(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041740
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】レドックス・フロー・バッテリ・システムのリバランス・セルのための電解質流動場
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240319BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20240319BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20240319BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20240319BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/0258
H01M8/02
H01M8/0221
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023149106
(22)【出願日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】17/932,245
(32)【優先日】2022-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519297300
【氏名又は名称】イーエスエス テック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ESS Tech,Inc.
【住所又は居所原語表記】26440 SW Parkway Avenue,Wilsonville,Oregon 97070 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】キシック ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヤン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA08
5H126AA12
5H126BB10
5H126RR01
(57)【要約】
【課題】レドックス・フロー・バッテリのリバランス・セルのためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】1つの例では、レドックス・フロー・バッテリのリバランス・セルは、セル筐体と、セル筐体に囲まれた電極アセンブリの積み重ねとを含み、電極アセンブリの積み重ねの各電極アセンブリは、流動場プレートと界面する正極を含む。正極と界面する流動場プレートの面は、それを通って流れる電解質から気体を除去するように構成された、先細の入り口および出口ならびに部分的チャネルを含んでいる複数の通路を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックス・フロー・バッテリのリバランス・セルであって、前記リバランス・セルが、
セル筐体と、
前記セル筐体に囲まれた電極アセンブリの積み重ねとを備え、前記電極アセンブリの積み重ねの各電極アセンブリが、流動場プレートと界面する正極を含み、
前記正極と界面する前記流動場プレートの面が、それを通って流れる電解質から気体を除去するように構成された、先細の入り口および/または先細の出口ならびに部分的チャネルを含んでいる複数の通路を含む、
リバランス・セル。
【請求項2】
前記複数の通路が、前記流動場プレートの前記面内に直接形成される、
請求項1に記載のリバランス・セル。
【請求項3】
前記複数の通路が、前記流動場プレートの前記面に結合されるように構成されたインサート内に形成される、
請求項1に記載のリバランス・セル。
【請求項4】
前記複数の通路が、部分的に互いにかみ合った構成で配置される、
請求項1に記載のリバランス・セル。
【請求項5】
前記複数の通路が、前記先細の入り口および前記部分的チャネルを含む出口を含んでいる通路の第1のセットと、前記部分的チャネルを含む入り口および前記先細の出口を含んでいる通路の第2のセットとを含む、
請求項1に記載のリバランス・セル。
【請求項6】
前記通路の第1のセットおよび前記通路の第2のセットが、前記流動場プレートにわたって交互パターンで配置される、
請求項5に記載のリバランス・セル。
【請求項7】
気体が前記流動場プレートから出るが、前記電解質が前記流動場プレートから出ないことを可能にするために、前記部分的チャネルが狭くなった直径を有し、前記電解質が前記正極内に強制的に対流される、
請求項1に記載のリバランス・セル。
【請求項8】
前記電解質が、前記正極が位置付けられた正極区画から循環される正電解質である、
請求項1に記載のリバランス・セル。
【請求項9】
各電極アセンブリが、前記正極と界面する負極をさらに含み、各電極アセンブリが内部で短絡する、
請求項1に記載のリバランス・セル。
【請求項10】
H2気体を前記セル筐体内に流すための気体水素入り口、電解質を前記セル筐体内に流すための電解質入り口ポート、および電解質を前記セル筐体から放出するための電解質出口ポートをさらに備える、
請求項1に記載のリバランス・セル。
【請求項11】
傾斜支持体が乗っている表面に対して前記セル筐体を傾けるために、前記セル筐体に結合された前記傾斜支持体をさらに備える、
請求項1に記載のリバランス・セル。
【請求項12】
レドックス電極およびめっき電極をそれぞれ収容している正極区画および負極区画と、
前記正極区画に送り込むための正電解質および前記負極区画に送り込むための負電解質をそれぞれ含んでいる正電解質室および負電解質室であって、共通の気体ヘッド・スペースをさらに含む、前記正電解質室および負電解質室と、
前記正電解質の電解質リバランスのためのリバランス・セルであって、前記リバランス・セルが前記正極区画および前記共通の気体ヘッド・スペースに流体結合されている、リバランス・セルと、
を備える、
レドックス・フロー・バッテリ・システムであって、
前記正電解質の前記電解質リバランスが、前記第1のリバランス・セルの正極および負極の界面する対の内部の短絡によって、ならびに前記正電解質が、前記正極と界面する流動場プレートの統合されたチャネルを通って方向付けられることによって、駆動される、
レドックス・フロー・バッテリ・システム。
【請求項13】
前記統合されたチャネルが、前記流動場プレートの正の流動場から気体を除去するための部分的チャネルを含む、
請求項12に記載のレドックス・フロー・バッテリ・システム。
【請求項14】
前記正電解質の対流を前記正極内に強制するために、前記統合されたチャネルが、部分的に互いにかみ合った構成で配置される、
請求項12に記載のレドックス・フロー・バッテリ・システム。
【請求項15】
前記統合されたチャネルが先細の入り口および先細の出口を含み、前記先細の入り口の直径が、前記先細の入り口への入り口で最も広く、前記先細の出口の直径が、前記先細の出口への入り口で最も狭い、
請求項12に記載のレドックス・フロー・バッテリ・システム。
【請求項16】
前記統合されたチャネルが、前記正極と界面する前記流動場プレートの表面内に機械加工されるか、または成形され、前記流動場プレートがポリマーで形成される、
請求項12に記載のレドックス・フロー・バッテリ・システム。
【請求項17】
前記統合されたチャネルが、ポリマーで形成されたインサート内に機械加工されるか、または成形され、前記インサートが、前記正極と界面する流動場プレートの表面に結合される、
請求項12に記載のレドックス・フロー・バッテリ・システム。
【請求項18】
正極および負極の内部で短絡した界面する対と、
前記負極の反対側の前記正極の表面と面共有接触する流動場プレートと、
を備える、
リバランス・セルの電極アセンブリであって、
前記正極の方を向いている前記流動場プレートの面が、前記流動場プレートの複数の部分的に互いにかみ合った電解質チャネルを通って流れる正電解質から気体を除去するために先細の入り口および出口ならびに収縮を含んでいる前記複数の部分的に互いにかみ合った電解質チャネルを含む、
電極アセンブリ。
【請求項19】
前記収縮が、前記気体が前記流動場プレートから出るための流路を提供することによって気体を除去するように構成される、
請求項18に記載の電極アセンブリ。
【請求項20】
前記正電解質から除去された前記気体が、前記リバランス・セルの気体出口ポートを介して前記リバランス・セルから放出される、
請求項18に記載の電極アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年7月13日に出願された国際出願第PCT/US22/73693号「REBALANCING CELL FOR REDOX FLOW BATTERY SYSTEM」の一部継続であり、この国際出願は、2021年7月13日に出願された米国特許仮出願第63/221,325号「REBALANCING CELL FOR REDOX FLOW BATTERY SYSTEM」および2021年7月13日に出願された米国特許仮出願第63/221,330号「REBALANCING CELL FOR REDOX FLOW BATTERY SYSTEM」に対する優先権を主張する。上で識別された出願の各々の内容全体は、すべての目的で、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本説明は、一般に、レドックス・フロー・バッテリ・システムにおいて使用するためのリバランス・セルのためのシステム、およびそのようなリバランス・セルを操作するための方法に関連している。
【背景技術】
【0003】
レドックス・フロー・バッテリは、電力および容量の大きさを独立して変更する能力、ならびに従来のバッテリ技術と比較して減らされた性能損失で数千サイクルを超えて充電および放電する能力のため、グリッドスケール蓄電の応用に適している。全鉄ハイブリッド・レドックス・フロー・バッテリ(all-iron hybrid redox flow battery)は、低コストで豊富に存在する材料の組み込みに起因して、特に魅力的である。一般に、鉄レドックス・フロー・バッテリ(IFB:iron redox flow batteries)は、電解質のための鉄、塩、および水に依存し、したがって、単純な豊富に存在する安価な材料を含み、刺激の強い化学物質の組み込みを取り除き、環境設置面積を減らす。
【0004】
IFBは、レドックス反応が発生する正(レドックス)極、およびめっき反応を介して電解質内の第一鉄(Fe2+)が還元されてめっきされ得る負(めっき)極を含むことがある。陽子還元、鉄腐食、および鉄めっき酸化を含む、さまざまな副反応が、次のようにFe2+還元と競合することがある。
H++e-←→1/2H2 (陽子還元) (1)
Fe0+2H+←→Fe2++H2 (鉄腐食) (2)
2Fe3++Fe0←→3Fe2+ (鉄めっき酸化) (3)
ほとんどの副反応がめっき電極で発生するため、めっき電極で使用できる鉄めっきによってIFBのサイクル能力が制限されることがある。鉄めっき損失を改善しようとする例示的な試みは、方程式(1)および(2)からの気体水素(H2)生成、および方程式(3)からの電解質の電荷不均衡(例えば、過剰なFe3+)、および次の方程式(4)によるイオンの交差に対処するために、触媒電解質リバランス(catalytic electrolyte rebalancing)に重点を置いた。
Fe3++1/2H2→Fe2++H+ (電解質リバランス) (4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一部の例では、方程式(4)の電解質リバランス反応を実行するためにH2気体および電解質が触媒表面で接触することができる、トリクル・ベッドまたはジェリー・ロール・リアクタ(jelly roll reactor)の設定によって、電解質リバランスが実現されることがある。しかし、そのような設定のより低いFe3+還元速度は、より高い性能の応用にとって望ましくないことがある。他の例では、燃料セルの設定が、正極および負極の対にわたって直流(DC:direct current)を加えながら、H2気体および電解質を触媒表面で同様に接触させることがある。しかし、燃料セルでは、DCの流れを中断する不慮の逆電流スパイクの結果として、信頼性の問題が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの例では、前述の問題は、レドックス・フロー・バッテリのリバランス・セルによって対処されることが可能であり、リバランス・セルは、セル筐体と、セル筐体に囲まれた電極アセンブリの積み重ねとを含み、電極アセンブリの積み重ねの各電極アセンブリは、流動場プレートと界面する正極を含む。正極と界面する流動場プレートの面は、それを通って流れる電解質から気体を除去するように構成された、先細の入り口および出口ならびに部分的チャネルを含んでいる複数の通路を含む。一部の実施例では、電極アセンブリの積み重ねの各電極アセンブリは、内部で短絡してよい。このようにして、正電解質の効率的なリバランスが有効化されながら、リバランス・セル内の正極および負極の界面する対の内部の短絡によって、リバランス・セル内の電解質リバランスが駆動されてよい。
【0007】
詳細には、一部の例では、流動場プレートは、流動場プレートの面に統合された、複数の通路で形成された流動場を含む。流動場は、流動場プレートにわたって圧力を制御し、それによって、電極アセンブリを通る電解質の流れを穏やかにし、電極での反応速度を改善することができる。このようにして、流動場プレートを含まない内部で短絡しないセルと相対的に、リバランス・セル内の電気化学的性能が改善され得る。
【0008】
上記の要約が、「発明を実施するための形態」においてさらに説明される概念の選択を、簡略化された形態で導入するために提供されているということが、理解されるべきである。上記の要約は、主張される主題の重要な特徴または不可欠な特徴を識別するよう意図されておらず、主張される主題の範囲は、「発明を実施するための形態」の後に続く特許請求の範囲によって一意に定義される。さらに、主張される主題は、上記または本開示のいずれかの部分に示されたいずれかの不利益を解決する実装に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】各リバランス・リアクタ(rebalancing reactors)に流体結合されたレドックス電極およびめっき電極を含むバッテリ・セルを含んでいる例示的なレドックス・フロー・バッテリ・システムの概略図を示す図である。
【
図2A】内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを含んでいるリバランス・セルの透視図を示す図である。
【
図2B】内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを含んでいるリバランス・セルの透視図を示す図である。
【
図3】
図2Aおよび2Bのリバランス・セルの電極アセンブリの分解図を示す図である。
【
図4A】
図2Aおよび2Bのリバランス・セル内のH
2気体の流れの断面図および拡大差し込み図をそれぞれ示す図である。
【
図4B】
図2Aおよび2Bのリバランス・セル内のH
2気体の流れの断面図および拡大差し込み図をそれぞれ示す図である。
【
図5A】
図2Aおよび2Bのリバランス・セルなどのリバランス・セルの負極を横切ってH
2気体を対流させるための、各例示的な流動場構成の概略図を示す図である。
【
図5B】
図2Aおよび2Bのリバランス・セルなどのリバランス・セルの負極を横切ってH
2気体を対流させるための、各例示的な流動場構成の概略図を示す図である。
【
図5C】
図2Aおよび2Bのリバランス・セルなどのリバランス・セルの負極を横切ってH
2気体を対流させるための、各例示的な流動場構成の概略図を示す図である。
【
図5D】
図2Aおよび2Bのリバランス・セルなどのリバランス・セルの負極を横切ってH
2気体を対流させるための、各例示的な流動場構成の概略図を示す図である。
【
図5E】
図2Aおよび2Bのリバランス・セルなどのリバランス・セルの負極を横切ってH
2気体を対流させるための、各例示的な流動場構成の概略図を示す図である。
【
図6A】リバランス・セルの電極アセンブリに含まれ得る、統合された流動場を含む流動場プレートの例を示す図である。
【
図6B】リバランス・セルの電極アセンブリに含まれ得る、統合された流動場を含むインサートを含んでいる流動場プレートの例を示す図である。
【
図7A】
図6A~6Bの流動場プレートに統合され得る部分的に互いにかみ合った流動場の概略図および拡大差し込み図をそれぞれ示す図である。
【
図7B】
図6A~6Bの流動場プレートに統合され得る部分的に互いにかみ合った流動場の概略図および拡大差し込み図をそれぞれ示す図である。
【
図8】内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを含んでいるリバランス・セルを操作するための方法のフロー・チャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明は、内部に含まれている電極アセンブリの内部の短絡によって駆動されるリバランス・セルのためのシステムおよび方法に関連している。実施形態例では、リバランス・セルは、レドックス・フロー・バッテリの電解質サブシステムに流体結合されてよい。レドックス・フロー・バッテリが
図1に概略的に示されており、統合された多室タンクが、分離した正電解質室および負電解質室を含んでいる。一部の例では、レドックス・フロー・バッテリは、IFBの正(レドックス)極および負(めっき)極の両方で鉄レドックスの化学的性質を利用する全鉄フロー・バッテリ(IFB)であってよい。電解質室は、1つまたは複数のバッテリ・セルに結合されてよく、各セルは、正極および負極を含んでいる。したがって、電解質は、正極および負極をそれぞれ収容している正極区画および負極区画を通って送り込まれてよい。
【0011】
一部の例では、レドックス・フロー・バッテリは、ハイブリッド・レドックス・フロー・バッテリであってよい。ハイブリッド・レドックス・フロー・バッテリは、電極(例えば、負極)上の固体層としての1つまたは複数の電気活性材料の堆積によって特徴付けられ得るレドックス・フロー・バッテリである。ハイブリッド・レドックス・フロー・バッテリは、例えば、バッテリ充電工程を通じて、基板上の固体として電気化学反応によってめっきし得る化学種を含んでよい。バッテリ放電中に、さらなる電気化学反応によって、めっき種がイオン化し、電解質内に溶解できるようになってよい。ハイブリッド・レドックス・フロー・バッテリ・システムでは、レドックス・フロー・バッテリの充電容量(例えば、蓄えられるエネルギーの最大量)は、バッテリ充電中にめっきされる金属の量によって制限されることがあり、したがって、めっきシステムの効率に加えて、めっきに使用できる体積および表面積に依存することがある。
【0012】
一部の例では、レドックス・フロー・バッテリ内の電解質の不均衡が、次のような陽子還元および鉄腐食などの気体水素(H2)生成反応
H++e-←→1/2H2 (陽子還元) (1)
Fe0+2H+←→Fe2++H2 (鉄腐食) (2)
ならびに次のような鉄めっきの酸化中に生成される過剰な第二鉄(Fe3+)からの電荷不均衡を含む、望ましいレドックスの化学的性質と競合する多数の副反応から生じることがある。
2Fe3++Fe0←→3Fe2+ (鉄めっき酸化) (3)
方程式(1)~(3)の反応は、鉄めっきを制限し、それによって、バッテリ容量全体を減らすことがある。そのような不均衡に対処するために、次のような単一のレドックス反応によってFe3+を減らすこと、および過剰なH2気体を取り除くことを両方とも行うように、電解質リバランスが活用され得る。
Fe3++1/2H2→Fe2++H+ (電解質リバランス) (4)
【0013】
本明細書において実施形態によって説明されるように、
図3の例示的な電極アセンブリなどの内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを含んでいる、
図2Aおよび2Bの例示的なリバランス・セルなどのリバランス・セルによって、相対的に高い性能の応用のための十分なFe
3+還元速度が、確実に達成され得る。
図4Aおよび4Bは、リバランス・セル内のH
2気体の流れの態様を示しており、
図5A~5Eの例示的な流動場構成などの各流動場構成を含んでいる、
図8A~8Dの例示的な流動場プレートなどの流動場プレートによって、H
2気体が、内部で短絡した電極アセンブリの負極を横切って対流されてよい。統合された流動場を使用して構成され得る流動場プレートの例が
図6A~6Bに示されており、統合された流動場の例示的な構成が
図7A~7Bに示されている。リバランス・セルを操作する方法が、
図8に示されている。
【0014】
図1に示されているように、レドックス・フロー・バッテリ・システム10では、負極26がめっき電極と見なされてよく、正極28がレドックス電極と見なされてよい。レドックス・フロー・バッテリ・セル18のめっき側(例えば、負極区画20)の中の負電解質はめっき電解質と見なされてよく、レドックス・フロー・バッテリ・セル18のレドックス側(例えば、正極区画22)の正電解質はレドックス電解質と見なされてよい。
【0015】
「アノード」は、電気活性材料が電子を失う電極のことを指し、「カソード」は、電気活性材料が電子を獲得する電極のことを指す。バッテリ充電中に、負極26で負電解質が電子を獲得し、負極26は、電気化学反応のカソードである。バッテリ放電中に、負電解質が電子を失い、負極26は、電気化学反応のアノードである。代替として、バッテリ放電中に、負電解質および負極26は、それぞれ電気化学反応のアノード液およびアノードと見なされてよく、一方、正電解質および正極28は、それぞれ電気化学反応のカソード液およびカソードと見なされてよい。バッテリ充電中に、負電解質および負極26は、それぞれ電気化学反応のカソード液およびカソードと見なされてよく、一方、正電解質および正極28は、それぞれ電気化学反応のアノード液およびアノードと見なされてよい。簡単にするために、「正」および「負」という用語は、本明細書では、レドックス・フロー・バッテリ・システム内の電極、電解質、および電極区画を参照するために使用される。
【0016】
ハイブリッド・レドックス・フロー・バッテリの1つの例は、全鉄レドックス・フロー・バッテリ(IFB)であり、全鉄レドックス・フロー・バッテリ(IFB)では、電解質が鉄塩(例えば、FeCl2、FeCl3など)の形態で鉄イオンを含み、負極26が鉄金属を含む。例えば、負極26で、バッテリ充電中に第一鉄(Fe2+)が2つの電子を獲得し、鉄金属(Fe0)として負極26上にめっきし、バッテリ放電中にFe0が2つの電子を失い、Fe2+として再び溶解する。正極28で、バッテリ充電中にFe2+が1つの電子を失って第二鉄(Fe3+)を形成し、バッテリ放電中にFe3+が1つの電子を獲得してFe2+を形成する。電気化学反応は、方程式(5)および(6)に要約され、正反応(左から右へ)はバッテリ充電中の電気化学反応を示し、一方、逆反応(右から左へ)はバッテリ放電中の電気化学反応を示す。
Fe2++2e-←→Fe0 -0.44V(負極) (5)
Fe2+←→2Fe3++2e- +0.77V(正極) (6)
【0017】
前述したように、IFBにおいて使用される負電解質は、バッテリ充電中にFe2+が負極26から2つの電子を受け取ってFe0を形成し、基板上にめっきすることができるように、十分な量のFe2+を供給してよい。バッテリ放電中に、めっきされたFe0が2つの電子を失い、Fe2+にイオン化し、電解質内に再び溶解してよい。上記の反応の平衡電位は-0.44Vであり、したがってこの反応は、望ましいシステムの負端子を提供する。IFBの正側で、バッテリ充電中に、電解質がFe2+を供給してよく、Fe2+が電子を失って酸化し、Fe3+になる。バッテリ放電中に、電解質によって供給されたFe3+が、正極28によって供給された電子を吸収することによってFe2+になる。この反応の平衡電位は+0.77Vであり、望ましいシステムの正端子を作成する。
【0018】
IFBは、非再生電解質を利用する他のバッテリの種類とは対照的に、その中で電解質を充電および再充電する能力を提供することができる。端子40および42を介して電極26および28にわたって電流をそれぞれ加えることによって、充電が実現されてよい。正極28を介して電子が負電解質に供給され得るように、負極26が、端子40を介して電圧源の負側に電気的に結合されてよい(例えば、正極区画22内の正電解質においてFe2+がFe3+に酸化される)。負極26に供給された電子は、負電解質内のFe2+を還元して、(めっき)基板にFe0を形成し、Fe2+が負極26上にめっきすることを引き起こすことができる。
【0019】
Fe0が負電解質によって酸化に使用可能なままである間、およびFe3+が正電解質において還元に使用可能なままである間は、放電が持続されてよい。例として、外部正電解質室52などの外部供給源を介して、レドックス・フロー・バッテリ・セル18の正極区画22側において正電解質の濃度または体積を増やし、追加のFe3+イオンを供給することによって、Fe3+の可用性が維持されてよい。さらに一般には、放電中のFe0の可用性が、IFBシステムにおいて問題になることがあり、放電に使用できるFe0は、負極基板の表面積および体積に加えて、めっき効率に比例することができる。充電容量は、負極区画20内のFe2+の可用性に依存することができる。例として、Fe2+の可用性は、外部負電解質室50などの外部供給源を介して追加のFe2+イオンをレドックス・フロー・バッテリ・セル18の負極区画20側に供給し、負電解質の濃度または体積を増やすことによって維持されてよい。
【0020】
IFBでは、IFBシステムの充電状態(SOC:state of charge)に応じて、正電解質は、第一鉄、第二鉄、第二鉄複合体、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよく、一方、負電解質は、第一鉄または第一鉄複合体を含んでよい。前述したように、負電解質および正電解質の両方における鉄イオンの利用は、レドックス・フロー・バッテリ・セル18の両側での同じ電解質種の利用を可能にすることができ、電解質の相互汚染を減らすことができ、IFBシステムの効率を向上させ、他のレドックス・フロー・バッテリ・システムと比較して、より少ない電解質の交換をもたらすことができる。
【0021】
IFBにおける効率損失は、セパレータ24(例えば、イオン交換膜バリア、微多孔膜など)を通る電解質の交差から生じることがある。例えば、正電解質内のFe3+イオンは、セパレータ24にわたるFe3+イオンの濃度勾配および電気泳動力によって、負電解質に向かって駆動されてよい。その後、セパレータ24を貫通して負極区画20へ交差するFe3+イオンが、クーロン効率の損失を引き起こすことがある。低pHのレドックス側(例えば、酸性度の高い正極区画22)から高pHのめっき側(例えば、酸性度の低い負極区画20)へ交差するFe3+イオンが、Fe(OH)3の沈殿を引き起こすことがある。Fe(OH)3の沈殿は、セパレータ24を劣化させ、永続的なバッテリの性能および効率の損失を引き起こすことがある。例えば、Fe(OH)3の沈殿物は、イオン交換膜の有機官能基を化学的に汚染するか、またはイオン交換膜の微小孔を物理的に詰まらせることがある。いずれの場合も、Fe(OH)3の沈殿物に起因して、時間と共に膜オーム抵抗が上昇し、バッテリ性能が低下することがある。酸を使用してIFBを洗浄することによって沈殿物が除去され得るが、定期的な保守およびダウンタイムは、商用バッテリの応用にとって不利益であることがある。さらに、洗浄は、追加の処理コストおよび複雑さに寄与する電解質の定期的な準備に依存することがある。代替として、電解質のpHの変化に応じて特定の有機酸を正電解質および負電解質に追加することは、コスト全体を押し上げずに、バッテリの充電および放電サイクル中の沈殿物の形成を軽減することができる。さらに、Fe3+イオンの交差を抑制する膜バリアを実装することも、汚染を軽減することができる。
【0022】
追加のクーロン効率の損失が、H+(例えば、陽子)の還元およびその後のH2気体の形成、ならびにH2気体を形成するために負極26のめっきされた鉄金属で供給された電子との負極区画20内の陽子の反応によって、引き起こされることがある。
【0023】
IFBの電解質(例えば、FeCl2、FeCl3、FeSO4、Fe2(SO4)3など)は、容易に使用可能であることがあり、低コストで生成され得る。1つの例では、IFBの電解質は、塩化第一鉄(FeCl2)、塩化カリウム(KCl)、塩化マンガン(II)(MnCl2)、およびホウ酸(H3BO3)から形成されてよい。IFBの電解質は、同じ電解質が負電解質および正電解質に使用され得るため、より高い再利用価値を提供し、その結果、他のシステムと比較して相互汚染問題を軽減することができる。さらに、鉄の電子配置のため、鉄は、負極基板上の鉄のめっき中に、概して均一な固体構造に凝固することができる。ハイブリッド・レドックス・バッテリにおいて一般に使用される亜鉛および他の金属の場合、めっき中に固体樹枝状構造が生じることがある。IFBシステムの安定した電極形態は、他のレドックス・フロー・バッテリと比較して、バッテリの効率を向上させることができる。さらに、鉄レドックス・フロー・バッテリは、他のレドックス・フロー・バッテリの電解質と比較して、有害な原料の使用を減らすことができ、相対的に中性のpHで動作することができる。したがって、IFBシステムは、製造中の他のすべての現在の高度なレドックス・フロー・バッテリ・システムと比較して、環境危険を減らすことができる。
【0024】
図1を続けると、レドックス・フロー・バッテリ・システム10の概略図が示されている。レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、統合された多室電解質貯蔵タンク(integrated multi-chambered electrolyte storage tank)110に流動的に結合されたレドックス・フロー・バッテリ・セル18を含んでよい。レドックス・フロー・バッテリ・セル18は、負極区画20、セパレータ24、および正極区画22を含んでよい。セパレータ24は電気絶縁イオン伝導バリア(electrically insulating ionic conducting barrier)を含んでよく、電気絶縁イオン導電性バリアは、それを通して特定のイオンの伝導を可能にしながら、正電解質および負電解質の大量の混合を防ぐ。例えば、前述したように、セパレータ24は、イオン交換膜および/または微多孔膜を含んでよい。
【0025】
負極区画20は負極26を含んでよく、負電解質は電気活性材料を含んでよい。正極区画22は正極28を含んでよく、正電解質は電気活性材料を含んでよい。一部の例では、レドックス・フロー・バッテリ・システム10内により高い電圧または電流を生成するために、複数のレドックス・フロー・バッテリ・セル18が直列または並列に結合されてよい。
【0026】
図1には、負電解質ポンプ30および正電解質ポンプ32がさらに示されており、これらは両方とも、レドックス・フロー・バッテリ・システム10を通る電解質溶液を送り込むために使用される。電解質は、セルの外部の1つまたは複数のタンクに蓄えられ、負電解質ポンプ30および正電解質ポンプ32を介して送り込まれ、レドックス・フロー・バッテリ・セル18の負極区画20側および正極区画22側をそれぞれ通る。
【0027】
レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、背面側、例えば、負極26および正極28のセパレータ24の方を向いている側の反対側に沿ってそれぞれ位置付けられた、第1のバイポーラ板36および第2のバイポーラ板38も含んでよい。第1のバイポーラ板36は負極26と接触してよく、第2のバイポーラ板38は正極28と接触してよい。しかし、他の例では、バイポーラ板36および38は、電極26および28に近接しているが、電極26および28から離れて間隔を空けられて配置され、各電極区画20および22内に収容されてよい。いずれの場合も、バイポーラ板36および38は、直接接触によって、または負極26および正極28をそれぞれ介して、端子40および42にそれぞれ電気的に結合されてよい。IFBの電解質は、バイポーラ板36および38の材料の導電性から生じて、第1および第2のバイポーラ板36および38によって、負極26および正極28での反応部位に輸送されてよい。電解質の流れは、レドックス・フロー・バッテリ・セル18を通る強制対流を促進する負電解質ポンプ30および正電解質ポンプ32によって支援されてもよい。反応電気化学種(reacted electrochemical species)は、強制対流と第1および第2のバイポーラ板36および38の存在との組み合わせによって、反応部位から離れる方向に向けられてもよい。
【0028】
図1に示されているように、レドックス・フロー・バッテリ・セル18は、負バッテリ端子40および正バッテリ端子42をさらに含んでよい。充電電流がバッテリ端子40および42に加えられた場合、正極28で正電解質が酸化されてよく(1つまたは複数の電子を失う)、負極26で負電解質が還元されてよい(1つまたは複数の電子を獲得する)。バッテリ放電中に、電極26および28に逆レドックス反応が発生してよい。言い換えると、正極28で正電解質が還元されてよく(1つまたは複数の電子を獲得する)、負極26で負電解質が酸化されてよい(1つまたは複数の電子を失う)。バッテリの両端の電位差は、正極区画22および負極区画20内の電気化学レドックス反応によって維持されてよく、この反応が持続されている間に、電流コレクタを通る電流を誘導してよい。レドックス・バッテリによって蓄えられるエネルギーの量は、電解質の全体積および電気活性材料の溶解度に応じて、放電に使用できる電解質内の電気活性材料の量によって制限され得る。
【0029】
レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、統合された多室電解質貯蔵タンク110をさらに含んでよい。多室電解質貯蔵タンク110は、隔壁98によって分割されてよい。隔壁98は、正電解質および負電解質が両方とも単一のタンク内に含まれ得るように、多室電解質貯蔵タンク110内に複数の室を作成してよい。負電解質室50は、電気活性材料を含んでいる負電解質を保持し、正電解質室52は、電気活性材料を含んでいる正電解質を保持する。隔壁98は、負電解質室50と正電解質室52の間の望ましい体積比を生み出すように、多室電解質貯蔵タンク110内に位置付けられてよい。1つの例では、隔壁98は、負のレドックス反応と正のレドックス反応の間の理論混合比に従って負電解質室50および正電解質室52の体積比を設定するように位置付けられてよい。
図1は、多室電解質貯蔵タンク110の充填高さ112をさらに示しており、充填高さ112は、各タンクの区画内の液面を示してよい。
図1は、負電解質室50の充填高さ112の上にある気体ヘッド・スペース90、および正電解質室52の充填高さ112の上にある気体ヘッド・スペース92も示している。気体ヘッド・スペース92は、(例えば、陽子還元および鉄腐食側の反応に起因して)レドックス・フロー・バッテリの動作によって生成され、レドックス・フロー・バッテリ・セル18から戻る電解質と共に多室電解質貯蔵タンク110に運ばれたH
2気体を蓄えるために利用されてよい。H
2気体は、多室電解質貯蔵タンク110内の気液界面(例えば、充填高さ112)で自発的に分離され、それによって、レドックス・フロー・バッテリ・システム10の一部として追加の気液セパレータを含むことを除外してよい。H
2気体は、電解質から分離された後に、気体ヘッド・スペース90および92を満たしてよい。言い換えると、気体ヘッド・スペース90および92は、負電解質室50および正電解質室52の各々に共通している連続的な気体ヘッド・スペースを形成してよい。そのため、蓄えられたH
2気体は、多室電解質貯蔵タンク110から他の気体を取り除くことに役立ち、それによって、電解質種の酸化を減らすための不活性ガス・ブランケットの役割を果たし、レドックス・フロー・バッテリの容量損失を減らすのに役立つことができる。このようにして、統合された多室電解質貯蔵タンク110を利用することによって、従来のレドックス・フロー・バッテリ・システムに共通している別々の負電解質貯蔵タンクおよび正電解質貯蔵タンク、水素貯蔵タンク、ならび気液セパレータを含むことを差し控えることができ、それによって、システム設計を簡略化し、レドックス・フロー・バッテリ・システム10の物理的設置面積を減らし、システム・コストを減らす。
【0030】
図1は、スピルオーバー・ホール96も示しており、スピルオーバー・ホール96は、気体ヘッド・スペース90と気体ヘッド・スペース92の間の隔壁98内の開口部を作り出すことができ、室50と室52の間の気体圧を均一にする手段を提供することができる。スピルオーバー・ホール96は、充填高さ112の上のしきい値高さに位置付けられてよい。スピルオーバー・ホール96は、バッテリの交差の場合に、負電解質室50および正電解質室52の各々における電解質を自動バランス調整する能力をさらに可能にすることができる。全鉄レドックス・フロー・バッテリ・システムの場合、同じ電解質(Fe
2+)が負極区画20および正極区画22の両方において使用されるため、負電解質室50と正電解質室52の間の電解質のあふれが、システム全体の効率を低下させることがあるが、電解質全体の組成、バッテリ・モジュールの性能、およびバッテリ・モジュールの容量が維持され得る。漏れずに連続的な加圧状態を維持するために、多室電解質貯蔵タンク110への入り口および多室電解質貯蔵タンク110からの出口のすべてのパイプ接続に、フランジ管継手が利用されてよい。多室電解質貯蔵タンク110は、負電解質室50および正電解質室52の各々からの少なくとも1つの出口、および負電解質室50および正電解質室52の各々への少なくとも1つの入り口を含んでよい。さらに、リバランス・リアクタまたはセル80および82が気体ヘッド・スペース90および92にそれぞれ流体結合されるように、H
2気体をリバランス・リアクタまたはセル80および82に向かわせるために、気体ヘッド・スペース90および92からの1つまたは複数の出口の接続が設けられてよい。
【0031】
図1に示されていないが、統合された多室電解質貯蔵タンク110は、負電解質室50および正電解質室52の各々に熱的に結合された1つまたは複数のヒーターをさらに含んでよい。代替の例では、負電解質室50および正電解質室52のうちの1つのみが、1つまたは複数のヒーターを含んでよい。正電解質室52のみが1つまたは複数のヒーターを含む場合、レドックス・フロー・バッテリ・セル18に発生した熱を負電解質に伝達することによって、負電解質が加熱されてよい。このようにして、レドックス・フロー・バッテリ・セル18は、負電解質を加熱し、負電解質の温度調節を容易にすることができる。負電解質室50および正電解質室52の温度を独立して、または一緒に調節するために、コントローラ88によって1つまたは複数のヒーターが作動されてよい。例えば、電解質の温度がしきい値温度を下回ることに応答して、コントローラ88は、電解質への熱流束が増やされ得るように、1つまたは複数のヒーターに供給される電力を増やしてよい。電解質の温度は、センサ60および62などの、多室電解質貯蔵タンク110に取り付けられた1つまたは複数の温度センサによって示されてよい。例として、1つまたは複数のヒーターは、電解質液に浸されるコイル型ヒーターまたは他の液浸ヒーター、あるいは負電解質室50および正電解質室52の壁を介して熱を伝導的に伝達し、内部の液体を加熱する表面マント型ヒーター(surface mantle type heaters)を含んでよい。本開示の範囲から逸脱することなく、他の既知の種類のタンク・ヒーターが採用されてよい。さらに、コントローラ88は、液面が満充填しきい値レベル(solids fill threshold level)を下回ることに応答して、負電解質室50および正電解質室52内の1つまたは複数のヒーターを無効化してよい。言い換えると、一部の例では、コントローラ88は、液面が満充填しきい値レベルを上回ることのみに応答して、負電解質室50および正電解質室52内の1つまたは複数のヒーターを有効化してよい。このようにして、負電解質室50および/または正電解質室52内に十分な液体が存在しない状態で1つまたは複数のヒーターを有効化することが防がれてよく、それによって、ヒーターの過熱または焼損のリスクを減らす。
【0032】
さらに、野外給水システム(図示されていない)から負電解質室50および正電解質室52の各々への、1つまたは複数の入り口の接続が設けられてよい。このようにして、野外給水システムは、最終使用場所でレドックス・フロー・バッテリ・システム10を設置すること、充填すること、および給水することを含む、レドックス・フロー・バッテリ・システム10の試運転を容易にしてよい。さらに、最終使用場所でのレドックス・フロー・バッテリ・システム10の試運転に先立って、レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、レドックス・フロー・バッテリ・システム10を最終使用場所に配達する前に、レドックス・フロー・バッテリ・システム10の充填および給水を行わずに、最終使用場所と異なるバッテリ製造施設で乾燥組み立てされてよい。1つの例では、最終使用場所は、現場でのエネルギー貯蔵のためにレドックス・フロー・バッテリ・システム10が設置されて利用される場所に対応してよい。言い換えると、レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、最終使用場所で設置されて給水された後に、レドックス・フロー・バッテリ・システム10の位置が固定されてよく、レドックス・フロー・バッテリ・システム10が、運搬できる乾燥したシステムであると見なされなくなってよいように設計されてよい。したがって、エンド・ユーザの視点からは、乾燥した運搬できるレドックス・フロー・バッテリ・システム10が現場に配達されてよく、その後、レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、設置されて給水され、試運転されてよい。給水の前に、レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、乾燥した運搬できるシステムと見なされてよく、レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、水および湿った電解質がないか、またはこれらを含んでいない。給水された後に、レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、湿った運搬できないシステムと見なされてよく、レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、湿った電解質を含んでいる。
【0033】
さらに
図1に示されている、多室電解質貯蔵タンク110に主に蓄えられている電解質溶液が、負電解質ポンプ30および正電解質ポンプ32を介してレドックス・フロー・バッテリ・システム10全体に送り込まれてよい。負電解質室50に蓄えられている電解質が、負電解質ポンプ30を介して、レドックス・フロー・バッテリ・セル18の負極区画20側を通って送り込まれてよく、正電解質室52に蓄えられている電解質が、正電解質ポンプ32を介して、レドックス・フロー・バッテリ・セル18の正極区画22側を通って送り込まれてよい。
【0034】
レドックス・フロー・バッテリ・システム10内で、電解質リバランス・リアクタ80および82が、レドックス・フロー・バッテリ・セル18の負側および正側での電解質の再循環する流路と直列または並列にそれぞれ接続されてよい。1つまたは複数のリバランス・リアクタが、バッテリの負側および正側での電解質の再循環する流路と直列に接続されてよく、他のリバランス・リアクタが、冗長性のため、およびリバランス能力の向上のために、並列に接続されてよい(例えば、バッテリおよびリバランスの動作を中断せずに、リバランス・リアクタが使用可能にされてよい)。1つの例では、電解質リバランス・リアクタ80および82が、それぞれ、負極区画20および正極区画22から負電解質室50および正電解質室52への流れの帰路に配置されてよい。電解質リバランス・リアクタ80および82は、本明細書において説明されるように、副反応、イオンの交差などに起因して発生するレドックス・フロー・バッテリ・システム10内の電解質の電荷不均衡をリバランスするのに役立つことができる。
【0035】
一部の例では、リバランス・リアクタ80および82のうちの1つまたは両方はトリクル・ベッド・リアクタを含んでよく、トリクル・ベッド・リアクタでは、電解質リバランス反応を実行するために、H2気体および(液体)電解質が充填層内の触媒表面で接触してよい。追加的または代替的に、リバランス・リアクタ80および82のうちの1つまたは両方は、ジェリー・ロールで構成された触媒層を含んでよい。追加または代替の例では、リバランス・リアクタ80および82のうちの1つまたは両方は、フロースルー型リアクタ(flow-through type reactors)を含んでよく、フロースルー型リアクタは、充填触媒層なしで、H2気体および電解質を接触させ、電解質リバランス反応を実行することができる。しかし、電解質リバランス中のより低い(例えば、約1~3mol/m2hrのオーダーでの)Fe3+還元速度は、より高い性能の応用において、そのようなリバランス・リアクタ構成の実装を除外することができる。
【0036】
他の例では、リバランス・リアクタ80および82のうちの1つまたは両方は燃料セルを含んでよく、燃料セルでは、電解質リバランス反応を実行するために、H2気体および電解質が触媒表面で接触してよく、電流を燃料セルから外部負荷を通って方向付けることによって、閉回路が形成されてよい。しかし、特定の状況では、そのような燃料セル内の逆電流スパイク(例えば、逆電流における一時的増加であり、「逆電流」は、本明細書では、期待される方向と反対の(すなわち、「順」方向と反対の)方向に電気経路に沿って移動する任意の電流のことを指すために使用されてよい)が不可避であることがあり、そのようなリバランス反応構成の信頼性を損なう。
【0037】
リバランス・リアクタ80および82の全体的な信頼性を犠牲にせずにFe
3+還元速度を増やすために、本開示の実施形態は、H
2気体および電解質を駆動して、内部の電流、対流、重力供給、および毛細管作用の組み合わせによって触媒表面で反応するように構成された、
図3の電極アセンブリなどの内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを含んでいる、
図2Aおよび2Bのリバランス・セルなどのリバランス・セルを提供する。本明細書に記載された実施形態では、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの電極アセンブリは、リバランス・セルの動作中に、電流が、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねから離れる方向に向けられ得ないという点において、「内部で短絡している」と見なされてよい。そのような内部の短絡は、Fe
3+還元速度を(例えば、約50~70mol/m
2hrの速さに)大幅に増やし、それに伴って副反応速度(例えば、方程式(1)~(3)の反応の速度)を減らしながら、逆電流スパイクを減らすか、または取り除くことができる。さらに、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの各電極アセンブリは、電極アセンブリでの電流スパイク発生中の内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの劣化が、そこに限定される(例えば、1つの電極アセンブリから他の電極アセンブリを通って逆電流が駆動され得ない)ように、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの各他の電極アセンブリから電気的に切り離されてよい。そのような場合、単一の劣化した電極アセンブリが、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねから容易に除去され、劣化していない電極アセンブリに置き換えられ得る。
【0038】
内部で短絡した回路を実現するために、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの各電極アセンブリは、(例えば、連続して導電性になるように互いに面共有接触して構成された)正極および負極の界面する対を含んでよい。本明細書において使用されるとき、第1および第2のコンポーネントが互いに面共有接触するように、第1のコンポーネントが第2のコンポーネントに隣接して配置される場合(「隣接する」は、本明細書では、任意の2つのコンポーネントが、それらの間に介在するコンポーネントを含んでいないことを指すために使用される)、第1および第2のコンポーネント(例えば、電極アセンブリの正極および負極)の対は、互いに「界面する」として説明されてよい。さらに、本明細書において使用されるとき、複数の電極の導電性を説明する場合の「連続して」は、それらの電極を通る電気経路が、複数の電極の任意の面共有している界面で事実上または実際にゼロ抵抗を有していることを指してよい。
【0039】
実施形態例では、(正)リバランス・リアクタ82は、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを含んでいるリバランス・セルであってよい。バッテリ充電中に正極28で大量のFe3+が生成されることがあるため(方程式(6)を参照)、正電解質をリバランスするために、より高いFe3+還元速度が望ましいことがある。追加または代替の実施形態では、(負)リバランス・リアクタ80は、同様の構成のリバランス・リアクタであってよい(鉄めっき酸化中に、Fe3+が負極26で生成されてよい(方程式(3)を参照))。
【0040】
レドックス・フロー・バッテリ・システム10の動作中に、センサおよびプローブが、電解質のpH、濃度、SOCなどの電解質の化学的特性を監視し、制御してよい。例えば、
図1に示されているように、正電解質室52および負電解質室50で正電解質および負電解質の状態をそれぞれ監視するために、センサ62および60が位置付けられてよい。別の例では、センサ62および60は、正電解質室52および負電解質室50内の電解質のレベルをそれぞれ示すために、1つまたは複数の電解質レベル・センサをそれぞれ含んでよい。別の例として、
図1にやはり示されているセンサ72および70が、正極区画22および負極区画20での正電解質および負電解質の状態をそれぞれ監視してよい。センサ72および70は、pHプローブ、光学的プローブ、圧力センサ、電圧センサなどであってよい。電解質の化学的特性および他の特性を監視するために、センサがレドックス・フロー・バッテリ・システム10全体の他の位置に位置付けられてよいということが、理解されるであろう。
【0041】
例えば、センサは、外部酸タンクの酸の体積またはpHを監視するために外部酸タンク(図示されていない)内に位置付けられてよく、電解質内の沈殿物の形成を減らすために、外部酸タンクからの酸が、外部ポンプ(図示されていない)を介してレドックス・フロー・バッテリ・システム10に供給されてよい。他の添加物をレドックス・フロー・バッテリ・システム10に供給するために、追加の外部タンクおよびセンサが設置されてよい。例えば、野外給水システムの温度センサ、導電率センサ、およびレベル・センサを含むさまざまなセンサが、信号をコントローラ88に送信してよい。さらに、コントローラ88は、レドックス・フロー・バッテリ・システム10の給水中に、野外給水システムのバルブおよびポンプなどのアクチュエータに信号を送信してよい。例として、センサ情報が、コントローラ88に送信されてよく、次に、ポンプ30および32を作動させ、レドックス・フロー・バッテリ・セル18を通る電解質の流れを制御するか、または他の制御機能を実行してよい。このようにして、コントローラ88は、センサおよびプローブのうちの1つまたは組み合わせに応答してよい。
【0042】
レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、H
2気体の供給源をさらに含んでよい。1つの例では、H
2気体の供給源は、分離した専用の気体水素貯蔵タンクを含んでよい。
図1の例では、H
2気体が、統合された多室電解質貯蔵タンク110に蓄えられ、統合された多室電解質貯蔵タンク110から供給されてよい。統合された多室電解質貯蔵タンク110は、追加のH
2気体を正電解質室52および負電解質室50に供給してよい。統合された多室電解質貯蔵タンク110は、代替として、追加のH
2気体を、電解質リバランス・リアクタ80および82の入り口に供給してよい。例として、(コントローラ88によって制御され得る)質量流計または他の流れ制御デバイスが、統合された多室電解質貯蔵タンク110からのH
2気体の流れを調節してよい。統合された多室電解質貯蔵タンク110は、レドックス・フロー・バッテリ・システム10内で生成されたH
2気体を補完してよい。例えば、レドックス・フロー・バッテリ・システム10内で気体の漏出が検出された場合、または低水素分圧での還元反応速度(例えば、Fe
3+還元速度)が低すぎる場合、正電解質および負電解質内の電気活性材料のSOCをリバランスするために、統合された多室電解質貯蔵タンク110からH
2気体が供給されてよい。例として、コントローラ88は、pHにおける測定された変化に応答して、または電解質もしくは電気活性材料のSOCにおける測定された変化に応答して、統合された多室電解質貯蔵タンク110からH
2気体を供給してよい。
【0043】
例えば、負電解質室50または負極区画20のpHにおける増加は、H2気体がレドックス・フロー・バッテリ・システム10から漏れていること、および/または使用可能な水素分圧での反応速度が遅すぎることを示すことがあり、コントローラ88は、pHの増加に応答して、統合された多室電解質貯蔵タンク110からレドックス・フロー・バッテリ・システム10へのH2気体の供給を増やしてよい。さらなる例として、コントローラ88は、pHが第1のしきい値pHを超えて増加するか、または第2のしきい値pHを超えて減少するpHの変化に応答して、H2気体を統合された多室電解質貯蔵タンク110から供給してよい。IFBの場合、コントローラ88は、追加のH2気体を供給して、Fe3+イオンの還元速度および陽子の生成速度を増やしてよく、それによって、正電解質のpHを減らす。さらに、正電解質から負電解質に交差するFe3+イオンの水素還元によって、または陽子の濃度勾配および電気泳動力に起因して負電解質へ交差する正側で生成された陽子によって、負電解質のpHが下げられてよい。この方法で、Fe(OH)3としての(正極区画22から交差する)Fe3+イオンの沈殿のリスクを減らしながら、負電解質のpHが安定領域内に維持されてよい。
【0044】
電解質のpHにおける変化に応答して、または酸化還元電位(ORP:oxygen-reduction potential)計もしくは光センサなどの他のセンサによって検出された電解質のSOCにおける変化に応答して、統合された多室電解質貯蔵タンク110からのH2気体の供給速度を制御するための他の制御方式が実装されてよい。さらに、コントローラ88のアクションを引き起こすpHまたはSOCにおける変化は、変化の速度、またはある期間にわたって測定された変化に基づいてよい。変化の速度の期間は、レドックス・フロー・バッテリ・システム10の時定数に基づいて事前に決定されるか、または調整されてよい。例えば、再循環速度が高い場合、この期間が減らされてよく、時定数が小さくなることができるため、(例えば、副反応または気体の漏出に起因する)濃度における局所的変化が素早く測定され得る。
【0045】
コントローラ88は、レドックス・フロー・バッテリ・システム10の動作モードに基づく制御方式をさらに実行してよい。例えば、
図11を参照して下で詳細に説明されるように、前述したようにリバランス・リアクタ80および82へのH
2気体の流れを制御することと並行して、レドックス・フロー・バッテリ・セル18の充電および放電中に、コントローラ88が、レドックス・フロー・バッテリ・システム10から過剰なH
2気体を同時に取り除き、Fe
3+イオン濃度を減らすように、リバランス・リアクタ80および82への負電解質および正電解質の流れをそれぞれ制御してよい。電解質リバランスの後に、コントローラ88は、リバランス・リアクタ80および82から、多室電解質貯蔵タンク110の各電解質室50および52へ逆向きに、(例えば、減少した濃度のFe
3+および増加した濃度のFe
2+を含んでいる)リバランスされた負電解質および正電解質と共に、過剰なH
2または未反応のH
2の流れを方向付けてよい。追加的または代替的に、未反応のH
2気体が、分離した専用の気体水素貯蔵タンク(
図1に示されていない)に戻されてよい。
【0046】
別の例として、コントローラ88は、システムの調整中に負極26で鉄の予備形成を引き起こすように、レドックス・フロー・バッテリ・セル18の充電および放電をさらに制御してよい(システムの調整は、バッテリ・サイクルの外部でレドックス・フロー・バッテリ・システム10の電気化学的性能を最適化するために採用される動作モードを含んでよい)。すなわち、システムの調整中に、コントローラ88は、鉄金属を負極26にめっきするためのレドックス・フロー・バッテリ・システム10の1つまたは複数の動作条件を調整し、その後のバッテリ・サイクル中のバッテリ充電容量を改善してよい(このようにして、バッテリ・サイクルのために鉄金属が予備形成されてよい)。このようにして、システムの調整中に負極26で鉄を予備形成し、電解質のリバランスを実行し、鉄のめっき損失を軽減することによって、バッテリ・サイクル中のレドックス・フロー・バッテリ・セル18の全体的容量を増やしてよい。本明細書において使用されるとき、バッテリ・サイクル(「充電サイクル」とも呼ばれる)は、レドックス・フロー・バッテリ・システム10の充電モードと放電モードを繰り返すことを含んでよい。
【0047】
センサ60および62ならびに統合された多室電解質貯蔵タンク110(およびそれに含まれているコンポーネント)から離れているすべてのコンポーネントが、電力モジュール120に含まれていると見なされてよいということが、理解されるであろう。そのため、レドックス・フロー・バッテリ・システム10は、統合された多室電解質貯蔵タンク110に流動的に結合され、センサ60および62に通信可能に結合された電力モジュール120を含んでいるとして表されてよい。一部の例では、レドックス・フロー・バッテリ・システム10が単一のユニットとして単一の場所に含まれ得るように、電力モジュール120および多室電解質貯蔵タンク110の各々は、単一のハウジングまたはパッケージ(図示されていない)に含まれてよい。正電解質、負電解質、センサ60および62、電解質リバランス・リアクタ80および82、ならびに統合された多室電解質貯蔵タンク110(およびそれに含まれているコンポーネント)が、電解質サブシステム130に含まれていると見なされてよいということが、さらに理解されるであろう。そのため、電解質サブシステム130は、1つまたは複数の電解質をレドックス・フロー・バッテリ・セル18(およびそれに含まれているコンポーネント)に供給してよい。
【0048】
ここで
図2Aおよび2B参照すると、透視
図200および250がそれぞれ示されており、透視
図200および250の各々は、
図1のレドックス・フロー・バッテリ・システム10などのレドックス・フロー・バッテリ・システムのリバランス・セル202を示している。実施形態例では、リバランス・セル202は、
図3を参照して下で詳細に説明される電極アセンブリなどの内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを含んでよく、この電極アセンブリは、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの負極の触媒表面で、
図1のレドックス・フロー・バッテリ・セル18などのレドックス・フロー・バッテリの正極区画または負極区画からのH
2気体と電解質の間の接触を促進することによって、電解質リバランス反応を駆動してよい。したがって、リバランス・セル202は、
図1のリバランス・リアクタ80および82のうちの1つまたは両方であってよい。基準軸のセット201は、示されているコンポーネントの相対的位置付けを表すため、および
図2A~4B、6A、6B、9A、および9Bの図間の比較のために提供されており、軸201はx軸、y軸、およびz軸を示している。
図2A、2B、および6Aの破線でさらに示されているように、追加の軸gが、重力の方向(例えば、軸gに沿った正方向)および垂直方向(例えば、軸gに沿った、重力の方向と反対の負方向)と平行であってよい。
【0049】
レドックス・フロー・バッテリ・システムに含まれるリバランス・セル202の数および内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねに含まれる電極アセンブリの数は、特に制限されず、増加してよく、それに応じてより高い性能の応用に対応することができる。例えば、75kWのレドックス・フロー・バッテリ・システムは、20個の電極アセンブリの積み重ね(例えば、積み重ねの両端に位置付けられた2つの端板を含む19個のバイポーラ・アセンブリの積み重ね)を含んでいる2つのリバランス・セル202を含んでよい。
【0050】
図に示されているように、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねは、取り外し可能なように外部セル筐体(enclosure)(例えば、ハウジング(housing))204内で取り囲まれてよい。したがって、一部の例では、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの1つまたは複数の電極アセンブリを交換または診断するために、上部カバーが一時的に除去され得るように、セル筐体204は、筐体の基部に取り外し可能なように貼り付けられた上部カバーを含んでよい。追加または代替の例では、直方体として
図2Aおよび2Bに示されたセル筐体204は、レドックス・フロー・バッテリ・システムの他のコンポーネントに対して隙間ばめになるように成形されてよく、リバランス・セル202がそのようなコンポーネントと面共有接触し得るようにする。一部の例では、セル筐体204は、望ましくない短絡事象を減らすために、プラスチックまたは他のポリマーなどの、低い導電率を有する材料で構成されてよい。
【0051】
セル筐体204は、リバランス・セル202の界面コンポーネントのための開口部または空洞を含むようにさらに構成されてよい。例えば、セル筐体204は、レドックス・フロー・バッテリ・システムの他のコンポーネントに流体結合するように構成された複数の入り口ポートおよび出口ポートを含んでよい。1つの例では、図に示されているように、複数の入り口ポートおよび出口ポートが、PP配管に溶接されたポリプロピレン(PP)フランジ管継手の融合を含んでよい。
【0052】
実施形態例では、複数の入り口ポートおよび出口ポートが、電解質をセル筐体204内に流入させるための電解質入り口ポート206および電解質をセル筐体204から放出するための電解質出口ポート208を含んでよい。1つの例では、電解質入り口ポート206は、セル筐体204の上半分に位置付けられてよく、電解質出口ポート208は、セル筐体204の下半分に位置付けられてよい(セル筐体204の上半分および下半分は、x軸およびy軸の各々と平行な平面によって、z軸に沿って分離される)。したがって、電解質出口ポート208は、重力の方向に関して(例えば、軸gに沿って)、電解質入り口ポート206より低く位置付けられてよい。
【0053】
詳細には、電解質が電解質入り口ポート206を介してセル筐体204に入るときに、電解質は、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねにわたって分配され、電極アセンブリの積み重ねを通って重力供給され、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの正極を通って毛細管作用で(例えば、重力の方向に逆らって)上に運ばれて、カソード半反応で負極の触媒表面において反応し、電解質出口ポート208を介してセル筐体204から放出されてよい。電解質の重力供給を支援し、その圧力降下を増やすために、リバランス・セル202は、セル筐体204に結合された傾斜支持体220によって、重力の方向に関してさらに傾けられるか、または傾斜してよい。一部の例では、この方法でのセル筐体204の傾斜は、(例えば、レドックス・フロー・バッテリ・システムのアイドル・モード中に)リバランス・セル202の電解質の排出をさらに支援し、(一部の例では、触媒表面が、十分な持続時間の間、電解質に浸された後に腐食することがあるため)触媒表面を相対的に乾燥した状態に保つことができる。
【0054】
図に示されているように、傾斜支持体220は、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの電極シートの平面が、傾斜支持体220が乗っている下面(図示されていない)に対して角度222で傾斜するように、セル筐体204を角度222で傾けてよい。一部の例では、(例えば、下面に対するセル筐体204の)角度222は、0°~30°であってよい。角度222が実質的に0°である実施形態では、リバランス・セル202は、まだ機能することができるが、0°より大きい角度で筐体204を傾けることは、圧力降下がより大きくなること、および負極への電解質の交差が減らされることを可能にすることができる。一部の例では、角度222は2°~30°であってよい。一部の例では、角度222は2°~20°であってよい。1つの例では、角度222は約8°であってよい。したがって、例えば電解質入り口ポート206を介してセル筐体204に入るときの電解質の圧力降下が、角度222を増やすことによって増やされ、角度222を減らすことによって減らされてよい。傾斜支持体220のさらなる態様が、
図9Aおよび9Bを参照して下でさらに詳細に説明される。
【0055】
追加的または代替的に、1つまたは複数の支持レール224が、(例えば、傾斜支持体220と反対側の)セル筐体204の上半分に結合されてよい。一部の例では、
図2Aの透視
図200に示されているように、1つまたは複数の支持レール224が、リバランス・セル202を、下面の上の上面に、下面と平行に取り外し可能なように留めることができるように、1つまたは複数の支持レール224が、セル筐体204に対して角度222で傾けられてよい。このようにして、幾何学的考察に基づいて、同様にz軸が、角度222で軸gからオフセットされてよい(例えば、
図2Aおよび2Bに示されているように、セル筐体204が、重力の方向と反対の垂直方向に関して、角度222だけ傾けられてよい)。一部の例では、重力の方向と反対の垂直方向に関して、リバランス・セル202をレドックス・フロー・バッテリ・システムの電解質貯蔵タンク(例えば、
図1の多室電解質貯蔵タンク110)の上に位置付けることによって、リバランス・セル202を通る電解質の重力供給がさらに支援されてよい。電解質の流れのさらなる態様が、
図6A~7Bを参照して下でさらに詳細に説明される。
【0056】
図にさらに示されているように、電解質出口ポート208は、電解質の少なくとも一部を放出するように構成されたセル筐体204内の複数の開口部を含んでよい(複数の開口部の各々は、PP配管に溶接されたPPフランジ管継手の融合を含んでいる)。例えば、
図2Aおよび2Bでは、5つの開口部を含んでいる電解質出口ポート208が示されている。このようにして、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねにわたって電解質が均等に分配されてよく、実質的に妨げられない流れで、セル筐体204から放出されてよい(「実質的に」は、本明細書では、「事実上」を意味する修飾語句として使用されてよい)。他の例では、電解質出口ポート208は、6つ以上の開口部または5つ未満の開口部を含んでよい。1つの例では、電解質出口ポート208は、単一の開口部を含んでよい。追加または代替の例では、電解質出口ポート208は、z軸に関して、セル筐体204の下に(例えば、z軸の負方向を向いているセル筐体204の面上に)位置付けられてよい。
【0057】
電解質入り口ポート206および電解質出口ポート208は、(例えば、電解質入り口ポート206から電解質出口ポート208へ、電解質入り口ポート206および電解質出口ポート208に流体結合されたセル筐体204内のチャネル、通路、プレナム、ウェルなどを含めて)内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを通る電解質の流路に基づいて、セル筐体204上に位置付けられてよい。一部の例では、図に示されているように、電解質入り口ポート206および電解質出口ポート208は、セル筐体204の隣接する側面(例えば、共通のエッジを共有しているセル筐体204の面)上に位置付けられてよい。他の例では、電解質入り口ポート206および電解質出口ポート208は、セル筐体204の両面に位置付けられてよい。他の例では、電解質入り口ポート206および電解質出口ポート208は、セル筐体204の同じ側面上に位置付けられてよい。
【0058】
一部の例では、電解質入り口ポート206は、x軸の負方向を向いているセル筐体204の面上に位置付けられてよい。追加または代替の例では、電解質入り口ポート206は、x軸の正方向を向いているセル筐体204の面上に位置付けられてよい。1つの例では、図に示されているように、電解質入り口ポート206の1つの開口部が、x軸の負方向を向いているセル筐体204の面上に位置付けられてよく、電解質入り口ポート206の別の開口部が、x軸の正方向を向いているセル筐体204の面上に位置付けられてよい。
【0059】
一部の例では、複数の入り口ポートおよび出口ポートが、H
2気体をセル筐体204内に流入させるための気体水素入り口ポート210およびH
2気体をセル筐体204から放出するための(
図2Bに示されているような)気体水素出口ポート212をさらに含んでよい。1つの例では、図に示されているように、気体水素入り口ポート210および気体水素出口ポート212の各々は、セル筐体204の下半分(例えば、z軸に沿って内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの最も下の電極アセンブリ)に位置付けられてよい。別の例では、気体水素入り口ポート210および気体水素出口ポート212の各々は、セル筐体204の上半分(例えば、z軸に沿って内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの最も上の電極アセンブリ)に位置付けられてよい。さらに別の例では、気体水素入り口ポート210がセル筐体204の下半分に位置付けられてよく、気体水素出口ポート212がセル筐体204の上半分に位置付けられてよい。そのような例では、気体水素入り口ポート210は、重力の方向に関して(例えば、軸gに沿って)、気体水素出口ポート212より低く位置付けられてよい。
【0060】
詳細には、H
2気体が気体水素入り口ポート210を介してセル筐体204に入るときに、H
2気体は、(例えば、
図5A~5Eおよび
図8A~8Dを参照して下でさらに詳細に説明されるように、各流動場プレートの流動場構成によって誘導された)強制対流によって、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねにわたって、それらを通って分配され、アノード半反応で負極の触媒表面において分解されてよい。しかし、一部の例では、過剰な未反応のH
2気体が、触媒表面との接触の後に、リバランス・セル202内に残ることがある。一部の例では、触媒表面で反応しなかったH
2気体の少なくとも一部が、電解質に入ることがある。そのような例において、望ましくない圧力の増加を防ぎ、それによって、正極での電解質の滞留および付随する負極の電解質のあふれを防ぐために、複数の入り口ポートおよび出口ポートが、(
図2Aに示されているように)電解質からの未反応のH
2気体を放出するための圧力解放出口ポート214をさらに含んでよい。さらに、一部の例では、気体水素出口ポート212は、触媒表面で反応せず、負極を通って電解質に流れなかったH
2気体の少なくとも一部を放出するように構成されてよい。H
2気体の流れのさらなる態様が、
図4A~5Bを参照して下でさらに詳細に説明される。
【0061】
気体水素入り口ポート210および気体水素出口ポート212は、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを通るH
2気体の流路に基づいて、セル筐体204上に位置付けられてよい。例えば、流路は、(含まれている場合)気体水素入り口ポート210から気体水素出口ポート212への、(含まれている場合)セル筐体204内の、気体水素入り口ポート210および気体水素出口ポート212に流体結合されたチャネル、通路、プレナムなどを含むものであってよい。一部の例では、図に示されているように、気体水素入り口ポート210および気体水素出口ポート212は、セル筐体204の両面に位置付けられてよい。他の例では、気体水素入り口ポート210および気体水素出口ポート212は、セル筐体204の隣接する側面に位置付けられてよい。他の例では、気体水素入り口ポート210および気体水素出口ポート212は、セル筐体204の同じ側面上に位置付けられてよい。さらに、
図2Aおよび2Bでは、気体水素入り口ポート210がx軸の負方向を向いているセル筐体204の面に位置付けられているように示されており、
図2Aおよび2Bでは、気体水素出口ポート212がx軸の正方向を向いているセル筐体204の面に位置付けられているように示されているが、他の例では、気体水素入り口ポート210がx軸の正方向を向いているセル筐体204の面に位置付けられてよく、気体水素出口ポート212がx軸の負方向を向いているセル筐体204の面に位置付けられてよい。
【0062】
1つの例では、気体水素入り口ポート210、気体水素出口ポート212、電解質入り口ポート206、および電解質出口ポート208は、交差するような構成でセル筐体204上に位置付けられてよい。交差するような構成は、気体水素出口ポート212および電解質入り口ポート206が、セル筐体204の上半分の異なる側面(例えば、面)に位置付けられ、気体水素入り口ポート210および電解質出口ポート208が、セル筐体204の下半分の異なる側面に位置付けられることを含んでよい。
【0063】
他の例では、負極の触媒表面で反応しなかったH2気体および負極を通って電解質に流れなかったH2気体を放出するための気体水素出口ポート212が存在しなくてよい。しかし、そのような例では、電解質から未反応のH2気体を放出するための圧力解放出口ポート214がまだ存在してよく、未反応のH2気体のみが、負極を通って電解質に流れた後に、圧力解放出口ポート214を通ってセル筐体204から放出されてよい。気体水素出口ポート212を欠いている例示的なリバランス・セル構成は、圧力解放出口ポート214を含んでいるかどうかにかかわらず、「行き止まり構成」と呼ばれてよい。行き止まり構成では、H2気体の実質的にすべてが、負極の触媒表面と接触することを強制されてよく、一方、H2気体は、アノード半反応によって分解し、かつ/またはH2気体は、負極を通過した後に(例えば、負極の触媒表面で反応せずに)電解質に入ってよい。
【0064】
ここで
図3を参照すると、
図2Aおよび2Bのリバランス・セル202などのリバランス・セルの電極アセンブリ302を示す分解
図300が示されている。したがって、電極アセンブリ302は、内部で短絡してよい(例えば、電極アセンブリ302を通って流れる電流が、外部負荷を通って導かれない)。実施形態例では、電極アセンブリ302は、リバランス・セルを形成するために、セル筐体内の同様の構成の電極アセンブリの積み重ねに含まれてよい。電極アセンブリ302は、連続的に積み重ねられた、活性炭素発泡体(activated carbon foam)306を含むプレート304、正極308(本明細書の特定の例では、「カソード」とも呼ばれる)、および負極310(本明細書の特定の例では、「アノード」とも呼ばれる)を含んでよい。電極アセンブリ302は、炭素発泡体306を通る電解質を受け取るように、リバランス・セル内に位置付けられてよく、炭素発泡体306から、毛細管作用によって正極308の細孔に電解質が入り、負極310と接触してよい。電極アセンブリ302は、対流によって、正極308と反対側の負極310の触媒表面にわたってH
2気体を受け取るように、リバランス・セル内にさらに位置付けられてよい。触媒表面にわたるH
2気体の対流は、触媒表面と界面する流動場プレート(
図3に示されていない)によって支援されてよい。アノード半反応による触媒表面でのH
2気体の分解時に、陽子および電子が、負極310および正極308の界面に流れてよく、そこで、カソード半反応によって電解質内のイオンが還元されてよい(例えば、Fe
3+がFe
2+に還元されてよい)。このようにして、電極アセンブリ302は、電極アセンブリ302を含んでいるリバランス・セルに流体結合された、
図1のレドックス・フロー・バッテリ・セル18などの、レドックス・フロー・バッテリの電解質リバランスのために構成されてよい。
【0065】
一部の例では、プレート304は、望ましくない短絡事象を減らすために、プラスチックまたは他のポリマーなどの、低い導電率を有する材料で構成されてよい。したがって、1つの例では、プレート304は、
図2Aおよび2Bのセル筐体204と同じ材料から形成されてよい。
【0066】
図に示されているように、プレート304は、それを通る複数の入り口および出口を含んでよい。例えば、複数の入り口および出口は、電解質出口チャネル・セクション316、気体水素入り口チャネル・セクション318a、および気体水素出口チャネル・セクション318bを含んでよい。詳細には、プレート304は、電解質をリバランス・セルから外へ向かわせるための電解質出口チャネル・セクション316、H
2気体をリバランス・セル内に負極310を横切って向かわせるための気体水素入り口チャネル・セクション318a、およびH
2気体をリバランス・セルから外へ向かわせるための気体水素出口チャネル・セクション318bを含んでよい。プレート304は、電極アセンブリ302で電解質を受け取るための電解質入り口ウェル312をさらに含んでよく、電解質入り口ウェル312は、炭素発泡体306にわたって受け取られた電解質を分配するために炭素発泡体306に隣接して位置付けられた小段314b内に設定された複数の電解質入り口通路314aに流体結合される。一部の例では、電解質入り口ウェル312が、それに(例えば、
図3に示されていない電解質入り口チャネルを介して)流体結合された電解質入り口ポート(例えば、
図2および2Bの電解質入り口ポート206)から電解質を受け取ってよく、電解質出口チャネル・セクション316が、それに流体結合された電解質出口ポート(例えば、
図2Aおよび2Bの電解質出口ポート208)を通って電解質を放出してよく、気体水素入り口チャネル・セクション318aが、それに流体結合された気体水素入り口ポート(例えば、
図2Aおよび2Bの気体水素入り口ポート210)からH
2気体を受け取ってよく、気体水素出口チャネル・セクション318bが、それに流体結合された気体水素出口ポート(例えば、
図2Aおよび2Bの気体水素出口ポート212)を通ってH
2気体を放出してよい。
【0067】
本明細書では気体水素入り口チャネル・セクション318aが気体水素入り口チャネルのセクションとして説明されており、本明細書では気体水素出口チャネル・セクション318bが気体水素出口チャネルのセクションとして説明されているが、他の例では、チャネル・セクション318bが、(例えば、H2気体を、気体水素入り口ポートから受け取った後に、リバランス・セル内に負極310を横切って向かわせるための)気体水素入り口チャネルのセクションであってよく、気体入り口チャネル・セクション318aが、(例えば、気体水素出口ポートを通ってH2気体を放出することによって、H2気体をリバランス・セルから外へ向かわせるための)気体水素出口チャネルのセクションであってよいということが、理解されるであろう。他の例では、リバランス・セルは、行き止まり構成として構成されてよく、気体水素出口ポートが、気体水素出口チャネル・セクション318bに流体結合されなくてよい。そのような例では、気体水素出口チャネル・セクション318bは、H2気体を負極310を横切って逆方向に向かわせてよく、または気体水素出口チャネル・セクション318bは、代わりに、(例えば、H2気体の一部を気体水素入り口ポートから受け取った後に、H2気体の一部をリバランス・セル内に負極310を横切って向かわせるための)別の気体水素入り口チャネル・セクションとして構成されてよい。
【0068】
複数の入り口および出口は、リバランス・セル全体の電解質およびH2気体の流れを容易にするように構成されてよい。例として、気体水素入り口チャネル・セクション318aおよび気体水素出口チャネル・セクション318bの各々のサイズは、それらによる圧力降下を最小限に抑え、それによって、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの各電極アセンブリ302への流れの分配に役立つように選択されてよい。別の例として、小段314bと相対的な各電解質入り口通路314aのサイズおよび複数の電解質入り口通路314aの総数は、電解質の流れを実質的に均等に分配するために、相対的に小さい圧力降下を引き起こすように選択されてよい。そのような例では、各電解質入り口通路314aのサイズおよび複数の電解質入り口通路314aの総数の選択は、電解質流動場のサイズおよび望ましい電解質の流量などの、リバランス・セルの特定の構成に固有の複数の要因に依存してよい。
【0069】
追加または代替の例では、電解質出口チャネル・セクション316は、電解質出口ポートに含まれている複数の開口部を通って電解質を分配するためにさらに構成されてよい。例えば、
図3の分解
図300では、2つの開口部を含んでいる電解質出口チャネル・セクション316が示されている。一部の例では、電解質出口チャネル・セクション316の開口部が電解質出口ポートの開口部にそれぞれ対応し得るように、電解質出口チャネル・セクション316に含まれる開口部の数は、電解質出口ポートに含まれる開口部の数に等しくてよい。このようにして、電極アセンブリ302にわたって電解質が均等に分配されてよく、実質的に妨げられない流れで、リバランス・セルから放出されてよい。他の例では、電解質出口チャネル・セクション316は、3つ以上の開口部または2つ未満の開口部(例えば、単一の開口部)を含んでよい。
【0070】
さらに、電極アセンブリ302が電極アセンブリの積み重ねに含まれる場合、電解質出口チャネル・セクション316、気体水素入り口チャネル・セクション318a、および気体水素出口チャネル・セクション318bが一直線になり、(下で説明される
図4A、4Bに示されているように)連続的な電解質出口チャネル、連続的な気体水素入り口チャネル、および連続的な気体水素出口チャネルをそれぞれ形成してよい。このようにして、電極アセンブリの積み重ねは、モジュール方式で形成されてよく、それによって、任意の実際の数の電極アセンブリ302が積み重ねられ、リバランス・セルに含まれてよい。
【0071】
さらに示されているように、複数の密封インサートがプレート304に貼り付けられるか、または他の方法でプレート304に結合されてよい(本明細書において使用されるとき、「貼り付ける」、「貼り付けられる」、または「貼り付けている」は、直接的または間接的関係を介して、1つのコンポーネントを別のコンポーネントに接着すること、取り付けること、接続すること、留めること、接合すること、結び付けること、または固定することを含むが、これらに限定されない)。例として、複数の密封インサートは、H
2気体の迂回を軽減することによって負極310を横切るH
2気体の流れを誘導するために、気体水素入り口チャネル密封インサート320aおよび気体水素出口チャネル密封インサート320bを含んでよい。詳細には、気体水素入り口チャネル密封インサート320aおよび気体水素出口チャネル密封インサート320bは、気体水素入り口チャネル・セクション318aおよび気体水素出口チャネル・セクション318bに隣接して、炭素発泡体306、正極308、および負極310を含んでいるプレート304の側面にそれぞれ貼り付けられるか、または他の方法で結合されてよい。一部の例では、
図4Aおよび4Bを参照してさらに詳細に説明されるように、気体水素入り口チャネル密封インサート320aおよび気体水素出口チャネル密封インサート320bは、気体水素入り口チャネル密封インサート320aおよび気体水素出口チャネル密封インサート320bが、プレート304との貼り付けまたは結合の位置から伸びて、正極308と部分的に重複することができるように、負極310のx-y平面と一致してよい。
【0072】
別の例として、複数の密封インサートは、別の電極アセンブリの気体水素入り口チャネル・セクションとの気体水素入り口チャネル・セクション318aの界面および別の電極アセンブリの気体水素出口チャネル・セクションとの気体水素出口チャネル・セクション318bの界面をそれぞれ密封するために、気体水素入り口チャネルOリング322aおよび気体水素出口チャネルOリング322bの各々をさらに含んでよい。詳細には、気体水素入り口チャネルOリング322aおよび気体水素出口チャネルOリング322bは、気体水素入り口チャネル・セクション318aおよび気体水素出口チャネル・セクション318bの周囲をそれぞれ囲むように、プレート304に貼り付けられるか、または他の方法で結合されてよい。
【0073】
別の例として、複数の密封インサートは、別の電極アセンブリとの電極アセンブリ302の界面を、その外縁で密封するために、オーバーボードOリング(overboard O-ring)324をさらに含んでよい。詳細には、オーバーボードOリング324は、電解質入り口ウェル312、複数の電解質入り口通路314a、小段314b、電解質出口チャネル・セクション316、気体水素入り口チャネル・セクション318a、および気体水素出口チャネル・セクション318bの各々の周囲を囲むように、プレート304に貼り付けられるか、または他の方法で結合されてよい。
【0074】
炭素発泡体306は、y軸に沿った小段314bと電解質出口チャネル・セクション316の間、およびx軸に沿った気体水素入り口チャネル・セクション318aと気体水素出口チャネル・セクション318bの間の、プレート304の空洞326に位置付けられてよい。詳細には、炭素発泡体306は、空洞326の基部を形成するプレート304の側面と面共有接触して位置付けられてよい。一部の例では、炭素発泡体306は、連続的なモノリシック要素として形成されてよく、一方、他の例では、炭素発泡体306は、2つ以上の炭素発泡体セクションとして形成されてよい。実施形態例では、炭素発泡体306は、導電性、透過性、および多孔性であってよく、それを通って電解質が複数の電解質入り口通路314aから重力供給されるための分配場を提供する。一部の例では、炭素発泡体306の細孔分布は10~100PPIであってよい。1つの例では、細孔分布は30PPIであってよい。追加または代替の例では、炭素発泡体306の透過性は0.02~0.5mm2であってよい。そのため、相対的に小さい圧力降下を目標にし、それによって、炭素発泡体306から正極308への電解質の対流を誘導するために、炭素発泡体306の全体的サイズに加えて、細孔分布および透過性の各々が選択されてよい。例えば、圧力降下の目標は、2~3mmの電解質の高さの上昇であってよい。
【0075】
一部の例では、炭素発泡体306は、流動場プレートの流動場構成によって誘導される対流によって電解質を正極308に輸送するように構成された流動場プレートに置き換えられてよい。例えば、流動場チャネルが、流動場プレートに、または流動場プレートのインサートに統合されてよい。流動場プレートに統合された場合の流動場の形状の例が、
図7A~7Bに示されており、下にさらに説明される。詳細には、流動場プレートは、複数の電解質入り口通路314aおよび電解質出口チャネル・セクション316の各々に流体結合されてよい。1つの例では、流動場プレートは、z軸に関して正極308の下に位置付けられた電極アセンブリ302のプレート304内で一体的に形成されてよい。他の例では、流動場プレートは、分離した取り外し可能なコンポーネントであってよい。
【0076】
一部の例では、
図5A~5Eを参照して下で詳細に説明されるように、流動場構成は、プレート304の炭素発泡体306に埋め込まれた互いにかみ合った流動場構成、部分的に互いにかみ合った流動場構成、または蛇行する流動場構成であってよい。一部の例では、各電極アセンブリ302は、各他の電極アセンブリ302と同様の(例えば、互いにかみ合った、部分的に互いにかみ合った、蛇行する、などの)構成の流動場構成と界面してよい。他の例では、
図2Aおよび2Bのリバランス・セル202内の特定の電極アセンブリ302の位置に応じて、電極アセンブリの積み重ね内の電極アセンブリ302の中で、複数の異なる流動場構成が提供されてよい。このようにして、電解質が、電解質入り口ポート(例えば、
図2Aおよび2Bの電解質入り口ポート206)から、電極アセンブリの積み重ね内の正極308とそれぞれ界面する流動場プレートに方向付けられてよく、流動場プレートは、互いにかみ合った流動場構成、部分的に互いにかみ合った流動場構成、蛇行する流動場構成、またはこれらの組み合わせで構成されている。
【0077】
特定の例では、
図4Aおよび4Bを参照して下でさらに詳細に説明されるように、炭素発泡体306が流動場プレート(本明細書では、「電解質流動場プレート」とも呼ばれる)に置き換えられることに加えて、別の流動場プレート(本明細書では、「気体水素流動場プレート」とも呼ばれる)が、z軸に関して正極308と反対側の負極310と界面してよい。しかし、他の例では、電解質流動場プレートが(例えば、炭素発泡体306を置き換えて)含まれてよく、気体水素流動場プレートが存在しなくてよい。さらに他の例では、気体水素流動場プレートが(例えば、負極310と界面して)含まれてよく、電解質流動場プレートが存在しなくてよい。
【0078】
正極308は、z軸に沿ってプレート304と反対側の炭素発泡体306の側面と面共有接触して、空洞326に位置付けられてよい。実施形態例では、正極308は、毛細管作用によって、炭素発泡体306を通って流れる電解質を負極310と接触させることができる、毛細管作用で運ぶ導電性の炭素フェルト、スポンジ、またはメッシュであってよい。したがって、一部の例では、正極308は、導電性かつ多孔性であってよい(ただし、そのような例では、炭素発泡体306より多孔性でない)。1つの例では、炭素発泡体306の多孔性が事前に定義された(例えば、毛細管作用で上へ正極308内に運ぶことを促進するほど十分な固形物を保持するように、多孔性の上側しきい値を下回り、炭素発泡体306を通る電解質の流れを妨げないように、多孔性の下側しきい値を上回る)範囲内であることができる場合、電解質が、毛細管作用で正極308内に運ばれてよい。
【0079】
追加または代替の例では、(例えば、正極308の多孔性のしきい値に達する場合などの、少なくとも、電解質を毛細管作用で運ぶことを促進するには少なすぎる正極308の固形物が残るまで)正極308の多孔性を増やして、正極308の吸水性の各々が減少してよく、正極308の透過性が増大してよい。一部の例では、正極308の表面は、(例えば、完全な電解質の湿潤を促進し、それによってイオン導電媒体を形成することによって)望ましいリバランス・セルの動作のために十分に親水性であってよい。そのような例では、正極308の全体的親水性が、その表面をコーティングするか、または処理することによって増やされてよい。さらに、毛細管作用で正極308内に運ばれる電解質の一部に加えて、H2気体の少なくとも一部が正極308に入ることがあるが、正極308は、その上のH2気体の大部分とその下の電解質の大部分の間のセパレータと見なされてよい。
【0080】
一部の例では、正極308および負極310の各々は、負極310の触媒表面で電解質をH2気体と接触させるときに、境界層膜にわたる相間物質輸送損失が減らされ、それによってイオンおよび陽子の移動を促進することができるように、(例えば、個別の粒子または複数の要素とは対照的に)連続的なモノリシック要素として形成されてよい。これに対して、個々に固まった触媒粒子を含んでいる充填層構成は、個々の粒子を取り囲む、物質輸送を制限する境界層膜を含んでよく、それによって、電解質の大部分から粒子の表面への電解質の物質輸送の速度を減らす。
【0081】
(毛細管作用で運ばれた)電解質、負極310の触媒表面、およびH2気体の間の三相接触界面が、それを通る陽子(例えば、H+)およびイオンの移動(H3O+)のために形成され得るように、負極310が、z軸に沿って炭素発泡体306と反対側の正極308の側面と面共有接触して空洞326に位置付けられてよい。それと共に、正極308は、電子が電解質の表面に移動して、そこでFe3+イオンを還元するための導電経路を提供することによって、全体的電子抵抗を減らしてよい。
【0082】
実施形態例では、負極310は、金属触媒がコーティングされた、多孔性の非導電材料または導電性炭素基板であってよい。一部の例では、多孔性の非導電材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレンなどを含んでよい。一部の例では、導電性炭素基板は、炭素布または炭素紙を含んでよい。一部の例では、金属触媒は、貴金属触媒を含んでよい。一部の例では、貴金属触媒は、Ptを含んでよい。追加または代替の例では、貴金属触媒は、Pd、Rh、Ru、Ir、Ta、またはその合金を含んでよい。一部の例では、コストを考慮して、導電性炭素基板上で支持される相対的に少量(例えば、0.2~0.5wt%)の貴金属触媒が採用されてよい。しかし、実際には、貴金属触媒の量は、特に制限されなくてよく、リバランス・セルの反応の望ましい速度およびリバランス・セルの期待される寿命のうちの1つまたは複数に基づいて選択されてよい。さらに、貴金属触媒に含まれる合金は、コストを減らし、貴金属触媒の腐食安定性を向上させるために利用されてよい。例えば、PtへのRhの10%の追加は、Fe3+によるPtの腐食を98%以上減らすことができる。他の例では、金属触媒は、鉄溶液および他のそのような酸性環境(例えば、硫化モリブデン)における安定性のために選択された非貴金属触媒を含んでよい。1つの例では、負極310は、1.0mg/cm2のPtがコーティングされた炭素布を含んでよく、(例えば、疎水性のために)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)結合剤を使用して結合された微多孔層を含んでよい。実際、PTFE結合剤の含有は、他の結合剤を使用して形成された電極アセンブリと相対的に、長期間にわたるリバランス・セルの性能の耐久性を向上させることができる。
【0083】
貴金属触媒がPtを含んでいる場合などの一部の例では、負極310の浸漬が、最終的に貴金属触媒の腐食をもたらすことがある。他の例では、
図2Aおよび2Bを参照して上でさらに詳細に説明されたように、重力供給によって電解質の流れが炭素発泡体306を通り、電解質出口チャネル・セクション316に向かって引き出されるときに、貴金属触媒が相対的に乾燥したままであり得るように、(電極アセンブリの積み重ねおよびリバランス・セル全体と共に)電極アセンブリ302が、リバランス・セルが乗っている表面に対して傾けられるか、または傾斜してよい(例えば、z軸が、重力の方向と非平行であってよい)。したがって、一部の例では、電極アセンブリ302は、水平であるか、またはリバランス・セルが乗っている表面に対して、0°~30°の角度で傾斜してよい。
【0084】
実施形態例では、炭素発泡体306、正極308、および負極310の各々を含んでいる電極アセンブリ302が、z軸に沿って圧縮されてよく、正極308が、特定の圧縮圧力の下で、炭素発泡体306および負極310よりも大きいゆがみを有する。したがって、空洞326の深さは、炭素発泡体306の厚さ、正極308の厚さ、正極308の望ましい圧縮、および負極310の厚さに基づいて選択されてよい。詳細には、空洞326の深さは、(電解質の流れを妨げることがある、炭素発泡体306の過大応力および破砕を防ぐために)実質的に完全な圧縮後の炭素発泡体306の厚さおよび実質的に完全な圧縮後の正極308の厚さの合計の深さの下側しきい値を上回り、(H2気体および電解質の不十分な接触をもたらすことがある、正極308のゼロ圧縮および場合によってはすき間を防ぐために)炭素発泡体306の厚さおよび正極308の厚さの合計の深さの上側しきい値未満になるように選択されてよい。
【0085】
例えば、炭素発泡体306の厚さが6mmであり、正極308の厚さが3.4mmであり、(0.01MPaの望ましい圧縮圧力を達成するために)正極308の望ましい圧縮が0.4mmであり、負極310の厚さが0.2mmである例では、空洞326の深さは9.2mm(=3.4mm+6mm+0.2mm-0.4mm)であってよい。別の例として、空洞326の深さが0.86~21mmになることができるように、炭素発泡体306の厚さは2~10mmであってよく、正極308の厚さは1~10mmであってよく、(0.09MPaの望ましい圧縮圧力を達成するために)正極308の望ましい圧縮は0~2.34mmであってよく、負極310の厚さは0.2~1mmであってよい。追加または代替の例では、正極308の厚さは、炭素発泡体306の厚さの20%~120%であってよい。1つの例では、正極308の厚さは、炭素発泡体306の厚さの100%~110%であってよい。1つの例では、空洞326の深さは、炭素発泡体306の破砕強度にさらに依存してよい(例えば、破砕強度を減らして、空洞326の深さが増やされてよい)。
【0086】
例えば、空洞326の深さが9.2mmである場合(例えば、正極の望ましい圧縮が0.4mmである場合)、発泡体の破砕安全係数(FOS:factor of safety)は5.78であってよい。一部の例では、発泡体の破砕FOSは、0.34の最小値を有してよく、1未満の発泡体の破砕FOS値は、少なくとも一部の破砕が予想されることを示すことができる。一部の例では、炭素発泡体306の破砕強度は、製造中の炭素発泡体306の熱処理によって、(1つの例では、0.08MPaから0.03MPaに)減らされることがある。一般に、より薄い電極アセンブリ302は、リバランス・セルの縮小された全体的サイズおよび電極アセンブリ302にわたる減らされた電気抵抗をもたらすことができるため(例えば、電解質の流れが負極310により近くなることができるため)、空洞326の深さが(例えば、上記の制約内で)できるだけ低くなるように電極アセンブリ302が構成されてよいということが理解されるであろう。
【0087】
このようにして、電極アセンブリ302は、互いに面共有接触しており、連続して導電性である、炭素発泡体306、ならびに正極308および負極310の界面する対の連続的積み重ねを含んでよい。詳細には、第1の界面が、正極308と炭素発泡体306の間に形成されてよく、第2の界面が、正極308と負極310の間に形成されてよく、第2の界面は、正極308を越えて第1の界面と反対の側にあり、炭素発泡体306、正極308、および負極310の各々は導電性であってよい。したがって、電極アセンブリ302を通って流れる電流が外部負荷を通って導かれ得ないように、電極アセンブリ302は内部で短絡してよい。
【0088】
実施形態例では、前述したように、強制対流が、(例えば、
図3に示されていない、負極310と界面する流動場プレートを介して)電極アセンブリ302内への、負極310を横切るH
2気体の流れを誘導してよい。そこで、次の方程式(4a)(例えば、方程式(1)の逆反応)によって、H
2気体が負極310の触媒表面と反応してよい。
1/2H
2→H
++e
- (アノード半反応) (4a)
陽子(H
+)および電子(e
-)が、負極310を横切って、正極308内に伝導されてよい。炭素発泡体306を介して電極アセンブリ302を通って方向付けられた電解質は、毛細管作用で正極308内に運ばれてよい。正極308と負極310の間の第2の界面で、またはその近くで、次の方程式(4b)によって、電解質内のFe
3+が還元されてよい。
Fe
3++e
-→Fe
2+ (カソード半反応) (4b)
方程式(4a)および(4b)を合計して、次の方程式(4)として、電解質リバランス反応が得られてよい。
Fe
3++1/2H
2→Fe
2++H
+ (電解質リバランス) (4)
【0089】
電極アセンブリ302が内部で短絡しているため、電極アセンブリ302のセル電位は、次のようにゼロに駆動される。
0=(E
pos-E
neg)-(η
act+η
mt+η
ohm) (7)
ここで、E
posは正極308の電位であり、E
negは負極310の電位であり、η
actは活性化過電圧であり、η
mtは物質輸送過電圧であり、η
ohmはオーム過電圧である。
図3で構成されたような電極アセンブリ302の場合、η
mtおよびη
actは、無視できると仮定されてよい。さらに、η
ohmは、次のように電解質の過電圧η
electrolyteおよび正極308を形成する炭素フェルトの過電圧η
feltに依存してよい。
η
ohm=η
electrolyte+η
felt (8)
したがって、電極アセンブリ302の性能は、少なくとも電解質の電気抵抗率σ
electrolyteおよび炭素フェルトの電気抵抗率σ
feltによって制限されてよい。電解質の導電率および炭素フェルトの導電率は、それぞれ、次のように与えられ得る電解質の抵抗R
electrolyteおよび炭素フェルトの抵抗R
feltにさらに依存してよい。
R
electrolyte=σ
electrolyte×t
electrolyte/A
electrolyte (9)
R
felt=σ
felt×t
felt/A
felt (10)
ここで、t
electrolyteは電解質の厚さ(例えば、電解質の表面の高さ)であり、t
feltは炭素フェルトの厚さ(例えば、正極308の厚さ)であり、A
electrolyteは電解質(の表面)の有効面積であり、A
feltは炭素フェルトの有効面積である。したがって、電極アセンブリ302の性能は、炭素フェルト内の電解質の表面の位置、ならびにしたがって、炭素発泡体306にわたる電解質の分布、および正極308を形成する炭素フェルト内に毛細管作用で運ばれる電解質の量に基づいて、さらに制限されてよい。
【0090】
RelectrolyteおよびRfeltを決定した後に、電極アセンブリ302の電流Iassemblyが、次のように決定されてよく、
Iassembly=(Epos-Eneg)/(Relectrolyte+Rfelt) (11)
電解質リバランス反応の速度vrebalancing(例えば、Fe3+の還元の速度)が、次のようにさらに決定されてよい。
vrebalancing=Iassembly/(nFArebalancing) (12)
ここで、nは負極310を通って流れる電子の数であり、Fはファラデー定数であり、Arebalancingは電解質リバランス反応の有効面積(例えば、電解質の表面と負極310の間の界面の面積)である。例として、tfelt=3mmを有する圧縮されていない炭素フェルトの場合、vrebalancingは、113mol/m2hrの最大値を有してよい。
【0091】
ここで
図4Aおよび4Bを参照すると、断面
図400および拡大差し込み
図450がそれぞれ示されており、断面
図400および拡大差し込み
図450の各々は、リバランス・セル202内のH
2気体の流れの例示的な態様を示している。詳細には、拡大差し込み
図450は、破線楕円410によって境界を定められた断面
図400の一部を拡大している。
図4Aおよび4Bに示されているように、リバランス・セル202は、各電極アセンブリ302の気体水素入り口チャネル・セクション318aが、各他の電極アセンブリ302の気体水素入り口チャネル・セクション318aと共に連続的な気体水素入り口チャネル404を形成するように揃えられて、個別の電極アセンブリ302の積み重ねとして形成された、電極アセンブリの積み重ね402を含んでよい。気体水素入り口プレナム406が、気体水素入り口チャネル404にさらに含まれてよく、気体水素入り口プレナム406は、気体水素入り口チャネル404を気体水素入り口ポート210に流体結合する。各気体水素入り口チャネルOリング322aおよびオーバーボードOリング324は、電極アセンブリ302の対の間の界面で気体水素入り口チャネル404を密封してよい。断面
図400および拡大差し込み
図450では、リバランス・セル202の切断された部分の詳細が示されているということ、および(例えば、
図2Aおよび2Bに示された)リバランス・セル202の追加の特徴が示されないことがあるということが、理解されるであろう。さらに、特定の応用に関して、断面
図400に示された電極アセンブリ302より多いか、またはより少ない電極アセンブリ302が電極アセンブリの積み重ね402に含まれてよいということが、理解されるであろう(しかし、一部の実施例では、スケールアップ性能は、50%以下のH
2気体の利用でのH
2気体の流れに実質的に反応しないことがある)。さらに、
図4Aおよび4Bを参照して気体水素入り口チャネル404および隣接するコンポーネントの構造的特徴が詳細に説明されるが、(例えば、各電極アセンブリ302の気体水素出口チャネル・セクション318b(
図3を参照)を揃えることによって形成された)対応する気体水素出口チャネルおよび隣接するコンポーネントの構造的特徴が、(気体水素出口チャネルが行き止まりであってよいということ、または気体水素出口チャネルに含まれる気体水素出口プレナムが、x軸およびz軸に沿って気体水素入り口プレナム406と反対側に位置付けられてよいということを除いて)同様に構成されてよいということが、理解されるであろう。
【0092】
図に示され、矢印408aによって示されているように、H
2気体が、気体水素入り口ポート210を介して気体水素入り口チャネル404に入り、最初に、気体水素入り口プレナム406内に流れ、次に、z軸に沿って正方向に気体水素入り口チャネル・セクション318aを連続的に通ってよい。気体水素入り口プレナム406のサイズおよび形状は、特に制限されないが、相対的に高い流速および圧力降下が不十分なH
2気体の分配をもたらすことを防ぐように、気体水素入り口プレナム406の最小サイズ(例えば、最小体積、最小流路幅)が選択されてよい。さらに、気体水素入り口チャネル404が、重力の方向から離れてz軸の正方向に沿って伸びるように(ただし、
図2Aおよび2Bを参照して上で詳細に説明されたように、重力の方向と正反対ではない)、傾斜支持体220がリバランス・セル202を傾けてよく、H
2気体が、z軸の正方向に沿った気体水素入り口チャネル404に沿って対流してよい。
【0093】
さらに図に示され、矢印408bによって示されているように、H2気体の少なくとも一部が、各電極アセンブリ302の気体水素入り口チャネル密封インサート320aを横切る気体水素入り口チャネル404から、気体水素入り口チャネル404に流体結合されて各電極アセンブリ302と界面する1つまたは複数の気体水素入り口通路452内に流れてよい。1つの例では、特定の電極アセンブリ302の1つまたは複数の気体水素入り口通路452と反対側の特定の電極アセンブリ302の気体水素入り口チャネル密封インサート320aの表面が、特定の電極アセンブリの1つまたは複数の気体水素入り口通路452と反対側の特定の電極アセンブリ302の負極310の表面と同じx-y平面と一致してよい。さらに、一部の例では、特定の電極アセンブリ302の気体水素入り口チャネル密封インサート320aが、特定の電極アセンブリ302のプレート304との貼り付けまたは結合の位置から伸び、z軸に沿って特定の電極アセンブリ302の正極308と部分的に重複してよく、それによって、気体水素入り口チャネル密封インサート320aのエッジで正極308を密封するのに役立つ。
【0094】
実施形態例では、1つまたは複数の気体水素入り口通路452が、特定の電極アセンブリ302に完全には含まれなくてよく、代わりに、電極アセンブリの積み重ね402内の電極アセンブリ302の隣接する対の間の1つまたは複数のすき間として形成されてよい。一部の例では、H
2気体が、特定の電極アセンブリ302と界面する1つまたは複数の気体水素入り口通路452内に強制的に対流されるように、特定の電極アセンブリ302と界面する1つまたは複数の気体水素入り口通路452は、流動場構成で構成されてよい。詳細には、1つまたは複数の気体水素入り口通路452は、流動場構成で構成されたとき、特定の電極アセンブリ302の負極310と界面する流動場プレートから形成されてよい。1つの例では、特定の電極アセンブリ302の負極310と界面する流動場プレートは、z軸に関して隣接する電極アセンブリ302の炭素発泡体306の下に位置付けられた隣接する電極アセンブリ302のプレート304内で一体的に形成されてよい。他の例では、特定の電極アセンブリ302の負極310と界面する流動場プレートは、分離した取り外し可能なコンポーネントであってよい。さらに、z軸に関して最上部の流動場プレートは、どの電極アセンブリ302とも一体的に形成されなくてよく、代わりに、分離した取り外し可能なコンポーネントまたは別のコンポーネント(例えば、
図2Aおよび2Bのセル筐体204)の一体的特徴のいずれかとしてリバランス・セル202に含まれてよい。
【0095】
一部の例では、
図5A~5Eを参照して下で詳細に説明されるように、流動場構成は、互いにかみ合った流動場構成、部分的に互いにかみ合った流動場構成、または蛇行する流動場構成であってよい。一部の例では、各電極アセンブリ302は、各他の電極アセンブリ302と同様の(例えば、互いにかみ合った、部分的に互いにかみ合った、蛇行する、などの)構成の流動場構成と界面してよい。他の例では、(例えば、リバランス・セル202内の特定の電極アセンブリ302の位置に応じて)電極アセンブリの積み重ね402内の電極アセンブリ302の中で、複数の異なる流動場構成が提供されてよい。このようにして、H
2気体が、気体水素入り口ポート210から、電極アセンブリの積み重ね402の負極310とそれぞれ界面する流動場プレートに方向付けられてよく、流動場プレートは、互いにかみ合った流動場構成、部分的に互いにかみ合った流動場構成、蛇行する流動場構成、またはこれらの組み合わせで構成されている。
【0096】
図にさらに示され、矢印408cによって示されているように、H2気体は、(例えば、負極310の触媒表面の1m2当たり10~50l/分の流量で)電極アセンブリの積み重ね402の負極310を横切って対流されてよい。一部の例では、各電極アセンブリ302と界面する流動場プレートは、対流を支援し、各負極310を横切ってH2気体を分配することができる。H2気体は、アノード半反応で電極アセンブリの積み重ね402の負極310の触媒表面と反応して(方程式(4a)を参照)陽子および電子を生成し、次に、各正極308および炭素発泡体306に向かって流れてよい。一部の例では、H2気体の少なくとも一部が、未反応のままであってよく、矢印408cに沿って電極アセンブリの積み重ね402の負極310を横切って流れてもよい。
【0097】
ここで
図5A~5Eを参照すると、概略
図500、520、540、および560がそれぞれ示されており、概略
図500、520、540、560、および580は、例示的な互いにかみ合った流動場構成、例示的な部分的に互いにかみ合った流動場構成、第1の例示的な蛇行する流動場構成、第2の例示的な蛇行する流動場構成、および直線状の流動場構成をそれぞれ示している。互いにかみ合った流動場構成は、不連続な電解質チャネルまたは通路を含み、強制対流を促進し、あふれおよび気体拡散制限を軽減する。部分的に互いにかみ合った流動場構成は、電解質チャネルの入り口および/または出口に近接して位置する電解質チャネルの狭くなったセクションを含む、連続的な電解質チャネルを含む。これによって、流動場が、互いにかみ合った流動場構成と類似する強制対流効果を有することを可能にするが、流動場を横切る電解質の連続的な流れも可能にする。例えば、狭くなったセクションは、電解質が正極内にまだ強制されながら、気体が流動場から出る(例えば、流動場プレートから離れる)ための低制限経路(low restriction paths)を提供する迂回チャネルであってよい。その結果、電解質チャネル内の気体の蓄積が軽減され、そうでなければ、この気体の蓄積は、電極アセンブリの正側での圧力の蓄積に起因して、電極アセンブリの負側での不均一な流体流分布およびあふれにつながることがある。
【0098】
1つの例では、
図5A~5Eに示された流動場構成は、正極308と界面する炭素発泡体の面で、
図3A~4Bの炭素発泡体306内に形成されてよい。追加または代替の実施形態では、
図6~7Bを参照して下でさらに説明されるように、特定の電極アセンブリに関して、炭素発泡体および分離したプレートが、
図5A~5Eの例示的な流動場構成のいずれかを有する統合された流動場を含む流動場プレートに置き換えられてよい。
【0099】
基準軸のセット501は、示されているコンポーネントの相対的位置付けを表すため、および
図5A~5Eの図間の比較のために提供されており、軸501はx軸、y軸、およびz軸を示している。
図5A~5Eに示された相対的寸法が例示的であるということ、および他の(例えば、より広い通路、より多くの数の通路または屈曲部などを含んでいる)流動場構成が本開示の範囲内であると見なされるということが、理解されるであろう。例えば、流動場構成を形成する通路は、通路の入り口から通路の出口または端部に向かって徐々に(例えば、実質的にゼロの高さから通路の全深さまたは全深さの近くまで)高さが伸びる一連の段(例えば、8つの段、ただし段の総数は、特定の応用のために流体拡散を変更し、それによって性能改善するために、増やされるか、または減らされてよい)を含んでよい。
【0100】
図5Aの概略
図500に示されているように、例示的な互いにかみ合った流動場構成は、入り口チャネル506aおよび出口チャネル506bを含んでよい。流体(例えば、H
2気体、電解質)が、第1の入り口チャネル506aを通って、z軸と平行に流動場に入り、矢印504によって示されているように、x軸に沿って複数の互いにかみ合った通路502内に流れてよい。複数の互いにかみ合った通路502の形状に応じて、流体は、最初に端壁508に当たってよく、x軸と平行に端壁508の上に強制的に対流されてよい。代替として、流体は、通路を通って流れた後に、出口チャネル506bに近接する端壁508に当たってよく、同様に端壁508の上に強制的に対流されてよい。
【0101】
例えば、流体は、入り口チャネル506aから複数の互いにかみ合った通路502の第1の通路502a内に、妨げられずに流れてよい。出口チャネル506bに近接する第1の通路502aの端部で、流体は、端壁508のうちの1つの上にz軸と平行に流れるように強制されてよい。これに対して、複数の互いにかみ合った通路502の第2の通路502bで、入り口チャネル506aからの流体が、第2の通路502b内に流れる前に、入り口チャネル506aに近接して位置する端壁508のうちの1つの上に(やはりz軸に沿って)強制されてよい。
【0102】
一部の例では、例示的な互いにかみ合った流動場構成が多孔質媒体(
図3~4Bの正極308または負極310など)と界面する場合、流体の一部が、(例えば、入り口チャネル506aから出口チャネル506bに移動するのではなく)端壁508の上に強制的に対流された後に、多孔質媒体に入ってよい。1つの例では、流体の一部が、実質的にすべての流体であってよい。図に示されているように、通路502の各々が、入り口チャネル506aまたは出口チャネル506bに開かれていて(例えば、続いていて)よい。しかし、一部の例では、出口チャネル506bが、他の場所で入り口チャネル506aに流体結合されてよい。したがって、1つの例では、出口チャネル506bは、代わりに流体の追加の入り口チャネルとして機能してよい(例えば、流体が、入り口チャネル506aおよび出口チャネル506bの各々を通って流動場に入ってよい)。追加または代替の例では、流体の出口チャネルは、チャネル506a、506bのうちのどちらかでなくてよい。例えば、出口チャネルは、
図2Aの圧力解放出口ポート214などの圧力解放出口ポートであってよく、多孔質媒体を通る流体の通過の後に、圧力解放出口ポートを通って流体が流れてよい。流体がH
2気体であり、多孔質媒体が
図3~4Bの負極310である特定の例では、流体が負極310を連続的に通過し、負極310の反対側で流れている電解質に入り、(流れている電解質に流体結合された)圧力解放出口ポート214を介して放出されてよい。
【0103】
図5Bの概略
図520に示されているように、例示的な部分的に互いにかみ合った流動場構成は、入り口チャネル526aおよび出口チャネル526bを含んでよい。流体(例えば、H
2気体、電解質)が、z軸と平行に入り口チャネル526aを通って流動場に流れて入り、矢印524によって示されているように、x軸に沿って複数の部分的に互いにかみ合った通路522を通って流れてよい。一般に、流体は、端壁528を2分する複数の部分的に互いにかみ合った通路522の収縮したセクション523を除いて、
図5Aに関して上で説明された方法と同様の方法で移動してよい。
【0104】
一部の例では、例示的な部分的に互いにかみ合った流動場構成が多孔質媒体(
図3~4Bの正極308または負極310など)と界面するが、複数の部分的に互いにかみ合った通路522の各々が入り口チャネル526aおよび出口チャネル526bの各々に開かれ得る(例えば、続くことができる)場合、流体の一部が、端壁528の上に強制的に対流された後に、多孔質媒体に入ってよい。例えば、この一部は、流体の50%より大きくてよい。流体の一部が多孔質媒体内に強制されてよいが、収縮したセクション522aの存在が、気体が流体から外へ拡散し、複数の互いにかみ合った通路522を通って出口チャネル526bに続くことを可能にしてよい。収縮したセクション522aの各々の厚さは、対応する通路522の最大の厚さ(例えば、
図5Eに示されているように、入り口が実質的に構築されていない直線チャネル流動場構成)から、実質的にゼロの厚さ(例えば、
図5Aの例示的な互いにかみ合った流動場構成などの、完全に互いにかみ合った流動場構成)までの範囲にわたって、可変であってよい。
【0105】
図5Cの概略
図540に示されているように、第1の例示的な蛇行する流動場構成は、入り口チャネル546aおよび出口チャネル546bを含んでよい。流体(例えば、H
2気体、電解質)は、z軸と平行に入り口チャネル546aを通って流れてよく、流体は、入り口チャネル546aから、x軸と平行に、第1の例示的な流動場構成の蛇行通路542の入り口542a内に強制的に対流されてよい。矢印544によって示されているように、流体は、流体が蛇行通路542の出口542bから出口チャネル546bに放出されるまで、蛇行通路542内の90°の屈曲部で方向を変えながら、x軸およびy軸と平行に蛇行通路542に沿って流れてよい。さらに図に示されているように、第1の例示的な蛇行する流動場構成は、y軸と平行な蛇行通路542のより長い直線セクションおよびx軸と平行な蛇行通路542のより短い直線セクション(例えば、U字型屈曲部の基部)を含んでよい。追加または代替の例では、同様の構成または類似する構成の複数の蛇行通路542が、入り口チャネル546aを出口チャネル546bに流体結合してよい。一部の例では、第1の例示的な蛇行する流動場構成が多孔質媒体(
図3~4Bの正極308または負極310など)と界面するが、蛇行通路542が入り口チャネル546aおよび出口チャネル546bの各々に開かれ得る場合、流体の実質的にすべてが、(例えば、入り口チャネル546aから出口チャネル546bに移動するのではなく)入り口542aを介して蛇行通路542内に強制的に対流された後に、多孔質媒体に入ってよい。しかし、1つの例では、蛇行通路542は、出口542bを含まなくてよく、したがって、(例えば、第1の例示的な蛇行する流動場構成が行き止まりであるなどの場合に)出口チャネル546bに流体結合しなくてよい。
【0106】
図5Dの概略
図560に示されているように、第2の例示的な蛇行する流動場構成は、入り口チャネル566aおよび出口チャネル566bを含んでよい。流体(例えば、H
2気体、電解質)は、z軸と平行に入り口チャネル566aを通って流れてよく、流体は、入り口チャネル566aから、x軸と平行に、第2の例示的な流動場構成の蛇行通路562の入り口562a内に強制的に対流されてよい。矢印564によって示されているように、流体は、流体が蛇行通路562の出口562bから出口チャネル566bに放出されるまで、蛇行通路562内の90°の屈曲部で方向を変えながら、x軸およびy軸と平行に蛇行通路562に沿って流れてよい。さらに図に示されているように、第2の例示的な蛇行する流動場構成は、x軸と平行な蛇行通路562のより長い直線セクションおよびy軸と平行な蛇行通路562のより短い直線セクション(例えば、U字型屈曲部の基部)を含んでよい。追加または代替の例では、同様の構成または類似する構成の複数の蛇行通路562が、入り口チャネル566aを出口チャネル566bに流体結合してよい。一部の例では、第2の例示的な蛇行する流動場構成が多孔質媒体(
図3~4Bの正極308または負極310など)と界面するが、蛇行通路562が入り口チャネル566aおよび出口チャネル566bの各々に開かれ得る場合、流体の実質的にすべてが、(例えば、入り口チャネル566aから出口チャネル566bに移動するのではなく)入り口562aを介して蛇行通路562内に強制的に対流された後に、多孔質媒体に入ってよい。1つの例では、蛇行通路562は、出口562bを含まなくてよく、したがって、(例えば、第2の例示的な蛇行する流動場構成が行き止まりであるなどの場合に)出口チャネル566bに流体結合しなくてよい。
【0107】
ここで
図5Eを参照すると、概略
図580は、複数の通路582を含む直線状の流動場構成を示している。複数の通路582は、入り口チャネル584aと出口チャネル584bの間を直線的に伸び、複数の通路582は、互いに平行に揃えられ、y軸に沿って流動場にわたって均等に間隔を空けられる。流体(例えば、H
2気体、電解質)は、z軸と平行に入り口チャネル584aを通って流れてよく、流体は、入り口チャネル584aから、複数の通路582の各々の入り口588a内に強制的に対流されてよい。流体は、次に、矢印586によって示されているように、流体が複数の通路582の各々の出口588bで複数の通路582から出口チャネル584bに放出されるまで、x軸と平行に複数の通路582を通って流れてよい。出口チャネル584bで、流体がz軸と平行に流れてよい。一部の例では、直線状の流動場構成が多孔質媒体(
図3~4Bの正極308または負極310など)と界面するが、複数の通路582が入り口チャネル584aおよび出口チャネル584bの各々に開かれ得る場合、流体の実質的にすべてが、(例えば、入り口チャネル584aから出口チャネル584bに移動するのではなく)複数の通路582の各々の入り口588aを介して複数の通路582内に強制的に対流された後に、多孔質媒体に入ってよい。しかし、1つの例では、複数の通路582は、出口588bを含まなくてよく、したがって、(例えば、直線状の流動場構成が行き止まりであるなどの場合に)出口チャネル584bに流体結合しなくてよい。
【0108】
前述したように、炭素発泡体を使用して構成された電極アセンブリのプレート、例えば、
図3~4Bのプレート304および炭素発泡体306は、統合された電解質チャネルを含んでいる流動場プレートに置き換えられてよい。統合された電解質チャネルを含んでいる流動場プレートの使用は、コストを減らし、破損しにくい流動場プレートを提供し、圧力損失に対する制御を向上させることができる。
図3に示されているようなプレート304および炭素発泡体306の組み合わせに類似する方法で電極アセンブリ内に位置付けられ得る流動場プレートの例が、
図6A~6Bに示されている。x軸、y軸、およびz軸を示す一連の参照601が提供されている。
【0109】
最初に
図6Aを参照すると、流動場プレート600は、プラスチックまたは他のポリマーなどの、
図3~4Bのプレート304と同様の材料で形成されてよい。流動場プレート600は、正極604(流動場プレート600から間隔を空けられて示されている)と界面するように構成された面602を含んでよく、正極604は、負極606とさらに面共有接触する。流動場プレート600の面602は中央領域608を含み、中央領域608内に、複数の電解質チャネルまたは通路を備えている流動場610が形成されてよい。例として、流動場プレート600の製造中に、流動場が流動場プレート600の中央領域608内に成形されるか、または機械加工される。
【0110】
代替として、
図6Bに示されているように、流動場プレート650は、流動場プレート650の中央領域656に位置付けられ得るインサート652(
図6Bでは、流動場プレート650から間隔を空けられて示されている)と適応されてよい。中央領域656は、インサート652を受け取ってインサート652に結合するように構成された、面658内の領域であってよい。そのような例では、流動場は、代わりに、正極の方を向いているインサート652の表面内に成形されるか、または機械加工されてよく、インサート652は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの、化学的かつ物理的に適合するポリマーで形成されてよい。インサート652は、流動場プレート650が電極アセンブリ内で組み立てられるときに、接着剤、溶接などによって、または圧縮によって、中央領域656に結合されてよい。流動場を含む既存のプレートを改造することが望ましい例では、インサート652は、直接統合された流動場を含んでいる
図6Aの流動場プレート600に類似する流体流および圧力制御を実現するために使用されてよい。
【0111】
一部の例では、流動場プレート(例えば、
図6Aの流動場プレート600または
図6Bの流動場プレート650)の流動場は、
図5A~5Eに示された構成のいずれかに類似する構成を有してよい。代替として、別の例では、部分的に互いにかみ合った流動場は、先細の通路の入り口および出口で圧力を制御するように成形された先細のチャネルまたは通路に加えて、流動場からの気体(例えば、H
2)の漏れを活発にするための部分的チャネルを含む流動場プレート内に統合されてよい。そのため、流動場プレートは、電極アセンブリの正極に結合され、正極と界面してよい。流動場プレートの表面内または流動場プレートのインサートの面内に直接統合され得る部分的に互いにかみ合った通路を含む正の互いにかみ合った流動場(PIDFF:positive interdigitated flow field)700の例が、
図7Aに示されている。流動場の入り口領域の詳細な図が、
図7Bに示されている。
【0112】
PIDFF700は、z軸と平行にPIDFF700を横切って直線的に伸びる複数の部分的に互いにかみ合った通路702を含む。入り口チャネル704を通って流れる流体(例えば、正電解質、H2気体)は、矢印708によって示されているように、入り口チャネル704を複数の互いにかみ合った通路702の入り口710に流体結合する分配マニホールド706内に対流されてよい。流体は、矢印714によって示されているように、複数の部分的に互いにかみ合った通路702の入り口710から出口712に流れ、出口チャネル716内に放出されてよい。さらに、流体は、正のy軸に沿って正極内に流れることに加えて、負のy軸に沿って流れて、複数の部分的に互いにかみ合った通路702に戻り、出口712を通って流動場から出てもよい。
【0113】
複数の互いにかみ合った通路702は、x軸に沿って交互パターンで配置された2つの通路形状、例えば、通路の第1のセットおよび通路の第2のセットを含む。通路の第1のセットの第1の通路702aは、先細である第1の入り口710aおよび直線状である第1の出口712aを含んでよく、一方、通路の第2のセットの第2の通路702bは、直線状である第2の入り口710bおよび先細である第2の出口712bを含んでよい。第1の入り口710aの形状が、第2の出口712bの形状に類似してよいが、向きが反転されており、一方、第2の入り口710bの形状が、第1の出口712bの形状に類似してよいということが、理解されるであろう。複数の部分的に互いにかみ合った通路702の入り口710が、
図7Bにさらに詳細に示されている。
【0114】
PIDFF700の領域750の拡大図が
図7Bに示されており、入り口710のうちの第1の入り口710aおよび第2の入り口710bの詳細を示している。第1の入り口710aの各々は、第1の入り口710aの首での直径754より広い、第1の入り口710aの口での直径752を有する、じょうご形の形状を有しており、第1の入り口710aの首は、第1の通路702aとの第1の入り口710aの各々の結合領域である。言い換えると、1つの第1の入り口710aの直径は、第1の入り口710aへの入り口で最も広くてよい。それに応じて、(
図7Aに示されているように)第2の出口712bの各々の直径は、第2の出口712bの各々の入り口(例えば、首)で最も狭くてよく、第2の出口712bの出口(例えば、口)に向かって広くなってよい。第1の通路702aの直径は、第1の入り口710aと第1の出口712aの間で均一であってよく、同様に、第2の通路702bの直径は、第2の入り口710bと第2の出口712bの間で均一であってよい。例として、入り口および出口の口での直径752は、1.5mm~5mmであってよく、入り口および出口の首での直径754は、じょうご形の形状の角度に応じて変化してよい。例えば、第1の入り口710aおよび第2の出口712bの各側面の角度αは、z軸と相対的に5~20度の角度を形成してよい。
【0115】
第1の入り口710aを使用して第1の通路702aを構成することによって、第1の入り口710aで第1の通路702aに入る流体の浸潤圧は、例えば、先細でない入り口と相対的に減らされ得る。
図7Aに示されているように、第2の通路702bの第2の出口712bは、第2の通路702bから離れる流体の出口圧力を同様に減らすことができる。先細の入り口および出口は、共に、流動場プレートを通る電解質の低い圧力降下を維持することができる。電解質の圧力降下を減らすことによって、流動場プレートを組み込んでいる電極アセンブリの負極でのH
2チャネルのあふれを軽減することができる。
【0116】
第2の入り口710b(および第1の出口712a)は、正電解質が部分的チャネル756を通って流れるときに正電解質から気体(例えば、H2)を取り除く、部分的チャネル756で形成される。例えば、正極は、部分的チャネル756と第2の通路702bの間の界面758に位置付けられてよい。言い換えると、(フェルトで形成され得る)正極が、PIDFF700の複数の互いにかみ合った通路702の上に直接位置付けられてよい。正極が流体で飽和した場合、正極内に浸透する流体内の気体の圧力が増加することがある(例えば、ブレイクスルー圧力)。部分的チャネル756が第2の入り口710bおよび第1の出口712aの両方に存在しないと、ブレイクスルー圧力に達するのに十分なほど圧力が上昇するまで、気体が複数の互いにかみ合った通路702内に閉じ込められることがある。そのような場合、閉じ込められた気体が、電極アセンブリの正側で不十分な流動分布および圧力の蓄積を引き起こすことがある。圧力の蓄積は、ブレイクスルー圧力に打ち勝つ(例えば、ブレイクスルー圧力に達する、および/またはブレイクスルー圧力を超える)ために、電極アセンブリの負側でのあふれにつながることがある。
【0117】
複数の部分的に互いにかみ合った通路702の入り口710および出口712に部分的チャネル756を組み込むことによって、残りの流体が正極内に流れることを強制されながら、気体が流動場から出るために、制限の少ない経路が設けられる。特定の流量で気体に要求される浸潤圧より高い、液体に要求される浸潤圧の結果として、複数の部分的に互いにかみ合った通路702と相対的に、部分的チャネル756の縮小された直径は、部分的チャネル756を通る残りの流体の流れを抑制する。したがって、残りの流体が正極内に強制的に対流されて、流動場プレートにわたる圧力降下を回避しながら、気体が、部分的チャネル756を通って漏れることができる。
【0118】
複数の部分的に互いにかみ合った通路702の出口712で、第1の通路702aの第1の出口712aは、第1の通路702aおよび正極と部分的チャネル756の間の界面758を含んでよい。第2の通路702bの第2の出口712bは、第1の入り口710aと同様のじょうご形を有してよい。そのため、前述したように、気体が部分的チャネル756を通って漏れながら、第1の通路702aから外への正電解質の流れが、正極内に強制的に対流されてよい。第2の通路702bの第2の出口712bで、第2の出口712bの直径が広くなっていることによって、第2の通路702bから外への正電解質の流れを増やすことができ、表面張力効果から生じる背圧を軽減することができる。このようにして、第1の通路702aおよび第2の通路702bの構成の組み合わせは、複数の部分的に互いにかみ合った通路702を通って正極に入る正電解質の流れを駆動することができ、この流れが、流動場プレートにわたる小さい圧力降下を維持する。その結果、電極アセンブリの負極の負チャネルのあふれが回避され得る。さらに、正電解質が複数の部分的に互いにかみ合った通路702に入るときに、正電解質に存在する気体の少なくとも一部が、正電解質から除去され得る。
【0119】
複数の部分的に互いにかみ合った通路702の寸法は、前述の効果を最大化するようにサイズ設定されてよい。例えば、
図7Bに示されているように、複数の部分的に互いにかみ合った通路702は、2~10mmの(例えば、y軸に沿った)チャネルの深さを有してよい。複数の部分的に互いにかみ合った通路702のチャネルの壁760の厚さ762は、0.5mm~4mmであってよい。部分的チャネル756は、0.5mm~2mmの直径764を有してよく、複数の部分的に互いにかみ合った通路702の各々は、1.5mm~5mmの直径766を有してよい。部分的チャネル756の(z軸に沿って定義されるような)長さ768は、3mm~20mmであってよく、第1の入り口710aおよび第2の出口712bの長さ770は、3mm~15mmであってよい。
【0120】
ここで
図8を参照すると、(例えば、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを通って流れる電流が外部負荷を通って導かれない)内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを含んでいるリバランス・セルを操作するための方法800のフロー・チャートが示されている。詳細には、リバランス・セルは、過剰なH
2気体を減らし、レドックス・フロー・バッテリ・システム内の電解質における電荷不均衡をリバランスするために、レドックス・フロー・バッテリ・システム内で実装されてよい。実施形態例では、レドックス・フロー・バッテリ・システムは、
図1のレドックス・フロー・バッテリ・システム10であってよく、リバランス・セルは、
図2Aおよび2Bのリバランス・セル202であってよい。したがって、方法800は、単独で、または
図3~7Bの実施形態および検討と組み合わせて、
図1~2Bの実施形態を参照して検討されてよい(しかし、本開示の範囲から逸脱することなく、類似する方法が他のシステムに適用されてよいということが、理解され得る)。例えば、方法800では、(例えば、リバランス・セルでの分配のためにH
2気体および電解質を受け取ることを含んでいる)少なくとも一部のステップまたはステップの部分が、
図1のコントローラ88によって実行されよく、実行可能な命令として、コントローラ88に通信可能に結合された非一過性ストレージ媒体(またはメモリ)に格納されてよい。
図8を参照して説明されるさらなるコンポーネントは、
図1~7Bの対応するコンポーネントの例であってよい。
【0121】
802で、方法800は、リバランス・セルで、その各入り口ポートを介してH2気体および電解質を受け取ることを含む。電解質は、第1の入り口ポートを介してリバランス・セルで受け取られてよく、H2気体は、第2の入り口ポートを介してリバランス・セルで受け取られてよい。1つの例では、第1の入り口ポートは、重力の方向に関して第2の入り口ポートの上に位置付けられている。
【0122】
804で、方法800は、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ね全体にH2気体および電解質を分配することを含む。詳細には、電解質は、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの電極アセンブリにそれぞれ結合された複数の第1の入り口チャネルを含んでいる入り口マニホールドを介して分配されてよく、H2気体は、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねによって形成され、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの各電極アセンブリに流体結合された、第2の入り口チャネルを介して分配されてよい。一部の例では、入り口マニホールドを介する分配の後に、電解質は、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの正極とそれぞれ界面する第1の流動場プレートを通って分配されてよい。他の例では、入り口マニホールドを介する分配の後に、電解質は、正極とそれぞれ界面する活性炭発泡体を通って分配されてよい。一部の例では、第2の入り口チャネルを介する分配の後に、H2気体は、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの負極とそれぞれ界面する第2の流動場プレートを通って分配されてよい。
【0123】
806で、方法800は、H2気体および電解質の流れ(例えば、交差するような流れ、平行な流れ、または反対方向の流れ)を誘導し、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの負極および正極で電解質リバランス反応を実行することを含む。負極および正極は、負極および正極の界面する対で、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの間で分散されてよい。前述したように、負極および正極の界面する対の各正極は、各活性炭発泡体または各流動場プレートとさらに界面してよい。1つの例では、負極は、Pt触媒がコーティングされた導電性炭素基板であってよく、正極は炭素フェルトであってよい。一部の実施例では、H2気体および電解質の流れを誘導することは、(i)808で、対流(例えば、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの負極と界面する第2の流動場プレートによる強制対流)によって、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの負極を横切るH2気体の流れを誘導することと、(ii)810で、(例えば、重力の方向と相対的にリバランス・セルを傾けることによる)重力供給、(例えば、電解質を毛細管作用で上へ内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの正極内に運ぶ)毛細管作用、および対流(例えば、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの正極と界面する第1の流動場プレートによる強制対流)のうちの1つまたは複数によって、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの正極を横切る電解質の流れを誘導することとを含んでよい。1つの例では、H2気体の流れは、対流によって負極を横切って誘導されてよく、電解質の流れは、重力供給および毛細管作用の各々によって正極を横切って誘導されてよい。H2気体および電解質を、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの負極および正極を横切って流すときに、812でH2気体を電解質内の正電荷を持つイオンと反応させて、正電荷を持つイオンを還元すること(方程式(4)を参照)を含む、電解質リバランス反応が実行されてよい。
【0124】
814で、方法800は、(還元された正電荷を持つイオン、例えば、802で第1の入り口ポートにおいて受け取られたときよりも低い濃度のFe3+を含んでいる)電解質および未反応のH2気体を、リバランス・セルから、その出口ポートを介して放出することを含む。詳細には、816で、電解質が、第1の出口ポートを介してリバランス・セルから放出されてよく、一部の例では、818で、未反応のH2気体が、第2の出口ポートを介してリバランス・セルから放出されてよい。しかし、他の例では、リバランス・セルは、H2気体を流すための行き止まり構成を含んでよく、第2の出口ポートが含まれなくてよい。いずれの場合も、少なくとも一部の未反応のH2気体が、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの負極を通って電解質内に流れてよい。したがって、未反応のH2気体をリバランス・セルから放出することは、820で、(例えば、圧力が電解質内で増大し、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの負極をあふれさせるのを防ぐために)圧力解放出口ポートを介して電解質内の未反応のH2気体を放出することを含んでよい。
【0125】
このようにして、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねを含んでいるリバランス・セルが、レドックス・フロー・バッテリに提供される。詳細には、レドックス・フロー・バッテリからのH2気体および電荷不均衡な電解質の流れがリバランス・セルに提供され、内部で短絡した電極アセンブリの積み重ねの負極および正極を横切って誘導されてよい。一部の例では、正極は、それを通って電解質を流すために、統合されたチャネルまたは通路を使用して構成された流動場プレートと面共有接触してよい。電解質チャネルは、流動場プレートの面内、または流動場プレートに結合され得るインサート内に直接埋め込まれてよい。電解質チャネルの形状は、正電解質からの気体の除去および圧力降下の減少を促進することができ、これらの気体および圧力降下は、流動場プレートにわたって、酸化問題から生じることがある。さらに、分離した多孔性の炭素発泡体に頼るのではなく、電解質チャネルを流動場プレートに統合することによって、リバランス・セルの製造のコストおよび組み立て時間を減らすことができ、電極アセンブリが劣化に対してより堅牢になることができ、リバランス・セルのより一貫性のある性能を可能にすることができる。
【0126】
図2A~4Bおよび6A~6Bは、さまざまなコンポーネントの相対的位置付けを含む例示的な構成を示している。互いに直接接触して、または直接結合されて示されている場合、そのような要素は、少なくとも1つの例では、それぞれ直接接触しているか、または直接結合されていると見なされてよい。同様に、互いに近接または隣接して示されている要素は、少なくとも1つの例では、それぞれ互いに近接または隣接してよい。例として、互いに面共有接触しているコンポーネントは、面共有接触していると見なされてよい。別の例として、間に空間のみを含み、他のコンポーネントを含まずに互いに離れて位置付けられた要素は、少なくとも1つの例では、そのように見なされてよい。さらに別の例として、互いに上/下、互いに反対側、または互いに左/右に示された要素は、互いに相対的に、そのように見なされてよい。さらに、図に示されているように、少なくとも1つの例では、最上部の要素または要素の点は、コンポーネントの「上部」と見なされてよく、最下部の要素または要素の点は、コンポーネントの「下部」と見なされてよい。本明細書において使用されるとき、上部/下部、上側/下側、上/下は、図の垂直軸と相対的であり、互いに相対的に図の要素の位置付けを表すために使用されてよい。そのため、他の要素の上に示された要素は、1つの例では、他の要素の上の垂直方向に位置付けられる。さらに別の例として、図内に示された要素の形状は、そのような形状を有している(例えば、円形である、直線である、平面である、曲線である、丸みを帯びている、面取りされている、角度がついている、など)と見なされてよい。さらに、互いに交差して示された要素は、少なくとも1つの例では、交差している要素、または互いに交差していると見なされてよい。さらに、別の要素の内部に示されたか、または別の要素の外部に示された要素は、1つの例では、そのように見なされてよい。
図2A~4Bおよび6A~6Bは、近似的に一定の縮尺で描かれているが、他の寸法または相対的寸法が使用されてよい。
【0127】
本開示は、レドックス・フロー・バッテリのリバランス・セルのサポートも提供し、リバランス・セルは、セル筐体と、セル筐体に囲まれた電極アセンブリの積み重ねとを備え、電極アセンブリの積み重ねの各電極アセンブリは、流動場プレートと界面する正極を含み、正極と界面する流動場プレートの面は、先細の入り口および/または先細の出口を含んでいる複数の通路、ならびにそれを通って流れる電解質から気体を除去するように構成された部分的チャネルを含む。システムの第1の例では、複数の通路が、流動場プレートの面内に直接形成される。任意選択的に第1の例を含んでいるシステムの第2の例では、複数の通路が、流動場プレートの面に結合されるように構成されたインサート内に形成される。任意選択的に第1および第2の例のうちの1つまたは両方を含んでいるシステムの第3の例では、複数の通路が、部分的に互いにかみ合った構成で配置される。任意選択的に第1~第3の例のうちの1つまたは複数あるいは各々を含んでいるシステムの第4の例では、複数の通路が、先細の入り口および部分的チャネルを含む出口を含んでいる通路の第1のセットと、部分的チャネルを含む入り口および先細の出口を含んでいる通路の第2のセットとを含む。任意選択的に第1~第4の例のうちの1つまたは複数あるいは各々を含んでいるシステムの第5の例では、通路の第1のセットおよび通路の第2のセットが、流動場プレートにわたって交互パターンで配置される。任意選択的に第1~第5の例のうちの1つまたは複数あるいは各々を含んでいるシステムの第6の例では、気体が流動場プレートから出るが、電解質が流動場プレートから出ないことを可能にするために、部分的チャネルが狭くなった直径を有し、電解質が正極内に強制的に対流される。任意選択的に第1~第6の例のうちの1つまたは複数あるいは各々を含んでいるシステムの第7の例では、電解質が、正極が位置付けられた正極区画から循環される正電解質である。任意選択的に第1~第7の例のうちの1つまたは複数あるいは各々を含んでいるシステムの第8の例では、各電極アセンブリが、正極と界面する負極をさらに含み、各電極アセンブリが内部で短絡する。任意選択的に第1~第8の例のうちの1つまたは複数あるいは各々を含んでいるシステムの第9の例では、システムが、H2気体をセル筐体内に流すための気体水素入り口、電解質をセル筐体内に流すための電解質入り口ポート、および電解質をセル筐体から放出するための電解質出口ポートをさらに備える。任意選択的に第1~第9の例のうちの1つまたは複数あるいは各々を含んでいるシステムの第10の例では、システムが、傾斜支持体が乗っている表面に対してセル筐体を傾けるために、セル筐体に結合された傾斜支持体をさらに備える。
【0128】
本開示は、レドックス・フロー・バッテリ・システムのサポートも提供し、レドックス・フロー・バッテリ・システムが、レドックス電極およびめっき電極をそれぞれ収容している正極区画および負極区画と、正極区画に送り込むための正電解質および負極区画に送り込むための負電解質をそれぞれ含んでいる正電解質室および負電解質室であって、共通の気体ヘッド・スペースをさらに含む、正電解質室および負電解質室と、正電解質の電解質リバランスのためのリバランス・セルとを備え、リバランス・セルが正極区画および共通の気体ヘッド・スペースに流体結合されており、正電解質の電解質リバランスは、第1のリバランス・セルの正極および負極の界面する対の内部の短絡によって、ならびに正電解質が、正極と界面する流動場プレートの統合されたチャネルを通って方向付けられることによって、駆動される。システムの第1の例では、統合されたチャネルが、流動場プレートの正の流動場から気体を除去するための部分的チャネルを含む。任意選択的に第1の例を含んでいるシステムの第2の例では、正電解質の対流を正極内に強制するために、統合されたチャネルが、部分的に互いにかみ合った構成で配置される。任意選択的に第1および第2の例のうちの1つまたは両方を含んでいるシステムの第3の例では、統合されたチャネルが先細の入り口および先細の出口を含み、先細の入り口の直径が、先細の入り口への入り口で最も広く、先細の出口の直径が、先細の出口への入り口で最も狭い。任意選択的に第1~第3の例のうちの1つまたは複数あるいは各々を含んでいるシステムの第4の例では、統合されたチャネルが、正極と界面する流動場プレートの表面内に機械加工されるか、または成形され、流動場プレートがポリマーで形成される。任意選択的に第1~第4の例のうちの1つまたは複数あるいは各々を含んでいるシステムの第5の例では、統合されたチャネルが、ポリマーで形成されたインサート内に機械加工されるか、または成形され、インサートが、正極と界面する流動場プレートの表面に結合される。
【0129】
本開示は、電極アセンブリが、正極および負極の内部で短絡した界面する対と、負極の反対側の正極の表面と面共有接触する流動場プレートとを備えている、リバランス・セルの電極アセンブリのサポートも提供し、正極の方を向いている流動場プレートの面が、流動場プレートの複数の部分的に互いにかみ合った電解質チャネルを通って流れる正電解質から気体を除去するために先細の入り口および出口ならびに収縮を含んでいる複数の部分的に互いにかみ合った電解質チャネルを含む。システムの第1の例では、収縮が、気体が流動場プレートから出るための流路を提供することによって気体を除去するように構成される。任意選択的に第1の例を含んでいるシステムの第2の例では、正電解質から除去された気体が、リバランス・セルの気体出口ポートを介してリバランス・セルから放出される。
【0130】
以下の特許請求の範囲は、新しい、自明でないと見なされる特定の組み合わせおよび部分的組み合わせを特に指摘する。これらの特許請求の範囲は、「1つの」要素、または「第1の」要素、あるいはこれらと同等のものを参照することがある。そのような特許請求の範囲は、2つ以上のそのような要素を必要とすることも、除外することもなく、1つまたは複数のそのような要素の組み込みを含むように理解されるべきである。本特許請求の範囲の補正を通じて、または本出願もしくは関連する出願における新しい特許請求の範囲の提示を通じて、開示された特徴、機能、要素、および/または特性の他の組み合わせおよび部分的組み合わせが主張されてよい。そのような特許請求の範囲は、元の特許請求の範囲に対して広いか、狭いか、等しいか、または異なっているかにかかわらず、やはり本開示の主題に含まれていると見なされる。
【外国語明細書】