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特開2024-41758GMPグレードでの組換えレンチウイルベクターの精製調製物の大規模調製のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041758
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】GMPグレードでの組換えレンチウイルベクターの精製調製物の大規模調製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/02 20060101AFI20240319BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240319BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240319BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C12N7/02
C12M1/00 Z
G01N30/88 E
G01N30/02 B
C12N15/867 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210248
(22)【出願日】2023-12-13
(62)【分割の表示】P 2020552824の分割
【原出願日】2019-03-28
(31)【優先権主張番号】201810264813.X
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522043220
【氏名又は名称】アベルゼータ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ホン,イー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ティン
(72)【発明者】
【氏名】イン,ジャングオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ハオジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ディジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ルイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】組換えウイルスベクター調製物の大規模精製のための方法を提供する。
【解決手段】方法は、(a)精製の対象となる組換えウイルスベクターを含む体積Vaの供給液である原料を提供する工程;(b)供給液に対して精密濾過処理を実施し、組換えウイルスベクターを含む体積Vbの精密濾過された濾液を得る工程;(c)必要に応じて、濾液を濃縮して、体積Vcの濃縮濾液を得る工程;(d)前工程で得られた濾液をクロマトグラフィーにより精製し、組換えウイルスベクターを含む粗純生成物を得る工程;(e)前工程で得られた粗純生成物を液体交換し、精巧に精製して精製組換えウイルスベクターを得る工程;を含み、前記クロマトグラフィーは、陰イオンクロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィー、マルチモード複合樹脂クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせから選択される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えウイルスベクター調製物の大規模精製のための方法であって、以下の工程:
(a) 精製の対象となる組換えウイルスベクターを含む体積Vaの供給液である原料を提
供する工程;
(b) 前記供給液に対して精密濾過処理を実施し、前記組換えウイルスベクターを含む体
積Vbの精密濾過された濾液を得る工程;
(c) 必要に応じて、前記濾液を濃縮して、体積Vcの濃縮濾液を得る工程;
(d) 前工程で得られた濾液をクロマトグラフィにより精製し、組換えウイルスベクター
を含む粗純生成物を得る工程;
(e) 前工程で得られた粗純生成物を液体交換し、精巧に精製して精製組換えウイルスベ
クターを得る工程;
を含み、
ここで、前記クロマトグラフィーは、陰イオンクロマトグラフィー、分子排除クロマト
グラフィー、マルチモード複合樹脂クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせから
選択される、方法。
【請求項2】
前記アニオン性樹脂が、Capto Q、Capto ImpRes、およびCapt
o DEAEから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クロマトグラフィーによる精製が、陰イオンクロマトグラフィーにより一次精製を行い
、次いで、マルチモード複合樹脂クロマトグラフィーの手段による精巧な精製を行うこと
である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(d)において、精製された組換えレンチウイルスベクターが、以下の特徴のうち
1つ以上を有する、請求項1に記載の方法:
(p1) 前記組換えレンチウイルスベクターの生物学的力価が1.06x10Tu
/mLである;
(p2) BSA残渣<50ng/mL;
(p3) エンドトキシン<1 EU/mL。
【請求項5】
前記工程(c)において、濃縮を限外濾過により行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法によって調製された、精製組換えレンチウイルス。
【請求項7】
請求項5に記載の精製組換えレンチウイルスを含む調製物。
【請求項8】
請求項1に記載の方法で使用される精製装置であって、
(S1) 精製される組換えレンチウイルスの原料を保持するための、任意の第1の容器

(S2) 精製される組換えレンチウイルスの精密濾過処理を行い、精密濾過された濾液
を得るために使用される、精密濾過ユニット;
(S3) 濃縮濾液を得るために濾液を濃縮するために使用される、任意の濃縮ユニット

(S4) 前記精密濾過ユニット又は前記濃縮ユニットからの濾液をクロマトグラフィー
により精製して精製組換えレンチウイルスベクターを得るために使用される、クロマトグ
ラフィー精製ユニット;
(S5) 前記精製された組換えレンチウイルスベクターを収集するために使用される、
収集ユニット;
を含む、精製装置。
【請求項9】
前記クロマトグラフィー精製ユニットが、分子排除クロマトグラフィーユニットおよび
陰イオンクロマトグラフィーユニットを含む、請求項8に記載の精製装置。
【請求項10】
(S6)リボザイムを添加するための添加装置を備えるリボザイム処理ユニットをさらに
含む、請求項8に記載の精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学の技術分野に関し、特に、GMPグレードの組換えレンチウイルスベク
ターの精製調製物の大規模調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療とは、外因性の治療遺伝子を標的細胞に導入して、遺伝子の欠陥や異常によ
って引き起こされる疾患を是正したり、補償したりすること、あるいは外因性遺伝子によ
って発現される製品を介して疾患標的に作用して治療の目的を達成することをいう。
【0003】
外因性遺伝子は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターによって形質導入または
送達することができる。一般的な非ウイルスベクターには、リポソーム、デンドリマー、
非天然カチオン性ポリマー、天然多糖類などが含まれる。非ウイルス遺伝子送達ベクター
は比較的安全かつ安定であるが、それらのトランスフェクション効率は通常、低い。ウイ
ルスベクターは外因性遺伝子を天然ウイルスの外殻にパッケージングし、ウイルスの宿主
細胞への感染能を利用して外因性遺伝子を細胞に導入する。一般的なウイルスベクターに
は、組換えレトロウイルス(rRV)、組換えレンチウイルス(rLV)、組換えアデノ
ウイルス(rAd)、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)などが含まれる。ウイルス
ベクターは非ウイルスベクターよりもはるかに高い形質導入効率を有し、特にリンパ球の
ような感染困難な標的細胞に感染するのに適している。
【0004】
組換えレンチウイルスベクターは、HIV-1(human immunodefici
ency virus-1)に基づいて開発された遺伝子治療ベクターである。一般的なレ
トロウイルスベクターとは異なり、組換えレンチウイルスベクターは、分裂細胞および非
分裂細胞の両方に感染する能力を有する。組換えレンチウイルスベクターは、インビボお
よびインビトロでの高い生物学的力価、低い免疫原性および他の利点のために、CART
細胞および遺伝子治療のための好ましいトランスジェニックベクターとなっている。
【0005】
現在の組換えレンチウイルスベクターは、パッケージングシグナルおよび標的遺伝子の
元の転写のみをレンチウイルスゲノムに残し、逆転写酵素、エンベロープ蛋白質VSVG
、gag-polおよび他の構造遺伝子を2~3ベクターに分散させ、同時に病原遺伝子
を欠失させるために、遺伝子改変の方法を用いる。成熟レンチウイルス粒子は複数のベク
ターを293T細胞に同時トランスフェクトすることによって産生され、次いで、細胞中
にパッケージングされ、そして293T細胞から培養上清中に分泌され、これは超遠心分
離またはクロマトグラフィー精製によって得られ得る。
【0006】
レンチウイルスを得るために従来の実験室で使用される方法は、超遠心分離である。こ
の方法は単純であるものの、工業的に拡大することはできず、調製されたレンチウイルス
ベクターは高レベルのエンドトキシン、BSA、HCPまたは核酸および他の残基を含む
おそれがあり、ヒト体内で直接使用することができない。
【0007】
さらに、既存のクロマトグラフィー精製方法はまた、複雑な工程、低い収率および不十
分な純度という欠点を有し、工業的な大規模生産およびGMPグレード生産のための要件
をほとんど満たすことができない。
【0008】
したがって、この分野では、大規模生産に適し、GMPグレード生産の要件を満たす、
精製レンチウイルスベクターを調製するための新規かつ効率的な方法を開発する緊急の必
要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、大規模生産に適し、GMPグレード生産の要件を満たす、精製レンチ
ウイルスベクターを調製するための効率的な方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、この方法によって精製された組換えレンチウイルス、ならびに組
換えレンチウイルスを含有する精製調製物、およびその適用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様において、組換えウイルスベクター調製物の大規模精製のための方
法が提供される。この方法は、以下のステップを含む:
(a) 精製の対象となる組換えウイルスベクターを含む体積Vaの供給液である原料を提
供する工程;
(b) 前記供給液に対して精密濾過処理を実施し、前記組換えウイルスベクターを含む体
積Vbの精密濾過された濾液を得る工程;
(c) 必要に応じて、前記濾液を濃縮して、体積Vcの濃縮濾液を得る工程;
(d) 前工程で得られた濾液をクロマトグラフィにより精製し、組換えウイルスベクター
を含む粗純生成物を得る工程;
(e) 前工程で得られた粗純生成物を液体交換し、精巧に精製して精製組換えウイルスベ
クターを得る工程。
【0012】
ここで、前記クロマトグラフィーは、陰イオンクロマトグラフィー、分子排除クロマト
グラフィー、マルチモード複合樹脂クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせから
選択される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
別の好ましい実施形態では、Va≧100 L(または、100~500L)である。
【0014】
別の好ましい実施形態では、当該方法は、工程(e)の後に、以下の工程をさらに含む

(f) 前記精製組換えウイルスベクターを液体交換することにより、前記精製組換えウイ
ルスベクターを、前記組換えウイルスベクターを含有するウイルス凍結培地に置置換する
工程;
(g) 上記液体交換後に、前記ウイルスを濾過および滅菌して、滅菌組換えウイルスベク
ターを得る工程。
【0015】
別の好ましい実施形態では、ウイルスはレンチウイルスを含む。
【0016】
別の好ましい実施形態において、この方法は、GMP条件に準拠する。
【0017】
別の好ましい実施形態において、工程(d)において、分子排除クロマトグラフィーお
よび陰イオン(アニオン)クロマトグラフィーは順番に、連続的に、または同時に行われ
る。
【0018】
別の好ましい実施形態では、アニオン性樹脂(anionic resin)がCap
to Q、Capto ImpRes、およびCapto DEAEから選択される。
【0019】
別の好ましい実施形態では、マルチモード複合物(multimodal composite)クロマトグ
ラフィー樹脂である「Capto adhere ImpRes」または「Capto c
ore 700」が採用される。
【0020】
別の好ましい実施形態では、上記クロマトグラフィーによる精製は、まず陰イオンクロ
マトグラフィーによる一次精製を行い、次いで、マルチモード複合物クロマトグラフィー
による精巧な精製を行うことであるができる。
【0021】
別の好ましい実施形態では、上記クロマトグラフィーによる精製は、まずマルチモード
複合物クロマトグラフィーによる一次精製を行い、次いで、陰イオンクロマトグラフィー
による精巧な精製を行うことであることができる。
【0022】
別の好ましい実施形態では、上記クロマトグラフィーによる精製は、2つのマルチモー
ドクロマトグラフィー樹脂を直列に接続し、次いで、不純物の吸着および除去ならびにウ
ィルスの捕捉を同時に行うことができる。
【0023】
別の好ましい実施形態では、濃縮後、クロマトグラフィによる供給液の精製処理の時間
は10L/30分である。
【0024】
別の好ましい実施形態において、クロマトグラフィーによる精製の処理スピードは、ク
ロマトグラフィーで処理される濾液が20L/60分である。
【0025】
別の好ましい実施形態において、クロマトグラフィー媒体とクロマトグラフィーに供さ
れる濾液との重量-体積比は、500mL:10L濾液である。
【0026】
別の好ましい実施形態では、細菌フィルターの孔径は0.2μMである。
【0027】
別の好ましい実施形態では、クロマトグラフィー媒体がCapto Q ImpRes
から選択される。
【0028】
別の好ましい実施形態において、工程(d)において、精製された組換えレンチウイル
スベクターは、以下の特徴の1つ以上を有する:
(p1) 前記組換えレンチウイルスベクターの生物学的力価が1.06x10Tu
/mLである;
(p2) BSA残渣<50ng/mL;
(p3) エンドトキシン<1EU/mL。
【0029】
別の好ましい実施形態では、クロマトグラフィによる浄化を行う前に、濾液(濃縮され
た濾液または未濃縮の濾液を含む)をリボザイム処理にかける。
【0030】
別の好ましい実施形態では、リボザイム処理は、10U/mlリボザイムを添加し、そ
れを37℃で30分間インキュベートすることを含む。
【0031】
別の好ましい実施形態では、工程(b)において、精密濾過用中空繊維カラムが精密濾
過(マイクロ濾過)のために使用される。
【0032】
別の好ましい実施形態では、精密濾過用中空繊維カラムが0.4~1.0μm(好まし
くは0.45~0.8μm)のカットオフ値を有する精密濾過膜である。
【0033】
別の好ましい実施形態では、工程(c)において、Vb対Vcの比(Vb/Vc)は5
~50、好ましくは10~30、より好ましくは15~25である。
【0034】
別の好ましい実施形態では、工程(c)において、濃縮は限外濾過(ultrafil
tration)によって行われる。
【0035】
別の好ましい実施形態では、限外濾過が100~800Kのカットオフ値を有する限外
濾過膜を採用する。
【0036】
別の好ましい実施形態では、限外濾過用中空繊維カラムのカットオフ値が200~10
00K、好ましくは300~500Kである。
【0037】
別の好ましい実施形態では、限外濾過が、限外濾過用中空繊維カラムおよび限外濾過シ
ステムを採用する。
【0038】
別の好ましい実施形態では、限外濾過システムが、AKTAフラックス6およびAKT
Aレディフラックスから選択される。
【0039】
本発明の第2の態様では、本方法によって調製された精製組換えレンチウイルスが提供
される。
【0040】
本発明の第3の局面では、精製された組換えレンチウイルスを含む調製物が提供される
【0041】
別の好ましい実施形態では、前記調製物は医薬組成物である。
【0042】
別の好ましい実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含有する。
【0043】
本発明の第4の態様では、上記方法で使用される精製装置が提供される。当該精製装置
は、
(S1) 精製される組換えレンチウイルスの原料を保持するための、任意の第1の容器

(S2) 精製される組換えレンチウイルスの精密濾過処理を行い、精密濾過された濾液
を得るために使用される、精密濾過ユニット;
(S3) 濃縮濾液を得るために濾液を濃縮するために使用される、任意の濃縮ユニット

(S4) 前記精密濾過ユニット又は前記濃縮ユニットからの濾液をクロマトグラフィー
により精製して精製組換えレンチウイルスベクターを得るために使用される、クロマトグ
ラフィー精製ユニット;
(S5) 前記精製された組換えレンチウイルスベクターを収集するために使用される、
収集ユニット;
を含む。
【0044】
別の好ましい実施形態では、第1の容器、精密濾過ユニット、濃縮ユニット、クロマト
グラフィー精製ユニット、および収集ユニットは、流体連通している。
【0045】
別の好ましい実施形態において、クロマトグラフィー精製ユニットは、分子排除クロマ
トグラフィーユニットおよび陰イオンクロマトグラフィーユニットを含む。
【0046】
別の好ましい実施形態において、分子排除クロマトグラフィーユニットおよび陰イオン
クロマトグラフィーユニットは、相互に独立している。
【0047】
別の好ましい実施形態において、分子排除クロマトグラフィーユニットおよび陰イオンク
ロマトグラフィーユニットは一体化される。
【0048】
別の好ましい実施形態では、精製装置はさらに以下を含む:
(S6) リボザイムを添加するための添加装置を備えるリボザイム処理ユニット。
【0049】
別の好ましい実施形態では、リボザイム処理ユニットがリボザイムを添加した濾液をイ
ンキュベートするためのインキュベーションデバイスをさらに含む。
【0050】
本発明の範囲内で、本発明の上記の技術的特徴および以下に詳細に説明する技術的特徴
(例えば、実施形態)を互いに組み合わせて、新しいまたは好ましい技術的解決策を形成
することができることを理解されたい。スペースの制約のため、ここでは説明しない。
【0051】
詳細な説明
大規模かつ詳細な研究の後、精製条件の大量スクリーニングおよび探索を通して、本発
明者らは、初めて優れた精製効果を有する組換えレンチウイルスのGMPグレード大規模
精製のための迅速かつ単純な方法を予想外に開発した。本発明により提供される方法にお
いて、特定の精製培地および特定の精製工程および条件を使用することにより、組換えレ
ンチウイルスを含有する製造原料は、非常に効率的、迅速かつ大規模な様式で精製され得
、その結果、高い精製、より少ない不純物およびエンドトキシンを有さない組換えレンチ
ウイルス調製物を得る。これにより、本発明が完成する。
【0052】
用語
本明細書中で使用される場合、用語「複合充填剤樹脂(composite fill
er resin)」は、Capto Q、Capto ImpRes、又はCapto
DEAEをいう。
【0053】
本明細書で使用される「複合充填剤樹脂」は、複合充填剤樹脂を使用するクロマトグラ
フィーを意味する。
【0054】
本明細書中で使用される場合、用語「組換えレンチウイルス」および「レンチウイルス
ベクター」は、交換可能な様式で使用され得、そして特定のプラスミドを特定のパッケー
ジング細胞に導入することによって産生されるレンチウイルスベクターをいう。典型的に
は、これらのレンチウイルスベクターが治療目的または非治療目的のために、所定の細胞
(ヒトおよび非ヒト哺乳動物細胞を含む)をトランスフェクトするその後の反応において
使用され得る。
【0055】
GE AKTAデバイス、および新世代のCapto Core700およびCapto a
dhere ImpRes樹脂の組み合わせ(これらの組み合わせに限定されない)を使
用することによって、本発明に例示される方法により、高純度レンチウイルス調製物を迅
速に得ることができる。
【0056】
本発明によって提供される方法によって調製される精製組換えレンチウイルスベクター
調製物は、細胞または遺伝子医薬の産生のために使用され得る。
【0057】
本発明は、以下の主な利点を有する:
「Capto Core 700」を「Capto adhere ImpRes」と組
み合わせてレンチウイルスを精製することにより、高純度レンチウイルス調製物を迅速に
得ることができる。
【実施例0058】
以下、本発明を特定の実施形態に関連してさらに説明する。これらの実施形態は本発明
を例示することを意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものでは
ないことを理解されたい。以下の実施形態における特定の条件を伴わない実験方法は一般
に、従来の条件、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:
Laboratory Manual(New York: Cold Spring Har
bor Laboratory Press,1989)等に記載される条件に従うか、ま
たは製造業者によって推奨される条件に従う。特に断らない限り、百分率および部は、重
量百分率および重量部である。
【0059】
実施例1:
(1) 飼料液の採取:レンチウイルス飼料液を採取。
【0060】
(2) 精密濾過清澄化:
a) 0.45~0.8μM精密濾過中空繊維カラムをAKTA Flux 6システムに
接続し、完全性を試験;
b) 接続状態のAKTA Flux 6システムを1M NaOHで滅菌;
c) AKTA Flux 6システムを注射用水で洗浄;
d) AKTA Flux 6システムを滅菌1XPBSで洗浄;
e) 20Lの組換えレンチウイルス供給液を供給液バケットに2バッチで注ぎ、精密濾
過を行い、濾液を採取。
【0061】
(3) 限外濾過濃縮物:
a) 300~800K限外濾過中空繊維カラムとAKTA Flux 6システムを接続
し、完全性を試験;
b) 接続したAKTA Flux 6システムを1M NaOHで滅菌;
c) AKTA Flux 6システムを注射用水で洗浄;
d) AKTA Flux 6システムを滅菌1XPBSで洗浄;
e) 精密濾過レンチウイルス供給液の限外濾過濃縮を300~800K限外濾過カラム
及びAKTA Flux 6システムで行い、濾液を廃棄;
f) レンチウイルス飼料液を20Lから1~2Lに濃縮。
【0062】
(4) ヌクレアーゼ処理:
a) レンチウイルス供給液1~2Lにヌクレアーゼを10~1000U/mLの割合で
添加し、よく混合;
b) 2~8℃で一晩培養。
【0063】
(5) Capto Core700とCapto adhere ImpResを連結して使
用し、不純物を除去し、ウイルスを捕捉する操作:
a) Capto Core700 500mLとCapto adhere ImpRes
500mLを連続的に接続し、AKTA pure150クロマトグラフィーシステム
に設置;
b) 接続状態のAKTA Flux 150システムを1M NaOHで滅菌;
c) AKTA Flux 150システムを注射用水で洗浄;
d) AKTA pure150システムを滅菌レンチウイルス凍結培地で洗浄;
e) 残部;
f) 供給液1~2Lを装填し、装填後の溶出には20~50mM Tris-Cl/1
~1.5M NaClを使用し、溶出ピークを収集。
【0064】
(6) 限外濾過及び液体交換:
a) 300-800K限外濾過中空繊維カラムとAKTA Flux 6システムを接続
し、試験の完全性を確認;
b) 接続状態のAKTA Flux 6システムを1M NaOHで滅菌;
c) AKTA Flux 6システムを注射用水で洗浄;
d) AKTA pure6システムを無菌レンチウイルス凍結培地で洗浄;
e) 300~800K限外濾過中空糸カラム及びAKTA Flux 6システムで、精
密濾過レンチウイルス供給液の限外濾過及び液交換を行い、濾液を廃棄;
f) 組換えレンチウイルスベクター100~300mLを採取。
【0065】
(7) 濾過滅菌、サブパッケージング、及び凍結保存:
a) 精製レンチウイルス供給液を濾過するために0.2μMフィルターを使用;
b) 完成品を1mL/チューブに包装;
c) レンチウイルス製剤は超低温冷蔵庫(≦-70℃)で保存。
【0066】
I. 結果:
(1) 最終レンチウイルス製品の濃度2~4×109/mL
(2) BSA <50ng/mL;
(3) HCP <1 ng/mL;
(4) 核酸残基<5pg/mL;
(5) RCL陰性。
【0067】
II. 結論
0.45~0.8μM精密濾過中空繊維カラム、300~800K中空繊維カラムおよ
び「Capto Core700+Capto adhere Imp Res」複合充填剤
を用いて、清澄濾過、濃縮、液体交換および不純物除去を段階的に行うことにより、高純
度レンチウイルス調製物を迅速に得ることができた。
【0068】
本発明において言及される全ての文献は各文献が個々に参照として引用されるかのよう
に、本出願において参照として引用される。さらに、本発明の上記教示内容に基づき、当
業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの等価な形態もまた、
本出願の添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内にあることを理解することがで
きる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えウイルスベクターの大規模精製のための方法であって、以下の工程:
(a) 精製の対象となる組換えウイルスベクターを含む供給液である原料を提供する工程であって、前記供給液の体積が20L以上である、工程;
(b) 前記供給液に対して精密濾過処理を実施し、前記組換えウイルスベクターを含む精密濾過された濾液を得る工程であって、前記精密濾過処理が、精密濾過用中空繊維カラムを用いて行われ、前記精密濾過用中空繊維カラムが0.4~1.0μmのカットオフ値を有する精密濾過膜を含む、工程;
(c) 前記濾液を濃縮して濃縮濾液を得る工程;
(d) 前記濾液をクロマトグラフィーにより精製し、組換えウイルスベクターを含む粗純生成物を得る工程;
(e) 前記粗純生成物を液体交換及び精製して精製組換えウイルスベクターを得る工程;
を含み、
ここで、工程(d)における前記クロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、マルチモード複合樹脂クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせから選択され、
前記組換えウイルスベクターが、組換えレンチウイルスベクターである、方法。
【請求項2】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーにおけるアニオン性樹脂が、Capto Q、CaptoImpRes、およびCapto DEAEから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クロマトグラフィーによる精製が、陰イオン交換クロマトグラフィーにより一次精製を行い、次いで、マルチモード複合樹脂クロマトグラフィーによる精製を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(d)において、精製された組換えレンチウイルスベクターが、以下の特徴のうち1つ以上を有する、請求項1に記載の方法:
(p1) 前記組換えレンチウイルスベクターの生物学的力価が約1.06x10Tu/mLである;
(p2) BSA<50ng/mL;
(p3) エンドトキシン<1 EU/mL。
【請求項5】
前記工程(c)において、濃縮を限外濾過により行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法で使用される精製装置であって、
(S1) 精製される組換えレンチウイルスベクターの原料を保持するための、任意の第1の容器;
(S2) 精製される組換えレンチウイルスベクターの精密濾過処理を行い、精密濾過された濾液を得るための、精密濾過ユニット;
(S3) 濃縮濾液を得るために濾液を濃縮するための、任意の濃縮ユニット;
(S4) 前記精密濾過ユニット又は前記濃縮ユニットからの濾液をクロマトグラフィーにより精製して精製組換えレンチウイルスベクターを得るための、クロマトグラフィー精製ユニット;
(S5) 前記精製された組換えレンチウイルスベクターを収集するための、収集ユニット;
を含む、精製装置。
【請求項7】
前記クロマトグラフィー精製ユニットが、サイズ排除クロマトグラフィーユニットおよび陰イオン交換クロマトグラフィーユニットを含む、請求項6に記載の精製装置。
【請求項8】
(S6)ヌクレアーゼを添加するための添加装置を備えるヌクレアーゼ処理ユニットをさらに含む、請求項6に記載の精製装置。
【請求項9】
工程(c)における前記濃縮が、200~1000Kのカットオフ値を有する限外濾過用中空繊維カラムを用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(d)における前記クロマトグラフィーが陰イオン交換クロマトグラフィーである場合、溶出液が1~1.5MのNaClを含む、請求項1に記載の方法。