の上端部の第二の外方側が実質的に同一平面上にある、第一および第二の軟磁性側面磁極と、
軟磁性中心磁極ならびに第一および第二の軟磁性側面磁極において磁束を発生させる磁束源と、
内部に埋め込まれたチャネルと第一および第二の外方側と接触または近接するように動作可能な第一の平坦面とを有するチャネルプレートと、
を含む、磁気装置。
【請求項2】
先細状先端部ならびに第一および第二の外方側が、実質的に同一平面上にある、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項3】
チャネルプレートに取り付けられた1つまたは複数の圧電変換器をさらに含む、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項4】
磁束が、軟磁性中心磁極と第一の軟磁性側面磁極との間に第一の磁束閉鎖部を形成し、軟磁性中心磁極と第二の軟磁性側面磁極との間に第二の磁束閉鎖部を形成する、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項5】
磁束源が、軟磁性下部シールドと、軟磁性下部シールドと軟磁性中心磁極の下端部との間に配置された永久磁石と、を含み、第一および第二の下端部が、軟磁性シールドの上方に配置される、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項6】
磁束源が、軟磁性下部シールドと、第一の下端部と軟磁性下部シールドとの間に配置された第一の永久磁石と、第二の下端部と軟磁性下部シールドとの間に配置された第二の永久磁石と、軟磁性中心磁極の下端部と軟磁性下部シールドとの間に配置された第三の永久磁石と、を含み、第三の永久磁石の磁化方向が、第一および第二の永久磁石の磁化方向と反対である、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項7】
磁束源が、第一の下端部の下に配置された第一の永久磁石と、第二の下端部の下に配置された第二の永久磁石と、軟磁性中心磁極の下端部の下に配置された第三の永久磁石と、を含み、第三の永久磁石の磁化方向が、第一および第二の永久磁石の磁化方向と反対である、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項8】
磁束源が、第一の軟磁性側面磁極と軟磁性中心磁極との間に配置された第一の永久磁石と、第二の軟磁性側面磁極と軟磁性中心磁極との間に配置された第二の永久磁石と、を含み、第一および第二の永久磁石が、反対の磁化方向を有する、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項9】
先細状先端部が、第一および第二の上端部よりも実質的に高い磁束密度を有する、請求項1に記載の磁気装置
【請求項10】
チャネルプレートが、非磁性材料で作製される、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項11】
チャネルプレートの一部が、磁性材料で作製される、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項12】
磁束が、下端部から軟磁性中心磁極の先細状先端部に集中し、チャネルプレートの磁性部分と第一および第二の上端部との間で分割される、請求項11に記載の磁気装置。
【請求項13】
チャネルプレートの第二の平坦面に接触または近接して動作可能な軟磁性上部シールドをさらに含み、磁束が、下端部から軟磁性中心磁極の先細状先端部に集中し、軟磁性上部シールドと第一および第二の上端部との間で分割される、請求項1に記載の磁気装置。
【請求項14】
下端部と先細状先端部とを有する軟磁性中心磁極と、
軟磁性中心磁極の両側に配置され、第一および第二の下端部をそれぞれ有する第一および第二の軟磁性側面磁極であって、実質的に同一平面上にある第一および第二の上端部をそれぞれ有する、第一および第二の軟磁性側面磁極と、
内部に埋め込まれたチャネルと、先細状先端部と接触または近接するように動作可能な第一の平坦面と、を含むチャネルプレートと、
チャネルプレートの第二の平坦面に接触または近接するように動作可能な軟磁性上部シールドと、
軟磁性中心磁極、第一および第二の軟磁性側面磁極ならびに軟磁性上部シールドにおいて磁束を発生させる磁束源と、
を含む、磁気装置。
【請求項15】
チャネルプレートの第一の平坦面が、第一および第二の上端部と接触または近接するように動作可能である、請求項14に記載の磁気装置。
【請求項16】
軟磁性上部シールドが、第一および第二の上端部と接触または近接するように動作可能である、請求項14に記載の磁気装置。
【請求項17】
チャネルプレートに取り付けられた1つまたは複数の圧電変換器をさらに含む、請求項14に記載の磁気装置。
【請求項18】
磁束源が、軟磁性下部シールドと、軟磁性下部シールドと軟磁性中心磁極の下端部との間に配置された永久磁石と、を含み、第一および第二の下端部が、軟磁性シールドの上方に配置される、請求項14に記載の磁気装置。
【請求項19】
磁束源が、軟磁性下部シールドと、第一の下端部と軟磁性下部シールドとの間に配置された第一の永久磁石と、第二の下端部と軟磁性下部シールドとの間に配置された第二の永久磁石と、軟磁性中心磁極の下端部と軟磁性下部シールドとの間に配置された第三の永久磁石と、を含み、第三の永久磁石の磁化方向が、第一および第二の永久磁石の磁化方向と反対である、請求項14に記載の磁気装置。
【請求項20】
磁束源が、第一の下端部の下に配置された第一の永久磁石と、第二の下端部の下に配置された第二の永久磁石と、軟磁性中心磁極の下端部の下に配置された第三の永久磁石と、を含み、第三の永久磁石の磁化方向が、第一および第二の永久磁石の磁化方向と反対である、請求項14に記載の磁気装置。
【請求項21】
磁束源が、第一の軟磁性側面磁極と軟磁性中心磁極との間に配置された第一の永久磁石と、第二の軟磁性側面磁極と軟磁性中心磁極との間に配置された第二の永久磁石と、を含み、第一および第二の永久磁石が、反対の磁化方向を有する、請求項14に記載の磁気装置。
【請求項22】
下端部および先細状先端部を有する軟磁性中心磁極と、
軟磁性中心磁極の両側に配置された第一および第二の軟磁性側面磁極であって、第一の軟磁性側面磁極が第一の下端部および第一の上端部を有し、第二の軟磁性側面磁極が第二の下端部および第二の上端部を有し、第一および第二の上端部が軟磁性中心磁極に向かって内側に屈曲し、それぞれが軟磁性中心磁極から外方に面する傾斜面を有するチゼルエッジ断面を有する、第一および第二の軟磁性側面磁極と、
軟磁性中心磁極ならびに第一および第二の軟磁性側面磁極において磁束を発生させる磁束源と、
先細状先端部と第一および第二の上端部の傾斜面との間に形成された間隙において入れ子状に配置された可撓性導管と、
間隙において入れ子状に配置された可撓性導管を押圧して変形させるように動作可能な軟磁性プレスと、
を含む、磁気装置。
【請求項23】
磁束源が、軟磁性下部シールドと、軟磁性下部シールドと軟磁性中心磁極の下端部との間に配置された永久磁石と、を含み、第一および第二の下端部が、軟磁性シールドの上方に配置される、請求項22に記載の磁気装置。
【請求項24】
磁束源が、軟磁性下部シールドと、第一の下端部と軟磁性下部シールドとの間に配置された第一の永久磁石と、第二の下端部と軟磁性下部シールドとの間に配置された第二の永久磁石と、軟磁性中心磁極の下端部と軟磁性下部シールドとの間に配置された第三の永久磁石と、を含み、第三の永久磁石の磁化方向が、第一および第二の永久磁石の磁化方向と反対である、請求項22に記載の磁気装置。
【請求項25】
磁束源が、第一の下端部の下に配置された第一の永久磁石と、第二の下端部の下に配置された第二の永久磁石と、軟磁性中心磁極の下端部の下に配置された第三の永久磁石と、を含み、第三の永久磁石の磁化方向が、第一および第二の永久磁石の磁化方向と反対である、請求項22に記載の磁気装置。
【請求項26】
磁束源が、第一の軟磁性側面磁極と軟磁性中心磁極との間に配置された第一の永久磁石と、第二の軟磁性側面磁極と軟磁性中心磁極との間に配置された第二の永久磁石と、を含み、第一および第二の永久磁石が、反対の磁化方向を有する、請求項22に記載の磁気装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)本願は、2022年9月14日に出願された仮出願第63/406,437号明細書に基づく優先権を主張するものであり、2018年3月3日に出願された出願第15/911,115号明細書の一部継続出願である2019年12月29日に出願された出願第16/729,398号明細書の一部継続出願である。これらの出願は全て、それらの明細書を含め、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
背景
【0002】
本発明は、生体対象物を選別するための装置に関し、より詳細には、流体中の磁性のまたは磁気標識された生体対象物を選別するための磁気装置の実施形態に関する。
【0003】
生物学的対象または細胞の分離および選別は、診断および治療などの様々な生物医学的用途にとって重要である。生物学的細胞は、それらのそれぞれの物理的特性、例えばサイズおよび密度、ならびに生化学的特性、例えば表面抗原発現などに基づいて選別され得る。
【0004】
磁力に基づく分離では、典型的には磁性がない細胞が、抗体に複合化された磁気ビーズをそれに付着させることによって、磁気的選別の目的のために磁化され得るが、この工程は磁気標識としても知られる。図1Aは、その細胞表面上に複数の表面マーカーまたは抗原52を含む細胞50および流体中で懸濁された複数の抗体複合化磁気ビーズ54を示す。抗体複合化磁気ビーズ54のそれぞれは、表面マーカー52に対応するペプチドおよびアプタマーなどの1つもしくは複数の抗体または他のリガンド58と複合化された磁気粒子56を含む。インキュベーション時間の後、直接標識として知られる工程において、抗原-抗体相互作用を介して磁気ビーズ54を細胞50に直接付着させて、図1Bで示されるような磁気標識細胞を形成させ得る。
【0005】
あるいは、間接標識工程を通じて磁気ビーズを細胞に付着させ得る。図2Aは、その細胞表面上に複数の表面マーカーまたは抗原52を含む細胞50と、複数の中間連結部60と、流体中で懸濁された複数の抗体複合化磁気ビーズ62と、を示す。中間連結部60のそれぞれは、細胞50の表面マーカー52に対応する一次抗体66に複合化されたビオチンまたはフィコエリスリン(PE)などの1つまたは複数の連結分子64を含む。磁気ビーズ62のそれぞれは、連結分子64を標的とするストレプトアビジンなどの1つもしくは複数の二次抗体またはリガンド68と複合化された磁気粒子56を含む。インキュベーション時間の後、中間連結部60は、抗原-抗体相互作用を介して細胞50に付着し得、磁気ビーズ62は、PE-抗体、ビオチン-ストレプトアビジンまたは他のタイプの相互作用を介して中間連結部60にさらに付着し得、それにより、図2Bで示されるような磁気標識された細胞が形成される。
【0006】
試料流体中の細胞を磁気標識した後、それらは、磁気分離装置によって試料流体中の他の非標識細胞または生体対象物から選別または分離され得る。図3Aは、磁気標識された細胞76を含有する試料流体74を保持するための格納容器72と、格納容器72の壁に近接して配置された永久磁石78と、を含む従来の磁気分離装置70を示す。永久磁石78は、永久磁石78に向かう磁場勾配で格納容器72において磁場を発生させる。十分な時間の後、磁気標識された細胞76は、図3Bで示されるように、容器壁に向かって磁場により生じた力によって徐々に引っ張られ、容器壁で凝集体を形成する。永久磁石78からの距離が長くなるにつれて磁場強度が急速に低下するため、容器72のサイズおよび試料流体体積は不利に制限される。
【0007】
図4は、1つまたは複数のウェル82に含有される静止流体試料中の磁気標識された細胞を分離する別の従来の磁気分離装置80を示す。磁気装置80は、それぞれが台形の先端を有する複数の強磁性磁極84を使用して、それに取り付けられた複数の永久磁石86によって生じた磁束を集中させて、それらの先端付近の磁場強度および勾配を増大させる。磁場線88によって描かれるような対応する磁場分布は、磁場線88間の小さな間隔によって示されるように、隣接する台形先端部の側面間で磁場が最も強いことを示す。対照的に、磁場勾配は、磁力線88間の大きな間隔によって示されるように、磁極の先端部の上方ではるかに弱い。したがって、各ウェル82の底部は、磁場が強い磁極先端部の側面の間に配置される必要がある。円錐形のウェル82中の磁気標識された細胞は、強磁性磁極84の台形先端部の側面に隣接するウェル82の底部またはその近くに集められるかまたは凝集させられる。永久磁石78のみを利用する磁気分離装置70と比較して、磁気分離装置80は、強磁性磁極84を使用することにより、磁束を集中させることによって磁場および勾配を改善し得る。しかし、装置80および90の両者とも、静止した試料流体を処理するように設計されており、したがってスループットが制限され得る。
【0008】
図5Aは、試料流体が装置90を通って流れるときに磁気標識細胞76を分離する従来の磁気分離装置90を示す。装置90は、カラム92を横切る磁場96を生じさせる一対の永久磁石94の間に配置された導管またはカラム92を含む。カラム92は、磁場96によって磁化され、粒子または球体98の間の小さな間隙において比較的強い局所的な磁場および磁場勾配を生じさせる強磁性またはフェリ磁性粒子または球体98の多孔質凝集体で満たされ、それによって磁気標識された細胞76を粒子または球体98の表面に引き付ける。磁気標識された細胞76に付着した磁気ビーズと比較して、強磁性またはフェリ磁性の粒子または球体98ははるかに大きく、永久磁石94がカラム92から除去された後に残留磁気を生じさせ得る。残留磁気は、分離工程後の粒子または球体98の表面からの磁気標識された細胞76の脱離を阻止するかまたは妨げる。磁気分離装置90は、連続流方式で動作し得、したがって、静的な方式で動作する磁気分離器70および80よりも高いスループットを有し得る一方で、特定の用途(例えば、磁気標識された細胞が標的細胞である正の選択工程)における磁気標識された細胞の回収は、カラム92を激しくフラッシュして磁気標識された細胞76を粒子または球体98の表面から取り除かなければ、より低くなり得る。
【0009】
カラム92中の軟磁性粒子または球体98の多孔質凝集体は、図5Bで示されるように、強磁性またはフェリ磁性材料で作製された1つまたは複数のメッシュ102により置き換えられ得る。磁気分離装置100は、メッシュ102中のワイヤが強磁性またはフェリ磁性の粒子または球体98よりも寸法が小さいため、装置90で遭遇する残留磁気を減少させ得る。しかしながら、メッシュ102中の隣接するワイヤ間の開口がより大きいことによってまた、局所的な磁場が弱くなり、それによって装置スループットが低下し得る。カラム92中の強磁性またはフェリ磁性材料を通って試料流体が流れるので、カラムベースの装置90および100の両方とも、試料流体に望ましくない汚染物質を導入し得る。
【0010】
図6は、強磁性またはフェリ磁性材料の多孔質凝集体を含有するカラムを使用せずに連続流方式で動作し、それによって潜在的な汚染および回収の問題を回避する、別の磁気分離装置104を示す。カラムがない装置104は、複数の永久磁石110および112からの磁束を導く強磁性磁極108の放射状配列によって囲まれた導管106を含む。試料流体は、図に垂直な方向に沿って導管106を通って流れる。磁気分離装置104は、本質的に、静的磁気分離装置80の強磁性磁極84の直線的な並びを再編成して、半径方向に配置された強磁性磁極108ならびに永久磁石110および112の中心に周期磁場を生じさせる。図4で示される静的装置80と同様に、強磁性磁極108の台形先端部間の磁力線114によって描かれるような、装置104によって生じた対応する磁場分布は、磁力線114間の小さな間隔によって示されるように、隣接する台形先端部の側面間で磁場が最も強く、磁力線114間の大きな間隔によって示されるように、磁極先端部の上方(即ち導管106内)で磁場がはるかに弱いことを示す。しかしながら、隣接する2つの台形先端部の側面間の領域へと延在するウェル82とは異なり、磁気分離装置104の導管106はそのような領域へと延在せず、それによって導管106における磁場がかなり弱くなる。これは、試料流体が導管106を通って流れるときに磁場に曝露される時間が限られていることによってさらに悪化する。
【0011】
上記の理由のために、潜在的な汚染物質を試料に導入することなく、磁気標識された細胞を迅速に分離または選別し得る磁気分離装置が必要とされている。
概要
【0012】
本発明は、この必要性を満たす装置に関する。生体対象物を選別するための本発明の特徴を有する磁気分離装置は、下端部および先細状先端部を有する軟磁性中心磁極と;軟磁性中心磁極の両側に配置され、第一および第二の下端部をそれぞれ有する第一および第二の軟磁性側面磁極であって、軟磁性中心磁極に向かって内側に屈曲する第一および第二の上端部をそれぞれ有し、第一の上端部の第一の外方側および第二の上端部の第二の外方側が実質的に同一平面上にある、第一および第二の軟磁性側面磁極と;軟磁性中心磁極ならびに第一および第二の軟磁性側面磁極において磁束を発生させる磁束源と;内部に埋め込まれたチャネルならびに第一および第二の外方側と接触または近接するように動作可能な第一の平坦面を有するチャネルプレートと、を含む。磁気分離装置は、チャネルプレートの第二の平坦面に接触または近接するように動作可能な軟磁性上部シールドをさらに含み得る。
【0013】
本発明の別の態様によれば、生体対象物を選別するための本発明の特徴を有する磁気分離装置は、下端部および先細状先端部を有する軟磁性中心磁極と;軟磁性中心磁極の両側に配置され、第一および第二の下端部をそれぞれ有する第一および第二の軟磁性側面磁極であって、実質的に同一平面上にある第一および第二の上端部をそれぞれ有する、第一および第二の軟磁性側面磁極と;内部に埋め込まれたチャネルおよび先細状先端部と接触または近接するように動作可能な第一の平坦面を含むチャネルプレートと;チャネルプレートの第二の平坦面に接触または近接するように動作可能な軟磁性上部シールドと;軟磁性中心磁極、第一および第二の軟磁性側面磁極および軟磁性上部シールドにおいて磁束を発生させる磁束源と、を含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、生体対象物を選別するための本発明の特徴を有する磁気分離装置は、下端部および先細状先端部を有する軟磁性中心磁極と;軟磁性中心磁極の両側に配置された第一および第二の軟磁性側面磁極であって、第一の軟磁性側面磁極が第一の下端部および第一の上端部を有し、第二の軟磁性側面磁極が第二の下端部および第二の上端部を有し、第一および第二の上端部が軟磁性中心磁極に向かって内側に屈曲し、傾斜面が軟磁性中心磁極から外方に向くチゼルエッジ断面をそれぞれ有する、第一および第二の軟磁性側面磁極と;軟磁性中心磁極ならびに第一および第二の軟磁性側面磁極において磁束を発生させる磁束源と;先細状先端部と第一および第二の上端部の傾斜面との間に形成された間隙において入れ子状に配置された可撓性導管と;間隙において入れ子状に配置された可撓性導管を押して変形させるように動作可能な軟磁性プレスと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲および添付の図面に関してよりよく理解されるであろう。
【0016】
図1Aおよび図1Bは、直接的標識工程による磁気標識細胞の形成を示す。
【0017】
図2Aおよび図2Bは間接的標識工程による磁気標識細胞の形成を示す。
【0018】
図3Aおよび図3Bは、従来の静的磁気分離装置による磁気標識細胞の選別を示す。
【0019】
図4は、静止試料流体中の磁気標識細胞を選別するための別の従来の磁気分離装置を示す。
【0020】
図5Aおよび図5Bは、カラムを通って流れる磁気標識された細胞を選別するために強磁性またはフェリ磁性物体で満たされたカラムを利用する2つの従来の磁気分離装置を示す。
【0021】
図6は、導管を通って流れる磁気標識された細胞を選別するための磁気分離装置に対応する断面図である。
【0022】
図7は、磁気標識された生体対象物を分離または単離するための磁気分離装置に適用される場合の本発明の一実施形態を示す断面図である。
【0023】
図8は、選別操作中の図7の装置のチャネル壁上の磁気標識された生体対象物の蓄積を示す断面図である。
【0024】
図9は、選別作業中にチャネルプレートが図7の装置の第一および第二の外方側に接触するのではなく、ごく近接して配置されることを示す断面図である。
【0025】
図10は、選別作業後に図7の装置の磁場発生装置からチャネルプレートが取り外される状態を示す断面図である。
【0026】
図11は、磁気標識された生体対象物を分離または単離するための、2個の永久磁石を用いた磁気分離装置に適用される場合の、本発明の別の実施形態を示す断面図である。
【0027】
図12は、磁気標識された生体対象物を分離または単離するために3個の永久磁石を使用する磁気分離装置に適用される場合の、本発明のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【0028】
図13は、磁気標識された生体対象物を分離または単離するために3個の永久磁石を使用する磁気分離装置に適用される場合の、本発明のまた別の実施形態を示す断面図である。
【0029】
図14は、磁気標識された生体対象物を分離または単離するための磁気分離装置に適用される場合の、本発明のさらにまた別の実施形態を示す断面図である。
【0030】
図15図17は、異なる磁極端部構成を有する磁場発生装置の断面図である。
【0031】
図18は、平行して動作される、2つのチャネルがあるチャネルプレートと、2つの磁場発生部と、を有する磁気分離装置の断面図である。
【0032】
図19は、2つのチャネルがあるチャネルプレートと、一体型磁場発生部と、を有する磁気分離装置の断面図である。
【0033】
図20は、3つのチャネルがあるチャネルプレートと、一体型磁場発生部と、を有する磁気分離装置の断面図である。
【0034】
図21は、平行して動作する、2つのチャネルがあるチャネルプレートと、2つの磁場発生部と、を有する磁気分離装置の断面図である。
【0035】
図22は、2つのチャネルがあるチャネルプレートと、一体型の磁場発生部と、を有する磁気分離装置の断面図である。
【0036】
図23Aおよび23Bは、2つの構成要素を含むチャネルプレートの構造を示す断面図である。
【0037】
図24は、磁性基板付きのチャネルプレートを利用した磁気分離装置を示す断面図である。
【0038】
図25Aおよび25Bは、3つの構成要素を含むチャネルプレートの構造を示す断面図である。
【0039】
図26は、磁性基板付きのチャネルプレートを利用した磁気分離装置の断面図である。
【0040】
図27は、磁性カバープレート付きのチャネルプレートを利用した磁気分離装置の断面図である。
【0041】
図28は、磁場発生装置と組み合わせて磁気上部シールドを利用した磁気分離装置の断面図である。
【0042】
図29は、磁場発生装置と組み合わせて別の磁気上部シールドを利用した磁気分離装置の断面図である。
【0043】
図30は、磁性上部シールドおよび直線状の側面磁極付きの磁気発生部を含む磁気分離装置の断面図である。
【0044】
図31は、直線状の側面磁極が磁気上部シールドに接触または近接している磁場発生部を含む、磁気分離装置の断面図である。
【0045】
図32は、直線状の側面磁極が磁気上部シールドに接触または近接している磁場発生装置を含む、別の磁気分離装置の断面図である。
【0046】
図33Aは、選別動作後のチャネル壁上の磁気標識された生体対象物の蓄積を示す断面図である。
【0047】
図33Bは、モータを用いてチャネルプレートに振動力を付与することにより、チャネルにおける磁性集塊が個々の生体対象物へと解離または崩壊する様子を示す断面図である。
【0048】
図33Cは、1つまたは複数の圧電変換器を使用してチャネルプレートに振動力を付与することにより、チャネルにおける磁性集塊が個々の生体対象物へと解離または崩壊する様子を示す断面図である。
【0049】
図34は、チャネルプレートおよび関連する寸法を示す断面図である。
【0050】
図35は、磁場発生部の磁極端部の間に形成された間隙において入れ子状に配置された導管を有する磁気分離装置の断面図である。
【0051】
図36は、磁場発生部の磁極端部の間に形成された間隙に導管を押し付けるプレスを示す断面図である。
【0052】
図37は、磁場発生装置の磁極端部の間に形成された間隙に導管を押し付ける別のプレスを示す断面図である。
【0053】
明瞭かつ簡潔にするために、同様の要素および構成要素は、図面を通して同じ命名および番号付けを有するが、それらは必ずしも正しい縮尺で描かれていない。
【詳細な説明】
【0054】
上記の概要において、および詳細な説明において、ならびに下記の特許請求の範囲および添付の図面において、本発明の特定の特徴(方法段階を含む)について述べる。本明細書における本発明の開示は、そのような特定の特徴の全ての可能な組み合わせを含むことを理解されたい。例えば、特定の特徴が本発明の特定の態様もしくは実施形態、または特定の請求項との関連で開示される場合、その特徴はまた、可能な範囲で、本発明の他の特定の態様および実施形態と組み合わせて、および/またはそれらとの関連で、および本発明において一般的に使用され得る。
【0055】
本明細書で2つ以上の定義された段階を含む方法に言及する場合、定義された段階は、文脈によりその可能性が除外される場合を除いて、何れかの順序でまたは同時に実行され得、この方法は、文脈によりその可能性が除外される場合を除いて、定義された段階の何れかの前、2つの定義された段階の間、または定義された段階の全ての後に実行される1つ以上の他の段階を含み得る。
【0056】
後に番号が続く「少なくとも」という用語は、本明細書では、その番号で始まる範囲の開始を示すために使用され、定義されている変数に応じて上限がある範囲であってもよいし、または上限がない範囲であってもよい。例えば、「少なくとも1つ」は、1つまたは複数を意味する。後に番号が続く「多くても」という用語は、本明細書では、その番号で終わる範囲の終了を示すために使用され、定義されている変数に応じて、その下限として1もしくは0がある範囲であってもよいし、または下限がない範囲であってもよい。例えば、「多くても4」は、4または4未満を意味し、「多くても40%」は、40%または40%未満を意味する。本明細書において、範囲が「第一の数~第二の数」または「第一の数-第二の数」として与えられる場合、これは、第一の数を下限とし、第二の数を上限とする範囲を意味する。例えば、「25~100nm」は、下限が25nmであり、上限が100nmである範囲を意味する。
【0057】
「生体対象物」という用語は、細胞、細菌、ウイルス、分子、RNAおよびDNAを含む粒子、細胞塊、細菌塊、分子塊および粒子塊を含むために本明細書中で使用され得る。
【0058】
「生体試料」という用語は、血液、体液、身体の何れかの部分から抽出される組織、骨髄、毛髪、爪、骨、歯、身体老廃物からの液体および固形物、または身体の何れかの部分からの表面スワブを含むために本明細書中で使用され得る。「流体試料」または「試料流体」または「液体試料」または「試料溶液」は、その元の液体形態の生物学的試料、緩衝液中で溶解または分散されている生体対象物、またはその元の非液体形態から解離され、緩衝液中で分散された生物学的試料を含み得る。緩衝液は、汚染物質または望ましくない生体対象物を導入せずに、生体対象物が溶解または分散され得る液体である。生体対象物および生体試料は、ヒトまたは動物から得られ得る。生体対象物は、植物ならびに、空気、水および土壌を含む環境からも得られ得る。流体試料は、様々なタイプの磁気もしくは光学標識、または様々な工程段階中に添加され得る1つまたは複数の化学試薬を含有し得る。
【0059】
「試料流量」または「流量」という用語は、本明細書では、単位時間内にチャネルまたは導管または流体部品または流体経路の断面を通って流れる流体試料の体積量を表すために使用され得る。
【0060】
「相対的割合」という用語は、本明細書では、流体試料中に存在する全ての生体対象物または粒子の総量に対する生体対象物または粒子の所与の量の比を表すために使用され得る。
【0061】
細胞選別または濃縮の技術分野では、生体対象物の標的集団は、関心対象の「特異的」対象と呼ばれ、単離されているが望ましくない生体対象物は、「非特異的」と呼ばれる。「純度」という用語は、関心対象の標的または特定の生体対象物の濃度または相対的割合を述べ、パーセンテージで表される生体対象物の総数で除した標的生体対象物の数によって数量化される。「回収率」という用語は、生体対象物の選別効率を述べ、パーセンテージで表される初期試料中に存在する標的生体対象物の数により選別後に回収された標的生体対象物の数を除したものによって数量化される。
【0062】
図7は、生体対象物を分離または選別するための磁気分離装置に適用されるような本発明の一実施形態を示す断面図である。磁気装置150は、下端部156および先細状先端部158を有する軟磁性中心磁極154と;軟磁性中心磁極154の両側に配置され、第一および第二の下端部164および166をそれぞれ有する第一の軟磁性側面磁極160および第二の軟磁性側面磁極162であって、軟磁性中心磁極154に向かって内側に屈曲する第一および第二の上端部168および170をそれぞれ有し、第一の上端部168の第一の外方側172および第二の上端部170の第二の外方側174が実質的に同一平面上にある、第一の軟磁性側面磁極160および第二の軟磁性側面磁極162と;軟磁性中心磁極154ならびに第一および第二の軟磁性側面磁極160および162において磁束源または磁束を発生させるための手段と、を含む磁場発生部152を含む。第一および第二の軟磁性側面磁極160および162は、それぞれの下端部164および166でまたはその近傍で互いに実質的に平行であり得る。磁気装置150は、チャネルプレート176をさらに含み、チャネルプレート176は、その中に埋め込まれたチャネル178を含み、第一および第二の外方側172および174と接触または近接する(例えば1mm以下)ように動作可能な実質的に平坦な表面180を有する。磁気装置150は、その断面に垂直な方向に沿って延在する。
【0063】
磁束182は、軟磁性中心磁極154の下端部156から先細状先端部158に向かって集中し、第一および第二の上端部168、170の間で分断される。磁束は、軟磁性中心磁極154と第一の軟磁性側面磁極160との間に第一の磁束閉鎖部182、184を形成し、軟磁性中心磁極154と第二の軟磁性側面磁極162との間に第二の磁束閉鎖部182、186を形成する。
【0064】
図7で示される実施形態に対して、磁束源または磁束を発生させるための手段は、第一および第二の下端部164および166の下に配置された軟磁性下部シールド188と、軟磁性中心磁極154の下端部156と軟磁性下部シールド188との間に配置された永久磁石190と、を含む。永久磁石190の磁化方向192は、軟磁性中心磁極154に平行な方向に向けられ得る。磁化方向192は、代替的に、図7で示される方向とは反対の方向に向けられ得る。
【0065】
引き続き図7を参照すると、第一および第二の上端部168および170の間に配置される先細状先端部158は、第一および第二の外方側172および174と同一平面上にある面に到達し得る。先細状先端部158は、第一および第二の上端部168および170から等間隔で離間され得る。軟磁性中心磁極154は、永久磁石190のN面から磁束182を収集する下端部156で永久磁石190のN面に近接して(例えば1mm以下)取り付けられ得るかまたは配置され得る。次いで、永久磁石190から伝導された磁束182を集中させることによって先細状先端部158の周囲に局所的に高い磁場を生じさせるために、磁束182を下端部156よりもはるかに小さい先細状先端部158から放出させ得る。先端付近の軟磁性中心磁極154の先細形状ゆえに、先細状先端部158における磁束密度は、下端部156における磁束密度よりもはるかに高いものであり得る。
【0066】
第一および第二の軟磁性側面磁極160および162の第一および第二の下端部164および166は、軟磁性下部シールド188の上面に近接して(例えば1mm以下)取り付けられ得るかまたは配置され得る。軟磁性下部シールド188の上面はまた、永久磁石190のS面に近接して(例えば1mm以下)取り付けられ得るかまたは配置され得る。したがって、永久磁石190のS面から発生した磁束184、186は、軟磁性下部シールド188を通って導かれ、第一および第二の軟磁性側面磁極160および162の間で分断される。第一の上端部168および第二の上端部170は、第一の下端部164および第二下端部166よりも断面積が小さい。磁束184、186は、第一および第二の上端部168および170および/または第一および第二の外方側172および174から、集中し、放射され得る。第一および第二の上端部168および170が先細状先端部158に向かって屈曲することにより、第一および第二の軟磁性側面磁極160および162の本体部を軟磁性中心磁極154の本体部からさらに離して配置することができ、これにより、磁束漏れの可能性が低下し、端部158、168および170の周囲の磁束が最大化される。軟磁性中心磁極154によって伝導される磁束182は、第一および第二の軟磁性側面磁極160および162によって伝導される磁束184および186とは方向が反対であるので、磁束182の一部は、先細状先端部158と第一の上端部168および/または第一の外方側172との間の空間を通って第一の軟磁性側面磁極160に流入し、一方で、磁束182の別の部分は、先細状先端部158と第二の上端部170および/または第二の外方側174との間の空間を通って第二の軟磁性側面磁極162に流入する。したがって、永久磁石190によって生じた磁束は、軟磁性中心磁極154、第一の軟磁性側面磁極160および軟磁性下部シールド188の間を循環する第一の磁束閉鎖部182、184と、軟磁性中心磁極154、第二の軟磁性側面磁極162および軟磁性下部シールド188の間を循環する第二の磁束閉鎖部182、186と、を形成する。軟磁性中心磁極154において伝導される磁束182は、第一および第二の軟磁性側面磁極160および162の間で分割されるので、より近い磁束線間隔によって示されるように、先細状先端部158は、第一および第二の上端部168、170または第一および第二の外方側172、174よりも高い磁束密度を有し得る。先端部158、168、170の周囲の高い磁束密度によって、先端部158、168および170の周囲付近で高い磁場および磁場勾配がもたらされる。
【0067】
軟磁性中心磁極154、第一および第二の軟磁性側面磁極160および162、ならびに軟磁性下部シールド188はそれぞれ、軟磁性材料、または鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の何れか1つ、またはそれらの何れかの組み合わせを含む透磁率が比較的高い材料で作製され得る。一実施形態では、磁極154、160および162ならびにシールド188は、鉄およびニッケルを含む合金であるパーマロイで作製される。
【0068】
チャネルプレート176におけるチャネル178の中心は、先細状先端部158に対して実質的に揃えて配置され得る。チャネル178の幅は、第一の上端部と第二の上端部168、170との間の間隙よりも狭くてもよい。磁極154、160および162の設計および磁極154、160および162に近接したチャネル178の配置によって、チャネル178の内部に高磁場および高磁場勾配が存在することが可能になる。選別動作中、非磁性生体対象物および磁性ビーズで標識された生体対象物を含有する流体試料は、図8で示されるようにチャネル178を通って流れ得る。磁気標識された生体対象物194は、凝集または蓄積して、チャネル壁上、特に磁場勾配が先細状先端部158に近接しているために特に高くなり得る下部壁上に、1つまたは複数の磁気集塊または凝集体を形成し得る。あるいは、チャネルプレート176は、図9で示されるように、選別作業中に第一および第二の外方側172、174と接触するのではなく、近接して(例えば1mm未満)配置され得る。チャネルプレート176は、図10で示されるように、選別作業後に磁性集塊を消磁させるために、第一および第二の外方側172および174から取り外され得るかまたは除去され得る。チャネルプレート176は、ケイ素、ガラス、金属、セラミックまたはそれらの何れかの組み合わせなどであるが限定されない何れかの非磁性材料から製造され得る。
【0069】
図7で示される磁場発生部152は、異なる磁束源または磁束を発生させるための手段を利用して、三極154、160および162において類似の磁束分布を達成し得る。例えば、図11は、流体試料中の非磁性生体対象物から磁化された生体対象物を分離または選別するための別の磁気装置200の断面図である。磁気装置200は、磁束源または磁束を発生させるための手段を除いて、磁場発生部152に類似した磁場発生部202を有する。磁場発生部152のように、磁場発生部202は、下端部206および先細状先端部208を有する軟磁性中心磁極204と;軟磁性中心磁極204の両側に配置され、第一および第二の下端部164および166をそれぞれ有する第一の軟磁性側面磁極160および第二の軟磁性側面磁極162であって、軟磁性中心磁極204に向かって内側に屈曲する第一および第二の上端部168および170をそれぞれ有し、第一の上端部168の第一の外方側172および第二の上端部170の第二の外方側174が実質的に同一平面上にある、第一および第二の軟磁性側面磁極160および162と;軟磁性中心磁極204ならびに第一および第二の軟磁性側面磁極160および162における磁束源または磁束を発生させるための手段と、を含む。第一および第二の軟磁性側面磁極160および162は、それぞれの下端部164および166でまたはその近傍で互いに実質的に平行であり得る。磁気装置200は、チャネルプレート176をさらに含み、チャネルプレート176は、その中に埋め込まれたチャネル178を有し、第一および第二の外方側172および174と接触または近接する(例えば1mm以下)ように動作可能な実質的に平坦な面180を有する。磁気装置200は、その断面に垂直な方向に沿って延在する。
【0070】
磁束源または磁束を発生させるための手段は、第一の軟磁性側面磁極160と軟磁性中心磁極204との間に配置された第一の永久磁石210と、第二の軟磁性側面磁極162と軟磁性中心磁極204との間に配置された第二の永久磁石212と、を含む。第一および第二の永久磁石210および212は、軟磁性中心磁極204に対して実質的に垂直に向けられる反対の磁化方向214および216を有する。永久磁石210および212のN面は、図11で示されるように、軟磁性中心磁極204に隣接して配置され得る。あるいは、永久磁石210および212のS面は、軟磁性中心磁極204に隣接して配置され得る(示されない)。両配置は、軟磁性中心磁極204の下端部206から先細状先端部208に集中し、第一および第二の上端部168、170の間で分割される磁束を発生させる。磁束は、軟磁性中心磁極204と第一の軟磁性側面磁極160との間に第一の磁束閉鎖部を形成し、軟磁性中心磁極204と第二の軟磁性側面磁極162との間に第二の磁束閉鎖部を形成する。
【0071】
3つの永久磁石を含む磁束源または磁束を発生させるための手段のさらなる例をそれぞれ図12および図13で示す。図12は、磁束源または磁束を発生させるための手段を有する磁場発生部218の断面図であり、磁束源または磁束を発生させるための手段は、軟磁性下部シールド188と、第一の軟磁性側面磁極160の第一の下端部164と軟磁性下部シールド188との間に配置された第一の永久磁石220と、第二の軟磁性側面磁極162の第二の下端部166と軟磁性下部シールド188との間に配置された第二の永久磁石222と、軟磁性中心磁極204の下端部206と軟磁性下部シールド188との間に配置された第三の永久磁石224と、を含む。第三の永久磁石224の磁化方向は、軟磁性中心磁極204と実質的に平行であり得、第一および第二の永久磁石220、224の磁化方向と実質的に反対である。あるいは、3つの永久磁石220~224の磁化方向は、図12で示される方向とは反対の方向に向けられ得る。
【0072】
図13は、第一の軟磁性側面磁極160の第一の下端部164の下に配置された第一の永久磁石220と、第二の軟磁性側面磁極162の第二の下端部166の下に配置された第二の永久磁石222と、軟磁性中心磁極204の下端部206の下に配置された第三の永久磁石224と、を含む、磁束源または磁束を生成させるための手段を有する磁場発生部226の断面図である。第三の永久磁石224の磁化方向は、軟磁性中心磁極204と実質的に平行であり得、第一および第二永久磁石220、222の磁化方向と実質的に反対である。あるいは、3つの永久磁石220~224の磁化方向は、図13で示された方向とは反対の方向に向けられ得る。磁場発生部226に対する磁束源は、軟磁性下部シールド188がないことを除いて、図12で示される磁場発生部218の磁束源と同様である。
【0073】
異なる磁束源を有するにもかかわらず、磁場発生部152、202、218および226のそれぞれは、第一の軟磁性側面磁極160と第二の軟磁性側面磁極162との間で分割される、軟磁性中心磁極154または204における磁束を発生させ得、それによって軟磁性中心磁極154または204と第一の軟磁性側面磁極160との間に第一の磁束閉鎖部を形成させ、軟磁性中心磁極154または204と第二の軟磁性側面磁極162との間に第二の磁束閉鎖部を形成させ得る。
【0074】
図7図13で示されるように、磁場発生部152、202、218および226は、図7で示されるものと同様の磁束分布を生成させるために異なる磁極形状を利用し得る。例えば、図14は、第一および第二の軟磁性側面磁極230および232の形状を除いて、磁場発生部152に類似している磁場発生部228を示す断面図であり、その先端は徐々に内側にカールするのではなく、軟磁性中心磁極154に向かって内側にねじれる。
【0075】
図15図17は、磁場発生部152、202、218および226とともに利用され得る他の先端形状をさらに示す。磁場発生部228と同様に、磁場発生部234~238は、それらの上端部付近で内側にねじれる、第一の軟磁性側面磁極240/242と、第二の軟磁性側面磁極244/246と、を有する。磁場発生部234~238のそれぞれについて、上端部とねじれとの間の第一の軟磁性側面磁極240/242の、磁極240/242の本体に対して水平かつ垂直である部分は、対応する第一の下端部248/250における幅よりも実質的に狭い一定の幅を有し得る。同様に、第二の軟磁性側面磁極244/246の上端部とねじれとの間の部分は、対応する第二の下端部252/254における幅よりも実質的に狭い一定の幅を有し得る。さらに、図15で示される磁場発生部234の第一および第二の軟磁性側面磁極240および244の上端部256、258は、平滑な形状を有し得る。図16および図17で示される磁場発生部236および238の第一および第二の軟磁性側面磁極242および246の上端部260、262は、傾斜面が内側を向くかまたは軟磁性中心磁極154/264の先細状先端部の縁部に面する、チゼルエッジ断面を有し得る。さらに、図16は、軟磁性中心磁極264の先細状先端部266が平滑または平坦であり得、第一および第二の軟磁性側面磁極242および246の第一および第二の外方側268、270と実質的に同一平面上にあることを示す。図7および図14図17で示される磁極形状および配置の何れも、図7図14で示される磁束源の何れかと組み合わせて、図7図11および図14で示される所望の磁束/磁場分布を生じさせ得る磁場発生部を形成し得る。
【0076】
スループットを高めるために、2つ以上の磁場発生部152、202、218、226、228、236~238またはそれらの何らかの組み合わせを一緒に並列に動作させ得る。図18は、並べられた2つの磁場発生部202と、それぞれが1つのチャネル178を有する2つの別個のプレート176の代わりに2個のチャネル178を内部に含むチャネルプレート272と、を含む磁気装置270を示す。2個のチャネル178を有するチャネルプレート272は、第一および第二の外方側172および174に接触または近接(例えば1mm以下)するように動作可能である。チャネルプレート272のチャネル178のそれぞれの中心は、軟磁性中心磁極204のそれぞれの先細状先端部208に対して実質的に揃えて配置され得、それによってチャネル178内の磁場および磁場勾配を最大化し得る。
【0077】
隣接する磁気装置の軟磁性側面磁極はまた、複数の磁場発生部が展開されるときにスペースを節約するために組み合わせられ得るかまたは一体化され得る。図19は、それぞれが磁場発生部202の磁束源および磁場発生部228の側面磁極形状を有する2つの磁場発生部を含む一体型磁場発生部274を示す。隣接する2つの側面磁極、左の装置の右側面磁極および右の装置の左側面磁極は、組み合わされて2つの上端部を有する単一の磁極276を形成させ得、左上端部は左装置の発生部からの磁束を伝導し、右上端部は右装置の発生部からの磁束を伝導する。2個のチャネル178を有するチャネルプレート272は、一体型磁場発生部274の磁極230、232および276の外方側278~282に接触または近接(例えば1mm以下)するように動作可能である。チャネルプレート272のチャネル178のそれぞれの中心は、軟磁性中心磁極204のそれぞれの先細状先端部208に対して実質的に揃えて配置され得、それによってチャネル178内で磁場および磁場勾配を最大化し得る。上述したような複数の磁気装置を一体化するための原理は、図20で示されるような3個以上の磁場発生部のならびに適用され得る。
【0078】
図21は、並べられている2つの磁場発生部290と、中に2個のチャネル178を含むチャネルプレート272と、を含む磁気装置288を示す。磁場発生部290は、その軟磁性中心磁極294の先細状先端部292が、第一および第二の軟磁性側面磁極160および162の第一および第二の外方側172、174の上方に突出している点を除いて、図11および図18で示される磁場発生部202と同様である。2個のチャネル178を有するチャネルプレート272は、軟磁性中心磁極294の先細状先端部292に接触または近接する(例えば1mm以下)ように動作可能である。チャネルプレート272のチャネル178のそれぞれの中心は、軟磁性中心磁極294のそれぞれの先細状先端部292に対して実質的に揃えて配置され得、それによってチャネル178内の磁場および磁場勾配を最大化し得る。図21で示される突出した軟磁性中心磁極294は、図7および図14~17で示される側面磁極形状の何れかと組み合わせられ得る。
【0079】
2つの隣接する磁場発生部290の軟磁性側面磁極162および160はまた、複数の磁場発生部290が展開されるときに空間を節約するために組み合わせられ得るか、または一体化され得る。図22は、それぞれが磁場発生部202の磁束源、磁場発生部274の側面磁極形状および磁場発生部290の中心磁極形状を有する、2つの磁場発生部を含む一体型磁場発生部296を示す。隣接する2つの側面磁極、左の装置の右側面磁極および右の装置の左側面磁極は、組み合わされて2つの上端部を有する単一の磁極276を形成させ得、左上端部は左装置の発生部からの磁束を伝導し、右上端部は右装置の発生部からの磁束を伝導する。2個のチャネル178を有するチャネルプレート272は、軟磁性中心磁極294の先細状先端部292に接触または近接する(例えば1mm以下)ように動作可能である。チャネルプレート272のチャネル178のそれぞれの中心は、軟磁性中心磁極294のそれぞれの先細状先端部292に対して実質的に揃えて配置され得、それによってチャネル178内の磁場および磁場勾配を最大化し得る。
【0080】
図23Aおよび図23Bは、図に実質的に垂直な方向に沿って延在するチャネルプレート297の断面図である。チャネルプレート297は、その2つの平坦面300および302のうちの第一の平坦面にチャネル178が形成された基板298と、基板300の第一の平坦面に取り付けられるかまたは接合され、チャネル178を覆うカバープレート304と、を含み得る。チャネルプレート297のカバープレート304の外面306は、動作中に磁場発生部に面し得る。あるいは、チャネルプレート297の基板298の第二の平坦面302は、磁場発生部に面し得る。チャネル178は、基板298の第一の平坦面300へのエッチングによって形成され得、矩形、半円形、半楕円形、三角形または他の断面形状を有し得る。
【0081】
チャネル178からの磁場の方向転換を回避するために、磁場発生部に面するチャネルプレート297の構成要素、基板298またはカバープレート304の何れかは、ガラス、ポリマー、ケイ素、炭化ケイ素、セラミック材料、オーステナイト鋼または非磁性金属などであるが限定されない非磁性材料を含み得る。磁場発生部から見て外側にあるチャネルプレート297の構成要素、基板298またはカバープレート304の何れかもまた、ガラス、ポリマー、ケイ素、炭化ケイ素、セラミック材料、オーステナイト鋼または非磁性金属などであるが限定されない、上記のような非磁性材料を含み得る。あるいは、磁場発生部から見て外側にある基板298またはカバープレート306は、ニッケル、鉄、コバルト、パーマロイ、鋼またはそれらの何れかの組み合わせなどであるが限定されない軟磁性材料を含み得る。さらに、軟磁性材料は、基板298またはカバープレート304の厚さ方向に非磁性材料の層と交互配置された軟磁性材料の層を含む積層構造を有し得る。チャネルプレート297内のチャネル178の壁は、ガラス、ポリマー、セラミックなどであるが限定されない試料流体に対して不活性である材料でコーティングまたは裏打ちされ得る。単一チャネル178を有するチャネルプレート297のための構造および製造方法は、複数のチャネル(例えば、272、286)を有する他のチャネルプレートにも適用され得る。
【0082】
磁極からの磁束を伝導し、磁場発生部202の一部として機能する、磁性基板298をチャネルプレート297において使用すると、図24で示されるように、磁気装置307のチャネル178における磁場をさらに強化し得る。磁気装置307における磁束分布は、2つの磁束ループを特徴とする。第一のループは、第一の永久磁石210から軟磁性中心磁極204、チャネルプレート297の磁性基板298、第一の軟磁性側面磁極160に流れ、第一の永久磁石210に戻る磁束を特徴とする。第二のループは、第二の永久磁石212から軟磁性中心磁極204、チャネルプレート297の磁性基板298、第二の軟磁性側面磁極162に流れ、第二の永久磁石212に戻る磁束を特徴とする。永久磁石210、212の磁化方向が反転すると、磁束は逆方向に流れる。
【0083】
図25Aおよび図25は、チャネルプレート308が代替的に3つの構成要素:即ち、その厚さを通して形成されたチャネル178を有する基板310と、基板310の第一の平坦面314に取り付けられるかまたは接合され、チャネル178を覆う第一のカバープレート312と、基板310の第二の平坦面318に取り付けられるかまたは接合され、チャネル178を覆う第二のカバープレート316と、を含み得ることを示す。チャネル178は、基板310が最初に第一または第二のカバープレート312/316に接合された後にエッチングによって形成され得る。チャネルプレート308の第一のカバープレート312の外面320は、磁場発生部に面し得る。
【0084】
チャネル178からの磁場の方向転換を回避するために、磁場発生部に面する第一のカバープレート312は、ガラス、ポリマー、ケイ素、炭化ケイ素、セラミック材料、オーステナイト鋼または非磁性金属などであるが限定されない非磁性材料を含み得る。基板310は、上述のような非磁性材料、またはニッケル、鉄、コバルト、パーマロイ、鋼またはそれらの何れかの組み合わせなどであるが限定されない磁性材料を含み得る。第二のカバープレート306は、上述したように、非磁性材料または軟磁性材料を含み得る。さらに、軟磁性材料は、基板310または第二のカバープレート316の厚さ方向に沿って非磁性材料の層と交互配置された軟磁性材料の層を含む積層構造を有し得る。一実施形態では、基板310のみが軟磁性材料で作製される。別の実施形態では、第二のカバープレート316のみが軟磁性材料で作製される。さらに別の実施形態では、基板310および第二のカバープレート316はそれぞれ軟磁性材料で作製される。チャネルプレート308内のチャネル178の壁は、ガラス、ポリマー、セラミックなどであるが限定されない試料流体に対して不活性である材料でコーティングまたは裏打ちされ得る。単一チャネル178を有するチャネルプレート308のための構造および製造方法は、複数のチャネルを有する他のチャネルプレート(例えば、272、286)にも適用され得る。
【0085】
磁極からの磁束を伝導し、磁場発生部の一部として機能する磁性基板310をチャネルプレート308において使用すると、図26で示されるように、磁気装置320のチャネル178における磁場をさらに強化し得る。磁気装置320における磁束分布は、二つの磁束ループを特徴とする。第一のループは、第一の永久磁石210から軟磁性中心磁極204、チャネルプレート308の軟磁性基板210、第一の軟磁性側面磁極160に流れ、第一の永久磁石210に戻る磁束を特徴とする。第二のループは、第二の永久磁石212から軟磁性中心磁極204、チャネルプレート308の軟磁性基板310、第二の軟磁性側面磁極162から流れ、第二の永久磁石212に戻る磁束を特徴とする。永久磁石210、212の磁化方向が反転すると、磁束は逆方向に流れる。
【0086】
図27は、磁場発生部324と、軟磁性の第二のカバープレート316、非磁性基板310および非磁性の第一のカバープレート312を含むチャネルプレート308と、を含む磁気装置322を示す。磁場発生部324は、図14で示される磁場発生部228の側面磁極230および232と、図11で示される磁場発生部202の磁束源と、を有する。磁気装置322における磁束分布は、4つの磁束ループを特徴とする。第一のループは、第一の永久磁石210から軟磁性中心磁極204、チャネルプレート308の軟磁性の第二のカバープレート316、第一の軟磁性側面磁極230に流れ、第一の永久磁石210に戻る磁束を特徴とする。第二のループは、第一の永久磁石210から軟磁性中心磁極204、第一の軟磁性側面磁極230に流れ、第一の永久磁石210に戻る磁束を特徴とする。第三のループは、第二の永久磁石212から軟磁性中心磁極204、チャネルプレート308の軟磁性の第二のカバープレート316、第二の軟磁性側面磁極232に流れ、第二の永久磁石212に戻る磁束を特徴とする。第四のループは、第二の永久磁石212から軟磁性中心磁極204、第二の軟磁性側面磁極232に流れ、第二の永久磁石212に戻る磁束を特徴とする。軟磁性中心磁極204の下端部206から先細状先端部208に集中した磁束は、チャネルプレート308の第一および第二の上端部324、326と軟磁性の第二のカバープレート316との間で分断される。先細状先端部208から導かれたチャネルプレート308の軟磁性の第二のカバープレート306内の磁束は、第一および第二の軟磁性側面磁極230と232との間でさらに分断される。
【0087】
図28で示される磁気装置328によって、4ループの磁束分布が同様に生じ得る。磁気装置328は、磁束発生部324と、板状の軟磁性の上部シールド330と、磁束発生部324と軟磁性上部シールド330との間に置かれる非磁性のチャネルプレート176と、を含む。この実施形態では、図27で示されるチャネルプレート308の磁性の第二のカバープレート316の磁束伝導機能は、基本的に軟磁性上部シールド330により置き換えられる。軟磁性上部シールド330は、選別作業後の磁場発生部324からのチャネルプレート176の取り外しを容易にするために、チャネルプレート176から取り外し得るかまたは除去し得る。
【0088】
磁場発生部324は、下端部206および先細状先端部208を有する軟磁性中心磁極204と;軟磁性中心磁極204の両側に配置され、第一および第二の下端部332および334をそれぞれ有する第一の軟磁性側面磁極230および第二の軟磁性側面磁極232であって、軟磁性中心磁極204に向かって内側に屈曲しているかまたはねじれている第一および第二の上端部324および326をそれぞれ有し、第一の上端部324の第一の外方側336および第二の上端部326の第二の外方側338が実質的に同一平面上にある、第一および第二の軟磁性側面磁極230および232と;軟磁性中心磁極204、第一および第二の軟磁性側面磁極230および232における磁束源または磁束を生じさせるための手段と、軟磁性上部シールド330と、を含む。第一および第二の軟磁性側面磁極230および232は、それぞれの下端部332および334でまたはその近傍で互いに実質的に平行であり得る。磁気装置328は、チャネルプレート176をさらに含み、チャネルプレート176は、その中に埋め込まれたチャネル178を含み、第一および第二の外方側336および338と接触または近接する(例えば1mm以下)ように動作可能な第一の平坦面と、軟磁性上部シールド330と接触または近接するように動作可能な第二の平坦面と、を有する。図28の磁気装置328は、その断面に垂直な方向に沿って延在する。
【0089】
磁束源または磁束を発生させるための手段は、第一の軟磁性側面磁極230と軟磁性中心磁極204との間に配置された第一の永久磁石210と、第二の軟磁性側面磁極232と軟磁性中心磁極204との間に配置された第二の永久磁石212と、を含む。第一および第二の永久磁石210および212は、軟磁性中心磁極204に対して実質的に垂直に向けられる反対の磁化方向を有する。図28で示される磁場発生部324に加えて、軟磁性上部シールド330は、図7および図14図17で示される磁極形状の何れかを有する他の磁場発生部および図7図13で示される磁束源の何れかと組み合わせて使用され得る。
【0090】
図28で示される軟磁性上部シールド330は、チャネル178内の磁場強度をさらに増強するように変更され得る。図29は、磁場発生部324と、軟磁性上部シールド342と、磁場発生部324と軟磁性上部シールド342との間に置かれるチャネルプレート176と、を含む磁気装置340を示す。チャネルプレート176は、磁場発生部324の第一および第二の外方側336および338に接触または近接する(例えば1mm以下)ように動作可能な第一の平坦面と、軟磁性上部シールド342に接触または近接するように動作可能な第二の平坦面と、を有する。軟磁性上部シールド342は、チャネル178および軟磁性中心磁極204の先細状先端部208に対して揃えて配置された中心接触領域344と、第一の軟磁性側面磁極230に対して揃えて配置された第一の側面接触領域346と、第二の軟磁性側面磁極232に対して揃えて配置された第二の側面接触領域348と、を含む。軟磁性上部シールド342の3つの接触領域344~348は、それらの間の2つの溝によって画定される。中心接触領域344は、チャネルプレート176を通って軟磁性中心磁極204の先細状先端部208から/まで磁束を伝導する。第一の側面接触領域346は、チャネルプレート176を通って第一の軟磁性側面磁極230の第一の外方側336から/まで磁束を伝導する。第二の側面接触領域348は、チャネルプレート176を通って第二の磁性側面磁極232の第二の外方側338から/まで磁束を伝導する。軟磁性上部シールド342は、選別作業後の磁場発生部324からのチャネルプレート176の取り外しを容易にするために、チャネルプレート176から取り外し得るかまたは除去し得る。
【0091】
図28および29の磁気装置328、340における磁束分布は、4つの磁束ループを特徴とし得る。第一のループは、第一の永久磁石210から軟磁性中心磁極204、軟磁性上部シールド330/342、第一の軟磁性側面磁極230に伝導され、第一の永久磁石210に戻る磁束を特徴とする。第二のループは、第一の永久磁石210から軟磁性中心磁極204、第一の軟磁性側面磁極230に伝導され、第一の永久磁石210に戻る磁束を特徴とする。第三のループは、第二の永久磁石212から軟磁性中心磁極204、軟磁性上部シールド330/342、第二の軟磁性側面磁極232に伝導され、第二の永久磁石212に戻る磁束を特徴とする。第四のループは、第二の永久磁石212から軟磁性中心磁極204、第二の軟磁性側面磁極232に流れ、第二の永久磁石212に戻る磁束を特徴とする。軟磁性中心磁極204の下端部206から先細状先端部208に集中した磁束は、第一および第二の上端部324、326と軟磁性の上部シールド330/342との間で分断される。先細状先端部208から導かれた軟磁性上部シールド330/342における磁束は、第一および第二の軟磁性側面磁極230と232との間でさらに分断される。
【0092】
図29の磁気装置で示される磁束分布は、図30で示される別の磁場発生部352を使用することによって変更され得る。屈曲しているかまたはねじれた軟磁性側面磁極を有する他の磁場発生部とは異なり、図30で示される磁場発生部352の第一および第二の軟磁性側面磁極354および356は直線状であり、軟磁性中心磁極204と直接磁束閉鎖を形成しない可能性がある。第一の軟磁性側面磁極354は、第一の上端部358と、第一の下端部360と、を有する。第二の軟磁性側面磁極356は、第二の上端部362と、第二の下端部364と、を有する。第一および第二の軟磁性側面磁極354および356は、互いに実質的に平行であり得る。チャネルプレート176は、第一および第二の上端部358および362に接触または近接する(例えば1mm以下)ように動作可能な第一の平坦面と、軟磁性上部シールド342に接触または近接するように動作可能な第二の平坦面と、を有する。選別作業後の磁場発生部352からのチャネルプレート176の取り外しを容易にするために、軟磁性上部シールド342をチャネルプレート176から取り外し得るかまたは除去し得る。
【0093】
軟磁性中心磁極204の先細状先端部208は、チャネルプレート176を通って軟磁性上部シールド342の中心接触領域344から/まで磁束を伝導する。第一の軟磁性側面磁極354の第一の上端部358は、チャネルプレート176を通って軟磁性上部シールド342の第一の側面接触領域346から/まで磁束を伝導する。第二の軟磁性側面磁極356の第二の上端部362は、チャネルプレート176を通って軟磁性上部シールド342の第二の側面接触領域348から/まで磁束を伝導する。図22の磁気装置350における磁束分布は、二つの磁束ループを特徴とし得る。第一のループは、第一の永久磁石210から軟磁性中心磁極204、軟磁性上部シールド342、第一の軟磁性側面磁極354に伝導され、第一の永久磁石210に戻る磁束を特徴とする。第二のループは、第二の永久磁石212から軟磁性中心磁極204、軟磁性上部シールド342、第二の軟磁性側面磁極356に伝導され、第二の永久磁石212へと戻る磁束を特徴とする。
【0094】
軟磁性上部シールド342と軟磁性側面磁極354および356との間の磁束漏れの可能性は、チャネルプレート176の幅を狭くし、第一および第二の上端部358および362をそれぞれ第一および第二の側面接触領域346および348に接触または近接させる(例えば2mm以下)ことによって、最小化または排除し得る。図31は、そのような磁気装置366を示し、磁場発生部368は、第一および第二の側面接触領域346および348にそれぞれ接触または近接している第一の軟磁性側面磁極372の第一の上端部370と、第二の軟磁性側面磁極376の第二の上端部374と、を含む。チャネルプレート378は、それぞれ軟磁性中心磁極204の先細状先端部208および軟磁性上部シールド342の中心接触領域344と接触または近接(例えば1mm以下)するように動作可能な第一および第二の平坦面を有する。チャネルプレート378は、軟磁性上部シールド342および磁場発生部368によって囲まれる。軟磁性上部シールド342は、選別操作後に磁場発生部368からのチャネルプレート378の取り外しを容易にするために、チャネルプレート378および磁場発生部368から取り外し得るかまたは除去し得る。磁場発生部368の第一および第二の上端部370および374と軟磁性上部シールド342の第一および第二の側面接触領域346および348との間に間隙を設けることによって、選別操作後にそれに続いて軟磁性上部シールド342を除去することが容易になる。
【0095】
図32は、第一および第二の側面接触領域386および388をそれぞれ第一および第二の軟磁性側面磁極354および356の第一および第二の上端部358および362に接触または近接させる(例えば2mm以下)ことによって、軟磁性上部シールド382と磁場発生部384との間の磁束漏れの可能性を低下させ得る別の磁気装置380を示す。接触領域344~348が本質的に同一平面上にある軟磁性上部シールド342とは異なり、図32で示される軟磁性上部シールド382は、中心接触領域344と同一平面上にない第一および第二の側面接触領域386および388を有する。
【0096】
磁気標識された生体対象物194を含有する試料流体を磁場発生部に近接して配置されたチャネル178に通して流した後、磁気標識された生体対象物194は、図33Aで示されるように、チャネルプレート176/272/286/297/308/378のチャネル178の壁上に1つ以上の磁気集塊または凝集体を形成するように凝集または蓄積し得る。次に、磁場発生部に面している第一の平坦面390と第二の平坦面392とを含むチャネルプレート176/272/286/297/308/378を磁場発生部から取り外して、磁性集塊を消磁し得る。
【0097】
チャネル178における磁性集塊の個々の生体対象物194への解離または崩壊は、チャネルプレート176/272/286/297/308/378に振動を加えるための機械的手段によって促進され得る。図33Bは、振動を発生させるモータ394がチャネルプレート176/272/286/297/308/378に可逆的に連結され、磁性集塊を個々の生体対象物194に分解し得ることを示す。振動を加えるための別のアプローチは、図33Cで示されるように、チャネルプレート176/272/286/297/308/378の第一および/または第二の平坦面390、392に1つまたは複数の圧電変換器396が取り付けられたチャネルプレート176/272/286/297/308/378を使用することである。1つまたは複数の圧電変換器396は、チャネルプレート176/272/286/297/308/378に恒久的に取り付けまたは結合され得、チャネルプレート176/272/286/297/308/378の一体部分になる。あるいは、磁場発生部から取り外された後に、チャネルプレート176/272/286/297/308/378に1つまたは複数の圧電変換器396が可逆的に取り付けられ得る。
【0098】
振動を加えるための機械的手段として1つまたは複数の圧電変換器396が使用される場合、図34で示されるように、チャネル178の幅(w)および高さ(h)のそれぞれは、試料流体中の音波の2分の1波長の整数倍であり得る。さらに、チャネルプレートの厚さ(h)、第二の平坦面392とチャネル上部壁との間の高さ(h)、動作中に磁場発生部に面する第一の平坦面390とチャネル上部壁との間の高さ(h)、第二の平坦面392とチャネル下部壁との間の高さ(h)および第一の平坦面390とチャネル下部壁との間の高さ(h)のそれぞれは、チャネルプレート176/272/286/297/308/378自体の固体材料において伝搬する音波の波長の2分の1の整数倍であり得る。
【0099】
チャネルプレート176/272/286/297/308/378に振動を与えて、チャネル178中の磁性集塊を個々の生体対象物194に解離させるための機械的手段の使用は、図23A/Bおよび図25A/Bで示されるような、単一の材料から作られるチャネルプレートまたは異なる材料から構成されるチャネルプレートに適用可能であり得る。さらに、上述のように磁気集塊を解離させるためにチャネルプレート176/272/286/297/308/378に振動を加えるための機械的手段は、本明細書中で開示される磁場発生部(例えば、152、202、218、226、228、234~238、274、284、290、296、324、352、368、384)の何れかによる選別操作の後に使用され得る。
【0100】
図35は、磁場発生部400と、チャネルプレートの代わりに選別のために試料流体を流すための導管402と、を含む磁気装置398を示す断面図である。磁場発生部400は、下端部206および先細状先端部208を有する軟磁性中心磁極204と;軟磁性中心磁極204の両側に配置され、第一および第二の下端部408および410をそれぞれ有する第一の軟磁性側面磁極404および第二の軟磁性側面磁極406であって、軟磁性中心磁極204に向かって内側に屈曲またはねじれて、第一の上端部412の第一の外方側416および第二の上端部414の第二の外方側418を形成する第一および第二の上端部412および414をそれぞれ有する、第一および第二の軟磁性側面磁極404および406と;軟磁性中心磁極204ならびに第一および第二の軟磁性側面磁極404および406における磁束源または磁束を発生させるための手段と、を含む。第一の上端部412とねじれ部との間の第一の軟磁性側面磁極404の部分は、磁極404の本体に対して水平および垂直であり得、第一の下端部408における幅よりも実質的に狭い一定の幅を有し得る。同様に、第二の上端部414とねじれ部との間の第二の軟磁性側面磁極406の部分は、磁極406の本体に対して水平および垂直であり得、第二の下端部410における幅よりも実質的に狭い一定の幅を有し得る。第一および第二の軟磁性側面磁極404および406は、それぞれの下端部408および410でまたはその近傍で互いに実質的に平行であり得る。
【0101】
第一および第二の上端部412および414はそれぞれ、傾斜面が軟磁性中心磁極から上方または外方を向くチゼルエッジ断面を有し得る。先細状先端部208は、第一および第二の外方側416、418または第一および第二の上端部412および414の下方に配置され得る。導管402は、先細状先端部208と第一および第二の上端部412および414の斜面との間に形成された間隙において入れ子状に配置され得る。
【0102】
磁束源または磁束を発生させるための手段は、第一の軟磁性側面磁極404と軟磁性中心磁極204との間に配置された第一の永久磁石210と、第二の軟磁性側面磁極406と軟磁性中心磁極204との間に配置された第二の永久磁石212と、を含む。第一および第二の永久磁石210および212は、軟磁性中心磁極204に対して実質的に垂直に向けられ得る反対の磁化方向を有する。永久磁石210および212のN面は、図35で示されるように、軟磁性中心磁極204に隣接して配置され得る。あるいは、永久磁石210および212のS面は、軟磁性中心磁極204に隣接して配置され得る(示されない)。両方の配置は、軟磁性中心磁極204の下端部206から先細状先端部208に集中し、第一および第二の上端部412、414の間で分割される磁束を発生させる。磁束は、軟磁性中心磁極204と第一の軟磁性側面磁極404との間に第一の磁束閉鎖部を形成し、軟磁性中心磁極204と第二の軟磁性側面磁極406との間に第二の磁束閉鎖部を形成する。磁場発生部400は、代替的に、図7図13で示されるようなものなど、他の磁束源を利用し得る。
【0103】
導管402は、ゴム、プラスチックまたは他のポリマー材料などであるが限定されない可撓性または柔軟な材料で作製され得る。導管402は、図36の磁気装置422で示されるように、プレス420によって第一および第二の上端部412、414および/または先細状先端部208の傾斜面に対して押圧および変形されるように動作可能であり得、それにより、試料流体が第一および第二の上端部412、414および先細状先端部208のより近くを流れてより高い磁場勾配を経験することを可能にする。プレス420は、軟磁性材料、または鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)のうち何れか1つもしくはそれらの何れかの組み合わせを含む、比較的高い透磁率を有する材料で作製され得る。軟磁性プレス420は、図28および図29で示される軟磁性上部シールド330および342のように機能して、4つの磁束ループを特徴とする磁束分布を発生させ得る。第一のループは、第一の永久磁石210から軟磁性中心磁極204、軟磁性プレス420、第一の軟磁性側面磁極404に流れ、第一の永久磁石210に戻る磁束を特徴とする。第二のループは、第一の永久磁石210から軟磁性中心磁極204、第一の軟磁性側面磁極404に流れ、第一の永久磁石210に戻る磁束を特徴とする。第三のループは、第二の永久磁石212から軟磁性中心磁極204、軟磁性プレス420、第二の軟磁性側面磁極406に流れ、第二の永久磁石212に戻る磁束を特徴とする。第四のループは、第二の永久磁石212から軟磁性中心磁極204、第二の軟磁性側面磁極406に流れ、第二の永久磁石212に戻る磁束を特徴とする。軟磁性中心磁極204の下端部206から先細状先端部208に集中した磁束は、第一および第二の上端部412、414と軟磁性のプレス420との間で分断される。先細状先端部208から導かれた軟磁性プレス420における磁束は、第一および第二の軟磁性側面磁極404と406との間でさらに分断される。
【0104】
図36に示される軟磁性プレス420は、他の形状であり得る。例えば、図37は、導管402を第一および第二の上端部412、414および/または先細状先端部208の傾斜面に押し付けるように動作可能な軟磁性プレス426を有する別の磁気装置424を示す。軟磁性プレス426は、先細状先端部208と第一および第二の上端部412および414の斜面との間に形成される間隙に実質的に一致し得る三角形の形状を有する。軟磁性プレス426はまた、第一および第二の軟磁性側面磁極404、406でより効率的に磁束を伝導し得る。

図1-2】
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【外国語明細書】