(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041741
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤及び合成繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 13/02 20060101AFI20240319BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
D06M13/02
D06M15/643
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023178797
(22)【出願日】2023-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 武志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋平
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA06
4L033AB01
4L033AC09
4L033AC15
4L033BA01
4L033CA59
(57)【要約】
【課題】合成繊維の黄変抑制に優れ、解舒性を付与すると共に、加工時の綾落ちを抑え、長期間保管した際の製剤安定性に優れた合成繊維用処理剤及び、かかる合成繊維用処理剤が付着している弾性繊維を提供する。
【解決手段】本発明の合成繊維用処理剤は、UV-Vis吸収測定における270nmの吸光度が0.3以下である炭化水素化合物(A)を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素化合物(A)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記炭化水素化合物(A)のUV-Vis吸収測定における270nmの吸光度が0.3以下であることを特徴とする合成繊維用処理剤。
【請求項2】
更に、25℃における動粘度が100mm2/s以上であるジメチルシリコーン(B)を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記合成繊維用処理剤中に、前記ジメチルシリコーン(B)を0.5~10質量%の割合で含有する請求項2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
【請求項5】
前記合成繊維が弾性繊維である請求項4に記載の合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤及び合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維で構成される弾性繊維は、他の合成繊維に比べて繊維間の粘着性が強い。そのため、例えば合成繊維を紡糸してパッケージに巻き取った後、該パッケージから引き出して加工工程に供する際に、パッケージから安定して解舒することが難しい場合がある。パッケージから安定して解舒させるために、シリコーン油や鉱物油等の平滑剤を含有する合成繊維用処理剤が使用されることがある。
ポリαオレフィンとシリコーン油を必須に含有する処理剤(特許文献1)、アロマ成分の含有量が1%未満であり、ナフテン成分の含有量が10~30%の鉱物油を含有する処理剤(特許文献2)、特定の粘度を有し、ナフテン重量%25~60、アロマ重量%1~20、アニリン点50~105℃を満足する鉱物油を含有する処理剤(特許文献3)が知られているものの、これらの処理剤では、黄変防止が不十分であり、その改変が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-020051号公報
【特許文献2】特開2014-156664号公報
【特許文献3】特開2005-325497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、合成繊維の黄変抑制に優れ、解舒性を付与すると共に、加工時の綾落ちを抑え、長期間保管した際の製剤安定性に優れた合成繊維用処理剤及び、かかる合成繊維用処理剤が付着している合成繊維、中でも弾性繊維を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、UV-Vis吸収測定における270nmの吸光度が0.3以下の炭化水素化合物(A)を用いることにより、合成繊維の黄変抑制に優れ、解舒性を付与すると共に、加工時の綾落ちを抑え、長期間保管した際の製剤安定性に優れた合成繊維用処理剤とし得ることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.炭化水素化合物(A)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記炭化水素化合物(A)のUV-Vis吸収測定における270nmの吸光度が0.3以下であることを特徴とする合成繊維用処理剤。
2.更に、25℃における動粘度が100mm2/s以上であるジメチルシリコーン(B)を含有する1.に記載の合成繊維用処理剤。
3.前記合成繊維用処理剤中に、前記ジメチルシリコーン(B)を0.5~10質量%の割合で含有する2.に記載の合成繊維用処理剤。
4.1.~3.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
5.前記合成繊維が弾性繊維である4.に記載の合成繊維。
【発明の効果】
【0007】
本発明の合成繊維用処理剤は、合成繊維の黄変抑制に優れているため、合成繊維用処理剤を付与した合成繊維の品質低下が無く有用である。
また、本発明の合成繊維用処理剤は、解舒性に優れているため、パッケージからの糸の引き出しに抵抗がなく、糸切れ等の問題も生じず安定に解舒することが出来るほか、加工時における表層の綾落ちによる断糸を抑制することが出来る。
さらに、本発明の合成繊維用処理剤は、製剤安定性に優れているため、合成繊維用処理剤の運搬や保管の際に分離や沈殿が生じることが無く有用である。
本発明の合成繊維用処理剤は、合成繊維の黄変抑制に優れ、解舒性を付与すると共に、加工時の綾落ちを抑え、長期間保管した際の製剤安定性に優れており、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<炭化水素化合物(A)>
本発明の合成繊維用処理剤は、UV-Vis(分光光度計)吸収測定における270nmの吸光度が0.3以下である炭化水素化合物(A)を、必須成分として含有するものである。UV-Vis(紫外可視分光法、Ultraviolet Visible Absorption Spectroscopy)は、波長ごとに分けた光を測定試料に照射し、試料を透過した光の強度を測定することで、試料の吸光度や透過率を求める分析手法である。
本発明における炭化水素化合物(A)のUV-Vis(分光光度計)吸収測定における270nmの吸光度としては、0.2以下であることが好ましく、0.17以下であることがより好ましく、0.15以下であることがさらに好ましく、0.12以下であることがよりさらに好ましく、0.10以下であることが特に好ましく、0.09以下であることが最も好ましい。
本発明の合成繊維用処理剤は、炭化水素化合物(A)のみを含有するものであっても良い。炭化水素化合物(A)を処理剤の全質量に対して、5~100質量%の範囲で含有することが好ましく、10~99.5質量%の範囲で含有することがより好ましく、15~99.5質量%の範囲で含有することがさらに好ましい。
【0009】
本発明における炭化水素化合物(A)は、アルカンを97質量%以上含有するものであることが好ましい。中でも、直鎖のアルカンを含むものであることが好ましく、直鎖のアルカンを炭化水素化合物(A)中に5質量%以上含有することがより好ましい。
本発明における炭化水素化合物(A)は、アルカンを97質量%以上含有するものであり、かつ、直鎖のアルカンを炭化水素化合物(A)中に5質量%以上含有するものであると、合成繊維の黄変をさらに抑制出来るだけでなく、長期間保管した際の製剤安定性を向上させる点において好適である。
【0010】
本発明における炭化水素化合物(A)は、天然ガス由来のものであることが好ましい。
天然ガス由来の炭化水素化合物としては、例えば、ガス液化油(GTL:Gas To Liquid)が挙げられる。ガス液化油は、天然ガスを液化したものであり、石油製品の1つである軽油と同じ性能を有し、ディーゼルエンジンの燃料として公知のものである。市販品としては、シェルケミカルズ社製の「Shell GTL Solvent GSシリーズ」が、UV-Vis(分光光度計)吸収測定における270nmの吸光度の点においても、アルカンを97質量%以上含有するものであり、かつ、直鎖のアルカンを炭化水素化合物(A)中に5質量%以上含有する点においても、本発明における炭化水素化合物(A)として好適である。
本発明における炭化水素化合物(A)は、UV-Vis(分光光度計)吸収測定における270nmの吸光度が0.3以下であれば、ガス液化油を単独または2種以上併用して使用しても良いし、ガス液化油とガス液化油以外の鉱物油を併用して使用しても良い。
【0011】
<ジメチルシリコーン(B)>
本発明の合成繊維用処理剤は、炭化水素化合物(A)と、25℃における動粘度が100mm2/s以上であるジメチルシリコーン(B)を含有することが好ましい。なお、25℃における動粘度は、JIS Z 8803に準拠して測定される数値を意味する。
さらに、本発明の合成繊維用処理剤は、ジメチルシリコーン(B)を処理剤の全質量に対して、0.1~30質量%の範囲で含有することが好ましく、0.2~20質量%の範囲で含有することがより好ましく、0.5~10質量%の範囲で含有することがさらに好ましい。中でも、ジメチルシリコーン(B)を処理剤の全質量に対して、0.5~10質量%の範囲で含有することにより、本発明の合成繊維用処理剤の解舒性を向上させ、安定化させる点において好ましい。
【0012】
本発明の合成繊維用処理剤は、炭化水素化合物(A)、ジメチルシリコーン(B)に加えて、ジメチルシリコーン(B)以外のジメチルシリコーン(C)を含有することが好ましい。
ジメチルシリコーン(C)は、25℃における動粘度が100mm2/s以上であるジメチルシリコーン(B)以外のジメチルシリコーン、すなわち、25℃における動粘度が100mm2/s未満のものであれば良く、1~50mm2/sの範囲のものがより好ましく、5~20mm2/sの範囲のものがさらに好ましい。
本発明の合成繊維用処理剤におけるジメチルシリコーン(C)の配合量は、処理剤の全質量に対して、10~80質量%の範囲であることが好ましい。
【0013】
<その他の成分>
本発明の合成繊維用処理剤は、その他の成分として、安定化剤や制電剤、帯電防止剤、つなぎ剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、防錆剤、紫外線吸収剤等を併用することができる。その他の成分の併用量は、本発明の効果を損なわない範囲内において規定することができる。
【0014】
本発明における合成繊維としては、例えば、ポリエステル系弾性繊維、ポリエーテルエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられるが、これらの中でもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。かかる場合に本発明の効果の発現をより高くすることができる。
本発明における好ましい合成繊維の1つであるポリウレタン系弾性繊維は、実質的にポリウレタンを主構成部とする弾性繊維を意味し、通常はセグメント化したポリウレタンを85質量%以上含有する長鎖の重合体から紡糸されるものを意味する。
【0015】
本発明の合成繊維用処理剤の合成繊維に対する付着量は、特に制限はないが、本発明の効果をより向上させる観点から0.1質量%以上10質量%以下の範囲で付着させることが好ましい。
【0016】
本発明における合成繊維の製造方法は、本発明の合成繊維用処理剤を合成繊維に給油することにより得られる。処理剤の給油方法としては、希釈することなくニート給油法により、合成繊維の紡糸工程において合成繊維に付着させる方法が好ましい。付着方法としては、例えばローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が適用できる。給油ローラーは、通常口金から巻き取りトラバースまでの間に位置させることが一般的であり、本発明の製造方法にも適用できる。これらの中でも、延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーにて本発明の合成繊維用処理剤を合成繊維、例えばポリウレタン系弾性繊維に付着させることが、本発明の効果を顕著に発現させるために好ましい。
本発明に用いる合成繊維自体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造が可能である。例えば湿式紡糸法、溶融紡糸法、乾式紡糸法等が挙げられる。これらの中でも、合成繊維の品質及び製造効率が優れる観点から乾式紡糸法が好ましく適用される。
本実施形態に適用される合成繊維自体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造が可能である。例えば湿式紡糸法、溶融紡糸法、乾式紡糸法等が挙げられる。これらの中でも、本発明における好ましい合成繊維の1つであるポリウレタン系弾性繊維に関しては、その品質及び製造効率が優れる観点から乾式紡糸法が好ましく適用される。
【実施例0017】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0018】
試験区分1(合成繊維用処理剤の調製)
下記表1、2に示す組成に基づいて、実施例1~30、比較例1~18の合成繊維用処理剤を調製した。
下記表1、2中のA-1~10、a-1~8、B-1、2、C-1の詳細は以下のとおりである。
<炭化水素化合物(A)及び(a)>
下記一覧中の数値は、UV-Vis(分光光度計)吸収測定における270nmの吸光度を意味する。
A-1:0.061(Shell GTL Solvent GS270)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
A-2:0.062(Shell GTL Solvent GS310)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
A-3:0.083(Shell GTL Solvent GS190)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
A-4:0.085(Shell GTL Solvent GS215)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
A-5:0.120(Shell GTL Solvent GS1927)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
A-6:0.149(Shell GTL Solvent GS270)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
A-7:0.163(Shell GTL Solvent GS310を99質量%+ダイアナフレシアW-32を1質量%)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
A-8:0.169(Shell GTL Solvent GS270を70質量%+Synfluid PAO4cSを30質量%)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
A-9:0.196(Shell GTL Solvent GS310を50質量%+Synfluid PAO4cSを50質量%)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%未満含有
A-10:0.296(Shell GTL Solvent GS270を50質量%+Synfluid PAO4cSを50質量%)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
【0019】
a-1:0.510(Synfluid PAO4cS)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%未満含有
a-2:1.117(Ultra-S3)、アルカンを97質量%未満含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
a-3:3.207(ダイアナフレシアW-8)、アルカンを97質量%未満含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
a-4:3.660(コスモピュアスピンRC)、アルカンを97質量%未満含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
a-5:3.313(ダイアナフレシアW-32)、アルカンを97質量%未満含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
a-6:3.313(0号ソルベント(M))、アルカンを97質量%未満含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
a-7:0.516(Shell GTL Solvent GS310を95質量%+ダイアナフレシアW-32を5質量%)、アルカンを97質量%未満含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
a-8:0.342(Shell GTL Solvent GS310を97質量%+ダイアナフレシアW-32を3質量%)、アルカンを97質量%以上含有、直鎖のアルカンを5質量%以上含有
【0020】
<ジメチルシリコーン(B)>
B-1:25℃における動粘度が100mm2/sのジメチルシリコーン
B-2:25℃における動粘度が350mm2/sのジメチルシリコーン
<ジメチルシリコーン(C)>
C-1:25℃における動粘度が10mm2/sのジメチルシリコーン
【0021】
【0022】
【0023】
試験区分2(合成繊維用処理剤の黄変抑制評価)
処理剤を付与せずに紡糸したSPDX糸(ポリウレタン系弾性繊維)をジメチルアセトアミドに溶解し、シャーレに流し入れ、100℃で2時間加熱処理し、SPDXフィルムを作成した。色差計(日本電食工業株式会社製 分光色差計NF555)により、処理前SPDXフィルムのb値(b1)を測定した。
実施例又は比較例の合成繊維用処理剤で満たしたガラス瓶に、得られたフィルムを浸漬し、UV照射を48時間継続した。このUV照射は、QUV促進耐候試験機(Q-Lab Corporation社製)にて、UVB-313ELランプを用いて48時間、UVを照射することにより行った。
フィルムを取り出し、表面に付着している合成繊維用処理剤を拭き取った後、色差計で処理前後SPDXフィルムのb値(b2)を測定した。
処理後b値から処理前b値の差分(b2-b1)を、黄変抑制評価値とし、下記「評価基準」に基づいて評価した。
[評価基準]
◎(良好):黄変抑制評価値が9未満
〇(可):黄変抑制評価値が9以上10未満
×(不良):黄変抑制評価値が10以上
【0024】
試験区分3(合成繊維用処理剤の解舒性評価)
第1駆動ローラーとこれに常時接する第1遊離ローラーとで送り出し部を形成した。また、第2駆動ローラーとこれに常時接する第2遊離ローラーとで巻き取り部を形成した。送り出し部と巻き取り部の間隔を、水平方向に沿って約20cmとした。
作製したパッケージ(500g巻き)を60℃で3日間熟成させて、パッケージを第1駆動ローラーに装着した。第1駆動ローラーを駆動させて弾性繊維を送り出すとともに、第2駆動ローラーを駆動させて弾性繊維を巻き取った。パッケージの糸巻の厚さが2mmになるまで解舒した。
その際、第1駆動ローラーの送り出し速度を50m/分で固定する一方、第2駆動ローラーの巻き取り速度を50m/分より徐々に上げて、弾性繊維をパッケージから強制解舒した。この強制解舒において、送り出し部と巻き取り部との間で弾性繊維の踊りがなくなる時点、言い換えれば、糸の挙動が不安定にならず、スムーズにパッケージから送り出されるようになる時点での巻き取り速度V(m/分)を測定した。下記の式から解舒性(%)を求め、以下の基準で評価した。
[算出式]
解舒性(%)=(V-50)×2
[評価基準]
◎(良好):解舒性が150%未満
〇(可):解舒性が150%以上、200%未満
×(不良):解舒性が200%以上
【0025】
試験区分4(合成繊維用処理剤の安定性評価)
合成繊維用処理剤200gを透明ポリ瓶(250mL)に入れて、観察した。
[評価基準]
◎(良好):開放25℃/1週間で無色透明。
〇(可):開放25℃/3日で無色透明。
×(不良):配合時に白濁した。
【0026】
試験区分5(合成繊維用処理剤の綾落ち防止性評価)
作製したパッケージ(500g巻き)を、上記の送り出し部で100m/分で送りだすとともに、上記の巻き取り部で300m/分で巻き取った。この条件で1000m巻き取った場合のパッケージの綾落ちによる断糸の回数を測定して、以下の基準で評価した。
[評価基準]
◎(良好):綾落ちによる断糸が0回以上2回未満
〇(可):綾落ちによる断糸が2回以上3回未満
×(不良):綾落ちによる断糸が3回以上
【0027】
実施例1~30、比較例1~18の合成繊維用処理剤の「黄変抑制」、「解舒性」、「安定性」、「綾落ち防止性」の評価結果を下記表3、4に示す。
【表3】
【0028】
【0029】
表1、3に示すとおり、UV-Vis吸収測定における270nmの吸光度が0.3以下である炭化水素化合物(A)であるA-1、A-2、A-9、A-10を含有する本発明の合成繊維用処理剤の具体例である実施例27~30は、特に合成繊維の黄変抑制に優れ、加えて、長期間保管した際の製剤安定性や加工時の綾落ち防止性のほか、解舒性を付与できるなど、非常に優れた効果を発揮することが確認された。
これに対して、表2、4に示すとおり、UV-Vis吸収測定における270nmの吸光度が0.3を超える炭化水素化合物(A)であるa-1、a-2、a-3、a-6、a-8を含有する本発明の合成繊維用処理剤の具体例ではない比較例1~4、18は、特に、合成繊維の黄変を抑制出来ないことも確認された。
表1~4に示すとおり、本発明の合成繊維用処理剤は、特に、合成繊維の黄変抑制に優れているため、合成繊維用処理剤を付与した合成繊維の品質低下が無く有用であることが、今回初めて明らかとなった。