(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004178
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】構真柱の建て込み工法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
E02D29/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103697
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 直宏
(72)【発明者】
【氏名】氏原 将之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 吉容
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】安部 純人
(72)【発明者】
【氏名】河登 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】鶴ケ野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】原田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敏生
(72)【発明者】
【氏名】利川 将司
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AB04
(57)【要約】
【課題】構真柱の根入れ部分のコンクリートがコンクリート杭の下端部分のコンクリートと同種の場合と比して、構真柱の位置精度が低下してしまうのを抑制することができる構真柱の建て込み工法を得る。
【解決手段】場所打ちコンクリート杭の上端部分であると共に構真柱の根入れ部分のコンクリートのスランプフローを、前記場所打ちコンクリート杭の下端部分のコンクリートのスランプフローと比して大きくする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ちコンクリート杭の上端部分であると共に構真柱の根入れ部分のコンクリートのスランプフローを、前記場所打ちコンクリート杭の下端部分のコンクリートのスランプフローと比して大きくする構真柱の建て込み工法。
【請求項2】
前記構真柱の根入れ部分のコンクリートのスランプフローを、45Cm以上65Cm以下とし、前記場所打ちコンクリート杭の下端部分のコンクリートのスランプフローを25Cm以上40Cm以下とする請求項1に記載の構真柱の建て込み工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構真柱の建て込み工法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の構真柱の建て込み工法では、所定の高さに構台を構築し、この構台の床を貫通して構真柱を立設する。また、構台の床下に伸縮自在な複数の支持アームを設置し、この複数の支持アームで構真柱の上下方向の少なくとも2カ所を支持する。そして、支持アームで構真柱の位置決めを行う。また、構台に掘削機を搭載し、この掘削機で竪孔を掘削し、同時に竪孔に構真柱を建て込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、逆打ち工法で用いられる構真柱は、場所打ちコンクリート杭に建て込みされる。また、コンクリート杭は、1種類のコンクリ―を用いて形成される。つまり、コンクリート杭の下端部分のコンクリートとコンクリート杭の上端部分であって構真柱の根入れ部分のコンクリートとは、同種のコンクリートが用いられる。
【0005】
ここで、コンクリートを打設して場所打ちコンクリート杭へ構真柱を建て込むときに、構真柱の根入れ部分が打設されたコンクリートに押されて移動してしまうことがある。換言すれば、構真柱の位置精度が低下してしまうことがある。
【0006】
本開示の課題は、構真柱の根入れ部分のコンクリートがコンクリート杭の下端部分のコンクリートと同種の場合と比して、構真柱の位置精度が低下してしまうのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る構真柱の建て込み工法は、場所打ちコンクリート杭の上端部分であると共に構真柱の根入れ部分のコンクリートのスランプフローを、前記場所打ちコンクリート杭の下端部分のコンクリートのスランプフローと比して大きくすることを特徴とする。
【0008】
第1態様に係る構成によれば、構真柱先建て工法においては、構真柱の根入れ部分のコンクリートがコンクリート杭の下端部分のコンクリートと同種の場合と比して、コンクリートを打設するときに構真柱の根入れ部分がコンクリートの抵抗によって移動するのが抑制される。換言すれば、構真柱の根入れ部分のコンクリートがコンクリート杭の下端部分のコンクリートと同種の場合と比して、構真柱の位置精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【0009】
また、構真柱後建て工法においては、構真柱の根入れ部分のコンクリートがコンクリート杭の下端部分のコンクリートと同種の場合と比して、構真柱の下端部分を根入れさせるときに構真柱の根入れ部分がコンクリートの抵抗によって移動するのが抑制される。換言すれば、構真柱の根入れ部分のコンクリートがコンクリート杭の下端部分のコンクリートと同種の場合と比して、構真柱の位置精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【0010】
第2態様に係る構真柱の建て込み工法は、第1に記載の構真柱の建て込み工法において、前記構真柱の根入れ部分のコンクリートのスランプフローを、45Cm以上65Cm以下とし、前記場所打ちコンクリート杭の下端部分のコンクリートのスランプフローを25Cm以上40Cm以下とすることを特徴とする。
【0011】
第2態様に係る構成によれば、構真柱の根入れ部分のコンクリートのスランプフローを、45Cm以上65Cm以下とし、場所打ちコンクリート杭の下端部分のコンクリートのスランプフローを25Cm以上40Cm以下としている。このため、場所打ちコンクリート杭の下端部分のコンクリートには、普通コンクリートを用いることができる。このため、コストが上昇するのを抑制した上で、構真柱の位置精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、構真柱の根入れ部分のコンクリートがコンクリート杭の下端部分のコンクリートと同種の場合と比して、構真柱の位置精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)(B)(C)本開示の第1実施形態に係る構真柱の建て込み工法を示した模式図である。
【
図2】(A)(B)(C)本開示の第1実施形態に係る構真柱の建て込み工法を示した模式図である。
【
図3】(A)(B)本開示の第1実施形態に係る構真柱の建て込み工法においてコンクリートを打設する工程を示した模式図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る構真柱の建て込み工法に対する比較形態に係る構真柱の建て込み工法について示した模式図である。
【
図5】(A)(B)(C)本開示の第2実施形態に係る構真柱の建て込み工法を示した模式図である。
【
図6】(A)(B)(C)本開示の第2実施形態に係る構真柱の建て込み工法を示した模式図である。
【
図7】(A)(B)本開示の第2実施形態に係る構真柱の建て込み工法においてコンクリートを打設する工程を示した模式図である。
【
図8】本開示の第2実施形態に係る構真柱の建て込み工法に対する比較形態に係る構真柱の建て込み工法について示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態に係る構真柱の建て込み工法の一例について
図1~
図4に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは、鉛直方向であって上下方向を示し、矢印Wは、水平方向であって、幅方向を示す。
【0015】
先ず、逆打ち工法で用いられる構真柱50を場所打ちコンクリート杭100に根入れさせて埋め戻すまでの構真柱の建て込み工法について模式図を用いて説明する。
【0016】
第1実施形態に係る構真柱の建て込み工法は、所謂構真柱先建て工法であって、最初に、
図1(A)に示されるように、表層ケーシング12を建て込み、図示せぬアースドリル杭打機、及び拡底機等を用いて下端部が拡径化された拡径部10aを有する杭穴10を削孔する。さらに、スライムクリーナー40を用いてスライム処理(底浚い)を行う。
【0017】
また、
図1(B)に示されるように、杭穴10の下部分に鉄筋籠14をクレーン42で吊り降ろし建て込む。
【0018】
さらに、
図1(C)に示すように、杭穴10の上側に構真柱50を建て込むための建込架台20を設置し、構真柱50を建込架台20に通して位置調整しながら杭穴10に建て込む。
【0019】
また、
図2(A)、
図2(B)に示されるように、杭穴10にトレミー管46を挿入し、ポンプ車44を用いて杭穴10の下端部分にコンクリートCを打設する。これにより、場所打ちコンクリート杭100が形成され、構真柱50の下端部分は、コンクリートCに根入れされる。第1実施形態では、構真柱50は、一例として、3~4〔m〕程度コンクリートCに根入れされる。なお、詳細は後述するが、トレミー管については、トレミー管46aとトレミー管46bとが用いられている。
【0020】
ここで、コンクリートCの打設について、
図3(A)(B)を用いて説明する。なお、
図3(A)については、説明の便宜上鉄筋籠14が省略されている。先ず、
図3(A)に示されるように、トレミー管46aを挿入し、コンクリートC1を構真柱50に接触しないように打設する。換言すれば、トレミー管46aを挿入し、コンクリート杭100の下端部分のコンクリートC1を構真柱50に接触しないように打設する。ここで、コンクリートC1は、普通コンクリートであって、第1実施形態では、コンクリートC1のスランプフロー(日本産業規格 JIS.A 1150:2020)が25Cm以上40Cm以下とされている。
【0021】
次に、
図3(B)に示されるように、トレミー管46bを挿入し、構真柱50の下端部分が根入れされるようにコンクリートC2を打設する。これにより、場所打ちコンクリート杭100が形成される。ここで、コンクリートC2は、高流動化されたコンクリートであって、第1実施形態では、コンクリートC2のスランプフローが45Cm以上65Cm以下とされている。
【0022】
コンクリートCの打設が完了すると、
図2(C)に示されるように、バックホウ48を用いて土や土地砂等の埋戻材Mで杭穴10を埋め戻すと共に、クレーン42で建込架台20を撤去する。その後、クレーン42で表層ケーシング12を引き抜いて撤去する。
【0023】
(まとめ)
次に、第1実施形態に対する比較形態に係る構真柱の建て込み工法と比較しつつ、第1実施形態の構真柱の建て込み工法の作用等について説明する。先ず、比較形態に係る構真柱の建て込み工法について、第1実施形態の構真柱の建て込み工法と異なる部分を主に説明する。
【0024】
比較形態に係る構真柱の建て込み工法では、
図4に示されるように、トレミー管46aを挿入し、構真柱50の下端部分が根入れされるようにコンクリートC1を打設する。これにより、場所打ちコンクリート杭110が形成される。つまり、比較形態に係る構真柱の建て込み工法では、構真柱50の根入れ部分のコンクリートがコンクリート杭110の下端部分のコンクリートと同種となっている。そして、前述したように、コンクリートC1は、普通コンクリートであって、コンクリートC1のスランプフローが25Cm以上40Cm以下とされている。
【0025】
このように、流動性が高くない普通コンクリートを用いて、構真柱50の下端部分が根入れされるようにコンクリートC1を打設する。このため、
図4の二点鎖線で示されるように、構真柱50の下端部分がコンクリートC1の抵抗によって移動してしまうことがある。
【0026】
これに対して、第1実施形態の構真柱の建て込み工法では、構真柱50の根入れ部分のコンクリートC2のスランプフローを、場所打ちコンクリート杭100の下端部分のコンクリートC1のスランプフローと比して大きくしている。
【0027】
このため、第1実施形態の構真柱の建て込み工法では、比較形態の構真柱の建て込み工法と比して、構真柱50の下端部分の移動が抑制されるため、構真柱50の位置精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【0028】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る構真柱の建て込み工法の一例について
図5~
図8に従って説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態に対して異なる部分を主に説明する。
【0029】
第2実施形態に係る構真柱の建て込み工法は、所謂構真柱後建て工法であって、最初に、
図5(A)に示されるように、表層ケーシング12を建て込み、図示せぬアースドリル杭打機、及び拡底機等を用いて下端部が拡径化された拡径部10aを有する杭穴10を削孔する。さらに、スライムクリーナー40を用いてスライム処理(底浚い)を行う。また、
図5(B)に示されるように、杭穴10の下部分に鉄筋籠14をクレーン42で吊り降ろし建て込む。
【0030】
さらに、
図5(C)に示すように、杭穴10にトレミー管46を建て込み、ポンプ車44を用いて杭穴10の下端部分にコンクリートCを打設する。これにより、場所打ちコンクリート杭100が形成される。
【0031】
ここで、コンクリートCの打設について、
図7(A)を用いて説明する。先ず、
図7(A)に示されるように、トレミー管46aを建て込み、コンクリートC1を打設する。次に、トレミー管46bを建て込み、コンクリートC1の上層としてコンクリートC2を打設する。これにより、場所打ちコンクリート杭100が形成される。
【0032】
コンクリートCの打設が完了すると、
図6(A)(B)に示されるように、杭穴10の上側に構真柱50を建て込むための建込架台20を設置し、構真柱50を建込架台20に通して位置調整しながら杭穴10に建て込む。建て込まれた構真柱50の下端部分は、
図7(B)に示されるように、硬化する前の状態のコンクリートC2に根入れされる。
【0033】
次に、構真柱50の建て込みが完了すると、
図6(C)に示されるように、バックホウ48を用いて土や土地砂等の埋戻材Mで杭穴10を埋め戻すと共に、クレーン42で建込架台20を撤去する。その後、クレーン42で表層ケーシング12を引き抜いて撤去する。
【0034】
(まとめ)
次に、第2実施形態に対する比較形態に係る構真柱の建て込み工法と比較しつつ、第2実施形態の構真柱の建て込み工法の作用等について説明する。先ず、比較形態に係る構真柱の建て込み工法について、第2実施形態の構真柱の建て込み工法と異なる部分を主に説明する。
【0035】
比較形態に係る構真柱の建て込み工法では、
図8に示されるように、コンクリートの種類を分けることなく、コンクリートC1を用いてコンクリート部分全体を打設する。これにより、場所打ちコンクリート杭110が形成される。そして、構真柱50の下端部分を、硬化する前の状態のコンクリートC1に根入れされる。
【0036】
ここで、コンクリートC1は、普通コンクリートであって流動性については、コンクリートC2と比して低い。このため、構真柱50の下端部分をコンクリートC1に根入れするときに、
図8の二点鎖線に示されるように、構真柱50の下端部分がコンクリートC1の抵抗によって設計値に対して移動してしまう。
【0037】
これに対して、第2実施形態の構真柱の建て込み工法では、構真柱50の根入れ部分のコンクリートC2のスランプフローを、場所打ちコンクリート杭100の下端部分のコンクリートC1のスランプフローと比して大きくしている。
【0038】
このため、第2実施形態の構真柱の建て込み工法では、比較形態の構真柱の建て込み工法と比して、構真柱50の下端部分の移動が抑制されるため、構真柱50の位置精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【0039】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。特許請求の範囲、明細書および図面の記載から当業者が認識することができる技術的思想に反しない限り、変更、削除、付加、及び各実施形態の組み合わせが可能である。
【0040】
また、上記実施形態では、コンクリートC1のスランプフローが25Cm以上40Cm以下であり、コンクリートC2のスランプフローが45Cm以上65Cm以下であったが、構真柱50が根入れされる部分のコンクリートのスランプフローを、コンクリート杭100の下端部分のコンクリートのスランプフローと比して大きくすればよい。これにより、構真柱の根入れ部分のコンクリートがコンクリート杭の下端部分のコンクリートと同種の場合と比して、構真柱50の位置精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、コンクリートC2として高流動コンクリートを用いてもよい。高流動コンクリートとは、使用する水を普通コンクリートより少なくし、高い流動性を有するコンクリートである。
【符号の説明】
【0042】
50 構真柱
100 場所打ちコンクリート杭
C コンクリート
C1 コンクリート
C2 コンクリート