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特開2024-41743改変された腫瘍細胞および改変された樹状細胞を使用して、腫瘍免疫原性を増強する方法および自己癌免疫療法製品の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041743
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】改変された腫瘍細胞および改変された樹状細胞を使用して、腫瘍免疫原性を増強する方法および自己癌免疫療法製品の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/13 20150101AFI20240319BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240319BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALN20240319BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20240319BHJP
   C07K 14/62 20060101ALN20240319BHJP
   C07K 14/485 20060101ALN20240319BHJP
   C07K 14/50 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
A61K35/13
A61K35/15
A61P35/00
A61P37/04
C12N5/0784
C12N5/09
C07K14/62
C07K14/485
C07K14/50
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023196891
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2019544743の分割
【原出願日】2018-02-16
(31)【優先権主張番号】62/460,295
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519173657
【氏名又は名称】アイビタ バイオメディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニスター ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】コーンフォース アンドリュ エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ディルマン ロバート オー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065CA24
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
4H045CA40
4H045DA20
4H045DA30
4H045DA37
4H045EA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に腫瘍関連抗原(TAA)の抗原含有量および癌細胞の免疫原性を増強する方法、樹状細胞のクロスプレゼンテーションを強化する方法、単一の癌患者に由来するそのような操作された細胞を含む組成物、およびこれらの組成物を個人用免疫療法製品として使用して、ドナー患者の癌を治療する方法を提供する。
【解決手段】癌の治療における製品の製造に使用される、同じ癌患者からの癌細胞および樹状細胞(DC)を含む組成物であって、前記癌細胞もしくは前記DC、またはその両方は、ex vivoで改変されており、ここで、前記DCは、50~150μg/mlの濃度におけるゲンタマイシンへの曝露により改変され、前記癌細胞は、シクロデキストリンへの曝露により細胞膜からコレステロールおよび/またはWntリガンドの枯渇によって改変されている、組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ癌患者からの癌細胞および樹状細胞(DC)を含む組成物であって、
前記癌細胞もしくは前記DC、またはその両方は、前記患者の癌によって発現される腫瘍関連抗原(TAA)の蓄積または免疫原性を改善するためにex vivoで改変されている、
組成物。
【請求項2】
癌患者からのDCを含む組成物であって、
前記DCには、前記癌患者から除去された腫瘍から単離された癌細胞からの抗原性物質が負荷され、前記癌細胞もしくは前記DC、またはその両方は、前記患者の癌によって発現されるTAAの蓄積または免疫原性を改善するために改変されている、
組成物。
【請求項3】
前記DCは、増加したレベルのクロスプレゼンテーションを有するように改変されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記DCは、アミノグリコシド抗生物質への曝露により改変されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アミノグリコシド抗生物質は、ゲンタマイシンを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記DCは、トール様受容体4アゴニストへの曝露により改変されている、請求項3~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記癌細胞は、増加した量のTAAを発現または蓄積するように改変されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記癌細胞は、ゲノム脱メチル化剤への曝露により改変されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ゲノム脱メチル化剤は、デシタビンを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記癌細胞は、ヒストンアセチル化促進剤への曝露により改変されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記ヒストンアセチル化促進剤は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、バルプロ酸を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記癌細胞は、プロテアソーム阻害剤への曝露により改変されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
前記プロテアソーム阻害剤は、ラクタシスチン、エポキソマイシン、ベータ-ヒドロキシ-ベータ-メチルブチレート、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記癌細胞は、E3リガーゼ阻害剤への曝露により改変されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項16】
前記癌細胞は、PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤への曝露により改変されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項17】
前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、細胞培養培地中のロイシンもしくはアルギニン、またはその両方の超標準濃度を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、PTEN阻害剤を含む、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記PTEN阻害剤は、ビスペルオキソバナジウム-1,10-フェナントロリン(bpV(phen)、ビスペルオキソバナジウム-5-ヒドロキシピリジン-2-カルボキシル(bpV(HOpic)、ビスペルオキソ-(ビピリジン)-オキソバナデートbpV(bipy)、またはその任意の組み合わせ、を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記PTEN阻害剤は、1つ以上のホルモンまたは成長因子と併せて使用される、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項21】
前記1つ以上のホルモンまたは成長因子は、インスリン、甲状腺ホルモン、塩基性FGF、EGF、またはそれらの組み合わせを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記癌細胞は、アポトーシスの阻害剤への曝露により改変されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項23】
前記アポトーシスの阻害剤は、カスパーゼ阻害剤である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記カスパーゼ阻害剤は、Z-VAD-fmkを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記癌細胞は、寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記寛容原性化合物がWntリガンドを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記癌細胞は、ベータ-メチル-シクロデキストリンへの曝露による寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
前記癌細胞は、損傷関連分子パターン(DAMP)の産生を増加させるように改変されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記癌細胞は、ゲンタマイシンへの曝露により改変されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物は、生存癌細胞を含まない、請求項2~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
請求項30に記載の組成物を含む個人用免疫療法製品。
【請求項32】
癌の治療における請求項31に記載の個人用免疫療法製品の使用。
【請求項33】
請求項31に記載の個人用免疫療法製品を前記患者に投与することを含む、癌を治療する方法。
【請求項34】
個々の癌患者のための癌に対する個人用免疫療法製品の製造方法であって、
前記患者から腫瘍組織を採取することと、
前記患者から血液を採取することと、
前記腫瘍組織を操作して、TAAの蓄積を高めることと、
前記血液を操作して、単球を分離すると共にそれらを樹状細胞に分化させ、必要に応じて、前記樹状細胞の抗原提示能力を高めることと、
を含み、
操作された前記腫瘍組織からの前記樹状細胞および癌細胞物質を含む個人用免疫療法製品を作製する、
方法。
【請求項35】
採取することは、前記患者から前記腫瘍組織および前記血液を物理的に除去することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記腫瘍組織および前記血液を、癌細胞を前記腫瘍組織から分離すると共にDCを前記血液中の単球と区別する能力を有する中央施設に送ることをさらに含み、前記中央施設は、1)前記DCを改変して交差処理を増加させる、または2)前記癌細胞を改変してTAA含有量を増加させる、もしくは前記癌細胞の免疫原性を高める、または3)両方の能力をさらに有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
採取することは、前記腫瘍組織および前記血液の発送物を受け取ることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記腫瘍組織から癌細胞を分離することと、
単球を分化させることにより、前記血液からDCを得ることと、
前記癌細胞、前記DC、またはその両方を改変することと、
前記癌細胞またはその溶解物を含む癌細胞物質を、DC成熟因子の存在下で前記DCと組み合わせることと、
をさらに含む、請求項35または37に記載の方法。
【請求項39】
DC成熟因子の存在下で、前記腫瘍組織に由来する癌細胞またはその溶解物を含む癌細胞物質を、前記血液に由来する未熟DCと組み合わせることをさらに含み、前記癌細胞、前記DC、または両方は改変されている、請求項35または37に記載の方法。
【請求項40】
前記DC成熟因子は、リポ多糖(LPS)である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記DCを増加したレベルのクロスプレゼンテーションを有するように改変することをさらに含む、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記癌細胞を改変してDAMPの産生を増加させることをさらに含む、請求項38~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
改変することは、前記DCまたは癌細胞のアミノグリコシド抗生物質への曝露を含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記アミノグリコシド抗生物質は、ゲンタマイシンを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
改変することは、前記DCのトール様受容体4アゴニストへの曝露を含む、請求項38~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記癌細胞を改変して、増加した量のTAAを発現または蓄積させることをさらに含む、請求項38~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記癌細胞は、ゲノム脱メチル化剤への曝露により改変されている、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ゲノム脱メチル化剤は、デシタビンを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記癌細胞は、ヒストンアセチル化促進剤への曝露により改変されている、請求項38~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記ヒストンアセチル化促進剤は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、バルプロ酸を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記癌細胞は、プロテアソーム阻害剤への曝露により改変されている、請求項38~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記プロテアソーム阻害剤は、ラクタシスチン、エポキソマイシン、ベータ-ヒドロキシ-ベータ-メチルブチレート、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記癌細胞は、E3リガーゼ阻害剤への曝露により改変されている、請求項38~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記癌細胞は、PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤への曝露により改変されている、請求項38~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、細胞培養培地中のロイシンもしくはアルギニン、またはその両方の超標準濃度を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、PTEN阻害剤を含む、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記PTEN阻害剤は、ビスペルオキソバナジウム-1,10-フェナントロリン(bpV(phen)、ビスペルオキソバナジウム-5-ヒドロキシピリジン-2-カルボキシル(bpV(HOpic)、ビスペルオキソ-(ビピリジン)-オキソバナデートbpV(bipy)、またはその任意の組み合わせ、を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記PTEN阻害剤は、1つ以上のホルモンまたは成長因子と併せて使用される、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
前記1つ以上のホルモンまたは成長因子は、インスリン、甲状腺ホルモン、塩基性FGF、EGF、またはそれらの組み合わせを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記癌細胞は、アポトーシスの阻害剤への曝露により改変されている、請求項38~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記アポトーシスの阻害剤は、カスパーゼ阻害剤である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記カスパーゼ阻害剤は、zVAD.fmkを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記癌細胞は、寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、請求項38~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記寛容原性化合物がWntリガンドを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記癌細胞は、ベータ-メチル-シクロデキストリンへの曝露による寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
DCおよび癌細胞物質が組み合わされてから24~48時間後に、DCおよび癌細胞物質の組み合わせに凍結防止剤を添加すると共に組み合わせられた物質を凍結保存することをさらに含む、請求項38~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
請求項34~67のいずれか1項に記載の方法により製造された前記個人用免疫療法製品を前記個々の癌患者に投与することを含む、癌を治療する方法。
【請求項69】
癌の治療における、請求項34~67のいずれか1項に記載の方法により製造された前記個人用免疫療法製品の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
悪性細胞と免疫系との相互作用には、特に、特定の腫瘍関連抗原(TAA)を認識する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)による、自然免疫系および適応免疫系による癌細胞の排除、または免疫系と耐性癌細胞の間の平衡、または癌細胞の回避を可能にし、癌の最終的な臨床的検出につながる免疫制御の回避を含む。サイトカインインターロイキン-2などの特定の免疫療法は、既存の免疫応答を促進し、抗CTLA-4、PD-1および抗PD-L1などのチェックポイント阻害剤は、そのような阻害剤によって抑制されていた抗腫瘍応答を放出し得る。しかしながら、癌患者の多くは、悪性細胞の十分な免疫認識を欠いており、そのような方法では癌をうまく制御または排除することができない。すなわち、それらは、進行中の免疫応答の証拠としてのCTL腫瘍浸潤またはPD-1の発現の増加の証拠、または鈍化した免疫応答の証拠としてのPDL-1発現の増加の証拠を有しない。したがって、癌患者において抗癌免疫応答を刺激する改善された方法の必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
開示された実施形態は、自己癌細胞からの腫瘍関連抗原(TAA)を負荷した自己樹状細胞(DC)を含む自己免疫療法製品を含む。そのような製品、およびそれらが含むpDCはex vivoで生成され、自然の過程を通じて、または本明細書に開示される薬剤のクラスへの身体の曝露時に体内で生じるDCを包含しない。それにもかかわらず、これらの製品および組成物は、ex vivoで生成された後、対象、特に癌の治療を必要とする対象の身体に投与され得る。様々な実施形態では、DCまたは癌細胞、あるいはその両方をin vitroで操作して、TAAを標的とする免疫原性を高める。治療される患者の腫瘍から得られた生癌細胞は、腫瘍細胞におけるTAAの発現および/または蓄積を増加させ、それにより存在するTAAの量を増加させる、または癌細胞の寛容原性を減少させる薬剤に曝露され得る。同様に、癌細胞を治療して免疫原性を改善し得る。DCは、細胞内エンドソーム-リソソーム輸送を変化させるアミノグリコシドに曝露され得、それにより、外因性抗原のクロスプレゼンテーションを高める。DCは、溶解された腫瘍細胞または全体ではあるが生存不能な腫瘍細胞に曝露されるため、DCにTAAが負荷され、処理される。次に、TAAを負荷したDCを免疫療法製品として元のドナーの癌患者に投与し得る。図1を参照。
【0003】
開示された実施形態は、癌細胞を改変してそれらのTAA特異的、および一般的な免疫原性を改善する方法、およびDCを改変してそのクロスプレゼンテーションのレベルを増加させる方法を含む。さらなる実施形態は、改変DC、改変癌細胞またはその溶解物、またはその両方を含む組成物を含む。不活性化された癌細胞または細胞溶解物(癌細胞物質)の存在下でDCを培養することにより、DCに抗原が負荷される。いくつかの実施形態では、抗原負荷後、DC培養物から残留癌細胞物質を除去するための手順は取られないため、抗原負荷DCを含む組成物には、特に明記しない限りDCによってまだ取り込まれていない残留癌細胞物質が含まれる。自己抗原負荷DCは、本明細書に記載の個人用抗癌免疫療法製品の主要な成分である。癌の治療におけるこれらの免疫療法製品の使用、およびこれらの免疫療法製品の投与を含む癌治療の方法も開示されている。最後に、DCを改変し、癌細胞を改変して、それらが成分となる免疫療法製品の免疫原性および有効性を改善する特定の方法が開示されている。
【0004】
DCによるクロスプロセシングは、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド抗生物質、またはリポ多糖(LPS)などのトール様受容体4(TLR-4)アゴニストへの曝露によって増加し得る。いくつかの実施形態では、交差処理増強剤は、単球を未熟DCに分化させるプロセスの最初から追加される。これらの実施形態の一態様では、交差処理増強剤の濃度は比較的低い。いくつかの実施形態では、DC成熟および抗原負荷プロセスの開始から、交差処理増強剤が添加されるか、濃度が増加する。これらの実施形態の一態様では、交差処理増強剤の濃度は比較的高い。いくつかの実施形態では、LPSなどのTLR-4アゴニストが成熟剤として使用される。
【0005】
癌細胞は、TAAの発現または蓄積を増加させるため(したがって、癌細胞物質のTAA特異的免疫原性を改善する)または癌細胞物質の全体的な免疫原性を増加させるための異なるメカニズムに依存する様々なアプローチによって改変され得る。いくつかの実施形態では、癌細胞改変の方法は単一のアプローチを使用する。他の実施形態では、癌細胞改変の方法は複数のアプローチを使用する。いくつかの実施形態では、複数のアプローチは単一のメカニズムに依存する。他の実施形態では、複数のアプローチはそれぞれ別個のメカニズムに依存する。さらに他の実施形態では、複数のアプローチのいくつかは共通のメカニズムを有するが、少なくとも1つは別個のメカニズムに依存する。TAAの蓄積を改善するためのアプローチは、エピジェネティック改変によるタンパク質発現の増加、PI3K/AKT/mTOR経路の活性化によるタンパク質発現の増加、プロテアソーム阻害によるタンパク質蓄積の増加、オートファジーの低減によるタンパク質の蓄積の増加、およびアポトーシスを阻害によるタンパク質の蓄積の増加を含む。TAAの免疫原性を改善するアプローチは、TAAの蓄積の改善、寛容原性分子の除去による一般的な免疫原性の増加、および損傷関連分子パターン(DAMP)の増加による一般的な免疫原性の増加を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、エピジェネティック改変のメカニズムは、DNAの脱メチル化またはヒストンの脱アセチル化の阻害を含む。いくつかの実施形態では、PI3K/AKT/mTOR経路を活性化するメカニズムは、PTENの阻害または成長因子またはホ
ルモンの添加を含む。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害のメカニズムは、プロテアソームプロテアーゼ活性の阻害またはユビキチンE3リガーゼの阻害を含む。いくつかの実施形態では、オートファジーを低減するメカニズムは、例えばアミノグリコシド抗生物質による治療によるリソソーム機能の阻害を含む。いくつかの実施形態では、アポトーシスを阻害するメカニズムは、カスパーゼ阻害を含む。いくつかの実施形態では、寛容原性シグナルを除去するメカニズムは、コレステロールおよびWntリガンドを枯渇させることを含む。いくつかの実施形態では、DAMPを増加させるメカニズムは、例えばアミノグリコシド抗生物質での治療によるオートファジーの減少を含む。
【0007】
癌細胞改変の各方法について、改変癌細胞、癌細胞の溶解物、または抗原負荷DCを含む対応する組成物があり、DCには改変癌細胞物質が負荷されている。いくつかの実施形態では、DCは改変DCである。いくつかの実施形態では、特定のアプローチ、メカニズム、または薬剤が具体的に含まれる。いくつかの実施形態では、特定のアプローチ、メカニズム、または薬剤が具体的に含まれない。
【0008】
いくつかの実施形態では、癌細胞の別個の培養物は、異なるアプローチ、メカニズム、または薬剤によってそれぞれ改変され、次いでDC抗原負荷のために一緒に組み合わされる。いくつかの実施形態では、癌細胞の別個の培養物は、異なるアプローチ、メカニズム、または薬剤によってそれぞれ改変され、次いで、別個のDC培養物におけるDC抗原負荷に使用され、その後、抗原負荷DCは単一の免疫療法製品に組み合わされる。いくつかの実施形態では、癌細胞の別個の培養物は、異なるアプローチ、メカニズム、または薬剤によってそれぞれ改変され、次いで、患者に別々に投与される別個の免疫療法製品を作製するために使用される別個のDC培養物におけるDC抗原負荷に使用される。これらの実施形態のいくつかの態様では、別個の免疫療法製品がほぼ同時に(数分から48時間以内に)投与されるが、他の態様では、別個の免疫療法製品が数週間または数ヶ月の間隔で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】同じ患者に由来する癌細胞と樹状細胞を使用して、免疫原性が改善された自己免疫療法抗腫瘍製品を製造するプロセスの概要を示す。
図2】ボルテゾミブ濃度に対する細胞生存反応を示す。約1μM~5μMの場合の応答の線形部分。
図3】様々な濃度のボルテゾミブへの曝露から2日後の卵巣腫瘍細胞株培養の位相差顕微鏡写真である。
図4】20μMのZ-VAD-fmkと5nMのボルテゾミブの連続投与後の形態変化を伴うサバイバルレスキューを示す位相差顕微鏡写真である。
図5】ボルテゾミブとZ-VAd-fmkとの組み合わせが、培養形態または生存の明らかな変化を引き起こさなかったことを示す位相差顕微鏡写真である。
図6】腫瘍細胞を様々な濃度のボルテゾミブに曝露した後の、異なる蛍光体で標識された2つの抗原の平均蛍光強度を示す。
図7】腫瘍細胞を様々な濃度のボルテゾミブに曝露した後の、異なる蛍光体で標識された2つの抗原の画素の総和を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
免疫系は、腫瘍細胞を特異的に認識して排除し得る。癌の治療にこの能力を活用する可能性は長い間認識されてきたが、そうすることの成功はせいぜい限定的である。異種腫瘍細胞または個々の抗原またはエピトープの使用と比較して、免疫原として自己腫瘍細胞を使用すると、いくつかの利点がある。癌細胞には、TAAとして機能し得る変異タンパク質、新抗原が含まれるが、これらは各患者に固有であることが多いため、自己腫瘍のみが信頼できる供給源である。自己腫瘍には癌幹細胞と初期前駆細胞も含まれるため、その亜集団を表すTAAは免疫原性組成物に含まれる。さらに、異種細胞または既製の免疫原を使用する場合のように、自己腫瘍の使用により、標的となる個々の抗原をそれぞれ同定および適合させる必要がなくなる。抗原の供給源として自己細胞を使用することにより、個々の患者の癌に対する抗原の完全な補体が免疫原性組成物に含まれるようになる。
【0011】
しかしながら、腫瘍細胞調製物中に存在するTAAの量は、腫瘍細胞中の抗原の定常状態レベルが低いため、または腫瘍細胞の一部のみが抗原を発現するため、またはその両方により制限される場合がある。特定の例は、癌幹細胞などのまれな亜集団のみに関連する抗原である。腫瘍細胞調製物中のTAAの量が限られていると、調製物のTAA特異的免疫原性に悪影響を与え得る。さらに、癌細胞の一般的な免疫原性を改善し得る。癌細胞はまた、Wntリガンドなどの寛容原性分子を含み得、その除去または枯渇は癌細胞の一般的な免疫原性を改善し得る。癌細胞は、損傷関連分子パターン(DAMP)などの炎症誘発性分子を含み得、その増加は癌細胞の一般的な免疫原性を増加させ得る。DAMPは、熱ショックタンパク質、HMGB-1(高移動度グループボックス1タンパク質)などの様々な核タンパク質および細胞質タンパク質、膜結合タンパク質、細胞傷害後の細胞外マトリックスに由来するタンパク質を含み得る。DAMPは、DNA、ATP(アデノシン5’-三リン酸)、尿酸、ヘパリン硫酸などの非タンパク質分子も含む。ガンマインターフェロン、多くの化学療法剤、照射、特定のモノクローナル抗体、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、および抗体依存性細胞媒介傷害(ADCC)への癌細胞の曝露はまた、DAMP信号を増加させ得る。したがって、様々な実施形態では、腫瘍細胞は、タンパク質発現の増加を引き起こす、タンパク質分解の減少を引き起こす、腫瘍細胞におけるTAAの蓄積を促進する、癌細胞から寛容原性分子を枯渇させる、またはDAMPの癌細胞産生を増加させる1つ以上薬剤に曝露される。いくつかの実施形態は、具体的には、薬剤のクラスの特定の薬剤への曝露を含む。他の実施形態は、具体的には、薬剤のクラスの特定の薬剤への曝露を含まない。
【0012】
タンパク質の発現を増強または強化すると、個々の細胞のTAA発現レベルが増加するだけでなく、癌細胞集団全体で抗原が発現される均一性も向上する。腫瘍細胞調製物中のTAAの量の増加は、どんなメカニズムによっても、免疫原性であるのに十分な物質がある可能性を向上させる。このようにして、体内で有効な免疫原になるには低すぎるレベルで自然に発現されるTAAに対する免疫応答を得ることができる。しかしながら、体内の癌細胞による低レベルの抗原発現は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)および抗体によって認識されるのに十分であり得、そして、そのような免疫応答がそもそも誘発され得る場合、癌細胞の破壊につながる。
【0013】
タンパク質抗原の抗原処理は、2つのパラダイム経路を介して進行する。1つは、外因性抗原がDCを含む抗原提示細胞(APC)に貪食され、エンドソーム区画で部分的に分解されてクラスII MHCに関連付けられるペプチド(エピトープ)が生成されることである。ペプチド-MHC II複合体はAPCの表面に表示され、ここでは、他の可能性の中で、それらはCD4+T細胞によって認識され、B細胞にT細胞の助けを提供するために認可され、抗原に対する抗体応答の誘導と成熟をサポートする。他のパラダイム経路では、内因性タンパク質抗原は、典型的にはプロテオソームによって分解され、生成されたペプチド(エピトープ)はエンドソーム区画のクラスI MHCに関連付けられる。ペプチド-MHC I複合体はAPCの表面に表示され、CTLに成熟するCD8+T細胞によって認識される。
【0014】
抗体は、TAAが腫瘍細胞表面に発現する程度まで、抗腫瘍応答の重要な部分となり得る。しかしながら、多くのTAAは細胞内タンパク質であり、したがって一般的に抗体にアクセスせず、むしろCTLによって標的化される必要がある。外因的に遭遇した抗原が内因性抗原処理経路に迂回され、クラスI MHCと関連した抗原提示とCTL応答の誘導につながるパラダイム的抗原処理経路の改変例がある。このようなクロスプレゼンテーションは、エンドソームの輸送を変更することによって、特にファゴソームとリソソームの融合を遅らせて、より多くのファゴソーム物質がサイトゾルに放出されるようにすることで増加させ得る。ファゴソームとリソソームの融合のこのような遅延は、DCをアミノグリコシド抗生物質に曝露する、またはDCをLPS(リポ多糖)、グルクロンオキシロマンナン、およびモルヒネ-3-グルクロニドなどのTLR4アゴニストに曝露することでTLR4を活性化することによって生じる。このようにして、DCはより広範囲のTAAに対するCTL応答をより効率的に刺激できる。治療はクラスII MHCとの関連では提示を消失させないため、液性および細胞性免疫が刺激される。
【0015】
いくつかの実施形態では、生癌細胞とDCの両方を操作して、それぞれTAAの発現とクロスプレゼンテーションを増強する。他の実施形態では、TAA発現が増強した癌細胞を使用して、操作されていないDCに抗原を提供する。さらに他の実施形態では、TAA発現を増強するために操作されていない生癌細胞を使用して、クロスプレゼンテーションを増強するために操作されたDCに抗原を提供する。しかしながら、DCによる取り込みに対する抗原の可用性の向上とDCによるクロスプレゼンテーションの強化の組み合わせ効果は、細胞免疫療法製品としての操作された抗原負荷DCの免疫原性を相乗的に改善すると予想される。したがって、様々な実施形態では、免疫療法製品は、改変された癌細胞(またはその溶解物)、改変されたDC、またはその両方を使用して作製される。
【0016】
いくつかの実施形態では、患者はヒトである。他の実施形態では、患者は非ヒト哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、またはウマの患者である。いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物はげっ歯類ではない。
【0017】
腫瘍からの生癌細胞の分離
腫瘍の除去またはバルキング除去手術中に、生腫瘍細胞が癌患者の体から除去される。場合によっては、手術は腫瘍(1つまたは複数)全体の除去を伴う。場合によっては、臓器全体またはその実質的な部分を除去する必要がある。除去された組織に病変組織と正常組織の両方が存在する場合、腫瘍組織は正常組織から切り離される。他の例では、手術はパンチまたは針生検を含むがこれらに限定されない生検を伴う。固形腫瘍の場合、酵素消化により組織が刻まれ、解離される。白血病の場合、生癌細胞は、例えば全血の密度勾配沈降または白血球除去によって血液から回収され得る。腹水腫瘍の場合、腹水液を排出してから沈殿させることにより、生腫瘍細胞を回収し得る。回収される生きた癌細胞の数は、腫瘍の大きさや特定の回収方法によって異なるが、一般的には、特に培養で十分に増殖し得ない腫瘍の場合には、より多くの数の細胞が好まれる。したがって、様々な実施形態では、10から10から10またはそれ以上のオーダーの生癌細胞が回収される。消化された細胞外マトリックスおよび他の破片から分離した後、生細胞は増殖のために豊富な細胞培地に移され、および/またはTAAの発現および蓄積を増強するために1つ以上の薬剤に曝露される
【0018】
いくつかの実施形態では、腫瘍または癌細胞は、任意の悪性新生物由来である。いくつかの実施形態は、癌の特定のクラス(1つまたは複数)またはタイプ(1つまたは複数)を具体的に含み、他の実施形態は具体的に除外する。それらは、固形腫瘍の形成または体液中に懸濁した細胞を含むものとして分類され得る。それらは、脳、頭頸部、食道、肺、肝臓、膵臓、腎臓、胃、結腸、前立腺、乳房、子宮、子宮頸部、卵巣、皮膚、骨、血液、眼、または網膜のような起源の組織に従って分類され得る。それらは、例えば、黒色腫、非小細胞肺癌、膠芽腫、腎細胞癌などの特定のタイプに分類され得る。トリプルネガティブ乳癌、ホルモン抵抗性前立腺癌、PD-L1陽性(または陰性)肺癌などのバイオマーカー発現に応じて、さらに細分化され得る。また、それらは、疾患の進行に応じて細分化され得る:非侵襲的、侵襲的、転移性;ステージ0、1、2、3、または4;特定の癌に関連する様々な尺度。癌はまた、それらによって運ばれる表現型的に重要な突然変異、例えばp53またはB-Rafの突然変異に従って分類され得る。
【0019】
分離された癌細胞の抗原発現と免疫原性の増強と強化
様々な薬剤が利用可能であり、いずれかのメカニズムによってTAAの蓄積または曝露を増加させるか、腫瘍細胞の寛容原性を低下させ得る。これらは、タンパク質発現の増加、タンパク質分解の低減、アポトーシスの阻害、細胞膜からのコレステロールおよびWntリガンドの枯渇を含む。いくつかの実施形態では、単離された生癌細胞は24時間から4週間まで培養される。他の実施形態では、培養期間は4~6週間、4~8週間、またはそれ以上に及ぶ。さらに他の実施形態では、培養期間は短く、数時間、例えば2、3、4、5、6時間またはそれ以上続くが、24時間を超えない。いくつかの実施形態では、培養期間は、利用可能な癌細胞の数を増加させるための増殖期、続いて癌細胞が全体的な免疫原性を改善するために改変される増強期に分けられる。他の実施形態では、増殖期と増強期は一致するか、増殖期はないだろう。増強剤およびその作用メカニズムに応じて、いくつかの実施形態では、増強剤は増強期を通して存在するであろう。他の実施形態では、増強剤は、培養の最後の数時間または増強期の最後の日のみに存在する、または増強期全体に存在するが、この最終期間に薬剤の濃度が増加するだろう。さらに他の実施形態では、増強剤は、培養の最初の数時間、または増強期の最初の日にのみ存在する、または、薬剤の濃度はこの最初の期間の後に減少するが、増強期の残りの全体ではより低い濃度に維持される。いくつかの実施形態では、癌細胞は、本明細書で以下に記載される増強手順のちょうど1つの間に薬剤(1つまたは複数)に曝露されるであろう。他の実施形態では、癌細胞は、複数の増強手順、例えば、本明細書で以下に記載される増強手順の2、3、4、またはそれ以上の増強手順に曝露される。いくつかの実施形態では、これらの改変された癌細胞は、増強期の直後に自己DCに曝露されるだろう。他の実施形態では、これらの改変された癌細胞は、後で自己DCに曝露するために凍結保存される。
【0020】
エピジェネティック改変
タンパク質発現レベルは、癌細胞のエピジェネティック改変により増加され得る。生理学的に正常な細胞と比較して、癌細胞は様々なタンパク質の発現を低下させるエピジェネティック改変を有する。したがって、獲得された癌細胞のエピジェネティック改変を逆転させることにより、下方制御されたTAAの発現を回復させ得る。
【0021】
転写活性化は、ヒストン尾部のリジン残基のアセチル化に関連する。タンパク質発現をダウンレギュレートできるエピジェネティックメカニズムの1つは、ヒストン尾部のリジン残基の脱アセチル化である。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDI)への曝露は、タンパク質発現と癌細胞の抗原含有量の増加を伴うmRNA転写の増加に使用され得る。HDIの例は、トリコスタチンAなどのヒドロキサム酸(またはヒドロキサメート)、環状テトラペプチド(トラポキシンBなど)、およびデプシペプチド、ベンズアミド、求電子ケトン、ならびにフェニルブチレートおよびバルプロ酸などの脂肪酸化合物を含む。第2世代HDIには、ヒドロキサム酸ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824、およびパノビノスタット(LBH589);およびベンズアミド:エンチノスタット(MS-275)、CI994、およびモセチノスタット(MGCD0103)を含む。さらに、クラスIIIヒストン脱アセチル化酵素はNADに依存しているため、ニコチンアミドと、ジヒドロクマリン、ナフトピラノン、2-ヒドロキシナフトアルデヒドなどのNADの誘導体によって阻害される。したがって、これらの薬剤は、TAAの転写活性化と発現のレベルを増加させるために使用され得る。
【0022】
タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターは通常、CGジヌクレオチドの頻度が増加し、CpGアイランドと呼ばれる。これらのCGジヌクレオチドはメチル化され得、CpGアイランドでのこれらのジヌクレオチドの過剰メチル化は転写サイレンシングを引き起こし得る。このような過剰メチル化は、有糸分裂後の娘細胞に受け継がれ得る安定したエピジェネティック変化である。このようなサイレンシングは、例えば遺伝子量の調節など、通常の生理機能で役割を果たすが、癌では異常な高メチル化がよく見られる。脱メチル化剤を使用して、癌細胞によって発現され得る生殖細胞系または腫瘍特異的遺伝子を含む、サイレンシング化された遺伝子の発現を元に戻し得る。
【0023】
5-アザシチジン(アザシチジン、5-アザ-CR;Vidaza(登録商標)、Celgene Corp., Summit, NJ, USA)および5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン、5-アザ-CdR(Dacogen(登録商標), SuperGen, Inc., Dublin, CA, USA))のような脱メチル化剤は、以前は抗癌剤として使用されていたが、別のメカニズムで動作する。高濃度では、これらの薬物は細胞毒性の程度まで正常なポリヌクレオチド生理機能を破壊する。RNAに優先的に取り込まれるアザシチジンはタンパク質合成を破壊するが、デシタビンはDNAにのみ取り込まれ、低濃度ではDNAメチルトランスフェラーゼを不活性化し、CpGメチル化パターンの遺伝性を破壊する。したがって、これらの脱メチル化剤は、TAAの発現を増加させるために使用でき、好ましい実施形態は、脱メチル化剤としてデシタビンを使用する。
【0024】
プロテオーム分解の阻害
プロテアソーム阻害剤は、カスパーゼ活性化による細胞死を引き起こす腫瘍細胞タンパク質の代謝回転を破壊するために使用されるよく知られた治療薬である。正常細胞では、プロテアソームはユビキチン化タンパク質の分解によりタンパク質の発現と機能を調節し、さらに異常またはミスフォールドタンパク質の細胞を浄化する。
【0025】
プロテオソームは細胞の主要な中性タンパク質分解装置であり、通常のタンパク質代謝回転、ならびにサイトゾルおよび核の損傷、ミスフォールド、および異常タンパク質、特にユビキチン化されたタンパク質の分解において主要な役割を果たす。タンパク質分解の長期的な閉塞は細胞死につながるが、最初はタンパク質の蓄積を引き起こし、それ以外の場合は分解するはずである。プロテアソームの阻害剤および非ビクチネーション経路の酵素、特にE3リガーゼを使用して、タンパク質分解をブロックし得る。
【0026】
転写および翻訳の失敗、ゲノムの突然変異、または酸化もしくは熱などの多様なストレス条件により、ミスフォールドされたタンパク質が細胞のあらゆる区画で生成される。ミスフォールドされたタンパク質は、タンパク質分解経路、最も顕著にユビキチン-プロテアソーム系およびオートファジー液胞(リソソーム)系を標的とする。したがって、プロテアソーム系であるユビキチンを阻害すると、抗原的価値を有する可能性のあるミスフォールドまたは変異(新生抗原)タンパク質の蓄積が生じる。二次的な結果として、リソソーム処理の増加は、免疫系へのMHC提示の増加につながり得る。
【0027】
複数のメカニズムが関与する可能性が高いが、プロテアソーム阻害はプロアポトーシス因子の分解を防ぎ、それにより新生細胞のプログラム細胞死を引き起こすと考えられている。プロテアソーム阻害は、比較的高用量(50~500nM)で短期間投与した後、細胞内ペプチドのバランスを変えることも示された。
【0028】
哺乳類細胞に侵入し、ユビキチン-プロテアソーム経路によるタンパク質の分解を阻害し得る20Sプロテアソームの様々な非ペプチドおよびペプチド、可逆的および不可逆的阻害剤が特定されている。最初に発見された非ペプチド性プロテアソーム阻害剤は、天然物のラクタシスチンであった。他のプロテアソーム阻害剤は、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガレート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ(ONX-0912)、デランゾミブ(CEP-18770)、エポキソマイシン天然選択的阻害剤、ベータ-ヒドロキシベータ-メチルブチレート(HMB)、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブおよびイキサゾミブを含む。E3リガーゼ阻害剤は、nutlin-3、JNJ-26854165(セルデメタン)、NVP-CGM097、NSC207895、N-(4-ブチル-2-メチルフェニル)アセトアミド(SKP2E3リガーゼ阻害剤II)、5-(3-ジメチルアミノプロピルアミノ)-3,10-ジメチル-10H-ピリミド[4,5-b]キノリン-2,4-ジオン(Hdm2E3リガーゼ阻害剤II)、および9H-インデノ[1,2-e][1,2,5]オキサジアゾロ[3,4-b]ピラジン-9-オン(SMER3)を含む。したがって、これらの薬剤を使用して、癌細胞にTAAを蓄積させ得る。
【0029】
ボルテゾミブのin vivo使用は、DCワクチン接種とボルテゾミブ治療を組み合わせた治療戦略の設計に影響を与える先天性および適応性の抗腫瘍免疫を調節する天然のヒト血液DCの能力を劇的に損なうことが示された。プロテアソーム阻害剤を使用すると、通常はプロテアソームによって分解されるカスパーゼカスケード成分が蓄積し、アポトーシスによる細胞死を引き起こす。
【0030】
いくつかの実施形態では、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤による癌細胞のex vivo治療は、in vivo曝露から生じるDCの障害および死を回避するために利用される。ex vivo治療を利用することにより、DCのプロテアソーム阻害剤への曝露を回避または低減し得る。さらに、パンカスパーゼ阻害剤(すなわち、Z-VAD-fmk)によるカスパーゼの封鎖は、腫瘍細胞またはDCのどちらであれ、アポトーシスの開始を防ぎ、そのどちらも逆効果になる可能性がある。
【0031】
カスパーゼ阻害剤(薬効範囲が広いカスパーゼのZ-VAD-fmkなど)とプロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブなど)の同時または連続使用により、腫瘍の新抗原を含む様々なペプチドやタンパク質の蓄積が期待でき、それにより抗原負荷が増加し、より良い免疫応答を引き起こす。さらに、プロテアソーム阻害剤の腫瘍細胞とのin vitroでの使用により、DCをプロテアソーム阻害剤に曝露することが回避されるため、DCの抗原提示および抗腫瘍免疫活性化機能が妨げられない。
【0032】
オートファジーの削減
アミノグリコシド抗生物質は、リソソームにおける選択的蓄積とリソソーム酵素の阻害により、哺乳動物細胞に対して毒性を示す。鉄イオンの非存在下でのゲンタマイシンによる腫瘍細胞のin vitro治療は、リソソームプロセシングを減少させ、DCによる食作用に有利な強化されたDAMPシグナル伝達とともにTAA蓄積を増加させる。この効果は、照射や飢えなどのオートファジーを増加させるストレスに続いてより顕著になる。したがって、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド抗生物質を使用して、オートファジーを低減または遅延させ、それによって細胞内のタンパク質「ジャンク」を増加させて、DAMPシグナル伝達を増加させ得る。いくつかの実施形態では、癌細胞はストレスを受け、その後50~150μg/mlのゲンタマイシンに曝露される。DAMPシグナル伝達の増加は、TAAを含むタンパク質の蓄積に加えて、癌細胞の一般的な免疫原性を高める。
【0033】
PI3K/AKT/mTOR経路の活性化
PI3K/Akt/mTOR経路は、細胞の増殖と生存、細胞の成長と分化、インスリン作用、タンパク質合成とオートファジーの制御などを含み、かつ多くの癌で悪性状態を維持する中心的な役割を有する多くの細胞プロセスに関与する複雑なシグナル伝達経路である。経路活性化のメカニズムは、腫瘍抑制因子PTEN機能の阻害、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスフェート3-キナーゼ(PI3K)の増幅、Aktの増幅または突然変異、および成長因子受容体の増幅を含む。経路活性化の下流効果の1つは、タンパク質翻訳の主調節因子であるmTORの活性化である。mTORは、TORC1複合体とTORC2複合体の2つの複合体に存在する。TORC1複合体では、mTORはその下流エフェクターS6キナーゼ/リボソームタンパク質S6および4EBP-1/eIF-4Eにシグナルを送り、タンパク質の翻訳を制御する。mTORは一般にAktの下流基質と考えられているが、mTORはTORC2複合体を介して経路に正のフィードバックを提供し得る。
【0034】
mTORC1とmTORC2は両方とも、ホルモンと成長因子に反応する。特に、mTORC1は、アミノ酸やグルコースなどの栄養素によって急激に調節されているようである。特に大量のロイシンとアルギニンの細胞培養培地中のアミノ酸の存在は、増加したリボソーム生合成とタンパク質生合成、およびオートファジーの抑制を通して細胞成長を増加させ得る。ヒト肝癌細胞株の増殖は、in vitroでロイシン濃度に依存することが示されており、0.05mMのロイシン含有培地での増殖速度は0.2mMと比較して大幅に低下している。様々な実施形態では、ロイシンまたはアルギニン対アラニンのモル比は、少なくとも10:1以上、例えば25:1、50:1、または100:1である。したがって、培養培地中のロイシンおよび/またはアルギニンの標準レベルよりも高いと、培養癌細胞の増殖およびタンパク質発現(TAA発現を含む)を増加させ得る。
【0035】
PTEN(第10染色体でホスファターゼとテンシンのホモログが削除された)は、ホスファチジルイノシトール-3,4,5-トリホスフェート3-ホスファターゼをホスファチジルイノシトール-4,5-ジホスフェートに変換し、PI3KによるPKB/Akt活性化に対抗するホスファチジルイノシトール-3,4,5-トリホスフェート3-ホスファターゼである。PTENは、細胞膜と一時的に相互作用してその脂質基質を代謝する50kDのサイトゾル酵素である。多くの腫瘍タイプでは、いくつかの異なるメカニズムによる機能の喪失が高頻度で観察されている。PTEN活性抑制は、細胞の増殖、成長、生存、および関連する代謝の変化に多くの細胞系統で強力な影響を及ぼす。オルトバナジン酸ナトリウムなどのバナジウム化合物は、ホスファターゼ阻害剤として長い間認識されてきた。ビスペルオキソバナジウム1,10フェナントロリン(bpV(phen))およびビスペルオキソバナジウム5-ヒドロキシピリジン-2-カルボキシル(bpV(HOpic))などのペルオキソバナジウム化合物は、単純なバナデート化合物よりも増加した生物学的効力を示し、標的選択性が高い。N-(9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロフェナントレン-2-イル)ピバルアミド(SF1670)は、PTENの強力かつ特異的な阻害剤でもある。いくつかの実施形態では、PTEN阻害剤は、PI3K経路を介して作用する薬剤と組み合わせて使用される。そのような要因には、既知の成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、VGF神経成長因子誘導性(VGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)など)、ホルモン、インテグリン(ラミニン)、および他の受容体媒介シグナル伝達因子を含む。したがって、これらの因子を使用して、タンパク質合成を含む細胞活性化のレベルを増加し、培養癌細胞におけるTAA発現のレベルを増加し得る。細胞培養培地に添加される因子の好ましい組み合わせは、インスリン、甲状腺ホルモン、塩基性FGFおよびEGFである。したがって、PTENの阻害剤は、特に成長因子と組み合わせて使用すると、タンパク質合成の増加だけでなく、癌細胞の成長と増殖の加速を可能にする。
【0036】
アポトーシスの阻害
アポトーシスは、様々なストレスや生化学的シグナルによって開始されるプログラムされた細胞死の制御されたプロセスである。これは、細胞の外傷による壊死とは対照的である。このプロセスは、カスパーゼと呼ばれる、サイトゾルのアスパルテート特異的システインプロテアーゼである酵素ファミリーによって制御されている。それらは、アポトーシスプログラムの開始と実行に関与する。カスパーゼは潜在的チモーゲンとして発現し、自己タンパク質分解メカニズムまたは他のプロテアーゼ(しばしば他のカスパーゼ)による処理によって活性化される。ヒトカスパーゼは、サイトカイン活性化(カスパーゼ-1、-4、-5、および-13)、アポトーシス開始(カスパーゼ-2、-8、-9、および-10)、アポトーシス実行(カスパーゼ-3、-6、および-7)の3つの機能群に細分類され得る。カスパーゼは、APAF1、CFLAR/FLIP、NOL3/ARC、およびBIRC1/NAIP、BIRC2/cIAP-1、およびBIRC3/cIAP-2、BIRC4/XIAP、BIRC5/Survivin、BIRC7/Livinなどのアポトーシス阻害剤(IAP)ファミリーのメンバーを含む様々な刺激に反応する。IAP活性は、DIABLO/SMACまたはPRSS25/HTRA2/Omiによって調節される。薬効範囲が広いカスパーゼ阻害剤へのin vitro曝露は、細胞死を防ぎ、TAAの蓄積による腫瘍細胞の急速な増殖を可能にする。
【0037】
細胞透過性で可逆的または不可逆的な、天然または合成源由来のペプチドカスパーゼ阻害剤または非ペプチドカスパーゼ阻害剤の非限定的な例を表1に示す。これらの薬剤は、培養中の生癌細胞の数と割合を増加させ、TAAの蓄積を可能にするために使用され得る。
【0038】
【表1】
【0039】
DC阻害性シグナル伝達分子の枯渇
細胞間コミュニケーションの共通のモードは、シグナル伝達分子の分泌であり、その分子は隣接する細胞によって受け取られる。そのようなシグナル伝達系の1つは、脂質改変された疎水性糖タンパク質の大きなファミリーであるWntリガンドによって媒介される。実際、一次配列が比較的親水性であるため、疎水性を提供するのは脂質改変である。細胞表面でのWntリガンドの受容は、遺伝子転写の変化につながる細胞内シグナル伝達カスケードを開始する。DCでは、Wntシグナル伝達はβ-カテニンの活性化につながり、これは、耐性を促進し、炎症を制限する重要な工程である。
【0040】
Wntシグナル伝達の異常な調節は、多くの腫瘍タイプで共通である。悪性状態に関連するエピジェネティック変化および遺伝的変化により、Wnt経路活性が上昇する。さらに最近では、Wntシグナル伝達レベルが、腫瘍成長の促進に関与する幹様腫瘍細胞を識別することが明らかになった。腫瘍では、Wntシグナル伝達の蓄積は、過剰なWntシグナル伝達を伴う抗原提示細胞の調節による免疫回避に部分的に関与する。さらに、癌免疫療法の最も望ましい標的の1つである癌幹細胞は、特に寛容原性であると思われる。
【0041】
Wntリガンドは、脂質ラフト、コレステロール、ガングリオシド、およびスフィンゴ脂質が豊富な細胞の細胞膜の界面活性剤耐性部分に優先的に見られる。膜コレステロールの枯渇は脂質ラフトの完全性を破壊し、同時にWntを枯渇させる。利用可能な様々なコレステロール枯渇剤の中で、メチル-β-シクロデキストリン(MCD)は、β-グルコピラノースユニットからなる高水溶性の環状七糖であり、細胞からのWntリガンドを含む他の脂質改変膜成分とともに、コレステロールの枯渇に最も効果的な薬剤である。Wnt富化腫瘍の場合、DCへの曝露前に腫瘍細胞からWntリガンドを捕捉および除去することにより、DCの寛容原性状態へのプログラミングが妨げられるため、癌細胞製剤の免疫原性が向上する。したがって、MCDなどのコレステロール枯渇剤による治療はまた、Wntリガンドを枯渇させ、腫瘍細胞、特に癌幹細胞の免疫原性の改善をもたらす。
【0042】
抗原処理の増強
細胞溶解性免疫応答は、主にCD8+T細胞によって媒介される。そのような応答を刺激するために、DCは、主に内因的に発現された抗原を負荷したクラスI MHCと関連して抗原を提示する必要がある。食作用物質は主にクラスII MHCと関連して提示されるが、クラスI MHCと関連して食作用抗原の提示につながるクロスプレゼンテーションと呼ばれるプロセスがある。摂取後、ファゴソームは、最初にエンドソームのコンパートメント、次いでリソソームのコンパートメントの連続的な融合および分裂イベントを経て、ファゴソームの内容物の分解、「ファゴソーム成熟」と呼ばれるプロセスを引き起こす。DCは、クロスプレゼンテーションに最適な条件を可能にする特殊な食作用経路を開発した。これらの専門分野には、軽度の分解性のファゴソーム環境、プロテアソームを介した分解のための細胞質ゾルへの抗原の輸送、および小胞体(ER)またはファゴソームでの生成ペプチドの効果的な負荷が含まれる。ファゴソームとリソソームの正常な融合により、ファゴソームの内容物が分解される。融合プロセスの遅延により、ファゴソームの内容物の細胞質への輸出が強化される。したがって、腫瘍細胞のファゴソーム処理の意図された遅延は、TAAのクロスプレゼンテーションの増加および細胞傷害性免疫応答の強化をもたらし得る。
【0043】
アミノグリコシド抗生物質はリソソームに蓄積し、リソソーム酵素を阻害し、オートファジー物質の構築をもたらす。物質の蓄積は、活性酸素種(ROS)の生成を含む細胞ストレス応答を引き起こす。ROSとリソソーム鉄の存在下で、リソソーム膜wo浸透し、その内容物がサイトゾルに放出され、アポトーシスと細胞死を引き起こす。ただし、DCの毒性は、培地に鉄が含まれていないため低減できる。したがって、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド抗生物質の低濃度は、クロスプレゼンテーションのレベルを高める。TLR4アゴニストは、ファゴソームとリソソームの融合の遅延も媒介する。したがって、いくつかの実施形態では、アミノグリコシド抗生物質には、LPS、グルクロンオキシロマンナン、またはモルヒネ-3-グルクロニドなどのTLR4アゴニストが補充される。
【0044】
樹状細胞の分離
本明細書に記載の実施形態で使用するためのDCは、腫瘍細胞が単離される患者のと同じ患者の血液から単離された単球の分化によって得られ得る。単球からのDCの分化のための技術は、当技術分野で十分に確立されている。手短に言えば、典型的なプロトコルでは、密度勾配遠心分離によって全血から末梢血単核細胞(PBMC)が分離される。PBMCが培養される。単球は付着性であり、非付着性細胞は1~24時間後に洗い流される。あるいは、免疫磁気ビーズを使用して、単球をPBMCから単離し得る。単球をGM-CSFおよびIL-4の存在下で5~8日間培養して、未熟DCに分化させる。この時点で、未熟DCはゆるく付着しており、穏やかなピペッティングにより収穫できる。次に、成熟因子、典型的にはLPSなどのTLR-4アゴニストの存在下で、未熟DCをさらに約2日間培養する。あるいは、例えば、TNFα、IL-6、IL-1β、およびPGE2を含む単球成熟カクテルを使用し得る。通常、成熟と抗原の負荷は同時に実行される。手順は、新たに分離または凍結保存されたPBMCで実行され得る。
【0045】
TAA増強後の癌細胞の収穫と不活性化
癌細胞培養は、TAAの発現もしくは蓄積を増強するため、または本明細書に記載のものを含むがこれらに限定されない免疫原性を高めるための1つ以上の手順を受けた後、酵素消化(例えば、トリプシンTrypLE、コラゲナーゼ、またはディスパーゼによる)または機械的スクレーピングによって収穫される。細胞を収集し、中性緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、生理食塩水、ハンクス平衡塩類溶液、リンガー液など)での沈降の繰り返しサイクルにより、培地および酵素溶液がなくなるまで洗浄する。総タンパク質は、ビウレット法または色素(ブラッドフォード、3’,3’’,5’,5’’-テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル-TBPEE、またはエリトロシン-B)を使用した分光光度法によって決定され得る。
【0046】
これらの癌細胞は、患者/ドナーに投与される免疫療法製品の調製に使用されるため、生存している悪性細胞が患者に再投与されないようにすることを確実にするために、それらを不活性化する(細胞分裂できないようにする)ことが重要である。不活性化の1つの方法は、放射線源(Cs-137、Co-60など)に10~100Gy(1,000~10,000Rad)の合計累積線量まで曝露することによるガンマ線照射である。あるいは、同じ目的のためにX線またはUV照射への曝露を使用し得る。照射された全細胞は、抗原負荷のためにDCと組み合わせ得る。
【0047】
細胞溶解は、照射の代わりに、または照射に加えて、不活性化に使用され得る。溶解は、等張液または低張液で繰り返し凍結融解サイクルに曝露され、凍結防止剤を加えないことで得られる。機械的溶解は、超音波処理器を使用して高強度の超音波に曝露することによっても生成され得る。浴型またはプローブ型の超音波処理器はどちらも使用できるが、サンプルの相互汚染を避けるために、後者には特別な注意を払う必要がある。浸透圧溶解は、細胞を低張緩衝液に曝露することで得られる。現在の適正製造基準と一致する他の溶解方法も使用され得る。溶解物は、抗原負荷のためにDCと組み合わせられ得る。癌細胞溶解物および不活性化された全癌細胞は、まとめて癌細胞物質と呼ばれる。
【0048】
不活性化が完了したかどうかを評価するための様々な品質管理方法が利用可能である。1つの方法は色素排除で、その方法においては、生細胞は色素を排除するが、不活性化された細胞は染色される。適切な染料は、光学顕微鏡による評価、または細胞計数機(Vi-CELL(商標);Beckman Coulterなど)を使用した自動化された方法での評価に使用され得るトリパンブルー、および蛍光顕微鏡法またはフローサイトメトリーによる評価に使用され得る、ヨウ化プロピジウムまたは7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)を含む。生存率は、細胞計測器またはフローサイトメーターを使用した粒子サイズ分析に従って評価され得る。最後に、生細胞の検出に使用できる様々な増殖アッセイがある。これらは、DNAへの放射標識ヌクレオチドの取り込みに依存する増殖アッセイ、ならびにMTTおよびMTSアッセイのように対応するテトラゾリウム塩の還元により形成されるホルマザン色素などの発色産物に依存するアッセイを含む。
【0049】
場合によっては、患者は免疫療法製品を受け取る準備ができていない場合があり得る。例えば、免疫療法レジメンは、特定のスケジュールで複数回の投与を要求するかもしれないが、次の投与の時間はまだ来ていない。そのような場合、不活性化された細胞または細胞溶解物は、将来の使用のために凍結されてもよい。不活性化された細胞全体の例では、DMSO、グリセロール、トレハロース、スクロースなどの凍結防止剤が使用され、細胞はLNフリーザーなどで約-135℃~約-196℃で保存される。溶解物は-20℃以下で保存され得る。いくつかの実施形態では、癌細胞は、治療期間またはそのかなりの部分を通して培養で維持され、複数のサイクルの増強期培養が可能になり、予定された投与ごとに新鮮な収穫が行われ得る。他の実施形態では、単一の増強期および収穫により、複数回、さらにはすべての投与のための癌細胞物質が提供される。
【0050】
DCの抗原負荷
不活性化された増強された癌細胞または細胞溶解物(癌細胞物質)は、LPSなどの成熟因子とともに未熟DCの培養物に加えられる。DCは、抗原の取り込みおよび抗原プロセシングが起こることを可能にするために、さらなる期間培養される。様々な実施形態では、この抗原処理期は4~36時間続く。好ましい実施形態では、DCはアミノグリコシド抗生物質で処理されており、この場合、そのような処理は処理期の間継続される。抗原処理期の終わりに、DCのアリコートは、必要になるまで凍結防止剤の存在下で液体窒素で凍結される。いくつかの実施形態では、抗原負荷DCは、患者への投与の前に癌細胞または細胞溶解物から精製される。他の実施形態では、混合物は患者に投与される。溶解物からDCを精製するために、単一の沈降および再懸濁洗浄が使用され得る。免疫親和性法、例えば免疫磁気ビーズを使用して、抗原処理期後に残っている全癌細胞を除去し得る。他の実施形態では、抗原調製物とDCは分離されていない。混合物は免疫原性組成物に使用される。
【0051】
免疫
TAAを負荷したDC(癌細胞物質とDCを組み合わせたもの)が患者/ドナーに投与される。投与は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、リンパ内(すなわち、求心性リンパ管へ)、結節内(例えば、鼠径リンパ節または軸リンパ節へ)を含む、医学的に適切な注射経路による注射または注入により得る。TAA負荷DCは、単独での免疫療法で使用するか、CTLA4(例えば、イピリムマブ)、PD-1(例えば、ペンブロリズマブまたはニボルマブ)、および/またはPD-L1(例えば、アテゾリズマブ)に対する抗体などの免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、用量は、最初の月については1週間間隔で投与され、その後、合計8回の用量については毎月投与される。他の実施形態は、単回投与のみを含む。他の実施形態は、疾患が検出されなくなるか、疾患の明らかな進行があるまで定期的な投与を継続する。さらに他の実施形態では、免疫療法製品は、例えば、数時間、数日、数週間、または数ヶ月にわたる連続注入として投与される。いくつかの実施形態では、製品の新しいバッチは、新しい転移が出現するなら、および出現するとき、新しい転移から生成される。投与されるDCの数は、投与ごとに約1~約2000万DC、例えば1000万DCなど、大きく異なり得る。しかしながら、使用する細胞の数を増やしたり減らしたりすることもし得る。例えば、複数のボーラス注射を使用するいくつかの実施形態では、注射あたりのDCの数は、上記範囲の下端またはさらにそれ未満であり得る。例えば、長期間にわたって注入を使用するいくつかの実施形態では、投与されるDCの総数は、上記範囲の上限に近づくか、それを超える場合がある。いくつかの実施形態では、投与されるDCの数は、患者から得られ得る腫瘍組織またはDCの量によって制限される。
【0053】
ロジスティクス
ここで説明する手順を実行するための専門知識とインフラは、癌患者が治療を受けるすべての病院、診療所、外来手術センターなど(総称して、患者治療施設)で利用できるとは限らない。いくつかの実施形態では、必要なインフラおよび訓練された人員を備えた中央施設は、患者の治療部位から治療を必要とする患者の腫瘍組織および血液を受け取る。中央施設は、本明細書に記載されるように癌細胞および/またはDCを改変する手順を実行して、自己TAAを負荷した自己DCを含む個人用抗癌免疫療法製品を生成し、免疫療法製品を患者治療施設に送り、そこで免疫療法製品を患者に投与し得る。いくつかの実施形態では、中央施設は、医師の判断において患者にとって特に有益である患者の医師からの指示に従って、癌細胞および/またはDCの特定の改変を実行する。いくつかの実施形態では、中央施設が提供するガイダンス(投与が行われる時間枠、投与量、投与頻度、注入の場合の注入速度、または受領から投与までの免疫療法製品の保管方法など)およびそれによる患者の利益(ならびに医師および/または患者治療施設は、患者を治療できるという利益を受ける)に従って、免疫療法製品が患者に投与される。腫瘍組織が患者から除去される患者治療施設と、免疫療法製品が投与される患者治療施設は、同じでも異なっていてもよい。「中央施設」とは、施設が複数の患者治療施設にサービスを提供することを意味する。中央施設は、患者治療施設の1つと同じ建物またはキャンパスに同所配置することも、すべての患者治療施設とは別所配置することもできる。
【0054】
場合によっては、患者は、癌の改善という形態で利益を得る(つまり、癌の進行が止まるか、退行するか、寛解するか、二次症状が改善するか、または他の治療の有害な副作用を回避する)。これらの実施形態の態様では、医師、他の医療従事者、医療施設(患者治療施設など)、健康維持組織、および/または中央施設は、患者の要請で活動している。他の態様では、患者の利益は、組織の寄付に同意し、かつ医師、他の医療従事者、医療施設(患者治療施設など)、健康維持組織、および/または中央施設の命令と指示に従った免疫療法製品の投与を受けること、または実行する方法の様々な必要な工程の支払いを手配することを条件とする。その他の場合、医師、他の医療従事者、医療施設(患者治療施設など)、健康維持組織、および/または中央施設は、患者の前向きな結果を得るか、方法の1つ以上の必要な工程を実行するために支払われることにより、評判またはビジネス的利益を得、医師の残りのチェーンの患者もしくはその他の関係者、他の医療従事者、医療施設(患者治療施設など)、健康維持組織、および/または中央施設は彼らの要請で活動している。他の態様では、医師、他の医療従事者、医療施設(患者治療施設など)、健康維持組織、および/または中央施設の利益は、医師の残りのチェーンの患者もしくはその他の関係者、他の医療従事者、医療施設(患者治療施設など)、健康維持組織、および/または中央施設の命令または支持を条件とする。
【0055】
凍結保存された免疫療法製品(すなわち、凍結保存された抗原負荷DC)は、患者が投与の準備ができるまで中央施設に保管される。その後、単回投与は患者治療施設に出荷され、そこで解凍されて、さらに処理または操作することなく患者に投与される。患者治療施設と中央施設が同じ場所にあり、抗原処理期が終了するときに患者が免疫療法製品を受け取る準備ができている場合、免疫療法製品を凍結保存する必要はないが、代わりに患者に迅速に投与され得る。
【0056】
特定の実施形態のリスト
以下の実施形態のリストは、本明細書で説明される幅、組み合わせおよびサブコンビネーション、発明のクラスなどに関する様々な実施形態の例示であるが、本明細書で支持を見つけるすべての実施形態の網羅的な列挙を意図するものではない。
実施形態1.同じ癌患者からの癌細胞および樹状細胞(DC)を含む組成物であって、
前記癌細胞もしくは前記DC、またはその両方は、前記患者の癌によって発現される腫瘍関連抗原(TAA)の蓄積または免疫原性を改善するためにex vivoで改変されている、組成物。
実施形態2.癌患者からのDCを含む組成物であって、前記DCには、前記癌患者から除去された腫瘍から単離された癌細胞からの抗原性物質が負荷され、前記癌細胞もしくは前記DC、またはその両方は、前記患者の癌によって発現されるTAAの蓄積または免疫原性を改善するために改変されている、組成物。
実施形態3.TAAの蓄積を改善するための前記改変は、エピジェネティック改変によるタンパク質発現の増加を含む、実施形態1または2に記載の組成物。
実施形態4.TAAの蓄積を改善するための前記改変は、PI3K/AKT/mTOR経路を活性化することによりタンパク質発現を増加させることを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態5.TAAの蓄積を改善するための前記改変は、プロテアソーム阻害によるタンパク質蓄積の増加を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態6.TAAの蓄積を改善するための前記改変は、オートファジーを減少させることによりタンパク質蓄積を増加させることを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態7.TAAの蓄積を改善するための前記改変は、アポトーシスを阻害することによりタンパク質蓄積を増加させることを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態8.TAAの免疫原性を改善するための前記改変は、寛容原性分子の除去を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態9.TAAの免疫原性を改善するための前記改変は、損傷関連分子パターン(DAMP)を増加させることにより一般的な免疫原性を増加させることを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態10.前記DCは、増加したレベルのクロスプレゼンテーションを有するように改変されている、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態11.前記DCは、アミノグリコシド抗生物質への曝露により改変されている、実施形態10に記載の組成物。
実施形態12.前記アミノグリコシド抗生物質は、ゲンタマイシンを含む、実施形態11に記載の組成物。
実施形態13.前記DCは、トール様受容体4アゴニストへの曝露により改変されている、実施形態10~12のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態14.前記癌細胞は、増加した量のTAAを発現または蓄積するように改変されている、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態15.前記癌細胞は、ゲノム脱メチル化剤への曝露により改変されている、実施形態14に記載の組成物。
実施形態16.前記ゲノム脱メチル化剤は、デシタビンを含む、実施形態15の組成物。
実施形態17.前記癌細胞は、ヒストンアセチル化促進剤への曝露により改変されている、実施形態14に記載の組成物。
実施形態18.前記ヒストンアセチル化促進剤は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含む、実施形態17に記載の組成物。
実施形態19.前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、バルプロ酸を含む、請求項18に記載に記載の組成物。
実施形態20.前記癌細胞は、プロテアソーム阻害剤への曝露により改変されている、実施形態14に記載の組成物。
実施形態21.前記プロテアソーム阻害剤は、ラクタシスチン、エポキソマイシン、ベータ-ヒドロキシ-ベータ-メチルブチレート、またはそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態20に記載の組成物。
実施形態22.前記癌細胞は、E3リガーゼ阻害剤への曝露により改変されている、実施形態14に記載の組成物。
実施形態23.前記癌細胞は、PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤への曝露により改変されている、実施形態14に記載の組成物。
実施形態24.前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、細胞培養培地中のロイシンもしくはアルギニン、またはその両方の超標準濃度を含む、実施形態23に記載の組成物。
実施形態25.前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、PTEN阻害剤を含む、実施形態23または24に記載の組成物。
実施形態26.前記PTEN阻害剤は、ビスペルオキソバナジウム-1,10-フェナントロリン(bpV(phen)、ビスペルオキソバナジウム-5-ヒドロキシピリジン-2-カルボキシル(bpV(HOpic)、ビスペルオキソ-(ビピリジン)-オキソバナデートbpV(bipy)、またはその任意の組み合わせ、を含む、実施形態25に記載の組成物。
実施形態27.前記PTEN阻害剤は、1つ以上のホルモンまたは成長因子と併せて使用される、実施形態25または26に記載の組成物。
実施形態28.前記1つ以上のホルモンまたは成長因子は、インスリン、甲状腺ホルモン、塩基性FGF、EGF、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態27に記載の組成物。
実施形態29.前記癌細胞は、アポトーシスの阻害剤への曝露により改変されている、実施形態14に記載の組成物。
実施形態30.前記アポトーシスの阻害剤は、カスパーゼ阻害剤である、実施形態29に記載の組成物。
実施形態31.前記カスパーゼ阻害剤は、Z-VAD-fmkを含む、実施形態30に記載の組成物。
実施形態32.前記癌細胞は、寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態33.前記寛容原性化合物がWntリガンドを含む、実施形態32に記載の組成物。
実施形態34.前記癌細胞は、ベータ-メチル-シクロデキストリンへの曝露による寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、実施形態32または33に記載の組成物。
実施形態35.前記癌細胞は、損傷関連分子パターン(DAMP)の産生を増加させるように改変されている、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態36.前記癌細胞は、ゲンタマイシンへの曝露により改変されている、実施形態35に記載の組成物。
実施形態37.前記組成物は、生存癌細胞を含まない、実施形態1~36のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態38.患者の癌の治療に使用するための実施形態37に記載の組成物。
実施形態39.実施形態37に記載の組成物を含む個人用免疫療法製品。
実施形態40.前記患者の癌の治療における実施形態37に記載の組成物または実施形態39に記載の個人用免疫療法製品の使用。
実施形態41.実施形態37に記載の組成物または実施形態39に記載の個人用免疫療法製品を前記患者に投与することを含む、癌を治療する方法。
実施形態42.個々の癌患者のための癌に対する個人用免疫療法製品の製造方法であって、
前記患者から腫瘍組織を採取することと、
前記患者から血液を採取することと、
個人用免疫療法製品を作製するために、前記腫瘍組織と前記血液を操作することと、を含み、
操作することは、前記患者の癌によって発現されるTAAの蓄積または免疫原性を改善するために、前記患者から得られた癌細胞またはDC、またはその両方のex vivo改変を含む、
方法。
実施形態43.個々の癌患者のための癌に対する個人用免疫療法製品の製造方法であって、
前記患者から腫瘍組織を採取することと、
前記患者から血液を採取することと、
前記腫瘍組織を操作して、TAAの蓄積を高めることと、
前記血液を操作して、単球を分離すると共にそれらを樹状細胞に分化させ、必要に応じて、前記樹状細胞の抗原提示能力を高めることと、
を含み、
操作された前記腫瘍組織からの前記樹状細胞および癌細胞物質を含む個人用免疫療法製品を作製する、
方法。
実施形態44.TAAの蓄積または免疫原性を改善するための改変は、実施形態1~36のいずれか1つに記載の改変を実施することを含む、実施形態42または43の方法。
実施形態45.操作することは、癌細胞を不活性化することを含む、実施形態42~44のいずれか1つに記載の方法。
実施形態46.不活性化することは、ガンマ線照射への曝露を含む、実施形態45に記載の方法。
実施形態47.不活性化することは、UV照射への曝露を含む、実施形態45に記載の方法。
実施形態48.不活性化することは、X線照射への曝露を含む、実施形態45に記載の方法。
実施形態49.不活性化することは細胞溶解を含む、実施形態45~48のいずれか1つに記載の方法。
実施形態50.採取することは、前記患者から前記腫瘍組織および前記血液を物理的に除去することを含む、実施形態42~49のいずれか1つに記載の方法。
実施形態51.前記腫瘍組織および前記血液を、癌細胞を前記腫瘍組織から分離すると共にDCを前記血液中の単球と区別する能力を有する中央施設に送ることをさらに含み、前記中央施設は、1)前記DCを改変して交差処理を増加させる、または2)前記癌細胞を改変してTAA含有量を増加させる、もしくは前記癌細胞の免疫原性を高める、または3)両方の能力をさらに有する、請求項50に記載の方法。
実施形態52.前記採取することは、前記腫瘍組織および前記血液の発送物を受け取ることを含む、実施形態42~49のいずれか1つに記載の方法。
実施形態53.前記腫瘍組織から癌細胞を分離することをさらに含む、実施形態42~52のいずれか1つに記載の方法。
実施形態54.単球を分化させることにより、前記血液からDCを得ることをさらに含む、実施形態42~53のいずれか1つに記載の方法。
実施形態55.前記癌細胞またはその溶解物を含む癌細胞物質を、DC成熟因子の存在下で前記DCと組み合わせることと、をさらに含む、実施形態42~54のいずれか1つに記載の方法。
実施形態56.前記DCは組み合わせ時には未熟DCである、実施形態55に記載の方法。
実施形態57.前記DC成熟因子は、リポ多糖(LPS)である、実施形態55または56に記載の方法。
実施形態58.前記DCを増加したレベルのクロスプレゼンテーションを有するように改変することをさらに含む、実施形態42~57のいずれか1つに記載の方法。
実施形態59.前記癌細胞を改変してDAMPの産生を増加させることをさらに含む、請求項42~58のいずれか1つに記載の方法。
実施形態60.改変することは、前記DCまたは癌細胞のアミノグリコシド抗生物質への曝露を含む、実施形態58または59記載に記載の方法。
実施形態61.前記アミノグリコシド抗生物質は、ゲンタマイシンを含む、実施形態60の方法。
実施形態62.改変することは、前記DCのトール様受容体4アゴニストへの曝露を含む、実施形態42~62のいずれか1つに記載の方法。
実施形態63.前記癌細胞を改変して、増加した量のTAAを発現または蓄積させることをさらに含む、実施形態42~62のいずれか1つに記載の方法。
実施形態64.前記癌細胞は、ゲノム脱メチル化剤への曝露により改変されている、実施形態63に記載の方法。
実施形態65.前記ゲノム脱メチル化剤は、デシタビンを含む、実施形態64に記載の方法。
実施形態66.前記癌細胞は、ヒストンアセチル化促進剤への曝露により改変されている、実施形態42~65のいずれか1つに記載の方法。
実施形態67.前記ヒストンアセチル化促進剤は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含む、実施形態66に記載の方法。
実施形態68.前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、バルプロ酸を含む、実施形態67に記載の方法。
実施形態69.前記癌細胞は、プロテアソーム阻害剤への曝露により改変されている、実施形態42~68のいずれか1つに記載の方法。
実施形態70.前記プロテアソーム阻害剤は、ラクタシスチン、エポキソマイシン、ベータ-ヒドロキシ-ベータ-メチルブチレート、またはそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態69に記載の方法。
実施形態71.前記癌細胞は、E3リガーゼ阻害剤への曝露により改変されている、実施形態42~70のいずれか1つに記載の方法。
実施形態72.前記癌細胞は、PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤への曝露により改変されている、実施形態42~71のいずれか1つの方法。
実施形態73.前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、細胞培養培地中のロイシンもしくはアルギニン、またはその両方の超標準濃度を含む、実施形態72に記載の方法。
実施形態74.前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、PTEN阻害剤を含む、実施形態72または73に記載の方法。
実施形態75.前記PTEN阻害剤は、ビスペルオキソバナジウム-1,10-フェナントロリン(bpV(phen)、ビスペルオキソバナジウム-5-ヒドロキシピリジン-2-カルボキシル(bpV(HOpic)、ビスペルオキソ-(ビピリジン)-オキソバナデートbpV(bipy)、またはその任意の組み合わせ、を含む、実施形態74に記載の方法。
実施形態76.前記PTEN阻害剤は、1つ以上のホルモンまたは成長因子と併せて使用される、実施形態74または75に記載の方法。
実施形態77.前記1つ以上のホルモンまたは成長因子は、インスリン、甲状腺ホルモン、塩基性FGF、EGF、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態76に記載の方法。
実施形態78.前記癌細胞は、アポトーシスの阻害剤への曝露により改変されている、実施形態42~77のいずれか1つに記載の方法。
実施形態79.前記アポトーシスの阻害剤は、カスパーゼ阻害剤である、実施形態78に記載の方法。
実施形態80.前記カスパーゼ阻害剤は、zVAD.fmkを含む、実施形態79に記載の方法。
実施形態81.前記癌細胞は、寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、実施形態42~80のいずれか1つに記載の方法。
実施形態82.前記寛容原性化合物がWntリガンドを含む、実施形態81に記載の方法。
実施形態83.前記癌細胞は、ベータ-メチル-シクロデキストリンへの曝露による寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、実施形態81または82に記載の方法。
実施形態84.DCおよび癌細胞物質が組み合わされてから24~48時間後に、DCおよび癌細胞物質の組み合わせに凍結防止剤を添加すると共に組み合わせられた物質を凍結保存することをさらに含む、実施形態42~83のいずれか1つに記載の方法。
実施形態85.実施形態42~84のいずれか1つの方法により製造された前記個人用免疫療法製品を前記個々の癌患者に投与することを含む、癌を治療する方法。
実施形態86.癌の治療における、実施形態42~84のいずれか1つに記載の方法により製造された前記個人用免疫療法製品の使用。
実施形態87.前記患者の癌の治療のための薬剤の製造における実施形態1~37のいずれか1つに記載の組成物の使用。
実施形態88.前記患者がヒトである、実施形態39に記載の個人用免疫療法製品。
実施形態89.用量あたり1~20x10DCを含む、実施形態88に記載の個人用免疫療法製品。
実施形態90.注射による投与を含む、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39もしくは86に記載の使用。
実施形態91.注入による投与を含む、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39もしくは86に記載の使用。
実施形態92.免疫チェックポイント阻害剤の投与をさらに含む、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39もしくは86に記載の使用。
実施形態93.前記免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、TIM-3、LAG-3、B7-H3、B7-H4、BTLA、ICOS、またはOX40に特異的な抗体である、請求項92に記載の方法。
実施形態94.単回用量の投与を含む、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39もしくは86に記載の使用。
実施形態95.毎週間隔での投与を含む、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39もしくは86に記載の使用。
実施形態96.毎月間隔での投与を含む、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39もしくは86に記載の使用。
実施形態97.前記癌は癌腫である、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39もしくは86に記載の使用。
実施形態98.前記癌は肉腫である、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39もしくは86に記載の使用。
実施形態99.前記癌は白血病またはリンパ腫である、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39もしくは86に記載の使用。
実施形態100.前記癌は、脳、頭頸部、食道、肺、肝臓、膵臓、腎臓、胃、結腸、前立腺、乳房、子宮、子宮頸部、卵巣、皮膚、骨、血液、眼、または網膜の癌である、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39もしくは86に記載の使用。
実施形態101.前記癌は、黒色腫、非小細胞肺癌、膠芽腫、腎細胞癌、または結腸直腸癌である、実施形態41もしくは85に記載の治療方法、または実施形態39または86に記載の使用。
【0057】
(実施例)
以下の非限定的な例は、現在企図されている代表的な実施形態のより完全な理解を促進するために、例示のみを目的として提供されている。これらの例は、本明細書に記載されている実施形態のいずれかを制限するものと解釈されるべきではないが、特許請求の範囲に見られる特定の制限をサポートすることができる。
【0058】
(実施例1)
腫瘍からの生癌細胞の分離
典型的な準備では、外科的切除により得られた腫瘍片を正常組織から切開し、直径2~3mmの断片に機械的に切り刻み、細胞培養液中の酵素で解離させる。刻んだ腫瘍片を、コラゲナーゼのトリプシンの存在下で、37℃で0.5~3時間連続撹拌する。あるいは、ディパーゼは、一晩または最大72時間冷蔵(約4℃)、室温(約25℃)、または37℃で低濃度で使用される。消化された細胞外マトリックスおよびその他の破片は、遠心分離と再懸濁のサイクルを繰り返すことにより除去される。生癌細胞は細胞培養容器に移され、栄養豊富な培地で増殖される。
【0059】
(実施例2)
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害によるタンパク質発現の増加
分離された生癌細胞は組織培養に配置される。増強期では、組織培養培地にバルプロ酸もしくはフェニルブチレート、またはその両方を、それぞれ0.01mM~10mMの濃度で補充する。ヒストンのアセチル化、mRNA転写、およびTAAの発現を含むタンパク質発現のレベルはすべて増加する。
【0060】
(実施例3)
阻害DNAメチルトランスフェラーゼによるタンパク質発現の増加
分離された生癌細胞は組織培養に配置される。組織培養培地には、濃度に応じて、増強期の開始から1時間以上、増強期全体までデシタビンが補充される。100~500nMの濃度は、培養の増強期を通して使用され得る。あるいは、増強期の開始時に1μM~10μMのより高い濃度を使用し、その後除去するか、より低い濃度に下げ得る。過剰メチル化が逆転し、サイレンシングされた生殖細胞系および腫瘍特異的抗原の発現が増加し、癌細胞集団全体でより均一になる。
【0061】
(実施例4)
プロテアソーム阻害によるタンパク質含有量の増加
分離された生癌細胞は組織培養に配置される。組織培養培地には、0.1~1μMの濃度のラクタシスチン、1~2μMの濃度のエポキソマイシン、および/または10~150μg/mLの濃度のHMBが補充される。阻害剤は、培養の増強期全体またはその一部に存在し得るが、少なくとも収穫前の最後の24時間に存在する。記載されている範囲の下限の用量は、長期曝露に適している。記載されている範囲の上限での用量は、培養の残り24時間で使用され得る。癌細胞のタンパク質(正常タンパク質、変異タンパク質、ミスフォールドタンパク質を含む)の含有量が増加する。
【0062】
(実施例5)
PTENの阻害による細胞増殖とタンパク質産生の増加
単離された生癌細胞は、70:1のアルギニン:アラニンの比率と25:1のロイシン:アラニンの比率でロイシンとアルギニンを補充した培地の組織培養に置かれる。組織培養培地には、5~20μMの濃度のbpV(phen)、bpV(HOpic)、またはbpV(bipy)がさらに補充される。それは、細胞培養開始時に少なくとも24時間適用され、場合により、細胞培養期間全体にわたってより低い濃度で継続される。PTEN阻害の期間中を通して、培地にはさらにインスリン、甲状腺ホルモン、塩基性FGFおよびEGFが補充される。
【0063】
(実施例6)
アポトーシスの抑制による急速な癌細胞の増殖とTAAの蓄積
分離された生癌細胞は組織培養に配置される。組織培養培地には、5~50μMの濃度の薬効範囲が広いカスパーゼ阻害剤Z-VAD-fmkが補充される。カスパーゼ阻害剤は、細胞培養の開始時に添加され、培養の増殖期および増強期を通して維持される。培養された癌細胞は増殖し、高い生存率を維持しながら、TAAを含むタンパク質は未処理の培養よりも高いレベルで蓄積する。
【0064】
(実施例7)
Wntシグナル伝達リガンドの枯渇による免疫原性の増加
分離された生癌細胞は組織培養に配置される。増強期およびDC負荷の準備の終了の30分から3時間前に、組織培養培地に0.5~20mMの濃度のベータ-メチル-シクロデキストリンを補充する。コレステロールとWntリガンドは、癌細胞の原形質膜から枯渇する。
【0065】
(実施例8)
増強培養後の癌細胞の収穫と不活性化
培養の増強段階が完了すると、癌細胞はトリプシン処理によって分離される。回収された細胞は、リン酸緩衝生理食塩水中で3サイクルの遠心分離により、培地およびトリプシン溶液がなくなるまで洗浄される。次いで、細胞に総線量100Gyで照射し、凍結防止剤を含まない培地で3~5回の凍結/解凍サイクルを使用して溶解する。総タンパク質は、ビウレット法によって決定される。
【0066】
(実施例9)
アミノグリコシド抗生物質による治療によるDCでの交差処理の促進
PBMCを培地に播種し、単球を付着させた後、非付着細胞を洗い流す。GM-CSF、IL-4および5-10μ/mlのゲンタマイシンを補充した新鮮な培地を加え、細胞を3~5日間インキュベートする。不活性化された癌細胞または細胞溶解物、およびLPSが添加され、ゲンタマイシン濃度が50~150μ/mlに増加され、DCがさらに24~48時間インキュベートされる。
【0067】
(実施例10)
腫瘍細胞のタンパク質蓄積を増加させるためのプロテアソーム阻害剤とカスパーゼ阻害剤のin vitro適用
プロテアソーム阻害剤の使用により得られる抗原量の増加から利益を得るが、アポトーシスの誘発を回避するために、プロテアソーム阻害剤はカスパーゼ阻害剤と併せて使用され得る。最初に、最小限の細胞死を引き起こすプロテアソーム阻害剤の濃度を見つけるために、様々なボルテゾミブ希釈液を、70~90%のコンフルエンスに達した後、確立された卵巣腫瘍株でin vitroで試験した。培養物は、5%FBSを含む標準DMEM:F12培地で維持された。ボルテゾミブは、DMSOで再構成され、0.1~100nMの濃度で培養物に直接添加された。
【0068】
5nMのボルテゾミブを超える濃度では、すべての細胞が24時間以内に死んだ。5nMから1nMのボルテゾミブでは、細胞は濃度の減少に比例して生存した。1nM濃度未満では、ボルテゾミブは生存率に影響しなかった(図2および3)。
【0069】
次に、カスパーゼ阻害剤Z-VAD-fmkを同じ細胞培養系で10~100μMの濃度範囲で試験したところ、アポトーシス曝露(challenge)なしではカスパーゼ阻害剤が細胞生存に影響を与えないことが分かった。さらなる実験のために、20μMの濃度を選択した。
【0070】
次に、カスパーゼ阻害剤とプロテアソーム阻害剤の連続適用を試験した。腫瘍細胞を20μMカスパーゼ阻害剤Z-VAD-fmkの存在下で24時間培養し、次に培地をボルテゾミブを含む培地と交換し、細胞をさらに48時間培養した。ボルテゾミブは、誘導された細胞死の最低濃度である5nMで使用された。図4に例示されているように、多核で拡大した細胞体で構成されている、特徴的な細胞形態を持つ約75%の細胞生存率が観察された。
【0071】
ボルテゾミブとZ-VAD-fmkの同時適用も、1または20μMのZ-VAD-fmkとともに1nMのボルテゾミブを使用して試験された。これらの治療は、細胞の形態や生存に明らかな変化を引き起こさない(図5を参照)。
【0072】
タンパク質含有量を評価するために、我々は癌で一般的に見られる2つの標的を検索した:通常は卵巣癌に特異的なCA125、および多くの種類の癌(例えば、結腸、乳房、卵巣、肺、膵臓)で一般的なMUC1。タンパク質は、Alexa Fluor 488(緑;抗MUC1)または594(赤;抗CA125)と結合した抗体を使用して標識された。細胞は、露出および拡大のための事前設定パラメータを備えた落射蛍光顕微鏡(Nikon)で画像化された。Nikon NIS-Elementsソフトウェアを使用して、各チャネルは、最大画素強度(同様の画像化パラメータを示す)、標的タンパク質の量の増加または減少を示す平均強度、および標識された標的タンパク質含有量に比例する標識された画素の合計について分析された。図6および図7に見られるように、0.1nM~1.0nM(カスパーゼ阻害剤なし)の濃度のボルテゾミブは、処理された腫瘍細胞のこれらの抗原の数と含有量を増加させる。
【0073】
さらに、Ki67標識化を使用して、様々な条件下での腫瘍細胞の増殖状態の違いを分析した。Ki67標識化は、増殖状態の違いを示さなかった。
【0074】
これらのデータは、細胞の生存率や増殖能力に影響を与えることなく、任意でカスパーゼ阻害剤と組み合わされた、低濃度のプロテアソーム阻害剤に細胞を曝露することにより、in vitroで腫瘍細胞のタンパク質含有量を増加させることができることを示す。この治療により、タンパク質含有量が増加し、その後、抗原提示細胞の新抗原が利用可能になる。同時に、樹状細胞への曝露前の腫瘍細胞のin vitro処理は、抗原提示細胞のプロテアソーム阻害剤へのin vivoでの有害な曝露を回避する。これらの発見は、樹状細胞に基づく免疫療法への即時の適用性にとって重要である。
【0075】
最後に、本明細書の態様は特定の実施形態を参照することにより強調されているが、当業者はこれらの開示された実施形態が本明細書に開示された主題の原理の単なる例示であることを容易に理解するであろうことを理解されたい。したがって、開示される主題は、本明細書で説明される特定の方法論、プロトコル、および/または試薬などに決して限定されないことを理解されたい。したがって、本明細書の教示に従って、本明細書の趣旨から逸脱することなく、開示された主題の様々な修正、変更、または代替構成を行い得る。最後に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、示され説明された通りのものに限定されない。
【0076】
本発明を実施するために本発明者らが知っている最良の形態を含む本発明の特定の実施形態を本明細書に記載する。もちろん、これらの記載された実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかであろう。本発明者は、当業者がそのような変形を適切に使用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外にも本発明を実施することを意図している。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての改変物および均等物を含む。さらに、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、すべての可能な変形例における上記実施形態の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0077】
本発明の代替実施形態、要素、または工程の群化は、限定として解釈されるべきではない。各群メンバーは、個別に、または本明細書に開示されている他の群メンバーとの任意の組み合わせで参照および特許請求され得る。群の1つ以上のメンバーが、利便性および/または特許性の理由で群に含まれたり、群から削除されたりすることが予想される。そのような包含または削除が生じた場合、明細書は改変されたグループを含むとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述を満たすものとみなされる。
【0078】
他に指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される特徴、項目、量、パラメータ、特性、用語などを表すすべての数字は、すべての場合に用語「約」によって改変されるものと理解されたい。本明細書で使用される「約」という用語は、そのように制限された特性、アイテム、数量、パラメータ、特性、または用語が、指定された特性、アイテム、数量、パラメータ、特性、または用語の値の上下10パーセントの範囲を包含することを意味する。したがって、そうでないと示さない限り、明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、変わり得る近似値である。少なくとも、および均等論の適用を請求項の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値表示は、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め手法を適用することにより、少なくとも解釈されるべきである。本発明の広い範囲を説明する数値範囲および値は近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載されている数値範囲および値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、数値の範囲または値には、それぞれのテスト測定で見つかった標準偏差から必然的に生じる特定の誤差が本質的に含まれている。本明細書における値の数値範囲の列挙は、その範囲内に入る個々の数値を個別に参照する簡単な方法として役立つことのみを意図している。本明細書で特に明記しない限り、数値範囲の個々の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0079】
本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、本発明を説明する文脈において(特に添付の特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「a」、「an」、「the」および類似の指示対象は、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書中に記載されるすべての方法は、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく照らすことを意図しており、特許請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の言語は、本発明の実施に不可欠な非請求要素を示すと解釈されるべきではない。
【0080】
本明細書に開示される特定の実施形態は、言語からなる、または本質的に言語からなるを使用して、請求項でさらに限定され得る。請求項で使用される場合、補正ごとに提出または追加されたかどうかにかかわらず、「からなる」という移行用語は、請求項で指定されていない要素、工程、または成分を除外する。「本質的に~からなる」という移行用語は、特定の物質または工程、および基本的および新規の特性(1つまたは複数)に実質的に影響を与えないものに請求項の範囲を限定する。そのように特許請求される本発明の実施形態は、本明細書において本質的または明示的に説明され、可能化される。
【0081】
本明細書で参照および特定されるすべての特許、特許公報、およびその他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得るそのような刊行物に記載される組成物および方法論を説明および開示する目的で、その全体が参照により本明細書に個別に明示的に組み込まれる。これらの出版物は、本出願の出願日前の開示のみのために提供されている。この点に関して、発明者が、先行発明のおかげで、またはその他の理由により、そのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。日付に関するすべての記述またはこれらの文書の内容に関する表現は、出願人が利用できる情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確性に関する承認を構成するものではない。
【0082】
(付記)
(付記1)
同じ癌患者からの癌細胞および樹状細胞(DC)を含む組成物であって、
前記癌細胞もしくは前記DC、またはその両方は、前記患者の癌によって発現される腫瘍関連抗原(TAA)の蓄積または免疫原性を改善するためにex vivoで改変されている、
組成物。
【0083】
(付記2)
癌患者からのDCを含む組成物であって、
前記DCには、前記癌患者から除去された腫瘍から単離された癌細胞からの抗原性物質が負荷され、前記癌細胞もしくは前記DC、またはその両方は、前記患者の癌によって発現されるTAAの蓄積または免疫原性を改善するために改変されている、
組成物。
【0084】
(付記3)
前記DCは、増加したレベルのクロスプレゼンテーションを有するように改変されている、付記1または2に記載の組成物。
【0085】
(付記4)
前記DCは、アミノグリコシド抗生物質への曝露により改変されている、付記3に記載の組成物。
【0086】
(付記5)
前記アミノグリコシド抗生物質は、ゲンタマイシンを含む、付記4に記載の組成物。
【0087】
(付記6)
前記DCは、トール様受容体4アゴニストへの曝露により改変されている、付記3~5のいずれか1つに記載の組成物。
【0088】
(付記7)
前記癌細胞は、増加した量のTAAを発現または蓄積するように改変されている、付記1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0089】
(付記8)
前記癌細胞は、ゲノム脱メチル化剤への曝露により改変されている、付記7に記載の組成物。
【0090】
(付記9)
前記ゲノム脱メチル化剤は、デシタビンを含む、付記8に記載の組成物。
【0091】
(付記10)
前記癌細胞は、ヒストンアセチル化促進剤への曝露により改変されている、付記7に記載の組成物。
【0092】
(付記11)
前記ヒストンアセチル化促進剤は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含む、付記10に記載の組成物。
【0093】
(付記12)
前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、バルプロ酸を含む、付記11に記載の組成物。
【0094】
(付記13)
前記癌細胞は、プロテアソーム阻害剤への曝露により改変されている、付記7に記載の組成物。
【0095】
(付記14)
前記プロテアソーム阻害剤は、ラクタシスチン、エポキソマイシン、ベータ-ヒドロキシ-ベータ-メチルブチレート、またはそれらの任意の組み合わせを含む、付記13に記載の組成物。
【0096】
(付記15)
前記癌細胞は、E3リガーゼ阻害剤への曝露により改変されている、付記7に記載の組成物。
【0097】
(付記16)
前記癌細胞は、PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤への曝露により改変されている、付記7に記載の組成物。
【0098】
(付記17)
前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、細胞培養培地中のロイシンもしくはアルギニン、またはその両方の超標準濃度を含む、付記16に記載の組成物。
【0099】
(付記18)
前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、PTEN阻害剤を含む、付記16または17に記載の組成物。
【0100】
(付記19)
前記PTEN阻害剤は、ビスペルオキソバナジウム-1,10-フェナントロリン(bpV(phen)、ビスペルオキソバナジウム-5-ヒドロキシピリジン-2-カルボキシル(bpV(HOpic)、ビスペルオキソ-(ビピリジン)-オキソバナデートbpV(bipy)、またはその任意の組み合わせ、を含む、付記18に記載の組成物。
【0101】
(付記20)
前記PTEN阻害剤は、1つ以上のホルモンまたは成長因子と併せて使用される、付記18または19に記載の組成物。
【0102】
(付記21)
前記1つ以上のホルモンまたは成長因子は、インスリン、甲状腺ホルモン、塩基性FGF、EGF、またはそれらの組み合わせを含む、付記20に記載の組成物。
【0103】
(付記22)
前記癌細胞は、アポトーシスの阻害剤への曝露により改変されている、付記7に記載の組成物。
【0104】
(付記23)
前記アポトーシスの阻害剤は、カスパーゼ阻害剤である、付記22に記載の組成物。
【0105】
(付記24)
前記カスパーゼ阻害剤は、Z-VAD-fmkを含む、付記23に記載の組成物。
【0106】
(付記25)
前記癌細胞は、寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、付記1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0107】
(付記26)
前記寛容原性化合物がWntリガンドを含む、付記25に記載の組成物。
【0108】
(付記27)
前記癌細胞は、ベータ-メチル-シクロデキストリンへの曝露による寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、付記25または26に記載の組成物。
【0109】
(付記28)
前記癌細胞は、損傷関連分子パターン(DAMP)の産生を増加させるように改変されている、付記1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0110】
(付記29)
前記癌細胞は、ゲンタマイシンへの曝露により改変されている、付記28に記載の組成物。
【0111】
(付記30)
前記組成物は、生存癌細胞を含まない、付記2~29のいずれか1つに記載の組成物。
【0112】
(付記31)
付記30に記載の組成物を含む個人用免疫療法製品。
【0113】
(付記32)
癌の治療における付記31に記載の個人用免疫療法製品の使用。
【0114】
(付記33)
付記31に記載の個人用免疫療法製品を前記患者に投与することを含む、癌を治療する方法。
【0115】
(付記34)
個々の癌患者のための癌に対する個人用免疫療法製品の製造方法であって、
前記患者から腫瘍組織を採取することと、
前記患者から血液を採取することと、
前記腫瘍組織を操作して、TAAの蓄積を高めることと、
前記血液を操作して、単球を分離すると共にそれらを樹状細胞に分化させ、必要に応じて、前記樹状細胞の抗原提示能力を高めることと、
を含み、
操作された前記腫瘍組織からの前記樹状細胞および癌細胞物質を含む個人用免疫療法製品を作製する、
方法。
【0116】
(付記35)
採取することは、前記患者から前記腫瘍組織および前記血液を物理的に除去することを含む、付記34に記載の方法。
【0117】
(付記36)
前記腫瘍組織および前記血液を、癌細胞を前記腫瘍組織から分離すると共にDCを前記血液中の単球と区別する能力を有する中央施設に送ることをさらに含み、前記中央施設は、1)前記DCを改変して交差処理を増加させる、または2)前記癌細胞を改変してTAA含有量を増加させる、もしくは前記癌細胞の免疫原性を高める、または3)両方の能力をさらに有する、付記35に記載の方法。
【0118】
(付記37)
採取することは、前記腫瘍組織および前記血液の発送物を受け取ることを含む、付記34に記載の方法。
【0119】
(付記38)
前記腫瘍組織から癌細胞を分離することと、
単球を分化させることにより、前記血液からDCを得ることと、
前記癌細胞、前記DC、またはその両方を改変することと、
前記癌細胞またはその溶解物を含む癌細胞物質を、DC成熟因子の存在下で前記DCと組み合わせることと、
をさらに含む、付記35または37に記載の方法。
【0120】
(付記39)
DC成熟因子の存在下で、前記腫瘍組織に由来する癌細胞またはその溶解物を含む癌細胞物質を、前記血液に由来する未熟DCと組み合わせることをさらに含み、前記癌細胞、前記DC、または両方は改変されている、付記35または37に記載の方法。
【0121】
(付記40)
前記DC成熟因子は、リポ多糖(LPS)である、付記38または39に記載の方法。
【0122】
(付記41)
前記DCを増加したレベルのクロスプレゼンテーションを有するように改変することをさらに含む、付記38~40のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
(付記42)
前記癌細胞を改変してDAMPの産生を増加させることをさらに含む、付記38~41のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
(付記43)
改変することは、前記DCまたは癌細胞のアミノグリコシド抗生物質への曝露を含む、付記41または42に記載の方法。
【0125】
(付記44)
前記アミノグリコシド抗生物質は、ゲンタマイシンを含む、付記43に記載の方法。
【0126】
(付記45)
改変することは、前記DCのトール様受容体4アゴニストへの曝露を含む、付記38~44のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
(付記46)
前記癌細胞を改変して、増加した量のTAAを発現または蓄積させることをさらに含む、付記38~45のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
(付記47)
前記癌細胞は、ゲノム脱メチル化剤への曝露により改変されている、付記46に記載の方法。
【0129】
(付記48)
前記ゲノム脱メチル化剤は、デシタビンを含む、付記47に記載の方法。
【0130】
(付記49)
前記癌細胞は、ヒストンアセチル化促進剤への曝露により改変されている、付記38~48のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
(付記50)
前記ヒストンアセチル化促進剤は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含む、付記49に記載の方法。
【0132】
(付記51)
前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、バルプロ酸を含む、付記50に記載の方法。
【0133】
(付記52)
前記癌細胞は、プロテアソーム阻害剤への曝露により改変されている、付記38~51のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
(付記53)
前記プロテアソーム阻害剤は、ラクタシスチン、エポキソマイシン、ベータ-ヒドロキシ-ベータ-メチルブチレート、またはそれらの任意の組み合わせを含む、付記52に記載の方法。
【0135】
(付記54)
前記癌細胞は、E3リガーゼ阻害剤への曝露により改変されている、付記38~53のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
(付記55)
前記癌細胞は、PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤への曝露により改変されている、付記38~54のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
(付記56)
前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、細胞培養培地中のロイシンもしくはアルギニン、またはその両方の超標準濃度を含む、付記55に記載の方法。
【0138】
(付記57)
前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、PTEN阻害剤を含む、付記55または56に記載の方法。
【0139】
(付記58)
前記PTEN阻害剤は、ビスペルオキソバナジウム-1,10-フェナントロリン(bpV(phen)、ビスペルオキソバナジウム-5-ヒドロキシピリジン-2-カルボキシル(bpV(HOpic)、ビスペルオキソ-(ビピリジン)-オキソバナデートbpV(bipy)、またはその任意の組み合わせ、を含む、付記57に記載の方法。
【0140】
(付記59)
前記PTEN阻害剤は、1つ以上のホルモンまたは成長因子と併せて使用される、付記57または58に記載の方法。
【0141】
(付記60)
前記1つ以上のホルモンまたは成長因子は、インスリン、甲状腺ホルモン、塩基性FGF、EGF、またはそれらの組み合わせを含む、付記59に記載の方法。
【0142】
(付記61)
前記癌細胞は、アポトーシスの阻害剤への曝露により改変されている、付記38~60のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
(付記62)
前記アポトーシスの阻害剤は、カスパーゼ阻害剤である、付記61に記載の方法。
【0144】
(付記63)
前記カスパーゼ阻害剤は、zVAD.fmkを含む、付記62に記載の方法。
【0145】
(付記64)
前記癌細胞は、寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、付記38~63のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
(付記65)
前記寛容原性化合物がWntリガンドを含む、付記64に記載の方法。
【0147】
(付記66)
前記癌細胞は、ベータ-メチル-シクロデキストリンへの曝露による寛容原性化合物の枯渇によって改変されている、付記64または65に記載の方法。
【0148】
(付記67)
DCおよび癌細胞物質が組み合わされてから24~48時間後に、DCおよび癌細胞物質の組み合わせに凍結防止剤を添加すると共に組み合わせられた物質を凍結保存することをさらに含む、付記38~66のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
(付記68)
付記34~67のいずれか1つに記載の方法により製造された前記個人用免疫療法製品を前記個々の癌患者に投与することを含む、癌を治療する方法。
【0150】
(付記69)
癌の治療における、付記34~67のいずれか1つに記載の方法により製造された前記個人用免疫療法製品の使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療における製品の製造に使用される、同じ癌患者からの癌細胞および樹状細胞(DC)を含む組成物であって、
前記癌細胞もしくは前記DC、またはその両方は、ex vivoで改変されており、 ここで、前記DCは、50~150μg/mlの濃度におけるゲンタマイシンへの曝露により改変され、
前記癌細胞は、シクロデキストリンへの曝露により細胞膜からコレステロールおよび/またはWntリガンドの枯渇によって改変されている、
組成物。
【請求項2】
前記DCは、トール様受容体4アゴニストへの曝露によりさらに改変されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記癌細胞は、増加した量の腫瘍関連抗原(TAA)を発現または蓄積するように改変されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記癌細胞は、ゲノム脱メチル化剤への曝露により改変されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ゲノム脱メチル化剤は、デシタビンを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記癌細胞は、ヒストンアセチル化促進剤への曝露により改変されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒストンアセチル化促進剤は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、バルプロ酸を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記癌細胞は、プロテアソーム阻害剤への曝露により改変されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記プロテアソーム阻害剤は、ラクタシスチン、エポキソマイシン、ベータ-ヒドロキシ-ベータ-メチルブチレート、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記癌細胞は、E3リガーゼ阻害剤への曝露により改変されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
前記癌細胞は、PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤への曝露により改変されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項13】
前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、細胞培養培地中のロイシンもしくはアルギニン、またはその両方の超標準濃度を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記PI3K/AKT/mTOR経路活性化剤は、PTEN阻害剤を含む、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
前記PTEN阻害剤は、ビスペルオキソバナジウム-1,10-フェナントロリン(bpV(phen)、ビスペルオキソバナジウム-5-ヒドロキシピリジン-2-カルボキシル(bpV(HOpic)、ビスペルオキソ-(ビピリジン)-オキソバナデートbpV(bipy)、またはその任意の組み合わせ、を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記PTEN阻害剤は、1つ以上のホルモンまたは成長因子と併せて使用される、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記1つ以上のホルモンまたは成長因子は、インスリン、甲状腺ホルモン、塩基性FGF、EGF、またはそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記癌細胞は、アポトーシスの阻害剤への曝露により改変されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項19】
前記アポトーシスの阻害剤は、カスパーゼ阻害剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記カスパーゼ阻害剤は、Z-VAD-fmkを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記シクロデキストリンは、ベータ-メチル-シクロデキストリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記癌細胞は、損傷関連分子パターン(DAMP)の産生を増加させるように改変されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項23】
前記癌細胞は、ゲンタマイシンへの曝露により改変されている、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、生存癌細胞を含まない、請求項1~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
請求項24に記載の組成物を含む、癌の治療における使用のための製品。
【外国語明細書】