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特開2024-41737上面の領域に開口を備えた面状の構造体を把持する装置
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  • 特開-上面の領域に開口を備えた面状の構造体を把持する装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041737
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】上面の領域に開口を備えた面状の構造体を把持する装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
B25J15/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023148735
(22)【出願日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】10 2022 123 476.2
(32)【優先日】2022-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】519324581
【氏名又は名称】ツェヴォテック ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Cevotec GmbH
【住所又は居所原語表記】Biberger Strasse 93, 82008 Unterhaching, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィット ウッズ
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト カルレ
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン レンツ
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707ES05
3C707ET03
3C707EV26
3C707HS14
3C707NS05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】上面の領域に開口を備えた面状の構造体、特にハニカム構造体を把持する方法を提供する。
【解決手段】長手方向(L)に沿って互いに離間した2つのグリッパユニット(14a,14b)であって、該グリッパユニット(14a,14b)がそれぞれ、少なくとも1つのピン(16)および該少なくとも1つのピン(16)を走出方向で移動させるように構成されている少なくとも1つのピン移動ユニット(18)を含む、グリッパユニット(14a,14b)と、グリッパユニット(14a,14b)の少なくとも一方を、実質的に幅方向(B)に延びる傾倒軸(22)を中心として傾倒するように構成されている傾倒ユニット(24)とを含む、装置(10)に関する。さらに本発明は、このような装置を用いて面状の構造体を把持するための方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面の領域に開口を備えた面状の構造体(S)、特にハニカム構造体を把持する装置(10)であって、
長手方向(L)に沿って互いに離間した2つのグリッパユニット(14a,14b)であって、該グリッパユニット(14a,14b)は、それぞれ、
少なくとも1つのピン(16)および
前記少なくとも1つのピン(16)を走出方向で移動させるように構成されている少なくとも1つのピン移動ユニット(18)
を含む、グリッパユニット(14a,14b)と、
前記グリッパユニット(14a,14b)のうちの少なくとも一方のグリッパユニットを、実質的に幅方向(B)に延びる傾倒軸(22)を中心として傾倒させるように構成されている傾倒ユニット(24)と
を含む、装置(10)。
【請求項2】
前記グリッパユニット(14a,14b)のそれぞれは、前記幅方向(B)で互いに離間し、かつ前記走出方向で移動可能な少なくとも2つのピン(16)を含んでいる、請求項1記載の装置(10)。
【請求項3】
前記ピン(16)のそれぞれに、別個のピン移動ユニット(18)が対応して配置されている、請求項2記載の装置(10)。
【請求項4】
ベースプレート(12)をさらに含み、
前記グリッパユニット(14a,14b)は、それぞれ旋回可能となるように前記ベースプレート(12)に組み付けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項5】
前記グリッパユニット(14a,14b)は、前記幅方向(B)に延びる個別の傾倒軸(22)を中心として互いに対して傾倒可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項6】
前記傾倒軸(22)は、前記グリッパユニット(14a,14b)の非対称的な傾倒を可能にするために、前記長手方向(L)に関して、双方の前記グリッパユニット(14a,14b)間の中心から外れて配置されている、請求項5記載の装置(10)。
【請求項7】
前記傾倒ユニット(24)は、前記グリッパユニット(14a,14b)の傾倒を引き起こすために、前記傾倒軸(22)を高さ方向(H)で移動させるように構成されている、請求項5または6記載の装置(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのピン移動ユニット(18)および/または前記傾倒ユニット(24)は、液圧シリンダ、ニューマチックシリンダまたは電気的なリニアアクチュエータとして構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項9】
前記ピン(16)は、それぞれ丸み付けされた先端を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項10】
前記幅方向(B)および/または前記長手方向(L)で互いに離間した少なくとも2つの請求項1から9までのいずれか1項記載の装置(10)を含む構成群。
【請求項11】
前記少なくとも2つの装置(10)は、そのそれぞれの高さ方向(H)に関して、互いに所定の角度を成している、または互いに対する前記角度に関して調節可能である、請求項10記載の構成群。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか1項記載の装置を用いて、上面の領域に開口を備えた面状の構造体(S)、特にハニカム構造体を把持する方法であって、
前記装置(10)を、その高さ方向(H)に関して前記面状の構造体(S)の上側に位置決めするステップと、
前記ピン(16)を、走出方向で前記面状の構造体(S)の領域内に移動させるステップと、
前記グリッパユニット(14a,14b)のうちの少なくとも一方のグリッパユニットをその傾倒軸(22)を中心として傾倒させるステップと
を有する方法。
【請求項13】
請求項10または11記載の構成群を用いて、上面の領域に開口を備えた面状の構造体(S)、特にハニカム構造体を把持する方法であって、
前記装置(10)を、そのそれぞれの高さ方向(H)に関して前記面状の構造体(S)の上側に位置決めするステップと、
前記装置(10)のうちの少なくとも幾つかの装置の前記ピン(16)を、走出方向で前記面状の構造体(S)の領域内に移動させるステップと、
前記各装置(10)の前記グリッパユニット(14a,14b)のうちのそれぞれ少なくとも1つのグリッパユニットを、それぞれの傾倒軸(22)を中心として傾倒させるステップと
を有する方法。
【請求項14】
前記ピン(16)を移動させる前記ステップの前に、前記グリッパユニット(14a,14b)のうちの少なくとも1つのグリッパユニットを最初に傾倒させるステップをさらに有する、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記構造体(S)は、紙、含浸紙または金属から形成されている、かつ/または均一に離間した複数の開口を有している、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面の領域に開口を備えた面状の構造体、特にハニカム構造体を把持する装置と、少なくとも2つのこのような装置を含む構成群と、このような装置を用いて、上面の領域に開口を備えた面状の構造体、特にハニカム構造体を把持する方法とに関する。
【0002】
面状の構造体および特にハニカム構造体がその加工中に時折搬送されねばならない、つまり適宜な装置により収容され、別の場所に移動させられ、次いで再び置かれなければならないことが知られている。この場合、このような構造体がその重量を減じるために比較的小さな材料厚さで形成されていることが多く、したがって容易に損傷され得ることに注意を払う必要があり、これによって、このような構造体の取扱いは、いたわって行わなければならない。
【0003】
このためには、このような構造体を取り扱う装置をどのように構成することができるかの種々異なるアプローチが従来技術に基づいて知られている。例えば米国特許第5116094号明細書に基づいて、複数のピンが設けられている装置が公知であり、これらのピンは、それぞれのアームに突出するように取り付けられており、この場合にピンを、面状の構造体の開口内に導入し、次いで線形に互いに離れるように動かすことができ、これにより最終的に構造体の壁部に接触させることができるので、その際に発生する材料結合により構造体の上昇と、最終的にこの構造体の搬送とが可能にされる。
【0004】
類似のアプローチが、同様に独国特許出願公開第102004007226号明細書および米国特許出願公開第4975020号明細書においても追求され、これらの明細書は同様の形式で装置を開示しており、この装置において、ピン、フィンガまたは類似の突出した要素はまず面状の構造体の開口内に一度導入され、次いで線形に互いから離され、これにより、構造体の壁部に接触し、次いで構造体を搬送することができる。
【0005】
しかしこの場合に、従来技術から公知の解決手段は比較的フレキシブルさに欠けることが判った。なぜならば、ピンまたはフィンガの線形の相対移動が、湾曲させられた面状の構造体の取扱いを困難にする、または全く不可能にしてしまうからである。それにもかかわらず、このような装置が湾曲させられた面状の構造体において使用される場合、ピンの線形運動時に構造体の強い広範な変形が生じてしまい、したがって材料の裂断が助長されてしまうので、損傷の恐れが生じてしまう。最後に、まさに上述した形式の複数の個別の装置が一緒に、湾曲させられた面状の構造体を取り扱うことが望ましい配置形態において、このことは大きな追加的な手間を意味することになることを指摘しておく。なぜならば、それぞれの装置による構造体への作用を、互いに離れる方向へのピンまたはフィンガの線形移動によって可能にする配向において、対応する構造体が存在していることが確実にされなければならないからである。
【0006】
したがって、本発明の課題は、上面の領域に開口を備えた面状の構造体を把持する装置を改良して、特に、この装置が、同じ形式で湾曲させられた面状の構造体を取り扱うことにも適しているが、大きな構造的な手間を加える必要がなく、したがって経済的な欠点が生じないことにより優れているようにすることである。
【0007】
このためには、本発明に係る装置は、長手方向に沿って互いに離間した2つのグリッパユニットと傾倒ユニットとを含んでおり、両グリッパユニットはそれぞれ、少なくとも1つのピンおよび少なくとも1つのピン移動ユニットを含んでおり、ピン移動ユニットが、少なくとも1つのピンを走出方向で移動させるように構成されており、かつ傾倒ユニットは、グリッパユニットのうちの少なくとも一方のグリッパユニットを、実質的に幅方向に延びる傾倒軸を中心として傾倒させるように構成されている。
【0008】
ここで、少なくとも2つのグリッパユニットを互いに相対的に傾倒させることによって、本発明に係る装置は、種々異なって湾曲させられた面状の構造体に適合可能であり、したがって汎用的に使用可能であり、かつフレキシブルであると同時に、大きな付加的な手間なしに面状の構造体をいたわる取扱いが達成され得るように、最終的に構造体と接触するピン間の対応する角度を調節することが可能にされることが判った。
【0009】
本明細書において、「面状の構造体」という用語は、本明細書では、長さ方向および幅方向に沿って延び、かつ比較的小さな程度で高さ方向に沿って延びるあらゆる構造体が含まれていることが望ましいと理解され得るが、この高さ方向に関して構造体の湾曲が存在してもよいことが明示的に許容されていることが望ましい。したがって、この定義には、凸面状の構造体も、凹面状の構造体も、あるいは凸凹面状の構造体も含まれている。
【0010】
これに関連してさらに指摘しておくと、装置の説明のために使用される方向、つまり「長手方向」、「幅方向」および「高さ方向」は、専ら三次元の関係を具体的に示すために用いられるに過ぎず、特に互いに対して垂直に延びていなければならない。しかし当然ながら、面状の構造体が、この構造体を把持するための装置の運転工程の開始時に、平坦な水平方向の基台に載置されていない配置形態も可能であり、これにより対応して「高さ方向」は、厳密に鉛直方向で空間内に延びているわけではない。したがって、長手方向および幅方向も同様に空間内で傾斜していてもよいが、このことは本発明の制限するものではなく、明示的に本発明に含まれるものである。
【0011】
同様に「ピン」という用語も、本発明の枠内では広義に理解すべきであり、後でグリッパユニットと一緒に傾倒させるために、面状の構造体の開口内に導入されるために記載された形式で適しているあらゆる細長い構造体を含んでいることが望ましく、これにより、ピンは構造体の材料に接触して、この構造体の取扱いを可能にする。ここで同様に付言しておくと、ピンの走出方向は、まずは上述した高さ方向に一致してもよいが、グリッパユニットが既に運転工程の開始時に、またはそのそれぞれの走出方向に関して構造的に予め規定されて、互いに対して所定の角度を成している配置形態も可能であり、これによって走出方向のうちの単に1つが厳密に高さ方向に沿って延びている、または出走方向のいずれも厳密に高さ方向に沿って延びていない。
【0012】
さらに付言すると、本発明に係る装置は、上位の機能ユニットに組み付けられていてもよい。この機能ユニットは、最終的に把持された面状の構造体の搬送を引き起こすことができる。この機能ユニットは、例えば、把持された面状の構造体と一緒に装置を空間内で移動させることを可能にする、多軸のロボットアームまたは別の任意の機能ユニットであってもよい。特定の実施形態では、例えば、把持された構造体と一緒に特定の経路に沿って装置を手動で動かすことも可能である。したがってこの場合も、装置と把持された構造体との上述の長手方向、幅方向および高さ方向は、機能ユニットを用いた移動により空間内で旋回され得ることが判る。
【0013】
本発明による装置の個別の機能的な構成要素の協調制御は、個別の制御ユニットを用いて行うことができ、制御ユニットはさらに、装置の運転を上位の関係に組み込むことを可能にするために外部の構成要素に接続されていてもよい。特に、装置の制御ユニットと、上位の機能ユニットの制御ユニットとの連結または統合が規定されていてもよく、これにより、装置による構造体の把持と、続くこの構造体の搬送と、この構造体を置くこととを、協調され最適化された形式で実施することができる。
【0014】
面状の構造体の確実な把持を確実にすることができるようにし、かつ幅方向および/または長手方向に沿った構造体の滑落または傾倒を阻止するために、グリッパユニットのそれぞれは、幅方向で互いに離間し、かつ走出方向で移動可能な少なくとも2つのピンを含んでいてもよい。この場合、ピンのそれぞれに、別個のピン移動ユニットが対応して配置されていてもよく、または個々のピン移動ユニットは、例えばこれらのピンが互いに機械的に連結されている、または互いに統合されて形成されていることにより、複数のピンを同時に移動させるように構成されていてもよい。
【0015】
両グリッパユニットの互いに対して相対的な傾倒を可能にするために、本発明に係る装置はさらにベースプレートを含んでいてもよく、グリッパユニットが、それぞれ旋回可能な形式でベースプレートに組み付けられている。したがって、傾倒ユニットは、対応する少なくとも一方のグリッパユニットの傾倒運動を、このグリッパユニットがベースプレートに関して旋回させられるように、引き起こす必要がある。特に、対峙する一対のベースプレートを設けることが可能であり、グリッパユニットはベースプレート間に挿入され、それぞれ旋回可能にベースプレートに組み付けられている。対応して、ベースプレートまたはベースプレートのうちの一方、またはベースプレートまたはベースプレートのうちの一方に組み付けられた別のエレメントも、上述の機能ユニットに装置を取り付けるためのインタフェースとして働くことができる。しかしながら本発明に係る装置の別の配置形態も考えられ、例えばグリッパユニットのそれぞれの支承部は、傾倒ユニットに直接に設けられていてもよく、したがって傾倒ユニットは、例えばサーボモータを介した対応する旋回運動を直接に実行することができる。したがって、回転式に作用する少なくとも1つのサーボモータとして構成された傾倒ユニットを備えたこのような実施形態では、構造体の把持をさらにいたわるように実施することができるようにするために、傾倒ユニットの運転時に設定された経路制御または力制御が規定されていることも同様に可能である。
【0016】
しかし特に単純な或る実施形態では、装置は、グリッパユニットが、幅方向において延びる個別の傾倒軸を中心として互いに対して傾倒可能であるように構成されていてもよい。したがって、相応して傾倒ユニットにより、グリッパユニットの互いに対して相対的な傾倒を引き起こすために、この傾倒軸に力を加えることができる。
【0017】
傾倒軸は、特にこの傾倒軸が長手方向に関してグリッパユニット間の半分の区間に配置されることにより、両グリッパユニットが対称的で相対的な傾倒運動を実施するように配置されていてもよいが、同様に非対称的な傾倒が望まれる実施形態も可能であり、この非対称的な傾倒は、特に、傾倒軸が長手方向に関して、両グリッパユニット間の中心外に配置されることにより引き起こされ得る。この関連においてさらに、傾倒軸を、例えば傾倒ユニット全体と一緒に、長手方向で手動または駆動式に移動可能に両グリッパユニット間に配置することが考えられ得る。これにより、傾倒軸の中央の位置決め、ひいては対称的な傾倒も、予め規定された移動範囲内における中央外での傾倒軸の位置決め、ひいては両グリッパユニットの非対称的な傾倒も可能にする範囲がカバーされ得る。
【0018】
当然ながら、このような非対称的な傾倒は、別の形式、例えば、回転モータを介した傾倒ユニットによるグリッパユニットの直接的な旋回が規定されている本発明に係る装置の実施形態において、回転モータが、その都度種々異なる形式で制御されることによっても達成可能である。
【0019】
しかし、傾倒ユニットの構造体的に特に簡単かつ確実に動作可能な構成は、個別の傾倒軸を有する上述の実施形態では、グリッパユニットの傾倒を引き起こすために傾倒軸を高さ方向で移動するように傾倒ユニットが構成されていることにより、達成され得る。このためには、両グリッパユニットは、例えば上述のベースプレートに旋回可能に取り付けられていて、同様に旋回可能に傾倒軸に結合されているので、高さ方向での傾倒軸の移動が、グリッパユニットの傾倒運動に変換される。
【0020】
このために実質的に任意の構造形態を使用することができ、かつ具体的な選択時に経済的または統合的な観点に従って決定され得るにもかかわらず、少なくとも1つのピン移動ユニットおよび/または傾倒ユニットが、液圧シリンダ、ニューマチックシリンダまたは電気的なリニアアクチュエータとして構成されていてもよい。なお、対応する構成要素の駆動制御は、それぞれのタイプのための適切な制御素子を用いて、つまり例えば制御可能な液圧弁またはニューマチック弁または電気式の駆動ユニットを用いて実行することができることは自明である。
【0021】
さらに、本発明に係る装置内のピンは、それぞれ丸み付けされた先端を有していてもよく、これにより、ピンによる把持時の面状の構造体の材料の損傷を防止し、かつ全体として装置と構造体との間に大面積の接触を引き起こすことができる。しかしここでも、いずれにせよ、具体的な使用例に対する、つまり例えば把持すべき面状の構造体の材料、肉厚および/または開口間の間隔に対するピンの構成の適合を実施することができる。
【0022】
別の1つの態様によれば、本発明は、幅方向および/または長手方向で互いに離間した、上述した形式の本発明による少なくとも2つの装置を含んでいる構成群に関する。少なくとも2つの装置が協調されて運転され、場合によっては互いに独立して少なくとも1つの上位の機能ユニットを用いて移動させられることにより、この構成群のフレキシビリティは、上述した形式の個別の装置に比べてさらに高められる。これにより、面状の構造体を複数の領域において把持することが可能にされる。これにより、特に、湾曲させられた構造体の取扱いの可能性がさらに改善される。なぜならば、付加的な空間的な自由度を達成することにより、極めて不規則に湾曲させられた構造体も確実に把持することが可能にされるからである。
【0023】
このためには、特に構成群の複数の装置のうちの少なくとも2つの装置は、そのそれぞれの高さ方向に関して互いに所定の角度を成している、または互いに対するこの角度に関して調節可能であってもよい。これにより、把持すべき面状の構造体の湾曲は、個別の装置間で既に補償することができる。
【0024】
別の1つの態様によれば、本発明は、上述した形式の本発明に係る装置を用いて、上面の領域に開口を備える面状の構造体、特にハニカム構造体を把持する方法であって、装置を、その高さ方向に関して面状の構造体の上側に位置決めするステップと、ピンを走出方向で面状の構造体の領域内に移動させるステップと、複数のグリッパユニットのうちの少なくとも1つのグリッパユニットをその傾倒軸を中心として傾倒させるステップとを含む方法に関する。
【0025】
したがって、本発明のために使用される装置を用いる本発明に係る方法により、長手方向でピン同士を互いに離れるように線形に移動させることを省略することができ、単に、複数のグリッパユニットのうちの少なくとも1つのグリッパユニットを傾倒させることにより、面状の構造体を把持し、次いで任意の形式で搬送する、または別の形式で取り扱うことができる。この場合、構造体を最終的に置く、もしくは引き渡すことは、上述のステップの反転により実施され得る、つまりグリッパユニットをその出発位置に戻るように傾倒させ、面状の構造体の領域から出るようにピンを移動させ、かつ構造体から装置を遠ざけることによって実施され得ることは自明である。
【0026】
同様に、面状の構造体、特にハニカム構造体を把持する本発明に係る方法は、上述した形式の構成群を用いても実施することができ、装置を、そのそれぞれの高さ方向に関して面状の構造体の上側に位置決めするステップと、複数の装置のうちの少なくとも幾つかの装置のピンを、走出方向で面状の構造体の領域内に移動させるステップと、各装置の複数のグリッパユニットのうちのそれぞれ少なくとも1つのグリッパユニットを、それぞれの傾倒軸を中心として傾倒させるステップとを含んでいる。
【0027】
上述の両方法において、装置もしくは構成群を適合させるために、ピンを移動させるステップの前に、グリッパユニットのうちの少なくとも1つのグリッパユニットを最初に傾倒させるステップが設けられていてもよく、これにより、互いに異なるグリッパユニットの複数のピンの走出方向は、既に、特に湾曲させられた面状の構造体の形状を模倣するために互いに角度を成しており、次いで上述の形式で本発明に係る方法を引き続き実施することができる。
【0028】
本発明に係る方法は、面状の構造体の種々異なるタイプのために使用可能であるが、この面状の構造体は、特に紙、含浸紙または金属から形成されていてもよくかつ/または例えばハニカム構造体の場合のように、均一に離間した複数の開口を有していてもよい。本発明に係る方法を用いて把持可能な構造体の別の例示的なタイプは、有機または金属の発泡材、ゴム構造体または生物学的な材料を含んでいる。
【0029】
装置および/または構成群に関連して説明された特徴、利点または効果は、本発明に係る方法のうちの1つの方法にも同様に適用可能であってもよく、逆もまた然りであることを留意されたい。
【0030】
本発明の別の特徴および利点は、添付の図面と一緒に観察した場合に、その実施形態の以下の説明に基づいてより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による装置の等尺図である。
図2a図1に示した装置によって面状の構造体を把持するプロセスを示す図である。
図2b図1に示した装置によって面状の構造体を把持するプロセスを示す図である。
図2c図1に示した装置によって面状の構造体を把持するプロセスを示す図である。
【0032】
図1には、上面の領域に開口を備えた面状の構造体を把持する本発明に係る装置が、まず一度、等尺図で図示されており、全体的に符号10で示されている。この場合、それぞれ長手方向L、幅方向Bおよび高さ方向Hが装置10に関して定義され、かつ図1では座標の交差矢印によって示されている。
【0033】
装置10は、ベースプレート12を含み、ベースプレート12は、以下で説明する機能的な構成要素の構造体的な組付けのために用いられ、かつ上位の構造体、例えば図1に示唆されたロボットアームまたは類似の機能ユニットに対するインタフェースも成している、または含んでいてもよい。ロボットアームまたは類似の機能ユニットは、装置10全体を、特にこの装置10により支持された面状の構造体と一緒に空間内で移動させることができるように構成されている。
【0034】
装置10は、長手方向Lで互いに離間した2つのグリッパユニット14a,14bを有しており、これらのグリッパユニット14a,14bはそれぞれ、幅方向Bに延びる旋回軸を中心にして旋回可能にベースプレート12に取り付けられており、これによってグリッパユニット14a,14b全体が互いに相対的に傾倒され得る。グリッパユニット14a,14bはそれぞれ、その下面において、幅方向Bで離間した一対のピン16と、それぞれのピン移動ユニット18とを含んでおり、ピン移動ユニット18を用いてピンが走出方向に沿って移動され得る。図1に示す配置形態では、両グリッパユニット14a,14bのピン16は、互いに平行に位置しており、それぞれの走出方向は、まさに高さ方向Hに一致している。
【0035】
同様に図1において良好に確認することができるように、両グリッパユニット14a,14bはそれぞれ、図示の配置形態において長手方向Lに延びるアーム20aもしくは20bを備えており、かつこれらのアーム20aもしくは20bを介して回転可能に、幅方向Bに延びる傾倒軸22に支持されている。いま、この傾倒軸22が高さ方向Hに移動させられることによって、アーム20aおよび20bは、グリッパユニット14a,14bとは反対側の端部領域において連行され、対応してグリッパユニット14a,14bが傾倒させられる。この場合、長さ補償のためにアーム20a,20bは、互いに内外に伸縮可能に形成されていてもよく、またはアーム20a,20bの傾倒、ひいてはグリッパユニット14a,14bの傾倒を可能にするために、他の適切な処置が講じられていてもよい。ここで付言しておくと、傾倒軸22は、図1に示された実施形態では、長手方向Lに関してグリッパユニット14aとグリッパユニット14bとの間で中心に延びており、これにより、両グリッパユニット14a,14bの傾倒は常に対称的に進行する。しかし当然ながら、傾倒軸22が中心から、両グリッパユニット14a,14bのうちの一方のグリッパユニットの方向にずらされていて、これにより傾倒が非対称的に進行する代替的な実施形態も考えられる。
【0036】
高さ方向Hでの傾倒軸22の移動、ひいてはグリッパユニット14a,14bの傾倒を引き起こすために、ベースプレート12の上側領域に傾倒ユニット24が設けられている。この傾倒ユニット24は、ピストンロッド26を介して傾倒軸22に結合されていて、この傾倒軸22を線形に移動させることができる。図示された実施形態では、両方のピン移動ユニット18および傾倒ユニット24が、それぞれ線形に作用するニューマチックシリンダとして構成されている。このニューマチックシリンダには、適切な接続部を介して制御された形式で圧縮空気を供給することができ、これにより、このニューマチックシリンダの制御かつ協調された運転を可能にすることができる。このために、図1には図示しない制御構成要素、例えば制御可能な弁と、この制御可能な弁に接続された電子的な制御ユニットとを使用することができ、この電子的な制御ユニットはさらに、上位の構造体に対する機能的なインタフェースを提供することができる、または既に上位の構造体に統合されていてもよい。さらにここで付言しておくと、本発明に係る装置の別のバリエーションでは、両ピン移動ユニット18および傾倒倒ユニット24は、液圧シリンダおよび/または電気的なリニアアクチュエータとして構成されていてもよい。
【0037】
図2a~図2cを参照しながら、いま、装置10の機能形式もしくは装置10を運転させる方法を説明する。図2a~図2cは、幅方向Bに沿った正面図で、ハニカム構造体の形態の、上面の領域に開口を備えた面状の構造体Sを把持している間の装置10の互いに異なる状態をそれぞれ示している。
【0038】
図2aに示した状態では、まず、装置10が高さ方向Hに関して面状の構造体Sの上側に位置決めされていることを確認することができる。両グリッパユニット14a,14bはそれぞれ、そのそれぞれのピン16も同様に厳密に高さ方向Hに延びているように位置調整されている。
【0039】
これに対して図2bには、ピン16が各ピン移動ユニット18により高さ方向Hに降下させられていて、ひいては構造体Sの開口内に進入させられている状態が示されている。ここでは、各グリッパユニット14a,14bの両ピン16が、1つの共通のベースエレメントに取り付けられていて、このベースエレメント全体がそれぞれのピン移動ユニット18により移動させられることを付言しておく。しかしながら、各ピンに固有のピン移動ユニットが対応して配置されている装置10のバリエーションも考えられる。
【0040】
最後に図2cには、傾倒ユニット24の操作により傾倒軸22が高さ方向Hで上方に移動させられている状態が示されており、これにより、両グリッパユニット14a,14bは、これらのグリッパユニット14a,14bのピン16が高さ方向Hにおいて下方に向かって互いに接近するように向けられており、このように形成される角度により面状の構造体Sの壁部に接触するように、傾倒させられている。
【0041】
装置10と構造体Sとの間でこのように生じる材料結合により、構造体Sはいまや把持され、搬送され得る。構造体Sを置く、または下ろすためには、図2a~図2cに示した状態が逆の順序で実施され得る、つまり、グリッパユニット14a,14bは、その出発位置に戻るように傾倒させることができ、次いで、ピン16が引き戻され、かつ/または装置10が構造体Sの領域から取り除かれ得ることは自明である。ここに示した図面からは、装置10が、特に湾曲させられた面状の構造体を把持するために適していることが判る。なぜならば、図2cに示した状態におけるピン16の角度により、このような構造体の、種々異なる考え得る湾曲を補償することができ、既に図2aおよび図2bに示した状態においても、グリッパユニット14a,14bは、湾曲に対応する最初の傾倒角を有することができるので、ピン16の走出方向は、この湾曲に当初から適合させられ得るからである。
図1
図2a
図2b
図2c
【外国語明細書】